(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】ガラス繊維強化樹脂板
(51)【国際特許分類】
C08J 5/08 20060101AFI20220426BHJP
【FI】
C08J5/08 CER
C08J5/08 CEZ
(21)【出願番号】P 2021571027
(86)(22)【出願日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 JP2021037631
【審査請求日】2021-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2020173824
(32)【優先日】2020-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003975
【氏名又は名称】日東紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】貫井 洋佑
(72)【発明者】
【氏名】笹本 大樹
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/137004(WO,A1)
【文献】特開2017-052925(JP,A)
【文献】特開2014-040556(JP,A)
【文献】特開2017-031414(JP,A)
【文献】特開2011-016901(JP,A)
【文献】特表2019-516853(JP,A)
【文献】特開2015-074674(JP,A)
【文献】国際公開第2017/171102(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0203041(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
C08J 5/00 - 5/02
C08J 5/12 - 5/22
B29B 11/16
B29B 15/08 - 15/14
C08J 5/04 - 5/10
C08J 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平な断面形状を備え短径D
Sが
5.5~11.0μmの範囲にあり長径D
Lが
33.0~44.0μmの範囲にあ
り、短径D
S
に対する長径D
L
の比(D
L
/D
S
)が4.0~6.0の範囲にあるガラス繊維と、非晶性熱可塑性樹脂とを含み、厚さが0.5mm以下であるガラス繊維強化樹脂板であって、
該ガラス繊維の数平均繊維長Lが
220~320μmの範囲にあり、ガラス繊維含有率Cが
40~50質量%の範囲にあり、前記D
S、D
L、L及びCが下記式(1)を満たすことを特徴とするガラス繊維強化樹脂板。
0.37≦1000×D
S×D
L
3×(C/100)
4/L
3≦
1.16 …(1)
【請求項2】
請求項
1記載のガラス繊維強化樹脂板において、前記非晶性熱可塑性樹脂はポリカーボネートであることを特徴とするガラス繊維強化樹脂板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維強化樹脂板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電子機器等の軽薄短小化に合わせて、携帯用電子機器に部材として用いられるガラス繊維強化樹脂成形品にも、軽薄短小であることと、寸法安定性が高いこととが求められている。前記ガラス繊維強化樹脂成形品における高い寸法安定性について、扁平な断面形状を備えるガラス繊維を用いることにより、ガラス繊維強化ポリカーボネートの寸法異方性が少なくなることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、扁平な断面形状を備えるガラス繊維を用いた場合であっても、厚さが0.5mm以下となった場合にはガラス繊維強化樹脂板の寸法安定性が悪化しうるという不都合がある。また、ガラス繊維強化樹脂板の寸法安定性を改善しようとした場合に、ガラス繊維強化樹脂板の強度、表面平滑性又は生産性が低下しうるという不都合がある。
【0005】
本発明は、かかる不都合を解消して、厚さが0.5mm以下であっても、寸法安定性、強度、表面平滑性及び生産性に優れた、ガラス繊維強化樹脂板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明のガラス繊維強化樹脂板は、扁平な断面形状を備え短径DSが5.5~11.0μmの範囲にあり長径DLが33.0~44.0μmの範囲にあり、短径D
S
に対する長径D
L
の比(D
L
/D
S
)が4.0~6.0の範囲にあるガラス繊維と、非晶性熱可塑性樹脂とを含み、厚さが0.5mm以下であるガラス繊維強化樹脂板であって、該ガラス繊維の数平均繊維長Lが220~320μmの範囲にあり、ガラス繊維含有率Cが40~50質量%の範囲にあり、前記DS、DL、L及びCが下記式(1)を満たすことを特徴とする。
0.37≦1000×DS×DL
3×(C/100)4/L3≦1.16 …(1)
【0007】
本発明のガラス繊維強化樹脂板は、扁平な断面形状を備えるガラス繊維と、非晶性熱可塑性樹脂とを含み、厚さが0.5mm以下であるガラス繊維強化樹脂板であって、前記ガラス繊維の短径DSが5.5~11.0μmの範囲にあり、長径DLが33.0~44.0μmの範囲にあり、短径D
S
に対する長径D
L
の比(D
L
/D
S
)が4.0~6.0の範囲にあり、数平均繊維長Lが220~320μmの範囲にあり、前記ガラス繊維強化樹脂板のガラス繊維含有率Cが40~50質量%の範囲にあり、前記DS、DL、L及びCが上記式(1)を満たすことにより、優れた寸法安定性、強度、表面平滑性及び生産性を得ることができる。
【0008】
