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  • 特許-乾式目地の取付構造および乾式目地 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】乾式目地の取付構造および乾式目地
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/20 20060101AFI20220426BHJP
   A47K 3/16 20060101ALI20220426BHJP
   E04H 1/12 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
E03C1/20 B
A47K3/16
E04H1/12 301
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018126195
(22)【出願日】2018-07-02
(65)【公開番号】P2020002755
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】原田 亮一
(72)【発明者】
【氏名】山田 聖
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-073164(JP,U)
【文献】特開2004-225352(JP,A)
【文献】実開昭57-062263(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/20
A47K 3/16
E04H 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水まわりユニットルームに設置される洗い場床と、
前記洗い場床に載置される壁と、
前記洗い場床と前記壁とに当接することで前記洗い場床と前記壁との接続部分を覆う乾式目地と、
を有する水まわりユニットルームにおける乾式目地の取付構造において、
前記乾式目地は、前記洗い場床に接続されている基端部と、使用者の操作によって移動可能な先端部と、を有し、
前記先端部は、前記壁側へ近づく方向に向かって付勢されており、
前記壁から離れる方向へ変位した前記先端部が前記壁側に近づく方向へ戻らないようにロックするロック構造を有することを特徴とする水まわりユニットルームにおける乾式目地の取付構造。
【請求項2】
前記乾式目地は、前記先端部の変位に追従して移動する突起部をさらに有し、
前記突起部の先端の移動軌道に、前記突起部とともに前記ロック構造を構成するロック部が設けられ、
前記突起部の前記先端が前記ロック部に当接することで、前記先端部が前記壁側に近づく方向へ戻らないようにロックされる請求項1記載の乾式目地の取付構造。
【請求項3】
水まわりユニットルームに設置される浴槽と、
前記浴槽のリムの上面に載置される壁と、
前記リムと前記壁とに当接することで前記リムと前記壁との接続部分を覆う乾式目地と、
を有する水まわりユニットルームにおける乾式目地の取付構造において、
前記乾式目地は、前記リムに接続されている基端部と、使用者の操作によって移動可能な先端部と、を有し、
前記先端部は、前記壁側へ近づく方向に向かって付勢されており、
前記壁から離れる方向へ変位した前記先端部が前記壁側に近づく方向へ戻らないようにロックするロック構造を有することを特徴とする水まわりユニットルームにおける乾式目地の取付構造。
【請求項4】
水まわりユニットルームに設置される壁と、
前記壁に載置される天井と、
前記天井と前記壁とに当接することで前記天井と前記壁との接続部分を覆う乾式目地と、
を有する水まわりユニットルームにおける乾式目地の取付構造において、
前記乾式目地は、前記天井に接続されている基端部と、使用者の操作によって移動可能な先端部と、を有し、
前記先端部は、前記壁側へ近づく方向に向かって付勢されており、
前記壁から離れる方向へ変位した前記先端部が前記壁側に近づく方向へ戻らないようにロックするロック構造を有することを特徴とする水まわりユニットルームにおける乾式目地の取付構造。
【請求項5】
基端部と、
使用者の操作によって移動可能な先端部であって、前記基端部が水まわりユニットルームに設置される洗い場床、浴槽のリム、または天井に接続された状態で、前記洗い場床または前記浴槽の前記リムの上面に載置される、または前記天井が載置される壁側へ近づく方向に向かって付勢され、前記壁に当接して、前記洗い場床、前記リム、または前記天井と、前記壁との接続部分を覆うことが可能な先端部と、
