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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】サスペンションサブフレーム構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/00 20060101AFI20220426BHJP
   B62D 21/15 20060101ALI20220426BHJP
   B60G 21/055 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
B62D21/00 A
B62D21/15 C
B60G21/055
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018175216
(22)【出願日】2018-09-19
(65)【公開番号】P2020044998
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 三喜男
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】岡本 拓之
(72)【発明者】
【氏名】田中 正顕
(72)【発明者】
【氏名】黒原 史博
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-081255(JP,A)
【文献】特開2017-077736(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107985411(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2004-0087010(KR,A)
【文献】国際公開第2017/082124(WO,A1)
【文献】特開2013-199208(JP,A)
【文献】“[ダイハツ テリオスキッド キスマーク J111G]納車!”,I-SIZE CAR COMMUNITY,[online],2017年10月02日,<URL:http://www.i-size.co.jp/car-sales/2017/10/29822>,[令和3年12月17日検索]
【文献】プロジェクト豊和コーポレーション有限会社,“テリオスキッド 車検 下回り塩害塗装”,カー!と言えばグーネットピット,[online],<URL:https://goo-net.com/pit/shop/0903413/blog/325679>,[令和3年12月17日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08,25/14-29/04,
B60G 21/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪用のサスペンション部材を支持するサスペンションサブフレームを有し、
該サスペンションサブフレームには、その前端から車体前方に延びるとともに、該サスペンションサブフレームよりも剛性の低いエクステンションフレームが接続されるサスペンションサブフレーム構造であって、
前記エクステンションフレームには、支持部材を介して所定の部材が支持されており、
前記支持部材は、車体前後方向に間隔を空けて配置された複数の固定部において前記エクステンションフレームに固定され、前記複数の固定部間の車体前後方向領域では前記エクステンションフレームから離間して配置され
前記支持部材は、前側固定部と、該前側固定部よりも車体後方側に配置された後側固定部とを含む車体前後方向の2箇所で前記エクステンションフレームに固定され、
前記前側固定部と前記後側固定部のうちの一方は、他方に比して脆弱に前記エクステンションフレームに固定されていることを特徴とするサスペンションサブフレーム構造。
【請求項2】
前記支持部材は、前記前側固定部と前記後側固定部との間において車体前後方向に延びるリブ部を有することを特徴とする請求項に記載のサスペンションサブフレーム構造。
【請求項3】
前記所定の部材は、車体幅方向に延びるように配置されたスタビライザであることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載のサスペンションサブフレーム構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサスペンションサブフレーム構造に関し、自動車等の車両の車体構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造として、車両の前後方向に延びて車体前部を構成する左右一対のフロントサイドフレームが設けられ、該フロントサイドフレームの下方に、前輪用の左右のサスペンションリンクを支持するためのサスペンションサブフレーム(以下、単に「サブフレーム」ともいう)が配設されるものが知られている。
【0003】
特許文献1に開示された車体前部構造のサブフレームは、フロントサイドフレームの下方に配置される左右辺部と、該左右辺部の前端を車幅方向に連結する前辺部とで、平面視で後方に開放したU字状に形成されている。このサブフレームは、左右辺部の後端部において、フロントサイドフレームに固定されている。このサブフレームには、前述の左右辺部の前端部から立ち上がって、フロントサイドフレームの下面に接続されるタワー部材が取り付けられている。タワー部材には、該タワー部材の上下方向の中間の位置から前方に延びる一対のエクステンションフレームが取り付けられている。
【0004】
特許文献1の構成において、車体前方からの衝撃荷重は、フロントサイドフレームに直接入力される主たるロードパスと、エクステンションフレームからタワー部材を経由してフロントサイドフレームに至るロードパスとに分散して伝達される。このように、エクステンションフレームを経由するロードパスを設けることで、衝撃荷重を分散させることができる。
【0005】
上述のエクステンションフレームは、車体前方からの衝撃荷重を受けて変形することで、この衝撃荷重を吸収する衝撃吸収部材として機能し得る。そして、タワー部材は、このエクステンションフレームによる衝撃荷重の吸収を確実に機能させるために、エクステンションフレームを経由して入力される衝撃荷重を受け止める荷重受け部としての機能を有している。
【0006】
この特許文献1の車体前部構造では、エクステンションフレームがタワー部材の中間部に接続されている。そのため、車体前方からの衝撃荷重入力時にタワー部材の屈曲変形を抑制して、エクステンションフレームの衝撃吸収機能を十分に果たすためには、タワー部材を強固に構成する必要ある。しかしながら、タワー部材を強固にすることによる車両重量の増加が生じやすくなることから、車両重量の低減を図る上で改善の余地がある。
【0007】
