(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】エネルギー取引支援システム、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/08 20120101AFI20220426BHJP
G06Q 30/02 20120101ALI20220426BHJP
G06Q 50/06 20120101ALI20220426BHJP
【FI】
G06Q10/08
G06Q30/02 320
G06Q50/06
(21)【出願番号】P 2019162290
(22)【出願日】2019-09-05
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田原 康佐
(72)【発明者】
【氏名】石垣 将紀
(72)【発明者】
【氏名】石川 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】片岡 良介
(72)【発明者】
【氏名】山田 洋行
【審査官】橘 均憲
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-077522(JP,A)
【文献】特開2004-298326(JP,A)
【文献】特開2004-327404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギーを貯蔵する可搬型貯蔵器を複数の当事者間でやり取りするエネルギー取引を支援するエネルギー取引支援システムであって、
可搬型貯蔵器の受取地点及び受取時点を含む取引条件を取得する取得手段と、
可搬型貯蔵器毎の稼働計画を含む第1貯蔵器情報を外部から収集する収集手段と、
前記収集手段により収集された前記第1貯蔵器情報を用いて特定可能な複数の可搬型貯蔵器の中から、前記取得手段により取得された前記受取時点に稼働の予定がない1つ以上の可搬型貯蔵器を提供対象として選択する第1選択手段と、
前記第1選択手段により選択された前記提供対象の可搬型貯蔵器を前記受取時点に又は該受取時点よりも前に前記受取地点まで移動させる移動手段と、
を備え
、
前記移動手段は、可搬型貯蔵器に設けられた自走機構であることを特徴とするエネルギー取引支援システム。
【請求項2】
エネルギーを貯蔵する可搬型貯蔵器を複数の当事者間でやり取りするエネルギー取引を支援するエネルギー取引支援システムであって、
可搬型貯蔵器の受取地点及び受取時点を含む取引条件を取得する取得手段と、
可搬型貯蔵器毎の稼働計画を含む第1貯蔵器情報を外部から収集する収集手段と、
前記収集手段により収集された前記第1貯蔵器情報を用いて特定可能な複数の可搬型貯蔵器の中から、前記取得手段により取得された前記受取時点に稼働の予定がない1つ以上の可搬型貯蔵器を提供対象として選択する第1選択手段と、
前記第1選択手段により選択された前記提供対象の可搬型貯蔵器を前記受取時点に又は該受取時点よりも前に前記受取地点まで移動させる移動手段と、
前記エネルギー取引に伴うインセンティブを管理するための管理処理を行う管理処理手段と、
を備え、
前記管理処理手段は、再生可能エネルギーを利用する取引に対して、再生可能エネルギーを利用しない取引と比べて相対的に高いインセンティブを付与する管理処理を行うことを特徴とするエネルギー取引支援システム。
【請求項3】
エネルギーを貯蔵する可搬型貯蔵器を複数の当事者間でやり取りするエネルギー取引を支援するエネルギー取引支援システムであって、
可搬型貯蔵器の受取地点及び受取時点を含む取引条件を取得する取得手段と、
可搬型貯蔵器毎の稼働計画を含む第1貯蔵器情報を外部から収集する収集手段と、
前記収集手段により収集された前記第1貯蔵器情報を用いて特定可能な複数の可搬型貯蔵器の中から、前記取得手段により取得された前記受取時点に稼働の予定がない1つ以上の可搬型貯蔵器を提供対象として選択する第1選択手段と、
前記第1選択手段により選択された前記提供対象の可搬型貯蔵器を前記受取時点に又は該受取時点よりも前に前記受取地点まで移動させる移動手段と、
を備え、
前記提供対象の可搬型貯蔵器が、特定の機器に固定された状態でエネルギーを貯蔵可能な固定型貯蔵器と併せて用いられる場合、
前記第1選択手段は、前記固定型貯蔵器に関する第2貯蔵器情報を用いて、可搬型貯蔵器の提供の要否又は前記提供対象の可搬型貯蔵器を選択することを特徴とするエネルギー取引支援システム。
【請求項4】
使用者の操作に応じて前記取引条件を指定可能に構成される使用者端末をさらに備え、
前記第1選択手段は、前記使用者端末を用いて指定された前記取引条件をすべて満たすように前記提供対象の可搬型貯蔵器を選択する
ことを特徴とする請求項1
~3のいずれか1項に記載のエネルギー取引支援システム。
【請求項5】
可搬型貯蔵器とともに用いられる貸出物の使用地点及び使用開始時点を含む貸出条件を、使用者の操作に応じて指定可能に構成される使用者端末と、
前記使用者端末を用いて指定された前記貸出条件に従って前記貸出物に関する貸出処理を行う貸出業務サーバをさらに備え、
前記取得手段は、前記使用地点に対応する前記受取地点及び前記使用開始時点に対応する前記受取時点を含む前記取引条件を前記貸出業務サーバから取得する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のエネルギー取引支援システム。
【請求項6】
可搬型貯蔵器に設けられて自器の使用を制限する使用制限手段と、
非常時の状況を示す所定の条件を満たす場合に前記使用制限手段による使用の制限を一時的に解除するように制御を行う制御手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1~
5のいずれか1項に記載のエネルギー取引支援システム。
【請求項7】
前記取得手段、前記収集手段、及び前記第1選択手段は、1つ又は複数の管理サーバにより構成されることを特徴とする請求項1~
6のいずれか1項に記載のエネルギー取引支援システム。
【請求項8】
複数の施設にそれぞれ対応付けられ、かつ各々の施設内にある可搬型貯蔵器に関する前記第1貯蔵器情報を取得可能に構成される複数の施設側端末をさらに備え、
前記管理サーバは、前記複数の施設側端末から前記第1貯蔵器情報を収集する
ことを特徴とする請求項
7に記載のエネルギー取引支援システム。
【請求項9】
エネルギーを貯蔵する可搬型貯蔵器を複数の当事者間でやり取りするエネルギー取引を支援するエネルギー取引支援方法であって、
可搬型貯蔵器の受取地点及び受取時点を含む取引条件を取得する取得ステップと、
可搬型貯蔵器毎の稼働計画を含む貯蔵器情報を外部から収集する収集ステップと、
収集された前記貯蔵器情報を用いて特定可能な複数の可搬型貯蔵器の中から、取得された前記受取時点に稼働の予定がない1つ以上の可搬型貯蔵器を提供対象として選択する選択ステップと、
を1つ又は複数のコンピュータが実行し、
選択された前記提供対象の可搬型貯蔵器を、移動手段を用いて前記受取時点に又は該受取時点よりも前に前記受取地点まで移動させ
、
前記移動手段は、可搬型貯蔵器に設けられた自走機構であることを特徴とするエネルギー取引支援方法。
【請求項10】
エネルギーを貯蔵する可搬型貯蔵器を複数の当事者間でやり取りするエネルギー取引を支援するエネルギー取引支援方法であって、
可搬型貯蔵器の受取地点及び受取時点を含む取引条件を取得する取得ステップと、
可搬型貯蔵器毎の稼働計画を含む貯蔵器情報を外部から収集する収集ステップと、
収集された前記貯蔵器情報を用いて特定可能な複数の可搬型貯蔵器の中から、取得された前記受取時点に稼働の予定がない1つ以上の可搬型貯蔵器を提供対象として選択する選択ステップと、
前記エネルギー取引に伴うインセンティブを管理するための管理処理を行う管理処理ステップと、
を1つ又は複数のコンピュータが実行し、
選択された前記提供対象の可搬型貯蔵器を、移動手段を用いて前記受取時点に又は該受取時点よりも前に前記受取地点まで移動させ、
前記管理処理ステップでは、再生可能エネルギーを利用する取引に対して、再生可能エネルギーを利用しない取引と比べて相対的に高いインセンティブを付与する管理処理を行うことを特徴とするエネルギー取引支援方法。
【請求項11】
エネルギーを貯蔵する可搬型貯蔵器を複数の当事者間でやり取りするエネルギー取引を支援するエネルギー取引支援方法であって、
可搬型貯蔵器の受取地点及び受取時点を含む取引条件を取得する取得ステップと、
可搬型貯蔵器毎の稼働計画を含む貯蔵器情報を外部から収集する収集ステップと、
収集された前記貯蔵器情報を用いて特定可能な複数の可搬型貯蔵器の中から、取得された前記受取時点に稼働の予定がない1つ以上の可搬型貯蔵器を提供対象として選択する選択ステップと、
を1つ又は複数のコンピュータが実行し、
選択された前記提供対象の可搬型貯蔵器を、移動手段を用いて前記受取時点に又は該受取時点よりも前に前記受取地点まで移動させ、
前記提供対象とされた可搬型貯蔵器が、特定の機器に固定された状態でエネルギーを貯蔵可能な固定型貯蔵器と併せて用いられる場合、
前記選択ステップは、前記固定型貯蔵器に関する第2貯蔵器情報を用いて、可搬型貯蔵器の提供の要否又は前記提供対象の可搬型貯蔵器を選択することを特徴とするエネルギー取引支援方法。
【請求項12】
エネルギーを貯蔵する可搬型貯蔵器を複数の当事者間でやり取りするエネルギー取引を支援するためのエネルギー取引支援プログラムであって、
可搬型貯蔵器の受取地点及び受取時点を含む取引条件を取得する取得ステップと、
可搬型貯蔵器毎の稼働計画を含む貯蔵器情報を外部から収集する収集ステップと、
収集された前記貯蔵器情報により特定可能な複数の可搬型貯蔵器の中から、取得された前記受取時点に稼働の予定がない1つ以上の可搬型貯蔵器を提供対象として選択する選択ステップと、
選択された前記提供対象の可搬型貯蔵器を前記受取時点に又は該受取時点よりも前に前記受取地点まで移動させる指示を行う指示ステップと、
を1つ又は複数のコンピュータに実行させ
、
選択された前記提供対象の可搬型貯蔵器を、移動手段を用いて前記受取時点に又は該受取時点よりも前に前記受取地点まで移動させ
、
前記移動手段は、可搬型貯蔵器に設けられた自走機構であることを特徴とするエネルギー取引支援プログラム。
【請求項13】
エネルギーを貯蔵する可搬型貯蔵器を複数の当事者間でやり取りするエネルギー取引を支援するためのエネルギー取引支援プログラムであって、
可搬型貯蔵器の受取地点及び受取時点を含む取引条件を取得する取得ステップと、
可搬型貯蔵器毎の稼働計画を含む貯蔵器情報を外部から収集する収集ステップと、
収集された前記貯蔵器情報により特定可能な複数の可搬型貯蔵器の中から、取得された前記受取時点に稼働の予定がない1つ以上の可搬型貯蔵器を提供対象として選択する選択ステップと、
選択された前記提供対象の可搬型貯蔵器を前記受取時点に又は該受取時点よりも前に前記受取地点まで移動させる指示を行う指示ステップと、
前記エネルギー取引に伴うインセンティブを管理するための管理処理を行う管理処理ステップと、
を1つ又は複数のコンピュータに実行させ、
選択された前記提供対象の可搬型貯蔵器を、移動手段を用いて前記受取時点に又は該受取時点よりも前に前記受取地点まで移動させ、
前記管理処理ステップでは、再生可能エネルギーを利用する取引に対して、再生可能エネルギーを利用しない取引と比べて相対的に高いインセンティブを付与する管理処理を行うことを特徴とするエネルギー取引支援プログラム。
【請求項14】
エネルギーを貯蔵する可搬型貯蔵器を複数の当事者間でやり取りするエネルギー取引を支援するためのエネルギー取引支援プログラムであって、
可搬型貯蔵器の受取地点及び受取時点を含む取引条件を取得する取得ステップと、
可搬型貯蔵器毎の稼働計画を含む貯蔵器情報を外部から収集する収集ステップと、
