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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20220426BHJP
   G03G 15/06 20060101ALI20220426BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
G03G21/00 510
G03G15/06 101
G03G15/00 651
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020137268
(22)【出願日】2020-08-17
(62)【分割の表示】P 2016129066の分割
【原出願日】2016-06-29
(65)【公開番号】P2020197744
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2020-08-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 竜利
(72)【発明者】
【氏名】北村 一矢
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-266056(JP,A)
【文献】特開2001-154427(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0249512(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/06
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する感光体と,前記感光体の表面を帯電させる帯電部材と,前記感光体の帯電後の表面に静電潜像を書き込む露光部と,前記感光体の静電潜像上にトナー像を形成する現像器とを有し,前記感光体が交換可能な感光体ユニットとされている画像形成装置であって,
前記感光体ユニットの累積使用量をカウントする感光体使用量カウント部と,
前記感光体と前記帯電部材との間に帯電バイアスを印加するとともに,前記感光体と前記帯電部材との間に帯電バイアスを印加している状態で前記感光体と前記帯電部材との間に流れる帯電電流を,画像形成時以外のときに測定する帯電バイアス印加部と,
測定された帯電電流と測定時における前記感光体ユニットの累積使用量とに基づいて前記感光体ユニットの膜厚減少傾きを算出する膜厚減少算出部と,
前記感光体ユニットの膜厚減少傾きを保持するとともに,新たに膜厚減少傾きが算出されると,それまで保持していた膜厚減少傾きと新たに算出された膜厚減少傾きとの代表値を新たに保持する膜厚減少傾き保持部と,
画像形成実行時に,その時点での前記感光体ユニットの累積使用量と,前記膜厚減少傾き保持部に保持されている膜厚減少傾きに基づいて,前記感光体の消耗率を求める感光体寿命管理部とを有し,
前記膜厚減少傾き保持部は,新たに保持する前記代表値として,それまで保持していた膜厚減少傾きと新たに算出された膜厚減少傾きとの,相加平均,相乗平均,調和平均,新たに算出された膜厚減少傾きにより大きな重み付けを置いた平均,のいずれかを用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって,前記膜厚減少傾き保持部は,
前記感光体ユニットの使用の初期においては膜厚減少傾きとしてあらかじめ用意された固定値を用い,
前記感光体ユニットの使用量に関するあらかじめ定めた条件が満たされてから前記代表値を用いるように構成されているものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項に記載の画像形成装置であって,
前記あらかじめ定めた条件は,前記感光体ユニットの累積使用量についてあらかじめ定めた閾値であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項に記載の画像形成装置であって,
前記あらかじめ定めた条件は,前記感光体寿命管理部で算出される前記消耗率,もしくはその消耗率の算出過程で求められる前記感光体の膜厚についてあらかじめ定めた閾値であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1から請求項までのいずれか1つに記載の画像形成装置であって,
前記帯電電流が測定された時の環境条件を記憶する環境条件記憶部を有し,
前記膜厚減少算出部は,あらかじめ定められた環境条件下で測定された帯電電流のみを膜厚減少傾きの算出に供するように構成されているものであることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,トナーを用いて画像を形成する画像形成装置に関する。さらに詳細には,感光体が交換可能な感光体ユニットとされているとともに,その感光体ユニットの寿命管理を行っている画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の画像形成装置の一例として,特許文献1に記載されているものを挙げることができる。同文献の画像形成装置では,消耗品の寿命に関して延長を設定することができるとしている。