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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】蓄電モジュールの検査方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20220426BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20220426BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20220426BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01G13/00 361Z
H01M50/184 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018161737
(22)【出願日】2018-08-30
(65)【公開番号】P2020035664
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-02-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】神谷 友規
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-170265(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103542989(CN,A)
【文献】特開平02-297870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01G 13/00
H01M 50/184
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極が積層された電極積層体と、前記電極積層体の側面を囲み、隣り合う電極間に複数の内部空間を形成すると共に当該内部空間を封止する封止体とを備える蓄電モジュールを検査する検査方法であって、
前記電極積層体の積層方向に沿って並ぶ複数の前記内部空間のうち、前記積層方向の一端側から数えて奇数番目、又は偶数番目に該当する第1の組の前記内部空間の内圧を一度に変化させる第1工程と、
前記第1工程において内圧を変化させなかった第2の組の前記内部空間に対し、内圧の変化の有無を検出する第2工程と、を含む、蓄電モジュールの検査方法。
【請求項2】
前記第1工程において、前記第1の組の内部空間を減圧し、
前記第2工程において内圧が減少した内部空間が検出された場合に、当該内部空間と、当該内部空間に隣接する内部空間との間の封止体に異常があると判断する第3工程を更に含む、請求項1に記載の蓄電モジュールの検査方法。
【請求項3】
前記第1工程において、前記第1の組の内部空間を加圧し、
前記第2工程において内圧が増加した内部空間が検出された場合に、当該内部空間と、当該内部空間に隣接する内部空間との間の封止体に異常があると判断する第3工程を更に含む、請求項1に記載の蓄電モジュールの検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電モジュールの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄電モジュールとして、電極板の一方面に正極が形成され、他方面に負極が形成されたバイポーラ電極を備えたバイポーラ電池が知られている(例えば特許文献1参照)。バイポーラ電池は、セパレータを介して複数のバイポーラ電極を積層してなる電極積層体を備えている。積層体には、例えば樹脂製の封止体が設けられ、バイポーラ電極の積層によって形成される側面において電極板の縁部が保持されるようになっている。これにより、バイポーラ電極間には、電解液を収容する複数の内部空間が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-151016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の蓄電モジュールでは、隣り合う内部空間同士での電解液の移動を防止するために、それぞれの内部空間の封止性が確保されている必要がある。このため、蓄電モジュールに対し、各内部空間の封止性の検査を行う必要がある。
【0005】
内部空間の封止性を検査する方法として、例えば、一の内部空間を加圧又は減圧し、当該一の内部空間に隣り合う他の内部空間における内圧の変化の有無を判断する手法が挙げられる。しかしながら、この手法を全ての内部空間に対して実施しようとすると、検査に時間を要するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、内部空間の封止性の検査を簡便且つ迅速に実施できる蓄電モジュールの検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールの検査方法は、電極が積層された電極積層体と、電極積層体の側面を囲み、隣り合う電極間に複数の内部空間を形成すると共に当該内部空間を封止する封止体とを備える蓄電モジュールを検査する検査方法であって、電極積層体の積層方向に沿って並ぶ複数の内部空間のうち、積層方向の一端側から数えて奇数番目、又は偶数番目に該当する第1の組の内部空間の内圧を一度に変化させる第1工程と、第1工程において内圧を変化させなかった第2の組の内部空間に対し、内圧の変化の有無を検出する第2工程と、を含む。
