IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ペプチスター株式会社の特許一覧 ▶ 積水メディカル株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】Fmоc基を除去する方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/06 20060101AFI20220426BHJP
   C07K 1/04 20060101ALI20220426BHJP
   C07K 1/02 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
C07K1/06
C07K1/04
C07K1/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021111128
(22)【出願日】2021-07-02
【審査請求日】2021-11-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517349083
【氏名又は名称】ペプチスター株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根本 圭崇
【審査官】池上 京子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/221889(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/021233(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fmоcでアミノ基が保護されたアミノ酸誘導体に塩基を反応させてFmоc基を除去する方法であって、当該反応によって生じるジベンゾフルベン誘導体を一般式(1)又は(2)
【化1】
(式中、L1及びL2は、それぞれ炭素数1~10の2価の有機基を示し、Mは水素原子又はアルカリ金属を示す)
で表される化合物(3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸ナトリウムを除く)により捕捉させることを特徴とする方法。
【請求項2】
Fmоcでアミノ基が保護されたアミノ酸誘導体が、Fmоcでアミノ基が保護されたアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドである請求項記載の方法。
【請求項3】
次の工程a~dを含むことを特徴とする液相ペプチド製造方法。
a.有機溶媒を含む溶媒中で、液相ペプチド合成用担体と結合したアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドと、Fmoc基でアミノ基が保護されたアミノ酸又はペプチドとを縮合させる工程、
b.縮合反応後の反応液に、アミノ酸活性エステルスカベンジャーを添加する工程、
c.反応液中の前記Fmoc基でアミノ基が保護された化合物のFmoc基を請求項1又は2記載の方法で除去する工程、
d.反応液に水溶液を添加した後、分液して、液相ペプチド合成用担体と結合したアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドと、前記Fmoc基が脱離したアミノ酸又はペプチドとの縮合体を含有する有機溶媒層を得る工程。
【請求項4】
前記アミノ酸活性エステルスカベンジャーが、アミノ基含有化合物である請求項記載の液相ペプチド製造方法。
【請求項5】
前記アミノ酸活性エステルスカベンジャーが、2価以上の水溶性アミン、アルキルアミン、芳香族アミン、ヒドロキシルアミン、アミノスルホン酸類、アミノ硫酸類、アミノホスホン酸類、アミノリン酸類及びアミノアルコール類から選ばれるアミノ基含有化合物である請求項3又は4記載の液相ペプチド製造方法。
【請求項6】
前記液相ペプチド合成用担体が、アミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドに直接またはリンカーを介して結合して、それらを有機溶媒に溶解性で水に不溶性にする化合物である請求項3~5のいずれか1項に記載の液相ペプチド製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Fmоc(9-フルオレニルメトキシカルボニル)基で保護されたアミノ酸化合物からFmоc基を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペプチドの製造技術には、固相ペプチド合成法と液相ペプチド合成法とがあるが、医薬品等として用いられるペプチドを製造するには、大量生産に向いている液相ペプチド合成法が広く採用されている。そして、最近、保護アミノ酸や保護ペプチドの有機溶媒への溶解性を大きく向上させる化合物である液相ペプチド合成用担体(Tag)が報告されている(特許文献1~14)。
【0003】
液相ペプチド合成法においては、アミノ基の保護基としてFmоc基、Bоc基、Cbz基、Ac基などが用いられている。このうち、Fmоc基は、保護された化合物に脂溶性を付与することができ、中性から酸性領域で安定であり、アミン化合物を用いて容易に脱保護できるなどの理由で広く用いられている。
しかしながら、Fmoc基の脱保護工程においてはジベンゾフルベン(DBF)が副生する。当該ジベンゾフルベンを残存させたまま次の工程に進むと、9-フルオレニルメチル化などの副反応を引き起こすため、この脱保護工程においてジベンゾフルベンを除去しておく必要があった。
【0004】
このジベンゾフルベンの除去手段として、炭素数5以上の炭化水素溶媒とこれに混和しない極性有機溶媒の混液を用いて分層する手段(特許文献15)、反応混合物を二酸化炭素と接触させる手段(特許文献16)、チオカルボン酸類を添加する手段(特許文献17)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5113118号公報
【文献】特許第5929756号公報
【文献】特許第6092513号公報
【文献】特許第5768712号公報
【文献】特許第5803674号公報
【文献】特許第6116782号公報
【文献】特許第6201076号公報
【文献】特許第6283774号公報
【文献】特許第6283775号公報
【文献】特許第6322350号公報
【文献】特許第6393857号公報
【文献】特許第6531235号公報
【文献】国際公開第2020/175472号
【文献】国際公開第2020/175473号
【文献】特許第5515738号公報
【文献】特許第5445456号公報
【文献】特許第6136934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献15~17の手段では、ジベンゾフルベンを十分に除去できず、ジベンゾフルベン-チオカルボン酸付加体やジベンゾフルベン-アミン付加体などが残存した場合に次の縮合工程で副反応を引き起こす可能性があった。
従って、本発明の課題は、Fmоc基脱保護工程で生じるジベンゾフルベンを容易に除去でき、次の縮合工程に影響を及ぼさないFmоc基の除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者は、新たなFmоc基の除去手段について検討したところ、アミン化合物などの塩基による脱保護反応時に生じるジベンゾフルベンを一般式(1)で表されるチオスルホン酸類又は一般式(2)で表されるチオホスホン酸類により捕捉することで、脱保護反応後の容易な後処理でジベンゾフルベンが除去でき、次の縮合反応に影響が生じないことを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の発明[1]~[6]を提供するものである。
[1]Fmоcでアミノ基が保護されたアミノ酸誘導体に塩基を反応させてFmоc基を除去する方法であって、当該反応によって生じるジベンゾフルベンを一般式(1)又は(2)
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、L1及びL2は、それぞれ2価の有機基を示し、Mは水素原子又はアルカリ金属を示す)
で表される化合物により捕捉させることを特徴とする方法。
[2]L1及びL2が、炭素数1~10の2価の有機基である[1]記載の方法。
[3]Fmоcでアミノ基が保護されたアミノ酸誘導体が、Fmоcでアミノ基が保護されたアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドである[1]又は[2]記載の方法。
[4]次の工程a~dを含むことを特徴とする液相ペプチド製造方法。
a.有機溶媒を含む溶媒中で、液相ペプチド合成用担体と結合したアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドと、Fmoc基でアミノ基が保護されたアミノ酸又はペプチドとを縮合させる工程、
b.縮合反応後の反応液に、アミノ酸活性エステルスカベンジャーを添加する工程、
c.反応液中の前記Fmoc基でアミノ基が保護された化合物のFmoc基を[1]~[3]のいずれかに記載の方法で除去する工程、
d.反応液に水溶液を添加した後、分液して、液相ペプチド合成用担体と結合したアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドと、前記Fmoc基が脱離したアミノ酸又はペプチドとの縮合体を含有する有機溶媒層を得る工程。
[5]前記アミノ酸活性エステルスカベンジャーが、アミノ基含有化合物である[4]記載の液相ペプチド製造方法。
[6]前記アミノ酸活性エステルスカベンジャーが、2価以上の水溶性アミン、アルキルアミン、芳香族アミン、ヒドロキシルアミン、アミノスルホン酸類、アミノ硫酸類、アミノホスホン酸類、アミノリン酸類及びアミノアルコール類から選ばれるアミノ基含有化合物である[4]又は[5]記載の液相ペプチド製造方法。
[7]前記液相ペプチド合成用担体が、アミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドに直接またはリンカーを介して結合して、それらを有機溶媒に溶解性で水に不溶性にする化合物である[4]~[6]のいずれかに記載の液相ペプチド製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明方法によれば、Fmоc基の脱保護反応後の容易な後処理でジベンゾフルベンが除去でき、次の縮合反応に影響が生じないことから、液相ペプチド合成を連続して進行させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のFmоc基除去方法は、Fmоcでアミノ基が保護されたアミノ酸誘導体に塩基を反応させてFmоc基を除去する方法であって、当該反応によって生じるジベンゾフルベンを一般式(1)又は(2)
【0013】
【化2】
【0014】
(式中、L1及びL2は、それぞれ2価の有機基を示し、Mは水素原子又はアルカリ金属を示す)
で表される化合物に捕捉させることを特徴とする。
【0015】
本発明方法の原料である、Fmоcでアミノ基が保護されたアミノ酸誘導体におけるアミノ酸誘導体には、アミノ酸、ペプチド及びアミノ酸アミドが含まれる。従って、Fmоcでアミノ基が保護されたアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドとは、アミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドのアミノ基がFmоcで保護されており、一方、カルボキシル基は種々の液相ペプチド合成用担体などの保護基と結合しているアミノ酸又はペプチドを意味する。アミノ酸又はペプチドが1以上のアミノ基を有する場合は、少なくとも一つのアミノ基がFmоcで保護されていれば良い。
なお、Fmоcでアミノ基が保護されたアミノ酸又はペプチドが、水酸基、アミノ基、グアニジル基、カルボキシル基、チオール基、インドール基、イミダゾール基等の反応性に富む官能基を有する場合、これらの官能基にペプチド合成で用いられる一般的な保護基が導入されていてもよく、反応終了後の任意の時点で、必要に応じて保護基を除去することができる。
水酸基の保護基としてはtBu基、Trt基、Bz基、アセチル基、シリル基等が挙げられ、アミノ基の保護基としては、Boc基、Fmoc基、Cbz基、Trt基、Mmt基、ivDde基等が挙げられ、グアニジル基の保護基としては、Pbf基、Pmc基、ニトロ基等が挙げられ、カルボキシル基の保護基としてはtBu基、メチル基、エチル基、Bz基等が挙げられ、チオール基の保護基としては、Trt基、Acm基、tBu基、S-tBu基等が挙げられ、インドール基の保護基としては、Boc基等が挙げられ、イミダゾール基の保護基としては、Boc基、Bom基、Bum基、Trt基等を挙げることができる。
【0016】
Fmоcでアミノ基が保護されたアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドは、例えば、Fmoc基を導入したいアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドに、例えばTHFなどの溶媒中でクロロギ酸9-フルオレニルメチルエステルを縮合剤の存在下に反応させることにより、製造することができる。
【0017】
Fmoc基の脱保護のために、Fmоcでアミノ基が保護されたアミノ酸誘導体に反応させる塩基としては、無機塩基、有機塩基のいずれでも使用し得るが、有機塩基が好ましい。さらに、有機塩基としては、アミン化合物、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]-オクタン(DABCO)、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどの3級アミン類;1-メチルピペラジン、4-アミノピペリジン、ジエチレントリアミン、トリアミノエチルアミン、1-エチルピペラジン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、エチレンジアミン、ピぺリジン、ピペラジンなどの1級又は2級のアミノ基を少なくとも1つ持つ2価以上の水溶性アミン類を用いることができる。好ましくは、DBU、ピぺリジン、1-メチルピペラジン、4-アミノピペリジン、ジエチレントリアミンであり、より好ましくは、DBU、ピぺリジン、1-メチルピペラジンである。さらに好ましくはDBUである。
使用するアミン化合物の当量は、系に存在するFmoc基の量に対して、1~30当量、好ましくは4~20当量、より好ましくは4~10当量である。本明細書において、Fmoc基の脱保護のために用いる塩基を、アミン化合物ということがあるが、本発明の限定を意図するものではない。
【0018】
本発明のFmоc基除去方法は、前記塩基に加えて前記一般式(1)又は(2)で表される化合物を用いることを特徴とする。
一般式(1)又は(2)中L1及びL2は、それぞれ2価の有機基を示す。当該2価の有機基としては、炭素数1~10の2価の有機基が好ましく、より好ましくは、メルカプト基を有していてもよい炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基、メルカプト基を有していてもよい炭素数6~10のアリーレン基、メルカプト基を有していてもよい炭素数4~9のヘテロアリーレン基が挙げられる。具体的には、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、メルカプトトリメチレン基、メルカプトプロピレン基、テトラメチレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、フェニレン基、ナフチレン基、インドール基、ベンズイミダゾール基、キノリル基、イソキノリン基などが挙げられる。
