(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】音声ナビゲーションシステムおよび音声ナビゲーション方法
(51)【国際特許分類】
H04S 7/00 20060101AFI20220426BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20220426BHJP
G08G 1/005 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
H04S7/00 340
G01C21/26 P
G08G1/005
(21)【出願番号】P 2020127085
(22)【出願日】2020-07-28
(62)【分割の表示】P 2016021033の分割
【原出願日】2016-02-05
【審査請求日】2020-07-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 力
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-177033(JP,A)
【文献】特開2015-219145(JP,A)
【文献】特開2006-250674(JP,A)
【文献】特開2001-116581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04S 7/00
G01C 21/26
G08G 1/005
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の両耳に装着されるスピーカと、
現在地の位置情報を取得する現在位置取得部と、
目的地の位置情報を取得する目的位置取得部と、
前記使用者の頭部が向いている方位を検出する方位センサと、
前記取得した現在地の位置情報および前記取得した目的地の位置情報に基づいて、前記現在地から前記目的地までの距離および方位を算出する距離算出部と、
前記使用者の頭部が向いている方位に対する前記目的地の方位を算出する方位算出部と、
楽曲等のオーディオ信号を再生するオーディオ再生部と、
前記距離算出部で算出された前記目的地までの距離に基づいて、前記オーディオ信号の特性を制御するとともに、このオーディオ信号が前記使用者の頭部に対して前記目的地の方向から聞こえるように定位させて前記スピーカから出力する特性処理部と、
を備え
、
前記特性処理部は、前記現在地から前記目的地までの距離が小さいほど、音場の広がりを大きくし、
前記特性処理部は、左右の仮想のスピーカを設定し、前記スピーカから出力される音が該左右の仮想のスピーカから放音されているように特性を処理するものであって、前記現在地から前記目的地までの距離が小さいほど、前記左右の仮想のスピーカの間隔を広げる、
音声ナビゲーションシステム。
【請求項2】
前記オーディオ信号が再生されていないとき、または、特定のタイミングに、前記現在地から前記目的地までの距離または方位を通知する案内音声を発生する案内音声発生部を、
を更に備えた請求項
1に記載の音声ナビゲーションシステム。
【請求項3】
目的地の位置情報を取得し、
使用者の現在地の位置情報を取得し、
前記取得した目的地の位置情報、および、使用者の現在地の位置情報に基づいて、前記現在地から前記目的地までの距離および方位を算出し、
前記使用者の頭部が向いている方位を検出し、
前記使用者の頭部が向いている方位に対する前記目的地の方位を算出し、
前記算出された前記目的地までの距離に基づいて、前記使用者の両耳に装着されるスピーカから出力されるオーディオ信号の特性を制御するとともに、このオーディオ信号が前記使用者の頭部に対して前記目的地の方向から聞こえるように定位させて、前記スピーカから出力する
音声ナビゲーション方法
であって、
前記現在地から前記目的地までの距離が小さいほど、音場の広がりを大きくし、
左右の仮想のスピーカを設定し、前記スピーカから出力される音が該左右の仮想のスピーカから放音されているように特性を処理するものであって、前記現在地から前記目的地までの距離が小さいほど、前記左右の仮想のスピーカの間隔を広げる、
音声ナビゲーション方法。
【請求項4】
前記オーディオ信号が再生されていないとき、または、特定のタイミングに、前記現在地から前記目的地までの距離または方位を通知する案内音声を発生する請求項
3に記載の音声ナビゲーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、現在地から目的地までの距離等の情報を、音の特性を制御することによって通知する音声ナビゲーションシステムおよび音声ナビゲーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者の現在地と目的地までの経路画像を画面に表示する携帯ナビゲーション装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、目的地までの経路画像に加えて、次に向かうべき経路を例えば「次の交差点を右へ」というような音声で案内する携帯ナビゲーション装置も知られている。