【0008】
この蓄電モジュールの検査方法の第1工程では、積層方向の一端側から数えて奇数番目、又は偶数番目に該当する第1の組の内部空間の内圧を一度に変化させる。そして、第2工程において、第1工程で内圧を変化させなかった第2の組の内部空間に対し、内圧の変化の有無を検出する。この方法によれば、第1の組の内部空間と第2の組の内部空間とは交互に配置されるので、仮に隣り合う内部空間の間の封止性に異常がある場合には、異常がある内部空間に隣接する第2の組の内部空間の内圧が変化することとなる。したがって、この蓄電モジュールの検査方法では、一度の圧力変化によって全ての内部空間に対する封止性を検査することができるので、内部空間の封止性の検査を簡便且つ迅速に実施できる。
【0009】
蓄電モジュールの検査方法では、第1工程において、第1の組の内部空間を減圧してもよく、蓄電モジュールの検査方法は、第2工程において内圧が減少した内部空間が検出された場合に、当該内部空間と当該内部空間に隣接する内部空間との間の封止体に異常があると判断する第3工程を更に含んでもよい。この構成によれば、第3工程によって内部空間の封止性が確保されていない箇所を判断することが可能である。
【0010】
蓄電モジュールの検査方法では、第1工程において、第1の組の内部空間を加圧してもよく、蓄電モジュールの検査方法は、第2工程において内圧が増加した内部空間が検出された場合に、当該内部空間と当該内部空間に隣接する内部空間との間の封止体に異常があると判断する第3工程を更に含んでもよい。この構成によれば、第3工程によって内部空間の封止性が確保されていない箇所を判断することが可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、内部空間の封止性の検査を簡便且つ迅速に実施できる蓄電モジュールの検査方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る蓄電モジュールを備えて構成される蓄電装置を示す概略断面図である。
図2】蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
図3】蓄電モジュールの全体形状を示す斜視図である。
図4】封止体に設けられた注入口の構成を示す概略図である。
図5】蓄電モジュールの製造工程の一例を示すフローチャートである。
図6】検査工程で用いられる検査装置の構成を概略的に示す図である。
図7】検査工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、蓄電装置の一実施形態を示す概略断面図である。図1に示される蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置1は、積層された複数の蓄電モジュール4を含むモジュール積層体2と、モジュール積層体2に対してモジュール積層体2の積層方向に拘束荷重を付加する拘束部材3とを備えている。
【0015】
モジュール積層体2は、複数(ここでは3つ)の蓄電モジュール4と、複数(ここでは4つ)の導電板5とを含む。蓄電モジュール4は、バイポーラ電池であり、積層方向から見て矩形状をなしている。蓄電モジュール4は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタである。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0016】
積層方向に互いに隣り合う蓄電モジュール4同士は、導電板5を介して電気的に接続されている。導電板5は、積層方向に互いに隣り合う蓄電モジュール4間と、積層端に位置する蓄電モジュール4の外側とにそれぞれ配置されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された一方の導電板5には、正極端子6が接続されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された他方の導電板5には、負極端子7が接続されている。正極端子6及び負極端子7は、例えば導電板5の縁部から積層方向に交差する方向に引き出されている。正極端子6及び負極端子7により、蓄電装置1の充放電が実施される。
【0017】