Mは水素原子又はアルカリ金属を示す。具体的には、水素原子、ナトリウム、カリウムが挙げられる。
具体的には、メルカプトメタンスルホン酸ナトリウム、2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム、2-メルカプトエタンスルホン酸、1,3-ジメルカプトプロパンスルホン酸、2-メルカプトベンズイミダゾール-5-スルホン酸ナトリウム、メルカプトメタンホスホン酸ナトリウム、メルカプトエタンホスホン酸、3-メルカプトプロパンホスホン酸ナトリウム、1,3-ジメルカプトプロパンホスホン酸ナトリウムなどが挙げられる。3-メルカプトプロパンスルホン酸ナトリウム以外の化合物がより好ましい。
【0019】
式(1)で表されるチオスルホン酸類又は式(2)で表されるチオスルホン酸類の化合物の添加量は、理論上副生するジベンゾフルベンの量に対して1~30当量が好ましく、1~10当量がより好ましく、1~5当量がさらに好ましい。
前記塩基と式(1)又は(2)の化合物は、同時に添加してもよく、式(1)又は(2)の化合物、次いで塩基の順に添加してもよく、塩基を加えFmoc基の脱離を行ったのちに式(1)又は(2)の化合物を加えてもよく、塩基を加えFmoc基を脱離させたのちに式(1)又は(2)の化合物を加えてもよい。これらのうち、前記塩基と式(1)又は(2)の化合物を同時に添加、又はメルカプト化合物、次いで塩基の順に添加するのが好ましく、式(1)又は(2)の化合物、次いで塩基の順に添加するのがより好ましい。
前記式(1)又は(2)の化合物はジベンゾフルベンと反応し、ジベンゾフルベンとの間で付加体(以下、DBF-メルカプト化合物付加体ということがある)を生成する。当該DBF-メルカプト化合物付加体は、水溶性であるため、分液を行えば水溶液層に移行し、有機層から除去される。本明細書では、塩基、ジベンゾフルベン及び式(1)又は(2)の化合物の3者の共存状態を経て、前記DBF-メルカプト化合物付加体が形成されることを捕捉という。
捕捉によるFmoc基除去工程は、―20~40℃の温度で、5分~5時間行えばよい。
【0020】
前記捕捉反応終了後、反応液に水溶液を添加した後、分液すれば、ジベンゾフルベン-式(1)又は式(2)の化合物の付加体は水溶液層へ移行するため、液相ペプチド合成用担体と結合したアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドと、Fmoc基が脱離したアミノ酸又はペプチドとの縮合体を含有する有機溶媒層を効率よく得ることができる。
ここで、用いられる水溶液としては、水、又は中性付近のpHを有する水溶液が挙げられる。具体的には、水、塩化ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、リン酸水素二ナトリウム水溶液、リン酸三ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸水素カリウム水溶液、リン酸水素二カリウム水溶液、リン酸三カリウム水溶液等が挙げられる。
【0021】
このように、本発明のFmoc基除去方法によれば、捕捉後の反応液に単に水溶液を添加して分液するだけで、酸性水溶液を使用する必要がないので、アミノ酸活性エステルと生成物であるペプチドとの分液不良が起こることがない。また、固液分離を必要としないので、ペプチドの液相製造を単離せずにワンポット合成が可能になる。
また、得られた有機溶媒層は、さらに任意のアミノ酸との縮合反応に利用できる。
【0022】
前記のFmoc基除去方法を利用した液相ペプチド合成法は、次の工程a~dを含むことを特徴とする。
a.有機溶媒を含む溶媒中で、液相ペプチド合成用担体と結合したアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドと、Fmoc基でアミノ基が保護されたアミノ酸又はペプチドとを縮合させる工程、
b.縮合反応後の反応液に、アミノ酸活性エステルスカベンジャーを添加する工程、
c.反応液中の前記Fmoc基でアミノ基が保護された化合物のFmoc基を前記の方法で除去する工程、
d.反応液に水溶液を添加した後、分液して、液相ペプチド合成用担体と結合したアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドと、前記Fmoc基が脱離したアミノ酸又はペプチドとの縮合体を含有する有機溶媒層を得る工程。
【0023】
工程aで用いられる液相ペプチド合成用担体は、アミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドを保護して、当該保護されたアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドを有機溶媒に可溶化する担体である。
このような液相ペプチド合成用担体としては、例えば前記特許文献1-14に記載の化合物が挙げられる。好ましい液相ペプチド合成用担体としては、下記式(I)で表される化合物が挙げられる。
【0024】
【化3】
【0025】
[式中、
環Aはヘテロ原子を含んでいてもよく、多環性でもよいC4~18の芳香環を示し;
11は、水素原子であるか、又は環Aがベンゼン環でRbが下記式(a)で表される基である場合には、R14と一緒になって単結合を示して、環A及び環Bと共にフルオレン環を形成するか、又は酸素原子を介して環A及び環Bと共にキサンテン環を形成してもよく;
p個のXは、それぞれ独立して-O-、-S-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-又は-NR17-(R17は水素原子、アルキル基又はアラルキル基を示す。)を示し;
p個のR12は、それぞれ独立して酸素原子を介してシリル基又は脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を有する有機基を示し;
q個のR13は、それぞれ独立して水素原子であるか、又は酸素原子を介してシリル基若しくは脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を有する有機基を示し;
p、qは、それぞれ0~3の整数かつp+qが1以上4以下を示し;
環Aは、p個のXR12に加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、及びハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよく;
Raは、水素原子、又はハロゲン原子により置換されていてもよい芳香族環を示し;
Rbは、水素原子、又は式(a):
【0026】
【化4】
【0027】
(式中、*は結合位置を示し;
r、sは、それぞれ0~3の整数かつr+sが4以下を示し;
r個のZは、それぞれ独立して-O-、-S-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-又は-NR18-(R18は水素原子、アルキル基又はアラルキル基を示す。)を示し;
r個のR15は、独立して酸素原子を介してシリル基又は脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を有する有機基を示し;
s個のR16は、それぞれ独立して酸素原子を介してシリル基又は脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を有する有機基を示し;
14は、水素原子を示すか、R11と一緒になって単結合を示して、環A及び環Bと共にフルオレン環を形成するか,又は酸素原子を介して環A及び環Bと共にキサンテン環を形成してもよく;
環Bは、r個のZR15に加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、及びハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい。)で表される基を示し;
Yは、ヒドロキシ基、NHR19(R19は水素原子、アルキル基又はアラルキル基を示す。)又はハロゲン原子を示す。]
【0028】
式(I)中の環Aは、ヘテロ原子を含んでいてもよく、単環性でも、多環性でよいC4~18の芳香環を示す。当該芳香環としては、C6~18の芳香族炭化水素環、及びC4~10の芳香族複素環が挙げられる。
具体的なC6~18の芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、テトラセン環、インダン環、インデン環、フルオレン環、ビフェニル環などが挙げられる。このうち、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、フルオレン環がより好ましい。
C4~10の芳香族複素環としては、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる1~3個を含む5員環~10員環の芳香族複素環が好ましく、具体的には、ピロール環、フラン環、チオフェン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、カルバゾール環、ピラゾール環、インダゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環などが挙げられる。このうち、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる1~3個を含む5員環~8員環の芳香族複素環が好ましく、ピロール環、フラン環、チオフェン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、カルバゾール環、ピラゾール環、インダゾール環がより好ましい。
【0029】
11は、水素原子を示すか、又は環Aがベンゼン環でRbが前記式(a)で表される基である場合には、R14と一緒になって単結合を示して、環A及び環Bと共にフルオレン環を形成するか、又は酸素原子を介して環A及び環Bと共にキサンテン環を形成してもよい。R11とR14が一緒になって形成してもよい環としては、フルオレン環又はキサンテン環が好ましい。
【0030】
p個のXは、それぞれ独立して-O-、-S-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-又は-NR17-(R17は水素原子、アルキル基又はアラルキル基を示す。)を示す。
ここで、R17としては、水素原子、C1~10のアルキル基又はC7~20のアラルキル基が好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの直鎖又は分岐鎖のC1~10のアルキル基が挙げられる。
アラルキル基としては、C7~16アラルキル基、例えば、ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、1-フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基などが挙げられる。
【0031】
p個のR12は、それぞれ独立して酸素原子を介してシリル基又は脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を有する有機基を示す。
q個のR13は、それぞれ独立して水素原子であるか、又は酸素原子を介してシリル基若しくは脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を有する有機基を示す。
p、qは、それぞれ0~3の整数かつp+qが1以上4以下を示す。
【0032】
本明細書において、脂肪族炭化水素基を有する有機基とは、その分子構造中に脂肪族炭化水素基を有する一価の有機基である。当該脂肪族炭化水素基を有する有機基中の脂肪族炭化水素基の部位は、特に限定されず、末端に存在してもよく、それ以外の部位に存在してもよい。
当該有機基中に存在する脂肪族炭化水素基とは、直鎖、分岐状若しくは環状の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基であり、有機溶媒溶解性の点から、C5以上の脂肪族炭化水素基が好ましく、C5~30の脂肪族炭化水素基がより好ましく、C8~30の脂肪族炭化水素基がさらに好ましい。当該脂肪族炭化水素基の具体例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられるが、特にアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。さらに、C5~30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C3~8のシクロアルキル基、C5~30の直鎖又は分岐鎖のアルケニル基が好ましく、C5~30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C3~8のシクロアルキル基がより好ましく、C5~30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基がさらに好ましく、C8~30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基がよりさらに好ましい。
【0033】
アルキル基の具体例としては、炭素数1~30のアルキル基が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基、アラキル基、べへニル基、テトラコサニル基、ヘキサコサニル基、イソステアリル基などの一価の基、それらから誘導される二価の基、各種ステロイド基から水酸基などを除外した基が挙げられる。
アルケニル基としては、ビニル基、1-プロぺニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、オレイル基などの一価の基、それらから誘導される二価の基が挙げられる。
アルキニル基としては、エチニル基、プロパルギル基、1-プロピニル基などが挙げられる。
【0034】
上記の脂肪族炭化水素基には、酸素原子を介してシリル基又は脂肪族炭化水素基が置換していてもよい。
脂肪族炭化水素基に酸素原子を介して置換し得るシリル基としては、炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基及び置換基を有していてもよいアリール基から選ばれる3個が置換したシリル基が好ましい。従って、前記脂肪族炭化水素基には、炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基及び置換基を有していてもよいアリール基から選ばれる3個が置換したシリルオキシ基が置換していてもよい。ここで、置換基を有していてもよいアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
好ましい酸素原子を介して置換するシリル基としては、炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が3個置換したシリルオキシ基であり、より好ましくは炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が3個置換したシリルオキシ基である。シリルオキシ基に置換する3個のアルキル基又はアリール基は、同一でも異なっていてもよい。なお、当該シリルオキシ基は、前記脂肪族炭化水素基に1~3個置換しているのが好ましい。
【0035】
脂肪族炭化水素基に酸素原子を介して置換し得る脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基、炭素数2~6のアルケニルオキシ基、炭素数3~6のシクロアルキルオキシ基などの一価の基、それらから誘導される二価の基などが挙げられる。
