(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】放射線画像撮影システム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20220426BHJP
【FI】
A61B6/00 350M
A61B6/00 300S
A61B6/00 333
(21)【出願番号】P 2018162273
(22)【出願日】2018-08-31
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小枝 敬輔
【審査官】井上 香緒梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-224004(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0358330(US,A1)
【文献】特開2009-078035(JP,A)
【文献】特開2014-108284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
H04N 5/30-5/378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元状に配列された複数の放射線検出素子と、
前記放射線検出素子に電荷の蓄積及び放出を行わせ、放出された電荷を読み出すことで、画像の取得を行う画像取得回路と、
を備える放射線画像撮影システムであって、
前記画像取得回路を制御して、少なくともビニング数を異ならせて複数の放射線画像を連続的に取得する放射線画像取得手段と、
前記画像取得回路を制御して、画像取得前の前記放射線検出素子のリセット時のビニング数及び画像取得時のビニング数を一連の前記複数の放射線画像の取得時のものと一致させて前記複数の放射線画像のそれぞれに対応する前記複数のオフセット画像を取得するオフセット画像取得手段と、
前記複数の放射線画像のそれぞれに対応する前記オフセット画像を用いて前記複数の放射線画像にオフセット補正を施す補正手段と、
を備える放射線画像撮影システム。
【請求項2】
前記オフセット画像取得手段は、さらに、前記放射線検出素子の電荷蓄積時間を一連の前記複数の放射線画像のそれぞれの取得時のものと一致させて前記複数の放射線画像のそれぞれに対応する前記複数のオフセット画像を取得する、請求項1に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項3】
前記画像取得回路は、オン状態となることで前記放射線検出素子から電荷を放出させるスイッチ手段を備え、
前記オフセット画像取得手段は、さらに、リセット走査周期、前記リセット走査周期における前記スイッチ手段のオン時間、読み出し走査周期、前記読み出し走査周期における前記スイッチ手段のオン時間のうち少なくとも一つ以上を一連の前記複数の放射線画像の取得時のものと一致させて前記複数の放射線画像のそれぞれに対応する前記複数のオフセット画像を取得する、請求項1又は2に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項4】
前記放射線検出素子に対して異なる管電圧で複数回放射線を照射する放射線照射装置を備え、
前記放射線画像取得手段は、異なる管電圧で照射された放射線で前記複数の放射線画像を取得する、請求項1~3のいずれか一項に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項5】
前記放射線画像取得手段は、前記画像取得回路を制御して、異なる管電圧で照射された放射線のうち低い管電圧で照射された放射線での撮影における読み出しを、高い管電圧で照射された放射線での撮影における読み出しより大きいビニング数で行う、請求項4に記載の放射線画像撮影システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
照射された放射線の線量に応じて放射線検出素子で電荷を発生させ、発生した電荷を画像データとして読み出す放射線検出器(FPD:(Flat Panel Detector))を備えた放射線画像撮影装置が種々開発されている。
【0003】
このような放射線画像撮影装置においては、放射線が照射されない状態でも、放射線検出素子の熱による熱励起等により各放射線検出素子内で暗電荷が発生し、放射線検出素子内に蓄積される電荷にこの暗電荷によるオフセット分が含まれる。そのため、高画質の放射線画像を取得するために、通常、放射線を照射せずに暗電荷によるオフセット分のデータ(以下「オフセット画像」という。)を各放射線検出素子から読み出すオフセット画像取得処理が、放射線の照射により発生した電荷を各放射線検出素子に蓄積して読み出すことにより放射線画像を取得する放射線画像取得処理の前又は後に行われる。そして、放射線画像取得処理により取得した放射線画像からオフセット画像を引くことで、放射線画像から暗電荷によるオフセット分を除去するオフセット補正が行われる。
【0004】
ところで、エネルギー分布の異なる放射線を被写体に連続的に照射して、上述の放射線画像撮影装置を用いて複数枚の放射線画像を取得してエネルギーサブトラクション処理を行う場合、各放射線画像に対応するオフセット画像を取得する必要がある。
【0005】
例えば、特許文献1には、時間t1にわたって第一のX線エネルギレベルで放射線検出器を照射して放射線検出器で読み取りを行うことで第一の照射読み取り値を取得し、時間t2にわたって第二のX線エネルギレベルで放射線検出器を照射して放射線検出器の読み取りを行うことで第二の照射読み取り値を取得し、リセット後、t1に等しい時間の後に第一の照射読み取り値に対応する第一のオフセット読み取り値を得るために放射線検出器の読み取りを行い、t2に等しい時間の後に第二の照射読み取り値に対応する第二のオフセット読み取り値を得るために放射線検出器の読み取りを行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
エネルギーサブトラクション処理において、画像容量と処理時間を抑えつつ高精細な画像を取得するためには、放射線画像撮影装置において、低管電圧で被写体に放射線を照射した撮影で蓄積された電荷の読み出しを、高管電圧で被写体に放射線を照射した撮影で蓄積された電荷の読み出しより大きいビニング数で行うことが考えられる。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ビニング数を異ならせて複数枚の放射線画像を連続的に取得した場合のオフセット画像の取得について考慮されておらず、オフセット補正された放射線画像にアーチファクトが発生してしまう可能性があった。
【0009】
本発明の課題は、ビニング数を異ならせて複数の放射線画像を取得した場合の、オフセット補正によるアーチファクトの発生を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
二次元状に配列された複数の放射線検出素子と、
前記放射線検出素子に電荷の蓄積及び放出を行わせ、放出された電荷を読み出すことで、画像の取得を行う画像取得回路と、
を備える放射線画像撮影システムであって、
前記画像取得回路を制御して、少なくともビニング数を異ならせて複数の放射線画像を連続的に取得する放射線画像取得手段と、
前記画像取得回路を制御して、画像取得前の前記放射線検出素子のリセット時のビニング数及び画像取得時のビニング数を一連の前記複数の放射線画像の取得時のものと一致させて前記複数の放射線画像のそれぞれに対応する前記複数のオフセット画像を取得するオフセット画像取得手段と、
前記複数の放射線画像のそれぞれに対応する前記オフセット画像を用いて前記複数の放射線画像にオフセット補正を施す補正手段と、
を備える。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記オフセット画像取得手段は、さらに、前記放射線検出素子の電荷蓄積時間を一連の前記複数の放射線画像のそれぞれの取得時のものと一致させて前記複数の放射線画像のそれぞれに対応する前記複数のオフセット画像を取得する。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、
前記画像取得回路は、オン状態となることで前記放射線検出素子から電荷を放出させるスイッチ手段を備え、
前記オフセット画像取得手段は、さらに、リセット走査周期、前記リセット走査周期における前記スイッチ手段のオン時間、読み出し走査周期、前記読み出し走査周期における前記スイッチ手段のオン時間のうち少なくとも一つ以上を一連の前記複数の放射線画像の取得時のものと一致させて前記複数の放射線画像のそれぞれに対応する前記複数のオフセット画像を取得する。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載の発明において、