導電板5の内部には、空気等の冷媒を流通させる複数の流路5aが設けられている。流路5aは、例えば積層方向と、正極端子6及び負極端子7の引き出し方向と、にそれぞれ交差(直交)する方向に沿って延在している。導電板5は、蓄電モジュール4同士を電気的に接続する接続部材としての機能のほか、これらの流路5aに冷媒を流通させることにより、蓄電モジュール4で発生した熱を放熱する放熱板としての機能を併せ持っている。なお、図1の例では、積層方向から見た導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積よりも小さくなっているが、放熱性の向上の観点から、導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積と同じであってもよく、蓄電モジュール4の面積よりも大きくなっていてもよい。
【0018】
拘束部材3は、モジュール積層体2を積層方向に挟む一対のエンドプレート8と、エンドプレート8同士を締結する締結ボルト9及びナット10とによって構成されている。エンドプレート8は、積層方向から見た蓄電モジュール4及び導電板5の面積よりも一回り大きい面積を有する矩形の金属板である。エンドプレート8におけるモジュール積層体2側の面には、電気絶縁性を有するフィルムFが設けられている。フィルムFにより、エンドプレート8と導電板5との間が絶縁されている。
【0019】
エンドプレート8の縁部には、モジュール積層体2よりも外側となる位置に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト9は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって通され、他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト9の先端部分には、ナット10が螺合されている。これにより、蓄電モジュール4及び導電板5がエンドプレート8によって挟持されてモジュール積層体2としてユニット化されると共に、モジュール積層体2に対して積層方向に拘束荷重が付加される。
【0020】
次に、蓄電モジュール4の構成について詳細に説明する。図2は、図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。図2に示されるように、蓄電モジュール4は、電極積層体11と、電極積層体11を封止する樹脂製の封止体12とを備えている。電極積層体11は、セパレータ13を介して蓄電モジュール4の積層方向Dに沿って積層された複数の電極によって構成されている。これらの電極は、複数のバイポーラ電極14の積層体と、負極終端電極18と、正極終端電極19とを含む。
【0021】
バイポーラ電極14は、一方面15a及び一方面15aの反対側の他方面15bを含む電極板15と、一方面15aに設けられた正極16と、他方面15bに設けられた負極17とを有している。正極16は、正極活物質が電極板15に塗工されることにより形成される正極活物質層である。負極17は、負極活物質が電極板15に塗工されることにより形成される負極活物質層である。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の正極16は、セパレータ13を挟んで積層方向Dの一方に隣り合う別のバイポーラ電極14の負極17と対向している。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の負極17は、セパレータ13を挟んで積層方向Dの他方に隣り合う別のバイポーラ電極14の正極16と対向している。
【0022】
負極終端電極18は、電極板15と、電極板15の他方面15bに設けられた負極17とを有している。負極終端電極18は、他方面15bが電極積層体11における積層方向Dの中央側を向くように、積層方向Dの一端に配置されている。負極終端電極18の電極板15の一方面15aは、電極積層体11の積層方向における一方の外側面を構成し、蓄電モジュール4に隣接する一方の導電板5(図1参照)と電気的に接続されている。負極終端電極18の電極板15の他方面15bに設けられた負極17は、セパレータ13を介して、積層方向Dの一端のバイポーラ電極14の正極16と対向している。
【0023】
正極終端電極19は、電極板15と、電極板15の一方面15aに設けられた正極16とを有している。正極終端電極19は、一方面15aが電極積層体11における積層方向Dの中央側を向くように、積層方向Dの他端に配置されている。正極終端電極19の一方面15aに設けられた正極16は、セパレータ13を介して、積層方向Dの他端のバイポーラ電極14の負極17と対向している。正極終端電極19の電極板15の他方面15bは、電極積層体11の積層方向における他方の外側面を構成し、蓄電モジュール4に隣接する他方の導電板5(図1参照)と電気的に接続されている。
【0024】
電極板15は、例えば、ニッケル又はニッケルメッキ鋼板といった金属からなる。一例として、電極板15は、ニッケルからなる矩形の金属箔である。電極板15の縁部15cは、矩形枠状をなし、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。正極16を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極17を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。本実施形態では、電極板15の他方面15bにおける負極17の形成領域は、電極板15の一方面15aにおける正極16の形成領域に対して一回り大きくなっている。