前記壁から離れる方向へ変位した前記先端部が前記壁側に近づく方向へ戻らないようにロックするロック構造と、
を有することを特徴とする乾式目地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式目地の取付構造および乾式目地に関する。
【背景技術】
【0002】
ユニットバスルームやシャワールーム等の水まわりユニットルームを組み立てる際、洗い場床や浴槽のリム上面などの床面と壁との接続部分を乾式目地で覆うことで、意匠性を担保する技術が知られている。例えば、特許文献1では、基端部が洗い場床に接続されている乾式目地の先端部を、施工前に予め洗い場床にテープなどで貼り付けておき、壁を洗い場床に接続させた後、乾式目地の先端部と洗い場床との接触状態を解除して、乾式目地の先端部と壁とを接触させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-95874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、乾式目地の先端部を床面に貼り付けている際に、乾式目地の先端部の復元力(乾式目地の先端部が壁側に移動しようとする力)が強いと、乾式目地の先端部と床面との接触状態が解除されてしまい、壁と床面との接続作業の邪魔となってしまう。一方で、乾式目地の先端部の復元力が弱いものであると、乾式目地の先端部と床面との接触状態が勝手に解除されにくいものの、乾式目地の先端部と床面との接触状態を解除した際に、しっかりと乾式目地の先端部と壁が接触してくれない。
【0005】
そこで、本発明は、洗い場床、浴槽のリム、または天井と、壁との接続作業の邪魔にならない乾式目地の取付構造および乾式目地を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明の乾式目地の取付構造は、水まわりユニットルームに設置される洗い場床と、前記洗い場床に載置される壁と、前記洗い場床と前記壁とに当接することで前記洗い場床と前記壁との接続部分を覆う乾式目地と、を有する水まわりユニットルームにおける乾式目地の取付構造において、前記乾式目地は、前記洗い場床に接続されている基端部と、使用者の操作によって移動可能な先端部と、を有し、前記先端部は、前記壁側へ近づく方向に向かって付勢されており、前記壁から離れる方向へ変位した前記先端部が前記壁側に近づく方向へ戻らないようにロックするロック構造を有することを特徴とする。
第1の発明によれば、乾式目地の先端部が壁側に近づく方向へ戻らないようにロックされるロック構造を有するため、乾式目地の先端部の復元力(先端部が壁側に近づく方向に戻ろうとする力)が強い場合であっても、乾式目地は壁と洗い場床との接続作業の邪魔にならない。また、先端部の上記復元力を適切な強さにすることで、先端部を壁側に戻したときに、先端部が適切な押し付け力で壁に当接し、先端部と壁との間に隙間を生じさせない。
第2の発明は、第1の発明において、前記乾式目地は、前記先端部の変位に追従して移動する突起部をさらに有し、前記突起部の先端の移動軌道に、前記突起部とともに前記ロック構造を構成するロック部が設けられ、前記突起部の前記先端が前記ロック部に当接することで、前記先端部が前記壁側に近づく方向へ戻らないようにロックされる。
第2の発明によれば、突起部の先端がロック部につっかえ棒のように引っ掛かって、先端部の壁から離れる方向への移動が確実にロックされる。
第3の発明の乾式目地の取付構造は、水まわりユニットルームに設置される浴槽と、前記浴槽のリムの上面に載置される壁と、前記リムと前記壁とに当接することで前記リムと前記壁との接続部分を覆う乾式目地と、を有する水まわりユニットルームにおける乾式目地の取付構造において、前記乾式目地は、前記リムに接続されている基端部と、使用者の操作によって移動可能な先端部と、を有し、前記先端部は、前記壁側へ近づく方向に向かって付勢されており、前記壁から離れる方向へ変位した前記先端部が前記壁側に近づく方向へ戻らないようにロックするロック構造を有することを特徴とする。