前記放射線検出素子に対して異なる管電圧で複数回放射線を照射する放射線照射装置を備え、
前記放射線画像取得手段は、異なる管電圧で照射された放射線で前記複数の放射線画像を取得する。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、
前記放射線画像取得手段は、前記画像取得回路を制御して、異なる管電圧で照射された放射線のうち低い管電圧で照射された放射線での撮影における読み出しを、高い管電圧で照射された放射線での撮影における読み出しより大きいビニング数で行う。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ビニング数を異ならせて複数の放射線画像を取得した場合の、オフセット補正によるアーチファクトの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態にかかる放射線画像撮影システムの全体構成を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る放射線画像撮影装置を示す斜視図である。
【
図4】放射線画像撮影装置の基板の構成を示す平面図である。
【
図5】
図4の基板上の小領域に形成された放射線検出素子とTFT等の構成を示す拡大図である。
【
図6】放射線画像撮影装置の等価回路を表すブロック図である。
【
図7】検出部を構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【
図8】第1の実施形態における撮影開始指示後の放射線画像撮影装置1における画像取得シーケンスを模式的に示す図である。
【
図9】第2の実施形態における撮影開始指示後の放射線画像撮影装置1における画像取得シーケンスを模式的に示す図である。
【
図10】(a)は、第2の実施形態における第1画像、第2画像、第1オフセット画像における被写体信号及びラグを模式的に示す図、(b)は、第1画像から第1オフセット画像を引いた補正後の第1画像を模式的に示す図である。
【
図11】オフセット画像取得前にリセットを継続している場合における、第2画像取得時点からの経過時間tと、オフセット画像に生じるラグの倍率α(第2画像の何倍のラグが残っているかを示す値)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
なお、以下では、放射線画像撮影装置が、シンチレータ等を備え、照射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置である場合について説明するが、本発明は、直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することが可能である。また、放射線画像撮影装置が可搬型である場合について説明するが、支持台等と一体的に形成された放射線画像撮影装置に対しても適用される。
【0019】
[放射線画像撮影システム]
図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50の全体構成を示す図である。
放射線画像撮影システム50は、例えば、
図1に示すように、放射線を照射して図示しない患者の身体の一部である被写体(患者の撮影対象部位)の撮影を行う撮影室R1と、当該撮影室R1に隣接し、放射線技師等の操作者(ユーザー)が被写体への放射線の照射開始の制御等の種々の操作を行う前室R2と、それらの外部とに配置される。
【0020】
具体的には、放射線画像撮影システム50は、
図1に示すように、放射線画像取得処理を行う放射線画像撮影装置1や、放射線画像撮影装置1により取得された放射線画像の画像データに対して画像処理等を施すコンソール58、放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射する放射線発生装置55等を備えて構成される。
【0021】
撮影室R1には、例えば、放射線画像撮影装置1を装填可能なブッキー装置51と、被写体に照射する放射線を発生させるX線管球(図示省略)を備えた放射線源52やそれをコントロールする放射線発生装置55を有する放射線照射装置と、無線アンテナ53を備え、放射線画像撮影装置1とコンソール58や放射線発生装置55等の他の装置との間の通信を中継する中継器54とが設けられている。
【0022】
なお、
図1では、可搬型の放射線画像撮影装置1を、ブッキー装置51のカセッテ保持部51aに装填して用いる場合と、ブッキー装置51に装填されない単独の状態で用いる場合、具体的には臥位撮影用のブッキー装置51Bの上面側に配置してその放射線入射面R(
図2参照)上に被写体である患者の手等を載置して用いる場合等とが示されているが、放射線画像撮影装置1はブッキー装置51や支持台等と一体的に形成されたものであってもよい。
ここで、可搬型の放射線画像撮影装置1をブッキー装置51に装填されない単独の状態で用いる場合、臥位撮影用のブッキー装置51Bの上面側に配置してその放射線入射面R(
図2参照)上に被写体である患者の手等を載置して用いる他に、例えば撮影室R1内に設けられたベッド等の上面側に配置してその放射線入射面R(
図2参照)上に被写体である患者の手等を載置したり、或いは、例えばベッドの上に横臥した患者の腰や足等とベッドとの間に差し込んだりして用いることも可能である。
【0023】
中継器54は、コンソール58や放射線発生装置55とLAN(Local Area Network)ケーブル等で有線接続されており、中継器54には、放射線画像撮影装置1やコンソール58等の間で情報を送信する際のLAN通信用の信号等を、放射線発生装置55との間で情報を送信する際の信号に変換し、その逆の変換も行う変換器(図示省略)が内蔵されている。
【0024】
また、中継器54は、ブッキー装置51と有線接続されており、当該ブッキー装置51に装填された放射線画像撮影装置1とコンソール58や放射線発生装置55等の他の装置との間の通信を、中継器54を介して有線方式で行うことができるように構成されている。
【0025】
また、
図1では、放射線画像撮影装置1、具体的にはブッキー装置51に装填されていない放射線画像撮影装置1と、中継器54とを無線接続し、放射線画像撮影装置1とコンソール58や放射線発生装置55等の他の装置との間の通信を、中継器54を介して無線方式で行うことができるように構成した場合が示されているが、放射線画像撮影装置1と中継器54とを有線接続し、放射線画像撮影装置1と他の装置との間の通信を、中継器54を介して有線方式で行うことも可能である。
なお、放射線画像撮影装置1は、ブッキー装置51に装填された状態でも、中継器54と無線接続することが可能となるように構成することも可能である。
【0026】
また、
図1では、撮影室R1内に、ブッキー装置51として、立位撮影用のブッキー装置51Aと臥位撮影用のブッキー装置51Bとが1個ずつ設けられている場合が示されているが、撮影室R1内に設けられるブッキー装置51の個数や種類は特に限定されない。
また、
図1では、撮影室R1内に、放射線源52として、ブッキー装置51に対応付けられた放射線源52Aと、ポータブルの放射線源52Bとが1個ずつ設けられている場合が示されているが、撮影室R1内に設けられる放射線源52の個数や種類は特に限定されない。
【0027】
[放射線発生装置]
撮影室R1には、放射線画像撮影装置1に対する放射線源52からの放射線の照射を制御する放射線発生装置55が設けられている。
そして、本実施形態では、撮影室R1に隣接する前室R2に、放射線発生装置55の操作卓57が設けられており、操作卓57には、放射線技師等のユーザーが放射線発生装置55に対して放射線の照射開始等を指示する際に操作するための曝射スイッチ56が設けられている。
【0028】
曝射スイッチ56は、第1スイッチと第2スイッチの2段階スイッチにより構成されている。
第1スイッチが押下されると、曝射スイッチ56は、操作卓57を介して放射線発生装置55に起動信号を送信するように構成されている。
そして、放射線発生装置55は、この起動信号を受信すると、放射線源52のX線管球の陽極の回転を開始させる等して、放射線源52をスタンバイ状態とさせるように構成されている。また、中継器54を介して放射線画像撮影装置1に第1スイッチの押下通知信号を送信するように構成されている。
【0029】
さらに、第2スイッチが押下されると、曝射スイッチ56は、操作卓57を介して放射線発生装置55に放射線照射開始信号を送信するように構成されている。
