(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02P 29/62 20160101AFI20220426BHJP
H02P 21/14 20160101ALI20220426BHJP
【FI】
H02P29/62
H02P21/14
(21)【出願番号】P 2021085174
(22)【出願日】2021-05-20
【審査請求日】2022-02-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】安部 義隆
(72)【発明者】
【氏名】滝口 昌司
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-54572(JP,A)
【文献】特開2019-170004(JP,A)
【文献】特開2010-200544(JP,A)
【文献】特開2010-130853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/62
H02P 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
d軸電流指令値とq軸電流指令値とd軸電流検出値とq軸電流検出値に基づいてd軸電圧指令値とq軸電圧指令値を出力する電流制御器と、
前記d軸電圧指令値と前記q軸電圧指令値を二相三相変換し、三相電圧指令値を出力する二相三相変換器と、
前記三相電圧指令値に基づいてモータに電圧を出力するインバータと、
前記モータの位相を検出するモータ回転位置センサと、
前記モータのトルク応答値を検出するトルクセンサと、
前記インバータの出力の三相電流検出値を前記d軸電流検出値と前記q軸電流検出値に変換する三相二相変換器と、
前記位相に基づいて角速度を出力する角速度出力部と、
前記d軸電流検出値と前記q軸電流検出値と前記トルク応答値と前記角速度に基づいて、前記モータの温度推定値を算出する温度推定器と、
を備え、
前記温度推定器は、
前記d軸電流検出値と前記q軸電流検出値と前記角速度に基づいて外乱推定値を出力する外乱オブザーバと、
前記q軸電流検出値と前記外乱推定値と前記トルク応答値に基づいてトルク定数変動推定値を算出するトルク定数変動算出器と、
前記トルク定数変動推定値に基づいて前記温度推定値を算出する温度算出器と、を備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
d軸電流指令値とq軸電流指令値とd軸電流検出値とq軸電流検出値に基づいてd軸電圧指令値とq軸電圧指令値を出力する電流制御器と、
前記d軸電圧指令値と前記q軸電圧指令値を二相三相変換し、三相電圧指令値を出力する二相三相変換器と、
前記三相電圧指令値に基づいてモータに電圧を出力するインバータと、
前記モータの位相を検出するモータ回転位置センサと、
前記モータのトルク応答値を検出するトルクセンサと、
前記インバータの出力の三相電流検出値を前記d軸電流検出値と前記q軸電流検出値に変換する三相二相変換器と、
前記位相に基づいて角速度を出力する角速度出力部と、
前記d軸電流指令値と前記q軸電流指令値と前記トルク応答値と前記角速度に基づいて、前記モータの温度推定値を算出する温度推定器と、
を備え、
前記温度推定器は、
前記d軸電流指令値と前記q軸電流指令値と前記角速度に基づいて外乱推定値を出力する外乱オブザーバと、
前記q軸電流指令値と前記外乱推定値と前記トルク応答値に基づいてトルク定数変動推定値を算出するトルク定数変動算出器と、
前記トルク定数変動推定値に基づいて前記温度推定値を算出する温度算出器と、を備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
前記外乱オブザーバは、以下の(1)式により前記外乱推定値を算出することを特徴とする請求項1または2記載の電力変換装置。
【数1】
τ^
dis:外乱推定値
g
dis:外乱オブザーバのカットオフ周波数
s:ラプラス演算子
K
tn:トルク定数のノミナル値
i
d:d軸電流検出値またはd軸電流指令値
i
q:q軸電流検出値またはq軸電流指令値
p:極対数
L
d:d軸インダクタンス
L
q:q軸インダクタンス
J
n:ノミナル慣性
D:粘性係数
ω:角速度
【請求項4】
前記トルク定数変動算出器は、(2)式により前記トルク定数変動推定値を算出し、
前記温度算出器は、(3)式により前記温度推定値を算出することを特徴とする請求項3記載の電力変換装置。
【数2】
【数3】
ΔK^
t:トルク定数変動推定値
τ^
dis:外乱推定値
τ
l:トルク応答値
i
q:q軸電流検出値またはq軸電流指令値
T^
emp:温度推定値
β:磁束の温度係数
K
tn:トルク定数のノミナル値
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置で駆動する同期モータの磁石温度推定に係り、温度センサを設けずに磁石温度を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1および特許文献1では、IPMSM(埋込構造永久磁石同期電動機)において磁石磁束鎖交数をオブザーバで推定することで磁石温度を推定する技術が公開されている。非特許文献2ではSPMSM(表面構造永久磁石同期電動機)において電圧外乱オブザーバを用いた固定子の温度推定を公開している。非特許文献3では、外乱オブザーバの出力であるトルク推定値を用いて慣性の推定を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】加藤崇、佐々木健介、Diego Fernandez Laborda、Daniel Fernandez Alonso、David Diaz Reigosa、「磁石磁束鎖交数オブザーバを用いた可変漏れ磁束型IPMSMにおける磁石温度推定手法」、電気学会論文誌D(産業応用部門誌)、Vol.140、No.4(2020)、pp.265-271.