ここで、前記ガラス繊維強化樹脂板が寸法安定性に優れるとは、0.4mmの厚さのときの反りが1.20mm以下であることを意味する。また、前記ガラス繊維強化樹脂板が強度に優れるとは、前記ガラス繊維強化樹脂板と同一組成のガラス繊維強化樹脂組成物について、JIS K 7165:2008に準じたA型ダンベル試験片(厚さ4mm)を用い、JIS K 7171:2016に準拠した静的引張試験により測定される曲げ強度が150MPa以上であることを意味する。また、前記ガラス繊維強化樹脂板が表面平滑性に優れるとは、前記ガラス繊維強化樹脂板と同一組成のガラス繊維強化樹脂組成物について、縦80mm×横60mm×厚さ2mmの平板の試験片を用い、JIS B 0601:1982に準拠して測定された算術平均粗さRaが0.45μm以下であることを意味する。また、前記ガラス繊維強化樹脂板が生産性に優れるとは、該ガラス繊維強化樹脂板を構成するガラス繊維強化樹脂組成物の流動性指標が90%以下であることを意味する。流動性指標については後述する。
【0018】
また、本発明のガラス繊維強化樹脂板において、前記非晶性熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネートを用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0020】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂板は、扁平な断面形状を備えるガラス繊維と、樹脂を含む成形品である。
【0021】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂板において、前記ガラス繊維を形成するガラスのガラス組成は特に限定されない。本実施形態のガラス繊維強化樹脂板において、ガラス繊維がとりうるガラス組成としては、最も汎用的であるEガラス組成、高強度高弾性率ガラス組成、高弾性率易製造性ガラス組成、及び、低誘電率低誘電正接ガラス組成を挙げることができる。ガラス繊維強化樹脂板の強度を向上させるという観点からは、ガラス繊維のガラス組成は、前記高強度高弾性率ガラス組成、又は、高弾性率易製造性ガラス組成であることが好ましい。ガラス繊維強化樹脂板の誘電率および誘電正接を低下させて、ガラス繊維強化樹脂板を通過する高周波信号の伝送損失を低減させるという観点からは、ガラス繊維のガラス組成は、前記低誘電低誘電正接ガラス組成であることが好ましい。
【0022】
Eガラス組成は、ガラス繊維の全量に対し52.0~56.0質量%の範囲のSiO2と、12.0~16.0質量%の範囲のAl2O3と、合計で20.0~25.0質量%の範囲のMgO及びCaOと、5.0~10.0質量%の範囲のB2O3とを含む組成である。
【0023】
高強度高弾性率ガラス組成は、ガラス繊維の全量に対し60.0~70.0質量%の範囲のSiO2と、20.0~30.0質量%の範囲のAl2O3と、5.0~15.0質量%の範囲のMgOと、0~1.5質量%の範囲のFe2O3と、合計で0~0.2質量%の範囲のNa2O、K2O及びLi2Oとを含む組成である。
【0024】
高弾性率易製造性ガラス組成は、ガラス繊維の全量に対し57.0~60.0質量%の範囲のSiO2と、17.5~20.0質量%の範囲のAl2O3と、8.5~12.0質量%の範囲のMgOと、10.0~13.0質量%の範囲のCaOと、0.5~1.5質量%の範囲のB2O3とを含み、かつ、合計で98.0質量%以上であるSiO2、Al2O3、MgO及びCaOとを含む組成である。
【0025】
低誘電率低誘電正接ガラス組成は、ガラス繊維全量に対し48.0~62.0質量%の範囲のSiO2と、17.0~26.0質量%の範囲のB2O3と、9.0~18.0質量%の範囲のAl2O3と、0.1~9.0質量%の範囲のCaOと、0~6.0質量%の範囲のMgOと、合計で0.05~0.5質量%の範囲のNa2O、K2O及びLi2Oと、0~5.0質量%の範囲のTiO2と、0~6.0質量%の範囲のSrOと、合計で0~3.0質量%の範囲のF2及びCl2と、0~6.0質量%の範囲のP2O5とを含む組成である。
【0026】
前述したガラスの組成の各成分の含有量の測定は、軽元素であるLiについてはICP発光分光分析装置を用いて、その他の元素は波長分散型蛍光X線分析装置を用いて行うことができる。測定方法としては次のような方法がある。ガラス繊維を適宜の大きさに裁断した後、白金ルツボに入れ、電気炉中で1550℃の温度に6時間保持して撹拌を加えながら溶融させることにより、均質な溶融ガラスを得る。ここで、ガラス繊維表面に有機物が付着している場合、又は、ガラス繊維が有機物(樹脂)中に主に強化材として含まれている場合には、例えば、300~650℃のマッフル炉で2~24時間程度加熱する等して、有機物を除去してから用いる。次に、得られた溶融ガラスをカーボン板上に流し出してガラスカレットを作製した後、粉砕し粉末化して、ガラス粉末とする。軽元素であるLiについては前記ガラス粉末を酸で加熱分解した後、ICP発光分光分析装置を用いて定量分析する。その他の元素は前記ガラス粉末をプレス機で円盤状に成形した後、波長分散型蛍光X線分析装置を用いて定量分析する。これらの定量分析結果を酸化物換算して各成分の含有量及び全量を計算し、これらの数値から前述した各成分の含有量(質量%)を求めることができる。
【0027】
前述のガラス組成を備えるガラス繊維は、以下のようにして製造することができる。初めに、前述の組成となるように調合されたガラス原料(ガラスバッチ)を溶融炉に供給し、例えば、1450~1550℃の範囲の温度で溶融する。次に、溶融されたガラスバッチ(溶融ガラス)を所定の温度に制御された、ブッシングの1~30000個のノズルチップから引き出して、急冷することで、ガラスフィラメントを形成する。次に、形成されたガラスフィラメントに、塗布装置であるアプリケーターを用いて集束剤又はバインダーを塗布し、集束シューを用いて、ガラスフィラメント1~30000本を集束させながら、巻取り機を用いて、チューブに高速で巻取ることで、ガラス繊維を得ることができる。
【0028】
ここで、本実施形態のガラス繊維強化樹脂板に用いる、扁平な断面形状を備えるガラス繊維は、前記ノズルチップを、非円形形状を有し、溶融ガラスを急冷する突起部や切欠部を有するものとし、温度条件を制御することにより得ることができる。また、ノズルチップの径や、巻取り速度、及び、温度条件等を調整することで、ガラス繊維の短径及び長径を調整することができる。例えば、巻取り速度を速くすることで、短径及び長径を小さくすることができ、巻取り速度を遅くすることで、短径及び長径を大きくすることができる。