第3の発明によれば、乾式目地の先端部が壁側に近づく方向へ戻らないようにロックされるロック構造を有するため、乾式目地の先端部の復元力(先端部が壁側に近づく方向に戻ろうとする力)が強い場合であっても、乾式目地は、壁と、浴槽のリムとの接続作業の邪魔にならない。また、先端部の上記復元力を適切な強さにすることで、先端部を壁側に戻したときに、先端部が適切な押し付け力で壁に当接し、先端部と壁との間に隙間を生じさせない。
第4の発明の乾式目地の取付構造は、水まわりユニットルームに設置される壁と、前記壁に載置される天井と、前記天井と前記壁とに当接することで前記天井と前記壁との接続部分を覆う乾式目地と、を有する水まわりユニットルームにおける乾式目地の取付構造において、前記乾式目地は、前記天井に接続されている基端部と、使用者の操作によって移動可能な先端部と、を有し、前記先端部は、前記壁側へ近づく方向に向かって付勢されており、前記壁から離れる方向へ変位した前記先端部が前記壁側に近づく方向へ戻らないようにロックするロック構造を有することを特徴とする。
第4の発明によれば、乾式目地の先端部が壁側に近づく方向へ戻らないようにロックされるロック構造を有するため、乾式目地の先端部の復元力(先端部が壁側に近づく方向に戻ろうとする力)が強い場合であっても、乾式目地は、壁と天井との接続作業の邪魔にならない。また、先端部の上記復元力を適切な強さにすることで、先端部を壁側に戻したときに、先端部が適切な押し付け力で壁に当接し、先端部と壁との間に隙間を生じさせない。
第5の発明の乾式目地は、基端部と、使用者の操作によって移動可能な先端部であって、前記基端部が水まわりユニットルームに設置される洗い場床、浴槽のリム、または天井に接続された状態で、前記洗い場床または前記浴槽の前記リムの上面に載置される、または前記天井が載置される壁側へ近づく方向に向かって付勢され、前記壁に当接して、前記洗い場床、前記リム、または前記天井と、前記壁との接続部分を覆うことが可能な先端部と、前記壁から離れる方向へ変位した前記先端部が前記壁側に近づく方向へ戻らないようにロックするロック構造と、を有する。
第5の発明によれば、乾式目地の先端部が壁側に近づく方向へ戻らないようにロックされるロック構造を有するため、乾式目地の先端部の復元力(先端部が壁側に近づく方向に戻ろうとする力)が強い場合であっても、乾式目地は壁と洗い場床との接続作業の邪魔にならない。また、先端部の上記復元力を適切な強さにすることで、先端部を壁側に戻したときに、先端部が適切な押し付け力で壁に当接し、先端部と壁との間に隙間を生じさせない。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、洗い場床、浴槽のリム、または天井と、壁との接続作業の邪魔にならない乾式目地の取付構造および乾式目地を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る浴室の斜視図。
図2】本発明の実施形態に係る乾式目地の取付構造を示す模式断面図。
図3図2における一部分の拡大図。
図4】本発明の実施形態に係る乾式目地を用いた洗い場床と壁との接続方法を示す模式断面図。
図5】本発明の実施形態に係る乾式目地を用いた洗い場床と壁との接続方法を示す模式断面図。
図6】本発明の実施形態に係る乾式目地の取付構造を示す模式断面図。
図7】本発明の実施形態に係る乾式目地の取付構造を示す模式断面図。
図8】本発明の実施形態に係る乾式目地の取付構造を示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る水まわりユニットルームの一例としての浴室100の模式斜視図である。
【0011】
浴室100は、浴槽10と、洗い場床20と、天井83と、壁81、82とを備えている。壁81は洗い場床20の上に載置されている。壁82は浴槽10のリム11の上面に載置されている。天井83は、壁81、82の上に載置されている。
【0012】
図2は、洗い場床20と壁81との接続部分の模式断面図である。
【0013】
洗い場床20は、基材21と、基材21の上に設けられた表皮材23と、基材21と表皮材23との間に設けられたクッション材22とを有する。
【0014】
基材21は、例えば熱可塑性樹脂からなる。クッション材22は、例えば発泡ポリウレタンからなる。表皮材23の上面は浴室空間200に露出し、表皮材23の上面には、水はけ性の向上や滑り防止のための凹凸パターンが形成されている。
【0015】
基材21の外周部に凹部21aが設けられている。壁81は、基材21の凹部21aの底面上に載置されている。
【0016】
