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特許7063426予測スコア算出装置、予測スコア算出方法および予測スコア算出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】予測スコア算出装置、予測スコア算出方法および予測スコア算出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20220426BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G05B23/02 T
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021576221
(86)(22)【出願日】2021-05-17
(86)【国際出願番号】 JP2021018616
【審査請求日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2020103856
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】特許業務法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】里見 慎哉
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/168507(WO,A1)
【文献】特開2002-287803(JP,A)
【文献】特開2006-4428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の加工工程と、少なくとも一つの検査工程を含む第1の検査工程と、前記第1の検査工程よりも下流工程で実施される第2の検査工程を経て製品が生産される生産工程について、前記第2の検査工程における良否判定のための予測スコアを算出する予測スコア算出装置であって、
前記第1の検査工程のうち少なくとも一つの検査工程で得られた第1の検査データの入力を受け付ける入力手段と、
入力された前記第1の検査データから機械学習モデルを用いて、前記予測スコアを算出する算出手段と
前記予測対象の検査において不良と判定されるべき検査対象物品を構成する前記第1の検査工程の検査対象物品を、予測スコアの算出に用いる検査データを取得した第1の検査工程で不良と判定した場合の利益と、
前記第2の検査工程において良と判定されるべき検査対象物品を構成する第1の検査工程の検査対象物品を、予測スコアの算出に用いる検査データを取得した第1の検査工程で不良と判定した場合の損失と、の少なくとも一方に応じて、
当該第1の検査工程において当該検査対象物品を良否判定するための、予測スコアの閾値を決定する決定手段と、を備える
ことを特徴とする予測スコア算出装置。
【請求項2】
前記入力手段は、複数の検査工程を含む第1の検査工程の検査データの入力を受け付ける
ことを特徴とする請求項1に記載の予測スコア算出装置。
【請求項3】
前記決定手段は、前記利益から前記損失を差し引いた残余のコストメリットが最大になるように前記閾値を決定する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の予測スコア算出装置。
【請求項4】
前記決定手段は、前記第1の検査工程までの生産コスト、前記第1の検査工程後の部材コストおよび前記第2の検査工程の実施コストの少なくとも1つを用いて、前記利益並びに損失を算出する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の予測スコア算出装置。
【請求項5】
前記機械学習モデルは、勾配ブースティング決定木、決定木分析、ロジスティック回帰、ランダムフォレストおよびニューラルネットワークのいずれかである
ことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の予測スコア算出装置。
【請求項6】
前記機械学習モデルは、前記第2の検査工程を実施した検査対象物品の良否判定結果と、当該検査対象物品を構成する前記第1の検査工程の検査対象物品に関する第1の検査工程の検査データと、を教師データとして機械学習することによって、第1の検査工程の検査データから予測スコアを算出する
ことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の予測スコア算出装置。
【請求項7】
前記第1の検査データは、前記第2の検査工程の項目と関連性のある検査対象の部位や機能についての検査データを含む
ことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の予測スコア算出装置。
【請求項8】
前記第1の検査データは、複数の検査工程における検査データを用いる場合に、同一部位の加工前後における検査データを含む
ことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の予測スコア算出装置。
【請求項9】
前記第1の検査データは、複数の検査工程における検査データを用いる場合に、異なる部位の測定データを含む
ことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の予測スコア算出装置。
【請求項10】
前記第1の検査データは、複数の検査工程における検査データを用いる場合に、同じ部位に対して異なる物理量の測定データを含む
ことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の予測スコア算出装置。
【請求項11】
複数の加工工程と、少なくとも一つの検査工程を含む第1の検査工程と、前記第1の検査工程よりも下流工程で実施される第2の検査工程を経て製品が生産される生産工程について、前記第2の検査工程における良否判定のための予測スコアを算出する予測スコア算出方法であって、
前記第1の検査工程のうち少なくとも一つの検査工程で得られた第1の検査データの入力を受け付ける入力ステップと、
入力された前記第1の検査データから機械学習モデルを用いて、前記予測スコアを算出する算出ステップと
前記予測対象の検査において不良と判定されるべき検査対象物品を構成する前記第1の検査工程の検査対象物品を、予測スコアの算出に用いる検査データを取得した第1の検査工程で不良と判定した場合の利益と、
前記第2の検査工程において良と判定されるべき検査対象物品を構成する第1の検査工程の検査対象物品を、予測スコアの算出に用いる検査データを取得した第1の検査工程で不良と判定した場合の損失と、の少なくとも一方に応じて、
当該第1の検査工程において当該検査対象物品を良否判定するための、予測スコアの閾値を決定する決定ステップと、を含む
ことを特徴とする予測スコア算出方法。
【請求項12】