そこで、タワー部材を廃止する代わりに、エクステンションフレームからサブフレームの左右辺部を経由し、左右辺部の後端部からフロントサイドフレームに至るようなロードパスを形成することが考えられる。この場合、エクステンションフレームの後端部を、前後方向の剛性の高いサブフレームの左右辺部の前端部に直結することが考えられる。これにより、サブフレームは、車体前方側からエクステンションフレームに入力される衝撃荷重を受け止める荷重受け部として機能し、エクステンションフレームによる衝撃吸収を促進させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2015-58856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、車両には、旋回時等における車両のローリングを抑制するために、スタビライザが備えられることがある。スタビライザは、左右のサスペンションリンクを連結するバー部材で形成されている。スタビライザは、左右輪の上下動をバー部材の捩り反力を介して抑えることで、左右輪間で接地荷重が適切な配分となるようにして、車両の乗り心地および走行安定性を向上させるものである。
【0010】
スタビライザは、通常、長さ方向の中間位置において、例えば、サスペンションクロスメンバや、特許文献1のタワー部材等に支持される。特に、上述したようなエクステンションフレームを備えた車両では、エクステンションフレームの変形による衝撃吸収がスタビライザによって阻害されることを避けるために、エクステンションフレームよりも後方においてスタビライザが支持されることが好ましい。
【0011】
しかしながら、スタビライザの周辺には、パワートレイン、冷却系機器、およびドライブシャフトなどの多くの部材が配置されている。そのため、エクステンションフレームよりも後方にスタビライザの配置スペースを確保することが難しい場合がある。この場合、エクステンションフレームの衝撃吸収機能を良好に発揮させることと、スタビライザを周辺部材に干渉することなく適切に支持することとの両立を図ることが困難である。
【0012】
また、エクステンションフレームの周辺には、例えばステアリングギヤボックスなど、スタビライザ以外の部材が配設されることがあり、この種の周辺部材についても、上述したスタビライザと同様の課題が生じ得る。
【0013】
そこで、本発明のサスペンションサブフレーム構造では、エクステンションフレームの衝撃吸収機能の良好な発揮と、前述のスタビライザ等の所定の周辺部材の適切な支持との両立を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
まず、請求項1に記載の発明は、
前輪用のサスペンション部材を支持するサスペンションサブフレームを有し、
該サスペンションサブフレームには、その前端から車体前方に延びるとともに、該サスペンションサブフレームよりも剛性の低いエクステンションフレームが接続されるサスペンションサブフレーム構造であって、
前記エクステンションフレームには、支持部材を介して所定の部材が支持されており、
前記支持部材は、車体前後方向に間隔を空けて配置された複数の固定部において前記エクステンションフレームに固定され、前記複数の固定部間の車体前後方向領域では前記エクステンションフレームから離間して配置され
前記支持部材は、前側固定部と、該前側固定部よりも車体後方側に配置された後側固定部とを含む車体前後方向の2箇所で前記エクステンションフレームに固定され、
前記前側固定部と前記後側固定部のうちの一方は、他方に比して脆弱に前記エクステンションフレームに固定されていることを特徴とする。
【0016】
また、請求項に記載の発明は、前記請求項に記載の発明において、
前記支持部材は、前記前側固定部と前記後側固定部との間において車体前後方向に延びるリブ部を有し、
前記前側固定部と前記後側固定部のうちの一方は、他方に比して脆弱に前記エクステンションフレームに固定されていることを特徴とする。
【0017】
請求項に記載の発明は、前記請求項1または前記請求項2に記載の発明において、
前記所定の部材は、車体幅方向に延びるように配置されたスタビライザであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、サスペンションサブフレームの車体前方に、サスペンションサブフレームよりも剛性の低いエクステンションフレームが接続されているので、車体前方側から入力される衝撃荷重をサスペンションサブフレームによって受けつつ、エクステンションフレームの変形によって効果的な衝撃吸収を果たすことができる。
【0019】
また、エクステンションフレームよりも後方側に所定の部材の配置スペースを確保することが難しい場合においても、該部材を、支持部材を介してエクステンションフレームに支持させることができる。
【0020】
支持部材が固定された部分では、エクステンションフレームの剛性が高められるが、支持部材における複数の固定部間の車体前後方向領域では、支持部材から離間したエクステンションフレーム部分の変形が促進可能となっている。したがって、仮に支持部材が車体前後方向の中間部においてもエクステンションフレームに固定されている場合に比して、エクステンションフレームの変形による衝撃吸収を効果的に果たすことができる。その結果、エクステンションフレームは、衝撃荷重吸収の機能と、所定部材の支持機能とを両立することができる。
【0021】
また支持部材の前側および後側固定部間がエクステンションフレームから離間しているので、車体前方からの衝撃荷重入力時に、支持部材の前側固定部と後側固定部との間でエクステンションフレームの変形が阻害されることが抑制される。
【0022】
また支持部材における前側固定部と後側固定部のうちの一方は、他方に比して脆弱にエクステンションフレームに固定されているので、衝撃荷重の入力時において、脆弱に固定された一方の固定部がエクステンションフレームから離脱しやすくなる。そのため、エクステンションフレームの変形が支持部材によって阻害されることがより効果的に抑制される。
【0023】
また、請求項2に記載の発明によれば、支持部材は、前側固定部と後側固定部との間において車体前後方向に延びるリブ部を有しているので、車体前後方向の荷重に対する支持部材の剛性が高められている。これにより、車体前方からの衝撃荷重入力時にエクステンションフレームが変形するとき、これに追従した支持部材の変形が抑制されることで、エクステンションフレームからの支持部材の離脱をより効果的に促進させることができる。
【0024】
例えば、後側固定部が前側固定部に比して脆弱に固定されている場合、車体前方側からの衝撃荷重入力時においてエクステンションフレームが変形するとともに、支持部材は、エクステンションフレームに前側固定部が固定された状態で後方に押される。そして、リブ部によって剛性が高められた中間部が突っ張ることで、後側固定部をエクステンションフレームから離脱させやすくすることができる。その結果、エクステンションフレームの変形が支持部材によって阻害されることが効果的に抑制される。