そして,延長が設定されていない場合には「第一の寿命値」により寿命の判定を行うとともに,延長が設定されている場には「第一の寿命値」と異なる「延長寿命値」により寿命を判定することとしている。これにより画像形成動作を適切に行うことができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-141369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら前記した特許文献1の技術では,延長設定の有無により2通りの寿命値を使い分けてはいるものの,同一の指標についてのものに過ぎなかった。このため,消耗品が現像ユニットであり,寿命値の指標が例えば累積印刷枚数である場合に次のような問題が生じていた。現像ユニットの寿命値は,現像ユニットの構成部材の劣化の進行により画像品質を低下させないように定められる。
【0005】
一方で現実には,現像に係わる画像品質の低下は,現像ユニットの劣化ばかりでなく,感光体の劣化の進行状況にも左右される。このため,現像ユニットの寿命値の設定は,安全を見て,感光体の劣化度合いに関わらず画像品質の低下が発現しないように定める必要があった。このことは特許文献1の「延長寿命値」であっても同じことである。このため,感光体の劣化度合いによっては逆に,現像ユニットが本来有する寿命を使い切る前に早々に寿命到来と判定される場合を生じていた。
【0006】
また,消耗品が感光体ユニットであり,寿命値の指標が例えば感光体の累積使用量である場合にも問題があった。感光体はその表面の感光層の膜厚減少により寿命を迎えるが,この膜厚の減少は必ずしも累積回転数等の累積使用量に正確には比例しないからである。感光体ユニット自体の個体差もあれば,画像形成実行時の環境要因,帯電部材のような周辺部材の個体差等による。
【0007】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,感光体の膜厚に直結するパラメーターに基づく寿命管理を行うことにより,感光体ユニットが本来有する寿命を使い切ってから寿命到来の判定がなされるようにした画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様における画像形成装置は,トナー像を担持する感光体と,感光体の表面を帯電させる帯電部材と,感光体の帯電後の表面に静電潜像を書き込む露光部と,感光体の静電潜像上にトナー像を形成する現像器とを有し,感光体が交換可能な感光体ユニットとされている画像形成装置であって,感光体ユニットの累積使用量をカウントする感光体使用量カウント部と,感光体と帯電部材との間に帯電バイアスを印加するとともに,感光体と帯電部材との間に帯電バイアスを印加している状態で感光体と帯電部材との間に流れる帯電電流を,画像形成時以外のときに測定する帯電バイアス印加部と,測定された帯電電流と測定時における感光体ユニットの累積使用量とに基づいて感光体ユニットの膜厚減少傾きを算出する膜厚減少算出部と,感光体ユニットの膜厚減少傾きを保持するとともに,新たに膜厚減少傾きが算出されると,それまで保持していた膜厚減少傾きと新たに算出された膜厚減少傾きとの代表値を新たに保持する膜厚減少傾き保持部と,画像形成実行時に,その時点での感光体ユニットの累積使用量と,膜厚減少傾き保持部に保持されている膜厚減少傾きに基づいて,感光体の消耗率を求める感光体寿命管理部とを有し,膜厚減少傾き保持部は,新たに保持する前記代表値として,それまで保持していた膜厚減少傾きと新たに算出された膜厚減少傾きとの,相加平均,相乗平均,調和平均,新たに算出された膜厚減少傾きにより大きな重み付けを置いた平均,のいずれかを用いるものである。

【0009】
上記態様における画像形成装置では,画像形成時以外のときに,帯電電流が測定される。そして,測定された帯電電流と感光体ユニットの累積使用量とに基づいて膜厚減少傾きが算出される。この膜厚減少傾きに基づいて感光体の消耗率が求められ,感光体の寿命管理がなされる。帯電電流は,個々の画像形成装置の状況を反映しているので,良好な感光体ユニットの寿命管理を行うことができる。さらに,新たに膜厚減少傾きが算出されるたびに,新たに算出された膜厚減少傾きに重みを置いた代表値により膜厚減少傾きが更新されていくので,より高精度な寿命管理がなされる。むろん感光体の累積使用量は,累積回転時間でも累積回転数でも印字枚数でもよい。
【0010】
上記態様における画像形成装置ではまた,膜厚減少傾き保持部は,感光体ユニットの使用の初期においては膜厚減少傾きとしてあらかじめ用意された固定値を用い,感光体ユニットの使用量に関するあらかじめ定めた条件が満たされてから代表値を用いるように構成されていることがより好ましい。初期においては寿命管理にそれほど精度が要求されないからである。
【0011】
上記態様における画像形成装置ではさらに,あらかじめ定めた条件は,感光体ユニットの累積使用量についてあらかじめ定めた閾値であることとすることができる。あるいは,あらかじめ定めた条件は,感光体寿命管理部で算出される消耗率,もしくはその消耗率の算出過程で求められる感光体の膜厚についてあらかじめ定めた閾値であってもよい。これらの指標についての閾値により,適切なタイミングで固定値による寿命管理から帯電電流に基づく寿命管理への切り替えがなされる。
【0012】