【0004】
しかしながら、経路画像が表示される携帯ナビゲーション装置では、表示画面を見て目的地までの経路を確認しなければならず不便であった。また、使用者が歩行で目的地に向かう場合、携帯ナビゲーション装置を手に持ち続けて経路画像を確認したり、経路画像を確認するたびに携帯ナビゲーション装置を鞄等から取り出す必要があり不便であった。
【0005】
経路画像に加えて経路情報を音声で案内する携帯ナビゲーション装置の場合には、経路画像を確認しなくても経路情報を知ることができる。しかしながら、使用者が聞いている音楽等が音声ガイドによって度々邪魔されることがあり、不快に感じる場合があった。
【0006】
また、都市部では、目的地までの経路は立体的かつ複雑である。このため経路画像を表示しても、都市部では向かうべき方向や経路が判りにくい場合があった。さらに「次の交差点を右へ」というような単純な音声案内だけでは、都市部での経路情報を的確に通知できなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、通常は目的地までの経路は複数ある。例えば「次の交差点を右折」してもよく、「次の次の交差点を右折」しても最終的には問題なく目的地に到着できる場合がある。つまり、現在地から目的地までのおおよその距離や方位が分かれば、たとえ現在地を見失ったとしても目的地に向かうことができる。
【0009】
この発明は、現在地から目的地までのおおよその距離や方位を通知する音声ナビゲーションシステムおよび音声ナビゲーション方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の音声ナビゲーションシステムは、使用者の両耳に装着されるスピーカと、現在地の位置情報を取得する現在位置取得部と、目的地の位置情報を取得する目的位置取得部と、使用者の頭部が向いている方位を検出する方位センサと、取得した現在地の位置情報および取得した目的地の位置情報に基づいて、現在地から目的地までの距離および方位を算出する距離算出部と記使用者の頭部が向いている方位に対する目的地の方位を算出する方位算出部と、楽曲等のオーディオ信号を再生するオーディオ再生部と、距離算出部で算出された前記目的地までの距離に基づいて、オーディオ信号の特性を制御するとともに、このオーディオ信号が使用者の頭部に対して前記目的地の方向から聞こえるように定位させてスピーカから出力する特性処理部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
上記発明の音声ナビゲーションシステムにおいて、オーディオ信号が再生されていないとき、または、特定のタイミングに、現在地から目的地までの距離または方位を通知する案内音声を発生する案内音声発生部を、更に備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の音声ナビゲーション方法は、目的地の位置情報を取得し、使用者の現在地の位置情報を取得し、取得した目的地の位置情報および使用者の現在地の位置情報に基づいて、現在地から目的地までの距離および方位を算出し、使用者の頭部が向いている方位を検出し、使用者の頭部が向いている方位に対する目的地の方位を算出し、算出された目的地までの距離に基づいて、使用者の両耳に装着されるスピーカから出力されるオーディオ信号の特性を制御するとともに、このオーディオ信号が使用者の頭部に対して目的地の方向から聞こえるように定位させて、前記スピーカから出力することを特徴とする。
【0013】
上記発明の音声ナビゲーション方法において、オーディオ信号が再生されていないときまたは特定のタイミングに、現在地から目的地までの距離または方位を通知する案内音声を発生することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、現在地から目的地までのおおよその距離や方位を再生中の楽音等で通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明が適用される実施形態1にかかる音声ナビゲーションシステムを含むGPSナビゲーションシステムの模式図である。
【
図2】音声ナビゲーションシステムの外観図である。
【
図5】音声ナビゲーションシステムの機能ブロック図である。
【
図6】音声ナビゲーション処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】音声ナビゲーションシステムの表示部および、音の音像についての模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態1]