【0025】
また、請求項に記載の発明によれば、左右の車輪を連結するスタビライザを、車両のレイアウトの関係上、サスペンションサブフレーム等に支持させることができず、エクステンションフレーム近傍に配置される場合においても、上述の支持部材を介してエクステンションフレームにスタビライザを支持させることが可能となる。さらに、上述の支持部材の作用により、エクステンションフレームの衝撃吸収機能が支持部材によって阻害されることを抑制しつつ、スタビライザの適切な支持を果たすことができる。




【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係るサスペンションサブフレーム構造を備えた車体前部の斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るサスペンションサブフレーム構造を備えた車体前部の側面図である。
図3】本発明の実施形態に係るサスペンションサブフレーム構造の平面図である。
図4図3におけるサスペンションサブフレーム、エクステンションフレーム、および、第2クロスメンバの接合部の拡大図である。
図5図4における(a)A-A断面図、(b)B-B断面図、(c)C-C断面図、および(d)D-D断面図である。
図6】サスペンションサブフレーム、エクステンションフレーム、第2クロスメンバ、および、前側ブラケットの接合部の要部を拡大した底面図である。
図7】エクステンションフレームとスタビライザ支持台座の(a)側面図、(b)平面図である。
図8図7(a)における(a)E-E断面図、(b)F-F断面図、(c)G-G断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態に係るサスペンションサブフレーム構造の詳細を説明する。
【0028】
図1図3を参照しながら、本実施形態のサスペンションサブフレーム構造を備えた前部車体構造1について説明する。
【0029】
図1および図2に示すように、前部車体構造1は、車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム20、20と、ダッシュパネル(図示せず)の前面に沿って配置されて両フロントサイドフレーム20、20間を連結するダッシュクロス30と、両フロントサイドフレームの下方に配置されるサスペンションサブフレーム構造体100とを備えている。
【0030】
この実施形態では、車両の駆動方式をフロントエンジンリア駆動(FR)としている。フロントサイドフレーム20、20間のエンジンルームEには、縦置きタイプのエンジン41と、その後部に連結されるトランスミッション42とを備えたパワートレイン4が配置されている(図3参照)。
【0031】
各フロントサイドフレーム20、20は、ダッシュクロス30から前方に向かって略水平に延びる前側直線部21、21と、前側直線部21、21の後端部から車体後方に向かって斜め下方に延びる傾斜部22、22と、傾斜部22、22の下端部からさらに後方に略水平に延びる後側直線部23、23とを有している。
【0032】
各フロントサイドフレーム20、20の前側直線部21、21は、車体幅方向内側に位置するインナパネル24、24と、車体幅方向外側に位置するアウタパネル25、25とを有し、これらが車体幅方向に接合されて構成されている。インナパネル24、24は、車体幅方向外側に開放された断面ハット形状をなし、アウタパネル25、25は、車体幅方向内側に開放された断面ハット形状をなすとともに、それぞれ車体前後方向に延びている。アウタパネル25、25と、インナパネル24、24とは、それぞれの上縁部間、および、それぞれの下縁部間で互いに接合されている。これによって、前側直線部21、21は、フレーム自体で、車体前後方向に連続する閉断面を形成している。
【0033】
各フロントサイドフレーム20、20の傾斜部22、22は、上側に開放された断面ハット形状をなしている。傾斜部22、22は、ダッシュパネル(図示せず)の形状に沿って車体後方側が低くなるように配置され、傾斜部22、22の上縁部は、ダッシュパネルに接合されている。これにより、傾斜部22、22とダッシュパネルとの間には、車体前後方向に連続する閉断面が形成されている。
【0034】
フロントサイドフレーム20、20の後側直線部23、23は、その後端部において、車体前後方向に延設された図示しないフロアフレームの前端部に接続されている。この後側直線部23、23およびフロアフレーム上には、図示しないフロアパネルが接合されており、このフロアパネルの前端縁はダッシュパネルに連接されている。後側直線部23、23およびフロアフレームは、上側に開放された断面ハット形状をなしており、フロアパネルとの間には、車体前後方向に連続する閉断面が形成されている。
【0035】
各フロントサイドフレーム20、20の前端には、セットプレート51、51および取付けプレート52、52を介して、車体前方からの衝撃荷重を吸収する筒状体等からなるメインクラッシュカン53、53が連結されている。左右一対のメインクラッシュカン53、53の前端面には、車幅方向に延びるバンパレインフォースメント54が取り付けられている。
【0036】
次に、図1および図2に加えて図3を参照しながら、前述のサスペンションサブフレーム構造体100について説明する。サスペンションサブフレーム構造体100は、フロントサイドフレーム20の下方に配置されるとともに前輪用のサスペンションリンクとしてのロアアーム60、60を支持する左右一対のサスペンションサブフレーム110、110と、該サスペンションサブフレーム110、110の前端に接合されて車体前方に延びる左右一対のエクステンションフレーム130、130と、左右のフレーム110、110、130、130間を連結する第1~第3クロスメンバ140、150、160とを備えている。
【0037】
エクステンションフレーム130、130の前端部からは、それぞれサブクラッシュカン55、55が前方に延びている。サブクラッシュカン55、55よりも前方部には、車体幅方向に延びるサブバンパレインフォースメント58が設けられている。左右のサブクラッシュカン55、55は、サブバンパレインフォースメント58を介して互いに連結されている。
【0038】
サスペンションサブフレーム110、110に支持される各ロアアーム60は、車体幅方向に略平行に延びる前側アーム部61と、前側アーム部61の車体幅方向中間部から車体幅方向内側かつ後方へ略水平に延びる後側アーム部62とを有する。ロアアーム60は、全体として、平面視略L字形状に形成されている。
【0039】
