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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】映像分配器
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/61 20110101AFI20220426BHJP
   H04N 21/6405 20110101ALI20220426BHJP
   H04L 65/00 20220101ALI20220426BHJP
【FI】
H04N21/61
H04N21/6405
H04L65/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017045423
(22)【出願日】2017-03-09
(65)【公開番号】P2018152636
(43)【公開日】2018-09-27
【審査請求日】2020-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】599083318
【氏名又は名称】株式会社メディアリンクス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 和則
(72)【発明者】
【氏名】小野 孝次
(72)【発明者】
【氏名】川西 一郎
【審査官】鈴木 順三
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-122640(JP,A)
【文献】特開平11-146273(JP,A)
【文献】特開2009-141926(JP,A)
【文献】特開平07-115435(JP,A)
【文献】特開平10-313454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00 - 21/858
H04L 12/00 - 12/26
H04L 12/50 - 12/955
H04L 29/00 - 29/14
H04L 61/00 - 65/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソースデバイスと第1の伝送経路で接続され、IPパケットを前記ソースデバイスから受信するように構成されたパケット入力部と、
記受信したIPパケットを複数の分配先デバイスのいずれかに送信するように構成された複数のパケット出力部であって、前記複数のパケット出力部のうちの第1のパケット出力部は、物理的に接続された第2の伝送経路を介して、前記複数の分配先デバイスのうちの第1の分配先デバイスと接続され、前記複数のパケット出力部のうちの第nのパケット出力部は、物理的に接続された第nの伝送経路を介して、前記複数の分配先デバイスのうちの第nの分配先デバイスと接続され、nは、1よりも大きい整数である、前記複数のパケット出力部と、
前記複数のパケット出力部のうちのいずれかに対する選択を受け付けるように構成された選択受付部と、
前記受け付けた選択に基づいて、前記複数のパケット出力部のいずれかを判定し、
前記IPパケットのヘッダ情報を書き換える
ように構成された制御部と
を備え、
前記判定された複数のパケット出力部は、前記ヘッダ情報を書き換えたIPパケットを、対応する分配先デバイスに送信するように構成されている
ことを特徴とする映像分配器。
【請求項2】
前記受信したIPパケットの宛先IPアドレスは、IPパケット化された映像を識別するためのマルチキャストIPアドレスが指定され、前記受信したIPパケットの宛先MACアドレスは、前記マルチキャストIPアドレスに対応したマルチキャストMACアドレスが指定され、
前記制御部は、前記宛先IPアドレスを前記マルチキャストIPアドレスから前記対応する分配先デバイスが受信可能なIPアドレスに書き換え、前記宛先MACアドレスを前記マルチキャストMACアドレスから前記対応する分配先デバイスが受信可能なMACアドレスに書き換えるようにさらに構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の映像分配器。
【請求項3】
前記パケット入力部は、異なる映像ストリームにそれぞれ対応する複数のIPパケットを前記ソースデバイスから受信するように更に構成され、
前記選択受付部は、前記受信したIPパケットの送信元に対する第2の選択を受け付けるように更に構成され、
前記制御部は、
前記受け付けた第2の選択に基づいて、前記複数のIPパケットのうちのいずれかを判定し、
前記判定したIPパケットのヘッダ情報を書き換える
ように更に構成され、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の映像分配器。
【請求項4】
前記受信した複数のIPパケットのうちのいずれかで指定されたIPパケットの所定のヘッダ情報を表示するように構成された表示部をさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載の映像分配器。
【請求項5】
前記受信した複数のIPパケットのうちのいずれかで指定されたIPパケットの所定のヘッダ情報に対応するサムネイル画像を表示するように構成された表示部をさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載の映像分配器。
【請求項6】
前記制御部は、前記受信した複数のIPパケットのうちのいずれかに含まれるペイロードから、対応する映像ストリームのサムネイル画像を生成するようにさらに構成され、