上記のいずれかの態様における画像形成装置ではまた,膜厚減少傾き保持部は,膜厚減少算出部により膜厚減少傾きが初めて算出されたときには,その算出された膜厚減少傾きを保持するように構成されていればよい。その時点では,それまで保持していた膜厚減少傾き,なるものが存在しないからである。
【0013】
上記のいずれかの態様における画像形成装置ではさらに,帯電電流が測定された時の環境条件を記憶する環境条件記憶部を有し,膜厚減少算出部は,あらかじめ定められた環境条件下で測定された帯電電流のみを膜厚減少傾きの算出に供するように構成されていることが望ましい。極端な環境下で決定された帯電電流を用いることによる精度低下を防止できるからである。
【発明の効果】
【0014】
本構成によれば,感光体の膜厚に直結するパラメーターに基づく寿命管理を行うことにより,感光体ユニットが本来有する寿命を使い切ってから寿命到来の判定がなされるようにした画像形成装置が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態に係る画像形成装置の全体構造を示す断面図である。
図2図1の画像形成装置の要部を示す断面図である。
図3図1の画像形成装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図4】付着量制御で形成されるパターンを示す平面図である。
図5】付着量制御における現像バイアスと濃度との関係をプロットしたグラフである。
図6】参考形態の画像形成装置の全体制御のフローチャートである。
図7】現像ユニットの寿命管理制御のフローチャートである。
図8】現像ユニットの寿命のための現像バイアスの許容範囲を示すグラフである。
図9】現像ユニットの寿命到来時の操作・表示パネルの表示例を示す平面図である。
図10】現像ユニットの寿命のための現像バイアスの許容範囲の別の例を示すテーブルである。
図11】帯電電流と感光体の膜厚との関係を示すグラフである。
図12】本形態の画像形成装置の全体制御のフローチャートである。
図13】感光体ユニットの寿命管理のための帯電Vpp制御のフローチャートである。
図14】感光体ユニットの寿命管理制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態およびその参考形態は,図1に示す画像形成装置1に本発明を適用したものである。図1の画像形成装置1は,画像形成部2と,給紙部3とを有している。本形態およびその参考形態における画像形成部2は,4つの画像形成プロセス部4と中間転写ベルト5と2次転写ローラー6とを有する,タンデム2回転写方式のものである。画像形成部2にはさらに,定着器14が備えられている。これにより,給紙部3から供給された用紙上に画像形成部2でトナー像が転写され,定着器14でそのトナー像が定着されるようになっている。
【0017】
4つの画像形成プロセス部4は,イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の4色に対応するものであり,それぞれ,図2に示すように感光体7,帯電ローラー8,現像ローラー13,1次転写ローラー11,クリーナー12,イレーサー17を有している。また図1に示されるように,各画像形成プロセス部4には露光部9が設けられている。こうして,各画像形成プロセス部4でそれぞれの色のトナー像が中間転写ベルト5に転写されるようになっている。なお現像ローラー13は,現像器10の一部である。また,画像形成装置1には,濃度検出センサー16が設けられている。本形態およびその参考形態の画像形成装置1では,上記の各構成物のうち,感光体7と現像器10とが,それぞれ独立に交換可能なユニットとなっている。そこで以下の説明ではこれらを,感光体ユニット7,現像ユニット10と称することがある。
【0018】
本形態およびその参考形態の画像形成装置1の制御系は,図3に示すように構成されている。図3の制御系は,エンジン制御部15を中心に構成されている。エンジン制御部15には,露光部9,帯電,現像,転写の各バイアス電圧の印加を行う高圧部18,イレーサー17,感光体7を駆動する感光体駆動部19,中間転写ベルト5の離間操作を行う転写ベルト離間部20,濃度検出センサー16,ユーザーインターフェースや外部機器との通信を行うMFPコートローラー21,画像形成の実行に関わる種々のパラメーターを記憶する不揮発メモリ22,環境センサー23が接続されている。
【0019】
[参考形態]
参考形態の画像形成装置1では,画像安定化制御を行うようになっている。画像安定化制御とは,形成される画像が狙い通りの濃度となるように各部のバイアス条件を見直すことである。耐久使用の進行や環境条件により最適なバイアス条件が変動するので,適宜のタイミングで行われるものである。参考形態ではこの画像安定化制御のうち特に,付着量制御に着目する。付着量制御とは,現像ローラー13による感光体7へのトナー付着量が最適となるように現像バイアスを調整することである。
【0020】
参考形態の付着量制御では,図4に示すように,中間転写ベルト5上に4色のパターンを4通りの現像バイアスで作成する。そして,これらの濃度が濃度検出センサー16で測定される。そして,各色ごとに現像バイアスと濃度の関係が図5のようにプロットされ,近似直線が引かれる。これにより,目標付着量に相当する濃度に対応する現像バイアスが決定される。以後の画像形成では基本的に,こうして決定された現像バイアスが使用される。なお,上記の現像バイアスの決定は,各色について互いに独立に行われる。なお,付着量制御が行われたときには,決定された現像バイアスが,その時の環境値とともに不揮発メモリ22に記録される。さらに,その現像ユニット10のその時点での累積印字枚数(後述)および,感光体7のその時点での累積回転時間(同)も合わせて不揮発メモリ22に記録される。