図1は、この発明が適用される実施形態1にかかる音声ナビゲーションシステム100を含むGPS(Global Positioning System)ナビゲーションシステム400の模式図である。GPSナビゲーションシステム400は、音声ナビゲーションシステム100、複数のGPS衛星420、基地局440、地図情報サーバ460等から構成されている。音声ナビゲーションシステム100は、GPS衛星420からの信号を受信して現在地の位置情報を測定する。地図情報サーバ460は、広域ネットワーク450および基地局440を介して音声ナビゲーションシステム100と通信する。広域ネットワーク450は、たとえば携帯電話網やインターネットなどが適用可能である。
【0017】
図2は、音声ナビゲーションシステム100の外観図である。音声ナビゲーションシステム100は、音声出力装置200、および、多機能携帯電話機(いわゆるスマートフォンと呼ばれる機種。以下、単に携帯電話機と呼ぶ)300から構成されている。
【0018】
音声出力装置200は、使用者によって装着され、携帯電話機300から音楽(楽曲)などのオーディオ信号を受信して再生する。同時に、使用者が目的地に向かって移動(歩行)中の場合、現在地と目的値との距離および位置関係に応じて、再生中のオーディオ信号の特性を制御し、これによって使用者に目的地への方向や距離を知らせる。
【0019】
音声出力装置200は、いわゆるBluetooth(登録商標)のステレオイヤホンであり、音声処理ユニット201、ケーブル202、および、イヤホンユニット213L,213Rを有している。この実施形態の音声出力装置200は、左右のイヤホンユニット213L,213Rをつなぐケーブル202の途中に音声処理ユニット201が挿入されるような形状であるが、本発明において音声出力装置200の形状はこれに限定されない。
【0020】
音声処理ユニット201は、Bluetooth通信回路220を有している。Bluetooth通信回路220は、携帯電話機300と通信する。音声処理ユニット201は、Bluetooth通信回路220を介して、携帯電話機300から目的地の位置情報、現在地の位置情報、ソース信号(オーディオ信号)等を受信する。Bluetooth通信回路220で受信したオーディオ信号は、目的地の位置情報、現在地の位置情報等に基づいて、音声処理ユニット201で音声処理が行われ、イヤホンユニット213L,213Rに出力される。
【0021】
イヤホンユニット213L,213Rは、音声処理ユニット201で音声処理されたオーディオ信号を音声として放音する。イヤホンユニット213Lは使用者の左耳に装着され、イヤホンユニット213Rは使用者の右耳に装着される。イヤホンユニット213L,213Rは、スピーカ244L,244Rを有している。イヤホンユニット213Lには、頭部方位センサ246が設けられている。
【0022】
頭部方位センサ246は、イヤホンユニット213Lの姿勢を検出する。頭部方位センサ246として、例えば9軸センサが用いられる。9軸センサは、三軸方向の角速度(回転速度)、三軸方向の加速度、および、三軸方向の地磁気を検出するセンサである。イヤホンユニット213Lが左耳に正常に装着されていることを前提として、イヤホンユニット213Lの姿勢を検出することで、使用者の頭部が向いている方位を検出することができる。なお、頭部方位センサ246は、9軸センサ以外のセンサを用いることができる。また、頭部方位センサ246をイヤホンユニット213L,213R両方に設けるようにしてもよい。
【0023】
なお、頭部方位センサ246は使用者の頭部が向いている方位を検出できればよく、イヤホンユニット213L,213Rのどの位置に設けてもよい。また、イヤホンユニット213L,213Rは、ヘッドバンドで接続したヘッドホンであってもよい。この場合、頭部方位センサ246をヘッドバンドに設けてもよい。
【0024】
図3は、音声出力装置200のブロック図である。音声処理ユニット201は、制御部210、Bluetooth通信回路220、信号処理部222、および、スピーカ駆動部224を有している。
【0025】
制御部210は、CPU211、および、ROM,RAM等からなるメモリ212を備えたマイクロコンピュータで構成されている。制御部210には、Bluetooth通信回路220、信号処理部222、および、頭部方位センサ246が接続されている。制御部210はメモリ212に予め記憶された制御プログラムをCPU211で実行することにより、携帯電話機300と協動して音声ナビゲーション機能を実現する。制御部210は、GPS位置情報、および、頭部方位センサ246から入力された使用者の頭部が向いている方位(頭部方位情報)に基づいて、携帯電話機300からBluetooth通信回路220を介して入力されるオーディオ信号に対する音声処理の内容を決定し、信号処理部222に出力する。
【0026】
信号処理部222は、携帯電話機300から入力されたオーディオ信号に対して、制御部210から入力された内容の音声処理を行う。音声処理によって特性を制御されたオーディオ信号は、スピーカ駆動部224に出力される。スピーカ駆動部224は、アンプを有しており、信号処理部222から入力されたオーディオ信号を増幅し、増幅した信号をそれぞれスピーカ244L,244Rに出力する。音声処理の内容は後述する。