前記生成したサムネイル画像を表示するように構成された表示部をさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載の映像分配器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像分配器に関し、特に、IPパケット化された入力映像信号を選択的に分配する映像分配器に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラなどから撮影された映像を編集および/または配信する映像処理システムが存在する。この映像処理システムは、放送局などで実装され、外部ネットワークまたは収録スタジオなどからの映像信号の中から処理する映像信号を選択し処理する。映像信号は、例えば、SMPTE(Society of Motion Picture and Television Engineers)424Mで規定された3G-SDIおよびSMPTE 292Mで規定されたHD-SDIなどを含む。
【0003】
図1は、既存の映像処理システムの構成の例を示している。映像処理システム11は、一般に複数の映像処理装置で構成される(図1に示す映像処理装置111および112)。また、映像処理システム11は、耐障害性を高めるためにも、冗長化された複数の映像処理装置111および112で構成されることがある。例えば、外部ネットワーク12および/または収録スタジオ13から受信した映像信号は、映像処理装置111によって特定の処理が行われ、かつ映像処理装置112によって別の処理が行われることがある。あるいは、映像処理装置111および112が冗長化されている場合には、映像処理装置111および映像処理装置112が同一の処理を行うこともある。
【0004】
近年のIP(Internet Protocol)化の進展に伴い、上記映像処理システムがIPベースへと移行しつつある。これらのIPベースの映像処理システムでは、映像信号をIPパケットに変換してRTP(Real-time Transport Protocol)を通じてIPパケットを伝送先に伝送する。ここで、本明細書では、一連のIPパケット化した映像信号をIPストリームと称する。つまり、1本の映像信号をIPパケット化すると、1つのIPストリームが生成される。
【0005】
今後、IP化がますます進展することによって、上述した外部ネットワーク12または収録スタジオ13などから送信される映像信号がIP化されていることが想定される。つまり、図2に示すように、外部ネットワーク22および/または収録スタジオ23において(つまり、映像処理システム21の外部のシステムまたは装置)によって映像信号がIPパケット化され、映像処理システム21がそのIPパケットを受信し、映像処理装置211および212がそれぞれの映像処理を行うことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5438041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
映像処理システムが複数の映像処理装置で構成されることがあることを述べたが、映像処理装置が複数存在する以上、映像信号を分配する分配器が必要となる。これは、外部ネットワークなどから送信される映像信号がIP化されていても同様である。
【0008】
図3は、図2に示した映像処理システムのさらなる詳細な例を示す図である。映像処理システム31は、分配器310、および8台の映像処理装置311乃至318を含む。映像処理システム31は、映像信号を生成するソースデバイス32(ソースデバイス32は、映像信号を生成し、IPパケット化し、そのIPパケットを映像処理システム31に送信する、図2に示した外部ネットワーク22および収録スタジオ23などに相当する)からIPパケット(IPストリーム)を受信する。ここで、ソースデバイス32から送信されるIPパケットの宛先IPアドレスは、一般的に、少なくとも映像処理装置311乃至318が属するマルチキャストグループのマルチキャストIPアドレスである。IETF(Internet Engineering Task Force)のRFC(Request for Comments)1112では、マルチキャストMACアドレスは、マルチキャストIPアドレスと1対1の関係にあることが定められているので(つまり、マルチキャストMACアドレスは、マルチキャストIPアドレスから導出される)、宛先MACアドレスもマルチキャストMACアドレスとなる。
【0009】
受信されたIPパケットは、分配器310によって映像処理装置311乃至318に分配される。IPパケットが分配された映像処理装置311乃至318のうち、映像処理装置311および312は、映像の伝送を行う装置であり宛先デバイス33にIPパケットを伝送し、その他の映像処理装置313乃至318は、そのIPパケットに対してそれぞれ所定の処理を行う。
【0010】
図3に示す分配器310は、同一のIPパケットを映像処理装置311乃至318に分配している。しかしながら、当該IPパケットを8台の映像処理装置311乃至318の全てが必要とはしない場合には、IPパケットの内容に応じて分配先を選択することができれば利便性が高まる。ここで、本明細書における分配器とは、従来の映像信号に対するDDA(Digital Distribution Amplifier)などの、入力された映像信号を複数に分配する装置を意味する。IPストリームに関しては、IPストリームを複数に分配する装置を意味する。
【0011】
図3に示す分配器310の各出力ポートに映像処理装置311乃至318が物理的に接続されていることから、分配器310の代わりに、L2SW(Layer-2 Switch)を使用することも可能である。L2SWは、全ての映像処理装置311乃至318が接続されたL2SWの端子にIPパケットを転送することが可能なので、分配器と同様の役割を果たすことができる。
【0012】