壁81は、鋼板81aと、母材(例えば石膏ボード)81bとを含み、鋼板81aの下端部は基材21の外縁部に向かって屈曲している。鋼板81aの下端部は、基材21の凹部21aに設けられたガイドピース91に固定され、壁81と洗い場床20との位置ずれが防止されている。
【0017】
洗い場床20の上方の空間において壁81よりも内側(図2において壁81よりも左側)の空間は、使用者が湯水を使う浴室空間200である。洗い場床20と壁81とが形成するコーナーに、乾式目地30が設けられている。乾式目地30は、洗い場床20と壁81とに当接することで、洗い場床20と壁81との接続部分を覆っている。
【0018】
図3は、図2において乾式目地30が設けられた部分の拡大図である。
【0019】
乾式目地30は、洗い場床20に接続されている基端部40と、弾性部50とを有する。基端部40は、例えばエラストマーからなる。弾性部50は、例えば、基端部40よりも柔らかいエラストマーからなる。
【0020】
基端部40は、インナー部41と、アウター部42と、立ち上がり部43とを有する。インナー部41、アウター部42、および立ち上がり部43は一体に設けられている。
【0021】
インナー部41の下面およびアウター部42の下面は、例えば両面テープ93によって基材21の上面に固定されている。または、インナー部41の下面およびアウター部42の下面を、接着剤により基材21の上面に固定してもよい。
【0022】
インナー部41は、基材21と表皮材23との間に挟み込まれている。インナー部41の上面は、接着剤または両面テープによって、表皮材23の下面と固定されている。これにより、振動等による乾式目地30の浮きや外れを防止できる。
【0023】
図2に示すように、クッション材22は、基材21における凹部21aの近傍には設けられていない。クッション材22は、表皮材23と乾式目地30のインナー部41との間、およびインナー部41と基材21との間には設けられおらず、荷重を受けたクッション材22のたわみ等によって乾式目地30が浮いたり外れることを防止できる。
【0024】
基端部40の立ち上がり部43は、インナー部41とアウター部42との境界部から上方に立ち上がって設けられている。立ち上がり部43は、表皮材23の端面(側面)に、接着剤または両面テープによって固定されている。
【0025】
アウター部42は、インナー部41から壁81側に向かって延出している。
【0026】
乾式目地30の弾性部50は、基端部40の立ち上がり部43の上面に固定された固定端部53と、先端部51と、先端部51と固定端部53との間に設けられた薄肉部52とを有する。固定端部53、先端部51、および薄肉部52は一体に設けられている。
【0027】
薄肉部52の厚さは、固定端部53の厚さおよび先端部51の厚さよりも薄く、弾性部50は、薄肉部52で屈曲することができる。
【0028】
先端部51は、薄肉部52から壁81側に向かって延出している。弾性部50の自然状態において、固定端部53の上面と、先端部51における薄肉部52側の上面とは段差のないほぼフラットな面を形成する。その自然状態から、使用者の操作により、先端部51を、薄肉部52を支点にして上方に持ち上げるように移動(弾性変形)させることができる。
【0029】
その先端部51の上方に持ち上がった状態を維持する外力が解除されると、復元力により、先端部51は薄肉部52を支点にして壁81側へ向かって倒れ込むように変位する。
【0030】
先端部51における薄肉部52の近傍の下面には突起部63が設けられている。突起部63は、基端部40のアウター部42に向かって突出している。
【0031】
基端部40のアウター部42の先端は、湾曲しつつ上方に向かって突出し、ロック部62を形成する。ロック部62は、突起部63とともに、後述するロック構造を構成する。このロック構造は、乾式目地30の先端部51と壁81とが当接した状態から先端部51を壁81側から離れる方向へ変位させた際に、先端部51が壁81側へ近づく方向に戻らないようにロックする。
【0032】
アウター部42の先端には止水部64が設けられている。止水部64は、アウター部42の先端から壁81側に向かって延出している。止水部64は、基端部40および弾性部50よりも柔らかく、例えばゴムからなる。
【0033】
図4および図5は、本発明の実施形態に係る乾式目地30を用いた洗い場床20と壁81との接続方法を示す模式断面図である。
【0034】