複数の加工工程と、少なくとも一つの検査工程を含む第1の検査工程と、前記第1の検査工程よりも下流工程で実施される第2の検査工程を経て製品が生産される生産工程について、前記第2の検査工程における良否判定のための予測スコアをコンピューターに算出させる予測スコア算出プログラムであって、
前記第1の検査工程のうち少なくとも一つの検査工程で得られた第1の検査データの入力を受け付ける入力ステップと、
入力された前記第1の検査データから機械学習モデルを用いて、前記予測スコアを算出する算出ステップと
前記予測対象の検査において不良と判定されるべき検査対象物品を構成する前記第1の検査工程の検査対象物品を、予測スコアの算出に用いる検査データを取得した第1の検査工程で不良と判定した場合の利益と、
前記第2の検査工程において良と判定されるべき検査対象物品を構成する第1の検査工程の検査対象物品を、予測スコアの算出に用いる検査データを取得した第1の検査工程で不良と判定した場合の損失と、の少なくとも一方に応じて、
当該第1の検査工程において当該検査対象物品を良否判定するための、予測スコアの閾値を決定する決定ステップと、をコンピューターに実行させる
ことを特徴とする予測スコア算出プログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生産ラインにおける検査のスコアを当該検査に先行する別の検査結果から予測する予測スコア算出装置、予測スコア算出方法、予測スコア算出プログラムおよび学習装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業製品を生産する生産ラインにおいては、完成品の良否を判定する最終検査が実施される。工程が多数に上る場合には、仕掛品の良否を判定する工程検査が行われる場合もある。工程検査で不良品を発見して除外したり、良品に補正したりすれば、最終検査で不良品を発見して除外したり補正したりする場合と比較して、原材料や部品の損失を低減したり、作業の無駄を省いたりすることができるので、生産効率を向上させることができる。
【0003】
工程検査を適切に実施するためには、検査項目を厳選して過不足を最小化するだけでなく、検査項目ごとに適切な検査基準を設けるのが望ましい。検査基準が適切でないと、不良品を見逃したり、良品を不良品と誤判定したりするからである。
【0004】
このような問題に対して、工程検査における検査項目ごとに、当該検査項目の検査データと、最終検査における良否判定結果との相関の強さを求め、相関がもっとも強い検査項目を選択して、当該項目の検査基準を再設定する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。このようにすれば、最終検査で不良判定される可能性が高い仕掛品を工程検査で不良判定し易くすることができる。
【0005】
生産ラインにおいて上下流関係にある工程検査についても、同様にして、下流の工程検査の良否判定結果に合わせて上流の工程検査を調整する技術が提案されている(例えば、特許文献2、3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-317266号公報
【文献】特開2012-151251号公報
【文献】国際公開第2017/168507号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、工程検査の個々の検査項目の検査データが最終検査における良否判定結果と強く相関していない場合には、上記のような従来技術を用いて、最終検査で不良判定されると見込まれる仕掛品を工程検査で発見することは難しい。
【0008】
工程検査の個々の検査項目の検査データが最終検査における良否判定結果と強く相関していない場合であっても、工程検査の検査データの組み合わせが最終検査における良否判定結果と相関している可能性があるが、工程検査の検査項目数は膨大に上るため、どのように検査項目を組み合わせれば最終検査の良否判定結果を精度よく予測することができるのかを発見することは難しい。
【0009】
相関が最も強い検査項目を選択することも、多くの作業工程が必要になるため現実的でない。
【0010】
言うまでなく、工程検査の個別の検査項目の検査データが最終検査における良否判定結果と強く相関していない場合であっても、最終検査を待つことなく工程検査において最終検査のスコアを予測することができれば、最終検査で不良判定され得る仕掛品を工程検査において発見、除外等して、生産ラインの効率を更に向上させることができると期待される。
【0011】
本開示は、上述のような問題に鑑みて為されたものであって、生産ラインにおける検査のスコアを当該検査に先行する別の検査の結果から精度よく予測することができる予測装置、予測スコア算出方法、予測スコア算出プログラムおよび学習装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本開示の一形態に係る予測スコア算出装置は、複数の加工工程と、少なくとも一つの検査工程を含む第1の検査工程と、前記第1の検査工程よりも下流工程で実施される第2の検査工程を経て製品が生産される生産工程について、前記第2の検査工程における良否判定のための予測スコアを算出する予測スコア算出装置であって、前記第1の検査工程のうち少なくとも一つの検査工程で得られた第1の検査データの入力を受け付ける入力手段と、入力された前記第1の検査データから機械学習モデルを用いて、前記予測スコアを算出する算出手段と、前記予測対象の検査において不良と判定されるべき検査対象物品を構成する前記第1の検査工程の検査対象物品を、予測スコアの算出に用いる検査データを取得した第1の検査工程で不良と判定した場合の利益と、前記第2の検査工程において良と判定されるべき検査対象物品を構成する第1の検査工程の検査対象物品を、予測スコアの算出に用いる検査データを取得した第1の検査工程で不良と判定した場合の損失と、の少なくとも一方に応じて、当該第1の検査工程において当該検査対象物品を良否判定するための、予測スコアの閾値を決定する決定手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
この場合において、前記入力手段は、複数の検査工程を含む第1の検査工程の検査データの入力を受け付けてもよい。
【0014】
また、前記予測対象の検査において不良と判定されるべき検査対象物品を構成する第1の検査工程の検査対象物品を、予測スコアの算出に用いる検査データを取得した第1の検査工程で不良と判定した場合の利益と、前記第2の検査工程において良と判定されるべき検査対象物品を構成する前記第1の検査工程の検査対象物品を、予測スコアの算出に用いる検査データを取得した第1の検査工程で不良と判定した場合の損失と、の少なくとも一方に応じて、当該第1の検査工程において当該検査対象物品を良否判定するための、予測スコアの閾値を決定する決定手段を備えるのが望ましい。
【0015】
また、前記決定手段は、前記利益から前記損失を差し引いた残余のコストメリットが最大になるように前記閾値を決定するのが好適である。