収集された前記貯蔵器情報により特定可能な複数の可搬型貯蔵器の中から、取得された前記受取時点に稼働の予定がない1つ以上の可搬型貯蔵器を提供対象として選択する選択ステップと、
選択された前記提供対象の可搬型貯蔵器を前記受取時点に又は該受取時点よりも前に前記受取地点まで移動させる指示を行う指示ステップと、
を1つ又は複数のコンピュータに実行させ、
選択された前記提供対象の可搬型貯蔵器を、移動手段を用いて前記受取時点に又は該受取時点よりも前に前記受取地点まで移動させ、
前記提供対象とされた可搬型貯蔵器が、特定の機器に固定された状態でエネルギーを貯蔵可能な固定型貯蔵器と併せて用いられる場合、
前記選択ステップは、前記固定型貯蔵器に関する第2貯蔵器情報を用いて、可搬型貯蔵器の提供の要否又は前記提供対象の可搬型貯蔵器を選択することを特徴とするエネルギー取引支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギーを貯蔵する可搬型貯蔵器を複数の当事者間でやり取りするエネルギー取引を支援するエネルギー取引支援システム、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、シェアリングエコノミーの普及に伴い、例えばバッテリの収集、充電及び分配するための装置(いわゆる、エネルギーステーション)を各エリア内に設置し、複数のユーザ間でバッテリを共有するシステムが提案されている。
【0003】
特許文献1には、バッテリの余剰がある第1充電ステーションと、バッテリが不足している第2充電ステーションが混在している場合、第1充電ステーションにある余剰分のバッテリを第2充電ステーションに物理的に移動させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エネルギーステーションを拠点としてエネルギーの取引を行う場合、当事者は、エネルギーの貯蔵器をやり取りするために最寄りのステーションに立ち寄らなければならず、地理的又は時間的な観点で不便に感じてしまうことがある。
【0006】
本発明の目的は、エネルギーステーションを拠点としてエネルギーの取引を行う場合と比べて、より柔軟性が高い取引をより効率的に実行可能とするエネルギー取引支援システム、方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明におけるエネルギー取引支援システムは、エネルギーを貯蔵する可搬型貯蔵器を複数の当事者間でやり取りするエネルギー取引を支援するシステムであって、可搬型貯蔵器の受取地点及び受取時点を含む取引条件を取得する取得手段と、可搬型貯蔵器毎の稼働計画を含む第1貯蔵器情報を外部から収集する収集手段と、前記収集手段により収集された前記第1貯蔵器情報を用いて特定可能な複数の可搬型貯蔵器の中から、前記取得手段により取得された前記受取時点に稼働の予定がない1つ以上の可搬型貯蔵器を提供対象として選択する第1選択手段と、前記第1選択手段により選択された前記提供対象の可搬型貯蔵器を前記受取時点に又は該受取時点よりも前に前記受取地点まで移動させる移動手段と、を備える。
【0008】
また、前記移動手段は、可搬型貯蔵器に設けられた自走機構であってもよい。
【0009】
また、当該エネルギー取引支援システムは、使用者の操作に応じて前記取引条件を指定可能に構成される使用者端末をさらに備え、前記第1選択手段は、前記使用者端末を用いて指定された前記取引条件をすべて満たすように前記提供対象の可搬型貯蔵器を選択してもよい。
【0010】
また、当該エネルギー取引支援システムは、前記エネルギー取引に伴うインセンティブを管理するための管理処理を行う管理処理手段をさらに備え、前記管理処理手段は、再生可能エネルギーを利用する取引に対して、再生可能エネルギーを利用しない取引と比べて相対的に高いインセンティブを付与する管理処理を行ってもよい。
【0011】
また、当該エネルギー取引支援システムは、可搬型貯蔵器とともに用いられる貸出物の使用地点及び使用開始時点を含む貸出条件を、使用者の操作に応じて指定可能に構成される使用者端末と、前記使用者端末を用いて指定された前記貸出条件に従って前記貸出物に関する貸出処理を行う貸出業務サーバをさらに備え、前記取得手段は、前記使用地点に対応する前記受取地点及び前記使用開始時点に対応する前記受取時点を含む前記取引条件を前記貸出業務サーバから取得してもよい。
【0012】
また、前記提供対象の可搬型貯蔵器が、特定の機器に固定された状態でエネルギーを貯蔵可能な固定型貯蔵器と併せて用いられる場合、前記第1選択手段は、前記固定型貯蔵器に関する第2貯蔵器情報を用いて、可搬型貯蔵器の提供の要否又は前記提供対象の可搬型貯蔵器を選択してもよい。
【0013】
また、前記第1選択手段は、予め区画されたエリアにおける可搬型貯蔵器の流入及び流出に伴う効用を示す目的関数に従って前記提供対象の可搬型貯蔵器を選択してもよい。
【0014】
また、当該エネルギー取引支援システムは、可搬型貯蔵器の流入及び流出に伴う効用を示す関数であって地域ブロックを構成する複数のエリアにそれぞれ対応する複数の目的関数に従って、1つ以上の可搬型貯蔵器を流通対象として選択する第2選択手段をさらに備え、前記移動手段は、前記第2選択手段により選択された前記流通対象の可搬型貯蔵器を、前記複数のエリア間で、前記地域ブロックの外から中に、又は前記地域ブロックの中から外に移動させてもよい。
【0015】
また、前記第2選択手段は、可搬型貯蔵器の移動の前後にわたって前記複数のエリアにおける全体の効用が高くなるように前記流通対象の可搬型貯蔵器を選択してもよい。
【0016】
また、当該エネルギー取引支援システムは、可搬型貯蔵器に設けられて自器の使用を制限する使用制限手段と、非常時の状況を示す所定の条件を満たす場合に前記使用制限手段による使用の制限を一時的に解除するように制御を行う制御手段と、をさらに備えてもよい。
【0017】
また、当該エネルギー取引支援システムは、複数の施設にそれぞれ対応付けられ、かつ各々の施設内にある可搬型貯蔵器に関する前記第1貯蔵器情報を取得可能に構成される複数の施設側端末をさらに備え、前記取得手段、前記収集手段、及び前記第1選択手段は、1つ又は複数の管理サーバにより構成され、前記管理サーバは、前記複数の施設側端末から前記第1貯蔵器情報を収集してもよい。
【0018】
第2の本発明におけるエネルギー取引支援方法は、エネルギーを貯蔵する可搬型貯蔵器を複数の当事者間でやり取りするエネルギー取引を支援する方法であって、可搬型貯蔵器の受取地点及び受取時点を含む取引条件を取得する取得ステップと、可搬型貯蔵器毎の稼働計画を含む貯蔵器情報を外部から収集する収集ステップと、収集された前記貯蔵器情報を用いて特定可能な複数の可搬型貯蔵器の中から、取得された前記受取時点に稼働の予定がない1つ以上の可搬型貯蔵器を提供対象として選択する選択ステップと、を1つ又は複数のコンピュータが実行し、選択された前記提供対象の可搬型貯蔵器を、移動手段を用いて前記受取時点に又は該受取時点よりも前に前記受取地点まで移動させる。
【0019】
第3の本発明におけるエネルギー取引支援プログラムは、エネルギーを貯蔵する可搬型貯蔵器を複数の当事者間でやり取りするエネルギー取引を支援するためのプログラムであって、可搬型貯蔵器の受取地点及び受取時点を含む取引条件を取得する取得ステップと、可搬型貯蔵器毎の稼働計画を含む貯蔵器情報を外部から収集する収集ステップと、収集された前記貯蔵器情報により特定可能な複数の可搬型貯蔵器の中から、取得された前記受取時点に稼働の予定がない1つ以上の可搬型貯蔵器を提供対象として選択する選択ステップと、選択された前記提供対象の可搬型貯蔵器を前記受取時点に又は該受取時点よりも前に前記受取地点まで移動させる指示を行う指示ステップと、を1つ又は複数のコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、エネルギーステーションを拠点としてエネルギーの取引を行う場合と比べて、より柔軟性が高い取引をより効率的に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】エネルギー取引サービスに関する概略図である。
【
図2】エネルギー取引サービスに関する第1ワークフローを示す模式図である。
【
図3】エネルギー取引サービスに関する第2ワークフローを示す模式図である。
【
図4】エネルギー取引サービスに関する第3ワークフローを示す模式図である。
【
図5】本発明の第1実施形態におけるエネルギー取引支援システムの全体構成図である。
【
図6】
図5に示す管理サーバの電気的なブロック図である。
【
図7】
図7(a)は、
図6の使用者DBが有する使用者情報のデータ構造の一例を示す図である。
図7(b)は、
図6の供給者DBが有する供給者情報のデータ構造の一例を示す図である。
図7(c)は、
図6のバッテリDBが有するバッテリ属性情報のデータ構造の一例を示す図である。
【
図8】
図6の取引リストのデータ構造の一例を示す図である。
【
図9】
図5に示す施設側端末の電気的なブロック図である。
【
図10】
図10(a)は、
図9のバッテリ情報が有するデータ構造の一例を示す図である。
図10(b)は、
図9の移動計画表が有するデータ構造の一例を示す図である。
【
図11】第1実施形態におけるエネルギー取引支援システムの第1動作に関するフローチャートである。
【
図12】第1実施形態におけるエネルギー取引支援システムの第2動作に関するフローチャートである。
【
図13】外部サーバとの第1連携動作を示す模式図である。
【
図14】外部サーバとの第2連携動作を示す模式図である。
【
図15】本発明の第2実施形態におけるエネルギー取引支援システムの全体構成図である。
【
図16】
図15に示す管理サーバの電気的なブロック図である。
【
図17】共有バッテリの選択動作に関する詳細フローチャートである。
【
図18】バッテリの使用計画の一例を示す図である。
【
図19】第1,第2エリア間での共有バッテリの移動に伴う運転コストの評価方法を示す図である。
【
図20】本発明の第3実施形態におけるエネルギー取引支援システムの全体構成図である。
【
図21】
図20に示す管理サーバの電気的なブロック図である。
【
図22】共有バッテリの流通制御に関する管理サーバの動作を示すフローチャートである。
【
図23】流通コストの評価結果の一例を示す図である。
【
図24】本発明の第4実施形態におけるエネルギー取引支援システムの全体構成図である。
【
図25】
図24に示す共有バッテリの電気的なブロック図である。
【
図26】
図24に示す管理サーバの電気的なブロック図である。
【
図27】第4実施形態におけるエネルギー取引支援システムの第1動作に関するフローチャートである。
【
図28】第4実施形態におけるエネルギー取引支援システムの第2動作に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明におけるエネルギー取引支援システムについて、エネルギー取引支援方法及びエネルギー取引支援プログラムとの関係において好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の実施形態及び変形例に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。あるいは、技術的に矛盾が生じない範囲で各々の構成を任意に組み合わせてもよい。
【0023】
[エネルギー取引サービスの概要]
まず、エネルギー取引サービスの概要について、
図1~