【0025】
セパレータ13は、例えばシート状に形成されている。セパレータ13としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されたものであってもよい。なお、セパレータ13は、シート状に限られず、袋状のものを用いてもよい。
【0026】
封止体12は、例えば絶縁性の樹脂によって、全体として矩形の筒状に形成されている。封止体12は、電極板15の縁部15cを包囲するように電極積層体11の側面11aに設けられている。封止体12は、側面11aにおいて縁部15cを保持している。封止体12は、電極板15の縁部15cに結合された複数の第1封止部21と、側面11aに沿って第1封止部21を外側から包囲し、第1封止部21のそれぞれに結合された第2封止部22とを有している。第1封止部21及び第2封止部22は、例えば、耐アルカリ性を有する絶縁性の樹脂である。第1封止部21及び第2封止部22の構成材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)などが挙げられる。
【0027】
第1封止部21は、電極板15の一方面15aにおいて縁部15cの全周にわたって連続的に設けられ、積層方向Dから見て矩形枠状をなしている。本実施形態では、バイポーラ電極14の電極板15のみならず、負極終端電極18の電極板15及び正極終端電極19の電極板15に対しても第1封止部21が設けられている。負極終端電極18では、電極板15の一方面15aの縁部15cに第1封止部21が設けられ、正極終端電極19では、電極板15の一方面15a及び他方面15bの双方の縁部15cに第1封止部21が設けられている。
【0028】
第1封止部21は、例えば超音波又は熱によって電極板15の一方面15aに溶着され、気密に接合されている。第1封止部21は、例えば積層方向Dに所定の厚さを有するフィルムである。第1封止部21の内側は、積層方向Dに互いに隣り合う電極板15の縁部15c同士の間に位置している。第1封止部21の外側は、電極板15の縁よりも外側に張り出しており、その先端部分は、第2封止部22に埋設されている。積層方向Dに沿って互いに隣り合う第1封止部21同士は、互いに離間していてもよく、接していてもよい。また、第1封止部21の外縁部分同士は、例えば熱板溶着などによって互いに結合していてもよい。
【0029】
電極板15と第1封止部21とが重なる領域は、電極板15と第1封止部21との結合領域Kとなっている。結合領域Kにおいて、電極板15の表面は、粗面化されている。粗面化された領域は、結合領域Kのみでもよいが、本実施形態では電極板15の面全体が粗面化されている。粗面化は、例えば電解メッキによる複数の突起の形成により実現し得る。複数の突起が形成されることにより、電極板15と第1封止部21との接合界面では、溶融状態の樹脂が粗面化により形成された複数の突起間に入り込み、アンカー効果が発揮される。これにより、電極板15と第1封止部21との間の結合強度を向上させることができる。粗面化の際に形成される突起は、例えば基端側から先端側に向かって先太りとなる形状を有している。これにより、隣り合う突起の間の断面形状がアンダーカット形状となり、アンカー効果を高めることが可能となる。
【0030】
第2封止部22は、電極積層体11及び第1封止部21の外側に設けられ、蓄電モジュール4の外壁(筐体)を構成している。第2封止部22は、例えば樹脂の射出成型によって形成され、積層方向Dに沿って電極積層体11の全長にわたって延在している。第2封止部22は、積層方向Dを軸方向として延在する矩形の枠状を呈している。第2封止部22は、例えば射出成型時の熱によって第1封止部21の外表面に溶着されている。
【0031】
第1封止部21及び第2封止部22は、隣り合う電極の間に内部空間Vを形成すると共に内部空間Vを封止する。より具体的には、第2封止部22は、第1封止部21と共に、積層方向Dに沿って互いに隣り合うバイポーラ電極14の間、積層方向Dに沿って互いに隣り合う負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び積層方向Dに沿って互いに隣り合う正極終端電極19とバイポーラ電極14との間をそれぞれ封止している。これにより、隣り合うバイポーラ電極14の間、負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び正極終端電極19とバイポーラ電極14との間には、それぞれ気密に仕切られた内部空間Vが形成されている。この内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液を含む電解液(不図示)が収容されている。電解液は、セパレータ13、正極16、及び負極17内に含浸されている。
【0032】