【0016】
また、前記決定手段は、前記第1の検査工程までの生産コスト、前記第1の検査工程後の部材コストおよび前記第2の検査工程の実施コストの少なくとも1つを用いて、前記利益並びに損失を算出してもよい。
【0017】
また、前記機械学習モデルは、勾配ブースティング決定木、決定木分析、ロジスティック回帰、ランダムフォレストおよびニューラルネットワークのいずれかであってもよい。
【0018】
また、前記機械学習モデルは、前記第2の検査工程を実施した検査対象物品の良否判定結果と、当該検査対象物品を構成する前記第1の検査工程の検査対象物品に関する第1の検査工程の検査データと、を教師データとして機械学習することによって、第1の検査工程の検査データから予測スコアを算出してもよい。
【0019】
また、前記第1の検査データは、前記第2の検査工程の項目と関連性のある検査対象の部位や機能についての検査データを含んでもよいし、複数の検査工程における検査データを用いる場合に、同一部位の加工前後における検査データを含んでもよい。更に、前記第1の検査データは、複数の検査工程における検査データを用いる場合に、異なる部位の測定データを含んでもよいし、複数の検査工程における検査データを用いる場合に、同じ部位に対して異なる物理量の測定データを含んでもよい。
【0020】
また、本開示の一形態に係る予測スコア算出方法は、複数の加工工程と、少なくとも一つの検査工程を含む第1の検査工程と、前記第1の検査工程よりも下流工程で実施される第2の検査工程を経て製品が生産される生産工程について、前記第2の検査工程における良否判定のための予測スコアを算出する予測スコア算出方法であって、前記第1の検査工程のうち少なくとも一つの検査工程で得られた第1の検査データの入力を受け付ける入力ステップと、入力された前記第1の検査データから機械学習モデルを用いて、前記予測スコアを算出する算出ステップと、前記予測対象の検査において不良と判定されるべき検査対象物品を構成する前記第1の検査工程の検査対象物品を、予測スコアの算出に用いる検査データを取得した第1の検査工程で不良と判定した場合の利益と、前記第2の検査工程において良と判定されるべき検査対象物品を構成する第1の検査工程の検査対象物品を、予測スコアの算出に用いる検査データを取得した第1の検査工程で不良と判定した場合の損失と、の少なくとも一方に応じて、当該第1の検査工程において当該検査対象物品を良否判定するための、予測スコアの閾値を決定する決定ステップと、を含むことを特徴とする。
【0021】
また、本開示の一形態に係る予測スコア算出プログラムは、複数の加工工程と、少なくとも一つの検査工程を含む第1の検査工程と、前記第1の検査工程よりも下流工程で実施される第2の検査工程を経て製品が生産される生産工程について、前記第2の検査工程における良否判定のための予測スコアをコンピューターに算出させる予測スコア算出プログラムであって、前記第1の検査工程のうち少なくとも一つの検査工程で得られた第1の検査データの入力を受け付ける入力ステップと、入力された前記第1の検査データから機械学習モデルを用いて、前記予測スコアを算出する算出ステップと、前記予測対象の検査において不良と判定されるべき検査対象物品を構成する前記第1の検査工程の検査対象物品を、予測スコアの算出に用いる検査データを取得した第1の検査工程で不良と判定した場合の利益と、前記第2の検査工程において良と判定されるべき検査対象物品を構成する第1の検査工程の検査対象物品を、予測スコアの算出に用いる検査データを取得した第1の検査工程で不良と判定した場合の損失と、の少なくとも一方に応じて、当該第1の検査工程において当該検査対象物品を良否判定するための、予測スコアの閾値を決定する決定ステップと、をコンピューターに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
このようにすれば、生産ラインにおける下流で実施される検査における良否判定を、上流で実施される検査において予測することができる。当該予測結果に基づいて上流の検査において上流検査対象物品を除外等すれば、下流の検査で当該上流検査対象物品を用いた検査対象物品を除外等する場合と比較して、生産コストの損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本開示の実施の形態に係る生産ライン1の主要な構成を示す図である。
図2】本実施の形態に係る予測スクリーニングシステム2の主要な構成を示す図である。
図3】予測スコア算出装置202の主要な構成を示すブロック図である。
図4】予測スコア算出装置202の主要な機能構成を示すブロック図である。
図5】(a)は予測スコア算出部410の動作を説明するフローチャートであり、(b)は機械学習部420の動作を説明するフローチャートである。
図6】(a)は工程検査の検査データを記憶した検査データテーブルを例示する表であり、(b)は最終検査の良否判定結果を記憶した良否判定結果テーブルを例示する表である。
図7】閾値決定部440の動作を説明するフローチャートである。
図8】最終検査の良否判定結果と各良否判定結果に対応する予測スコアとを例示して、閾値決定部440の動作を例示する図である。
図9】本開示の変形例に係る生産ラインの主要な構成を示す図である。
図10】本開示の変形例に係る端末装置201の主要なハードウェア構成を示すブロック図である。
図11】本開示の変形例に係る端末装置201が最終検査の良否判定の予測結果を出力するために実行する処理を説明するフローチャートである。
図12】本開示の変形例に係る端末装置201が工程検査の検査データを受け付けて最終検査における良否判定の予測結果を出力するための表示画面1201を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示に係る予測スコア算出装置、予測スコア算出方法、予測スコア算出プログラムおよび学習装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
[1]生産ラインの概要
まず、本実施の形態における生産ラインの概要について説明する。
【0027】
図1に示すように、生産ライン1は、受入検査101から開始される。受入検査101では、完成品の生産に供する原材料や部品を取引先から受け入れた際に実施する検査であり、検査対象物品である原材料や部品が要求仕様を満足しているかなどが検査される。
【0028】
受入検査において良判定された原材料や部品を用いて、他の工程102が実施される。他の工程102は、切削や組み立て、付加、分解などを含む加工工程、原材料や部品を含む仕掛品の運搬工程、一時的な保管や次の工程までの待ち状態などの停滞工程などの1以上の工程からなっている。
【0029】
工程検査103は、検査対象物品である仕掛品が良品であるか不良品であるかの良否判定を行う工程である。仕掛品の検査データがそれぞれ所定の規格値から許容範囲内にあるかどうかや、所定の機能を果たすかどうか等について量的な検査や質的な検査が行われる。また、工程検査103の検査データは、個々の仕掛品に対する検査データであってもよいし、ロット単位の検査データであってもよい。