【0021】
参考形態の画像形成装置1ではさらに,現像ユニット10の寿命管理を行っている。これについて,図6のフローチャートにより説明する。このフローチャートは,通常の画像形成処理を含めた画像形成装置1の全体制御を表している。このフローでは,初期動作(S1),入出力処理(S2),印字制御(S4),寿命管理制御(S5),画像安定化制御(S6),その他の制御(S7)の順に処理が行われる。ここで,入出力処理(S2)の次には,印字を開始するか否かの判断がなされる(S3)。印字ジョブが発生していなければ(S3:No),上記のうち印字制御(S4)および寿命管理制御(S5)は行われない。印字ジョブが発生していれば(S3:Yes),印字制御(S4)および寿命管理制御(S5)を含めてすべての処理が行われる。
【0022】
このうちの印字制御(S4)は,画像形成を実行するための制御処理である。この印字制御(S4)の他,初期動作(S1),入出力処理(S2),その他の制御(S7)は,一般的なものであるため,詳細な説明は省略する。寿命管理制御(S5)は,現像ユニット10の寿命を管理する処理であり,その内容については次の図7で詳述する。画像安定化制御(S6)は,前述のように付着量制御を含んでいる。ただし前述のように画像安定化制御は適宜のタイミングで行われる。具体的には,画像形成装置1の電源投入直後や,所定枚数の画像形成ごと,所定の時間経過ごと,環境値に変動があったとき,等である。図6の画像安定化制御(S6)は,画像安定化制御を実行するタイミングか否かの判定も含んでいる。よって,図6中でS6に来ると必ず図4に示したパターン形成が行われるという訳ではない。
【0023】
寿命管理制御(S5)について,図7のフローチャートにより説明する。このフローではまず,感光体7の回転時間をカウントアップする(S51)。これは,感光体7の累積回転時間を更新する,ということである。すなわち,図6中で寿命管理制御(S5)の直前の印字制御(S4)で感光体7が回転した時間を,それまでの累積回転時間に加算して新たな累積回転時間とする,ということである。感光体7の累積回転時間は,図3に示した不揮発メモリ22に保存されている。これは,感光体ユニット7の寿命管理に使われる他,後述するS56での現像ユニット10の寿命判定にも関係する。なお,感光体7の累積回転時間は,4色の感光体7についてそれぞれ,直近過去の感光体ユニット7の交換以後の値がカウントされている。
【0024】
次に,現像ユニット10の印字枚数をカウントアップする(S52)。これは,その現像ユニット10による累積印字枚数を更新する,ということである。すなわち,直前の印字制御(S4)でその現像ユニット10を用いて画像形成した枚数を,それまでの累積印字枚数に加算して新たな累積印字枚数とする,ということである。現像ユニット10の累積印字枚数も,4色の現像ユニット10についてそれぞれ,直近過去の交換以後の値がカウントされ,不揮発メモリ22に保存されている。
【0025】
次に,現像ユニット10の印字枚数を,あらかじめ定められた所定の枚数P1と対比する(S53)。ここで対比の対象となる印字枚数は当然,直前のS52で更新された累積印字枚数である。また,所定の枚数P1とは,従来の画像形成装置における現像ユニット10の「ライフストップ」に相当する枚数,すなわち画像形成の強制停止に至るような枚数である。所定の枚数P1も不揮発メモリ22に保存されている。なお,所定の枚数P1は,4色通して同一の値でなければならない訳ではない。よって,S53での対比は,各色についてそれぞれ行われる。
【0026】
印字枚数が所定の枚数P1に達していない場合には(S53:No),図7の寿命管理制御を終了する。現像ユニット10がまだ使用可能だからである。印字枚数が所定の枚数P1に達している場合には(S53:Yes),寿命管理制御の残りの処理を行う。つまり,印字枚数が「ライフストップ」の枚数に達していても,直ちに画像形成を停止するのではなく,さらに寿命判定を行うのである。前述のように従来の「ライフストップ」枚数は多分に安全側の設定になっているからである。なお,S53の対比の結果が,色により分かれることがある。
【0027】
S53でYesと判定された場合には,画像安定化制御の実行結果が存在するか否かがチェックされる(S54)。ここでは,印字枚数が所定の枚数P1に達した以降に行われた画像安定化制御の結果のみが対象とされる。該当する実行結果がない場合には(S54:No),図7の寿命管理制御を終了する。後述する寿命判定で必要となるデータが存在しないためである。
【0028】
該当する実行結果が存在する場合には(S54:Yes),さらに,当該画像安定化制御が実行されたときの環境値がチェックされる(S55)。より詳細には,当該画像安定化制御の実行時の環境が,通常の平穏な環境であったか否かがチェックされる。温度および湿度が極端な値であったときの実行結果は,寿命判定に用いるには不適切だからである。具体的には,絶対湿度にして例えば6.5~16g/m3に相当するような環境値であれば,適切な環境であるとしてよい。環境値が適切でなかった場合には(S55:No),図7の寿命管理制御を終了する。結局寿命判定に使えるデータが存在しないためである。なお,S54およびS55のチェック結果は,色により分かれることはない。