【0036】
p、qは、それぞれ0~3の整数かつp+qが1以上4以下を示す。ここで、pは、1~4が好ましく、1~3がより好ましく、1~2がさらに好ましい。
【0037】
環Aは、p個のXR12に加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、及びハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい。
ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、トリクロロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基などが挙げられる。
【0038】
Raは、水素原子、又はハロゲン原子により置換されていてもよい芳香族環を示す。
ここで、芳香族環としては、C6~18の芳香族炭化水素環、及びC4~10の芳香族複素環が挙げられる。
具体的なC6~18の芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、テトラセン環、インダン環、インデン環、フルオレン環、ビフェニル環などが挙げられる。このうち、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、フルオレン環がより好ましい。
C4~10の芳香族複素環としては、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる1~3個を含む5員環~10員環の複素環が好ましく、具体的には、ピロール環、フラン環、チオフェン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、カルバゾール環、ピラゾール環、インダゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環などが挙げられる。このうち、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる1~3個を含む5員環~8員環の複素環が好ましく、ピロール環、フラン環、チオフェン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、カルバゾール環、ピラゾール環、インダゾール環がより好ましい。
Raの芳香族環には、1~3個のハロゲン原子が置換していてもよい。
【0039】
Rbは、水素原子、又は前記式(a)で表される基を示す。
式(a)中のr、sは、それぞれ0~3の整数かつr+sが0~4を示す。
rは、0~4が好ましく、1~3がより好ましく、1~2がさらに好ましい。
【0040】
r個のZは、それぞれ独立して-O-、-S-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-又は-NR18-(R18は水素原子、アルキル基又はアラルキル基を示す。)を示す。
ここで、R18としては、水素原子、C1~10のアルキル基又はC7~20のアラルキル基が好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
アラルキル基としては、C7~16アラルキル基、例えば、ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、1-フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基などが挙げられる。
【0041】
r個のR15は、独立して酸素原子を介してシリル基又は脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を有する有機基を示し;
s個のR16は、それぞれ独立して酸素原子を介してシリル基又は脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を有する有機基を示す。
15及びR16で表される酸素原子を介してシリル基又は脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を有する有機基は、前記のR12及びR13と同じものが挙げられ、前記のR12及びR13と同じものが好ましい。
【0042】
14は、水素原子を示すか、R11と一緒になって単結合を示して、環A及び環Bと共にフルオレン環を形成するか,又は酸素原子を介して環A及び環Bと共にキサンテン環を形成してもよい。
【0043】
環Bは、r個のZR15に加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、及びハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい。
ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、トリクロロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基などが挙げられる。
【0044】
Yは、ヒドロキシ基、NHR19(R19は水素原子、アルキル基又はアラルキル基を示す。)又はハロゲン原子を示す。
ここで、R19としては、水素原子、C1~10のアルキル基又はC7~20のアラルキル基が好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
アラルキル基としては、C7~16アラルキル基、例えば、ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、1-フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基などが挙げられる。
【0045】
本発明の製造法に用いられる原料の一つである、液相ペプチド合成用担体と結合したアミノ酸又は液相ペプチド合成用担体に結合したペプチドとは、アミノ酸又はペプチドの反応性基の一つが前記の液相ペプチド合成用担体にと結合しており、少なくとも一つのアミノ基が反応性の状態であるアミノ酸又はペプチドをいう。好ましくは、アミノ酸又はペプチドのカルボキシル基が前記の液相ペプチド合成用担体と結合し、一方、アミノ基は保護されておらず反応性であるものである。液相ペプチド合成用担体と結合したアミノ酸アミドとは、アミノ酸アミドの少なくとも一つのアミド基が前記の液相ペプチド合成用担体に結合し、少なくとも一つのアミノ基は保護されておらず反応性であるアミノ酸アミドをいう。
なお、液相ペプチド合成用担体に結合したアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドが、水酸基、アミノ基、グアニジル基、カルボキシル基、チオール基、インドール基、イミダゾール基等の反応性に富む官能基を有する場合、これらの官能基にペプチド合成で用いられる一般的な保護基が導入されていてもよく、反応終了後に、必要に応じて保護基を除去することで目的化合物を得ることができる。その場合の水酸基の保護基としてはtBu基、Trt基、Bz基、アセチル基、シリル基等が挙げられ、アミノ基の保護基としては、Boc基、Fmoc基、Cbz基、Trt基、Mmt基、ivDde基等が挙げられ、グアニジル基の保護基としては、Pbf基、Pmc基、ニトロ基等が挙げられ、カルボキシル基の保護基としてはtBu基、メチル基、エチル基、Bz基等が挙げられ、チオール基の保護基としては、Trt基、Acm基、tBu基、S-tBu基等が挙げられ、インドール基の保護基としては、Boc基等が挙げられ、イミダゾール基の保護基としては、Boc基、Bom基、Bum基、Trt基等を挙げることができる。
【0046】
前記の液相ペプチド合成用担体に結合したアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドは、液相ペプチド合成用担体をTHF等の有機溶媒に溶解し、例えばBoc保護アミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミド及び縮合剤、例えば、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCI)を添加して縮合を行い、アミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドのカルボキシル基に液相ペプチド合成用担体が結合した中間体である液相合成用担体保護アミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドを製造できる。
【0047】
液相ペプチド合成用担体は、アミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドに、直接又はリンカーを介して結合するように導入される。
ここでいうリンカーとは、リンカーの一方がカルボキシル基と結合し、他方が液体ペプチド合成用担体と結合する2つの反応基をもつ有機基である。好ましいリンカーは、分子量が約2000以下(好ましくは約1500以下、より好ましくは約1000以下)の有機基であって、反応基として、同じでも異なってもよく、アミノ基、カルボキシル基、及びハロメチル基からなる群より選ばれる少なくとも2つの基を分子内にもつ化合物である。例えば、以下の化合物を挙げることができる。
【0048】
【化5】
【0049】
【化6】
(式中、Yは1~6、好ましくは1~4の整数である)。
【0050】
【化7】
(式中、Xはハロゲン原子、好ましくは塩素又は臭素である)。
【0051】
【化8】
(式中、Zは2~40、好ましくは2~35、より好ましくは、2~28の整数である)。
【0052】
上記リンカーの構造式は、カルボキシル基等に結合する前の状態かつ液体ペプチド合成用担体と結合する前の状態を示す。
【0053】
上記リンカーを含む液相ペプチド合成用担体のカルボキシル基への導入は、上記リンカーの一方をカルボキシル基に結合した後に他方を液相ペプチド合成用担体に結合しても良く、あるいは、上記リンカーの一方を液体ペプチド合成用担体に結合した後に他方をカルボキシル基に結合してもよい。これらのリンカーのカルボキシル基への導入手段は、公知の方法を適宜参照して行うことができる。例えば、DIPCI/HOBtによるアミド化を挙げることができる。また、上記リンカーの一方と液相ペプチド合成用担体との結合は、互いに結合するリンカーの基及び液相ペプチド合成用担体の基に応じて、公知の方法を適宜参照して行うことができる。例えば、DIPCIによるエステル化を挙げることができる
【0054】
もう一方の原料である、Fmоc基でアミノ基が保護されたアミノ酸又はペプチドとは、アミノ酸又はペプチドのアミノ基がFmоc基で保護されており、一方、カルボキシル基は保護されておらず反応性であるアミノ酸又はペプチドを意味する。アミノ酸又はペプチドが1以上のアミノ基を有する場合は、少なくとも一つのアミノ基がFmоc基で保護されていれば良い。
なお、Fmоc基でアミノ基が保護されたアミノ酸又はペプチドが、水酸基、アミノ基、グアニジル基、カルボキシル基、チオール基、インドール基、イミダゾール基等の反応性に富む官能基を有する場合、これらの官能基にペプチド合成で用いられる一般的な保護基が導入されていてもよく、反応終了後の任意の時点で、必要に応じて保護基を除去することで目的化合物を得ることができる。
水酸基の保護基としてはtBu基、Trt基、Bz基、アセチル基、シリル基等が挙げられ、アミノ基の保護基としては、Boc基、Fmoc基、Cbz基、Trt基、Mmt基、ivDde基等が挙げられ、グアニジル基の保護基としては、Pbf基、Pmc基、ニトロ基等が挙げられ、カルボキシル基の保護基としてはtBu基、メチル基、エチル基、Bz基等が挙げられ、チオール基の保護基としては、Trt基、Acm基、tBu基、S-tBu基等が挙げられ、インドール基の保護基としては、Boc基等が挙げられ、イミダゾール基の保護基としては、Boc基、Bom基、Bum基、Trt基等を挙げることができる。
【0055】
Fmоc基でアミノ基が保護されたアミノ酸又はペプチドは、例えば、Fmoc基を導入したいアミノ酸又はペプチドに、THFなどの溶媒中でクロロギ酸9-フルオレニルメチルエステルを縮合剤の存在下に反応させることにより、製造することができる。
【0056】
本発明の工程aは前記の原料を縮合させる工程であり、工程aに用いられる反応溶媒は有機溶媒を含む溶媒である。本発明で用いる前記の液相ペプチド合成用担体でアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドを保護すれば、当該液相ペプチド合成用担体と結合したアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドが、有機溶媒に溶解するようになるため、液相ペプチド合成が可能となる。
そのような有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、シクロヘキサン、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、メチル-tert-ブチルエーテル(MTBE)、2-メチルTHF、4-メチルテトラヒドロピラン(4-メチルTHP)、酢酸イソプロピル、クロロホルム、ジクロロメタン、N-メチルピロリドンを挙げることができ、好ましくは、THF、DMF、シクロヘキサン、CPME,MTBE、2-メチルTHF、4-メチルTHP、酢酸イソプロピル、N-メチルピロリドンである。さらに、上記溶媒の2種以上の混合溶媒でもよい。
【0057】
縮合反応は、前記有機溶媒を含む溶媒中で、前記液相ペプチド合成用担体と結合したアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミド(以下、液相ペプチド合成用担体結合ペプチドと略する)と、Fmoc基でアミノ基が保護されたアミノ酸又はペプチド(以下、Fmoc基保護アミノ酸と略する)と、縮合剤とを混合することにより行うことができる。
【0058】
液相ペプチド合成用担体結合ペプチドに対する、Fmoc基保護アミノ酸の使用量は、液相ペプチド合成用担体結合ペプチドに対して、通常1.01~4当量、好ましくは1.03~3当量、より好ましくは1.05~2当量、さらに好ましくは1.1~1.5当量である。本発明のペプチド製造法では、未反応のアミノ酸の活性エステルをその後に添加するスカベンジャーで捕捉して不活性化することができる。そのため、過剰のFmoc基保護アミノ酸を用いても、残存の問題が生じない。
【0059】
縮合剤としては、ペプチド合成において一般的に用いられる縮合剤を用いることができる、例えば、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホニウムクロリド(DMT-MM)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、O-(6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU(6-Cl))、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、O-(6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TCTU)、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(COMU)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCI)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、及び1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)を挙げることができる。好ましくは、DMT-MM、HBTU、HATU、又はCOMUである。縮合剤の使用量は、液相ペプチド合成用担体結合ペプチドに対して、好ましくは1~4当量、より好ましくは1~2当量、さらに好ましくは1.05~1.3当量である。