【0027】
図4は、携帯電話機300のブロック図である。携帯電話機300は、携帯電話網を介して他の電話機と音声通話が可能であるとともに、メモリカード315などのメモリに記憶された楽曲データを再生し、オーディオ信号を出力可能である。また、以下に述べるように、地図情報、GPS測位情報などに基づいて現在地と目的地との距離や方位を割り出すナビゲーション機能を有している。
【0028】
携帯電話機300は、ナビゲーション機能を実現するためのナビゲーションコントローラアプリケーションプログラム350(以下、単にナビゲーションプログラム350と呼ぶ)を記憶している。ナビゲーションプログラム350が実行されると、携帯電話機300は、音声出力装置200とBluetoothで通信し、音声出力装置200の制御を行う。ナビゲーションプログラム350が実行されている携帯電話機300は、機能的に音声ナビゲーションシステムコントローラを構成する。
【0029】
図4に示すように、携帯電話機300は、バス326上に、制御部320、操作部330、メディアインタフェース331、3G/4G通信回路332、Bluetooth通信回路333、Wi-Fi通信回路334、および、GPS受信部335を有している。
【0030】
制御部320は、CPU321、ROM(フラッシュメモリ)322、RAM323、画像プロセッサ324および音声プロセッサ325を含んでいる。画像プロセッサ324には、ビデオRAM(VRAM)340が接続され、VRAM340には表示部341が接続されている。表示部341は、液晶のディスプレイを含み、待ち受け画面、音声ナビゲーションシステムコントローラの画像、RAM323に記憶されている地図情報に基づいた地図画像、使用者の現在地を示す現在地アイコンPや、目的地を示す目的地アイコンG等を表示する(
図7参照)。音声プロセッサ325には、D/Aコンバータを含むアンプ342が接続され、アンプ342にはスピーカ316が接続されている。
【0031】
画像プロセッサ324は、待ち受け画面などの種々の映像を生成するGPU(GraphicsProcessingUnit,グラフィックス・プロセッシング・ユニット)を備えている。画像プロセッサ324は、ナビゲーションプログラム350が起動された場合には、CPU321の指示に従って音声ナビゲーションシステムコントローラの画像、地図画像、地図画像に重ねられる現在地アイコンPや目的地アイコンG等を生成し、これをVRAM340上に展開する。VRAM340上に展開された画像は表示部341に表示される。
【0032】
ROM322、メモリカード315には、楽曲データ(mp3などのオーディオファイル)も記憶される。音声プロセッサ325は、通話音声や再生されたオーディオ信号をエンコード/デコードするDSP(Digital Signal Processor:デジタル・シグナル・プロセッサ)を有している。音声プロセッサ325は、デコード/生成した音声をアンプ342に出力するか、または、Bluetooth通信回路333に入力する。アンプ342は、入力された音声信号を増幅してスピーカ316に出力する。Bluetooth通信回路333は入力された音声信号を音声出力装置200に送信する。本実施形態では、音声プロセッサ325から出力された音声信号は、Bluetooth通信回路333によって音声出力装置200に送信される。
【0033】
RAM323には、地図情報、頭部の方位情報、現在地での進むべき方位を示す案内情報、現在地の位置情報、目的地の位置情報、目的地の方位情報等が記憶される。なお、地図情報は、3G/4G通信回路332を介して地図情報サーバ460からその都度必要な分だけダウンロードされてRAM323に記憶される。
【0034】
3G/4G通信回路332は、携帯電話通信網を介して、音声通話およびデータ通信を行う。Wi-Fi通信回路334は、図示しない無線アクセスポイントとの間でIEEE802.11g規格のデータ通信を行う。データ通信によってナビゲーションシステムコントローラなどのアプリケーションプログラムのダウンロードが行われる。なお、アプリケーションプログラムの取得は、3G/4G通信またはWi-Fi通信でダウンロードするのみならずUSBなどのインタフェース経由で取得するようにしてもよい。
【0035】
Bluetooth通信回路333は、相手装置として選択設定した(ペアリングした)機器と通信する。携帯電話機300は、ナビゲーションプログラム350との協働で音声ナビゲーションシステムコントローラとして機能し、音声出力装置200と通信して、RAM323に記憶された目的地の位置情報、現在地の位置情報、ソース信号(オーディオ信号)等を送信する。
【0036】
GPS受信部335は、GPS衛星420からの信号を受信する。GPS受信部335は、GPS衛星420から受信した信号に基づいて緯度/経度情報および時刻情報を割り出し、これらの情報を制御部320に通知する。制御部320は、GPS受信部335から入力された緯度/経度情報に基づいて地図情報上で現在地を決定する。