図4を参照しながら説明する。この「エネルギー取引サービス」とは、エネルギーを貯蔵する可搬型貯蔵器を複数の当事者間でやり取り可能にするサービスを意味する。このエネルギーは、電気であってもよいし、気体、液体又は固体の燃料であってもよい。例えば、電気エネルギーの資源は、化石燃料(例えば、石炭・石油・天然ガス・オイルサンド・シェールガス・メタンハイドレートなど)やウランを含む地下資源である「枯渇性エネルギー」であってもよいし、太陽光・風力・地熱・中小水力・バイオマスを含む「再生可能エネルギー」であってもよい。
【0024】
図1は、エネルギー取引サービスに関する概略図である。以下、電気エネルギー、すなわち電力を充放電可能なバッテリを例に挙げて説明する。複数の当事者は、後述する「エネルギー取引支援システム」を通じて、エネルギー取引サービスを受けることができる。当事者は、バッテリを充電して供給する「供給者」と、充電済みのバッテリを使用する「使用者」に大別される。なお、供給者及び使用者はいずれも、法人を含む組織であってもよいし、個人であってもよい。
【0025】
図2は、エネルギー取引サービスに関する第1ワークフローを示す模式図である。このワークフローは、複数の供給者がバッテリを分散的に管理する場合を想定している。サービス運営者は、使用者からバッテリの要求を受け付けると、供給者A,Bに対して手元のバッテリに関する各種情報の提供を求める。サービス運営者は、供給者A,Bからそれぞれ収集した各種情報を用いて、稼働状況が確認されている複数のバッテリの中から貸出対象のバッテリ(以下「貸出バッテリ」ともいう)を選択する。貸出バッテリが供給者Aの手元にある場合、サービス運営者は、貸出バッテリの移動を供給者Aに依頼する。そして、供給者Aは、手元の貸出バッテリを使用者が指定した受取地点に移動させた後、この貸出バッテリを使用者に引き渡す。このようにして、使用者と供給者Aとの間のバッテリの貸出が終了する。
【0026】
図3は、エネルギー取引サービスに関する第2ワークフローを示す模式図である。このワークフローは、サービス運営者がバッテリを集中的に管理する場合を想定している。供給者A,Bは、手元のバッテリに関する各種情報を一定の時間おきに提供する。サービス運営者は、供給者A,Bからそれぞれ収集した各種情報を用いて、貸出バッテリをストック可能であるか否かを判断する。ストック可能である場合、サービス運営者は、貸出バッテリの移動を供給者A,Bに依頼する。そうすると、供給者A,Bは、手元にある貸出バッテリをサービス運営者が指定した受取地点に移動させた後、この貸出バッテリをサービス運営者に一時的に預ける。その後、サービス運営者は、使用者からバッテリの要求を受け付けると、ストックされている複数のバッテリの中から貸出バッテリ(ここでは、供給者Bのバッテリ)を選択する。そして、サービス運営者は、使用者が指定した受取地点に貸出バッテリを移動させた後、このバッテリを使用者に引き渡す。このようにして、使用者と供給者Bとの間のバッテリの貸出が終了する。
【0027】
図4は、エネルギー取引サービスに関する第3ワークフローを示す模式図である。このワークフローは、供給者がバッテリを休日中にのみ貸し出す場合を想定している。サービス運営者は、平日中に使用者X,Yからバッテリの要求を受け付けると、供給者に対して週末中におけるバッテリの貸出を依頼する。供給者は、平日中におけるバッテリの稼働期間が終了すると、貸出可能なバッテリを使用者X,Yが指定した受取地点にそれぞれ移動させる。使用者X,Yは、供給者から貸し出されたバッテリを週末中に使用し、使用済みのバッテリをサービス運営者に返却する。そして、供給者は、週末明けに、サービス運営者から返却されたバッテリの利用を開始する。このようにして、使用者X,Yと供給者との間のバッテリのやり取りが終了する。
【0028】
[第1実施形態]
続いて、本発明の第1実施形態におけるエネルギー取引支援システム10について、
図5~
図14を参照しながら説明する。この第1実施形態では、予め区画された1つのエリア内にいる複数の当事者間で共有バッテリ12の有償貸出(「提供」の一態様)を行う場合を想定する。
【0029】
<全体構成>
図5は、本発明の第1実施形態におけるエネルギー取引支援システム10の全体構成図である。このエネルギー取引支援システム10は、1つのエリア内における共有バッテリ12の円滑な有償貸出を遂行可能に構成されるシステムである。具体的には、エネルギー取引支援システム10は、複数の共有バッテリ12(可搬型貯蔵器)と、管理サーバ14と、ストレージ装置16と、1つ又は複数の供給者端末と、1つ又は複数の使用者端末と、を含んで構成される。
【0030】
共有バッテリ12は、複数の当事者間で共有する可搬型の着脱式バッテリである。この共有バッテリ12は、電力を充放電可能な蓄電部12a(いわゆる、電池コアパック)を含んで構成される。蓄電部12aの構成は、例えば、リチウムイオン電池、鉛蓄電池などの二次電池、キャパシタ、又はこれらを組み合わせた複合電池であってもよい。ここで、貸出バッテリ13rとは、エリア内にある複数の共有バッテリ12のうち、使用者に貸し出されるバッテリを意味する。また、このエリア内には、自身の動力で走行するための自走機構12b(移動手段)をさらに備える「自走式」の共有バッテリ12と、自走機構12bを備えない「非自走式」の共有バッテリ12が混在して設けられている。
【0031】
管理サーバ14は、エネルギー取引サービスに関する統括的な制御を行うコンピュータであり、オンプレミス型あるいはクラウド型のいずれであってもよい。なお、
図5及び
図6では、管理サーバ14を単体のコンピュータとして図示しているが、これに代えて、管理サーバ14は、分散システムを構築するコンピュータ群であってもよい。
【0032】
ストレージ装置16は、非一過性であり、かつコンピュータ読み取り可能な記憶媒体、例えば、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)又はソリッドステートドライブ(SSD:Solid State Drive)から構成されている。ストレージ装置16は、管理サーバ14が取り扱う様々なデータを記憶する。
【0033】
供給者端末は、例えば、ワークステーション、パーソナルコンピュータを含む汎用コンピュータからなり、供給者が所有又は管理する端末装置である。
図5の例では、供給者端末は、エリア内の施設毎に設置された施設側端末20に相当する。施設側端末20は、管理サーバ14との間で、ネットワークNWを介して双方向に通信可能に構成される。
【0034】
使用者端末は、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットを含む多機能・多目的装置からなり、使用者が所有又は管理する端末装置である。
図5の例では、使用者端末は、上記した施設側端末20であってもよいし、使用者が携行可能な携帯端末22であってもよい。
【0035】
一方の施設内には、共有バッテリ12及び施設側端末20の他に、太陽光エネルギーを用いて共有バッテリ12を充電可能な太陽光発電機26と、共有バッテリ12を搬送するための搬送車28(移動手段)が設けられている。他方の施設内には、共有バッテリ12及び施設側端末20の他に、共有バッテリ12を充電可能な充電ステーション30が設けられている。なお、施設内の設備は、本図に示す例に限られず、様々な構成であってもよい。
【0036】
<管理サーバ14の構成>
図6は、
図5に示す管理サーバ14の電気的なブロック図である。この管理サーバ14は、ストレージ装置16との間で双方向に通信可能であり、サーバ側通信部40と、サーバ側制御部42と、サーバ側記憶部44と、を含んで構成される。
【0037】
サーバ側通信部40は、外部装置に対して電気信号を送受信するインターフェースである。サーバ側制御部42は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)を含む処理演算装置によって構成される。サーバ側制御部42は、サーバ側記憶部44に格納されたプログラムを読み出して実行することで、取引条件取得部46(取得手段)、情報収集部48(収集手段)、第1選択部50(第1選択手段)、及び取引処理部52(管理処理手段)として機能する。
【0038】
サーバ側記憶部44は、非一過性であり、かつ、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体で構成されている。ここで、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、フラッシュメモリ等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。本図の例では、サーバ側記憶部44には、後述する取引リスト54が記憶されている。
【0039】
一方、ストレージ装置16内には、使用者に関するデータベース(以下、「使用者DB56」という)と、供給者に関するデータベース(以下、「供給者DB58」という)と、共有バッテリ12に関するデータベース(以下、「バッテリDB60」という)がそれぞれ構築されている。
【0040】
図7(a)は、
図6の使用者DB56が有する使用者情報62のデータ構造の一例を示す図である。この使用者情報62は、使用者の識別情報である「使用者ID」と、使用者端末に関する「端末情報」と、予め登録された使用者の所在を示す「使用者位置」と、本サービスの使用料の支払い状況を示す「支払履歴」の間の対応関係を示すテーブル形式のデータである。この「端末情報」は、例えば、使用者端末のホスト名、IPアドレス、MACアドレスを含むネットワーク情報であってもよい。また、「使用者位置」は、地図上の住所や建物名の他に、緯度・経度を含む位置情報であってもよい。
【0041】
図7(b)は、
図6の供給者DB58が有する供給者情報64のデータ構造の一例を示す図である。この供給者情報64は、供給者の識別情報である「供給者ID」と、供給者端末に関する「端末情報」と、予め登録された供給者の所在を示す「供給者位置」と、本サービスの使用料の受け取り状況を示す「受取履歴」の間の対応関係を示すテーブル形式のデータである。この「端末情報」は、例えば、
図7(a)に示す「端末情報」と同様に定義されるネットワーク情報である。また、「供給者位置」は、例えば、
図7(a)に示す「使用者位置」と同様に定義される位置情報である。
【0042】
図7(c)は、
図6のバッテリDB60が有するバッテリ属性情報66のデータ構造の一例を示す図である。このバッテリ属性情報66は、共有バッテリ12の識別情報である「バッテリID」と、共有バッテリ12の種別を示す「バッテリ種別」と、共有バッテリ12の容量を示す「バッテリ容量」と、共有バッテリ12の移動タイプを示す「移動方式」との間の対応関係を示すテーブル形式のデータである。この移動方式は、例えば、共有バッテリ12が「自走式」であるか「非自走式」であるかにより分類される。
【0043】
図8は、
図6の取引リスト54のデータ構造の一例を示す図である。この取引リスト54は、取引の識別情報を示す「取引ID」と、1つの取引を構成する1つ又は複数のイベントを識別するための「イベント番号」と、イベントに関与する「取引対象」と、取引の時間表を示す「時間情報」との間の対応関係を示すテーブル形式のデータである。この「取引対象」は、取引対象者である使用者及び供給者、又は取引対象物である共有バッテリ12に関する各種IDである。また、「時間情報」は、取引の成約時点や共有バッテリ12の納品時点を含む、取引に関する様々な時点であってもよい。
【0044】
<施設側端末20の構成>
図9は、
図5に示す施設側端末20の電気的なブロック図である。この施設側端末20は、入力部70と、出力部72と、端末側通信部74と、端末側制御部76と、端末側記憶部78と、を含んで構成される。
【0045】
入力部70は、マウス、キーボード、タッチセンサ又はマイクロフォンを含む入力デバイスから構成される。出力部72は、ディスプレイ、スピーカを含む出力デバイスから構成される。入力部70による入力機能及び出力部72による表示機能を組み合わせることで、グラフィカル・ユーザ・インターフェース(GUI)が構築される。端末側通信部74は、