【0029】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂板に用いる、扁平な断面形状を備えるガラス繊維は、短径DSが5.5~11.0μmの範囲にあり、長径DLが33.0~44.0μm、好ましくは33.0~36.0μmの範囲にある。また、前記短径DSに対する長径DLの比(DL/DS)は、4.0~6.0の範囲である。また、前記扁平な断面形状とは、好ましくは楕円形状又は長円形状であり、より好ましくは長円形状である。ここで、長円形状とは、長方形の両端に半円状の形状を付けたもの、あるいはそれに類似した形状である。
【0030】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂板に用いる、扁平な断面形状を備えるガラス繊維の換算繊維径は、例えば、11.0~32.0μmの範囲にあり、好ましくは、12.0~22.0μmの範囲にあり、より好ましくは、12.5~20.0μmの範囲にあり、さらに好ましくは、13.5~18.0μmの範囲にある。ここで、換算繊維径とは、扁平な断面形状を備えるガラス繊維の断面積と同一の断面積を有し、円形断面を備えるガラス繊維の直径を意味する。
【0031】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂板における、扁平な断面形状を備えるガラス繊維の短径DS及び長径DLは、例えば、以下のように算出することができる。まず、ガラス繊維強化樹脂板の断面を研磨し、次いで、電子顕微鏡を用いて、ガラスフィラメント100本以上につき、ガラスフィラメント断面の略中心を通る最長の辺を長径DLとし、該長径DLとガラスフィラメント断面の略中心で直交する辺を短径DSとして、それぞれの長さを測定し、これらの平均値を求めることで算出する。
【0032】
なお、ガラス繊維は、通常、複数本のガラスフィラメントが集束されて形成されているが、ガラス繊維強化樹脂板においては、成形加工を経ることにより前記集束が解かれ、ガラスフィラメントの状態で、ガラス繊維強化樹脂板中に分散して存在している。
【0033】
ここで、本実施形態のガラス繊維強化樹脂板における、扁平な断面形状を備えるガラス繊維が成形加工前にとる好ましい形態としては、ガラス繊維を構成するガラスフィラメントの本数(集束本数)が好ましくは1~20000本、より好ましくは50~10000本、さらに好ましくは1000~8000本の範囲の数であり、ガラス繊維(ガラス繊維束又はガラスストランドともいう)の長さを好ましくは1.0~100.0mm、より好ましくは、1.2~51.0mm、さらに好ましくは、1.5~30.0mm、特に好ましくは2.0~15.0mm、最も好ましくは2.3~7.8mmの範囲の長さに切断したチョップドストランドを挙げることができる。
【0034】
また、本実施形態のガラス繊維強化樹脂板における、扁平な断面形状を備えるガラス繊維が成形加工前にとりうる形態としては、チョップドストランド以外に、例えば、ロービングや、カットファイバーを挙げることができる。前記ロービングは、ガラス繊維を構成するガラスフィラメントの本数が10~30000本の範囲の数で、切断を行わないものである。前記カットファイバーは、ガラス繊維を構成するガラスフィラメントの本数が1~20000本の範囲の数で、ボールミル又はヘンシルミキサー等の公知の方法により0.001~0.900mmの範囲の長さになるように粉砕したものである。
【0035】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂板において、ガラス繊維は、ガラス繊維と樹脂との接着性の向上、ガラス繊維と樹脂又は無機材料との混合物中におけるガラス繊維の均一分散性の向上等を目的として、その表面を有機物で被覆されていてもよい。このような有機物としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、変性ポリプロピレン、特にカルボン酸変性ポリプロピレン、(ポリ)カルボン酸、特にマレイン酸と不飽和単量体との共重合体等の樹脂、又は、シランカップリング剤を挙げることができる。
【0036】
また、本実施形態のガラス繊維強化樹脂板において、ガラス繊維は、これらの樹脂又はシランカップリング剤に加えて、潤滑剤、界面活性剤等を含む組成物で被覆されていてもよい。このような組成物は、組成物に被覆されていない状態における、ガラス繊維の質量を基準として、0.1~2.0質量%の割合で、ガラス繊維を被覆する。
【0037】
なお、有機物によるガラス繊維の被覆は、例えば、ガラス繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーター等の公知の方法を用いて、前記樹脂、前記シランカップリング剤又は組成物の溶液を含む前記集束剤又はバインダーをガラス繊維に塗布し、その後、前記樹脂、前記シランカップリング剤又は前記組成物の溶液の塗布されたガラス繊維を乾燥させることで行うことができる。
【0038】
ここで、シランカップリング剤としては、アミノシラン、クロルシラン、エポキシシラン、メルカプトシラン、ビニルシラン、アクリルシラン、カチオニックシランを挙げることができる。前記シランカップリング剤は、これらの化合物を単独で使用することもでき、又は、2種類以上を併用することもできる。
【0039】
アミノシランとしては、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-N’-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0040】
クロルシランとしては、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0041】
エポキシシランとしては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0042】
メルカプトシランとしては、γ-メルカプトトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0043】
ビニルシランとしては、ビニルトリメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0044】
アクリルシランとしては、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0045】