壁81を洗い場床20に載置する前に、図4に示すように、乾式目地30を洗い場床20に取り付ける。乾式目地30の基端部40のインナー部41およびアウター部42の下面が、例えば両面テープ93によって、洗い場床20の基材21の上面に固定される。基材21の上には、クッション材22を介して表皮材23が積層され、表皮材23の外縁部側の下面は乾式目地30のインナー部41の上面に固定され、表皮材23の端面(側面)は立ち上がり部43の側面に固定される。表皮材23と乾式目地30とは、両面テープまたは接着剤により固定される。
【0035】
乾式目地30が洗い場床20に取り付けられた状態において、止水部64は、基材21の凹部21aに重なる位置に延出している。
【0036】
洗い場床20への乾式目地30の取り付けは、出荷前の工場で行うことができる。そして、乾式目地30が取り付けられた洗い場床20を施工現場に搬送して、その施工現場で洗い場床20に壁81を立て込む。
【0037】
壁81を立て込む前に、図4に示すように、乾式目地30の先端部51を、薄肉部52を支点にして上方に上げておく。なお、工場で乾式目地30を洗い場床20に取り付けた際には、先端部51は水平または水平に近い状態に倒され、その状態で洗い場床20は施工現場に搬送される。
【0038】
倒された状態の先端部51は、施工現場において、基材21の凹部21aに重ならない位置に持ち上げられる。浴室の組み立て作業者が、薄肉部52を支点にして先端部51を持ち上げる。このとき、先端部51には自然状態に戻ろうとする復元力が作用し、先端部51は壁81側に近づく方向に向かって付勢されているが、突起部63を基端部40の先端のロック部62に当接させることで、先端部51が上方に持ち上がった状態が維持される。突起部63の先端は、例えば、曲面状に形成され、丸みを帯びている。ロック部62の上面と内側の側面とが形成するコーナー部は、突起部63の先端よりも大きい曲率をもち、そのロック部62のコーナー部が突起部63の先端に押し当たる摩擦力により、突起部63の下方への移動が規制され、先端部51の壁81側への変位が規制される。
【0039】
その状態で、図5に示すように、壁81の下端部を基材21の凹部21aに挿入し、ガイドピース91に固定する。このとき、止水部64の先端部が、壁81の鋼板81aの表面に接触しつつ下方に押し込まれ、止水部64の先端部を壁81に密着させることができる。これにより、浴室空間200が、壁81よりも外側の空間と水密に遮断される。
【0040】
乾式目地30の先端部51は、基材21の凹部21aに重ならない位置まで退避しているので、壁81の凹部21aへの立て込みの邪魔にならない。自然状態から持ち上げられた先端部51は、復元力により、壁81側へ近づく方向に向かって付勢されているが、突起部63がロック部62につっかえ棒のように当接することで、先端部51は壁81側へ近づく方向に戻らないようにロックされる。
【0041】
したがって、乾式目地30の先端部51の復元力(先端部51が壁81側に近づく方向に戻ろうとする力)が強い場合であっても、先端部51は凹部21aに重ならない位置に退避しており、壁81と洗い場床20との接続作業の邪魔にならない。また、先端部51の上記復元力を適切な強さにすることで、先端部51を壁81側に戻したときに、図2および図3に示すように、先端部51が適切な押し付け力で壁81に当接し、先端部51と壁81との間に隙間を生じさせない。
【0042】
壁81を洗い場床20に立て込んだ後、突起部63とロック部62との当接によるロック状態を解除する。このロック状態の解除により、先端部51は、復元力により、薄肉部52を支点にして壁81側に向かって倒れるように変位し、図2および図3に示すように、先端部51は壁81に当接する。
【0043】
先端部51が壁81に当接した状態で先端部51にはなお自然状態に戻ろうとする復元力が働いており、先端部51は壁81に押し付けられる。そのため、先端部51を壁81に対して隙間無く密着させることができ、壁81と洗い場床20との接続部分(止水部64による止水箇所も含む)を先端部51で覆い隠すことができる。
【0044】
このように、乾式目地30は、壁81と洗い場床20との接続部分を隠す意匠部材として機能する。そして、作業者は突起部63とロック部62との当接を解除するだけで、先端部51の復元力を利用して先端部51を確実に壁81に押し当てることができ、作業者による仕上げ品質の差が生じにくい。
【0045】