【0030】
放射線発生装置55は、曝射スイッチ56からこの放射線照射開始信号を受信すると、中継器54を介して放射線画像撮影装置1に第2スイッチの押下通知信号を送信するように構成されている。放射線画像撮影装置1は、第2スイッチの押下通知信号が受信され、後述するオフセット画像取得処理が完了する等の準備が整うと、中継器54を介して放射線発生装置55にインターロック解除信号を送信する。放射線発生装置55は、放射線画像撮影装置1から中継器54を介して送信されてきたインターロック解除信号を受信すると、放射線源52のX線管球から放射線を照射させるように構成されている。
【0031】
放射線発生装置55は、曝射スイッチ56からの放射線照射開始信号及び放射線画像撮影装置1からのインターロック解除信号の受信に応じて、異なる管電圧で放射線源52から複数回放射線を照射することが可能である。本実施形態では、放射線発生装置55は、撮影モードとしてDES(Dual Energy Subtraction)モード(詳細後述)が設定されている場合に、曝射スイッチ56からの放射線照射開始信号及び放射線画像撮影装置1からのインターロック解除信号の受信に応じて、異なる管電圧で放射線源52から複数回放射線を照射する。
【0032】
また、放射線発生装置55は、例えばユーザーが操作卓57を操作して、放射線画像撮影装置1に対して放射線が適切に照射されるように放射線源52の位置や放射線照射方向を調整したり、放射線画像撮影装置1の所定の領域内に放射線が照射されるように放射線源52の絞りを調整したり、適切な線量の放射線が照射されるように放射線源52を調整したりする等の種々の制御を放射線源52に対して行うことができるように構成されている。なお、これらの処理をユーザーが手動で行うように構成してもよい。
【0033】
[コンソール]
コンソール58は、例えば、
図1に示すように、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等からなる表示部58aと、HDD(Hard Disk Drive)等からなる記憶部59と、コンソール58の各部の動作等を制御する制御部58bと、LANケーブル等によって中継器54と接続され、放射線画像撮影装置1等の他の装置との間で通信を行うための通信部58cと、キーボードやマウス等からなる入力部60とを備えて構成されるコンピュータである。
【0034】
なお、
図1では、コンソール58が撮影室R1や前室R2の外側に設けられている場合が示されているが、コンソール58は、例えば前室R2に設けられていてもよい。
また、
図1では、コンソール58に記憶部59が接続されている場合が示されているが、記憶部59はコンソール58に内蔵されていてもよい。
【0035】
コンソール58の制御部58bは、通信部58cが中継器54を介して、放射線画像撮影装置1により撮影された放射線画像の画像データを当該放射線画像撮影装置1から受信すると、当該画像データに伸長処理や自動階調処理等の所定の画像処理を施して、診断用の放射線画像を作成する。
そして、コンソール58の制御部58bは、ユーザーにより操作された入力部60等からの指示に従って、当該診断用の放射線画像を表示部58aに表示したり、当該診断用の放射線画像の画像データを通信部58c等から出力してイメージャやデータ管理サーバ等の他の装置(図示省略)に送信したりする。
【0036】
なお、本実施形態では、オフセット補正処理やゲイン補正処理等の補正処理を、放射線画像撮影装置1が行うこととして説明するが、放射線画像撮影装置1において取得した放射線画像及びオフセット画像を通信部39によりコンソール58に送信し、コンソール58がオフセット補正処理や、ゲイン補正処理等の補正処理を行うこととしてもよい。
【0037】
[放射線画像撮影装置]
図2は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観斜視図であり、
図3は、
図2のX-X線に沿う断面図である。
本実施形態に係る放射線画像撮影装置1は、
図2や
図3に示すように、筐体2内にシンチレータ3や基板4等が収納された可搬型(カセッテ型)の装置として構成されている。
【0038】
筐体2は、少なくとも放射線の照射を受ける側の面R(以下「放射線入射面R」という。)が放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されている。
なお、
図2や
図3では、筐体2がフレーム板2Aとバック板2Bとで形成された、いわゆる弁当箱型である場合が示されているが、筐体2を一体的に角筒状に形成した、いわゆるモノコック型とすることも可能である。
【0039】
また、
図2に示すように、本実施形態では、筐体2の側面部分に、電源スイッチ36や、LED等で構成されたインジケータ37、バッテリー41(後述する
図6参照)の交換等のために開閉可能とされた蓋部材38等が配置されている。また、本実施形態では、蓋部材38の側面部に、アンテナ39aが埋め込まれている。
【0040】
筐体2の内部には、
図3に示すように、基板4の下方側に図示しない鉛の薄板等を介して基台31が配置され、基台31には、電子部品32等が配設されたPCB基板33や緩衝部材34等が取り付けられている。なお、本実施形態では、基板4やシンチレータ3の放射線入射面R側には、それらを保護するためのガラス基板35が配設されている。
【0041】
シンチレータ3は、基板4の後述する検出部Pに対向する状態で配置されている。シンチレータ3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300~800nmの波長の電磁波、すなわち可視光を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
【0042】
基板4は、本実施形態では、ガラス基板で構成されており、
図4に示すように、基板4のシンチレータ3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。基板4の面4a上の複数の走査線5および複数の信号線6により区画された各領域rには、それぞれ放射線検出素子7が設けられている。
【0043】
このように、走査線5と信号線6とで区画された各領域rに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7が設けられた領域r全体、すなわち
図4に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされる。
【0044】
本実施形態では、放射線検出素子7としてフォトダイオードが用いられているが、この他にも例えばフォトトランジスタ等を用いることも可能である。
各放射線検出素子7は、
図4や
図4の拡大図である
図5に示すように、スイッチ手段であるTFT8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
【0045】
そして、TFT8は、後述する走査駆動手段15により、接続された走査線5にオン電圧が印加され、走査線5を介してゲート電極8gにオン電圧が印加されるとオン状態となり、放射線検出素子7内に蓄積されている電荷を当該放射線検出素子7から信号線6に放出させるようになっている。
また、TFT8は、接続された走査線5にオフ電圧が印加され、走査線5を介してゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、放射線検出素子7内で発生した電荷を当該放射線検出素子7内に保持して蓄積させるようになっている。
【0046】
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。
図6は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図であり、
図7は検出部Pを構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【0047】
基板4の検出部Pの各放射線検出素子7は、その第2電極78にそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極78にそれぞれバイアス電圧を印加するようになっている。
また、バイアス電源14は、後述する制御手段22に接続されており、制御手段22により、バイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧が制御されるようになっている。
【0048】
本実施形態では、バイアス電源14からは、放射線検出素子7の第2電極78にバイアス線9を介してバイアス電圧として放射線検出素子7の第1電極74側にかかる電圧以下の電圧(すなわち、いわゆる逆バイアス電圧)が印加されるようになっている。