カチオニックシランとしては、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩等を挙げることができる。
【0046】
潤滑剤としては、変性シリコーンオイル、動物油及びこの水素添加物、植物油及びこの水素添加物、動物性ワックス、植物性ワックス、鉱物系ワックス、高級飽和脂肪酸と高級飽和アルコールとの縮合物、ポリエチレンイミン、ポリアルキルポリアミンアルキルアマイド誘導体、脂肪酸アミド、第4級アンモニウム塩を挙げることができる。前記潤滑剤は、これらを単独で使用することもでき、又は、2種類以上を併用することもできる。
【0047】
動物油としては、牛脂等を挙げることができる。
【0048】
植物油としては、大豆油、ヤシ油、ナタネ油、パーム油、ひまし油等を挙げることができる。
【0049】
動物性ワックスとしては、蜜蝋、ラノリン等を挙げることができる。
【0050】
植物性ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナバワックス等を挙げることができる。
【0051】
鉱物系ワックスとしては、パラフィンワックス、モンタンワックス等を挙げることができる。
【0052】
高級飽和脂肪酸と高級飽和アルコールとの縮合物としては、ラウリルステアレート等のステアリン酸エステル等を挙げることができる。
【0053】
脂肪酸アミドとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリエチレンポリアミンと、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸との脱水縮合物等を挙げることができる。
【0054】
第4級アンモニウム塩としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のアルキルトリメチルアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0055】
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を挙げることができる。前記界面活性剤は、これらを単独で使用することもでき、又は、2種類以上を併用することもできる。
【0056】
ノニオン系界面活性剤としては、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックコポリマー、アルキルポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックコポリマーエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセロール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンキャスターオイルエーテル、硬化ヒマシ油エチレンオキサイド付加物、アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、グリセロール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、多価アルコールアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物等を挙げることができる。
【0057】
カチオン系界面活性剤としては、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、高級アルキルアミン酢酸塩、高級アルキルアミン塩酸塩等、高級アルキルアミンへのエチレンオキサイド付加物、高級脂肪酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合物、高級脂肪酸とアルカノールアミンとのエステルの塩、高級脂肪酸アミドの塩、イミダゾリン型カチオン性界面活性剤、アルキルピリジニウム塩等を挙げることができる。
【0058】
アニオン系界面活性剤としては、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、α-オレフィン硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、脂肪酸ハライドとN-メチルタウリンとの反応生成物、スルホコハク酸ジアルキルエステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩等を挙げることができる。
【0059】
両性界面活性剤としては、アルキルアミノプロピオン酸アルカリ金属塩等のアミノ酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルベタイン等のベタイン型、イミダゾリン型両性界面活性剤等を挙げることができる。
【0060】
次に、本実施形態のガラス繊維強化樹脂板に含まれる前記樹脂は、非晶性熱可塑性樹脂であり、例えば、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、スチレン/アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリ塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体等を挙げることができるが、ポリカーボネートであることが好ましい。
【0061】
前記ポリカーボネートとしては、ジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを溶融状態で反応させるエステル交換法により得ることができる重合体、又は、ジヒドロキシアリール化合物とホスゲンとを反応するホスゲン法により得ることができる重合体を挙げることができる。
【0062】