図6のサーバ側通信部40と同様に、外部装置に対して電気信号を送受信するインターフェースである。
【0046】
端末側制御部76は、
図6のサーバ側制御部42と同様に、CPU、MPUを含む処理演算装置によって構成される。端末側制御部76は、端末側記憶部78に格納されたプログラムを読み出して実行することで、交渉処理部80及び移動計画管理部82として機能する。
【0047】
端末側記憶部78は、
図6のサーバ側記憶部44と同様に、非一過性であり、かつ、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体で構成されている。本図の例では、端末側記憶部78には、バッテリ情報84(第1貯蔵器情報)及び移動計画表86がそれぞれ記憶されている。
【0048】
図10(a)は、
図9のバッテリ情報84が有するデータ構造の一例を示す図である。このバッテリ情報84は、上記したバッテリIDと、共有バッテリ12の状態を示す「バッテリ状態」と、発電方式の種類を示す「発電種類」と、所定の単位時間毎の共有バッテリ12の稼働予定を示す「稼働計画」との間の対応関係を示すテーブル形式のデータである。この「バッテリ状態」は、例えば、SOC(State Of Charge)を含む短期的な使用状態であってもよいし、劣化度を含む長期的な使用状態であってもよい。また、この「発電種類」は、例えば、火力・原子力・太陽光、あるいは枯渇性エネルギー・再生可能エネルギーなどの様々な分類項目に従って分類され得る。
【0049】
図10(b)は、
図9の移動計画表86が有するデータ構造の一例を示す図である。この移動計画表86は、上記したバッテリIDと、移動開始時間及び移動終了時間の予定をそれぞれ示す「予定時間」と、移動先を示す「移動地点」と、移動手段の種類を示す「移動手段」と、移動前の充電が必要であるか否かを示す「充電要否」との間の対応関係を示すテーブル形式のデータである。
【0050】
<第1動作:エネルギー取引の成約制御>
第1実施形態におけるエネルギー取引支援システム10は、以上のように構成される。続いて、このエネルギー取引支援システム10の第1動作について、
図11のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。ここで、「第1動作」とは、エネルギー取引の成約制御に関する動作を意味する。
【0051】
ステップS1において、管理サーバ14のサーバ側制御部42は、使用者端末(例えば、携帯端末22)を介する使用者の要求操作を受け付けたか否かを確認する。使用者端末からの要求操作をまだ受け付けていない場合(ステップS1:NO)、この要求操作を受け付けるまでステップS1に留まる。
【0052】
使用者は、携帯端末22が表示する取引画面上に設けられたユーザコントロールを介して共有バッテリ12の取引条件を入力することができる。携帯端末22は、使用者による所定の操作(例えば、取引画面上の[申込]ボタンのタップ操作)を受け付けた後、使用者ID及び取引条件を含む要求信号を管理サーバ14に向けて送信する。そうすると、管理サーバ14は、中継装置24、ネットワークNW及びサーバ側通信部40を介して、携帯端末22からの要求信号を受信する。これにより、サーバ側制御部42が使用者の要求操作を受け付けるので(ステップS1:YES)、次のステップS2に進む。
【0053】
ステップS2において、サーバ側制御部42(取引条件取得部46)は、ステップS1で受信した要求信号に含まれる取引条件を取得する。この取引条件の一例として、使用者の識別情報(使用者ID又は氏名)、貸出を希望する共有バッテリ12の個数、種類、容量の合計、受取日時、受取地点、発電の種類、利用料の上限額などが挙げられる。
【0054】
ステップS3において、サーバ側制御部42(情報収集部48)は、施設内にある共有バッテリ12の稼働計画又は状態を含むバッテリ情報84を外部から収集する。具体的には、情報収集部48は、この収集に先立ってバッテリ情報84の提供を各々の施設側端末20に要求してもよいし、施設側端末20から定期的又は不定期に送信された最新のバッテリ情報84を読み出してもよい。なお、管理サーバ14と各々の共有バッテリ12の間で双方向に通信可能である場合、管理サーバ14は、各々の共有バッテリ12からバッテリ情報84を直接的に収集してもよい。
【0055】
ステップS4において、サーバ側制御部42(第1選択部50)は、ステップS3にて収集されたバッテリ情報84を用いて特定可能な複数の共有バッテリ12の中から、ステップS2で取得された受取時点に稼働の予定がない1つ以上の共有バッテリ12を、貸出対象候補として選択する。この貸出対象候補は、1つの施設内からすべて選択されてもよいし、2つ以上の施設を組み合わせて選択されてもよい。
【0056】
ここで、第1選択部50は、バッテリ属性情報66及びバッテリ情報84を相互参照することで、稼働計画又は状態が把握されているすべての共有バッテリ12に対して、使用者が希望する品質・コスト・納期を満たすか否かについて評価を行う。上記した取引条件を満たす共有バッテリ12の選択パターンが複数通りある場合、第1選択部50は、様々な評価基準(例えば、個数・移動距離・移動コストの最小化、稼働率の最大化など)に従って選択パターンを定めてもよい。
【0057】
ステップS5において、サーバ側制御部42は、ステップS4で選択された貸出対象候補に対応する施設側端末20に対して、共有バッテリ12の貸出が可能であるか否かを問い合わせる。具体的には、管理サーバ14は、共有バッテリ12の貸出に必要な最小限の情報(例えば、バッテリID、受取地点及び受取時点)を含む問合せ信号を、該当する施設側端末20に向けて送信する。
【0058】
その後、施設側端末20は、ネットワークNW及び端末側通信部74を介して、管理サーバ14からの問合せ信号を受信する。施設側端末20の端末側制御部76(より詳しくは、交渉処理部80)は、問合せ信号に含まれる各種情報を取得し、貸出対象候補の共有バッテリ12を貸出可能であるか否かを判定する。そして、施設側端末20は、共有バッテリ12の貸出可否に関する回答を含む応答信号を管理サーバ14に向けて送信する。
【0059】
ステップS6において、サーバ側制御部42は、ステップS5での問合せに対して、貸出可能である旨の回答があったか否かを確認する。貸出不可である旨の回答があった場合(ステップS6:NO)、ステップS4に戻って、以下、貸出不可である共有バッテリ12を除外した後に、貸出対象候補の選択(S4)、貸出可否の問合せ(S5)及び回答の確認(S6)を順次繰り返す。一方、貸出可能である旨の回答があった場合(ステップS6:YES)、次のステップS7に進む。
【0060】
ステップS7において、管理サーバ14は、取引の成約がなされた旨を該当する端末(施設側端末20及び携帯端末22)に通知する。具体的には、管理サーバ14は、該当する施設側端末20に対して、ステップS6にて貸出可能である旨が確認された共有バッテリ12(つまり、貸出バッテリ13r)の貸出を依頼する通知を行う。管理サーバ14は、この通知と併せて、取引条件の一部であって貸出に関する情報(以下、貸出情報)を併せて送信する。
【0061】
ステップS8において、取引処理部52は、サーバ側記憶部44に記憶されている取引リスト54に対して、貸出バッテリ13rに関わる取引を追加する更新処理を行う。その後、ステップS1に戻って、管理サーバ14は、
図11のフローチャートに示す動作を順次繰り返す。なお、取引処理部52は、当事者間での取引の終了を確認した場合、使用者情報62の「支払履歴」及び供給者情報64の「受取履歴」を更新するとともに、取引リスト54に対して該当する取引を削除する更新処理を行う。
【0062】
<第2動作:貸出バッテリ13rの移動制御>
続いて、エネルギー取引支援システム10の第2動作について、
図12のフローチャートを参照しながら説明する。ここで、「第2動作」とは、取引の成約後における貸出バッテリ13rの移動制御に関する動作を意味する。
【0063】
ステップS11において、施設側端末20の端末側制御部76は、管理サーバ14からの通知(
図11のステップS7参照)を受け付けたか否かを確認する。通知をまだ受け付けていない場合(ステップS11:NO)、ステップS12,S13をスキップし、後述するステップS14に進む。一方、通知を受け付けた場合(ステップS11:YES)、次のステップS12に進む。
【0064】
ステップS12において、端末側制御部76(移動計画管理部82)は、ステップS11で受け付けた通知に含まれる貸出情報を取得する。貸出情報の例として、使用者の識別情報(使用者ID又は氏名)、貸出バッテリ13rの識別情報(バッテリID)、受取日時、受取地点、発電の種類などが挙げられる。
【0065】
ステップS13において、移動計画管理部82は、ステップS12で取得された貸出情報を用いて貸出バッテリ13rの移動計画を作成し、端末側記憶部78に記憶されている移動計画表86に対して、貸出バッテリ13rに関する移動計画を追加する更新処理を行う。なお、この移動計画は、貸出バッテリ13rの納品が遅れないように、ある程度の時間マージンを考慮して作成される点に留意する。
【0066】
ステップS14において、移動計画管理部82は、ステップS13で更新された移動計画表86を参照し、移動計画の実行タイミングが到来したか否かを確認する。実行タイミングがまだ到来していない場合(ステップS14:NO)、ステップS11に戻って、実行タイミングが到来するまでステップS11~S14を繰り返す。一方、実行タイミングが到来した場合(ステップS14:YES)、次のステップS15に進む。
【0067】
ステップS15において、施設側端末20は、該当する貸出バッテリ13rの移動を指示する。そうすると、移動手段は、施設側端末20からの指示に応じて、貸出バッテリ13rを受取時点又は該受取時点よりも前に(例えば、待ち時間が閾値以内になるように)受取地点まで移動させる。
【0068】
移動手段が搬送車28である場合、施設側端末20の出力部72は、搬送車28のドライバに対して移動計画を示す可視情報を出力してもよい。また、移動手段が自走機構12bである場合、貸出バッテリ13rに対して受取地点及び受取時点をそれぞれ指定する入力を行ってもよい。
【0069】
ステップS16において、端末側制御部76は、バッテリ情報84及び移動計画表86に対して、貸出バッテリ13rに関する情報をそれぞれ削除する更新処理を行う。その後、ステップS11に戻って、施設側端末20は、
図12のフローチャートに示す動作を順次繰り返す。
【0070】
<第1実施形態による効果>
以上のように、エネルギー取引支援システム10は、共有バッテリ12(可搬型貯蔵器)の受取地点及び受取時点を含む取引条件を取得する取引条件取得部46(取得手段)と、共有バッテリ12毎の稼働計画を含むバッテリ情報84(貯蔵器情報)を外部から収集する情報収集部48(収集手段)と、収集されたバッテリ情報84により特定可能な複数の共有バッテリ12の中から、取得された受取時点に稼働の予定がない1つ以上の共有バッテリ12を提供対象として選択する第1選択部50(選択手段)と、選択された貸出バッテリ13rを、受取時点に又は該受取時点よりも前に受取地点まで移動させる移動手段(搬送車28,自走機構12b)を備える。
【0071】
また、このエネルギー取引支援方法及びプログラムでは、共有バッテリ12の受取地点及び受取時点を含む取引条件を取得する取得ステップ(S2)と、共有バッテリ12毎の稼働計画を含むバッテリ情報84を外部から収集する収集ステップ(S3)と、収集されたバッテリ情報84を用いて特定可能な複数の共有バッテリ12の中から、取得された受取時点に稼働の予定がない1つ以上の共有バッテリ12を提供対象として選択する選択ステップ(S4)を1つ又は複数のコンピュータが実行し、選択された貸出バッテリ13rを、移動手段を用いて受取時点に又は該受取時点よりも前に受取地点まで移動させる(S15)。