ロアアーム60の車体幅方向の内側には、サスペンションサブフレーム110の比較的前側部分に連結する前側連結部61aと、サスペンションサブフレーム110の比較的後側部分に連結する後側連結部62aとが形成されている。前側連結部61aは、前側アーム部61の車体幅方向内側端部に設けられ、後側連結部62aは、後側アーム部62の後端部に設けられている。
【0040】
前側アーム部61の前側連結部61aは、サスペンションサブフレーム110の前端部とエクステンションフレーム130の後端部に跨がって取り付けられた前側ブラケット63によって、車体前後方向に延びる軸周りに揺動自在に支持されている。一方、後側アーム部62の後側連結部62aは、サスペンションサブフレーム110に取り付けられた後側ブラケット64によって、車体前後方向に延びる軸周りに揺動自在に支持されている。
【0041】
図4および図5に示すように、サスペンションサブフレーム110は、ロアアーム60を支持する本体部111を有している。サスペンションサブフレーム110の本体部111の前端部112には、エクステンションフレーム130の後端部が接続されている。なお、本体部111の後端部113は、後述する後側車体取付部X3を介してフロントサイドフレーム20に固定されている。
【0042】
サスペンションサブフレーム110の本体部111は、車体前後方向に延びるように配置された長尺部である。本体部111は、下側に開放する断面コ字状を有するアッパ部材114と、上側に開放する断面コ字状を有する下側のロア部材115とを備えている。アッパ部材114の下縁部とロア部材115の上縁部とは、例えば溶接によって互いに接合されている。本体部111は、アッパ部材114とロア部材115との間において、車体前後方向に連続する閉断面を形成している。
【0043】
具体的には、アッパ部材114は、上面部114aと、車体幅方向の外側面部114bおよび内側面部114cとを備え、ロア部材115は、下面部115aと、車体幅方向の外側面部115bおよび内側面部115cとを備えている。アッパ部材114とロア部材115の外側面部114b、115bと、内側面部114c、115cとがそれぞれ接合されて、車体前後方向に連続する閉断面を形成している(図5(d)参照)。
【0044】
アッパ部材114と、ロア部材115とによって、サスペンションサブフレーム110の本体部111の前端部112には、開口部116(図5(a)参照)が形成されている。
【0045】
図5(a)および図5(c)に示すように、エクステンションフレーム130は、サスペンションサブフレーム110の本体部111同様に、下側に開放する断面コ字状を有する上側のアッパ部材131と、上側に開放する断面コ字状を有する下側のロア部材132とにより、フレーム自体で車体前後方向に連続する閉断面を形成している。
【0046】
具体的には、アッパ部材131は、上面部131aと、車体幅方向の外側面部131bおよび内側面部131cとを備え、ロア部材132は、下面部132aと、車体幅方向の外側面部132bおよび内側面部132cとを備えている。アッパ部材131とロア部材132の外側面部131b、132bと、内側面部131c、132cとがそれぞれ接合されて、車体前後方向に連続する閉断面を形成している(図5(c)参照)。
【0047】
なお、エクステンションフレーム130の後端部133は、この後端部133よりも前側の部位に比べて外径が小さくなるように形成されている。
【0048】
サスペンションサブフレーム110における本体部111の前端部112の開口部116(図5(a)参照)にエクステンションフレーム130の後端部133が差し込まれることで、両フレーム110、130が互いに連結されている。この両フレーム110、130間の接続部80では、例えば溶接等により両フレーム110、130が接合されている。これにより、エクステンションフレーム130と、サスペンションサブフレーム110とが車体前後方向に一体的に連なっている(図5(a)参照)。
【0049】
なお、本実施形態においては、エクステンションフレーム130は、サスペンションサブフレーム110よりも車体前後方向の入力荷重に対する剛性が低く設定されている。これにより、車体前後方向に連なるエクステンションフレーム130およびサスペンションサブフレーム110に異なる機能を担わせることができる。具体的には、後側に位置する比較的高剛性のサスペンションサブフレーム110を荷重受け部として機能させ、前側に位置する比較的低剛性のエクステンションフレーム130に荷重吸収機能を発揮させることができる。
【0050】
次に、図3を参照しながら、サスペンションサブフレーム構造体100の左右のサスペンションサブフレーム110、110およびエクステンションフレーム130、130間に設けられた第1~第3クロスメンバ140、150、160について説明する。
【0051】
左右一対のエクステンションフレーム130、130における前端部134、134には、このエクステンションフレーム130、130の前端部134、134同士を車体幅方向に橋渡しするように略直線状に延びるフレーム状の第1クロスメンバ140が取り付けられている。
【0052】
右側のサスペンションサブフレーム110とエクステンションフレーム130との接続部80、および、左側のサスペンションサブフレーム110とエクステンションフレーム130との接続部80は、第2クロスメンバ150を介して互いに連結されている。
【0053】
第2クロスメンバ150は、左右のエクステンションフレーム130、130間を車体幅方向に延びて連結する前辺部151と、該前辺部151の左右両端部から車体後側に延びる左右辺部152、152と、左右辺部152、152間に配置された補強フレーム153とを有する。補強フレーム153は、左右辺部152、152の後端部間を車体幅方向に延びて連結する横フレーム部154と、該横フレーム部154と前辺部151との間を車体前後方向に延びて連結する縦フレーム部155とを有している。
【0054】
図5(b)に示すように、前辺部151は、車体幅方向に延びるとともに下側に開放された断面コ字状の前辺部アッパ部材156と、前辺部アッパ部材156の開放面を塞ぐプレート状のロア部材159とで構成されている。ロア部材159は、車体前後方向において前辺部アッパ部材156よりも広い幅を有し、前辺部アッパ部材156よりも後方に突出して配置されている。また、ロア部材159は、エクステンションフレーム130とサスペンションサブフレーム110とに跨がる車体前後方向領域に配置されている。
【0055】
前辺部アッパ部材156は、上面部156aと、前面部156bと、後面部156cとを有している。前辺部アッパ部材156は、ロア部材159の上面159aに配置されるとともに、前面部156bが、ロア部材159の前端部159bに沿って配置されている。前面部156bおよび後面部156cの下端部が、ロア部材159の上面159aに接合されることによって、前辺部アッパ部材156とロア部材159との間に、車体幅方向に連続する閉断面が形成されている。