【0049】
各放射線検出素子7の第1電極74はTFT8のソース電極8s(
図6、
図7中ではSと表記されている。)に接続されており、各TFT8のゲート電極8g(
図6、
図7中ではGと表記されている。)は、後述する走査駆動手段15のゲートドライバー15bから延びる走査線5の各ラインL1~Lxにそれぞれ接続されている。また、各TFT8のドレイン電極8d(
図6、
図7中ではDと表記されている。)は各信号線6にそれぞれ接続されている。
【0050】
走査駆動手段15は、配線15cを介してゲートドライバー15bにオン電圧およびオフ電圧を供給する電源回路15aと、走査線5の各ラインL1~Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替えて各TFT8のオン状態とオフ状態とを切り替えるゲートドライバー15bとを備えている。
【0051】
図6や
図7に示したように、各信号線6は、読み出しIC16内に形成された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。なお、本実施形態では、読み出しIC16に、1本の信号線6につき1個ずつ読み出し回路17が設けられている。
【0052】
読み出し回路17は、増幅回路18や相関二重サンプリング回路19等で構成されている。読み出しIC16内には、さらに、アナログマルチプレクサ21と、A/D変換器20とが設けられている。なお、
図6や
図7中では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。また、
図7中では、アナログマルチプレクサ21は省略されている。
【0053】
本実施形態では、増幅回路18はチャージアンプ回路で構成されており、オペアンプ18aと、オペアンプ18aにそれぞれ並列に接続されたコンデンサ18bおよび電荷リセット用スイッチ18cとを備えて構成されている。また、増幅回路18には、増幅回路18に電力を供給するための電源供給部18dが接続されている。
【0054】
増幅回路18のオペアンプ18aの入力側の反転入力端子には信号線6が接続されており、増幅回路18の入力側の非反転入力端子には基準電位V0が印加されるようになっている。なお、基準電位V0は適宜の値に設定され、本実施形態では、例えば0[V]が印加されるようになっている。
【0055】
また、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cは、制御手段22に接続されており、制御手段22によりオン/オフが制御されるようになっている。
電荷リセット用スイッチ18cがオフの状態で、TFT8がオン状態とされると(すなわち、TFT8のゲート電極8gに走査線5を介してオン電圧が印加されると)、オン状態とされた各TFT8を介して各放射線検出素子7から蓄積されていた電荷が信号線6に放出され、当該電荷が信号線6を流れて、増幅回路18のコンデンサ18bに流入して蓄積される。
【0056】
そして、増幅回路18では、コンデンサ18bに蓄積された電荷量に応じた電圧値がオペアンプ18aの出力側から出力されるようになっている。増幅回路18は、このようにして、各放射線検出素子7から出力された電荷量に応じて電圧値を出力して電荷電圧変換するようになっている。
【0057】
また、増幅回路18をリセットする際には、電荷リセット用スイッチ18cがオン状態となると、増幅回路18の入力側と出力側とが短絡されてコンデンサ18bに蓄積された電荷が放電される。そして、放電された電荷がオペアンプ18aの出力端子側からオペアンプ18a内を通り、非反転入力端子から出てアースされたり、電源供給部18dに流れ出たりすることで、増幅回路18がリセットされるようになっている。
なお、増幅回路18を、放射線検出素子7から出力された電荷に応じて電流を出力するように構成することも可能である。
【0058】
増幅回路18の出力側には、相関二重サンプリング(CDS)回路19が接続されている。相関二重サンプリング回路19は、信号を読み出す対象の放射線検出素子7が接続された走査線5にオン電圧を印加する前(オフ電圧を印加している間)に、増幅回路18の出力電圧をサンプリングホールドし、該当の走査線5にオン電圧を印加して放射線検出素子7の信号電荷を読み出し、該当の走査線5にオフ電圧を印加した後の増幅回路18の出力電圧の差分を出力するようになっている。
なお、信号電荷を読み出した後の増幅回路18の出力電圧もサンプリングホールドして差分するようにしても良い。
【0059】
そして、制御手段22は、各放射線検出素子7からの画像データの読み出し処理においては、増幅回路18や相関二重サンプリング回路19を制御して、各放射線検出素子7から放出された電荷を増幅回路18で電荷電圧変換させ、電荷電圧変換された電圧値を相関二重サンプリング回路19でサンプリングさせて画像データとして下流側に出力させるようになっている。
【0060】
相関二重サンプリング回路19から出力された各放射線検出素子7の画像データは、アナログマルチプレクサ21に送信され、アナログマルチプレクサ21から順次A/D変換器20に送信される。そして、A/D変換器20で順次デジタル値の画像データに変換されて記憶手段40に出力されて順次保存されるようになっている。
【0061】
このように、放射線画像撮影装置1では、走査駆動手段15及び読み出し回路17を含んで構成される画像取得回路により、放射線検出素子7に電荷を蓄積させ、蓄積された電荷を放射線検出素子7から放出させて読み出すことで、画像の取得を行うことができるようになっている。
【0062】
制御手段22は、後述するように、走査駆動手段15のゲートドライバー15bからオン電圧が印加される走査線5の各ラインL1~Lxを順次切り替え、その切り替えごとに、上記のような各放射線検出素子7からの画像データの読み出し処理を行うように制御する。
【0063】
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピュータや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。そして、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の各部材の動作等を制御するようになっている。
また、
図6等に示すように、制御手段22には、DRAM(Dynamic RAM)等で構成される記憶手段40が接続されている。
【0064】
また、本実施形態では、制御手段22には、通信部39が接続されている。通信部39は、アンテナ39aやコネクター39bを介して無線方式又は有線方式で外部とデータや信号の送受信を行う。
さらに、本実施形態では、制御手段22には、検出部Pや、走査駆動手段15、読み出し回路17、記憶手段40、バイアス電源14等の各機能部に電力を供給するためのバッテリー41が接続されている。また、バッテリー41には、図示しない充電装置からバッテリー41に電力を供給してバッテリー41を充電する際に、当該充電装置とバッテリー41とを接続する接続端子42が取り付けられている。
【0065】
制御手段22は、バイアス電源14を制御してバイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧を設定したり、読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフを制御したり、相関二重サンプリング回路19にパルス信号を送信してそのサンプルホールド機能のオン/オフを制御したりする等、放射線画像撮影装置1の各機能部の動作を制御するようになっている。
【0066】
<放射線画像撮影システムの動作>
以下、放射線画像撮影システム50の動作について説明する。
本実施形態では、第1管電圧で放射線を照射して第1画像を取得し、続いて第2管電圧(第1管電圧<第2管電圧)で放射線を照射して第2画像を取得して、第1画像と第2画像を用いて差分画像を生成するモード(DESモードと呼ぶ)において、第1画像と第2画像の取得前に各画像に対応するオフセット画像(第1オフセット画像、第2オフセット画像)を取得する例について説明する。
【0067】
まず、撮影実施者は、撮影準備を行う。例えば、コンソール58において入力部60を介して、撮影メニュー(例えば、撮影モード(ここでは、DESモード)、撮影部位、撮影方向等)を選択し、撮影開始の指示を入力する。また、撮影実施者は、被写体、放射線源52、放射線画像撮影装置1のポジショニングを行う。
【0068】