【0060】
縮合工程において、反応を促進し、ラセミ化などの副反応を抑制するために、好ましくは、活性化剤が添加される。ここで活性化剤とは、縮合剤との共存化で、アミノ酸を、対応する活性エステル、対称酸無水物などに導いて、ペプチド結合(アミド結合)を形成させやすくする試薬である。活性化剤としては、ペプチド合成において一般的に用いられる活性化剤を用いることができる。例えば、HOBt、HOCt、HOAt、HOOBt、HOSu、HOPht、HONb、ペンタフルオロフェノール、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エチル(Oxyma)等を挙げることができる。好ましくは、HOBt、HOOBt、HOCt、HOAt、HONb、HOSu、Oxymaである。活性化剤の使用量は、液相ペプチド合成用担体結合ペプチドに対して、好ましくは1~4当量、より好ましくは1~2当量、さらに好ましくは1.05~1.3当量である。
【0061】
前記溶媒の使用量は、液相ぺプチド合成用担体結合ペプチド等を溶解した濃度が、好ましくは0.1mM~1Mとなる量であり、より好ましくは1mM~0.5Mとなる量である。
反応温度は、ペプチド合成において一般的に用いられる温度が、例えば、-20~40℃が好ましく、より好ましくは0~30℃である。反応時間(1サイクルの時間)は、通常0.5~30時間である。
【0062】
工程bは、縮合反応後の反応液に、アミノ酸活性エステルスカベンジャーを添加する工程である。
アミノ酸活性エステルスカベンジャーとしては、有機溶媒中で反応を継続する観点から、アミノ基含有化合物が好ましく、特に2価以上の水溶性アミン、アルキルアミン、芳香族アミン、ヒドロキシルアミン、アミノスルホン酸類、アミノ硫酸類、アミノホスホン酸類、アミノリン酸類及びアミノアルコール類から選ばれるアミノ基含有化合物が好ましい。
【0063】
2価以上の水溶性アミンとしては、例えば、1-メチルピペラジン、4-アミノピペリジン、ジエチレントリアミン、トリアミノエチルアミン、1-エチルピペラジン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、エチレンジアミン、ピペラジンを挙げることができ、好ましくは、1-メチルピペラジン、4-アミノピペリジン、ジエチレントリアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、エチレンジアミンであり、より好ましくは、1-メチルピペラジン、4-アミノピペリジン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミンであり、さらに好ましくは、1-メチルピペラジンである。
【0064】
用いることができるアルキルアミンとしては、例えば、炭素数1~14のアルキルアミンを挙げることができ、好ましくは炭素数2~10のアルキルアミン、より好ましくは炭素数2~8のアルキルアミン、さらに好ましくは炭素数3~4のアルキルアミンである。また本発明で用いることができる芳香族アミンとしては、たとえば炭素数1~14の芳香族アミンを挙げることができ、好ましくは炭素数6~10の芳香族アミンである。具体的なアルキルアミン、芳香族アミン、ヒドロキシルアミンとしては、これに限定されないが、例えば、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、アニリン、トルイジン、2,4,6-トリメチルアニリン、アニシジン、フェネチジン、ヒドロキシルアミンをあげることができ、特に好ましくは、プロピルアミンである。
アミノスルホン酸類、アミノ硫酸類、アミノホスホン酸類、アミノリン酸類及びアミノアルコール類としては、下記の一般式で挙げられるものが好ましい。
すなわち、次の一般式(3)で表されるアミノスルホン酸類及びアミノ硫酸類;
【0065】
【化9】
【0066】
(R1は炭素数1~10の2価の有機基を示し、X1は単結合又は酸素原子を示す)
一般式(4)で表されるアミノホスホン酸類及びアミノリン酸類;
【0067】
【化10】
【0068】
(R2は炭素数1~10の2価の有機基を示し、X2は単結合又は酸素原子を示す)
一般式(5)で表されるアミノアルコール類が好ましい。
【0069】
【化11】
【0070】
(nは0~20の整数を示し、R3、R4はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、又はヒドロキシメチル基を示す)
【0071】
一般式(3)中のR1及び一般式(4)のR2は、独立して、炭素数1~10の2価の有機基であり、好ましくは、炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基、炭素数6~10のアリーレン基が挙げられる。具体的には、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、フェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。
一般式(3)において、X1が単結合の場合はアミノスルホン酸類であり、X2が酸素原子の場合はアミノ硫酸類である。
一般式(4)において、X2が単結合の場合はアミノホスホン酸類であり、X2が酸素原子の場合はアミノリン酸類である。
【0072】
一般式(5)中のnは、0~20の整数を示す。このうちnは、0又は2~20が好ましく、0又は2~6がより好ましく、0又は2~4がさらに好ましい。一般式(5)中のR3、R4は、水素原子またはヒドロキシルメチル基が好ましい。
【0073】
前記アミノ基含有化合物のうち、アミノ酸活性エステルスカベンジャーとしてアミノスルホン酸類、アミノ硫酸類、アミノホスホン酸類、アミノリン酸類及びアミノアルコール類から選ばれる化合物を用いるのがより好ましい。これらの化合物をスカベンジャーとして用いることにより、アミノ酸活性エステルが除去できるだけでなく、酸性条件とすることなくジベンゾフルベン(DBF)などの副生成物を除去でき、ペプチドの液相製造を単離せずにワンポット合成が可能になる。
【0074】
工程bにおけるアミノ基含有化合物の添加量は、理論上残存する活性アミノ酸エステル1当量に対して、好ましくは1~10当量、より好ましくは1~6当量、さらに好ましくは1~4当量である。アミノ基含有化合物の添加量が少なすぎると、アミノ酸活性エステルのスカベンジ(捕獲)が不充分となり、残存したアミノ酸活性エステルと工程cで生成したアミノ基が反応するダブルヒットが起こり、純度、収率を低下させる。一方、多すぎると、同時に脱アミノ保護基反応が進行し、残存しているアミノ酸活性エステルが再生したアミノ基と反応するダブルヒットが起こり、純度、収率を低下させる。
【0075】
工程cは、反応液中の前記Fmoc基でアミノ基が保護された化合物のFmoc基を除去する工程である。
【0076】
Fmoc脱離工程は、反応液を塩基性にできればよいが、アミン化合物、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]-オクタン(DABCO)、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどの3級アミン類;1-メチルピペラジン、4-アミノピペリジン、ジエチレントリアミン、トリアミノエチルアミン、1-エチルピペラジン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、エチレンジアミン、ピぺリジン、ピペラジンなどの1級又は2級のアミノ基を少なくとも1つ持つ2価以上の水溶性アミン類を用いることができる。好ましくは、DBU、ピぺリジン、1-メチルピペラジン、4-アミノピペリジン、ジエチレントリアミンであり、より好ましくは、DBU、ピぺリジン、1-メチルピペラジンである。さらに好ましくはDBUである。
工程cにおいて添加するアミン化合物の当量は、系に存在するFmoc基の量に対して、1~30当量、好ましくは4~20当量、より好ましくは4~10当量である。
【0077】
この工程では、脱Fmoc反応により生じるDBF(ジベンゾフルベン)を捕捉(以下、トラッピングということがある)する工程であり、当該トラッピング剤として、一般式(1)又は(2)
【0078】
【化12】
【0079】
(式中、L1及びL2は、それぞれ2価の有機基を示し、Mは水素原子又はアルカリ金属を示す)
で表される化合物が好ましい。
【0080】
一般式(1)又は(2)中、L1及びL2は、それぞれ2価の有機基を示す。当該2価の有機基としては、炭素数1~10の2価の有機基が好ましく、より好ましくは、メルカプト基を有していてもよい炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基、メルカプト基を有していてもよい炭素数6~10のアリーレン基、メルカプト基を有していてもよい炭素数4~9のヘテロアリーレン基が挙げられる。さらに好ましくは、一般式(1)又は(2)中L1及びL2は、炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数1、2、4の直鎖アルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数1、2のアルキレン基である。具体的には、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、メルカプトトリメチレン基、メルカプトプロピレン基、テトラメチレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、フェニレン基、ナフチレン基、インドール基、ベンズイミダゾール基、キノリル基、イソキノリン基などが挙げられる。
Mは水素原子又はアルカリ金属を示す。具体的には、水素原子、ナトリウム、カリウムが挙げられる。
具体的には、メルカプトメタンスルホン酸ナトリウム、2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム、2-メルカプトエタンスルホン酸、1,3-ジメルカプトプロパンスルホン酸、2-メルカプトベンズイミダゾール-5-スルホン酸ナトリウム、メルカプトメタンホスホン酸ナトリウム、メルカプトエタンホスホン酸、3-メルカプトプロパンホスホン酸ナトリウム、1,3-ジメルカプトプロパンホスホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
本明細書において一般式(1)で表されるチオスルホン酸類及び一般式(2)で表されるチオホスホン酸類を総称する場合、「メルカプト化合物」ということがあり、これらはトラッピング剤である。
【0081】
メルカプト化合物の添加量は、理論上副生するDBFの量に対して1~30当量が好ましく、1~10当量がより好ましく、1~5当量がさらに好ましい。
前記アミン化合物とメルカプト化合物は、同時に添加してもよく、メルカプト化合物、次いでアミン化合物の順に添加してもよく、アミン化合物を加えFmoc基を脱離させたのちにメルカプト化合物を加えてもよい。これらのうち、前記アミン化合物とメルカプト化合物は、同時に添加してもよく、メルカプト化合物、次いでアミン化合物の順に添加するのが好適であり、メルカプト化合物、次いでアミン化合物の順に添加するのがより好適である。当該メルカプト化合物はDBFと反応し、DBF-メルカプト化合物付加体を生成する。当該DBF-メルカプト化合物付加体は、水溶性であるため、分液を行えば水溶液層に移行し、有機層から除去される。
Fmoc脱離工程は、-20~40℃の温度で、5分~5時間行えばよい。
【0082】
工程dは、反応液に水溶液を添加した後、分液して、液相ペプチド合成用担体と結合したアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドと、前記Fmoc基が脱離したアミノ酸又はペプチドとの縮合体を含有する有機溶媒層を得る工程である。
具体的には、反応液に水溶液を添加した後、水層と有機溶媒層を分液する。
水層には、Fmoc基が脱離した活性エステルスカベンジャーと、ジベンゾフルベン-式(1)又は(2)の化合物付加体が含まれる。すなわち、Fmoc基の脱離工程で副生するジベンゾフルベンは、水溶液の添加だけで、容易に水層に抽出される。
一方、有機溶媒層には、液相ペプチド合成用担体と結合したアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドと、Fmoc基が脱離したアミノ酸又はペプチドとの縮合体が含まれる。
ここで、用いられる水溶液としては、水、又は中性付近のpHを有する水溶液が挙げられる。具体的には、水、塩化ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、リン酸水素二ナトリウム水溶液、リン酸三ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸水素カリウム水溶液、リン酸水素二カリウム水溶液、リン酸三カリウム水溶液等が挙げられる。
【0083】
このように、本発明のFmoc基除去方法によれば、単に水溶液を添加して分液するだけで、酸性水溶液を使用する必要がないので、アミノ酸活性エステルと生成物であるペプチドとの分液不良が起こることがない。また、固液分離を必要としないので、ペプチドの液相製造を単離せずにワンポット合成が可能になる。一連の工程は、マイクロフロー技術を用いて実施しても良い。マイクロフロー技術を用いたペプチド合成技術については、例えばNature Communications 7, Article number:13491(2016)に記載がある。
また、得られた有機溶媒層は、さらに任意のアミノ酸との縮合反応に利用できる。
【実施例
【0084】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
なお、液相ペプチド合成用担体として、以下に示す化合物を使用した。
・TIPS2-OH(C11)型ベンジル化合物(積水メディカル社製)(以下、B-STagと記すことがある)。但し、TIPSは、トリイソプロピルシリル基を示す。
【0085】
【化13】
【0086】
・TIPS2-OH(C11)型ジフェニルメタン化合物(積水メディカル社製)(以下、D-STagと記すことがある)。但し、TIPSは、トリイソプロピルシリル基を示す。
【0087】
【化14】
【0088】
Fmoc-NH-(D-STag)は、D-STagのアミノ基がFmoc基で保護された化合物である。
・TIPS2-OH(C11)型キサンテン化合物(積水メディカル社製)(以下、X-STagと記すことがある)。但し、TIPSは、トリイソプロピルシリル基を示す。
【0089】
【化15】
【0090】
Fmoc-NH-(X-STag)は、X-STagのアミノ基がFmoc基で保護された化合物である。
また、以下の実施例では、B-STagがFmoc保護tBu保護グルタミン酸(Fmoc-Glu(OtBu)-OH)と結合した化合物を、Fmoc-Glu(OtBu)-O-(B-STag)と表記し、下記の構造を示すものとする。Fmoc-Glu(OtBu)-OHに限らず、他のアミノ酸と結合した場合も、これに準ずる表記とする。
【0091】
【化16】
【0092】
また、D-STagがFmoc保護tBu保護スレオニン(Fmoc-Thr(tBu)-OH)と結合した化合物を、Fmoc-Thr(tBu)-NH-(D-STag)と表記し、これは下記の構造を示すものとする。スレオニンに限らず、他のアミノ酸と結合した場合も、これに準ずる表記とする。
【0093】
【化17】
【0094】