【文献】Hiroki Iwata、Kiyoshi Ohishi、Yuki Yokokura、 Yuji Okada, Yuji Ide、 Daigo Kuraishi、 Akihiko Takahashi,「Robust Estimation Method for Stator Temperature Based on Voltage Disturbance Observer Autotuning Resistance for SPMSM」、IEEJ Journal of Industry Applications Vol.9、No.4(2020)、pp.341-350.
【文献】佐藤宏和、松井信行、「負荷トルクオブザーバを用いたイナーシャ推定法」電気学会論文誌D(産業応用部門誌)、Vol.112、No.2(1992)、pp.181-182.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1および特許文献1の手法は高調波重畳電流を印加する必要があるため、新たな電流指令を生成しなければならない。非特許文献2の手法はシステムの階層が多いため、調整パラメータが多い、帯域を上げにくいといった問題点がある。
【0006】
以上示したようなことから、電力変換装置において、外乱オブザーバに基づく推定技術を用いることで、磁石温度を推定することが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、d軸電流指令値とq軸電流指令値とd軸電流検出値とq軸電流検出値に基づいてd軸電圧指令値とq軸電圧指令値を出力する電流制御器と、前記d軸電圧指令値と前記q軸電圧指令値を二相三相変換し、三相電圧指令値を出力する二相三相変換器と、前記三相電圧指令値に基づいてモータに電圧を出力するインバータと、前記モータの位相を検出するモータ回転位置センサと、前記モータのトルク応答値を検出するトルクセンサと、前記インバータの出力の三相電流検出値を前記d軸電流検出値と前記q軸電流検出値に変換する三相二相変換器と、前記位相に基づいて角速度を出力する角速度出力部と、前記d軸電流検出値と前記q軸電流検出値と前記トルク応答値と前記角速度に基づいて、前記モータの温度推定値を算出する温度推定器と、を備え、前記温度推定器は、前記d軸電流検出値と前記q軸電流検出値と前記角速度に基づいて外乱推定値を出力する外乱オブザーバと、前記q軸電流検出値と前記外乱推定値と前記トルク応答値に基づいてトルク定数変動推定値を算出するトルク定数変動算出器と、前記トルク定数変動推定値に基づいて前記温度推定値を算出する温度算出器と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、他の態様として、d軸電流指令値とq軸電流指令値とd軸電流検出値とq軸電流検出値に基づいてd軸電圧指令値とq軸電圧指令値を出力する電流制御器と、前記d軸電圧指令値と前記q軸電圧指令値を二相三相変換し、三相電圧指令値を出力する二相三相変換器と、前記三相電圧指令値に基づいてモータに電圧を出力するインバータと、前記モータの位相を検出するモータ回転位置センサと、前記モータのトルク応答値を検出するトルクセンサと、前記インバータの出力の三相電流検出値を前記d軸電流検出値と前記q軸電流検出値に変換する三相二相変換器と、前記位相に基づいて角速度を出力する角速度出力部と、前記d軸電流指令値と前記q軸電流指令値と前記トルク応答値と前記角速度に基づいて、前記モータの温度推定値を算出する温度推定器と、を備え、前記温度推定器は、前記d軸電流指令値と前記q軸電流指令値と前記角速度に基づいて外乱推定値を出力する外乱オブザーバと、前記q軸電流指令値と前記外乱推定値と前記トルク応答値に基づいてトルク定数変動推定値を算出するトルク定数変動算出器と、前記トルク定数変動推定値に基づいて前記温度推定値を算出する温度算出器と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、その一態様として、前記外乱オブザーバは、以下の(1)式により前記外乱推定値を算出することを特徴とする。