【0072】
このように、貸出バッテリ13rを受取時点以前に受取地点まで移動させるので、使用者は、受取時点に合わせて受取地点に行くことで貸出バッテリ13rを受け取ることができる。また、収集されたバッテリ情報84を用いて特定可能な複数の共有バッテリ12の中から、受取時点に稼働の予定がない1つ以上の共有バッテリ12を提供対象として選択するので、受取時点以降に貸出バッテリ13rが稼働する可能性が高くなり、システム全体としての稼働率が向上する。これにより、エネルギーステーションを拠点としてエネルギーの取引を行う場合と比べて、より柔軟性が高い取引がより効率的に行われる。
【0073】
また、移動手段は、共有バッテリ12に設けられた自走機構12bであってもよい。これにより、移動のための別の装置を伴わずに共有バッテリ12を移動可能となり、取引の柔軟性がさらに高くなる。
【0074】
また、エネルギー取引支援システム10は、使用者の操作に応じて取引条件を指定可能に構成される携帯端末22(使用者端末)をさらに備え、第1選択部50は、携帯端末22を用いて指定された取引条件をすべて満たすように貸出バッテリ13rを選択してもよい。これにより、使用者は、携帯端末22を用いて取引条件を指定することで、自身の要求に適った共有バッテリ12を受け取ることができる。
【0075】
また、取引条件取得部46、情報収集部48、及び第1選択部50は、1つ又は複数の管理サーバ14により構成されてもよい。これにより、取引条件の取得から共有バッテリ12の選択までの処理を一元的に実行可能となり、取引運用の全体最適化が図られやすくなる。
【0076】
また、エネルギー取引支援システム10は、複数の施設にそれぞれ対応付けられ、かつ各々の施設内にある共有バッテリ12に関するバッテリ情報84を取得可能に構成される複数の施設側端末20をさらに備え、管理サーバ14は、複数の施設側端末20からバッテリ情報84を収集してもよい。いわゆるエッジコンピューティング技術を採用することで、各々の共有バッテリ12からバッテリ情報84をそれぞれ収集する場合と比べて、管理サーバ14の処理負荷が軽減される。
【0077】
これとは逆に、各々の共有バッテリ12と管理サーバ14が双方向に通信可能である場合、複数の施設側端末20を設けないシステム構成も採用し得る。この場合、管理サーバ14は、施設側端末20に代わって、移動計画管理部82(
図9)の機能を実行すればよい。
【0078】
<外部サーバ18との連携>
以上のように、第1実施形態におけるエネルギー取引支援方法は、基本的には、管理サーバ14、施設側端末20、及び携帯端末22が協働しながら行われる。これらの装置に加えて、外部サーバ18を連携させてもよい。
【0079】
図13は、外部サーバ18との第1連携動作を示す模式図である。ここで、外部サーバ18は、グリーンエネルギー認証機関(以下、単に「認証機関」という)が管理するサーバに相当する。この認証機関は、再生可能エネルギーの使用者に有体物又は無体物のインセンティブを付与する機関である。インセンティブの一例として、現金、仮想通貨、電子クーポンなどが挙げられる。なお、エネルギー取引支援システム10は、公正かつ明確な取引を遂行すべく、複数の装置間にてブロックチェーン技術を用いてデータの管理を行ってもよい。
【0080】
(1)携帯端末22は、共有バッテリ12の貸出を要求する要求信号を管理サーバ14に向けて送信する。この要求信号には、再生可能エネルギーを用いて発電された電力を使用する旨の意思表示が含まれる。
(2)管理サーバ14は、複数の共有バッテリ12の中から貸出バッテリ13rを選択した後、該当する施設側端末20に対して貸出の依頼を通知する。
(3)移動手段は、施設側端末20からの指示がトリガとなって、再生可能エネルギーを用いて充電された貸出バッテリ13rを、使用者が指定する受取地点に移動させる。
(4)施設側端末20は、エネルギー取引の内容が確定した後、再生可能エネルギーの利用証明書を発行し、この証明書を管理サーバ14に提供する。
【0081】
(5)管理サーバ14は、施設側端末20により発行された利用証明書を外部サーバ18に提出することで、インセンティブの付与を申請する。
(6)外部サーバ18は、管理サーバ14から提出された利用証明書を審査する処理を行った後、インセンティブの付与に必要な情報を含む信号を管理サーバ14に送信する。
(7)管理サーバ14は、エネルギー取引に伴うインセンティブを管理するための管理処理を行う。具体的には、管理サーバ14の取引処理部52(
図6)は、外部サーバ18から得たインセンティブを該当する当事者(使用者及び供給者)にそれぞれ還元するように電子台帳を更新する。
【0082】
例えば、取引処理部52は、再生可能エネルギーを利用する取引に対して、再生可能エネルギーを利用しない取引と比べて相対的に高いインセンティブを付与してもよい。これにより、インセンティブの付与が動機づけとなって再生可能エネルギーの利用が促進される。
【0083】
図14は、外部サーバ18との第2連携動作を示す模式図である。また、外部サーバ18は、動産又は不動産である貸出物を貸し出す業者(例えば、レンタルスペース業者)が管理するサーバである。
【0084】
(1)携帯端末22は、貸しスペースの予約を要求する旨を示す要求信号を外部サーバ18に向けて送信する。この要求信号には、共有バッテリ12とともに用いられる貸出物の貸出条件が含まれる。この貸出条件の一例として、使用者の識別情報、貸出物の識別情報(例えば、貸しスペースの部屋番号や備品の種別)、使用地点、使用時間(使用開始時点及び使用終了時点)の他に、共有バッテリ12の手配の要否などが挙げられる。
(2)外部サーバ18は、携帯端末22を用いて指定された貸出条件に従って貸出物に関する貸出処理(ここでは、貸しスペース及び備品の予約の手配)を行う。以下、予約した備品の中に電子機器(例えば、オフィス機器)が含まれ、共有バッテリ12の手配が必要である場合を想定する。
(3)外部サーバ18は、共有バッテリ12の取引条件を含む要求信号を管理サーバ14に向けて送信する。この取引条件には、ステップS2の場合と同様に、使用者の識別情報、共有バッテリ12の個数、種類、容量の合計、受取日時、受取地点、発電の種類、利用料の上限額などが含まれる。なお、共有バッテリ12の受取地点は貸出物の使用地点に、共有バッテリ12の受取地点は貸出物の使用開始時点にそれぞれ対応する。
(4)管理サーバ14は、複数の共有バッテリ12の中から貸出バッテリ13rを選択した後、該当する施設側端末20に対して貸出の依頼を通知する。
(5)移動手段は、施設側端末20からの指示がトリガとなって、充電された貸出バッテリ13rを、受取地点である貸しスペースの位置又はその周辺の位置に移動させる。これにより、使用者は、何らかの理由で貸しスペース内の商用電源が利用できない場合であっても、手元にある貸出バッテリ13rにより電子機器を作動させることができる。
【0085】
このように、エネルギー取引支援システム10が、携帯端末22を用いて指定された貸出条件に従って貸出物に関する貸出処理を行う外部サーバ18(貸出業務サーバ)を含んで構成される場合、管理サーバ14の取引条件取得部46は、貸出物の使用地点に対応する受取地点及び貸出物の使用開始時点に対応する受取時点を含む取引条件を外部サーバ18から取得してもよい。これにより、貸出条件を指定する使用者の操作がトリガとなって貸出物とともに用いられる共有バッテリ12を自動的に手配可能となり、使用者による手配の手間が省かれる。
【0086】
[第2実施形態]
続いて、第2実施形態におけるエネルギー取引支援システム100について、
図15~
図19を参照しながら説明する。この第2実施形態では、予め区画された複数のエリアにわたって共有バッテリ12の有償貸出(「提供」の一態様)を行う場合を想定する。なお、第1実施形態と同様の構成又は機能については、同一の参照符号を付するとともに、その説明を省略する場合がある。
【0087】
<全体構成>
図15は、本発明の第2実施形態におけるエネルギー取引支援システム100の全体構成図である。このエネルギー取引支援システム100は、複数のエリア間における共有バッテリ12の円滑な有償貸出を遂行可能に構成されるシステムである。具体的には、エネルギー取引支援システム100は、複数の共有バッテリ12と、管理サーバ104と、ストレージ装置106と、1つ又は複数の供給者端末(ここでは、施設側端末20)と、1つ又は複数の使用者端末(ここでは、携帯端末22)と、を含んで構成される。
【0088】
使用者は、例えば、少なくとも電力を駆動源とする車両102(特定の機器)のドライバである。車両102には、該車両102に固定された状態のまま充電可能な車載バッテリ103(固定型貯蔵器)が搭載されている。また、車両102は、少なくとも1つの共有バッテリ12を増設可能に構成されている。
【0089】
<管理サーバ104の構成>
図16は、
図15に示す管理サーバ104の電気的なブロック図である。この管理サーバ104は、ストレージ装置106との間で双方向に通信可能であり、サーバ側通信部40及びサーバ側記憶部44の他に、第1実施形態とは機能が異なるサーバ側制御部110を含んで構成される。
【0090】
サーバ側制御部110は、
図6のサーバ側制御部42と同様に、CPU、MPU、GPUを含む処理演算装置によって構成される。サーバ側制御部110は、サーバ側記憶部44に格納されたプログラムを読み出して実行することで、取引条件取得部46、情報収集部48、及び取引処理部52の他に、第1実施形態とは機能が異なる第1選択部112(第1選択手段)として機能する。サーバ側記憶部44には、取引リスト54の他に、後述するバッテリ情報108(第2貯蔵器情報)が記憶されている。
【0091】
一方、ストレージ装置106内には、使用者DB56、供給者DB58、及びバッテリDB60の他に、複数のエリア内の地図情報に関するデータベース(以下、「地図情報DB114」という)がさらに構築されている。
【0092】
<エネルギー取引の成約制御>
第2実施形態におけるエネルギー取引支援システム100は、以上のように構成される。続いて、このエネルギー取引支援システム100の動作、より詳しくは、管理サーバ14によるエネルギー取引の成約制御に関する動作について説明する。この成約制御は、基本的には
図11のフローチャートに示す通りであるので、以下、第1実施形態とは動作が異なるステップ(具体的には、S1,S2,S4)を中心に説明する。
【0093】
図11のステップS1において、管理サーバ104のサーバ側制御部110は、使用者端末(例えば、携帯端末22)を介する使用者の要求操作を受け付けたか否かを確認する。携帯端末22は、使用者による所定の操作(例えば、取引画面上の[申込]ボタンのタップ操作)を受け付けた後、使用者ID及び取引条件を含む要求信号を管理サーバ14に向けて送信する。なお、使用者は、車両102を使用する前に要求操作を行ってもよいし、車両102の使用中に要求操作を行ってもよい。
【0094】
図11のステップS2において、サーバ側制御部110(取引条件取得部46)は、ステップS1で受信した要求信号に含まれる取引条件を取得する。この取引条件には、出発時点、出発地点、経由地点、目的地点を含む走行条件の他に、車載バッテリ103に関する情報(以下、バッテリ情報108)が含まれてもよい。このバッテリ情報108の一例として、車載バッテリ103の有無、個数、残量、最大容量、車両102の電費又は燃費などが挙げられる。
【0095】