【0056】
図5(c)に示すように、前辺部アッパ部材156の上面部156aは、その車体幅方向両縁部156d、156dにおいて、エクステンションフレーム130、130の上面部131a、131aに接合されている。
【0057】
図5(c)および図5(d)に示すように、ロア部材159の車体幅方向の両端部159c、159cは、エクステンションフレーム130、130の下面部132a、132aと、サスペンションサブフレーム110、110の本体部111、111の下面部115a、115aとに接合されている。
【0058】
図5(d)に示すように、左右辺部152、152は、前述の前辺部アッパ部材156に一体に連なる左右辺部アッパ部材157、157と、前述のロア部材159とで構成されている。左右辺部アッパ部材157は、車体前後方向に延びるように配置され、その前端部において前辺部アッパ部材156に連なっている。これにより、前辺部アッパ部材156と左右辺部アッパ部材157、157とは、全体として、平面視において車体後方側に開口するU字状に形成されている(図3参照)。
【0059】
左右辺部アッパ部材157では、車体幅方向の外縁部157aに比べて、内縁部157bが低く配置されている。左右辺部アッパ部材157は、外縁部157aから内縁部157bに向かって次第に低くなる斜面部157cを有する。
【0060】
左右辺部アッパ部材157、157の内縁部157b、157bは、ロア部材159の上面159aに接合され、外縁部157a、157aは、サスペンションサブフレーム110、110の本体部111、111の上面部114a、114aに接合されている。
【0061】
これにより、左右辺部アッパ部材157、157と、ロア部材159と、サスペンションサブフレーム110、110の本体部111、111の内側面部114c、115cとによって、車体前後方向に連続する閉断面が形成されている。
【0062】
図3に示すように、第2クロスメンバ150の左右辺部152、152は、平面視において、車体前方側に向かって次第に拡大された幅を有する。これにより、前辺部151と、左右辺部152、152との間のコーナ部に、円弧状の輪郭を有する補強部151A、151Aがそれぞれ形成されている。これにより、サスペンション装置のロアアーム60からの横力に対する剛性が高められているので、サスペンションサブフレーム110およびエクステンションフレーム130の車体幅方向内側への変形が抑制される。
【0063】
前述のように、第2クロスメンバ150は、第2クロスメンバ150の左右辺部152、152の後端部間を繋ぐ横フレーム部154と、該横フレーム部154の中間部と前辺部151の中間部とを繋ぐ縦フレーム部155によって、略T字状をなす補強フレーム153を備えている。
【0064】
図5(b)に示すように、横フレーム部154は、車体幅方向に延びるとともに下側に開放された断面コ字状に形成されている。一方、縦フレーム部155は、車体前後方向に延びるとともに下側に開放された断面コ字状に形成されている。
【0065】
横フレーム部154は、上面部154aと、車体前方の前面部154bと、車体後方の後面部154cとを有し、後面部154cは、ロア部材159の後端部159dに沿って配置されている。横フレーム部154の前面部154bおよび後面部154cは、ロア部材159の上面159aに接合されている。これにより、横フレーム部154とロア部材159との間に、車体幅方向に連続する閉断面が形成されている。なお、横フレーム部154の両側部154d、154eは、それぞれ左右辺部152、152の斜面部157c、157cに接合されている(図3、4参照)。
【0066】
縦フレーム部155は、上面部155aと、車体幅方向の両側面部155b、155bとを有し、両側面部155b、155bの下端部が、ロア部材159に接合されている、これにより、縦フレーム部155とロア部材159との間に、車体前後方向に連続する閉断面が形成されている。なお、縦フレーム部155の前端部155cは、前辺部151の後面部156cに接合されている。
【0067】
ここで、図4を参照しながら、エクステンションフレーム130およびサスペンションサブフレーム110に対する第2クロスメンバ150の接合領域Zに関して、詳細に説明する。
【0068】
前述のように、第2クロスメンバ150の前辺部アッパ部材156の外縁部156d、156dおよび左右辺部アッパ部材157、157の外縁部157a、157aは、エクステンションフレーム130、130における後端部133、133の上面部131a、131aおよびサスペンションサブフレーム110、110における前端部112、112の上面部114a、114aにそれぞれ接合されている。
【0069】
ロア部材159の両端部159c、159cは、エクステンションフレーム130、130における後端部133、133の下面部132a、132aおよびサスペンションサブフレーム110、110における前端部112、112の下面部115a、115aに接合されている。
【0070】
これにより、第2クロスメンバ150が、エクステンションフレーム130とサスペンションサブフレーム110との接続部80に跨がるとともに、車体幅方向内側から銜え込むように接合されているので、特に、両フレーム110、130間の接続部80の上下方向および車体幅方向内側への折れが抑制されている。
【0071】
また、エクステンションフレーム130の後端部133と、サスペンションサブフレーム110の前端部112の車体幅方向の外側面132b、131b、114b、115b側には、前述のように、サスペンション装置のロアアーム60が前側ブラケット63を介して支持されている。この前側ブラケット63は、図6の底面図に示すように、エクステンションフレーム130の後端部133と、サスペンションサブフレーム110の前端部112との車体幅方向の外側面部132b、131b、114b、115b側の下面部115a、132aにおいて、両フレーム110、130に連続するように接合されている(W)。
【0072】
これにより、エクステンションフレーム130とサスペンションサブフレーム110との接続部80は、車体幅方向内側においては、第2クロスメンバ150の左右辺部152によって補強され、車体幅方向外側においては、前側ブラケット63によって補強されている。その結果、両フレーム130、110間の接続部80における折れ変形をより効果的に抑制することができる。なお、車体幅方向外側には、前側ブラケット63を用いることで、部品を追加することなく両フレーム110、130の接続部80の補強が果たされている。
【0073】