前記ポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,3-ジメチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-クロロメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-ヒドロキシエチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-n-ブチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-エチル-6-イソプロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-エチル-6-n-プロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,3,6-トリメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ〔2-(4’-メチルフェニル)-1,4-フェニレンエーテル〕、ポリ(2-ブロモ-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-クロロ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-クロロ-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-クロロ-6-ブロモ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジ-n-プロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-イソプロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-クロロ-6-メチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジブロモ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジクロロ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)等を挙げることができる。
【0063】
前記変性ポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリスチレンとのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/ブタジエン共重合体とのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/無水マレイン酸共重合体とのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリアミドとのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/ブタジエン/アクリロニトリル共重合体とのポリマーアロイ、前記ポリフェニレンエーテルのポリマー鎖末端にアミノ基、エポキシ基、カルボキシ基、スチリル基等の官能基を導入したもの、前記ポリフェニレンエーテルのポリマー鎖側鎖にアミン基、エポキシ基、カルボキシ基、スチリル基、メタクリル基等の官能基を導入したもの等を挙げることができる。
【0064】
前記ポリスチレンとしては、アタクチック構造を有するアタクチックポリスチレンである汎用ポリスチレン(GPPS)、GPPSにゴム成分を加えた耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、シンジオタクチック構造を有するシンジオタクチックポリスチレン等を挙げることができる。
【0065】
前記ポリ塩化ビニルとしては、従来公知の乳化重合法、懸濁重合法、マイクロ懸濁重合法、塊状重合法等の方法により重合される塩化ビニル単独重合体、または、塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体、または、重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト重合したグラフト共重合体等を挙げることができる。
【0066】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂板は、例えば、前記扁平な断面形状を備えるガラス繊維のガラスフィラメントが集束されてなり、所定の長さを備えるチョップドストランドと、前記樹脂とを、二軸混練機にて混練し、得られた樹脂ペレットを用いて射出成形を行うことにより得ることができる。また、本実施形態のガラス繊維強化樹脂板は、射出圧縮成形法、二色成形法、中空成形法、発泡成形法(超臨界流体発泡成形法含む)、インサート成形法、インモールドコーティング成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法、スタンピング成形法、インフュージョン法、ハンドレイアップ法、スプレイアップ法、レジントランスファーモールディング法、シートモールディングコンパウンド法、バルクモールディングコンパウンド法、プルトルージョン法、フィラメントワインディング法等の公知の成形方法を用いても得ることができる。前述のようにして得られた本実施形態のガラス繊維強化樹脂板の形状は、平板、孔や凹凸を有する平板、又は、曲面や折れ曲がりを有する板であってよい。ここで、曲面や折れ曲がりを有する板の一態様として、中空円筒体、中空多角柱及び箱が含まれる。
【0067】
また、本実施形態のガラス繊維強化樹脂板は厚さが0.5mm以下の範囲であり、好ましくは、0.4mm以下の範囲であり、より好ましくは0.1~0.4mmの範囲であり、さらに好ましくは0.2~0.4mmの範囲であり、特に好ましくは0.3~0.4mmの範囲である。
【0068】
ここで、本実施形態のガラス繊維強化樹脂板の厚さは、マイクロメーター等を用いた公知の測定方法で、ガラス繊維強化樹脂板中のそれぞれ離間する3点以上について厚さを測定し、平均をとることで求めることができる。
【0069】
また、本実施形態のガラス繊維強化樹脂板に含まれる前記ガラス繊維の数平均繊維長Lは、220~320μmの範囲である。
【0070】