図11のステップS4において、サーバ側制御部110(第1選択部112)は、ステップS3で収集されたバッテリ情報84を用いて特定可能な複数の共有バッテリ12の中から、ステップS2で取得された受取時点に稼働の予定がない1つ以上の共有バッテリ12を、貸出対象候補として選択する。以下、共有バッテリ12を選択するアルゴリズムの一例について、
図17のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。
【0096】
図17のステップS41において、第1選択部112は、地図情報DB114に蓄積された地図情報を読み出し、公知の手法を含む様々な探索手法を用いて、出発地点から目的地点までの最適な走行経路を決定する。
【0097】
ステップS42において、第1選択部112は、ステップS41で決定された走行経路に沿った走行を想定し、共有バッテリ12の取扱エリア候補を抽出する。具体的には、第1選択部112は、走行経路の全長距離、バッテリ容量、及び車両102の電費の関係を用いて共有バッテリ12の使用回数(要否も含む)を計算し、共有バッテリ12を取り扱う効率が最も高い取扱地点を推定する。そして、第1選択部112は、この取扱地点を中心として所定の距離範囲内にある1つ又は複数のエリアを「取扱エリア」として抽出する。
【0098】
図18は、バッテリの使用計画の一例を示す図である。より詳しくは、
図18(a)は全長距離が短い場合、
図18(b)は全長距離が中位の場合、
図18(c)は全長距離が長い場合をそれぞれ示している。
【0099】
全長距離が短い場合、車両102は、車載バッテリ103のみを用いて目的地点に到着できたとする。この場合、
図18(a)に示すように、共有バッテリ12の取扱エリアは1箇所も設定されない。
【0100】
全長距離が中位の場合、車両102は、車載バッテリ103及び1つの共有バッテリ12を用いて目的地点に到着できたとする。この場合、
図18(b)に示すように、出発地点から近い側から順に、共有バッテリ12の貸出を行う「貸出エリア」と、共有バッテリ12の返却を行う「返却エリア」がそれぞれ設定される。
【0101】
全長距離が長い場合、車両102は、車載バッテリ103及び2つの共有バッテリ12を用いて目的地点に到着できたとする。この場合、
図18(c)に示すように、出発地点から近い順に、共有バッテリ12の貸出を行う「貸出エリア」と、共有バッテリ12の交換を行う「交換エリア」と、共有バッテリ12の返却を行う「返却エリア」がそれぞれ設定される。
【0102】
図17のステップS43において、第1選択部112は、ステップS42で抽出された取扱エリア候補における共有バッテリ12の運転コストを評価する。具体的には、第1選択部112は、共有バッテリ12の移動の前後にわたる運転コストの減少量の合計を評価値として算出する。運転コストの減少量は、予め区画されたエリアにおける共有バッテリ12の流入及び流出に伴う効用(コスト、ゲイン又はこれらの組み合わせ)を示す目的関数116,118に従って求められる。
【0103】
図19は、第1,第2エリア間での共有バッテリ12の移動に伴う運転コストの評価方法を示す図である。本図の例では、目的関数116,118は、合計容量Tに対する運転コストの特性曲線を示している。ここで、合計容量T(単位:kAh)は、1つのエリア内にある共有バッテリ12の容量の合計に相当する。また、運転コスト(単位:なし)は、1つのエリア内における共有バッテリ12のランニングコストに相当する。
【0104】
より詳しくは、
図19(a)は第1,第2エリアにおける目的関数116が同一である場合を示すとともに、
図19(b)は第1,第2エリアにおける目的関数116,118が異なる場合を示している。本図の例では、この目的関数116,118は、いずれも下に凸の関数形状を有する。
【0105】
図19(a)に示すように、第1エリア内における現在の合計容量がT1であり、第2エリア内における現在の合計容量がT2である。ここで、目的関数116を最小にするT=Toに関して、T1<To<T2の大小関係が成り立つ。ここで、共有バッテリ12を第2エリアから第1エリア内に移動する場合、矢印で示すように、第1エリア内の運転コスト及び第2エリア内の運転コストが同時に減少する。すなわち、この移動パターンにおける評価値は相対的に大きくなる。反対に、共有バッテリ12を第1エリアから第2エリアに移動する場合、第1エリア内の運転コスト及び第2エリア内の運転コストが同時に増加するので、この移動パターンにおける評価値が相対的に小さくなる。
【0106】
図19(b)に示すように、第1エリア内における現在の合計容量がT1であり、第2エリア内における現在の合計容量がT2である。ここで、目的関数116を最小にするT=To1、目的関数118を最小にするT=To2に関して、T1<To1<T2<To2の大小関係が成り立つ。ここで、第2エリア内の共有バッテリ12を第1エリア内に移動する場合、矢印で示すように、第1エリア内の運転コストが減少するが、第2エリア内の運転コストが増加する。前者の減少分が後者の増加分を上回っているため、評価値の符号は正になる。
【0107】
このように、第1選択部112は、起こり得るすべての移動パターンにおける評価値をそれぞれ算出する(ステップS43)。なお、目的関数116,118の効用が「コスト」である場合、コスト減少量が大きくなるにつれて評価値が高くなる。一方、目的関数116,118の効用が「ゲイン」である場合、ゲイン増加量が大きくなるにつれて評価値が高くなる。
【0108】
図17のステップS44において、第1選択部112は、ステップS43での評価結果に基づいて、ステップS42で抽出された取扱エリア候補の中から1つ以上の取扱エリアを決定する。具体的には、第1選択部112は、それぞれ算出された評価値が最大となる移動パターンを特定し、共有バッテリ12の貸出、返却又は交換を行う1つ以上の取扱エリアを決定する。
【0109】
ステップS45において、第1選択部112は、ステップS44で決定された取扱エリア内において、第1実施形態(
図11)の場合と同様に、収集されたバッテリ情報84を用いて特定される複数の共有バッテリ12の中から、取得された受取時点に稼働の予定がない1つ以上の共有バッテリ12を、貸出対象候補として選択する。
【0110】
このようにして、
図11のステップS4は終了する。以下、管理サーバ104は、第1実施形態と同様に、
図11のフローチャートに示す動作を順次繰り返す。これにより、車両102のドライバは、指定された受取場所にて共有バッテリ12の貸出、返却又は交換を行うことができる。
【0111】
<第2実施形態の効果>
以上のように、第2実施形態におけるエネルギー取引支援システム100は、第1実施形態と同様の構成である取得手段、収集手段、及び移動手段の他に、第1選択部50とは機能が異なる第1選択部112(選択手段)を備える。このように構成しても、第1実施形態と同様の作用効果(エネルギー取引における柔軟性及び効率性の向上効果)が得られる。
【0112】
特に、共有バッテリ12(可搬型貯蔵器)が、車両102(特定の機器)に固定された状態でエネルギーを貯蔵可能な車載バッテリ103(固定型貯蔵器)と併せて用いられる場合、第1選択部112は、車載バッテリ103に関するバッテリ情報108(第2貯蔵器情報)を用いて、共有バッテリ12の提供の要否又は貸出バッテリ13rを選択してもよい。車載バッテリ103及び共有バッテリ12の同時の使用を考慮に入れることで、より適した共有バッテリ12の提供計画を提示することができる。
【0113】
また、第1選択部112は、予め区画されたエリアにおける共有バッテリ12の流入及び流出に伴う効用を示す目的関数116,118に従って貸出バッテリ13rを選択してもよい。共有バッテリ12の流入及び流出に伴うエリア内の効用を考慮に入れることで、より適した共有バッテリ12の提供計画を提示することができる。
【0114】
[第3実施形態]
続いて、第3実施形態におけるエネルギー取引支援システム120について、
図20~
図23を参照しながら説明する。この第3実施形態では、複数のエリアからなる地域ブロックにおいて共有バッテリ12の流通(「提供」の一態様であり、投入・融通・回収を含む)を行う場合を想定する。なお、第1,第2実施形態と同様の構成又は機能については、同一の参照符号を付するとともに、その説明を省略する場合がある。
【0115】
<全体構成>
図20は、本発明の第3実施形態におけるエネルギー取引支援システム120の全体構成図である。このエネルギー取引支援システム120は、地域ブロック内における共有バッテリ12の円滑な流通を遂行可能に構成されるシステムである。具体的には、エネルギー取引支援システム120は、複数の共有バッテリ12と、管理サーバ122と、ストレージ装置106と、1つ又は複数の業者側端末124,126と、1つ又は複数の供給者端末(ここでは、施設側端末20)と、を含んで構成される。
【0116】
業者側端末124は、例えば、ワークステーション、パーソナルコンピュータを含む汎用コンピュータからなり、共有バッテリ12の製造業者が管理する端末装置である。業者側端末126は、例えば、ワークステーション、パーソナルコンピュータを含む汎用コンピュータからなり、共有バッテリ12の処理業者が管理する端末装置である。業者側端末124,126は、管理サーバ122との間で、ネットワークNWを介して双方向に通信可能に構成される。
【0117】
なお、「流通バッテリ13d」とは、地域ブロックに投入され、地域ブロック内で融通され、又は地域ブロックから回収される共有バッテリ12を意味する。「投入」とは、製造業者により製造された共有バッテリ12を地域ブロック内に提供することである。「融通」とは、一のエリア内にある共有バッテリ12を他のエリア内に提供することである。「回収」とは、地域ブロック内にある共有バッテリ12を処理業者に提供することである。
【0118】
<管理サーバ122の構成>
図21は、
図20に示す管理サーバ122の電気的なブロック図である。この管理サーバ122は、ストレージ装置106との間で双方向に通信可能であり、サーバ側通信部40及びサーバ側記憶部44の他に、第2実施形態とは機能が異なるサーバ側制御部130を含んで構成される。
【0119】
サーバ側制御部130は、
図16のサーバ側制御部110と同様に、CPU、MPU、GPUを含む処理演算装置によって構成される。サーバ側制御部130は、サーバ側記憶部44に格納されたプログラムを読み出して実行することで、取引条件取得部46、情報収集部48、第1選択部50、及び取引処理部52の他に、第1選択部50とは別の選択手段(以下、第2選択部132)として機能する。
【0120】
<共有バッテリ12の流通制御>
第3実施形態におけるエネルギー取引支援システム120は、以上のように構成される。続いて、このエネルギー取引支援システム120の動作、より詳しくは、共有バッテリ12の流通制御に関する管理サーバ122の動作について、
図22のフローチャートを参照しながら説明する。
【0121】
図22のステップS51において、サーバ側制御部130は、動作の実行タイミングが到来したか否かを確認する。この実行タイミングは、定期的に設定されてもよいし不定期に設定されてもよい。前者の場合、実行間隔は、例えば、1日単位、1週間単位、又は1か月単位であってもよい。実行タイミングがまだ到来していない場合(ステップS51:NO)、実行タイミングが到来するまでステップS51に留まる。一方、実行タイミングが到来した場合(ステップS51:YES)、次のステップS52に進む。
【0122】
ステップS52において、サーバ側制御部130(情報収集部48)は、第1実施形態の場合(
図11のステップS3)と同様に、複数の施設側端末20からバッテリ情報84を収集する。
【0123】