コンソール58においては、入力部60により撮影メニューが選択され、撮影開始指示が入力されると、制御部58bは、選択された撮影メニューでの撮影開始指示を通信部58cにより放射線発生装置55及び放射線画像撮影装置1に送信する。放射線発生装置55は、撮影メニューを受信すると、撮影メニューに応じた放射線照射条件(例えば、第1画像取得のための放射線照射(第1照射)及び第2画像取得のための放射線照射(第2照射)における管電流、管電圧、照射時間、第1照射と第2照射の放射線照射間隔等)を設定する。
放射線画像撮影装置1の制御手段22は、撮影メニューを受信すると、撮影メニューに応じた放射線画像取得条件(例えば、第1画像の画像取得条件(電荷蓄積時間(蓄積時間)Ti1、ビニング数、読み出し走査周期Tr1、読み出し走査周期におけるTFT8のオン時間Ton1)、第2画像の画像取得条件(蓄積時間Ti2、ビニング数、読み出し走査周期Tr2、読み出し走査周期におけるTFT8のオン時間Ton2)、画像取得前の放射線検出素子7のリセット条件(ビニング数、リセット走査周期、リセット走査周期におけるTFT8のオン時間)等)、オフセット画像取得条件(例えば、第1オフセット画像の画像取得条件(蓄積時間、ビニング数、読み出し走査周期、読み出し走査周期におけるTFT8のオン時間)、第2オフセット画像の画像取得条件(蓄積時間、ビニング数、読み出し走査周期、読み出し走査周期におけるTFT8のオン時間)、画像取得前の放射線検出素子7のリセット条件(ビニング数、リセット走査周期、リセット走査周期におけるTFT8のオン時間)等)を記憶手段40から読み出して設定する。
【0069】
ここで、リセットとは、各放射線検出素子7内に画像取得のために電荷を蓄積させる前に、各放射線検出素子7内に蓄積されている暗電荷等の余分な電荷を放出させることをいう。
【0070】
また、ビニング数とは、1つの画素としてまとめる画素数を指す。例えば、縦方向(信号線6の延在方向。以下同様。)のビニングは、隣り合う走査線5の複数ラインのゲート電極8gを同時にオンすることで実現できる(アナログビニング)。横方向(走査線5の延在方向。以下同様。)のビニングは、画像データの横方向に隣り合う複数の画素の値を加算又は平均することで実現できる(デジタルビニング)。本実施形態において、第1画像取得時の縦方向のビニング数>第2画像取得時の縦方向のビニング数である。第1画像取得時の縦方向のビニング数を大きくすることで、第1画像の高速な読み出しが可能となるため、第1画像と第2画像の撮影間隔を短くすることができ、被写体の体動による撮影画像のアーチファクトを抑えることが可能となる。
本実施形態では、第1画像取得時の縦方向のビニング数×横方向のビニング数が2×1、第2画像取得時の縦方向のビニング数×横方向のビニング数及び画像取得前のリセット時の縦方向のビニング数×横方向のビニング数が1×1に設定された場合を例にとり説明する。なお、以下の説明において、ビニング数を表記する際には、縦方向のビニング数×横方向のビニング数で表記する。例えば、ビニング数(2×1)は、縦方向のビニング数が2、横方向のビニング数が1であることを表す。
【0071】
また、読み出し走査周期とは、各放射線検出素子7から電荷を読み出して画像データを取得する時間を指し、ほぼTFT8のオン時間+相関二重サンプリング回路19の処理時間に等しい。リセット走査周期は、各放射線検出素子7から電荷を放出させる(読み出す)時間を指し、ほぼTFT8のオン時間に等しい。リセット走査周期は相関二重サンプリング回路19の処理時間が不要であるため、読み出し走査周期に対して短縮が可能である。ただし、読み出し走査をリセット走査の代わりとして用いることができ、この場合、リセット走査周期は読み出し走査周期と同等となるが、走査シーケンスの種類が減少するため、設計簡略化が可能である。どちらの利点を優先するかは、設計方針によって使い分けることが望ましい。
【0072】
本実施形態において、第1オフセット画像取得時のビニング数は、第1画像取得時のビニング数と一致したものが設定され、第2オフセット画像取得時のビニング数は、第2画像取得時のビニング数と一致したものが設定される。また、一連のオフセット画像の取得前の放射線検出素子7のリセット時のビニング数は、一連の放射線画像の取得前の放射線検出素子7のリセット時のビニング数と同じに設定される。放射線画像取得時とオフセット画像取得時とで画像取得前のリセット時や画像取得時のビニング数が異なると、オフセット補正後の放射線画像にアーチファクトが発生するが、放射線画像取得時とオフセット画像取得時のビニング数を一致させることで、このアーチファクトの発生を抑制できるためである。
【0073】
また、第1オフセット画像取得時の蓄積時間は、第1画像取得時の蓄積時間Ti1と一致させ、第2オフセット画像取得時の蓄積時間は、第2画像取得時の蓄積時間Ti2と一致させることが好ましい。放射線画像の取得時と対応するオフセット画像の取得時の蓄積時間を一致させることにより、より高精度なオフセット補正を行うことができる。
【0074】
さらに、第1オフセット画像の読み出し走査周期、読み出し走査周期におけるTFT8のオン時間は、それぞれ第1画像の読み出し走査周期Tr1、読み出し走査周期におけるTFT8のオン時間Ton1と一致させることが好ましい。また、第2オフセット画像の読み出し走査周期、読み出し走査周期におけるTFT8のオン時間は、それぞれ第2画像の読み出し走査周期Tr2、読み出し走査周期におけるTFT8のオン時間Ton2と一致させることが好ましい。また、オフセット画像取得前のリセット時のリセット走査周期、リセット走査周期におけるTFT8のオン時間は、それぞれ放射線画像取得前のリセット時のリセット走査周期、リセット走査周期におけるTFT8のオン時間と一致させることが好ましい。このようにオフセット画像の画像取得条件を放射線画像の画像取得条件と一致させることにより、より高精度なオフセット補正を行うことができる。
【0075】
本実施形態においては、第1オフセット画像の画像取得条件は、第1画像の画像取得条件と一致し、第2オフセット画像の画像取得条件は、第2画像の画像取得条件と一致し、一連のオフセット画像取得前のリセット条件は、放射線画像取得前のリセット条件と一致したものが設定される場合を例にとり説明する。
また、本実施形態においては、第2のオフセット画像取得時の読み出し走査を放射線画像取得時の画像取得前の放射線検出素子7のリセット走査の代わりとして用いることとし、放射線検出素子7のリセット時のビニング数、リセット走査周期、リセット走査周期におけるTFT8のオン時間は、第2画像取得時のビニング数(1×1)、読み出し走査周期Tr2、TFT8のオン時間Ton2と同じに設定されることとするが、これに限定されない。
【0076】
なお、撮影メニューに応じた放射線照射条件及び画像取得条件を記憶部59に記憶しておくこととし、コンソール58は、記憶部59から放射線撮影条件や画像取得条件を読み出して、通信部58cにより中継器54を介して放射線発生装置55や放射線画像撮影装置1に送信して設定することとしてもよい。
【0077】
放射線画像撮影装置1において、画像取得条件の設定が終了すると、制御手段22は、画像取得シーケンスを実行する。
図8は、撮影開始指示後の放射線画像撮影装置1において実行される画像取得シーケンスを模式的に示す図である。
図8に示すように、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、まずオフセット画像取得処理を行う。
オフセット画像取得処理において、まず、制御手段22は、走査駆動手段15等を制御して、予め設定された、画像取得前の放射線検出素子7のリセット時のビニング数、リセット走査周期、及びリセット走査周期におけるTFT8のオン時間(すなわち、放射線画像取得前のリセット時のビニング数(1×1)、リセット走査周期Tr2、及びリセット走査周期におけるTFT8のオン時間Ton2)で各放射線検出素子7のリセットを行う。
【0078】
次いで、制御手段22は、走査駆動手段15により全ての走査線5にオフ電圧を印加することによって放射線検出素子7内に電荷を蓄積させる電荷蓄積モードに移行して、放射線画像撮影装置1に放射線を照射しない状態で、予め設定された第1オフセット画像における蓄積時間(すなわち、第1画像取得時における蓄積時間Ti1)だけ待機して暗電荷の蓄積を行う(第1暗蓄積)。
【0079】
次いで、制御手段22は、読み出しモードに移行し、走査駆動手段15及び読み出し回路17等を制御して、予め設定された第1オフセット画像取得時のビニング数、読み出し走査周期、及び読み出し走査周期におけるTFT8のオン時間(すなわち、第1画像取得時のビニング数(2×1)、読み出し走査周期Tr1、及び読み出し走査周期におけるTFT8のオン時間Ton1)で各放射線検出素子7に蓄積された電荷を読み出して第1オフセット画像の画像データの取得を行う(第1暗読出)。