図3に示すように、先端部51が壁81に当接した状態において、薄肉部52の下方に突起部63が位置し、その突起部63の先端はアウター部42に対してつっかえ棒のように当接している。これにより、例えば使用者の荷重が薄肉部52にかかっても、その荷重を突起部63も負担することができ、薄肉部52の広がりによる破損や変形を抑制することができる。
【0046】
本発明の実施形態の乾式目地30の取付構造は、浴槽10のリム11と、壁82との接続部分にも適用することができる。
【0047】
図6は、浴槽10のリム11と、壁82との接続部分の模式断面図である。
【0048】
壁82は、浴槽10のリム11の上面に載置されている。壁82は、鋼板82aと、母材(例えば石膏ボード)82bとを含み、鋼板82aの下端部は浴槽10の外縁部に向かって屈曲している。鋼板82aの下端部は、浴槽10のリム11に形成された凹部11aの底面に載置されている。
【0049】
乾式目地30は、リム11に接続されている基端部140と、弾性部50とを有する。基端部140は、例えばエラストマーからなる。弾性部50は、例えば、基端部140よりも柔らかいエラストマーからなる。
【0050】
基端部140は、立ち上がり部141と、延出部142とを有する。立ち上がり部141および延出部142は一体に設けられている。
【0051】
立ち上がり部141は、両面テープまたは接着剤によって、リム11の凹部11aの内壁および底面に固定されている。
【0052】
延出部142は、凹部11a内において、立ち上がり部141から壁82側に向かって延出している。延出部142の先端は、湾曲しつつ上方に向かって突出し、ロック部62を形成する。
【0053】
弾性部50は、基端部140の立ち上がり部141の上面に固定された固定端部53と、先端部51と、先端部51と固定端部53との間に設けられた薄肉部52とを有する。その他構成は、上記実施形態と同じである。
【0054】
延出部142の先端には止水部64が設けられている。止水部64は、延出部142の先端から壁82側に向かって延出している。止水部64は、基端部140および弾性部50よりも柔らかく、例えばゴムからなる。
【0055】
壁82をリム11に載置する前に、乾式目地30をリム11に取り付ける。その後、施工現場において壁82を立て込む前に、前述した実施形態と同様、乾式目地30の先端部51を、薄肉部52を支点にして上方に上げておく。突起部63を基端部140のロック部62に当接させることで、先端部51が上方に持ち上がった状態を維持する。
【0056】
その状態で、壁82の下端部をリム11の凹部11aに挿入し、凹部11aの底面に載置する。このとき、止水部64の先端部が、壁82の鋼板82aの表面に接触しつつ下方に押し込まれ、止水部64の先端部を壁82に密着させることができる。これにより、浴室空間200が、壁82よりも外側の空間と水密に遮断される。
【0057】
乾式目地30の先端部51は、壁82の立て込み領域に重ならない位置まで退避しているので、壁82の凹部11aへの立て込みの邪魔にならない。自然状態から持ち上げられた先端部51は、復元力により、壁82側へ近づく方向に向かって付勢されているが、突起部63がロック部62につっかえ棒のように当接することで、先端部51は壁82側へ近づく方向に戻らないようにロックされる。
【0058】
壁82をリム11に立て込んだ後、突起部63とロック部62との当接によるロック状態を解除する。このロック状態の解除により、先端部51は、復元力により、薄肉部52を支点にして壁82側に向かって倒れるように変位し、図6に示すように、先端部51は壁82に当接する。
【0059】
先端部51が壁82に当接した状態で先端部51にはなお自然状態に戻ろうとする復元力が働いており、先端部51は壁82に押し付けられる。そのため、先端部51を壁82に対して隙間無く密着させることができ、壁82とリム11との接続部分(止水部64による止水箇所も含む)を先端部51で覆い隠すことができる。
【0060】
このように、乾式目地30は、壁82とリム11との接続部分を隠す意匠部材として機能する。そして、作業者は突起部63とロック部62との当接を解除するだけで、先端部51の復元力を利用して先端部51を確実に壁82に押し当てることができ、作業者による仕上げ品質の差が生じにくい。
【0061】