ステップS53において、サーバ側制御部130(第2選択部132)は、ステップS52にて収集されたバッテリ情報84を用いて、採用し得る複数通りの流通計画を作成する。この作成に先立ち、第2選択部132は、地域ブロックを構成する複数のエリアにそれぞれ対応する複数の目的関数116,118に従って、共有バッテリ12の流通コストを評価する。ここで、「流通計画」とは、地域ブロック内のエリア毎に、共有バッテリ12の流通元、流通先、及び流通量を特定するための全体的な計画を意味する。
【0124】
第2選択部132は、例えば、[1]流通元のエリアにおける運転コストの変化量、[2]流通先のエリアにおける運用コストの変化量、及び[3]エリア間の移動に伴う移動コスト、の総和を流通コストとして試算する。例えば、運転コストの変化量は第2実施形態(
図19参照)の場合と同様に、移動コストはエリア間の距離に応じて増加するようにそれぞれ試算される。
【0125】
図23は、流通コストの評価結果の一例を示す図である。ここで、エリアAにおける共有バッテリ12の供給状態が「過剰」であり、他のエリアB~Eにおける共有バッテリ12の供給状態が「不足」であることを想定する。例えば、共有バッテリ12の流通元及び流通量をそれぞれ固定した場合、流通先がエリアB~Eのいずれかである4通りの流通計画が作成される。
【0126】
第1候補の「Plan1」は、共有バッテリ12の流通元がエリアAであり、流通先がエリアBである流通計画を示す。第2候補の「Plan2」は、共有バッテリ12の流通元がエリアAであり、流通先がエリアCである流通計画を示す。第3候補の「Plan3」は、共有バッテリ12の流通元がエリアAであり、流通先がエリアDである流通計画を示す。第4候補の「Plan4」は、共有バッテリ12の流通元がエリアAであり、流通先がエリアEである流通計画を示す。
【0127】
バーグラフの縦軸は、流通の前後にわたるコストの削減量(削減コスト)に相当する。基準値(0)の上側(+)がコストの減少を示すとともに、下側(-)がコストの増加を示している。「A~E」はエリア(A~E)における運転コストの変化量を示すとともに、「M」は移動コストを示している。なお、共有バッテリ12の流通を行うことを前提としているので、移動コストが常に負値をとる点に留意する。
【0128】
一般的には、エリア毎の効用(関数の形状又は合計容量)が異なっているので、流通先のエリアに応じて運転コストが変化する。同様に、流通元のエリアとの間の位置関係が異なっているので、流通先のエリアに応じて移動コストが変化する。本図から理解されるように、削減コストが大きい順に、Plan2,3,1,4となる。なお、削減コストが非正(0又は負)である場合には流通の際に損失が発生するので、該当する2通りのPlan1,4は流通計画の選択肢から除外される。
【0129】
なお、第2選択部132は、絨毯爆撃的な探索によって流通計画に対応する流通コストをそれぞれ試算し、より高い評価結果が得られた複数通りの流通計画を選定してもよい。これに代えて、第2選択部132は、2つのエリア間での流通量を未知の変数セットとする目的関数を導入し、様々な回帰分析手法を用いて目的関数の極点又はその近傍である変数セットを求め、この変数セットに対応する複数通りの流通計画を選定してもよい。
【0130】
図22のステップS54において、第2選択部132は、ステップS53で作成された流通計画のうちの1つに従って、1つ以上の共有バッテリ12を流通対象候補として選択する。この流通対象候補は、1つの施設内からすべて選択されてもよいし、同一エリア内の2つ以上の施設を組み合わせて選択されてもよい。また、この流通対象候補は、1つのエリア内からすべて選択されてもよいし、2つ以上のエリアを組み合わせて選択されてもよい。
【0131】
ステップS55において、サーバ側制御部130は、ステップS54で選択された流通対象候補に対応する端末に対して、共有バッテリ12の流通(投入、融通、又は回収)が可能であるか否かを問い合わせる。具体的には、管理サーバ122は、共有バッテリ12の流通に必要な最小限の情報(例えば、バッテリID、受取地点及び受取時点)を含む問合せ信号を、業者側端末124、施設側端末20、又は業者側端末126に向けてそれぞれ送信する。
【0132】
その後、各々の端末は、ネットワークNWを介して、管理サーバ122からの問合せ信号を受信する。各々の端末は、問合せ信号に含まれる各種情報を取得し、流通対象候補の共有バッテリ12を流通可能であるか否かを判定する。
【0133】
共有バッテリ12を「投入」する場合、流通元の業者側端末124は、共有バッテリ12の投入可否に関する回答を含む応答信号を管理サーバ122に向けて送信する。一方、流通先の施設側端末20は、共有バッテリ12の受入可否に関する回答を含む応答信号を管理サーバ122に向けて送信する。
【0134】
共有バッテリ12を「融通」する場合、流通元の施設側端末20は、共有バッテリ12の放出可否に関する回答を含む応答信号を管理サーバ122に向けて送信する。一方、流通先の施設側端末20は、共有バッテリ12の受入可否に関する回答を含む応答信号を管理サーバ122に向けて送信する。
【0135】
共有バッテリ12を「回収」する場合、流通元の施設側端末20は、共有バッテリ12の放出可否に関する回答を含む応答信号を管理サーバ122に向けて送信する。一方、流通先の業者側端末126は、共有バッテリ12の受入可否に関する回答を含む応答信号を管理サーバ122に向けて送信する。
【0136】
ステップS56において、サーバ側制御部130は、ステップS55での問合せに対して、流通可能である旨の回答があったか否かを確認する。流通不可である旨の回答があった場合(ステップS56:NO)、ステップS54に戻って、以下、流通不可である流通計画を除外した後に、流通対象候補の選択(S54)、流通可否の問合せ(S55)及び回答の確認(S56)を順次繰り返す。一方、流通可能である旨の回答があった場合(ステップS56:YES)、次のステップS57に進む。
【0137】
ステップS57において、管理サーバ122は、流通の合意がなされた旨を該当する端末(業者側端末124、施設側端末20、又は業者側端末126)に通知する。具体的には、管理サーバ122は、該当する端末に対して、ステップS56にて流通可能である旨が確認された共有バッテリ12の流通を依頼する通知を行う。管理サーバ122は、この通知と併せて、取引条件の一部であって流通に関する情報(以下、流通情報)を併せて送信する。
【0138】
その後、ステップS51に戻って、管理サーバ122は、
図22のフローチャートに示す動作を順次繰り返す。このようにして、共有バッテリ12の投入、融通又は回収が適時に行われる。
【0139】
<第3実施形態による効果>
以上のように、第3実施形態におけるエネルギー取引支援システム120は、第1実施形態と同様の構成である取得手段、収集手段、第1選択手段(具体的には、第1選択部50)及び移動手段を備える。このように構成しても、第1実施形態と同様の作用効果(エネルギー取引における柔軟性及び効率性の向上効果)が得られる。
【0140】
また、エネルギー取引支援システム120は、共有バッテリ12の流入及び流出に伴う効用を示す関数であって地域ブロックを構成する複数のエリアにそれぞれ対応する複数の目的関数116,118に従って、1つ以上の共有バッテリ12を流通対象(つまり、流通バッテリ13d)として選択する第2選択部132(第2選択手段)をさらに備えてもよい。共有バッテリ12の流入及び流出に伴うエリア毎の効用を考慮に入れることで、より適した共有バッテリ12の流通計画を提示することができる。
【0141】
また、第2選択部132は、共有バッテリ12の移動の前後にわたって複数のエリアにおける全体の効用が高くなるように流通バッテリ13dを選択してもよい。これにより、地域ブロック全体の効用が高い流通計画を提示することができる。
【0142】
[第4実施形態]
続いて、第4実施形態におけるエネルギー取引支援システム140について、
図24~
図28を参照しながら説明する。この第4実施形態では、共有バッテリ142の無償貸出(「提供」の一態様)を行う場合を想定する。なお、第1~第3実施形態と同様の構成又は機能については、同一の参照符号を付するとともに、その説明を省略する場合がある。
【0143】
<全体構成>
図24は、本発明の第4実施形態におけるエネルギー取引支援システム140の全体構成図である。このエネルギー取引支援システム140は、非常時イベントが発生したエリア内における共有バッテリ142の円滑な無償貸出を遂行可能に構成されるシステムである。ここで、「非常時イベント」とは、一時的又は局所的にエネルギーが不足することが予測されるイベントを意味し、例えば、地震、火事、停電、事故などが挙げられる。
【0144】
このエネルギー取引支援システム140は、具体的には、複数の共有バッテリ142と、管理サーバ144と、ストレージ装置106と、情報伝達装置146と、1つ又は複数の供給者端末(ここでは、施設側端末20)と、1つ又は複数の使用者端末(ここでは、携帯端末22)と、を含んで構成される。
【0145】
情報伝達装置146は、非常時イベントが発生したエリア(以下、該当エリア)に向けて情報を伝達する装置である。情報伝達装置146は、人間が知覚できる態様(例えば、音声、画像、映像など)により情報を出力してもよいし、可視情報又は可聴情報を出力可能な別の出力装置に対して人間が知覚できない態様(例えば、電磁波、音波など)により情報を提供してもよい。また、情報伝達装置146は、管理サーバ144との間で、ネットワークNWを介して双方向に通信可能に構成される。
【0146】
<共有バッテリ142の構成>
図25は、
図24に示す共有バッテリ142の電気的なブロック図である。この共有バッテリ142は、必須の構成である蓄電部142aと、構成の有無が選択的である自走機構142bの他に、通信モジュール150と、プロセッサ152と、メモリ154と、表示器156と、を含んで構成される。蓄電部142aは、第1実施形態(
図5の蓄電部12a)と同一の又は異なる構成を有する。自走機構142bは、第1実施形態(
図5の自走機構12b)と同一の又は異なる構成を有する。
【0147】
通信モジュール150は、外部装置との間で双方向に無線通信可能に構成されるモジュールである。プロセッサ152は、メモリ154に格納されたプログラムを読み出して実行することで、認証部160(使用制限手段)及び認証制御部162(制御手段)として機能する。メモリ154には、例えば、後述する認証情報164が記憶されている。表示器156は、文字を含む可視情報をユーザに向けて出力可能に構成される。
【0148】
ところで、共有バッテリ142はエネルギー取引の際に様々な場所に移動するため、取引に関与しない第三者が、共有バッテリ142を不正に持ち出して使用するという懸念がある。そこで、各々の共有バッテリ142には、パスワード認証・カード認証・生体認証を含む様々な認証手法によって自器の使用(自器へのアクセス)を制限する認証部160が設けられている。
【0149】
例えば、共有バッテリ142の使用者には、アクセス制限を解除するための認証用のパスワードが予め通知されている。この使用者は、携帯端末22の画面22aを介してバッテリID及びパスワードを入力する。すると、携帯端末22は、無線モジュール22bを介して、ユーザID、バッテリID及びパスワードを含む要求信号を共有バッテリ142に送信する。そして、認証部160は、携帯端末22から受信した情報と、メモリ154に格納された認証情報164との一致性を判定する。両者の一致性が確認された場合のみ、共有バッテリ142のアクセス制限が解除される。
【0150】
<管理サーバ144の構成>
図26は、
図24に示す管理サーバ144の電気的なブロック図である。この管理サーバ144は、ストレージ装置106との間で双方向に通信可能であり、サーバ側通信部40及びサーバ側記憶部44の他に、第3実施形態とは機能が異なるサーバ側制御部170を含んで構成される。