ここで、前記ガラス繊維の数平均繊維長Lは、本実施形態のガラス繊維強化樹脂板を射出成形により得る場合、例えば、二軸混練機に投入されるチョップドストランドの長さ、二軸混練機のスクリュー回転数を調整することにより制御することができる。例えば、二軸混練機に投入されるチョップドストランドの長さは1.0~100.0mmの範囲で調整され、二軸混錬機に投入されるチョップドストランドの長さを前記範囲内で長くすることにより、前記ガラス繊維の数平均繊維長Lを長くすることができ、チョップドストランドの長さを前記範囲内で短くすることで、前記ガラス繊維の数平均繊維長Lを短くすることができる。また、二軸混練時のスクリュー回転数は10~1000rpmの範囲で調整され、二軸混錬時のスクリュー回転数を前記範囲内で小さくすることで、前記ガラス繊維の数平均繊維長Lを長くすることができ、スクリュー回転数を前記範囲内で大きくすることで、前記ガラス繊維の数平均繊維長Lを短くすることができる。
【0071】
また、本実施形態のガラス繊維強化樹脂板に含まれる前記ガラス繊維の数平均繊維長Lは、後述の実施例で示される方法で算出することができる。
【0072】
また、本実施形態のガラス繊維強化樹脂板において、ガラス繊維含有率Cは、40~50質量%の範囲である。
【0073】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂板におけるガラス繊維含有率Cは、JIS K 7052:1999に準拠して算出することができる。
【0074】
また、本実施形態のガラス繊維強化樹脂板は、前記ガラス繊維の短径DSが5.5~11.0μmの範囲にあり長径DLが33.0~44.0μmの範囲にあり、短径D
S
に対する長径D
L
の比(D
L
/D
S
)が4.0~6.0の範囲にあり、数平均繊維長Lが220~320μmの範囲にあり、前記ガラス繊維強化樹脂板のガラス繊維含有率Cが40~50質量%の範囲にあり、前記DS、DL、L及びCが下記式(1)を満たす。
0.37≦1000×DS×DL
3×(C/100)4/L3≦1.16 …(1)
【0079】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂板は、スマートフォン、タブレット、ノートパソコン及びモバイルパソコン等の携帯用電子機器の筐体及び部品(マザーボード、フレーム、スピーカー、アンテナ等)に好ましく用いられる。
次に、本発明の実施例、比較例及び参考例を示す。
【実施例】
【0080】
〔実施例1〕
本実施例では、短径DSが5.5μm、長径DLが33.0μm、DL/DSが6.0である扁平な断面形状を備え、Eガラス組成である、ガラスフィラメントが集束されてなり、シランカップリング剤を含む組成物で被覆された、3mmの長さを備えるチョップドストランドと、ポリカーボネート(帝人株式会社製、商品名:パンライト1250Y、表1~3中、PCと記載する)とを、スクリュー回転数を100rpmとして、二軸混練機(芝浦機械株式会社製、商品名:TEM-26SS)にて温度290℃で混練し、ガラス繊維含有率Cが40質量%の樹脂ペレットを作製した。
【0081】
次に、本実施例で得られた樹脂ペレットを用い、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、商品名:PNX60)により金型温度130℃、射出温度320℃にて射出成形を行い、寸法
が縦130mm×横15mm×厚さ0.4mmのガラス繊維強化樹脂板(平板)を作成した。得られたガラス繊維強化樹脂板(平板)について、以下に述べる方法で、ガラス繊維の数平均繊維長を算出した。
【0082】
次に、本実施例で作成したガラス繊維強化樹脂板(平板)について、以下に述べる方法で、反り、射出ピーク圧力、及び、流動性指標を算出し、曲げ強度、及び、算術平均粗さRaを測定した。結果を表1に示す。
【0083】
[ガラス繊維の数平均繊維長]
ガラス繊維強化樹板における、ガラス繊維の数平均繊維長は、以下の方法により算出した。まず、ガラス繊維強化樹脂板を、650℃のマッフル炉で0.5~24時間加熱して有機物を分解した。次いで、残存するガラス繊維をガラスシャーレに移し、アセトンを用いてガラス繊維をシャーレの表面に分散させた。次いで、シャーレ表面に分散したガラス繊維1000本以上について、実体顕微鏡を用いて繊維長を測定し、平均をとることで、ガラス繊維の数平均繊維長を算出した。
【0084】
〔0.4mmの厚さのときの反り〕
前記樹脂ペレットを用いて、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、商品名:PNX60)により金型温度130℃、射出温度320℃にて射出成形を行い、寸法が縦130mm×横15mm×厚さ0.4mmの平板である反り測定用試験片を成形した。前記0.4mmの厚さの反り測定用試験片の一角を平坦面に接地した際に、当該平坦面に接地された一角と対角の位置にある一角と平坦面との間に発生する距離をノギスで測定した。前記0.4mmの厚さの反り測定用試験片の四角のそれぞれを平坦面に接地した場合について、前記距離を測定し、平均をとることで、0.4mmの厚さのときの反りを算出した。
【0085】
〔1.5mmの厚さのときの反り〕
前記樹脂ペレットを用いて、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、商品名:PNX60)により金型温度90℃、射出温度270℃にて射出成形を行い、寸法が縦80mm×横60mm×厚さ1.5mmの平板である反り測定用試験片を成形した。前記1.5mmの厚さの反り測定用試験片の一角を平坦面に接地した際に、当該平坦面に接地された一角と対角の位置にある一角と平坦面との間に発生する距離をノギスで測定した。前記1.5mmの厚さの反り測定用試験片の四角のそれぞれを平坦面に接地した場合について、前記距離を測定し、平均をとることで、1.5mmの厚さのときの反りを算出した。
【0086】
〔射出ピーク圧力〕
前記樹脂ペレットを用いて、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、商品名:NEX80)により金型温度90℃、射出温度270℃にて射出成形を行い、JIS K 7165:2008に準じたA型ダンベル試験片(厚さ4mm)を作製する際の射出成形機にかかる最大の圧力を測定した。この測定を20回以上行い、平均をとることで、射出ピーク圧力を算出した。
【0087】
〔流動性指標〕