図4に示すように、第2クロスメンバ150の車体幅方向外側端部は、エクステンションフレーム130およびサスペンションサブフレーム110に跨がって接合されている。すなわち、エクステンションフレーム130およびサスペンションサブフレーム110に対する第2クロスメンバ150の接合領域Zは、エクステンションフレーム130に接合されるエクステンションフレーム側接合領域81と、サスペンションサブフレーム110に接合されるサスペンションサブフレーム側接合領域82とを有している。
【0074】
この接合領域Zの車体前後方向の寸法は、サスペンションサブフレーム側接合領域82に比して、エクステンションフレーム側接合領域81が短く設定されている。
【0075】
エクステンションフレーム側接合領域81が必要以上に長く形成されることが回避されていることにより、車体前方からの衝撃荷重入力時におけるエクステンションフレーム130の変形が第2クロスメンバ150によって阻害されることが抑制されている。したがって、エクステンションフレーム130の衝撃吸収機能を良好に発揮することが可能となっている。
【0076】
一方、サスペンションサブフレーム側接合領域82が比較的長く形成されていることにより、車体前後方向の荷重に対するサスペンションサブフレーム110の強度および剛性の向上が図られている。そのため、車体前方からの衝撃荷重入力時において、サスペンションサブフレーム110、110が荷重受け部としての機能を良好に発揮することができ、これにより、エクステンションフレーム130、130が衝撃吸収機能を良好に発揮することが可能となっている。
【0077】
図3に示すように、サスペンションサブフレーム110、110の後端部113、113には、後端部113、113同士を車体幅方向に接続する第3クロスメンバ160が連結されている。第3クロスメンバ160は、車体幅方向に延びるプレート部材であり、サスペンションサブフレーム110、110の後端部113、113に複数のボルト161…161等によって、下方から固定されている。
【0078】
さらに、上述のサブフレーム構造体100には、図2に示すように、フロントサイドフレーム20、20への取付部として、左右それぞれに、前側車体取付部X1、X1と、中間車体取付部X2、X2と、後側車体取付部X3、X3との3箇所ずつ設けられており、以下それぞれについて説明する。
【0079】
前側車体取付部X1は、エクステンションフレーム130の前端部134に設けられた接続部材71によって構成されている。具体的には、接続部材71は、その下部72がエクステンションフレーム130に接続されており、該接続箇所から上方に延在したタワー形状に形成されている。
【0080】
さらに接続部材71は、中空箱型形状に形成されており、その車体幅方向外側部分の上面部73が、マウントブッシュ74を介してフロントサイドフレーム20のアウタパネル25の下面25aに対して締結部材75によって取り付けられている。
【0081】
なお、接続部材71の縦壁状の前面76には、取り付けプレート57を介して、サブクラッシュカン55が接続されている。
【0082】
中間車体取付部X2は、パワートレインマウントブラケット(以下、単に「マウントブラケット」ともいう)90によって構成されている。マウントブラケット90には、パワートレイン4(図3参照)を弾性支持するためのエンジンマウント(図示せず)が収容されている。マウントブラケット90は、サスペンションサブフレーム110の本体部111に固定されている。なお、本実施形態において、マウントブラケット90は、アルミダイキャスト等の鋳造により一体成形されている。ただし、マウントブラケット90の材質はアルミニウムに限られるものでない。
【0083】
マウントブラケット90には、上方に開口した収容空間を有する中空状の収容部91が設けられている。収容部91は、例えば円筒状に形成されている。収容部91には、パワートレイン4側に備えられたパワートレイン側ブラケットに接続されるマウント支持構造体(図示せず)が収容されている。
【0084】
マウントブラケット90には、サスペンションサブフレーム構造体100に締結されるための複数の締結部92、93、94が設けられている。複数の締結部92、93、94は、マウントブラケット90の前縁部に設けられた前側締結部92と、マウントブラケット90の後縁部に設けられた後側締結部93と、前側締結部92と後側締結部93との間に設けられた中間締結部94とで構成されている。
【0085】
具体的に、これらの締結部92、93、94は、マウントブラケット90における収容部91の外周部91aの下端部から外側に延びる複数のフランジ部92a、93a、94aで構成されている。これらのフランジ部92a、93a、94aには、ボルト挿通孔(図示せず)が備えられており、該ボルト挿通孔に差し込まれるボルトによってサスペンションサブフレーム構造体100に締結されている。
【0086】
一方、サスペンションサブフレーム110には、マウントブラケット90の前側締結部92および後側締結部93のボルト挿通孔に対応する位置に、該マウントブラケット90を取り付けるためのボルト締結孔111a、111bが設けられている(図4参照)。
【0087】
第2クロスメンバ150の左右辺部152には、中間締結部94のボルト挿通孔に対応する位置に、マウントブラケット90を取り付けるためのボルト締結孔152aが設けられている。中間締結部94は、車体前後方向において横フレーム部154と略同一の位置で左右辺部152、152の後端近傍部に締結されている。これにより、マウントブラケット90が車体幅方向内側に倒れるように変位する(所謂「内倒れ」)が抑制されている。
【0088】
マウントブラケット90のボルト締結孔およびサスペンションサブフレーム110および左右辺部152のボルト締結孔111a、111b、152aに挿通されたボルト92c、93c、94cは、サスペンションサブフレーム110および左右辺部152の下面115a、159に設けられた図示しないウェルドナットに螺合さて締め付けられる。これにより、サスペンションサブフレーム110にマウントブラケット90が締結されている。
【0089】
マウントブラケット90には、収容部91の上壁面91bの車体幅方向外縁から車体幅方向外側かつ上方に延出する張り出し部95が形成されている。張り出し部95における車体幅方向の外端部95aには、上方に突出するように柱状部95bが設けられている。この柱状部95bは、フロントサイドフレーム20における前側直線部21の後部で、アウタパネル25の下面25aにボルト95cによって取り付けられ、中間車体取付部X2を構成している。なお、中間車体取付部X2は、フロントサイドフレーム20に、ラバーブッシュ等の減衰要素を介することなく剛結合されている。
【0090】
後側車体取付部X3は、図2および図3に示すように、サスペンションサブフレーム110の本体部111の後端部113の側方に設けられている。後側車体取付部X3は、上側に配置される上側プレート部材121と、下側に配置される下側プレート部材122とを有している。
【0091】