【0030】
工程検査103で不良と判定された仕掛品は除外されたり、工程検査103で良と判定されるように補正されたりする。補正によって良と判定された仕掛品は次の工程へ送られる。このようにすれば、規格外の仕掛品が次の工程に送られて損失が生じるのを防止することができる。
【0031】
工程検査103で良と判定された仕掛品は、他の工程104へ送られる。他の工程104もまた、他の工程102と同様に、加工工程や運搬工程、停滞工程などの1以上の工程からなっている。他の工程104を経た後、別の工程検査105が実施されて、更に他の工程106を経て、最終検査107が実施される。なお、生産ライン1における工程検査の回数は1回だけでもよいし、3回以上であってもよい。工程検査どうしの間では他の工程が実施される。
【0032】
最終検査107は、製造工程の最終段階で行う検査であって、検査対象物品である完成品が所定の製品規格を満足しているかどうかが検査される。最終検査107において不良と判定された完成品についても、工程検査103、105で不良と判定された仕掛品と同様に、除外されたり、最終検査107で良と判定されるように補正されたりする。
【0033】
最終検査107で良と判定された完成品であっても、その後、出荷までの間に、運搬などによって変形したりキズがついたり、或いは変色やさび、ねじのゆるみなどの経時的な劣化を生じたりする場合がある。このような問題が生じている製品を出荷しないようにするために、出荷検査108が実施される。
【0034】
図1においては、生産ライン1において各工程が順次実施される場合を例示したが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、生産ライン1は合流工程を含んでいてもよいし、合流工程の数は複数であってもよい。また、共通の部品を用いて複数の機種を生産する場合や、単一機種であっても共通の部品を複数の用途に使用する場合などを考慮すれば、生産ライン1は分岐工程を含んでいてもよい。
【0035】
共通の部品を用いて複数の機種を生産する場合には、機種ごとに最終検査107で完成品が検査される。単一機種で共通の部品を複数の用途に使用する場合には、生産ライン1は一旦、分岐した後に合流し、完成品に対して最終検査107が実施される。
[2]予測スクリーニングシステム
次に、本実施の形態に係る予測スクリーニングシステムについて説明する。
【0036】
図2に示すように、予測スクリーニングシステム2は、端末装置201、予測スコア算出装置202および外部記憶装置203を備えており、端末装置201、予測スコア算出装置202はLAN(Local Area Network)やインターネットといった通信ネットワーク210を経由して相互に通信できるように接続されている。
【0037】
端末装置201は、検査作業員が、製品220の生産ライン1における工程検査103、105や最終検査107の検査結果である検査データを入力するための装置である。端末装置201に入力された検査データは、通信ネットワーク210を経由して外部記憶装置203に記憶される。外部記憶装置203は、予測スコア算出装置202に直接接続されていてもよく、この場合には、端末装置201から、予測スコア算出装置202を経由して、外部記憶装置203へ検査データが入力される。
【0038】
また、外部記憶装置203は、通信ネットワーク210を経由して予測スコア算出装置202に接続されていてもよい。この場合には、端末装置201から直接、外部記憶装置203に検査データが入力される。
【0039】
後述のように、予測スコア算出装置202は、工程検査105を実施した後、他の工程106へ進む前に、工程検査103、105の検査データから最終検査107の検査結果を予測するための予測スコアを算出する。端末装置201は、予測スコア算出装置202が算出した予測スコアと、閾値とを比較することによって、工程検査103、105で検査された仕掛品を用いた完成品の最終検査107における良否判定を予測する。
【0040】
工程検査103、105の検査データから、最終検査107において不良と判定されると予測された仕掛品は、検査作業員によって除外されたり、補正された後、再検査されたりする。一方、最終検査107において良と判定されると予測された仕掛品は、工程検査105の次の工程(生産ライン1における他の工程106)へ送られる。
[3]予測スコア算出装置202
予測スコア算出装置202について更に詳しく説明する。
【0041】
予測スコア算出装置202は、所謂コンピューターであって、図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)301やROM(Read Only Memory)302、RAM(Random Access Memory)303等を備えている。CPU301は、電源投入などによってリセットされると、ROM302からブートプログラムを読み出して起動し、RAM303を作業用記憶領域として、HDD(Har Disk Drive)304から読み出したOS(Operating System)や予測スコア算出プログラムを実行する。
【0042】
NIC(Network Interface Card)305は、通信ネットワーク210を経由して端末装置201と相互通信するための処理を実行する。CPU301、ROM302、RAM303、HDD304およびNIC305は内部バス306に接続されており、内部バス306を経由して相互に通信する。
【0043】
外部記憶装置203は、予測スコア算出装置202に直接接続されている場合には、内部バス306を経由してCPU301からのアクセスを受け付ける。また、外部記憶装置203が通信ネットワーク210に接続されている場合には、通信ネットワーク210およびNIC305を経由して、CPU301からのアクセスを受け付ける。
【0044】
図4は、予測スコア算出装置202が予測スコア算出プログラムを実行することによって実現する機能の構成を示すブロック図である。図4に示すように、予測スコア算出装置202は、予測スコア算出部410や機械学習部420、学習データ入力部430、閾値決定部440を備えている。また、図5図7は予測スコア算出装置202の動作を説明するフローチャートである。
【0045】
予測スコア算出部410は、予測スコア出力部411および工程検査データ入力部412と協調して動作する。端末装置201は、工程検査データ入力部412に工程検査103、105の検査データを入力して、予測スコアを要求する。これによって、工程検査データ入力部412は、端末装置201から検査データの入力を受け付ける(図5(a)のS501)。
【0046】
工程検査の検査データは、図6(a)に例示する検査データテーブルのように、工程検査の検査項目を識別する識別子と組み合わせごとに端末装置201から入力される。また、検査データに合わせて、工程検査の対象になっている仕掛品の識別子(製品のシリアル番号など)も、端末装置201から予測スコア算出装置202に入力される。