【数1】
【0010】
τ^dis:外乱推定値
gdis:外乱オブザーバのカットオフ周波数
s:ラプラス演算子
Ktn:トルク定数のノミナル値
id:d軸電流検出値またはd軸電流指令値
iq:q軸電流検出値またはq軸電流指令値
p:極対数
Ld:d軸インダクタンス
Lq:q軸インダクタンス
Jn:ノミナル慣性
D:粘性係数
ω:角速度。
【0011】
また、その一態様として、前記トルク定数変動算出器は、(2)式により前記トルク定数変動推定値を算出し、前記温度算出器は、(3)式により前記温度推定値を算出することを特徴とする。
【数2】
【0012】
【0013】
ΔK^t:トルク定数変動推定値
τ^dis:外乱推定値
τl:トルク応答値
iq:q軸電流検出値またはq軸電流指令値
T^emp:温度推定値
β:磁束の温度係数
Ktn:トルク定数のノミナル値。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電力変換装置において、外乱オブザーバに基づく推定技術を用いることで、磁石温度を推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態における電力変換装置の全体構成を示すブロック図。
【
図2】実施形態における温度推定器を示すブロック図。
【
図3】実施形態における外乱オブザーバを示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本願発明における電力変換装置の実施形態を
図1~
図4に基づいて詳述する。
【0017】
[実施形態]
実施形態における電力変換装置の全体構成を
図1に示す。
図1に示すように、コントローラ1は、電流制御器2と、二相三相変換器3と、温度推定器4と、三相二相変換器5と、角速度出力部6と、を備える。
【0018】
電流制御器2は、d軸電流指令値id
*,q軸電流指令値iq
*とd軸電流検出値id,q軸電流検出値iqと角速度ωに基づいて、d軸電圧指令値vd
*,q軸電圧指令値vq
*を出力する。二相三相変換器3は、d軸電圧指令値vd
*,q軸電圧指令値vq
*を位相θに基づいて二相三相変換し、uvw相の三相電圧指令値を出力する。
【0019】
インバータ7は、uvw相の三相電圧指令値に基づいてモータ8に電圧を出力する。モータ8に負荷9が接続されている。モータ8には回転位置センサ10が設けられており、位相θを検出する。また、インバータ7の出力側には電流検出器11が設けられており、uvw相の三相電流検出値iuvwを検出する。モータ8と負荷9との間にはトルクセンサ12が設けられており、トルク応答値τlを検出する。
【0020】
三相二相変換器5は、uvw相の三相電流検出値iuvwを位相θに基づいて三相二相変換し、d軸電流検出値id,q軸電流検出値iqを出力する。角速度出力部6は、位相θに基づいて角速度ωを出力する。
【0021】
温度推定器4は、d軸電流検出値id,q軸電流検出値iqと角速度ωとトルク応答値τlを入力し、モータ8の温度推定値T^empを推定する。
【0022】
コントローラ1はuvw相の三相電圧指令値をインバータ7に出力し、uvw相の三相電流検出値i
uvwとモータ8の位相θとトルク応答値τ
lをフィードバックする。温度推定器4はコントローラ1内部にあり、
図1(a)に示すように、d軸電流検出値i
d,q軸電流検出値i
q,角速度ω,トルク応答値τ
lを入力とし、温度推定値T^
empを出力する。また、
図1(b)に示すように、dq軸の電流制御はほぼ実現されているとして、d軸電流検出値i
d,q軸電流検出値i
qをd軸電流指令値i
d