しかしながら、L2SWは、予め定義された、あるいは逐次入力される設定に従って、そのL2SWに結合された複数の出力ポートに接続された映像処理装置311乃至318のうちのいずれかにIPパケットを伝送するのみの機能である。このことから、複数の映像に対応するIPパケット(IPストリーム)のうちのいずれかを選択して、特定の映像処理装置に分配したい場合に、その都度、CLI(Command Line Interface)などによるオペレータの設定作業または外部によるソフトウエア制御が必要となる。
【0013】
また、分配する映像により、その映像に対応するIPパケットのIPアドレスおよびMACアドレスが変わるため、つまり、宛先IPアドレスとなるマルチキャストIPアドレスおよび宛先MACアドレスが異なる場合、分配先となる映像処理装置311乃至318の設定を変える必要がある。
【0014】
さらに、L2SWでは、IPパケットのRTP(Real-time Transport Protocol)ペイロードの中身を判定することができないので、当該IPパケットに対応する映像または送信元を視覚的に認識することができず、その結果、分配対象となるIPパケットを、映像を確認して選択することができない。なお、RTPとは、音声や動画などのデータストリームをリアルタイムに配送するためのデータ通信プロトコルであり、ITU(International Telecommunication Union)などで標準化されている。
【0015】
特許文献1は、デュアルポートを有するイーサネットシステムにおいてデータフレームリレー遅延および相互衝突を回避するために、データフレームのMACアドレスに基づいて当該フレームを送受信バッファまたはスイッチバッファに分配する技術を開示している。しかしながら、特許文献1に係る技術は、上述した課題を解決するものではない。
【0016】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、映像信号に基づいて生成されたIPパケットを、複数の分配先のうちのいずれかに選択的に分配する映像分配器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するために、本発明に係る映像分配器は、ソースデバイスと第1の伝送経路で接続され、IPパケットを前記ソースデバイスから受信するように構成されたパケット入力部と、1つまたは複数の分配先デバイスと1つまたは複数の第2の伝送経路でそれぞれ接続され、前記受信したIPパケットを前記1つまたは複数の分配先デバイスのいずれかに送信するように構成された1つまたは複数のパケット出力部と、前記受信したIPパケットのパケットヘッダ情報またはプロトコルヘッダ情報の中の所定のヘッダ情報を判定し、前記判定した所定のヘッダ情報に基づいて、前記1つまたは複数のパケット出力部を判定し、前記IPパケットのヘッダ情報を書き換えるように構成された制御部とを備え、前記判定された1つまたは複数のパケット出力部は、前記ヘッダ情報を書き換えたIPパケットを、対応する分配先デバイスに送信するように構成されていることを特徴とする。
【0018】
上記の課題を解決するために、本発明に係る別の映像分配器は、ソースデバイスと第1の伝送経路で接続され、異なる映像ストリームにそれぞれ対応する複数のIPパケットを前記ソースデバイスから受信するように構成されたパケット入力部と、1つまたは複数の分配先デバイスと1つまたは複数の第2の伝送経路でそれぞれ接続され、前記受信した複数のIPパケットのうちのいずれかを前記1つまたは複数の分配先デバイスのいずれかに送信するように構成された1つまたは複数のパケット出力部と 前記受信したIPパケットの送信元に対する第1の選択を受け付け、前記1つまたは複数のパケット出力部のうちのいずれかに対する第2の選択を受け付けるように構成された選択受付部と、前記受け付けた第1の選択に基づいて、前記複数のIPパケットのうちのいずれかを判定し、前記受け付けた第2の選択に基づいて、前記1つまたは複数のパケット出力部のいずれかを判定し、前記判定したIPパケットのヘッダ情報を書き換えるように構成された制御部とを備え、前記判定されたパケット出力部は、前記ヘッダ情報を書き換えたIPパケットを、対応する分配先デバイスに送信するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る映像分配器によれば、IPパケットの分配先を容易に選択することができる。また、その分配先の選択によって、分配先の装置の設定変更を必要としない。さらに、分配対象となるIPパケットに対応する映像または送信元を視覚的に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】従来技術に従った映像処理システムの構成の例を示す図である。
図2】従来技術に従った映像処理システムの構成の別の例を示す図である。
図3図2に示した映像処理システムのさらなる詳細な構成の例を示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る映像分配器の構成の例を示す図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る映像分配器が実行する処理の例を示すフローチャートである。
図6】本発明の第2の実施形態に係る映像分配器の構成の例を示す図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る映像分配器が実行する処理の例を示すフローチャートである。
図8】本発明の第2の実施形態に係る表示部および選択受付部の詳細な構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1の実施形態>