【0151】
サーバ側制御部170は、
図21のサーバ側制御部130と同様に、CPU、MPU、GPUを含む処理演算装置によって構成される。サーバ側制御部170は、サーバ側記憶部44に格納されたプログラムを読み出して実行することで、取引条件取得部46、情報収集部48、第1選択部50、及び取引処理部52の他に、認証制御部172(制御手段)として機能する。サーバ側記憶部44には、取引リスト54の他に、共有バッテリ142と共通の認証情報164が記憶されている。
【0152】
<第1動作:共有バッテリ142による管理制御>
第4実施形態におけるエネルギー取引支援システム140は、以上のように構成される。続いて、このエネルギー取引支援システム140の第1動作について、
図27のフローチャートを参照しながら説明する。ここで、「第1動作」とは、アクセス制限の管理制御に関する共有バッテリ142の動作を意味する。なお、共有バッテリ142の認証制御部162は、通常時にて、認証部160による認証モードを「ON」に設定している点に留意する。
【0153】
図27のステップS61において、共有バッテリ142のプロセッサ152は、特定の装置との間の定期通信が可能であるか否かを確認する。ここで、「特定の装置」とは、自身の周辺にある施設側端末20であってもよいし、管理サーバ144であってもよい。通信が可能であった場合(ステップS61:可能)、通信が不可になるまでステップS61に留まる。一方、通信が不可であった場合(ステップS61:不可)、次のステップS62に進む。なお、非常時イベントが発生した場合、互いに近い位置(例えば、同一のエリア内)にある複数の共有バッテリ142が同時に通信できないことがあり得る。
【0154】
ステップS62において、プロセッサ152(認証制御部162)は、周辺にある他の共有バッテリ142との間で、狭域ネットワーク(LAN)又はピアツーピア(P2P)による無線通信を試みる。この試行を通じて、共有バッテリ142は、通信可能な共有バッテリ142の個数と、ステップS61による定期通信の確認結果(例えば、「可能」の個数、「不可」の個数、又はこれらの割合)を取得する。
【0155】
ステップS63において、認証制御部162は、ステップS62での試行結果に従って障害発生条件を満たすか否かを確認する。この「障害発生条件」は、非常時イベントに伴って通信障害が発生している状態を示す条件を意味し、例えば、定期通信が「不可」であった共有バッテリ142の個数が閾値を上回ることが挙げられる。障害発生条件を満たさない場合(ステップS63:NO)、ステップS61に戻って、上記した定期通信が復旧するまでステップS61~S63を順次繰り返す。一方、障害発生条件を満たす場合(ステップS63:YES)、次のステップS64に進む。
【0156】
ステップS64において、認証制御部162は、共有バッテリ142のアクセス制限を自動又は手動により解除させる制御を行う。例えば、自動の場合、認証制御部162は、認証モードを「ON」から「OFF」に切り替える。これにより、非常時イベントが発生したエリア(以下、該当エリア)内のユーザは、ユーザ認証を伴わずに共有バッテリ142を利用することができる。
【0157】
また、手動の場合、認証制御部162は、メモリ154から読み出した認証情報164(例えば、パスワード)を表示器156に表示させる。該当エリア内のユーザは、表示器156により表示された認証情報164を、携帯端末22の画面22aを介して入力することで、認証部160によるユーザ認証の完了後に共有バッテリ142を利用することができる。このように、特定の共有バッテリ142がすべてのユーザに一時的に解放されることになる。
【0158】
ステップS65において、認証制御部162は、アクセス制限を再設定するためのユーザの操作(以下、再設定操作)を受け付けたか否かを確認する。この再設定操作は、共有バッテリ142の操作部(不図示)から行われてもよいし、携帯端末22の画面22aから行われてもよい。再設定操作をまだ受け付けていない場合(ステップS65:NO)、この操作を受け付けるまでステップS65に留まる。一方、再設定操作を受け付けた場合(ステップS65:YES)、次のステップS66に進む。
【0159】
ステップS66において、認証制御部162は、共有バッテリ142のアクセス制限を再設定する。その後、ステップS61に戻って、共有バッテリ142は、
図27のフローチャートに示す動作を順次繰り返す。これにより、エネルギー取引支援システム140は、原則的には共有バッテリ142のアクセス制限を設定し、非常時イベントが発生した場合に限って共有バッテリ142のアクセス制限を一時的に解除する運用を行うことができる。
【0160】
<第2動作:管理サーバ144による管理制御>
続いて、このエネルギー取引支援システム140の第2動作について、
図28のフローチャートを参照しながら説明する。ここで、「第2動作」とは、アクセス制限の管理制御に関する管理サーバ144の動作を意味する。上記した第1動作の場合と同様に、共有バッテリ142の認証制御部162は、通常時にて、認証部160による認証モードを「ON」に設定している点に留意する。
【0161】
ステップS71において、管理サーバ144のサーバ側制御部170は、非常時イベントが発生した旨を示す通知(以下、発生通知)を外部装置から受け付けた否かを確認する。発生通知をまだ受け付けていない場合(ステップS71:NO)、この通知を受け付けるまでステップS71に留まる。一方、発生通知を受け付けた場合(ステップS71:YES)、次のステップS72に進む。
【0162】
ステップS72において、サーバ側制御部170は、該当エリア内にある共有バッテリ142を特定する。具体的には、サーバ側制御部170は、地図情報DB114に蓄積された地図情報を読み出して該当エリアを特定し、施設側端末20から送信された最新のバッテリ情報84を用いて特定可能な複数の共有バッテリ142が該当エリアに属するか否かをそれぞれ判定する。
【0163】
ステップS73において、サーバ側制御部170は、該当エリア内にある特定の装置との間の通信を試みる。ここで、「特定の装置」とは、施設側端末20であってもよいし、共有バッテリ142であってもよい。
【0164】
ステップS74において、サーバ側制御部170は、ステップS73での通信の試行結果を確認する。通信が可能であった場合(ステップS74:YES)にステップS75に進む一方、通信が不可であった場合(ステップS74:NO)にステップS76に進む。
【0165】
ステップS75において、認証制御部172は、共有バッテリ142のアクセス制限を自動により解除させる第1制御を行う。具体的には、認証制御部172は、サーバ側通信部40を介して、アクセス制限を一時的に解除する旨を示す指令信号を、ステップS72にて特定された1つ又は複数の共有バッテリ142に向けて送信する。ここで、管理サーバ144は、各々の共有バッテリ142に向けて指令信号を直接的に送信してもよいし、施設側端末20を経由して指令信号を間接的に送信してもよい。
【0166】
共有バッテリ142の認証制御部162は、管理サーバ144からの指令信号を受け付けた場合、認証部160による認証モードを「ON」から「OFF」に切り替える。これにより、該当エリア内のユーザは、ユーザ認証を伴わずに共有バッテリ142を利用することができる。つまり、特定の共有バッテリ142がすべてのユーザに一時的に解放されることになる。そして、後述するステップS77に進む。
【0167】
一方、ステップS76において、認証制御部172は、共有バッテリ142のアクセス制限を手動により解除させる第2制御を行う。具体的には、認証制御部172は、サーバ側通信部40を介して、アクセス制限を一時的に解除する旨を示す指令信号を、認証情報164と併せて情報伝達装置146に送信する。そして、情報伝達装置146は、管理サーバ144から取得された認証情報164を該当エリアに向けて伝達する。
【0168】
該当エリア内のユーザは、情報伝達装置146により伝達された認証情報164(例えば、パスワード)を、携帯端末22の画面22aを介して入力することで、認証部160によるユーザ認証の完了後に共有バッテリ142を利用することができる。つまり、特定の共有バッテリ142がすべてのユーザに一時的に解放されることになる。そして、ステップS77に進む。
【0169】
ステップS77において、認証制御部172は、ステップS71で発生した非常時イベントが終了した旨を示す通知(以下、終了通知)を外部装置から受け付けたか否かを確認する。終了通知をまだ受け付けていない場合(ステップS77:NO)、この通知を受け付けるまでステップS77に留まる。一方、発生通知を受け付けた場合(ステップS77:YES)、次のステップS78に進む。
【0170】
ステップS78において、認証制御部172は、共有バッテリ142のアクセス制限を自動又は手動により再設定させる制御を行う。自動の場合、認証制御部172は、サーバ側通信部40を介して、アクセス制限を再設定する旨を示す指令信号を、ステップS72にて特定された1つ又は複数の共有バッテリ142に向けて送信する。手動の場合、認証制御部172は、サーバ側通信部40を介して、アクセス制限を一時的に解除する旨を示す指令信号を情報伝達装置146に送信する。
【0171】
その後、ステップS71に戻って、管理サーバ144は、
図28のフローチャートに示す動作を順次繰り返す。これにより、エネルギー取引支援システム140は、原則的には共有バッテリ142のアクセス制限を設定し、非常時イベントが発生した場合に限って共有バッテリ142のアクセス制限を一時的に解除する運用を行うことができる。
【0172】
<第4実施形態による効果>
以上のように、第4実施形態におけるエネルギー取引支援システム140は、第1実施形態と同様の構成である取得手段、収集手段、第1選択手段(具体的には、第1選択部50)及び移動手段(例えば、自走機構142b)を備える。このように構成しても、第1実施形態と同様の作用効果(エネルギー取引における柔軟性及び効率性の向上効果)が得られる。
【0173】
特に、エネルギー取引支援システム140は、共有バッテリ142に設けられて自器の使用を制限する認証部160(使用制限手段)と、非常時の状況を示す所定の条件を満たす場合に認証部160による使用の制限を一時的に解除するように制御を行う認証制御部162,172(制御手段)と、をさらに備えてもよい。これにより、通常時における共有バッテリ142の不正使用を抑制するとともに、エネルギーの不足が予測される非常時の状況下にて共有バッテリ142をユーザに一時的に解放することができる。
【符号の説明】
【0174】
10,100,120,140 エネルギー取引支援システム、12,142 共有バッテリ(可搬型貯蔵器)、12a,142a 蓄電部、12b,142b 自走機構(移動手段)、13d 流通バッテリ、13r 貸出バッテリ、14,104,122,144 管理サーバ、16,106 ストレージ装置、18 外部サーバ(貸出業務サーバ)、20 施設側端末、22 携帯端末、28 搬送車(移動手段)、46 取引条件取得部(取得手段)、48 情報収集部(収集手段)、50,112 第1選択部(第1選択手段)、52 取引処理部(管理処理手段)、54 取引リスト、62 使用者情報、64 供給者情報、66 バッテリ属性情報、80 交渉処理部、82 移動計画管理部、84 バッテリ情報(第1貯蔵器情報)、86 移動計画表、102 車両(特定の機器)、103 車載バッテリ(固定型貯蔵器)、108 バッテリ情報(第2貯蔵器情報)、116,118 目的関数、124,126 業者側端末、132 第2選択部(第2選択手段)、146 情報伝達装置、160 認証部(使用制限手段)、162,172 認証制御部(制御手段)。