【0029】
環境値が適切であった場合には(S55:Yes),現像ユニット10の寿命判定を行う(S56)。ここでの寿命判定は,図8のグラフを用いて行う。図8のグラフは,現像ユニット10の寿命判定における,現像バイアスの許容範囲を示している。図8には,「上限閾値」と「下限閾値」との2本の右下がりの直線が引かれている。この2本の直線の間の領域がOK領域で,その両外側がNG領域である。つまり,現像バイアスの電圧値には一定の許容範囲があり,上へそれても下へそれても,現像ユニット10の寿命が到来したと判定される,ということである。現像バイアスが上限閾値を超えていると,現像ローラー13のトナー搬送能力が許容範囲を超えて低下したということを意味する。現像バイアスが下限閾値を下回っていると,トナーの帯電量が許容範囲を超えて上昇したということを意味する。
【0030】
そして,上限閾値,下限閾値とも,感光体の累積回転時間が増大するにつれて平行して下がっていく傾向がある。図8中に示される「上限閾値」および「下限閾値」は,下の式のグラフである。これらの式中の数値は,実験的に定めたものの一例である。したがって,色により異なる場合がある。また,個体差により異なる場合がある。
上限閾値[V] = 550-0.0081×感光体の累積回転時間[分]
下限閾値[V] = 280-0.0081×感光体の累積回転時間[分]
【0031】
現像ユニット10の寿命判定では,S55のYesの判定の対象となった画像安定化制御(2つ以上ある場合には新しい方)において決定された現像バイアス値と,その時の感光体7の累積回転時間とを,図8中にプロットする。そのプロットがOK領域内にあれば,その現像ユニット10はまだ使用続行が可能であると判定する。プロットがNG領域内となった場合には,もはやその現像ユニット10は使用続行が不可能であると判定する。その場合には,さらなる画像形成の強制的な停止等の措置を取る。また,図9に例示するように,画像形成装置1の操作・表示パネルに,現像ユニット10の交換をユーザーに促すメッセージを表示する。可能なら音声アナウンスもするとよい。むろん,現像ユニット10寿命判定は,色により結果が異なることはある。
【0032】
なお,S56での寿命判定を,図8のグラフを用いて行う代わりに,図10のテーブルを用いて行うこととしてもよい。図10のテーブルは,4色それぞれについて上限閾値および下限閾値を,感光体7の2水準の累積回転時間ごとに定めたテーブルである。図10中における2水準の累積回転時間は,30万回転に相当する回転時間未満と,その回転時間以上である。図10中のいずれの閾値も,30万回転未満用のものより30万回転以上用のものの方が小さくなっている。この点では図8のグラフが右下がりである点と合致している。
【0033】
図10のテーブルを用いて寿命判定を行う場合にはまず,対象の現像バイアス値の決定時の累積回転時間が,30万回転未満か30万回転以上かどちらであるかをチェックする。そして該当する方における上限閾値および下限閾値を用いて,対象の現像バイアス値がOK領域内にあるかNG領域内にあるかを判定する。つまり図10のテーブルによる判定手法は,図8のグラフによる判定手法の簡易版であるといえる。なお,図10のテーブルでは感光体7の累積回転時間を2水準に区間分けしたが,もっと多数の区間に分けてもかまわない。また,図10中に実際に記した閾値は例示であり,他の数値であってもよい。
【0034】
上記の説明では,図7中のS55において,対象とする画像安定化制御の実行時の環境値が適切であった場合にのみ現像ユニット10の寿命判定を行うこととした。しかしそればかりではなく,環境値が適切でなかった場合にも現像ユニット10の寿命判定を行うこととすることもできる。そのためには,図8あるいは図10中の上限閾値および下限閾値を,画像安定化制御時の環境値に応じて用意しておけばよい。
【0035】
なお一般的にはこの種の画像形成装置では,図9に示した画像形成停止時のメッセージに先立ち,現像ユニット10の寿命到来を予告するメッセージの表示が行われることが多い。参考形態でこのような予告メッセージを表示するとすれば,図7中のS53の判断がYesになった時点で表示することができる。あるいは,それよりさらに少し前に印字枚数(従来機における「ライフストップ」の少し前の「ライフ」に相当)に基づいて予告メッセージを表示するように構成することもできる。なお,第1の形態としては,感光体7が交換可能な感光体ユニット7とされていることは,必須要件ではない。
【0036】
以上詳細に説明したように本参考形態によれば,現像ユニット10の寿命判定を,画像安定化制御の一環である付着量制御により決定された現像バイアス値を用いて行うこととしている。こうして決定された現像バイアス値は,現像ユニット10の劣化状況ばかりでなく,感光体7の劣化の進行状況をもある程度反映している。このため寿命判定の際の許容範囲の設定に当たり,安全マージンをそれほど大きく見込む必要がない。したがって,現像ユニット10が本来持つ寿命を有効に使い切ってから交換に至るような寿命判定をすることができる画像形成装置1が実現されている。
【0037】