また、X-STagがFmoc保護tBu保護スレオニン(Fmoc-Thr(tBu)-OH)と結合した化合物をFmoc-Thr(tBu)-NH-(X-STag)と表記し、これは下記の構造を示すものとする。スレオニンに限らず、他のアミノ酸と結合した場合も、これに準ずる表記とする。
【0095】
【化18】
【0096】
実施例1
H-Asp-Ala―Asn-Cys-Glu-OHの合成
1)H-Glu(OtBu)-O-(B-STag)の合成
B-STag 2.40g(3.0mmol)をCPME6mL、THF9mLに溶解し、Fmoc-Glu(OtBu)-OH 3.21g(7.5mmol)、WSCI・HCl 1.44g(7.5mmol)、4-ジメチルアミノピリジン36.8mg(0.3mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。B-STagが生成物のFmoc-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、タウリン0.94g(7.5mmol)、DMSO 38mLを加え、室温で30分撹拌した。0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム1.42g(8.6mmol)を添加し、DBU5.1mL(34mmol)を加え、20分撹拌した。Fmoc-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のH-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、5%炭酸ナトリウム水溶液75mLを滴下し、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水17mL、5%炭酸ナトリウム水溶液6mL、DMF 1.2mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc基から生成したジベンゾフルベン(DBF)が2-メルカプト-1-エタンスルホン酸と反応した化合物[2-(9-フルオレニルメチルチオ)エタンスルホン酸]がないことを確認し、有機層を濃縮したのち、残渣にCPME27mL加え、H-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0097】
2)H-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)の合成
上記のH-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液にDMF7mL、Fmoc-Cys(Trt)-OH 2.38g(4.1mmol)、COMU 1.67g(3.9mmol)、DIEPA 2.1mLを加え、室温で2時間撹拌した。H-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のFmoc-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、タウリン0.55g(3.9mmol)、DMSO 16mLを加え、室温で2時間撹拌した。0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム1.19g(3.9mmol)を添加し、DBU2.7mL(18mmol)を加え、20分撹拌した。Fmoc-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のH-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液9.6mLを滴下したのち、5%炭酸ナトリウム水溶液60mLを加え、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水38mL、5%炭酸ナトリウム水溶液13mL、DMF 2.7mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc基から生成したDBFが2-メルカプト-1-エタンスルホン酸と反応した化合物[2-(9-フルオレニルメチルチオ)エタンスルホン酸]がないことを確認し、H-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0098】
3)H-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)の合成
上記のH-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液にCPME2mL、DMF7mL、Fmoc-Asn(Trt)-OH 2.43g(4.1mmol)、COMU 1.67g(3.9mmol)、DIEPA 2.1mLを加え、室温で2時間撹拌した。H-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のFmoc-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、タウリン0.55g(3.9mmol)、DMSO 16mLを加え、室温で40分撹拌した。0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム1.19g(3.9mmol)を添加し、DBU2.7mL(18mmol)を加え、1時間撹拌した。Fmoc-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のH-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、5%炭酸ナトリウム水溶液60mLを滴下し、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水38mL、5%炭酸ナトリウム水溶液13mL、DMF 2.7mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc基から生成したDBFが2-メルカプト-1-エタンスルホン酸と反応した化合物[2-(9-フルオレニルメチルチオ)エタンスルホン酸]がないことを確認し、H-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0099】
4)H-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)の合成
上記のH-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液にCPME2mL、DMF7mL、Fmoc-Ala-OH一水和物 1.33g(4.1mmol)、COMU 1.67g(3.9mmol)、DIEPA 2.1mLを加え、室温で1時間半撹拌した。H-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のFmoc-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、タウリン0.55g(3.9mmol)、DMSO 16mLを加え、室温で30分撹拌した。0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム1.19g(3.9mmol)、DMF 1.3mLを添加し、DBU2.7mL(18mmol)を加え、1時間撹拌した。Fmoc-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のH-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液9.6mLを滴下した後、5%炭酸ナトリウム水溶液60mLを加え、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水38mL、5%炭酸ナトリウム水溶液13mL、DMF 2.7mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc基から生成したDBFが2-メルカプト-1-エタンスルホン酸と反応した化合物[2-(9-フルオレニルメチルチオ)エタンスルホン酸]がないことを確認し、H-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0100】
5)H-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)の合成
上記のH-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液にCPME2mL、DMF7mL、Fmoc-Asp(OtBu)-OH 1.67g(4.1mmol)、COMU 1.67g(3.9mmol)、DIEPA 2.1mLを加え、室温で1時間撹拌した。H-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のFmoc-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、タウリン0.55g(3.9mmol)、DMSO 16mLを加え、室温で30分撹拌した。0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム1.19g(3.9mmol)、DMF 1.3mLを添加し、DBU2.7mL(18mmol)を加え、40分撹拌した。Fmoc-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のH-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液9.6mLを滴下した後、5%炭酸ナトリウム水溶液60mLを加え、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水38mL、5%炭酸ナトリウム水溶液13mL、DMF 2.7mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc基から生成したDBFが2-メルカプト-1-エタンスルホン酸と反応した化合物[2-(9-フルオレニルメチルチオ)エタンスルホン酸]がないことを確認し、H-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液を得た。
得られたCPME溶液を減圧下で濃縮し、残渣にMeCN 40mLを加え析出した固体をろ取し、得られた固体を30℃で減圧乾燥した。H-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag) 4.58gを得た。
【0101】
6)H-Asp-Ala―Asn-Cys-Glu-OHの合成
H-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)962mg(0.50mmol)にトリフルオロ酢酸9.5mL、水0.29mL、トリイソプロピルシラン0.29mL、ジチオトレイトール865mg、アニソール0.58mLを添加し、室温で2時間撹拌した。反応溶液を0℃に冷却し、ジイソプロピルエーテル72mLをゆっくりと滴下し、沈澱物を濾取した。ろ取した沈殿物をジイソプロピルエーテル10mLで3回洗浄行った後、沈澱物を減圧下で乾燥し、H-Asp-Ala―Asn-Cys-Glu-OH 275mgを得た。得られたH-Asp-Ala―Asn-Cys-Glu-OHの純度は90.5%であった。
【0102】
実施例2
H-Gln-Trp-Glu-Arg-Thr-NH2の合成
1)H-Thr(tBu)-NH-(D-STag)の合成
Fmoc-NH-(D-STag) 1.09g(1.0mmol)をCPME9mL、DMF2mLに溶解し、0℃に冷却した後、DIEPA 0.32mL(1.9mmol)、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.30g(1.8mmol)を添加し、DBU0.67mL(4.5mmol)を滴下した。0℃で1時間撹拌し、Fmoc-NH-(D-STag)が生成物のNH2-(D-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液2.4mLを滴下し、5%炭酸ナトリウム水溶液10mLを加えた後、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水25mL、5%炭酸ナトリウム水溶液8mL、DMF 1.8mLを加え、分液し、NH2-(D-STag)を含むCPME溶液を得た。
このNH2-(D-STag)を含むCPME溶液に、CPME0.6mL、DMF2mL、Fmoc-Thr(tBu)-OH 0.55g(1.4mmol)、COMU 0.56g(1.3mmol)、DIEPA 0.71mL(4.1mmol)を加え、室温で70分撹拌した。NH2-(D-STag)が生成物のFmoc-Thr(tBu)-NH-(D-STag)に対し5%以下になったことを確認後、2-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]エタノール(AEEE)62μL(0.5mmol)を加え、室温で30分撹拌した。0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.40g(2.4mmol)、DMSO 2.4mLを添加し、DBU0.91mL(6.1mmol)を加え、70分撹拌した。Fmoc-Thr(tBu)-NH-(D-STag)が生成物のH-Thr(tBu)-NH-(D-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液3.2mLを滴下し、5%炭酸ナトリウム水溶液13mLを加えた後、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水25mL、5%炭酸ナトリウム水溶液8mL、DMF 1.8mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc基から生成したDBFが2-メルカプト-1-エタンスルホン酸と反応した化合物[2-(9-フルオレニルメチルチオ)エタンスルホン酸]がないことを確認し、H-Thr(tBu)-NH-(D-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0103】
2)H-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)の合成
上記のH-Thr(tBu)-NH-(D-STag)を含むCPME溶液に、CPME0.7mL、DMF2mL、Fmoc-Arg(Pbf)-OH 0.88g(1.4mmol)、COMU 0.56g(1.3mmol)、DIEPA 0.71mL(4.1mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。H-Thr(tBu)-NH-(D-STag)が生成物のFmoc-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)に対し5%以下になったことを確認後、AEEE62μL(0.5mmol)を加え、室温で30分撹拌した。0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.40g(2.4mmol)、DMSO 2.4mLを添加し、DBU 0.91mL(6.1mmol)を加え、50分撹拌した。Fmoc-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)が生成物のH-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)に対し5%以下になったことを確認後、5%炭酸ナトリウム水溶液13mLを滴下した後、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水13mL、5%炭酸ナトリウム水溶液4mL、DMF 0.9mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc基から生成したDBFが2-メルカプト-1-エタンスルホン酸と反応した化合物[2-(9-フルオレニルメチルチオ)エタンスルホン酸]がないことを確認し、H-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0104】