図3に示すように、蓄電モジュール4の封止体12は、積層方向Dに沿って延在する側面12aを有している。側面12aには、内部空間Vに電解液を注入するための注入口50が設けられている。注入口50は、電解液の注入後には、シール材などによって封止される。注入口50の位置は、側面12aの中央であってもよく、中央からずれた位置であってもよい。
【0033】
図4に示すように、注入口50は、第1封止部21に設けられた第1開口50aと、第2封止部22に設けられた第2開口50bとによって構成されている。第1開口50aは、内部空間V(図2参照)のそれぞれに連通するように第1封止部21に複数設けられている。第2開口50bは、複数の第1開口50aと連通するように第2封止部22に単一に設けられている。本実施形態では、第1開口50aの形状は、円形であり、第2開口50bの形状は、矩形となっている。
【0034】
続いて、上述した蓄電モジュール4の製造方法について説明する。
【0035】
図5は、蓄電モジュールの製造工程の一例を示すフローチャートである。図5に示されるように、蓄電モジュール4の製造工程は、積層工程(S01)と、封止体形成工程(S02)と、検査工程(S03)と、注入工程(S04)と、組立工程(S05)と、を含んでいる。
【0036】
積層工程S01では、セパレータ13を介してバイポーラ電極14を積層し、積層体を得る。また、バイポーラ電極14の積層体の積層端に負極終端電極18及び正極終端電極19を更に積層することにより、電極積層体11を得る。積層にあたり、バイポーラ電極14、負極終端電極18、及び正極終端電極19のそれぞれの電極板15の縁部15cには、矩形枠状の第1封止部21を溶着等によって結合しておくことが好適である。
【0037】
封止体形成工程S02では、例えば射出成形によって電極積層体11に対して第2封止部22を形成し、封止体12を形成する。具体的には、積層工程で得られた電極積層体11を金型内に配置し、流動性を有する第2封止部22の樹脂材料を金型内に流し込むことによって、電極積層体11の側面に第2封止部22を形成する。第2封止部22によって電極積層体11の第1封止部21同士を結合し、封止体12を得る。
【0038】
検査工程S03では、封止体形成工程S02で形成された封止体12によって、それぞれの内部空間Vにおいて封止性(すなわち、気密性及び液密性)が確保されているか検査する。検査工程S03では、後述する検査装置60を用いて、封止体12の側面12aに設けられた注入口50を介して内部空間Vの内圧を変化させることによって、内部空間Vの封止性の検査が行われる。検査工程S03の具体的な方法については後述する。
【0039】
注入工程S03では、検査工程S03で異常がないと判断された電極積層体11の内部空間Vのそれぞれに電解液の注入を行う。ここでは、電解液注入装置等を用いて、封止体12の側面12aに設けられた注入口50を介して内部空間Vへの電解液の注入を実施する。電解液の注入後、注入口50をシール材等によって封止し、蓄電モジュール4を得る。なお、シール材に代えて、注入口50に圧力調整弁等を設けてもよい。
【0040】
組立工程S05では、まず、導電板5を介して複数の蓄電モジュール4を積層する。このとき、積層方向の一方側に配置する導電板5には正極端子6を予め接続し、他方側に配置する導電板5には負極端子7を予め接続しておくことが好適である。次に、電気絶縁性を有するフィルムFを介して蓄電モジュール4の積層方向の両端に一対のエンドプレート8,8を配置する。そして、エンドプレート8の挿通孔8aに締結ボルト9を挿通させると共に、エンドプレート8から突出した締結ボルト9の先端にナット10を螺合する。これにより、複数の蓄電モジュール4をユニット化し、蓄電装置1を得る。
【0041】
続いて、上述した検査工程S03で用いられる検査装置60について説明する。図6は、検査工程で用いられる検査装置の構成を概略的に示す図である。図6に示されるように、検査装置60は、複数の検査ユニット61と、複数の検査ユニット61を制御する制御部(不図示)とを備えている。検査ユニット61は、電極積層体11の内部空間Vの数に対応して設けられている。本実施形態では、電極積層体11における内部空間Vの数(セル数)が24であり、検査装置60に設けられた検査ユニット61の数も24となっている。それぞれの検査ユニット61は、内部空間Vの内圧を変化させるためのポンプ62と、内部空間Vの内圧の変化を検出するための圧力計63と、ポンプ62と内部空間Vとを接続するチューブ64とを有している。チューブ64は、電極積層体11の封止体12に設けられた注入口50を介して内部空間Vに接続されている。圧力計63は、チューブ64の途中に接続されている。制御部は、検査ユニット61と通信可能に接続されており、各検査ユニット61のポンプ62を個別に制御可能に構成されている。このような構成により、検査装置60では、ポンプ62によって各内部空間Vの内圧を個別に変化させると共に、各内部空間Vにおける内圧の変化を圧力計63によって検出可能となっている。
【0042】