上側プレート部材121および下側プレート部材122は、図4に示すように、それぞれ、サスペンションサブフレーム110の車体幅方向の外側面部114b、115bと平行に延びる側縁部121a、122aと、車体後方に向かって車体幅方向外側に傾斜した方向に延びる前縁部121b、122bと、側縁部121a、122aと前縁部121b、122bの後端部を繋ぐ後縁部121c、122cとを有し、全体として平面視で略三角形状に形成されている。
【0092】
上側プレート部材121と下側プレート部材122は、それぞれの後縁部121c、122cに設けられたフランジ部(図示せず)同士が溶接されることで、互いに結合されている。
【0093】
上側プレート部材121の側縁部121aは、サスペンションサブフレーム110の本体部111における後部の上面114aに例えば溶接により接合され、下側プレート部材122の側縁部122aは、サスペンションサブフレーム110の本体部111における後部の下面115aに接合されている。これにより、後側車体取付部X3が、サスペンションサブフレーム110の本体部111に接合されている。
【0094】
後側車体取付部X3の上側プレート部材121および下側プレート部材122には、サスペンションサブフレーム110の本体部111から車体幅方向外側に離間した位置にサスペンションサブフレーム110をフロントサイドフレーム20に締結するためのボルト挿通孔121e、122eが設けられている。
【0095】
一方、フロントサイドフレーム20の傾斜部22の後端部には、後側車体取付部X3を固定するためのブラケット26が下側から接合されている。ブラケット26の上面には、ボルト125がねじ込まれるウェルドナット(図示せず)が接合されている。
【0096】
後側車体取付部X3では、下側プレート部材122のボルト挿通孔122eと、スリーブ部材124の孔(図示せず)と、上側プレート部材121のボルト挿通孔121eとに下側から差し込まれたボルト125の先端部が、ブラケット26の上記ウェルドナットに螺合されている。これにより、サスペンションサブフレーム110は、後側車体取付部X3においてフロントサイドフレーム20の下面に締結固定されている。
【0097】
本実施形態においては、図3の平面図に示すように、上記の構成に加えて、車両の旋回時におけるローリングを抑制するためのスタビライザ200が設けられている。スタビライザ200は、車体幅方向に延びるように配置されている。スタビライザ200は、左右の前輪用のサスペンション部材(図示せず)間を連結するトーションバーで構成されている。
【0098】
スタビライザ200は、車体幅方向に延びるトーション部201と、該トーション部201の先端から車体幅方向外側に向かって斜め後方に延びる左右一対のアーム部202とを備えている。
【0099】
スタビライザ200は、各アーム部202、202の先端が図示しないサスペンション装置にそれぞれ連結されている。各アーム部202の基端部は、車体側に固定された支持ブラケット204に、ブッシュ203を介して回転可能に支持されている。本実施形態においては、スタビライザ200は、支持ブラケット204、204を介して一対のエクステンションフレーム130、130の上面部131a、131aに支持されている。
【0100】
ところで、前述のように、エクステンションフレーム130、130は、車体前方からの衝撃荷重入力時において、変形することによって衝撃吸収機能を発揮する。しかしながら、エクステンションフレーム130、130における支持ブラケット204、204の取付けられた部位においては、エクステンションフレーム130、130の剛性が高められることで、エクステンションフレーム130、130の衝撃吸収機能が損なわれる可能性がある。
【0101】
この点に関して、本実施形態においては、エクステンションフレーム130、130の衝撃吸収機能の阻害を抑制し得るスタビライザ200の支持構造が採用されている。以下、スタビライザ200の支持構造を具体的に説明する。
【0102】
図3に示すように、各エクステンションフレーム130の上面部131aには、第1クロスメンバ140と第2クロスメンバ150との間の車体前後方向位置に、支持台座210を介して支持ブラケット204が固定されている。支持ブラケット204と支持台座210は、スタビライザ200を支持する支持部材を構成している。
【0103】
図7(a)の側面図および図7(b)の平面図に示すように、支持台座210は、車体前後方向に延びるベース部211と、該ベース部211の前端から下方に延びる前側固定部としての前側縦壁部212と、ベース部211の後端から下方に延びる後側固定部としての後側縦壁部213とを有している。支持台座210のベース部211は、車体前方側に向かって次第に車体幅方向寸法が広くなるように形成されている。
【0104】
支持台座210の前側縦壁部212および後側縦壁部213は、車体前後方向に直交するように配置されたプレート状部である。前側縦壁部212および後側縦壁部213は、それぞれの下縁部214、215において例えば溶接によってエクステンションフレーム130の上面部131aに接合されている。
【0105】
図8(a)に示すように、支持台座210の前側縦壁部212の下縁部214の車体幅方向外側端部には、下方へ延びる延設部214aが設けられている。延設部214aは、エクステンションフレーム130の上面部131aと外側面部131bとのコーナ部、および外側面部131bに沿って配置されている。これにより、前側縦壁部212の下縁部214は、エクステンションフレーム130の上面部131aから外側面部131bに亘る第1接合領域W1において、エクステンションフレーム130に接合されている。
【0106】
一方、図8(c)に示すように、後側縦壁部213の下縁部215の車体幅方向外側端部にも、下方へ延びる延設部215aが設けられている。延設部215aは、エクステンションフレーム130の上面部131aと外側面部131bとのコーナ部の一部に沿って配置されている。これにより、後側縦壁部213の下縁部215は、エクステンションフレーム130の上面部131aからその外側のコーナ部の一部に亘る第2接合領域W2において、エクステンションフレーム130に接合されている。
【0107】
上記の後側縦壁部213の延設部215aは、前側縦壁部212の延設部214aよりも短く形成されている。これにより、第2接合領域W2は、第1接合領域W1よりも短く形成されている。また、第1接合領域W1では、前側縦壁部212がエクステンションフレーム130の上面部131aだけでなく外側面部131bにも接合されているのに対して、第2接合領域W2では、後側縦壁部213がエクステンションフレーム130の外側面部131bに接合されていない。したがって、エクステンションフレーム130に対する後側縦壁部213の固定強度は、エクステンションフレーム130に対する前側縦壁部212の固定強度よりも低くなっている。