3)H-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)の合成
上記のH-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)を含むCPME溶液に、CPME0.5mL、DMF2mL、Fmoc-Glu(OtBu)-OH 0.58g(1.4mmol)、COMU 0.56g(1.3mmol)、DIEPA 0.71mL(4.1mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。H-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)が生成物のFmoc-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)に対し5%以下になったことを確認後、AEEE62μL(0.5mmol)を加え、室温で40分撹拌した。0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.40g(2.4mmol)、DMSO 2.4mLを添加し、DBU 0.91mL(6.1mmol)を加え、65分撹拌した。Fmoc-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)が生成物のH-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)に対し5%以下になったことを確認後、5%炭酸ナトリウム水溶液13mLを滴下した後、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水13mL、5%炭酸ナトリウム水溶液4mL、DMF 0.9mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc基から生成したDBFが2-メルカプト-1-エタンスルホン酸と反応した化合物[2-(9-フルオレニルメチルチオ)エタンスルホン酸]がないことを確認し、H-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0105】
4)H-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)の合成
上記のH-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)を含むCPME溶液に、CPME0.5mL、DMF2mL、Fmoc-Trp(Boc)-OH 0.71g(1.4mmol)、COMU 0.56g(1.3mmol)、DIEPA 0.71mL(4.1mmol)を加え、室温で70分撹拌した。H-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)が生成物のFmoc-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)に対し5%以下になったことを確認後、AEEE62μL(0.5mmol)を加え、室温で40分撹拌した。0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.40g(2.4mmol)、DMSO 2.4mLを添加し、DMF 0.4mL、DBU 0.91mL(6.1mmol)を加え、65分撹拌した。Fmoc-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)が生成物のH-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液3.2mLを滴下し、5%炭酸ナトリウム水溶液13mLを加えた後、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水13mL、5%炭酸ナトリウム水溶液4mL、DMF 0.9mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc基から生成したDBFが2-メルカプト-1-エタンスルホン酸と反応した化合物[2-(9-フルオレニルメチルチオ)エタンスルホン酸]がないことを確認し、H-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0106】
5)H-Gln(Trt)-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)の合成
上記のH-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)を含むCPME溶液に、CPME0.5mL、DMF2mL、Fmoc-Gln(Trt)-OH 0.82g(1.4mmol)、COMU 0.56g(1.3mmol)、DIEPA 0.71mL(4.1mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。H-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)が生成物のFmoc-Gln(Trt)-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)に対し5%以下になったことを確認後、AEEE62μL(0.5mmol)を加え、室温で40分撹拌した。0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.40g(2.4mmol)、DMSO 3.0mLを添加し、DMF 0.4mL、DBU 0.91mL(6.1mmol)を加え、65分撹拌した。Fmoc-Gln(Trt)-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)が生成物のH-Gln(Trt)-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液3.2mLを滴下し、5%炭酸ナトリウム水溶液13mLを加えた後、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水13mL、5%炭酸ナトリウム水溶液4mL、DMF 0.9mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc基から生成したDBFが2-メルカプト-1-エタンスルホン酸と反応した化合物[2-(9-フルオレニルメチルチオ)エタンスルホン酸]がないことを確認し、H-Gln(Trt)-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)を含むCPME溶液を得た。
得られたCPME溶液を減圧下で濃縮し、残渣にMeCN 24mL、IPA18mL、CPME6mL、水12mLを加え、析出した固体をろ取し、得られた固体を30℃で減圧乾燥した。H-Gln(Trt)-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag) 1.84gを得た。
【0107】
6)H-Gln-Trp-Glu-Arg-Thr-NH2の合成
H-Gln(Trt)-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)1.14g(0.50mmol)にトリフルオロ酢酸9.5mL、水0.25mL、トリイソプロピルシラン0.25mLを添加し、室温で2時間撹拌した。反応溶液を0℃に冷却し、MTBE70mLをゆっくりと滴下し、沈澱物を濾取した。ろ取した沈殿物をMTBE10mLで3回洗浄行った後、沈澱物を減圧下で乾燥し、H-Gln-Trp-Glu-Arg-Thr-NH2 227mgを得た。得られたH-Gln-Trp-Glu-Arg-Thr-NH2の純度は77.2%であった。
【0108】
実施例3
H-Asp-Ala―Asn-Cys-Glu-OHの合成
1)H-Glu(OtBu)-O-(B-STag)の合成
B-STag 0.79g(1.0mmol)をCPME2mL、THF3mLに溶解し、Fmoc-Glu(OtBu)-OH 1.06g(2.5mmol)、WSCI・HCl 0.48g(2.5mmol)、4-ジメチルアミノピリジン12.2mg(0.1mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。B-STagが生成物のFmoc-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、2-アミノエタノール150μL(2.5mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.74g(4.5mmol)、DMSO 4.5mLを添加し、DBU1.7mL(11.3mmol)を加え、1時間撹拌した。Fmoc-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のH-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液6mLを滴下し、5%炭酸ナトリウム水溶液19mLを加えた後、室温まで昇温し分液した。得られた有機層に20%食塩水20mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc基から生成したDBFが2-メルカプト-1-エタンスルホン酸と反応した化合物[2-(9-フルオレニルメチルチオ)エタンスルホン酸]がないことを確認し、有機層を濃縮したのち、残渣にCPME9mL加え、H-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0109】
2)H-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)の合成
上記のH-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液にDMF2mL、Fmoc-Cys(Trt)-OH 0.79g(1.4mmol)、COMU 0.57g(1.3mmol)、DIEPA 0.71mLを加え、室温で1時間撹拌した。H-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のFmoc-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、2-アミノエタノール81μL(1.4mmol)を加え、室温で1時間半撹拌した。0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.40g(1.3mmol)、DMSO 2.4mLを添加し、DBU0.91mL(6.1mmol)を加え、25分撹拌した。Fmoc-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のH-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液3.2mLを滴下したのち、5%炭酸ナトリウム水溶液13mLを加え、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水13mL、5%炭酸ナトリウム水溶液4mL、DMF 0.9mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc基から生成したDBFが2-メルカプト-1-エタンスルホン酸と反応した化合物[2-(9-フルオレニルメチルチオ)エタンスルホン酸]がないことを確認し、H-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0110】
3)H-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)の合成
上記のH-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液にCPME0.5mL、DMF2mL、Fmoc-Asn(Trt)-OH 0.81g(1.4mmol)、COMU 0.56g(1.3mmol)、DIEPA 0.71mLを加え、室温で55分撹拌した。H-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のFmoc-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、2-アミノエタノール81μL(1.4mmol)を加え、室温で25分撹拌した。0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.40g(2.4mmol)、DMSO 2.4mLを添加し、DBU0.91mL(6.1mmol)を加え、75分撹拌した。Fmoc-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のH-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液3.2mLを滴下したのち、5%炭酸ナトリウム水溶液13mLを加え、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水13mL、5%炭酸ナトリウム水溶液4mL、DMF 0.9mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc基から生成したDBFが2-メルカプト-1-エタンスルホン酸と反応した化合物[2-(9-フルオレニルメチルチオ)エタンスルホン酸]がないことを確認し、H-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0111】
4)H-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)の合成
上記のH-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液にCPME0.5mL、DMF2mL、Fmoc-Ala-OH・一水和物 0.47g(1.5mmol)、COMU 0.64g(1.5mmol)、DIEPA 0.78mL(4.5mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。H-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のFmoc-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、2-アミノエタノール89μL(1.5mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.40g(2.5mmol)、DMSO 2.5mLを添加し、DBU0.91mL(6.1mmol)を加え、1時間撹拌した。Fmoc-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のH-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液3.2mLを滴下したのち、5%炭酸ナトリウム水溶液13mLを加え、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水13mL、5%炭酸ナトリウム水溶液4mL、DMF 0.9mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc基から生成したDBFが2-メルカプト-1-エタンスルホン酸と反応した化合物[2-(9-フルオレニルメチルチオ)エタンスルホン酸]がないことを確認し、H-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0112】