【0047】
予測スコア算出部410は、工程検査データ入力部412が検査データの入力を受け付けると、外部記憶装置203から機械学習モデルの学習パラメーターを読み出す(図5(a)のS502)。予測スコア算出部410は、機械学習モデルに、当該学習パラメーターを設定する(図5(a)のS503)。
【0048】
学習パラメーターを設定することによって、機械学習モデルが、工程検査103、105の検査データに応じて、最終検査107の良否判定の結果を予測した予測スコアを出力できるようになる。予測スコア算出部410は、学習パラメーターを設定した機械学習モデルに検査データを入力して、予測スコアを算出する(図5(a)のS504)。
【0049】
予測スコア出力部411は、予測スコア算出部410が算出した予測スコアを端末装置201へ出力する(図5(a)のS505)。端末装置201は、後述する予測スコアの閾値と予測スコアとを比較して、予測される最終検査107の良否判定結果を表示する。検査作業員は表示された良否判定結果の予測を参照して、仕掛品の除外などを行う。
【0050】
機械学習部420は、予測スコア算出装置202の管理者の指示などを契機として、機械学習を実行する。具体的には、まず、学習データとして、工程検査の検査データと、当該検査データに対応する最終検査の良否判定結果とを、外部記憶装置203から読み出す(図5(b)のS511)。ここで最終検査の良否判定結果とは、工程検査の対象となった仕掛品を用いて生産された完成品に関する最終検査の良否判定結果である。この仕掛品は、完成品に組み込まれる部品であってもよいし、完成品を生産するために用いられる治具や材料などであってもよい。
【0051】
また、工程検査の検査データは、予測スコア算出部410に入力される工程検査の検査データと同様のデータ構造を有している(図6(a))。また、最終検査の良否判定結果もまた、工程検査の検査データと同様に、最終検査の良否判定結果を識別するための識別子と、最終検査の良否判定結果との組み合わせになっている。本実施の形態においては、最終検査において完成品が良と判定された場合には良否判定結果の値を「1」とし、不良と判定された場合には良否判定結果の値を「0」とする。
【0052】
次に、最終検査の良否判定結果を教師データとして、当該検査データを機械学習モデルに入力して得られた予測スコアが教師データに漸近するように機械学習を行って、学習パラメーターを生成する(図5(b)のS512)。機械学習を完了したら、生成した学習パラメーターを外部記憶装置203に保存する(図5(b)のS513)。また、当該学習パラメーターを用いて算出した予測スコアを、予測スコアを算出するために機械学習モデルに入力した学習データに対応付けて、外部記憶装置203に保存する(図5(b)のS514)。
【0053】
なお、本実施の形態においては、機械学習モデルとして、勾配ブースティング決定木を用いる。しかしながら、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、勾配ブースティング決定木に代えて、決定木分析やロジスティック回帰、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク等の機械学習モデルを用いてもよい。
【0054】
機械学習モデルはそれぞれ異なる特徴を有しているので、複数の機械学習モデルに学習用のデータを用いて機械学習を行わせた後、検証用のデータを用いて算出した予測スコアの精度を比較して、予測の対象とする生産ラインに最も適した機械学習モデルを採用するのが望ましい。
【0055】
学習データ入力部430は、機械学習部420が機械学習を実施する際に使用する学習データとして、図6(a)に例示する検査データテーブルのような工程検査の検査データと、図6(b)に例示する良否判定結果テーブルのような最終検査の良否判定結果を端末装置201から受け付けて外部記憶装置203に保存する。なお、端末装置201が、通信ネットワーク210を経由して、外部記憶装置203に直接アクセスすることができる場合には、学習データ入力部430を経由することなく、直接、外部記憶装置203に学習データを保存してもよい。
【0056】
閾値決定部440は、予測スコアを用いてから最終検査の良否判定結果を予測する際に使用する閾値を決定する。具体的には、機械学習を行って学習パラメーターを生成せよとの予測スコア算出装置202の管理者の指示や端末装置201からの要求などを契機として、外部記憶装置203から学習データを読み出すとともに(図7のS701)、当該学習データに対応する予測スコアを読み出す(図7のS702)。
【0057】
次に、予測スコアをキーとして、当該予測スコアに対応する学習データのうち、最終検査の良否判定結果をソートする(図7のS703)。本実施の形態においては、最終検査が良判定を「1」とし、不良判定を「0」としていることに対応して、予測スコアもまた0以上、1以下の範囲内の値をとる。
【0058】
図8は、ソート結果を例示する表である。図8の表801に示すように、仕掛品のシリアル番号、当該仕掛品を用いた完成品に対する最終検査の良否判定結果、および当該仕掛品に対する工程検査の検査データを入力して機械学習モデルから出力される予測スコアが、予測スコアの降順にソートされている。
【0059】
図8では、予測スコアが最終検査において完成品が良と判定される確率になっている。したがって、予測スコアが高い仕掛品ほど、最終検査で良と判定される蓋然性が高く、逆に予測スコアが低い仕掛品ほど、最終検査で不良と判定される蓋然性が高い。
【0060】
このため、例えば、予測スコアの閾値を0.701433と高めに設定して、予測スコアが閾値以上の仕掛品を用いた完成品が良判定されると予測すると、表811に示すように、最終検査で良と判定される完成品を構成する仕掛品のうち、誤って当該完成品が最終検査で不良と判定されると予測される仕掛品の個数(誤報数)が323個と多くなり過ぎてしまう。誤報数が多過ぎると、当該仕掛品を用いた完成品が最終検査で良と判定される蓋然性が高いにも関わらず、不良と予測して、除外などの対象となる仕掛品の個数が多くなり過ぎてしまうので、無駄なコストが発生する。
【0061】
一方、予測スコアの閾値を0.399902と低めに設定して、予測スコアが閾値以上の仕掛品を用いた完成品が良判定されると予測すると、表813に示すように、最終検査で不良と判定される完成品を構成する仕掛品のうち、正しく当該完成品が最終検査で不良と判定されると予測される仕掛品の個数(不良捕捉数)が2個と少なくなり過ぎてしまう。不良捕捉数が多くすることができれば、最終検査で不良と判定される蓋然性が高い完成品を構成する仕掛品を次の工程に送らずに済むので、無駄なコストの発生を削減することができる。
【0062】