*,q軸電流指令値i
q
*で代用してもよい。以下、
図1(a)を例として温度推定器4を説明するが、
図1(b)の場合はd軸電流検出値i
d,q軸電流検出値i
qにd軸電流指令値i
d
*,q軸電流指令値i
q
*を代入すればよい。
【0023】
温度推定器4の構成を
図2に示す。温度推定器4は、外乱オブザーバ(DOB)13と、トルク定数変動算出器14と、温度算出器15と、を備える。
【0024】
まず、外乱オブザーバ(DOB)13により、d軸電流検出値id,q軸電流検出値iqと角速度ωに基づいて、外乱推定値τ^disを推定する。トルク定数変動算出器14では、外乱推定値τ^disをq軸電流検出値iqとトルク応答値τlに基づいてトルク定数変動推定値ΔK^tへ変換する。温度算出器15は、トルク定数変動推定値ΔK^tを温度推定値T^empへ変換する。
【0025】
なお、外乱オブザーバ13のブロック線図は
図3を想定している。乗算器16は、d軸電流検出値i
dとq軸電流検出値i
qを乗算する。乗算器17は、乗算器16の出力(i
di
q)にp(L
q-L
d)を乗算する。乗算器18は、q軸電流検出値i
qにK
tnを乗算する。乗算器19は、角速度ωにJ
ns+Dを乗算する。
【0026】
減算器20は、乗算器18の出力(iqKtn)から乗算器17の出力(idiq×p(Lq-Ld))と乗算器19の出力(ω(Jns+D))を減算する。ローパスフィルタLPF(s)21は減算器20の出力を外乱推定値τ^disとして出力する。
【0027】
一般的な外乱オブザーバに比べ、IPMモータにおけるd軸からの干渉項を減算している形となっている。
【0028】
図2の第1段階である外乱オブザーバ13では、
図3および(1)式のように外乱推定値τ^
disを出力する。
【数1】
【0029】
ただし、sはラプラス演算子,gdisは外乱オブザーバ13のカットオフ周波数,Ktnはトルク定数のノミナル値,pは極対数,Ldはd軸インダクタンス,Lqはq軸インダクタンス,Jnはノミナル慣性,Dは粘性係数,ωは角速度である。
【0030】
図2の第2段階であるトルク定数変動算出器14では、(2)式のようにトルク定数変動推定値ΔK^
tを算出する。
【数2】
【0031】
図2の最終段階である温度算出器15では、(3)式のように温度推定値(磁石温度)T^
empを算出する。ただし、βは磁束の温度係数[%/℃]である。
【数3】
【0032】
<構成の導出>
プラントのダイナミクスは(4)式で表される。なお、K
tはトルク定数、Jは実慣性、sはラプラス演算子である。
【数4】
【0033】
これを(1)式に代入し、ノミナル慣性が実慣性と等しいとすると、(5)式がえられる。
【数5】
【0034】
ただし、ΔK^t=Ktn-Ktとする。温度変化はカットオフ周波数に比べ十分に遅いとすると、LPFは無視することができる。このとき、式変形をして(2)式が得られる。
【0035】
温度算出に関しては,次の温度係数の(6)式を元にしている。なお、ΔK
tはトルク定数変動値を示す。
【数6】
【0036】
これを変形して、(3)式が導出される。
【0037】
<シミュレーション>
シミュレーション条件について述べる。Simulink(登録商標)を用いて、IPMSMの定速運転のシミュレーションおよび温度推定を行った。今回は外力がないとする。モータ制御におけるダイナミクスは(7)式を用いた。R
aは抵抗、L
daはd軸インダクタンス,ω
eは電気角角速度、Φ
fは磁束である。
【数7】
【0038】
なお、ここでの抵抗および磁束は温度に応じて変化させた。温度は「勾配10℃/s,開始時間1s後,初期温度60℃」のランプ信号で変化させた。
【0039】
モータ制御はベクトル制御を実装した。dq軸電流についてはPI制御器を適用した。d軸電流指令値id
*はゼロとした。定速運転では、q軸電流指令値iq