5)H-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)の合成
上記のH-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液にCPME0.5mL、DMF2mL、Fmoc-Asp(OtBu)-OH 0.56g(1.4mmol)、COMU 0.56g(1.3mmol)、DIEPA 0.71mL(4.1mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。H-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のFmoc-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、2-アミノエタノール81μL(1.4mmol)を加え、室温で70分撹拌した。0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.40g(2.4mmol)、DMSO 2.4mLを添加し、DBU0.91mL(6.1mmol)を加え、75分撹拌した。Fmoc-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のH-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、水 3.2mLを滴下したのち、5%炭酸ナトリウム水溶液13mLを加え、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水13mL、5%炭酸ナトリウム水溶液4mL、DMF 0.9mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc基から生成したDBFが2-メルカプト-1-エタンスルホン酸と反応した化合物[2-(9-フルオレニルメチルチオ)エタンスルホン酸]がないことを確認し、H-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液を得た。
得られたCPME溶液を減圧下で濃縮し、残渣にMeCN 40mLを加え析出した固体をろ取し、得られた固体を30℃で減圧乾燥した。H-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag) 1.56gを得た。
【0113】
6)H-Asp-Ala―Asn-Cys-Glu-OHの合成
H-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)962mg(0.50mmol)にトリフルオロ酢酸7.5mL、水0.21mL、トリイソプロピルシラン0.21mL、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール0.42mLを添加し、室温で2時間撹拌した。反応溶液を0℃に冷却し、MTBE60mLをゆっくりと滴下し、沈澱物を濾取した。ろ取した沈殿物をMTBE10mLで3回洗浄行った後、沈澱物を減圧下で乾燥し、H-Asp-Ala―Asn-Cys-Glu-OH 275mgを得た。得られたH-Asp-Ala―Asn-Cys-Glu-OHの純度は78.4%であった。
【0114】
実施例4
H-Gln-Trp-Glu-Arg-Thr-NH2の合成
1)H-Thr(tBu)-NH-(X-STag)の合成
Fmoc-NH-(X-STag) 1.11g(1.0mmol)をCPME8mL、DMF2mLに溶解し、0℃に冷却した後、DIEPA 0.33mL(1.9mmol)、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.30g(1.8mmol)を添加し、DBU0.67mL(4.5mmol)を滴下した。0℃で1時間撹拌し、Fmoc-NH-(X-STag)が生成物のNH2-(X-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液2.4mLを滴下し、5%炭酸ナトリウム水溶液9mLを加えた後、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水23mL、5%炭酸ナトリウム水溶液8mL、DMF 1.6mLを加え、分液し、NH2-(X-STag)を含むCPME溶液を得た。
このNH2-(X-STag)を含むCPME溶液に、CPME0.5mL、DMF2mL、Fmoc-Thr(tBu)-OH 0.54g(1.4mmol)、COMU 0.56g(1.3mmol)、DIEPA 0.71mL(4.1mmol)を加え、室温で110分撹拌した。NH2-(X-STag)が生成物のFmoc-Thr(tBu)-NH-(X-STag)に対し5%以下になったことを確認後、アミノメタンホスホン酸0.15g(1.4mmol)、DMSO 2.4mLを加え、室温で40分撹拌した。0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.40g(2.4mmol)を添加し、DBU0.91mL(6.1mmol)を加え、100分撹拌した。Fmoc-Thr(tBu)-NH-(X-STag)が生成物のH-Thr(tBu)-NH-(X-STag)に対し5%以下になったことを確認後、5%炭酸水素カリウム水溶液20mLを滴下した後、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水15mL、DMF 1.6mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc基から生成したDBFが2-メルカプト-1-エタンスルホン酸と反応した化合物[2-(9-フルオレニルメチルチオ)エタンスルホン酸]がないことを確認し、H-Thr(tBu)-NH-(X-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0115】
2)H-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)の合成
上記のH-Thr(tBu)-NH-(X-STag)を含むCPME溶液に、CPME0.6mL、DMF2mL、Fmoc-Arg(Pbf)-OH 0.88g(1.4mmol)、COMU 0.56g(1.3mmol)、DIEPA 0.47mL(2.7mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。H-Thr(tBu)-NH-(X-STag)が生成物のFmoc-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)に対し5%以下になったことを確認後、2-アミノエタノール(AE)81μL(1.4mmol)を加え、室温で40分撹拌した。0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.40g(2.4mmol)、DMSO 2.4mLを添加し、DBU 0.91mL(6.1mmol)を加え、90分撹拌した。Fmoc-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)が生成物のH-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)に対し5%以下になったことを確認後、5%炭酸水素カリウム水溶液13mLを滴下した後、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水13mL、DMF 0.9mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc基から生成したDBFが2-メルカプト-1-エタンスルホン酸と反応した化合物[2-(9-フルオレニルメチルチオ)エタンスルホン酸]がないことを確認し、H-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0116】
3)H-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)の合成
上記のH-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)を含むCPME溶液に、CPME0.5mL、DMF2mL、Fmoc-Glu(OtBu)-OH 0.57g(1.4mmol)、COMU 0.56g(1.3mmol)、DIEPA 0.71mL(4.1mmol)を加え、室温で75分撹拌した。H-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)が生成物のFmoc-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)に対し5%以下になったことを確認後、アミノメタンホスホン酸0.15g(1.4mmol)、DMSO 2.4mLを加え、室温で105分撹拌した。0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.40g(2.4mmol)を添加し、DBU 0.91mL(6.1mmol)を加え、85分撹拌した。Fmoc-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)が生成物のH-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)に対し5%以下になったことを確認後、5%炭酸水素カリウム水溶液16mLを滴下した後、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水13mL、DMF 0.9mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc基から生成したDBFが2-メルカプト-1-エタンスルホン酸と反応した化合物[2-(9-フルオレニルメチルチオ)エタンスルホン酸]がないことを確認し、H-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0117】
4)H-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)の合成
上記のH-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)を含むCPME溶液に、CPME0.5mL、DMF2mL、Fmoc-Trp(Boc)-OH 0.71g(1.4mmol)、COMU 0.56g(1.3mmol)、DIEPA 0.71mL(4.1mmol)を加え、室温で75分撹拌した。H-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)が生成物のFmoc-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)に対し5%以下になったことを確認後、3-アミノプロパンスルホン酸0.19g(1.4mmol)、DMSO 2.4mLを加え、室温で30分撹拌した。0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.40g(2.4mmol)を添加し、DBU 0.91mL(6.1mmol)を加え、100分撹拌した。Fmoc-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)が生成物のH-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)に対し5%以下になったことを確認後、5%炭酸水素カリウム水溶液16mLを加えた後、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水13mL、DMF 0.9mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc基から生成したDBFが2-メルカプト-1-エタンスルホン酸と反応した化合物[2-(9-フルオレニルメチルチオ)エタンスルホン酸]がないことを確認し、H-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0118】
5)H-Gln(Trt)-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)の合成
上記のH-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)を含むCPME溶液を濃縮して得た残渣2,36gのうち0.47g(0.2mmol相当)をはかり取り、2-メチルテトラヒドロフラン1.8mL、DMF0.4mL、Fmoc-Gln(Trt)-OH 0.17g(0.3mmol)、COMU 0.11g(0.3mmol)、DIEPA 0.14mL(0.8mmol)を加え、室温で75分撹拌した。H-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)が生成物のFmoc-Gln(Trt)-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)に対し5%以下になったことを確認後、硫酸水素2-アミノエチル38mg(0.3mmol)、DMSO 0.6mLを加え、室温で30分撹拌した。0℃に冷却し、3-メルカプト-1-プロパンホスホン酸(合成例1にて合成)76mg(0.5mmol)を添加し、DBU 0.18mL(1.2mmol)を加え、2時間撹拌した。Fmoc-Gln(Trt)-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)が生成物のH-Gln(Trt)-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)に対し5%以下になったことを確認後、5%炭酸水素カリウム水溶液5mL、CPME1mL、THF1mLを加えた後、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水3mL、DMF 0.2mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc基から生成したDBFが3-メルカプト-1-プロパンホスホン酸と反応した化合物[3-(9-フルオレニルメチルチオ)プロパンスルホン酸]がないことを確認し、H-Gln(Trt)-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)を含むCPME溶液を得た。
得られたCPME溶液を減圧下で濃縮し、残渣にMeCN 4mL、IPA1mLを加え、析出した固体をろ取し、得られた固体を減圧乾燥した。H-Gln(Trt)-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag) 0.31gを得た。