そこで、予測スコアの閾値をシリアル番号XA1043147の予測値と同じ0.517755に設定すると、表812に示すように、誤報数が多くなり過ぎず、かつ不良捕捉数が少なくなり過ぎないように、最終検査の良否判定結果を予測することができる。
【0063】
閾値を決定するために用いた一連の学習データに関して、最終検査の良否判定結果を予測することによって得ることができるコストメリットは、誤報数と、1回の誤報によって発生し得る損失である誤報損失コスト(本実施の形態では負値)と、不良捕捉数と、1回の不良捕捉によって得ることができる利益である不良捕捉メリット(本実施の形態では正値)とから次式(1)のようなコスト関数を用いて算出することができる。
【0064】
(コストメリット)=(誤報数)×(誤報損失コスト)+(不良捕捉数)×(不良捕捉メリット) …(1)
従って、予測スコアから最終検査における完成品の良否判定結果を予測するための閾値は、上式(1)のコスト関数を用いて算出されるコストメリットが最大になるように決定するのが望ましい。
【0065】
そこで、閾値決定部440は、更に、誤報損失コストと不良捕捉メリットとを外部記憶装置203から読み出して(図7のS704)、ソートした予測スコアの順に当該予測スコアを閾値として誤報数と不良捕捉数とを特定し、上式(1)のコスト関数を用いてコストメリットを算出する(図7のS705)。その後、算出したコストメリットのうち、最大のコストメリットに対応する閾値を特定すればよい(図7のS706)。
【0066】
閾値出力部411は、閾値決定部440が特定した閾値を端末装置201へ出力する。検査作業員は、端末装置201を操作して、仕掛品ごとに工程検査で得た検査データから機械学習モデルを用いて算出された予測スコアが、閾値以上であるかどうかに応じて、当該仕掛品を用いた完成品についての最終検査での良否判定結果を予測する。
【0067】
最終検査で良と判定されると予測された場合には、当該仕掛品を次の工程に送り、最終検査で不良と判定されると予測された場合には、当該仕掛品を除外したり補正したりすれば、最終検査での良否判定結果を予測しない場合と比較して、最終検査で不良と判定される完成品の個数を低減することができるので、当該完成品の生産コストを改善することができる。
[4]変形例
以上、本開示を実施の形態に基づいて説明してきたが、本開示が上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例を実施することができる。
(4-1)上記実施の形態においては、工程検査103、105の検査データから、当該仕掛品を用いた完成品の最終検査における良否判定結果を予測する場合を例にとって説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでもなく、これに代えて次のようにしてもよい。
【0068】
例えば、工程検査103、105のうちどちらか一方の検査データだけを用いて最終検査における良否判定結果を予測してもよいし、工程検査103、105の検査データに加えて、更に別の工程検査の検査データも用いて最終検査における良否判定結果を予測してもよい。
【0069】
単一の工程検査の結果データだけから最終検査の良否判定結果を予測する場合には、予測スコアを算出するための処理負荷を軽減することができる。一方、複数の工程検査の結果データだけから最終検査の良否判定結果を予測したほうが、多角的な検査データを参照することができるので、当該良否判定結果の予測精度を向上させることができる。
【0070】
また、図9に示すように、複数の工程検査903、913が並行して実施される場合には、複数の工程検査903、913がすべて完了するのを待って、これらの検査データから最終検査の良否判定結果を予測してもよい。工程検査以外に受入検査の検査データを用いて予測を行ってもよいし、工程検査の検査データと受入検査の検査データとを組み合わせて予測を行ってもよい。
【0071】
また、予測の対象が最終検査の良否判定結果に限定されないのは言うまでもなく、生産ライン1における上流の1以上の工程検査データから下流の工程検査の検査結果を予測してもよい。仕掛品の単価が高くなる前の検査において、仕掛品の単価が高くなった後の検査結果を予測して、不良と判定されると予測された仕掛品を除外等すれば、仕掛品の単価が高くなった後の検査で不良と判定した仕掛品を除外等するよりも、生産コストの損失を低減することができる。
【0072】
機械学習モデルによる機械学習やスコアの予測には、更に、以下のような検査データを用いることができる。例えば、工程検査における検査データのうち、最終検査の項目と関連性のある検査対象の部位や機能についての検査データを、機械学習モデルの機械学習や、当該機械学習モデルを用いたスコアの予測に用いてもよい。機械学習において、特徴量の情報多様性が増すことで、機械学習の精度が上がりやすくなるが、関連性のあるデータを用いることで、機械学習の精度がより上がりやすくなる。
【0073】
また、機械学習モデルの機械学習データ等として、複数の工程検査における検査データを用いる場合には、検査対象における同一部分の加工前後における検査データを用いるのが望ましい。このようにすれば、加工に起因する最終検査の良否判定結果の変化を機械学習に反映することができるので、最終検査を待つことなく、当該加工に起因して不良判定されると予測された仕掛品を除外することができる。
【0074】
また、複数の工程検査における検査データを用いる場合には、当該工程検査どうしで互いに検査対象の異なる部位についての測定データを検査データとして組み合わせて用いてもよい。特徴量の情報多様性が増すことで、機械学習の精度が上がりやすくなる。
【0075】
また、複数の工程検査における検査データを用いる場合には、検査対象の同一の部位について工程検査どうしで互いに異なる物理量の測定データを検査データとして組み合わせて用いてもよい。特徴量の情報多様性が増すことで、機械学習の精度が上がりやすくなる。
(4-2)上記実施の形態においては、最終検査の良否判定結果の予測には、工程検査で得られた生の検査データを用いる場合を例にとって説明したが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、生の検査データに代えて、或いは生の検査データに加えて、当該生の検査データから算出することができる統計量を用いて最終検査の良否判定結果を予測してもよい。
【0076】
検査データから算出することができる最小値や最大値、平均値、中央値、標準偏差、分散などの統計量もまた各検査データと深く関連しているので、最終検査における良否判定結果を予測する上で有用である。
【0077】
この統計量の算出は、予測スコア算出装置202が予測スコアを算出するための前処理として行ってもよいし、端末装置201が統計量を算出する前処理を実行して、得られた統計量を検査データとして予測スコア算出装置202に入力してもよい。また、当該前処理においては、統計量以外の特徴量を求めてもよい。このようにすれば、機械学習に特徴量を探索させたり、機械学習モデルに特徴量を算出する処理を行わせたりしなくてもよくなるので、機械学習モデルに関連する処理負荷を軽減することができる。