先端部51が壁82に当接した状態において、薄肉部52の下方に突起部63が位置し、その突起部63の先端は延出部142に対してつっかえ棒のように当接している。これにより、例えば使用者の荷重が薄肉部52にかかっても、その荷重を突起部63も負担することができ、薄肉部52の広がりによる破損や変形を抑制することができる。
【0062】
本発明の実施形態の乾式目地30の取付構造は、壁81、82と、天井83との接続部分にも適用することができる。
【0063】
図7は、壁81、82と、天井83との接続部分の模式断面図である。天井83には凹部83aが形成され、その凹部83a内に、壁81、82の鋼板81a、82aの上端部が挿入されている。凹部83aは下方に向けて開口しており、凹部83aの底面に相当する部分が図7においては上面となっている。その凹部83aの底面が、壁81、82の鋼板81a、82aの上端部の上に載置されている。
【0064】
図6の乾式目地30と同じ構成の乾式目地30が、図6とは上下が逆さまの状態で、天井83と、壁81、82との接続部に設けられている。
【0065】
壁81、82に天井83を載置する前に、乾式目地30を天井83に取り付ける。乾式目地30の基端部140が、天井83の凹部83aの側面及び底面に、両面テープまたは接着剤により固定される。
【0066】
その後、施工現場において、乾式目地30の先端部51を、薄肉部52を支点にして、壁81、82から離れる方向(図7において右方)に変位させる。そして、突起部63を基端部140のロック部62に当接させることで、先端部51が壁81、82から離れた状態を維持する。
【0067】
その状態で、壁81、82の鋼板81a、82aの上端部が天井83の凹部83aに挿入されるように、天井83を壁81、82の上に載置する。このとき、止水部64の先端部が、壁81、82の鋼板81a、82aの表面に接触しつつ上方に押し込まれ、止水部64の先端部を壁81、82に密着させることができる。これにより、浴室空間200が、壁81、82よりも外側の空間と水密に遮断される。
【0068】
乾式目地30の先端部51は、壁81、82と天井83との接続に邪魔にならない位置まで退避している。その退避位置にある先端部51は、復元力により、壁81、82側へ近づく方向に向かって付勢されているが、突起部63がロック部62につっかえ棒のように当接することで、先端部51は壁81、82側へ近づく方向に戻らないようにロックされる。
【0069】
天井83を壁81、82に載置した後、突起部63とロック部62との当接によるロック状態を解除する。このロック状態の解除により、先端部51は、復元力により、薄肉部52を支点にして壁81、82側に向かって変位し、図7に示すように、先端部51は壁81、82に当接する。
【0070】
先端部51が壁81、82に当接した状態で先端部51にはなお自然状態に戻ろうとする復元力が働いており、先端部51は壁81、82に押し付けられる。そのため、先端部51を壁81、82に対して隙間無く密着させることができ、壁81、82と天井83との接続部分を先端部51で覆い隠すことができる。
【0071】
このように、乾式目地30は、壁81、82と天井83との接続部分を隠す意匠部材として機能する。そして、作業者は突起部63とロック部62との当接を解除するだけで、先端部51の復元力を利用して先端部51を確実に壁81、82に押し当てることができ、作業者による仕上げ品質の差が生じにくい。
【0072】
洗い場床20に載置される壁81は、基材21に形成された凹部21aの底面上に載置されることに限らず、図8に示すように、基材21の上面に載置されてもよい。
【0073】
壁81と基材21との接続部に、例えばシリコーン等のコーキング材94が形成される。乾式目地30の先端部51は、壁81と基材21との接続部(コーキング材94も含む)を覆い隠しつつ、壁81に当接する。
【0074】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、それらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0075】
10…浴槽、11…リム、20…洗い場床、21…基材、22…クッション材、23…表皮材、30…乾式目地、40,140…基端部、50…弾性部、51…先端部、62…ロック部、63…突起部、64…止水部、81,82…壁、83…天井、100…浴室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8