ガラス繊維径が11μmの円形断面を備えるガラス繊維を用いる以外は、扁平な断面形状を備えるガラス繊維を用いる場合と同一組成(すなわち、ガラス繊維含有率Cが同一)であり、同一の方法で作製した樹脂ペレットを用いて、射出ピーク圧力を前述の方法で測定した。得られた射出ピーク圧力を基準(100%)として、扁平な断面形状を備えるガラス繊維を用いる樹脂組成物の射出ピーク圧力の前記基準に対する割合を算出し、流動性指標とした。流動性指標の値が小さい程、樹脂組成物の流動性が高く、ガラス繊維強化樹脂板の生産性が優れることを意味する。
【0088】
〔曲げ強度〕
前記樹脂ペレットを用いて、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、商品名:NEX80)により金型温度90℃、射出温度270℃にて射出成形を行い、JIS K 7165:2008に準じたA型ダンベル試験片(厚さ4mm)を作製した。前記A型ダンベル試験片について、試験温度23℃の条件で、精密万能試験機(株式会社島津製作所製、商品名:オートグラフAG-5000B)を用いて、JIS K 7171:2016に準拠した静的引張試験により得られた測定値を、曲げ強度とした。
【0089】
〔表面平滑性〕
前記樹脂ペレットを用いて、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、商品名:NEX80)により金型温度90℃、射出温度270℃にて射出成形を行い、表面粗さ測定用試験片として、寸法が縦80mm×横60mm×厚さ2mmの平板を成形した。前記表面粗さ測定用試験片について、表面粗さ計(株式会社ミツトヨ社製、商品名:小型表面粗さ測定器サーフテストSJ-301)を用いて、JIS B 0601:1982に準拠し算術平均粗さRaを測定し、表面平滑性の指標とした。
【0090】
〔実施例2〕
本実施例では、ガラス繊維含有率Cが45質量%である以外は、実施例1と全く同一にして、樹脂ペレットを作製した。
【0091】
次に、本実施例で得られた樹脂ペレットを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、ガラス繊維強化樹脂板(平板)を作成し、実施例1と全く同一にして、ガラス繊維の数平均繊維長、反り、射出ピーク圧力、及び、流動性指標を算出し、曲げ強度、及び、算術平均粗さRaを測定した。結果を表1に示す。
【0092】
〔実施例3〕
本実施例では、短径DSが11.0μm、長径DLが44.0μm、DL/DSが4.0である扁平な断面形状を備えるガラスフィラメントを用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして、樹脂ペレットを作製した。
【0093】
次に、本実施例で得られた樹脂ペレットを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、ガラス繊維強化樹脂板(平板)を作成し、実施例1と全く同一にして、ガラス繊維の数平均繊維長、反り、射出ピーク圧力、及び、流動性指標を算出し、曲げ強度、及び、算術平均粗さRaを測定した。結果を表1に示す。
【0094】
〔実施例4〕
本実施例では、ガラス繊維含有率Cが50質量%であること以外は、実施例1と全く同一にして、樹脂ペレットを作製した。
【0095】
次に、本実施例で得られた樹脂ペレットを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、ガラス繊維強化樹脂板(平板)を作成し、実施例1と全く同一にして、ガラス繊維の数平均繊維長、反り、射出ピーク圧力、及び、流動性指標を算出し、曲げ強度、及び、算術平均粗さRaを測定した。結果を表1に示す。
【0096】
〔比較例1〕
本比較例では、短径DSが7.0μm、長径DLが28.0μm、DL/DSが4.0である扁平な断面形状を備えるガラスフィラメントを用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして、樹脂ペレットを作製した。
【0097】
次に、本比較例で得られた樹脂ペレットを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、ガラス繊維強化樹脂板(平板)を作成し、実施例1と全く同一にして、ガラス繊維の数平均繊維長、反り、射出ピーク圧力、及び、流動性指標を算出し、曲げ強度、及び、算術平均粗さRaを測定した。結果を表2に示す。
【0098】
〔比較例2〕
本比較例では、ガラス繊維含有率Cが30質量%であること以外は、実施例1と全く同一にして、樹脂ペレットを作製した。
【0099】
次に、本比較例で得られた樹脂ペレットを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、ガラス繊維強化樹脂板(平板)を作成し、実施例1と全く同一にして、ガラス繊維の数平均繊維長、反り、射出ピーク圧力、及び、流動性指標を算出し、曲げ強度、及び、算術平均粗さRaを測定した。結果を表2に示す。
【0100】
〔比較例3〕
本比較例では、ガラス繊維含有率Cが30質量%であること以外は、実施例3と全く同一にして、樹脂ペレットを作製した。
【0101】
次に、本比較例で得られた樹脂ペレットを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、ガラス繊維強化樹脂板(平板)を作成し、実施例1と全く同一にして、ガラス繊維の数平均繊維長、反り、射出ピーク圧力、及び、流動性指標を算出し、曲げ強度、及び、算術平均粗さRaを測定した。結果を表2に示す。
【0102】
〔比較例4〕
本比較例では、ガラス繊維含有率Cが45質量%であること以外は、実施例3と全く同一にして、樹脂ペレットを作製した。
【0103】
次に、本比較例で得られた樹脂ペレットを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、ガラス繊維強化樹脂板(平板)を作成し、実施例1と全く同一にして、ガラス繊維の数平均繊維長、反り、射出ピーク圧力、及び、流動性指標を算出し、曲げ強度、及び、算術平均粗さRaを測定した。結果を表2に示す。
【0104】
〔比較例5〕
本比較例では、ガラス繊維含有率Cが50質量%であること以外は、実施例3と全く同一にして、樹脂ペレットを作製した。
【0105】