*は速度のPI制御で定め、速度指令は10rad/sとした。
【0040】
定速のシミュレーション結果を
図4に示す。
図4(a)は速度の時系列データを表す。実線は速度指令値を表し、点線は速度応答値を表す。速度応答値が速度指令値に収束していることがわかる。
【0041】
図4(b)は外乱応答を表し、実線は実外乱を示し、点線は外乱推定値を示す。実外乱と外乱推定値にずれがあるが、これはトルク定数変動による影響を表しており、このランプ状の変化が温度の変化に対応する。
【0042】
図4(c)は温度の時系列応答を表し、実線が磁石温度応答値,点線が温度推定値((3)式のT^
emp)を示す。ランプ状の磁石温度応答値に温度推定値がほぼ追従しており、本実施形態の温度推定器4が妥当に動作していることが確認できる。
【0043】
以上示したように、本実施形態によれば、リアルタイムでのトルク定数変動の推定を通して、リアルタイムで磁石温度を推定することができる。
【0044】
また、本実施形態の構成の場合、d軸電流検出値Id,q軸電流検出値iq,位相θ(角速度ω),トルク応答値τlを計測することでリアルタイムに磁石温度を推定することができる。なお、d軸電流検出値Id,q軸電流検出値iqをd軸電流指令値Id
*,q軸電流指令値iq
*にしてもよい。
【0045】
本実施形態の構成では機械系の外乱オブザーバを用いているため、電気回路モデルを必要としない。このため、電気系のモデル化誤差(電気系のパラメータ誤差、インバータのデッドタイムや半導体の電圧降下による電圧誤差など)の影響を受けない。本実施形態では、インバータ内部の信号をできるだけ用いず、インバータ内部の信号を用いない構成も可能であり実装がより容易である。
【0046】
本実施形態では、高調波重畳など電流指令を変更することなく温度を推定することができる。また、本実施形態では微分積分といったダイナミクスを含む演算は電圧外乱オブザーバのみであり、それ以外の演算はダイナミクスを含まない代数的な計算である。ダイナミクスに関連する調整パラメータは外乱オブザーバのカットオフ周波数のみとなるため、ゲインの調整が容易である。
【0047】
なお、非特許文献3では、外乱オブザーバの出力を用いて慣性の推定を行っているが、本実施形態は外乱オブザーバの出力を用いてトルク定数変動の推定を行い、それを通して磁石温度を推定する。
【0048】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【符号の説明】
【0049】
1…コントローラ
2…電流制御器
3…二相三相変換器
4…温度推定器
5…三相二相変換器
6…角速度出力部
7…インバータ
8…モータ
9…負荷
10…回転位置センサ
11…電流検出器
12…トルクセンサ
13…電圧外乱オブザーバ
14…トルク定数変動算出器
15…温度算出器
16~19…乗算器
20…減算器
【要約】
【課題】電力変換装置において外乱オブザーバに基づく推定技術を用いることで磁石温度を推定する。
【解決手段】電流制御器2はd軸電流指令値i
d
*とq軸電流指令値i
q
*とd軸電流検出値I
dとq軸電流検出値i
qに基づいてd軸電圧指令値v
d
*とq軸電圧指令値v
q
*を出力する。二相三相変換器3はd軸電圧指令値v
d
*とq軸電圧指令値v
q
*を二相三相変換し、三相電圧指令値を出力する。回転位置センサ10はモータ8の位相θを検出する。トルクセンサ12はトルク応答値τ
lを検出する。三相二相変換器5はインバータ7の出力の三相電流検出値i
uvwをd軸電流検出値I
dとq軸電流検出値i
qに変換する。角速度出力部6は位相θに基づいて角速度ωを出力する。温度推定器4は角速度ωとd軸電流検出値I
d(d軸電流指令値i
d
*)とq軸電流検出値i
q(q軸電流指令値i
q
*)とトルク応答値τ
lに基づいてモータ8の温度推定値T^を算出する。
【選択図】
図1