【0037】
操作部330は、表示部341上に形成されたタッチパネルを含み、タッチパネル上のタッチ操作、フリック操作を検出する。操作部330は、タッチパネルから入力される各種の指示、目的地の位置情報等を検出して制御部320へ出力する。
【0038】
メディアインタフェース331にはメモリカード315が接続される。メモリカード315は、たとえばマイクロSDカードである。3G/4G通信回路332によってサーバからダウンロードされたアプリケーションプログラムは、メモリカード315またはROM322に保存される。この携帯電話機300では、ナビゲーションプログラム350がメモリカード315に保存されている。なお、ナビゲーションプログラム350は、プログラム本体に加えてプログラムの実行に必要なデータを含んでいる。
【0039】
ROM322には、この携帯電話機300の通話やアプリケーションプログラムを実行するための基本プログラムが記憶されている。また、ROM322はフラッシュメモリであり、基本プログラムのほか、ダウンロードされたアプリケーションプログラムなどを記憶することも可能である。RAM323には、CPU320がナビゲーションプログラム350を実行する際に使用されるワークエリアが設定される。
【0040】
図5は、音声ナビゲーションシステム100の機能ブロック図である。
図5を用いて音声ナビゲーションシステム100の機能について説明する。この音声ナビゲーションシステム100では、オーディオ再生部265によって再生されたオーディオ信号は、定位処理部270でその音像の定位を処理され、特性処理部280でその特性(音量、周波数特性、音場など)を処理されたのち、音響出力部290によって音響として出力される。定位処理部270による定位処理、および特性処理部280による特性処理は、現在地と目的地との距離および方位に応じて決定される。以下、各機能について具体的に説明する。
【0041】
現在位置取得部360は、携帯電話機300の制御部320、GPS受信部335、VRAM340、および、ナビゲーションプログラム350の協動によって実現される。現在位置取得部360は、GPS衛星420から受信したGPS信号に基づき、現在地の位置座標を取得する。また、現在位置取得部360は、現在地の位置座標を取得すると、RAM323に記憶している地図情報に位置座標をマッチングさせて、現在地が地図上のどの位置であるかを割り出す。このとき表示部341に地図画像を表示し、この地図画像上の現在地に対応する位置に現在地アイコンPを表示してもよい。取得した現在地の位置座標は、現在地の位置情報としてRAM323に記憶される。
【0042】
目的位置取得部380は、携帯電話機300の制御部320、VRAM340、表示部341、操作部330、および、プログラム50の協働によって実現される。目的地取得部380は、表示部341に地図画像を表示し、使用者に対して目的地の指定を促す。使用者によって地図画像上の任意の位置が指定されると、目的位置取得部380は、指定された地点の位置座標を算出し、目的地の位置情報とする。取得された目的地の位置情報は、RAM323に記憶される。また、目的位置取得部380は、使用者によって目的地が指定されると、指定された位置に目的地アイコンGを表示する。なお、使用者が目的地の住所を入力したり、検索結果を選択することにより、地図情報に目的地の位置情報を入力するようにしてもよい。また、使用者が目的地の緯度および、経度を直接入力してもよい。
【0043】
方位算出部250は、音声出力装置200の制御部210、および、制御プログラムの協働によって実現される。方位算出部250は、使用者の頭部が向いている方位に対する目的地の方位を算出する。具体的には、方位算出部250は、現在地の位置情報、および、目的地の位置情報に基づいて現在地から目的地に向けた絶対方位を算出する。次に、この絶対方位と使用者の頭部が向いている方位情報(頭部方位情報)とに基づいて、使用者の頭部が向いている方位に対する目的地の方位を算出する。使用者の頭部が向いている方位情報(頭部方位情報)は、イヤホンユニット213Lが使用者の左耳に正常に装着されていることを前提として、音声出力装置200の頭部方位センサ246で検出される。算出された方位は、角度θとしてメモリ212に記憶される。
【0044】
距離算出部260は、音声出力装置200の制御部210、および、制御プログラムの協働によって実現される。距離算出部260は、現在地から目的地までの距離を算出する。具体的には、距離算出部260は、現在地の位置情報、および目的地の位置情報に基づいて、現在地から目的地までの距離を算出する。算出された距離は、メモリ212に記憶される。
【0045】
オーディオ再生部265は、携帯電話機300からBluetoothを介して送信される楽曲のオーディオ信号を再生する。
【0046】