【0108】
また、前側縦壁部212の高さ(エクステンションフレーム130の上面部131aから前側縦壁部212の上端までの高さ)H1に比して、後側縦壁部213の高さ(エクステンションフレーム130の上面部131aから後側縦壁部213の上端までの高さ)H2は高くなっている。
【0109】
支持台座210は、前側縦壁部212と後側縦壁部213との間の車体前後方向領域がエクステンションフレーム130から離間した状態で、前側縦壁部212の下縁部214および後側縦壁部213の下縁部215のみにおいてエクステンションフレーム130に固定されている。
【0110】
ベース部211の前側縦壁部212と後側縦壁部213との間、かつ、ベース部211の下面211bには、下側に開放する断面コ字状を有する車体前後方向に延びるリブ部としてのリブ部材216が例えば溶接等によって接合されている。なお、本実施形態では、支持台座210と、リブ部材216とが、別体で形成されているが、支持台座210と、リブ部材216とは一体に形成されてもよい。
【0111】
次に、本実施形態に係るサスペンションサブフレーム構造体100を備えた車体前方側からの衝撃荷重入力時の挙動について説明する。
【0112】
まず、車体前方側からバンパレインフォースメント54に入力された衝撃荷重は、メインクラッシュカン53、53およびフロントサイドフレーム20、20を経由して車体後方側へ伝達される。また、車体前方側からサブバンパレインフォースメント58に入力された衝撃荷重は、サブクラッシュカン55、55、エクステンションフレーム130、130、およびサスペンションサブフレーム110、110の本体部111、111および後側固定部X3、X3を経由してフロントサイドフレーム20、20に伝達される。このように、本実施形態によれば、車体後方側への荷重伝達を、2系統のロードパスに分散して行うことができる。
【0113】
また、車体前方側から比較的大きな衝撃荷重がバンパレインフォースメント54およびサブバンパレインフォースメント58に入力された時は、メインクラッシュカン53、53およびサブクラッシュカン55、55が潰されることで、衝撃吸収が果たされる。このクラッシュカン53、53、55、55の潰れ変形によっても吸収されない衝撃荷重は、フロントサイドフレーム20、20およびエクステンションフレーム130、130の前端部に入力され、上記2系統のロードパスを経由して車体後方に向かって伝達される。
【0114】
より大きな衝撃荷重が車体前方側から入力されたときは、フロントサイドフレーム20、20およびエクステンションフレーム130、130が変形されることで、衝撃荷重が吸収される。このとき、サスペンションサブフレーム110、110は、上述した閉断面構造により荷重受け部として効果的に機能するので、エクステンションフレーム130、130の衝撃吸収機能が高められている。
【0115】
このとき、仮に、スタビライザ200が支持ブラケット204および支持台座210を介してエクステンションフレーム130に強固に固定されている場合、特に、支持台座210とオーバーラップする車体前後方向領域L(図7(a)参照)において、エクステンションフレーム130の変形が阻害されてしまうことで、エクステンションフレーム130による衝撃吸収機能が損なわれる可能性がある。
【0116】
この点に関して、本実施形態において、支持台座210は、前側縦壁部212と、後側縦壁部213との間の車体前後方向領域においてエクステンションフレーム130に接合されていない。また、前側縦壁部212に比べて脆弱にエクステンションフレーム130に固定された後側縦壁部213は、比較的容易にエクステンションフレーム130から離脱する。
【0117】
さらに、前側縦壁部212に比べて大きな高さH2(図8(c)参照)を有する後側縦壁部213は、車体前方から衝撃荷重が入力された時に車体後方側へ倒れるような変形、または、高さ方向の中間部で折れ曲がるような変形が生じやすい。そのため、後側縦壁部213では、エクステンションフレーム130からより離脱しやすくなっている。
【0118】
また、ベース部211の下面211bのリブ部材216によって、ベース部211の車体前後方向における剛性が高められているので、後側固定部213の変形、および、エクステンションフレーム130からの後側縦壁部213の離脱がより効果的に促進される。
【0119】
したがって、本実施形態によれば、エクステンションフレーム130にスタビライザ200を支持させる構成でありながら、車体前方側からの衝撃荷重入力時において、この衝撃荷重を吸収するためのエクステンションフレーム130の変形がスタビライザ200、支持ブラケット204、および支持台座210によって阻害されることが効果的に抑制される。
【0120】
なお、本実施形態においては、エクステンションフレーム130上に支持される所定の部材として、スタビライザ200を用いて説明したが、本発明は、エクステンションフレーム130上に支持される他の部材(例えばステアリングギヤボックス等)にも適用可能である。
【0121】
また、本実施形態においては、前側固定部212と後側固定部213とは、前側固定部212の接合領域W1と後側固定部213の接合領域W2、および、前側固定部のエクステンションフレーム130からの高さH1と後側固定部213のエクステンションフレーム130からの高さH2を異ならせることで、後側固定部の固定強度を前側固定部よりも低く設けられているが、接合領域W1、W2と高さH1、H2の関係は、どちらか一方が備えられてもよい。
【0122】
また、本実施形態においては、前側固定部212に比して、後側固定部213の結合強度を低く設定されているが、逆であってもよい。後側固定部213に比して、前側固定部212の接合強度を低く設定することによっても同様の作用効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
以上のように、本発明によれば、サスペンションサブフレーム構造体では、エクステンションフレームの衝撃吸収機能の良好な発揮と、前述のスタビライザ等の所定の周辺部材の適切な支持との両立を図ることができるので、車両の車体の製造産業分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0124】
60、60 ロアアーム(サスペンション部材)
100 サスペンションサブフレーム構造体
110、110 サスペンションサブフレーム
130、130 エクステンションフレーム
200、200 スタビライザ(所定の部材)
210、210 支持台座(支持部材)
212、212 前側縦壁部(前側固定部)
213、213 後側縦壁部(後側固定部)
216、216 リブ部材(リブ部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8