【0080】
次いで、制御手段22は、再度電荷蓄積モードに移行して、走査駆動手段15により全ての走査線5にオフ電圧を印加して、放射線画像撮影装置1に放射線を照射しない状態で、予め設定された第2オフセット画像における蓄積時間(すなわち、第2画像取得時における蓄積時間Ti2)だけ待機して暗電荷の蓄積を行う(第2暗蓄積)。
【0081】
次いで、制御手段22は、読み出しモードに移行し、走査駆動手段15及び読み出し回路17等を制御して、予め設定された第2オフセット画像取得時のビニング数、読み出し走査周期、及び読み出し走査周期におけるTFT8のオン時間(すなわち、第2画像取得時のビニング数(1×1)、読み出し走査周期Tr2、及び読み出し走査周期におけるTFT8のオン時間Ton2)で各放射線検出素子7に蓄積された電荷を読み出して第2オフセット画像の画像データの取得を行う(第2暗読出)。
なお、第2暗読出は同時に放射線画像取得処理のリセットとなる。
【0082】
以上のオフセット画像取得処理により、第1オフセット画像、第2オフセット画像が取得される。制御手段22は、放射線発生装置55からの曝射スイッチ56の第2スイッチの押下通知信号が受信されるまで、オフセット画像取得処理を繰り返し実行する。
【0083】
撮影実施者は、撮影準備が完了すると、曝射スイッチ56の第1スイッチを押下し、続いて第2スイッチを押下する。曝射スイッチ56は、第1スイッチが押下されると、操作卓57を介して放射線発生装置55に起動信号を送信する。放射線発生装置55は、起動信号を受信すると、放射線源52のX線管球の陽極の回転を開始させる等して、放射線源52をスタンバイ状態とさせる。
【0084】
また、曝射スイッチ56は、第2スイッチが押下されると、操作卓57を介して放射線発生装置55に放射線照射開始信号を送信する。
【0085】
放射線発生装置55は、曝射スイッチ56からこの放射線照射開始信号を受信すると、中継器54を介して放射線画像撮影装置1に第2スイッチの押下通知信号を送信する。放射線画像撮影装置1は、第2スイッチの押下通知信号が受信され、実行中のオフセット画像取得処理が完了する等の準備が整うと、中継器54を介して放射線発生装置55にインターロック解除信号を送信する。放射線発生装置55は、放射線画像撮影装置1から中継器54を介して送信されてきたインターロック解除信号を受信すると、放射線照射条件に基づいて放射線源52のX線管球から放射線を照射させる。
【0086】
インターロック解除信号を送信すると、制御手段22は、電荷蓄積モードに移行して、走査駆動手段15により全ての走査線5にオフ電圧を印加して、予め設定された第1画像における蓄積時間Ti1だけ待機して、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷を各放射線検出素子7内に蓄積させる(第1本蓄積)。
【0087】
次いで、制御手段22は、読み出しモードに移行し、走査駆動手段15及び読み出し回路17等を制御して、予め設定された第1画像取得時のビニング数(2×1)、読み出し走査周期Tr1、及び読み出し走査周期におけるTFT8のオン時間Ton1で各放射線検出素子7に蓄積された電荷を読み出して第1画像の画像データの取得を行う(第1本読出)。
【0088】
次いで、制御手段22は、再度電荷蓄積モードに移行して、走査駆動手段15により全ての走査線5にオフ電圧を印加して、予め設定された第2画像における蓄積時間Ti2だけ待機して、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷を各放射線検出素子7内に蓄積させる(第2本蓄積)。
【0089】
次いで、制御手段22は、読み出しモードに移行し、走査駆動手段15及び読み出し回路17等を制御して、予め設定された第2画像取得時のビニング数(1×1)、読み出し走査周期Tr2、及び読み出し走査周期におけるTFT8のオン時間Ton2で各放射線検出素子7に蓄積された電荷を読み出して第2画像の画像データの取得を行う(第2本読出)。
以上の画像取得前のリセット(最終のオフセット画像取得処理の第2暗読出)~第2本読出の処理(放射線画像取得処理)によって第1画像及び第2画像が取得される。すなわち、放射線画像撮影装置1は、オフセット画像取得処理と放射線画像取得処理を同じ駆動を繰り返すことで行うことができる。
【0090】
放射線画像取得処理後、制御手段22は、第1画像の各画素の信号値から第1オフセット画像の対応する画素の信号値を差し引いてオフセット補正処理を行う。また、第2画像の各画素の信号値から第2オフセット画像の対応する画素の信号値を差し引いてオフセット補正を行う。ここで、オフセット補正処理においては、放射線画像取得処理の直前のオフセット画像取得処理で取得した第1オフセット画像及び第2オフセット画像を用いてもよいし、複数のオフセット画像取得処理で取得された第1オフセット画像及び第2オフセット画像のそれぞれの平均値又は中央値を算出して第1オフセット画像及び第2オフセット画像として使用してもよい。複数のオフセット画像の平均値又は中央値を求めることで、オフセットノイズを低減することができる。また、オフセット画像の取得時間の乖離によってオフセット差が生じる場合は、取得時間が新しい画像に高い重み付けを行い、古い画像に低い重み付けを行ってから平均値を求めることで、オフセットの一致性とオフセットノイズ低減の両立をしてもよい。
【0091】
制御手段22は、第1画像及び第2画像に対し、その他、ゲイン補正処理、欠陥画素補正処理、ラグ(残像)補正処理等の補正処理を施し、補正済みの第1画像及び第2画像の画像データを通信部39によりコンソール58に送信する。
【0092】
コンソール58の制御部58bは、通信部58cにより第1画像及び第2画像の画像データを受信すると、第1画像に拡大補間処理を施すか又は第2画像に縮小補間(デジタルビニング)処理を施すことで第1画像と第2画像のビニング数を合わせた後、第1画像と第2画像の差分画像を生成し、第1画像、第2画像、及び差分画像を患者情報、撮影条件等に対応付けて記憶部59に記憶させたり、表示部58aに表示させたりする。差分画像は、例えば、第1画像と第2画像の互いに対応する画素の信号値に重み係数を乗算して差分をとることにより生成することができる。
【0093】
このように、放射線画像撮影装置1は、ビニング数の異なる複数の放射線画像(第1画像、第2画像)を連続的に撮影する場合に、複数の放射線画像の取得時と画像取得前リセット時のビニング数及び画像取得時のビニング数を一致させて各放射線画像に対応する複数のオフセット画像を取得して、各放射線画像にオフセット補正処理を施す。したがって、各放射線画像にオフセット補正によるアーチファクトが発生することを抑制することができる。
さらに、複数のオフセット画像のそれぞれの取得時の蓄積時間を、対応する放射線画像の撮影時の蓄積時間に一致させることで、より高精度なオフセット補正を行うことが可能となる。
さらに、複数の放射線画像の取得時とリセット走査周期、リセット走査周期におけるTFT8のオン時間、各画像取得時の読み出し走査周期、読み出し走査周期におけるTFT8のオン時間のうち少なくとも一つ以上を一致させて複数の放射線画像のそれぞれに対応する複数のオフセット画像を取得することで、より高精度なオフセット補正を行うことが可能となる。さらに、複数の放射線画像の取得時とリセット走査周期、リセット走査周期におけるTFT8のオン時間、各画像取得時の読み出し走査周期、読み出し走査周期におけるTFT8のオン時間を全て一致させて複数の放射線画像のそれぞれに対応する複数のオフセット画像を取得することで、各オフセット画像取得時における走査線5のライン毎の実効蓄積時間(最終リセット完了から電荷を蓄積して読み出しを開始するまでの総蓄積時間)を対応する放射線画像取得時の実効蓄積時間に略一致させることができるので、より高精度なオフセット補正を行うことが可能となる。
【0094】
また、DESモードにおいて、先に撮影を行う第1画像取得時の縦方向のビニング数を1より大きくすることで、第1画像の高速な読み出しが可能となるため、第1画像と第2画像の撮影間隔を短くすることができ、被写体の体動による撮影画像のアーチファクトを抑えることが可能となる。また、低管電圧で撮影される第1画像は粒状性が悪いが、低管電圧で被写体に放射線を照射した撮影で蓄積された電荷の読み出し(すなわち、第1画像の取得)を、高管電圧で被写体に放射線を照射した撮影で蓄積された電荷の読み出し(すなわち、第2画像の取得)より大きいビニング数で行うことで、第1画像のノイズを低減することができる。