定位処理部270は、方位算出部250で算出された目的地の方位に基づいて、スピーカ244L,244Rから出力される音が使用者の頭部に対して目的地の方向から音が聞こえるように音像を定位させる。定位処理部270は、例えば、現在地から目的地への方向を案内方向として、オーディオ信号がモノラルの場合には案内方向に音像を定位させ、ステレオの場合には、案内方向がセンターになるように定位させる処理を行う。
【0047】
定位処理部270がオーディオ信号に対して行う定位処理では、方位算出部250で算出された角度θを用いる。角度θは、目的地の方位と、使用者の頭部が向いている方位(頭部正面方向の方位)との角度差である。定位処理部270は、使用者の頭部が向いている方向(頭部正面方向)に対し、左右の角度θの方向に音像が定位するようにオーディオ信号に対して音声処理を行う。
【0048】
オーディオ信号がモノラル信号である場合、定位処理部270は、1チャンネルのオーディオ信号を左右の耳用に2つのデジタルフィルタで処理し、一方のデジタルフィルタの出力信号を左のスピーカ244Lに入力し、他方のデジタルフィルタの出力信号を右のスピーカ244Rに入力する。各デジタルフィルタは係数乗算器を備えたFIR型又はIIR型のフィルタであり、入力されたオーディオ信号を音の伝達特性(インパルス応答)で畳み込み演算する。伝達特性は、音像を定位させる位置から使用者の鼓膜までの音の伝達特性をいい、例えば頭部伝達関数等で表すことができる。定位処理部270は、各スピーカ244L,244Rから左右の耳に伝達される音についてのそれぞれの伝達特性が、頭部正面方向に対して角度θの方向に音像を定位させたときの特性となるように、各デジタルフィルタの係数乗算器の係数値を設定する。これによりスピーカ244L,244Rへのオーディオ信号の周波数位相特性が変化し、音像の定位を変化させることができる。なお、定位処理部270による定位処理は、これに限定されない。例えば、頭部伝達関数を用いずに、音量、出力タイミングのみの制御であってもよい。
【0049】
特性処理部280は、オーディオ信号の音量、周波数特性、音場などオーディオ信号の特性のうち、少なくとも一つを制御する。特性処理部280は、現在地から目的地までの距離が近い場合には、例えば、音量を大きく、高音域を強調した音質にしたり、広がりのある音場処理をして音源に近い感じをだす特性処理を行う。また、特性処理部280は、現在地から目的地までの距離が遠い場合には、例えば、音量を小さく、高音域を絞った中低音が勝った音質にしたり、弱い残響を長く響かせる音場処理にする特性処理を行う。なお、特性処理部280による特性処理は、これらに限定されない。
【0050】
特性処理部280による特性処理の一例として、音のステレオ感を変化させる音場処理について説明する。ステレオ感は、左右のスピーカ244L,244Rから出力される音の定位の間隔が小さくなると小さくなり(音場の広がりが小さくなる)、反対に、左右のスピーカ244L,244Rから出力される音の定位の間隔が大きくなり、使用者の鼓膜の位置との関係が所定の関係に近づくほど大きくなる(音場の広がりが大きくなる)。ステレオ感は、左右のスピーカ244L,244Rから出力される音の定位の間隔と、使用者の鼓膜の位置との関係を変化させることで変えることができる。例えば、目的地までの距離が遠いほどステレオ感を小さくし(使用者にはモノラル音声に聞こえる)、目的地までの距離が近づくにつれてステレオ感を増大させる(使用者には徐々にモノラル音声からステレオ音声に聞こえる)。このようにステレオ感を変化させることにより、使用者は、現在地が徐々に目的地に近づいていることを音声によって理解することができる。
【0051】
なお、
図5では、定位処理部270、特性処理部280の順に配列され、この順にオーディオ信号に対して処理を行うように記載されているが、この順序はこれに限定されない。同じ信号処理部222で行われる処理であるため、両方を並行して行ってもよい。
【0052】
音響出力部290は、スピーカ駆動部224、およびスピーカ244L,244Rを有している。音響出力部290は、定位処理部270で音像の定位を処理され、特性処理部280で特性(音量、周波数特性、音場など)を処理されたオーディオ信号を音響として出力する。
【0053】
案内音声発生部267は、特定のタイミングまたはオーディオ信号が再生されていないときなどに案内音声を発生する。案内音声には、例えば、現在地から目的地までのおおよその距離や、方位を通知する内容を含めることができる。
【0054】
図6は、音声出力装置200が制御プログラムを実行し、携帯電話機300がナビゲーションプログラム350を実行することにより実現される音声ナビゲーション処理の流れを示すフローチャートである。
【0055】
まず、使用者は、携帯電話機300に保存されている楽曲等や、地図情報サーバ460からストリーミング配信される楽曲等を選択する。選択された楽曲のオーディオ信号は、携帯電話機300から音声出力装置200へBluetoothを通じて送信される(S11)。
【0056】