(4-3)上記実施の形態においては具体的に言及しなかったが、機械学習モデルを用いた学習や予測は例えば、以下のように、ブースティング決定木についてはLightBGM、ロジスティック回帰、決定木分析、ランダムフォレストおよびニューラルネットワークについてはscikit-learnといったオープンソースのライブラリを用いて実装することができる。
【0078】
例えば、機械学習モデルとしてブースティング決定木を用いる場合には、まず工程検査および最終検査の検査データをCSV(Comma Separated Values)ファイルに記録しておき、LightGBMを利用して、当該CSVファイル(例えば、ファイル名を「検査データ.csv」とする。)からデータを読み込む。
【0079】
df = pd.read#csv("検査データ.csv", encoding = 'SHIFT-JIS')
なお、機械学習を行う場合と、機械学習の結果を検証する場合とを区別するために、次のようにラベル付けしてもよい。
【0080】
df#train = df[df['検証'] == 0]
df#test = df[df['検証'] == 1]
次に、説明変数を設定する。
【0081】
x#train = df#train.loc[:,'検査データ#1':'検査データ#2']
x#test = df#test.loc[:,'検査データ#1':'検査データ#2']
また、目的変数を設定する。
【0082】
y#train = df#train['合否判定(不合格:1)']
y#test = df#test['合否判定(不合格:1)']
そして、LighGBMライブラリ(ブースティング決定木)をインポートする。
【0083】
import lightgbm as lgb
LightGBMライブラリに学習データを設定するとともに、
train = lgb.Dataset(x#train, label=y#train)
検証用のデータも設定する。
【0084】
valid = train.create#valid(x#test, label=y#test)
更に、ハイパーパラメーターを設定する。
param = [
'boosting':'gbdt',
'objective': 'binary',
'metric':'binary',
'num#iterations':20000,
'num#leaves':5,
'min#data#in#leaf':12,
'learning#rate':0.05099340688202502,
'sub#feature':0.9,
'sub#row':0.8,
'bagging#freq':1,
'lambda#l1':0.054599059167475525,
'lambda#l2':0.02858778312976605,
'num#threads':4,
'seed':seed #乱数シード値設定
]
ハイパーパラメーターは機械学習の実行条件を指定するためのパラメーターである。実行する学習ステップの数、言い換えると決定木の数は、例えば、
num#round = 20000
とすればよい。このように設定してから機械学習を実行して、機械学習モデルを作成する。
【0085】
m#lgb = lgb.train(param, train, 20000, valid#sets=[valid], early#stopping#rounds=1500)
作成した機械学習モデル(勾配ブースティング決定木)を用いて予測を行う場合には、
pred#test = m#lgb.predict(x#test, num#iteration=m#lgb.best#iteration)
とすればよい。
【0086】
ロジスティック回帰を機械学習モデルとする場合には、scikit-learnライブラリを用いることができる。まず、ロジスティック回帰のパッケージをインポートして、
from sklearn.linear#model import LogisticRegression
まず、機械学習モデルのインスタンスを作成し、
lr = LogisticRegression()
機械学習を実行する。
【0087】
lr.fit(x#train, y#train)
学習済みの機械学習モデルを用いて予測を行う場合には、
pred#test = lr.predict#proba(x#test)
とする。
【0088】
同じように、決定木分析、ランダムフォレストおよびニューラルネットワークを機械学習モデルとする場合も、scikit-learnライブラリを用いることができる。決
定木分析でも同様に、決定木分析のパッケージをインポートして、
from sklearn.tree import DecisionTreeClassifier
インスタンスを作成し、
dt = DecisionTreeClassifier()
機械学習を実行した後、
dt.fit(x#train, y#train)
予測を行う。
【0089】
pred#test = dt.predict(x#test)
機械学習モデルとしてランダムフォレストを用いる場合には、ランダムフォレストのパッケージをインポートして、
from sklearn.ensemble import RandomForestClassifier
インスタンスを作成し、
rf = RandomForestClassifier(random#state=777)
機械学習を実行した後、
rf.fit(x#train, y#train)
予測を行う。
【0090】
pred#test = rf.predict(x#test)
ニューラルネットワークについても同様に、scikit-learnのパッケージをインポートし、
from sklearn.neural#network import MLPClassifier
インスタンスを作成し、
nn = MLPClassifier(solver="sgd", random#state=0, max#iter=10000)
機械学習を実行した後、
nn.fit(x#train, y#train)
予測を行う。
【0091】
pred#test = nn.predict(x#test)
(4-4)上記実施の形態においては、端末装置201において予測スコア算出装置202が算出した予測スコアと閾値とを比較して仕掛品の良否を判定する場合を例にとって説明したが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、これに代えて次のようにしてもよい。例えば、予測スコア算出装置202が予測スコアと閾値とを比較して、仕掛品の良否のみを端末装置201に通知してもよい。