【0095】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態では、DESモードにおいて、第1画像と第2画像の取得後に各画像に対応するオフセット画像(第1オフセット画像、第2オフセット画像)を取得する例について説明する。
【0096】
第2の実施形態の構成は、第1の実施形態で説明したものと同様であるので説明を援用し、以下、第2の実施形態の動作について説明する。
【0097】
まず、撮影実施者は、撮影準備を行う。例えば、コンソール58において入力部60を介して、撮影メニュー(例えば、撮影モード(ここでは、DESモード)、撮影部位、撮影方向等)を選択し、撮影開始の指示を入力する。また、撮影実施者は、被写体、放射線源52、放射線画像撮影装置1のポジショニングを行う。
【0098】
コンソール58においては、入力部60により撮影メニューが設定され、撮影開始指示が入力されると、制御部58bは、選択された撮影メニューでの撮影開始指示を通信部58cにより放射線発生装置55及び放射線画像撮影装置1に送信する。
放射線発生装置55は、撮影メニューを受信すると、撮影メニューに応じた放射線照射条件(例えば、第1画像取得のための放射線照射(第1照射)及び第2画像取得のための放射線照射(第2照射)における管電流、管電圧、照射時間、第1照射と第2照射の放射線照射間隔等)を設定する。
放射線画像撮影装置1の制御手段22は、撮影メニューを受信すると、撮影メニューに応じた放射線画像取得条件及びオフセット画像取得条件を設定する。放射線画像取得条件及びオフセット画像取得条件の例は、第1の実施形態で説明したものと同様であるので説明を援用する。
【0099】
本実施形態においては、第1画像のビニング数が2×1、第2画像のビニング数が1×1、リセットのビニング数が2×1、画像取得前のリセット走査周期がTr0、リセット走査周期におけるTFT8のオン時間がTon0に設定された場合を例にとり説明する。その他の放射線画像取得条件及びオフセット画像取得条件の設定については、第1の実施形態で説明したものと同様であるので説明を援用する。
【0100】
なお、撮影メニューに応じた放射線照射条件及び画像取得条件を記憶部59に記憶しておくこととし、コンソール58は、記憶部59から放射線撮影条件や画像取得条件を読み出して、読み出した条件を通信部58cにより中継器54を介して放射線発生装置55や放射線画像撮影装置1に送信して設定することとしてもよい。
【0101】
放射線画像撮影装置1において、画像取得条件の設定が終了すると、制御手段22は、画像取得シーケンスを実行する。
図9は、第2の実施形態において撮影開始指示後の放射線画像撮影装置1において実行される画像取得シーケンスを模式的に示す図である。
【0102】
図9に示すように、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、まず、走査駆動手段15等を制御して、予め設定された、画像取得前の放射線検出素子7のリセット時のビニング数(2×1)、リセット走査周期Tr0、及びリセット走査周期におけるTFT8のオン時間Ton0で各放射線検出素子7のリセットを行う。制御手段22は、放射線発生装置55からの曝射スイッチ56の第2スイッチの押下通知信号が受信されるまで、リセットを繰り返し実行する。
【0103】
撮影実施者は、撮影準備が完了すると、曝射スイッチ56の第1スイッチを押下し、続いて第2スイッチを押下する。曝射スイッチ56は、第1スイッチが押下されると、操作卓57を介して放射線発生装置55に起動信号を送信する。放射線発生装置55は、起動信号を受信すると、放射線源52のX線管球の陽極の回転を開始させる等して、放射線源52をスタンバイ状態とさせる。
【0104】
また、曝射スイッチ56は、第2スイッチが押下されると、操作卓57を介して放射線発生装置55に放射線照射開始信号を送信する。
【0105】
放射線発生装置55は、曝射スイッチ56からこの放射線照射開始信号を受信すると、中継器54を介して放射線画像撮影装置1に第2スイッチの押下通知信号を送信する。放射線画像撮影装置1は、第2スイッチの押下通知信号が受信され、リセットが完了する等の準備が整うと、中継器54を介して放射線発生装置55にインターロック解除信号を送信する。放射線発生装置55は、放射線画像撮影装置1から中継器54を介して送信されてきたインターロック解除信号を受信すると、放射線照射条件に基づいて放射線源52のX線管球から放射線を照射させる。
【0106】
インターロック解除信号を送信すると、制御手段22は、電荷蓄積モードに移行して、走査駆動手段15により全ての走査線5にオフ電圧を印加して、予め設定された第1画像における蓄積時間Ti1だけ待機して、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷を各放射線検出素子7内に蓄積させる(第1本蓄積)。
【0107】
次いで、制御手段22は、読み出しモードに移行し、走査駆動手段15及び読み出し回路17等を制御して、予め設定された第1画像取得時のビニング数(2×1)、読み出し走査周期Tr1、及び読み出し走査周期におけるTFT8のオン時間Ton1で各放射線検出素子7に蓄積された電荷を読み出して第1画像の画像データの取得を行う(第1本読出)。
【0108】
次いで、制御手段22は、再度電荷蓄積モードに移行して、走査駆動手段15により全ての走査線5にオフ電圧を印加して、予め設定された第2画像における蓄積時間Ti2だけ待機して、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷を各放射線検出素子7内に蓄積させる(第2本蓄積)。
【0109】
次いで、制御手段22は、読み出しモードに移行し、走査駆動手段15及び読み出し回路17等を制御して、予め設定された第2画像取得時のビニング数(1×1)、読み出し走査周期Tr2、及び読み出し走査周期におけるTFT8のオン時間Ton2で各放射線検出素子7に蓄積された電荷を読み出して第2画像の画像データの取得を行う(第2本読出)。
以上の画像取得前のリセット~第2本読出の処理(放射線画像取得処理)によって第1画像及び第2画像が取得される。
【0110】
次いで、制御手段22は、走査駆動手段15等を制御して、予め設定された、画像取得前の放射線検出素子7のリセット時のビニング数、リセット走査周期、及びリセット走査周期におけるTFT8のオン時間(すなわち、放射線画像取得前のリセット時のビニング数(2×1)、リセット走査周期Tr0、及びリセット走査周期におけるTFT8のオン時間Ton0)で各放射線検出素子7のリセットを行う。ここでは、放射線画像取得処理で実行したリセットと同じ回数のリセットを繰り返す。これにより、後段のオフセット補正後の画像の安定性を向上させることができる。
【0111】
次いで、制御手段22は、走査駆動手段15により全ての走査線5にオフ電圧を印加することによって放射線検出素子7内に電荷を蓄積させる電荷蓄積モードに移行して、放射線画像撮影装置1に放射線を照射しない状態で、予め設定された第1オフセット画像における蓄積時間(すなわち、第1画像における蓄積時間Ti1)だけ待機して暗電荷の蓄積を行う(第1暗蓄積)。
【0112】
次いで、制御手段22は、読み出しモードに移行し、走査駆動手段15及び読み出し回路17等を制御して、予め設定された第1オフセット画像取得時のビニング数、読み出し走査周期、及び読み出し走査周期におけるTFT8のオン時間(すなわち、第1画像取得時のビニング数(2×1)、読み出し走査周期Tr1、及び読み出し走査周期におけるTFT8のオン時間Ton1)で各放射線検出素子7に蓄積された電荷を読み出して第1オフセット画像の画像データの取得を行う(第1暗読出)。
【0113】
次いで、制御手段22は、再度電荷蓄積モードに移行して、走査駆動手段15により全ての走査線5にオフ電圧を印加することによって、放射線画像撮影装置1に放射線を照射しない状態で、予め設定された第2オフセット画像における蓄積時間(すなわち、第2画像における蓄積時間Ti2)だけ待機して暗電荷の蓄積を行う(第2暗蓄積)。
【0114】
次いで、制御手段22は、読み出しモードに移行し、走査駆動手段15及び読み出し回路17等を制御して、予め設定された第2オフセット画像取得時のビニング数、読み出し走査周期、及び読み出し走査周期におけるTFT8のオン時間(すなわち、第2画像取得時のビニング数(1×1)、読み出し走査周期Tr2、及び読み出し走査周期におけるTFT8のオン時間Ton2)で各放射線検出素子7に蓄積された電荷を読み出して第2オフセット画像の画像データの取得を行う(第2暗読出)。
以上のリセット~第2暗読出の処理(オフセット画像取得処理)によって第1オフセット画像及び第2オフセット画像が取得される。
【0115】