続いて、使用者が目的地の位置情報を入力する(S12)。目的地の位置情報は、携帯電話機300の表示部341に表示した地図画像上で目的地の位置を使用者が指定することにより入力される。
【0057】
目的位置取得部380は、表示部341に表示される地図画像上の任意の地点が使用者によって指定されると、指定された位置に目的地アイコンGを表示する(S13)。
【0058】
また、目的位置取得部380は、使用者に指定された地点の位置座標を算出し、目的地の位置情報として取得する(S14)。なお、使用者が目的地の住所を入力したり、検索結果を選択することにより、目的地の位置情報を入力するようにしてもよい。また、使用者が目的地の緯度および、経度を直接入力してもよい。
【0059】
S14で目的地の位置情報が取得されると、目的地の位置情報は、携帯電話機300から音声出力装置200へBluetoothを通じて送信される(S15)。
【0060】
現在位置取得部360は、現在地の位置情報を取得する(S16)。なお、現在位置取得部360による現在地の位置情報の取得は、目的位置取得部380による目的地の位置情報の取得と並行して行ってもよい。
【0061】
現在位置取得部360は、現在地の位置情報を取得すると、地図画像上の現在地に重ねて現在地アイコンPを表示する(S17)。
【0062】
S16で現在地の位置情報が取得されると、現在地の位置情報は、携帯電話機300から音声出力装置200へBluetoothを通じて送信される(S18)。
【0063】
続いて、音声出力装置200の方位算出部250は、携帯電話機300から受信した現在地の位置情報、目的地の位置情報、および、音声出力装置200の頭部方位センサ246で検知された頭部方位情報(使用者の頭部が向いている方位)に基づいて、使用者の頭部が向いている方位に対する目的地の方位を算出する(S19)。
【0064】
音声出力装置200の距離算出部260は、携帯電話機300から受信した現在地の位置情報、および、目的地の位置情報に基づいて、現在地から目的地までの距離を算出する(S20)。
【0065】
音声出力装置200の定位処理部270は、使用者の頭部が向いている方向(頭部正面方向)に対し、左右の角度θの方向に音像が定位するようにオーディオ信号に対して音声処理を行う(S21)。ここで、角度θは、目的地の方位と、頭部正面方向の方位との角度差である。
【0066】
音声出力装置200の特性処理部280は、距離算出部260で算出された目的地までの距離に基づいて、オーディオ信号の音場を変化させる(S22)。例えば、現在地から目的地までの距離が遠いほどモノラルに近い音場とし、距離が近くなるほどステレオに近い音場とする。
【0067】
スピーカ244L,244Rからは、定位処理部270および、特性処理部280で音声処理されたオーディオ信号に基づいた楽曲が放音される(S23)。これにより、使用者の頭部に対して目的地の方向から音声が聞こえ、かつ、使用者の現在地から目的地までが遠い場合はモノラルに近い音声、近くなるほどステレオに近い音声が聞こえる。
【0068】
続いてナビゲーション処理の終了判定を行う(S24)。目的地と現在地が一致している場合にはナビゲーション処理を終了する。目的地と現在地が一致していない場合にはS16に戻り、S16~S24を繰り返し実行する。
【0069】
図7は、音声ナビゲーションシステム100の表示部341および、音の音像について説明するための模式図である。
図7の左側は、使用者Uを上方から見た模式図である。一点鎖線の矢印は、使用者Uの頭部Hが向いている方向を示している。実線の矢印は、目的地の方向を示している。スピーカ244L,244Rは、音像が定位される仮想の位置を示している。
図7の右側は、携帯電話機300の表示部341に表示される地図画面である。
図7では、地図画面の上方を北としているが、地図画面の情報が常に北を向く必要はなく、携帯電話機300の向きに応じて地図画面の向きが変化してもよい。現在地アイコンPは地図画像上での使用者の現在地を示している。使用者が進むべき経路は表示されない。現在地アイコンPの横に付した矢印は、現在地アイコンPの移動方向(使用者Uの移動方向)を説明するためのものであり、実際の地図画面には表示されなくてもよい。目的地アイコンGは経路画像上での目的地を示している。以下、
図7を参照して使用者が(A)~(C)に示すように動作した場合の表示部341および、音像の変化について説明する。
【0070】
図7Aは、使用者が目的地の位置情報を入力した後、スピーカ244L,244Rからの放音が開始された状態を示している。
図7Aでは、使用者Uは、北を向いている。使用者Uの現在地(地図画面上の現在地アイコンPの位置)に対して目的地の位置(地図画面上の目的地アイコンGの位置)は、北東である。このため、音像が定位された音は、使用者Uの頭部Hが向いている方向(頭部正面方向)に対して右前方に位置し、目的地の方位に対して垂直方向に配置され、前記方位の逆方向に向いた仮想のスピーカ244L,244Rから放音されているように聞こえる。このため、使用者Uは、地図画面を見なくても、あるいは方位(東西南北)を正しく認識していなくても、自分が頭部Hを向けている方向に対して右前方に目的地が位置していることを認識することができる。