特に,寿命判定の際の許容範囲自体を感光体ユニット7の累積使用量に応じてシフトすることで,さらに良好に現像ユニット10の寿命を使い切ることができる。また,その寿命判定の際の現像バイアス値として,決定時の環境条件が適切であったもののみを使用することとで,より精度の高い寿命判定を行うことができる。それでも,長期間にわたり寿命判定ができないまま推移するということはない。適切な環境条件というのは多くの場合,高頻度に現れる環境条件でもあるからである。
【0038】
[本形態]
本形態の画像形成装置1も,図1図3に示される構成に関しては参考形態と共通する。本形態では,感光体ユニット7の寿命管理を行っている。本形態では,帯電電流を利用して感光体ユニット7の寿命を管理する。ここでいう帯電電流とは,帯電ローラー8と感光体7との間に画像形成時と同じ帯電バイアスを印加した状態で,帯電ローラー8と感光体7との間に流れる電流のことである。ただし帯電電流の測定は,画像形成中ではなく,画像形成をしていないときに適宜のタイミングで行われる。具体的には,帯電バイアス(特にその交流成分のピークトゥピーク値)を最適化する帯電調整の実行時に合わせて行われる。帯電調整は,画像形成装置1の電源投入直後や,所定枚数の画像形成ごと,所定の時間経過ごと,環境値に変動があったとき,等に行われる。
【0039】
ここで,帯電電流は,感光体7の膜厚(より詳細にいえば感光体7の表面の感光層の膜厚)と反比例する。このため帯電電流と感光体7の膜厚との間には,図11のグラフに示される関係がある。ということは帯電電流から感光体7の膜厚を知ることができるということである。膜厚が分かれば,次式により,感光体7の新品時から現在までに至る,感光体7の回転時間当たりの膜厚の減少量(減少傾きという)が求められる。ここで現在とは,帯電電流測定時のことである。初期膜厚は仕様による既知値である。
減少傾き = (初期膜厚-現在の膜厚)/現在の累積回転時間
【0040】
このようにして減少傾きが決定されると,その後の画像形成により膜厚の減少が進行したときに,その時点での膜厚を推定することができる。このため,帯電電流の測定はさほど高頻度で行わなくても,画像形成の都度,その時点での膜厚を推定できる。膜厚が推定されると,次式により感光体7の消耗率を求めることができる。これにより感光体ユニット7の寿命判定ができる。ここでの現在とは,画像形成時(帯電電流測定時より後)のことである。下限膜厚は設計上の既定値である。消耗率が求められれば,寿命到来の判定や,その前もっての予告ができる。
消耗率 = (初期膜厚-現在の膜厚)/(初期膜厚-下限膜厚)
【0041】
一方で感光体7の膜厚は,耐久使用の進行とともに一定のスピードで減少していく。このため図11では,感光体7の耐久使用の進行とともに膜厚の現象に対する帯電電流の変化が大きくなっている。このことは,耐久使用の終期に近づくほど,帯電電流から算出した感光体7の膜厚の精度が高いことを意味する。このため,上記の感光体ユニット7の寿命判定においても,なるべく新しく求められた帯電電流値を使った方が高い精度が期待できる。しかしながら帯電電流の測定自体にも環境要因等に基づくばらつきがある。このため,最新の帯電電流値のみを用いることは必ずしも好ましくない。
【0042】
そこで本形態では,過去に複数回にわたって求められた帯電電流値を使いつつ,新しい方の帯電電流値に重み付けを置いて減少傾きを決定することとしている。これにより,精度の高い新しい帯電電流値を重視しつつ,測定ばらつきの影響を過度に受けてしまうことを排除している。
【0043】
このような感光体ユニット7の寿命管理の制御フローを,図12図14に示す。まず図12は,通常の画像形成処理を含めた画像形成装置1の全体制御を表している。このフローでは,初期動作(S11),入出力処理(S12),印字制御(S14),寿命管理制御(S15),帯電Vpp制御(S16),その他の制御(S17)の順に処理が行われる。ここで,入出力処理(S12)の次には,印字を開始するか否かの判断がなされる(S13)。印字ジョブが発生していなければ(S13:No),上記のうち印字制御(S14)および寿命管理制御(S15)は行われない。印字ジョブが発生していれば(S13:Yes),印字制御(S14)および寿命管理制御(S15)を含めてすべての処理が行われる。
【0044】
このうちの初期動作(S11),入出力処理(S12),印字制御(S14),その他の制御(S17)は,図6で説明したものと同じである。寿命管理制御(S15)は,感光体ユニット7の寿命を管理する処理であり,その内容については図14で詳述する。帯電Vpp制御(S16)は,前述の帯電調整およびそれに伴う帯電電流の測定のことであり,次の図13で述べる。ただし前述のように帯電調整は適宜のタイミングで行われるので,図12中でS16に来ると必ず帯電調整等が行われるという訳ではない。
【0045】
帯電Vpp制御(S16)について,図13のフローチャートにより説明する。なお,図13は,帯電調整が行われるべき適宜のタイミングに該当している場合の処理を示すものである。適宜のタイミングに該当していない場合には,図12中でS16に到達しても,図13の処理全体がスルーされる。
【0046】
このフローではまず,帯電Vpp制御を行う(S61)。すなわち前述の帯電調整およびそれに伴う帯電電流の測定を行う。これらの内容そのものは一般的なものであるため,詳細な説明は省略する。ただ,決定される帯電バイアスや測定される帯電電流値は,4色通して同一の値であるとは限らない。図13中ではS61の後にもさらに処理が続いている。これは,図14で説明する寿命管理制御のために必要なデータを調整する処理である。すなわち図12中でのS16は,帯電Vpp制御だけではなく,寿命管理制御のための準備的な処理をも含んでいるのである。