次に、図6及び図7を参照して、検査工程S03について更に詳細に説明する。図7は、検査工程の一例を示すフローチャートである。
【0043】
図7に示されるように、検査工程S03では、まず、電極積層体11に検査装置60を接続する(工程S11)。このとき、検査ユニット61のチューブ64を注入口50に挿入して、各内部空間Vと各検査ユニット61とを接続する。次に、電極積層体11の積層方向Dに沿って並ぶ複数の内部空間Vのうち、積層方向Dの一端側から数えて奇数番目、又は偶数番目に該当する第1の組の内部空間Vの内圧を一度に変化させる(第1工程S12)。本実施形態では、積層方向Dの一端側から数えて奇数番目に該当する内部空間を第1の組の内部空間V1とし、偶数番目に該当する内部空間を、後述の第2の組の内部空間V2とする場合について説明する。第1工程S12では、検査装置60の制御部により、第1の組の内部空間V1に接続された検査ユニット61のみを制御し、第1の組の内部空間V1の内圧を一度に減圧する。次に、第1工程12において内圧を変化させなかった(減圧しなかった)第2の組の内部空間V2(すなわち、偶数番目に該当する内部空間V)に対し、圧力計63を用いて内圧の変化の有無を検出する(第2工程S13)。次に、第2工程S13の結果に基づいて、封止体12の異常の有無を判断する(第3工程S14)。第3工程S14では、第2工程S13の結果、第2の組の内部空間V2の何れにおいても内圧の変化が検出されなかった場合、それぞれの内部空間Vの封止性が確保されており、封止体12に異常がないと判断する。第2工程S13の結果、第2の組の内部空間V2のうち、何れかの内部空間V2において内圧の減少が検出された場合、内圧の減少が検出された内部空間V2と、この内部空間V2に隣接する一方又は両方の内部空間V1との間の封止体12に異常があると判断する。
【0044】
以上説明したように、蓄電モジュール4の検査方法の第1工程S12では、積層方向Dの一端側から数えて奇数番目に該当する第1の組の内部空間V1の内圧を一度に変化させる。そして、第2工程S13において、第1工程S12で内圧を変化させなかった第2の組の内部空間V2(偶数番目に該当する内部空間V)に対し、内圧の変化の有無を検出する。蓄電モジュール4では、封止体12によってそれぞれの内部空間Vが封止されるが、封止体12を構成する複数の第1封止部21同士の溶着不良等により、隣り合う内部空間Vの間で封止性が確保できない場合がある。上記の検査方法によれば、第1の組の内部空間V1と第2の組の内部空間V2とは交互に配置されるので、仮に隣り合う内部空間Vの間の封止性に異常がある場合には、異常がある内部空間Vに隣接する第2の組の内部空間V2の内圧が変化することとなる。したがって、この蓄電モジュール4の検査方法では、一度の圧力変化によって全ての内部空間Vに対する封止性を検査することができるので、内部空間Vの封止性の検査を簡便且つ迅速に実施できる。
【0045】
また、上記の蓄電モジュールの検査方法では、第1工程S12において、第1の組の内部空間V1を減圧する。また、この蓄電モジュールの検査方法は、第2工程S13において内圧が減少した第2の組の内部空間V2が検出された場合に、当該第2の組の内部空間V2と当該内部空間V2に隣接する第1の組の内部空間V1との間の封止体12に異常があると判断する第3工程S14を更に含んでいる。これにより、第3工程S14によって内部空間Vの封止性が確保されていない箇所を判断することが可能である。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。例えば、上記の実施形態では、第1工程S12において第1の組の内部空間V1に対して減圧する例について説明したが、第1工程S12において第1の組の内部空間V1に対して加圧してもよい。この場合、第3工程S14では、何れかの内部空間V2において内圧の増加が検出された場合、内圧の増加が検出された内部空間V2と、この内部空間V2に隣接する一方又は両方の内部空間V1との間の封止体12に異常があると判断する。
【0047】
また、上記の実施形態では、第1工程S12において第1の組の内部空間V1の内圧を変化させ、第2工程S13において第2の組の内部空間V2の内圧の変化を検出する例について説明したが、第1工程S12において第2の組の内部空間V2の内圧を変化させ、第2工程S13において第1の組の内部空間V1の内圧の変化を検出してもよい。
【0048】
また、上記の実施形態では、検査装置60の全ての検査ユニット61がポンプ62を有する例について説明したが、第1工程S12において内圧を変化させない内部空間V(すなわち、上記の実施形態における第2の組の内部空間V2)に接続される検査ユニット61は、ポンプ62を有していなくてもよい。
【符号の説明】
【0049】
4…蓄電モジュール、11…電極積層体、12…封止体、14…バイポーラ電極、60…検査装置、S12…第1工程、S13…第2工程、S14…第3工程、V…内部空間、V1…第1の組の内部空間、V2…第2の組の内部空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7