次に、本比較例で得られた樹脂ペレットを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、ガラス繊維強化樹脂板(平板)を作成し、実施例1と全く同一にして、ガラス繊維の数平均繊維長、反り、射出ピーク圧力、及び、流動性指標を算出し、曲げ強度、及び、算術平均粗さRaを測定した。結果を表2に示す。
【0106】
〔比較例6〕
本比較例では、短径DSが5.5μm、長径DLが33.0μm、DL/DSが6.0である扁平な断面形状を備え、Eガラス組成である、ガラスフィラメントが集束されてなり、シランカップリング剤を含む組成物で被覆された、0.02mmの長さを備えるカットファイバーを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、樹脂ペレットを作製した。
【0107】
次に、本比較例で得られた樹脂ペレットを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、ガラス繊維強化樹脂板(平板)を作成し、実施例1と全く同一にして、ガラス繊維の数平均繊維長、反り、射出ピーク圧力、及び、流動性指標を算出し、曲げ強度、及び、算術平均粗さRaを測定した。結果を表2に示す。
【0108】
〔参考例1〕
本参考例では、ポリカーボネートに代えて、結晶性熱可塑性樹脂であるポリブチレンテレフタレート(ポリプラスチック株式会社製、商品名:ジュラネックス2000、表3中、PBTと記載する)を用い、混練の際の温度を250℃とした以外は、実施例1と全く同一にして、樹脂ペレットを作製した。
【0109】
次に、本参考例で得られた樹脂ペレットを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、ガラス繊維強化樹脂板(平板)を作成し、実施例1と全く同一にして、ガラス繊維の数平均繊維長、反り、射出ピーク圧力、及び、流動性指標を算出し、曲げ強度、及び、算術平均粗さRaを測定した。結果を表3に示す。
【0110】
〔参考例2〕
本参考例では、ポリカーボネートに代えて、結晶性熱可塑性樹脂であるポリブチレンテレフタレート(ポリプラスチックス株式会社製、商品名:ジュラネックス2000、表3中、PBTと記載する)を用い、混練の際の温度を250℃とした以外は、比較例1と全く同一にして、樹脂ペレットを作製した。
【0111】
次に、本参考例で得られた樹脂ペレットを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、ガラス繊維強化樹脂板(平板)を作成し、実施例1と全く同一にして、ガラス繊維の数平均繊維長、反り、射出ピーク圧力、及び、流動性指標を算出し、曲げ強度、及び、算術平均粗さRaを測定した。結果を表3に示す。
【0112】
〔参考例3〕
本参考例では、短径DSが11.0μm、長径DLが11.0μm、DL/DSが1.0である円形断面形状を備えるガラスフィラメントを用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして、樹脂ペレットを作製した。
【0113】
次に、本参考例で得られた樹脂ペレットを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、ガラス繊維強化樹脂板(平板)を作成し、実施例1と全く同一にして、ガラス繊維の数平均繊維長、反り、射出ピーク圧力、及び、流動性指標を算出し、曲げ強度、及び、算術平均粗さRaを測定した。結果を表3に示す。
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
表1~3から、扁平な断面形状を備え短径DSが4.5~12.0μmの範囲にあり長径DLが20.0~50.0μmの範囲にあるガラス繊維と、非晶性熱可塑性樹脂としてのポリカーボネートを含み、該ガラス繊維の数平均繊維長Lが50~400μmの範囲にあり、ガラス繊維含有率Cが25.0~55.0質量%の範囲にあり、1000×DS×DL
3×(C/100)4/L3の値が前記式(1)を満たす、実施例1~4のガラス繊維強化樹脂板は、0.4mmの厚さのときの反りが0.90~1.13mmと小さく、厚さが0.5mm以下であっても優れた寸法安定性を備えていることが明らかである。さらに、実施例1~4のガラス繊維強化樹脂板は、曲げ強度が192~210MPaと大きく、優れた強度を備え、算術平均粗さRaが0.37~0.44μmと小さく、優れた表面平滑性を備え、流動性指標が86.0~87.2%と小さく、優れた生産性を備えていることが明らかである。
【0118】
一方、1000×DS×DL
3×(C/100)4/L3の値が0.32未満であって前記式(1)を満たさない、比較例1~3のガラス繊維強化樹脂板、1000×DS×DL
3×(C/100)4/L3の値が1.22超であって前記式(1)を満たさない、比較例4~5のガラス繊維強化樹脂板は、0.4mmの厚さのときの反りが1.22~1.73mmと実施例1~4よりも大きく、寸法安定性に劣ることが明らかであり、1000×DS×DL
3×(C/100)4/L3の値が1.22を大きく上回る比較例6のガラス繊維強化樹脂板は、曲げ強度が135MPaと実施例1~4よりも小さく、強度に劣ることが明らかである。
【0119】
また、結晶性熱可塑性樹脂であるポリブチレンテレフタレートを含み、非晶性熱可塑性樹脂を含まない参考例1~2のガラス繊維強化樹脂板、円形断面形状のガラスフィラメント(ガラス繊維)を含み、扁平な断面形状のガラス繊維を含まない参考例3のガラス繊維強化樹脂板は、0.4mmの厚さのときの反りが11.5~13.0mmと実施例1~4よりも大きく、寸法安定性に大きく劣ることが明らかである。
【要約】
厚さが0.5mm以下であっても、寸法安定性、強度、表面平滑性及び生産性に優れた、ガラス繊維強化樹脂板を提供する。本発明は、扁平な断面形状を備え短径DSが4.5~12.0μmの範囲にあり長径DLが20.0~50.0μmの範囲にあるガラス繊維と、非晶性熱可塑性樹脂とを含み、厚さが0.5mm以下であるガラス繊維強化樹脂板であって、ガラス繊維の数平均繊維長Lが50~400μmの範囲にあり、ガラス繊維含有率Cが25.0~55.0質量%の範囲にあり、前記DS、DL、L及びCが下記式(1)を満たすことを特徴とする
0.32≦1000×DS×DL
3×(C/100)4/L3≦1.22 …(1)