【0047】
S61の帯電Vpp制御がなされると次に,感光体7の回転時間を,あらかじめ定められた所定の回転時間R1と対比する(S62)。ここで対比の対象となる回転時間は,直前のS61の帯電Vpp制御がなされた時点での感光体ユニット7としての累積回転時間である。所定の回転時間R1とは,図11のグラフにおいて傾斜が起ち上がり始める辺りに相当するようにあらかじめ定めた回転時間である。一般的にいわれる「ライフストップ」に相当する回転時間,すなわち画像形成の強制停止に至るような回転時間よりは短い回転時間である。所定の回転時間R1も不揮発メモリ22に保存されている。なお,所定の回転時間R1は,4色通して同一の値でなければならない訳ではない。よって,S62での対比は,各色についてそれぞれ行われる。
【0048】
回転時間が所定の回転時間R1に達していない場合には(S62:No),図13の処理をここまでで終了する。感光体ユニット7の寿命到来にはまだ遠く,寿命管理を精密に行う必要はまだないからである。また,図11のグラフの傾斜がまだ緩く,測定された帯電電流値の信頼性がそれほど高くないからである。回転時間が所定の回転時間R1に達している場合には(S62:Yes),図13中の処理をさらに行う。なお,S62の対比の結果が,色により分かれることがある。
【0049】
S62でYesと判定された場合には,環境値がチェックされる(S63)。より詳細には,当該帯電Vpp制御で帯電電流の測定がなされたときの環境が,通常の平穏な環境であったか否かがチェックされる。温度および湿度が極端な値であったときの測定結果は,寿命判定に用いるには不適切だからである。具体的には,前述の図7のS55の説明で述べたのと同様にして,環境値が適切であったか否かを判定すればよい。環境値が適切でなかった場合には(S63:No),図13の処理をここまでで終了する。寿命判定に使える帯電電流値が存在しないためである。なお,S63のチェック結果は,色により分かれることはない。
【0050】
環境値が適切であった場合には(S63:Yes),帯電電流値と感光体7の回転時間とをラッチする(S64)。すなわち,S61で測定した帯電電流値と,そのときにおける感光体ユニット7の累積回転時間とを一時保存する。そして,ラッチした帯電電流値および回転時間により,前述の式により現時点での減少傾きを算出する(S65)。続いて,S65で新たに算出した減少傾きと,不揮発メモリ22にバックアップされている減少傾きとの平均を求める(S66)。バックアップされている減少傾きとは,先回の寿命管理制御(図12中のS15,図14)で使用した減少傾きである。
【0051】
そして,求めた平均値を,新たな減少傾きとして不揮発メモリ22にバックアップする(S67)。こうして,減少傾きの値が更新される。更新された減少傾きの値は,最新の帯電電流値が50%の重み付けで反映されているものであるが,最新の帯電電流値のみを使用して算出された訳ではない。以上が図13の帯電Vpp制御である。なおS66およびS67において,感光体ユニット7に対して初めて減少傾きが算出された(S65)ときは,算出された減少傾きをそのままバックアップすればよい。
【0052】
続いて,図12中の寿命管理制御(S15)について,図14のフローチャートにより説明する。このフローではまず,感光体7の回転時間をカウントアップする(S71)。これは,図7中のS51と同じことである。すなわち,図12中で寿命管理制御(S15)の直前の印字制御(S14)で感光体7が回転した時間を,それまでの累積回転時間に加算して新たな累積回転時間とする,ということである。
【0053】
次に,感光体7の回転時間を,前述の所定の回転時間R1と対比する(S72)。この対比自体は図13中のS62と同じことである。ただし,S72における感光体7の回転時間は,直前の印字制御(図12中のS14)の時点での感光体ユニット7としての累積回転時間である。
【0054】
回転時間が所定の回転時間R1に達している場合には(S72:Yes),膜厚の減少傾きの値を不揮発メモリ22から読み出す(S73)。読み出される減少傾きの値は,前述の図13のS67でバックアップされた最新のものである。一方,回転時間が所定の回転時間R1に達していない場合には(S72:No),減少傾きとして,S67でバックアップされた値ではなく,あらかじめ用意されている固定値を用いることに決定する(S74)。
【0055】
続いて,現在の感光体7の膜厚を算出する(S75)。つまり,先回の膜厚算出後の画像形成の実行による膜厚の減少分を減少傾きにより求め,先回算出した膜厚からその減少分を差し引くのである。そして消耗率を算出する(S76)。消耗率が算出されると,寿命の判定を行う(S77)。すなわち,算出された消耗率を,あらかじめ定めておいた限界値や予告値等と比較し,比較結果に応じて適宜の処理(予告メッセージや強制停止等)をするのである。以上が図14のフローの処理である。
【0056】