【0119】
6)H-Gln-Trp-Glu-Arg-Thr-NH2の合成
H-Gln(Trt)-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)0.25g(0.11mmol)にトリフルオロ酢酸3.2mL、水0.09mL、トリイソプロピルシラン0.09mL、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール0.18mLを添加し、室温で2時間撹拌した。反応溶液を0℃に冷却し、MTBE30mLをゆっくりと滴下し、沈澱物を濾取した。ろ取した沈殿物をMTBE5mLで3回洗浄行った後、沈澱物を減圧下で乾燥し、H-Gln-Trp-Glu-Arg-Thr-NH2 78mgを得た。得られたH-Gln-Trp-Glu-Arg-Thr-NH2の純度は82.0%であった。
【0120】
合成例1
3-メルカプト-1-プロパンホスホン酸の合成
3-ブロモ-1-プロパンホスホン酸ジエチル777mg(3mmol)をアセトニトリル6mLに溶解し、トリフェニルメタンチオール1.66g(6mmol)、トリエチルアミン0.54mL(3.9mmol)を加え、50℃で18時間撹拌した。MTBE20mL、水20mLを加え分液し、有機層を20%塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。得られた有機層を濃縮し、濃縮残渣2.39gを得た。残渣をヘプタン/酢酸エチル(2/1)に溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、3-(トリフェニルメチルチオ)-1-プロパンホスホン酸ジエチル1.36gを定量的収率で得た。
上記で得た3-(トリフェニルメチルチオ)-1-プロパンホスホン酸ジエチル1.36gをアセトニトリル10mLに溶解し、トリメチルシリルブロミド1,95mL(15mmol)を加え、室温で18時間撹拌した。メタノール4mLを加え、過剰なトリメチルシリルブロミドと反応させたのち、減圧濃縮した。濃縮残渣にアセトニトリル15mLを加え、溶解していない固体を濾別した。ろ液を濃縮し、濃縮残渣2.32gを得た。得られた残渣にトリフルオロ酢酸22.8mL、水0.6mL、トリイソプロピルシラン0.6mLを加え、室温で2時間撹拌した。反応液にMTBE24mLを加え、析出した固体を濾別したのち、ろ液を濃縮し、濃縮残渣3.30gを得た。残渣にMTBE35mL、ヘプタン12mL、水10mLを加え、分液した。有機層から水5mLで2回再抽出したのち、水層を合わせ減圧濃縮した。濃縮残渣0.72gを得た。残渣を水に溶解し、HPLCカラムクロマトグラフィ(カラム:YMC社製ODS-AQ-HG;10mm×250mm)で精製し、目的とする3-メルカプト-1-プロパンホスホン酸0.30gを得た。
1H-NMR(DMSO-d6,500MHz)σ=1.60(2H,m)、1.71(2H,m)、2.32(1H,br)、2.53(2H,m)
LC-MS m/z 157.00[M+H+
【0121】
参考例1
H-Asp-Ala―Asn-Cys-Glu-OHの合成
1)H-Glu(OtBu)-O-(B-STag)の合成
B-STag 2.39g(3.0mmol)をCPME6mL、THF9mLに溶解し、Fmoc-Glu(OtBu)-OH 3.19g(7.5mmol)、WSCI・HCl 1.44g(7.5mmol)、4-ジメチルアミノピリジン37mg(0.3mmol)を加え、室温で2時間半撹拌した。B-STagが生成物のFmoc-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、タウリン0.60g(4.8mmol)、DMSO 16mLを加え、室温で40分撹拌した。0℃に冷却し、3-メルカプトプロピオン酸 1.18mL(13.5mmol)を添加し、DBU5.1mL(33.8mmol)を加え、1時間撹拌した。Fmoc-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のH-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液16.9mLを滴下し、5%炭酸ナトリウム水溶液68mLを加えた後、室温まで昇温し分液した。得られた有機層にCPME 4mL、DMF 0.6mL、5%炭酸ナトリウム水溶液3mL、20%食塩水9mLを加え、分液した。得られた有機層にはFmoc基から生成したDBFが3-メルカプトプロピオン酸と反応した化合物[3-(9-フルオレニルメチルチオ)プロピオン酸]が生成物のH-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し6.5%残存した。得られた有機層を濃縮したのち、残渣にCPME26.7mL加え、H-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0122】
2)H-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)の合成
上記のH-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液にDMF6.7mL、Fmoc-Cys(Trt)-OH 2.37g(4.1mmol)、COMU 1.68g(3.9mmol)、DIEPA 2.12mLを加え、室温で2時間撹拌した。H-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のFmoc-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、タウリン0.55g(3.9mmol)、DMSO 15.6mLを加え、室温で1時間撹拌した。0℃に冷却し、3-メルカプトプロピオン酸 634uL(7.3mmol)、DMF 1.3mLを添加し、DBU 2.7mL(18.2mmol)を加え、1時間撹拌した。Fmoc-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のH-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液9.6mLを滴下したのち、5%炭酸ナトリウム水溶液60mLを加え、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水38mL、5%炭酸ナトリウム水溶液13mL、DMF 2.7mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc基から生成したDBFが3-メルカプトプロピオン酸と反応した化合物[3-(9-フルオレニルメチルチオ)プロピオン酸]が生成物のH-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し0.1%残存した。H-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0123】
3)H-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)の合成
上記のH-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液にCPME1.8mL、DMF6.7mL、Fmoc-Asn(Trt)-OH 2.44g(4.1mmol)、COMU 1.68g(3.9mmol)、DIEPA 2.12mLを加え、室温で1時間半撹拌した。H-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のFmoc-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、タウリン0.56g(3.9mmol)、DMSO 15.6mLを加え、室温で1時間撹拌した。0℃に冷却し、3-メルカプトプロピオン酸 0.63mL(7.3mmol)、DMF 1.3mLを添加し、DBU2.73mL(18.2mmol)を加え、55分撹拌した。Fmoc-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のH-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液9.6mLを滴下したのち、5%炭酸ナトリウム水溶液60mLを加え、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水38mL、5%炭酸ナトリウム水溶液13mL、DMF 2.7mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc基から生成したDBFが3-メルカプトプロピオン酸と反応した化合物[3-(9-フルオレニルメチルチオ)プロピオン酸]が生成物のH-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し1.3%残存した。H-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0124】
4)H-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)の合成
上記のH-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液にCPME1.8mL、DMF6.7mL、Fmoc-Ala-OH・一水和物 1.34g(4.1mmol)、COMU 1.68g(3.9mmol)、DIEPA 2.12mL(12.2mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。H-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のFmoc-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、タウリン0.55g(3.9mmol)、DMSO 15.6mLを加え、室温で40分撹拌した。0℃に冷却し、3-メルカプトプロピオン酸 0.63mL(7.3mmol)、DMF 1.3mLを添加し、DBU2.73mL(18.2mmol)を加え、1時間撹拌した。Fmoc-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のH-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液9.6mLを滴下したのち、5%炭酸ナトリウム水溶液60mLを加え、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水38mL、5%炭酸ナトリウム水溶液13mL、DMF 2.7mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc基から生成したDBFが3-メルカプトプロピオン酸と反応した化合物[3-(9-フルオレニルメチルチオ)プロピオン酸]が生成物のH-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し0.7%残存した。H-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0125】
5)H-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)の合成
上記のH-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液にCPME1.8mL、DMF6.7mL、Fmoc-Asp(OtBu)-OH 1.68g(4.1mmol)、COMU 1.68g(3.9mmol)、DIEPA 2.12mL(12.2mmol)を加え、室温で1時間半撹拌した。H-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のFmoc-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、タウリン0.56g(3.9mmol)、DMSO 15.6mLを加え、室温で40分撹拌した。0℃に冷却し、3-メルカプトプロピオン酸 0.63mL(7.3mmol)を添加し、DBU2.73mL(18.2mmol)を加え、1時間半撹拌した。Fmoc-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のH-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液9.6mLを滴下したのち、5%炭酸ナトリウム水溶液60mLを加え、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水38mL、5%炭酸ナトリウム水溶液13mL、DMF 2.7mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc基から生成したDBFが3-メルカプトプロピオン酸と反応した化合物[3-(9-フルオレニルメチルチオ)プロピオン酸]が2.6%残存した。H-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液を得た。
得られたCPME溶液を減圧下で濃縮し、残渣にMeCN 30mLを加え析出した固体をろ取し、得られた固体を30℃で減圧乾燥した。H-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag) 4.41gを得た。
【0126】
6)H-Asp-Ala―Asn-Cys-Glu-OHの合成
H-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)961mg(0.50mmol)にトリフルオロ酢酸7.5mL、水0.21mL、トリイソプロピルシラン0.21mL、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール0.42mLを添加し、室温で2時間撹拌した。反応溶液を0℃に冷却し、MTBE60mLをゆっくりと滴下し、沈澱物を濾取した。ろ取した沈殿物をMTBE10mLで3回洗浄行った後、沈澱物を減圧下で乾燥し、H-Asp-Ala―Asn-Cys-Glu-OH 274mgを得た。得られたH-Asp-Ala―Asn-Cys-Glu-OHの純度は2.4%であった。なお、純度が低かった理由として、各伸長反応工程で副生したDBFと従来のトラッピング剤である3-メルカプトプロピオン酸が反応した化合物(DBF-チオカルボン酸付加体)の存在の影響が考えられた。
【0127】
上記したように、実施例ではFmoc脱離反応時に生成するDBFと本発明のトラッピング剤との反応物(DBF-メルカプト化合物付加体)は、当該トラッピング工程後の分液で得られた有機層では確認されなかったが、従来のトラッピング剤を用いた参考例では、DBFとの反応物が確認された。これより、アミン化合物、DBF、本発明のトラッピング剤の3者共存下に、DBF-メルカプト化合物付加体を形成してDBFを捕捉し、次工程の分液で有機層よりDBFをDBF-メルカプト化合物付加体として除去するという本発明の効果が確認された。
【要約】      (修正有)
【課題】Fmоc基脱保護工程で生じるジベンゾフルベンを容易に除去でき、次の縮合工程に影響を及ぼさないFmоc基の除去方法を提供する。
【解決手段】Fmоcでアミノ基が保護されたアミノ酸誘導体に塩基を反応させてFmоc基を除去する方法であって、当該反応によって生じるジベンゾフルベン誘導体を一般式(1)又は(2)で表される化合物により捕捉させる方法である。

(式中、L1及びL2は、それぞれ2価の有機基を示し、Mは水素原子又はアルカリ金属を示す)
【選択図】なし