(4-5)上記実施の形態においては、誤報数と不良捕捉数との両方を用いてコストメリットを算出する場合を例にとって説明したが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、これに代えて、誤報数と不良捕捉数とのどちらか一方のみを用いてコストメリットを算出してもよい。また、コスト関数についても定式(1)に限定されないのは言うまでもなく、他のコスト関数を用いて閾値を決定しても本開示の効果を得ることができる。
(4-6)上記実施の形態においては、本開示が予測スコア算出装置202である場合を例にとって説明したが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、上記予測スコア算出装置202が実行する予測スコア算出方法であるとしてもよい。また、当該予測スコア算出方法をコンピューターに実行させる予測スコア算出プログラムであってもよい。更に、当該予測スコア算出プログラムを記憶した記憶媒体であるとしてもよく、いずれの場合においても本開示の効果を得ることができる。
(4-7)上記実施の形態においては、主として予測スコア算出装置202の構成と動作に着目して本開示を説明したので、ここでは端末装置201の構成と動作についての説明を補う。
【0092】
図10に示すように、端末装置201は、CPU1001、ROM1002、RAM1003、SSD(Solid State Drive)1004、通信用LSI(Large Scale Integration)1005、カメラ1006、マイク1007、スピーカー1008、タッチパネルコントローラー1009を内部バス1010にて接続した構成を備えている。CPU1001は、RAM10013を作業用記憶領域として、SSD1004から読み出したOSや、最終検査の良否判定結果の予測結果を出力する予測プログラム等を実行する。
【0093】
通信用LSI1005には無線通信用のアンテナ1012が接続されており、CPU1001の制御の下、予測スコア算出装置202へ検査データを送信したり、予測スコアを受信したりする等の通信処理を実行する。タッチパネルコントローラー1009は、CPU1001からコマンドを受け付けて、タッチパネル1013の動作を制御する。
【0094】
タッチパネル1013は、タッチパッド1014および液晶ディスプレイ1015を備えており、タッチパッド1014にて端末装置201のユーザーから検査データの入力などを受け付けたり、液晶ディスプレイ1015にて端末装置201のユーザーに最終検査の良否判定結果の予測結果などを提示したりする。タッチパッド1014は、静電容量方式や、電磁誘導方式、抵抗膜方式等の入力方式を用いたタッチセンサーを含み、透明部材で構成され、液晶ディスプレイ1015に重畳して設けられている。液晶ディスプレイ1015の背後には、光源であるLED(Light Emitting Diode)が配設されており、液晶ディスプレイ1015のバックライトとして機能する。
【0095】
スピーカー1005は音声を出力し、マイク1006は音声を集音する。カメラ1009は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサとレンズとを含み、レンズから入射した光をCMOSイメージセンサで検出して画像データを生成する。
【0096】
端末装置201は、図11に示すように、まず最終検査の良否判定結果を予測したい仕掛品の検査データの入力を受け付ける(S1101)。例えば、図12に示すような端末装置201の表示画面1201のシリアル番号欄1202にて最終検査の良否判定結果を予測したい仕掛品を組み込む製品のシリアル番号の入力を受け付けるとともに、検査データ欄1203にて当該仕掛品の工程検査における検査データの入力を受け付ける。
【0097】
端末装置201のユーザーがシリアル番号と検査データの入力を完了して、スタートボタン1204をタッチすると、端末装置は、受け付けた検査データを予測スコア算出装置202へ送信して、予測スコアおよび閾値を要求する(S1102)。その後、予測スコア算出装置202から予測スコアおよび閾値を受信したら(S1103)、受信した予測スコアと閾値とを比較する。
【0098】
予測スコアが閾値以上である場合には(S1104:YES)、最終検査において良判定されると予測する(S1105)。一方、予測スコアが閾値未満である場合には(S1104:NO)、最終検査において不良判定されると予測する(S1106)。その後、予測結果をタッチパネル1013の液晶ディスプレイ1015に表示出力して(S1107)、処理を終了する。
【0099】
図12の例では、予測スコア欄1205に予測スコアが表示され、閾値欄1206に閾値が表示されるとともに、予測スコアと閾値とを比較することによって予測した最終検査の良否判定結果が判定結果欄1207に表示されている。
【0100】
なお、端末装置201は、ユーザーからシリアル番号の入力を受け付けると、外部記憶装置203等からシリアル番号に対応する検査データを取得してもよい。このようにすれば、端末装置201に検査データを入力するユーザーの手間を省くことができる。また、この場合には、シリアル番号の入力を契機として、検査データを読み出すだけでなく、当該検査データを予測スコア算出装置202に送信して、予測スコアと閾値とを要求してもよい。
【0101】
また、予測スコア算出装置202にシリアル場号のみを送信して、予測スコア算出装置202に当該シリアル場号に対応する検査データを取得させ、当該検査データを用いて予測スコアを算出させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本開示に係る予測スコア算出装置、予測スコア算出方法、予測スコア算出プログラムおよび学習装置は、生産ラインにおける最終検査のスコアを工程検査において予測する技術として有用である。
【符号の説明】
【0103】
1………………………………………生産ライン
103、105、903、905…工程検査
107、907………………………最終検査
2………………………………………予測スクリーニングシステム
201…………………………………端末装置
202…………………………………予測スコア算出装置
203…………………………………外部記憶装置
410…………………………………予測スコア算出部
420…………………………………機械学習部
430…………………………………学習データ入力部
440…………………………………閾値決定部
【要約】
予測スコア算出装置202は、機械学習部420においては、生産ラインにおける工程検査の検査データを入力されると、最終検査の良否判定の予測スコアを出力するように機械学習を行う。また、当該機械学習を行った機械学習モデルを用いて、予測スコア算出部410においては、工程検査の検査データから最終検査の良否判定結果を予測する予測スコアを出力する。また、閾値決定部440は、予測スコア算出部410が算出した予測スコアと比較して、良否判定を予測するための閾値を、学習データ、予測スコアおよびコストデータから決定する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12