かかる本形態の画像形成装置1における感光体ユニット7の寿命管理は,実際には次のように推移する。すなわち,感光体ユニット7の新品時からしばらくの間は,図14のS72で必ずNoと判定される。このため,帯電Vpp制御(S16,図13)により算出された減少傾きではなく,あらかじめ固定値として用意されている減少傾き(S74)を用いて寿命判定(S75~S77)がなされる。したがってこの間は,帯電Vpp制御(図13)に際して帯電電流の測定を,他に必要がない限りしなくてもかまわない。
【0057】
感光体7の累積回転時間が所定の回転時間R1に達すると,S62の判定がYesになり,実測された帯電電流値に基づく減少傾きが用意されるようになる。そして,寿命管理制御でもS72の判定がYesに変わり,実測値に基づく減少傾き(S73)によって寿命判定(S75~S77)がなされるようになる。したがって,固定値である減少傾きを用いる場合と比べて,寿命判定の精度が上がる。実測値に基づく減少傾きには,感光体ユニット7の個体差や実際の画像形成条件が反映されているからである。
【0058】
その後は帯電Vpp制御(S16)が実行される都度,減少傾きの値が更新されていく(S67)。その際,それまでの減少傾きと最新の減少傾きとの平均(S66)が新たな減少傾きとしてバックアップされる。このため,最新の減少傾きに50%という最も重い重み付けがなされ,古い減少傾きほど重み付けが軽くされる。その一方で,最新の減少傾きのみを用いているわけではないので,帯電電流値の測定ばらつきの影響は抑えられる。なお,S66で算出する「平均」は,通常の相加平均に限らず相乗平均や調和平均でもよい。あるいは,重み付き平均であって最新の減少傾きにより大きな重みを付けるものであってもよい。
【0059】
そして,感光体ユニット7の寿命の末期に近づくほど,図11のグラフの傾斜の立ち上がりにより,膜厚測定の精度,すなわち減少傾きの決定の精度が上昇していく。このため,高精度な寿命判定ができるのである。したがって図14のS77で用いる,予告メッセージや強制停止等を行うための膜厚の消耗度の閾値の設定に当たり,安全マージンをあまり大きく取る必要がない。このため,感光体ユニット7の寿命を無駄なく有効に使い切ることができる。
【0060】
これに対し,回転時間R1到達前に用いられる固定値としての減少傾きは,通常,ある程度の安全マージンを見込んだものとされる。このため,最後まで固定値の減少傾きを使って寿命判定した場合,感光体ユニット7の本来の寿命をある程度残して使用終了に至ることとなる。本形態では,最後まで固定値の減少傾きを使用した場合に対して,消耗度にして2割増し程度まで感光体ユニット7を使い切ることができる。その一方で初めのうちは固定値を用いることで,演算量を減らし,制御系の負担を軽くしている。
【0061】
ただし,最初から固定値を使わず,実測に基づく減少傾きを使用することを排除するものではない。また,最初の1回目の減少傾きの決定時のみ固定値を用い,2回目以降は実測に基づく減少傾きを使用する,という手法も可能である。要は,いつまで固定値を用いいつから実測に基づく減少傾きに切り替えるかの条件は,前述のような感光体ユニット7の累積使用量には限定されない。適宜その条件を決定してよい。例えば,S75で算出される現在の膜厚や,S76で算出される消耗率に適宜の閾値を定めておき,これを切り替えの条件として使用することが考えられる。
【0062】
また,測定された帯電電流値であっても,測定時の環境条件が良くなかったものは使用しないこととしている(S63)。このことも,寿命判定精度の向上に貢献している。なお,第2の形態としては,現像器10が交換可能な現像ユニット10とされていることは必須要件ではない。また,帯電ローラー8に替えて帯電ブレードなど他の形式の帯電部材を用いる画像形成装置であってもよい。
【0063】
以上詳細に説明したように本形態によれば,感光体ユニット7の寿命判定を,帯電調整(帯電Vpp制御)の時に測定した帯電電流値を利用して行うようにしている。これにより,感光体ユニット7の個体差や画像形成内容の差異等に合わせた個別具体的な膜厚減少の進行に合わせた寿命管理がなされる。こうして,感光体ユニット7が本来持つ寿命を有効に使い切ってから交換に至るような寿命判定をすることができる画像形成装置1が実現されている。特に,帯電調整がなされる都度,新しく算出された減少傾きに重きを置きつつそれまでの減少傾きを更新していくことで,寿命判定精度の高さと,測定ばらつきが過度に反映されてしまうことの防止とを両立している。
【0064】
なお,本形態およびその参考形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,図1等に挙げた画像形成装置1はタンデム式のものであったが,これに限らずマルチサイクル式でもよいしモノクロ機でもよい。現像器10の現像剤のタイプも問わない。さらに,読取機能や通信機能,両面機能,後処理機能を備えたものでもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 画像形成装置
2 画像形成部
4 画像形成プロセス部
7 感光体
8 帯電ローラー
9 露光部
10 現像器
13 現像ローラー
15 エンジン制御部(寿命判定部,安定化制御部,膜厚減少算出部,感光体寿命管理部)
16 濃度検出センサー
18 高圧部(現像バイアス印加部,帯電バイアス印加部)
22 不揮発メモリ(感光体使用量カウント部,環境条件記憶部,現像使用量カウント部,膜厚減少傾き保持部)
23 環境センサー
図1
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