【0071】
また、仮想のスピーカ244L,244Rの間隔は狭くなるように音声処理されているため、使用者Uにはモノラルに近い音声が聞こえる。このため、使用者Uは、地図画面を見なくても、あるいは現在地から目的地までの距離を正しく認識していなくても、目的地までは遠いことを認識することができる。
【0072】
現在地から目的地までのおおよその方向と距離が認識できた使用者Uは、目的地に近づくように移動を開始するが、目的地まではどのような経路を選択してもよい。例えば、現在地から東に向かってもよく(Aルート)、現在地から北に向かってもよい(Bルート)。
【0073】
図7Bは、使用者が移動している状態を示している。
図7Bでは、使用者Uは、東を向いている。使用者Uの現在地(地図画面上の現在地アイコンPの位置)に対して目的地の位置(地図画面上の目的地アイコンGの位置)は、北東である。このため、音像が定位された音は、使用者Uの頭部Hが向いている方向(頭部正面方向)に対して左前方に位置し、目的地の方位に対して垂直方向に離間配置され、前記方位の逆方向に向いた仮想のスピーカ244L,244Rから放音されているように聞こえる。このため、使用者Uは、地図画面を見なくても、あるいは方位(東西南北)を正しく認識していなくても、自分が頭部Hを向けている方向に対して左前方に目的地が位置していることを認識することができる。
【0074】
また、仮想のスピーカ244L,244Rの目的地方位に対して垂直方向に離間された間隔は
図7Aよりも広くなるように音声処理されているため、使用者Uにはモノラルよりもステレオに近い音声が聞こえる。このため、使用者Uは、地図画面を見なくても、あるいは現在地から目的地までの距離を正しく認識していなくても、目的地まで近づいていることを認識することができる。
【0075】
図7Cは、使用者が移動して目的地に近づいている状態を示している。
図7Cでは、使用者Uは、北を向いている。使用者Uの現在地(地図画面上の現在地アイコンPの位置)に対して目的地の位置(地図画面上の目的地アイコンGの位置)は、真北よりわずかに西寄りである。このため、音像が定位された音は、使用者Uの頭部Hが向いている方向(頭部正面方向)に対して前方わずかに左に位置し、目的地方位に対して垂直方向に離間配置され、前記方位の逆方向に向いた仮想のスピーカ244L,244Rから放音されているように聞こえる。このため、使用者Uは、地図画面を見なくても、あるいは方位(東西南北)を正しく認識していなくても、自分が頭部Hを向けている方向に対して前方わずか左に目的地が位置していることを認識することができる。
【0076】
また、仮想のスピーカ244L,244Rの目的地方位に対して垂直方向に離間された間隔は
図7Bよりも広くなるように音声処理されているため、使用者Uにはほぼステレオに近い音声が聞こえる。このため、使用者Uは、地図画面を見なくても、あるいは現在地から目的地までの距離を正しく認識していなくても、目的地が近いことを認識することができる。
【0077】
以上説明した本発明の音声ナビゲーションシステムは、上記実施形態に限定されない。仮想のスピーカ244L,244Rからは、常に音声処理された音が放音されるとしたが、方位と距離を確認したい時だけあるいは所定のタイミングの時だけ、音声処理された音が放音され、それ以外は音声処理されていない音が放音されるようにしてもよい。例えば、音声出力装置200にトリガ入力部を設け、トリガ入力部が操作されたときだけ、音声処理された音が放音され、それ以外は音声処理されていない音が放音されるようにしてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、現在地から目的地までの距離に応じてステレオ感が変化するようにしたが、これに限定されない。例えば、現在地から目的地までの距離に応じて、音量が変化するようにしてもよい。
【0079】
上記実施形態では、音声出力装置200は、音声処理ユニット201とイヤホンユニット213L,213Rが別体に設けられているが、これに限定されない。例えば、音声処理ユニット201の機能をイヤホンユニット213L,213Rが備えるようにしてもよい。
【0080】
上記実施形態では、音声ナビゲーションシステム100は、音声出力装置200、および、多機能携帯電話機300で構成されるとしたが、これに限定されない。例えば、音声処理ユニット201の機能を携帯電話機300でナビゲーションプログラム350が実行されることにより実現させてもよい。
【符号の説明】
【0081】
100 音声ナビゲーションシステム
200 音声出力装置
300 携帯電話機
400 GPSナビゲーションシステム
244L,244R スピーカ
260 距離算出部
280 特性処理部
360 現在位置取得部
380 目的位置取得部