オフセット画像取得処理後、制御手段22は、ラグ(残像)補正を行う。
ここで、
図10(a)に示すように、第1画像の被写体信号がG1である場合、第2画像には被写体信号G2に加えて第1画像のラグG11が載った画像となる。また、第1オフセット画像には、さらに第2画像のラグG21が発生する。よって、
図10(b)に示すように、第1画像からそのまま第1オフセット画像を引いてオフセット補正を行うと第2画像のラグG21が虚像となって表れた画像となってしまう。そこで、この虚像を除去するためのラグ補正を行う。
【0116】
図11は、オフセット画像取得前にリセットを継続している場合における、第2画像取得時点からの経過時間tと、オフセット画像に生じるラグの倍率α(第2画像の何倍のラグが残っているかを示す値)との関係を示すグラフである。
図11に示すように、オフセット画像取得前にリセットを継続している場合、時間経過によってオフセット画像に生じるラグは減衰していくことがわかる。この減衰曲線は、実験により求めたものである。そこで、制御手段22は、この倍率αを求めて第1オフセット画像のラグ補正を行う。
【0117】
倍率αは、以下の方法で算出することができる。
まず、第2画像を第1画像のビニングサイズに合わせた画像Gを作成する。ここでは、第2画像をデジタルビニングしてビニング数2×1の画像Gを作成する。次いで、画像Gの信号値の平均値(又は中央値)と第1オフセット画像の信号値の平均値(又は中央値)が概ね一致する倍率αを算出する。例えば、倍率αは、第1オフセット画像の信号値の平均値を画像Gの信号値の平均値で除算することにより算出することができる。
そして、第1オフセット画像の各画素の信号値から、画像Gの対応する画素の信号値にαを乗算した値を引くことで、第1オフセット画像のラグを除去することができる。
【0118】
なお、第2オフセット画像についてもラグG11、G21が存在する場合があるが、第2オフセット画像にこのラグG11、G21が残っていたとしても、オフセット補正処理後の第2画像に虚像となって現れるわけではないため、ラグ補正は省略してもよい。ただし、第2オフセット画像についてもラグ補正を行ってもよい。この場合、例えば、第2オフセット画像の信号値を平均値を第2画像の信号値の平均値で除算して、第2オフセット画像に生じるラグの倍率βを算出し、第2オフセット画像の各画素の信号値から、第2画像の対応する画素の信号値にβを乗算した値を引くことで、第2オフセット画像のラグを除去することができる。
【0119】
ラグ補正後、制御手段22は、オフセット補正処理、ゲイン補正処理、欠陥画素補正処理等の補正処理を施し、補正済みの第1画像及び第2画像の画像データを通信部39によりコンソール58に送信させる。オフセット補正処理については第1の実施形態で説明したものと同様であるので説明を援用する。
【0120】
コンソール58の制御部58bは、通信部58cにより第1画像及び第2画像の画像データを受信すると、第1画像を拡大補間又は第2画像を縮小補間(デジタルビニング)することで第1画像と第2画像のビニング数を合わせた後、第1画像と第2画像の差分画像を生成し、第1画像、第2画像、及び差分画像を患者情報、撮影条件等に対応付けて記憶部59に記憶させたり、表示部58aに表示させたりする。
【0121】
このように、第2の実施形態においては、第1の実施形態と同様に、ビニング数の異なる複数の放射線画像(第1画像、第2画像)を連続的に撮影する場合に、複数の放射線画像の取得時と画像取得前リセット時のビニング数及び画像取得時のビニング数を一致させて各放射線画像に対応する複数のオフセット画像を取得して、各放射線画像にオフセット補正処理を施す。したがって、各放射線画像にオフセット補正によるアーチファクトが発生することを抑制することができる。
さらに、複数のオフセット画像のそれぞれの取得時の蓄積時間を、対応する放射線画像の撮影時の蓄積時間に一致させることで、より高精度なオフセット補正を行うことが可能となる。
さらに、複数の放射線画像の取得時と画像取得前のリセット走査周期、リセット走査周期におけるTFT8のオン時間、各画像取得時の読み出し走査周期、読み出し走査周期におけるTFT8のオン時間のうち少なくとも一つ以上を一致させて複数の放射線画像のそれぞれに対応する複数のオフセット画像を取得することで、より高精度なオフセット補正を行うことが可能となる。さらに、複数の放射線画像の取得時と画像取得前のリセット走査周期、リセット走査周期におけるTFT8のオン時間、各画像取得時の読み出し走査周期、読み出し走査周期におけるTFT8のオン時間を全て一致させて複数の放射線画像のそれぞれに対応する複数のオフセット画像を取得することで、各オフセット画像取得時における走査線5のライン毎の実効蓄積時間(最終リセット完了から電荷を蓄積して読み出しを開始するまでの総蓄積時間)を対応する放射線画像取得時の実効蓄積時間に略一致させることができるので、より高精度なオフセット補正を行うことが可能となる。
【0122】
また、DESモードにおいて、先に撮影を行う第1画像取得時の縦方向のビニング数を1より大きくすることで、第1画像の高速な読み出しが可能となるため、第1画像と第2画像の撮影間隔を短くすることができ、被写体の体動による撮影画像のアーチファクトを抑えることが可能となる。また、低管電圧で撮影される第1画像は粒状性が悪いが、低管電圧で被写体に放射線を照射した撮影で蓄積された電荷の読み出し(すなわち、第1画像の取得)を、高管電圧で被写体に放射線を照射した撮影で蓄積された電荷の読み出し(すなわち、第2画像の取得)より大きいビニング数で行うことで、第1画像のノイズを低減することができる。
【0123】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態における記述内容は本発明の好適な一例であり、これに限定されるものではない。
例えば、上記第1、第2の実施形態においては、一回の曝射スイッチ56の操作に応じて、第1画像及び第2画像の撮影の前又は後に連続して第1オフセット及び第2オフセット画像を取得する、すなわち、放射線画像取得処理とオフセット画像取得処理を連続して行うこととして説明したが、事前にオフセット画像取得処理を行って、第1オフセット画像及び第2オフセット画像を取得して記憶手段40に記憶しておき、第1画像及び第2画像の取得後に、記憶手段40から第1オフセット画像及び第2オフセット画像を読み出してオフセット補正処理を行うこととしてもよい。この場合においても、1回のオフセット画像取得処理で取得された第1オフセット画像及び第2オフセット画像を記憶手段40に記憶しておくこととしてもよいし、複数のオフセット画像取得処理で取得された第1オフセット画像及び第2オフセット画像のそれぞれの平均値又は中央値を算出して第1オフセット画像及び第2オフセット画像として記憶手段40に記憶しておくこととしてもよい。複数のオフセット画像の平均値又は中央値を求めることで、オフセットノイズを低減することができる。また、複数のオフセット画像取得処理で取得された複数のオフセット画像をその取得された時刻や順番に対応付けて記憶手段40に記憶しておき、オフセット画像の取得時間の乖離によってオフセット差が生じる場合は、取得時間が新しい画像に高い重み付けを行い、古い画像に低い重み付けを行ってから平均値を求めることとしてもよい。これにより、オフセットの一致性とオフセットノイズ低減の両立することができる。
【0124】
また、上記実施形態においては、オフセット補正処理を放射線画像撮影装置1で行ってからコンソール58に送信することとしたが、放射線画像撮影装置1からコンソール58にオフセット補正前の複数の放射線画像及び複数のオフセット画像のセットを送信し、コンソール58の制御部58bは、通信部58cにより放射線画像撮影装置1から受信した複数の放射線画像のそれぞれに対応するオフセット画像を用いて複数の放射線画像のそれぞれにオフセット補正処理を施すこととしてもよい。すなわち、放射線画像及びオフセット画像の取得からオフセット補正処理までの全体を、放射線画像撮影装置1により完結することとしてもよいし、放射線画像撮影装置1とコンソール58からなるシステムにより完結するものとしてもよい。
【0125】
その他、放射線画像撮影システムを構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0126】
1 放射線画像撮影装置
5 走査線
6 信号線
7 放射線検出素子
8 TFT(スイッチ手段)
15 走査駆動手段
15a 電源回路
15b ゲートドライバー
17 読み出し回路
22 制御手段
50 放射線画像撮影システム
55 放射線発生装置
55a 通信部
57 操作卓
58 コンソール
58b 制御部
58c 通信部
60 入力部
r 領域
P 検出部