以下、添付図面を参照して、本発明の第1の実施形態に係る映像分配器を説明する。図4は、本発明の第1の実施形態に係る映像分配器の構成の例を示している。
【0022】
第1の実施形態に係る映像分配器41は、パケット入力部411と、パケット出力部412a乃至412hと、制御部413とを備える。それらの要素は、パケット入力部411で受信したIPパケットを制御部413に転送し、制御部413からのIPパケットをパケット出力部412a乃至412hに転送することができるように交互に接続されている。制御部413には、マッピングテーブル414aなどを記憶した記憶部414が接続されている。
【0023】
パケット入力部411は、映像分配器41の入力として、伝送経路420を介してソースデバイス42からIPパケット(IPストリーム)を受信する入力端子である。ここで受信するIPパケットは、ソースデバイス42によって生成され、またはソースデバイス42が伝送(中継)した、映像信号がIPパケット化された一連のIPパケット(IPストリーム)である。パケット入力部411は、伝送経路420と物理的に接続する形状を備えたSFP+(Small Form-factor Pluggable Plus)モジュールであり、IEEE802.3aeで規定された10Gbpsイーサネットの規格に準拠するインタフェースを実装する。
【0024】
パケット出力部412a乃至412hはそれぞれ、制御部413によって分配されたIPパケットを分配先デバイス43a乃至43hにそれぞれ送信する出力端子である。パケット出力部412a乃至412hは、伝送経路430a乃至430hとそれぞれ物理的に接続する形状を備えたSFP+モジュールであり、IEEE802.3aeで規定された10Gbpsイーサネットの規格に準拠するインタフェースを実装する。なお、本実施形態では、映像分配器41が8つのパケット出力部412a乃至412hを有する構成であるが、その数は限定されず、任意の数のパケット出力部を備えてもよい。
【0025】
制御部413は、パケット入力部411が受信したIPパケットをパケット出力部412a乃至412hのいずれかに分配するかを判定し、判定したパケット出力部412a乃至412hのいずれかにIPパケットを分配する制御回路である。制御部413は、CPUやマイクロコントローラなどのプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field Programmable Gate Array)などで実装されてもよいが、その形式は限定されない。
【0026】
記憶部414は、IPパケットの送信元あるいは宛先と分配先デバイス43a乃至43hが接続されたパケット出力部412a乃至412hのいずれかとの対応関係を示すマッピングテーブル414aを記憶した記憶領域である。マッピングテーブル414aの詳細については後述する。記憶部414はRAMなどの揮発性メモリとNVRAMなどの不揮発性メモリとの組み合わせで実装してもよく、または制御部413を実装しているプロセッサ、ASIC、もしくはFPGAの内部で実装されてもよい。
【0027】
次に、図5のフローチャートを参照して、図4で説明した映像分配器41が実行する動作の例を説明する。
【0028】
まず、映像分配器41のパケット入力部411は、映像信号から生成されたIPパケットをソースデバイス42から受信する(ステップS501)。ここで、IPパケットは、RTP/UDP(User Datagram Protocol)のパケットであり、宛先IPアドレスに、少なくとも分配先デバイス43a乃至43hが属するマルチキャストグループのマルチキャストIPアドレスが指定される。宛先MACアドレスも同様に、少なくとも分配先デバイス43a乃至43hが属するマルチキャストグループのマルチキャストMACアドレスが指定される。受信したIPパケットのヘッダ情報は、表1に示す通りである。ここで、ソースデバイス42は、分配先となるデバイスが属するマルチキャストグループごとに異なる映像信号(コンテンツ)を有するIPパケットを送信するので、宛先となるマルチキャストアドレスによってIPパケット(IPストリーム)を識別することができる。
【0029】
【表1】
【0030】
次に、制御部413は、ステップS501で受信したIPパケットの送信元IPアドレスを識別する(ステップS502)。そして、制御部413は、記憶部414に記憶されたマッピングテーブル414a(表2を参照)を参照して、そのIPパケットをパケット出力部412a乃至412hのどの出力ポート番号に出力するかを識別する(ステップS503)。例えば、ソースデバイス42のIPアドレスとパケット出力部412aの出力ポート番号とが対応付けられている場合は、パケット出力部412aにこのIPパケットを送信し、分配先デバイス43aが分配対象の分配先デバイスとなる。
【0031】
【表2】
【0032】
本実施形態では、マッピングテーブル414aにおいて、送信元IPアドレスと、パケット出力部412a乃至412hのいずれかに対応する出力ポート番号とを関連付けているが、そのような形式に限定されない。送信元IPアドレスの代わりに、IPヘッダの宛先IPアドレス、MACヘッダの送信元MACアドレス、宛先MACアドレス、VLANタグ内のVLAN ID、UDPヘッダの送信元ポート番号、宛先ポート番号、RTPヘッダのSSRC(synchronization source)およびCSRC(contributing source)のうちのいずれか、またはそれらのいずれかの組み合わせと、パケット出力部412a乃至412hのいずれかの出力ポート番号とを関連付けてもよい。上述した送信元MACアドレス、宛先MACアドレス、VLANタグ内のVLAN IDなどの情報を「プロトコルヘッダ情報」と称する。
【0033】
ステップS504では、制御部413は、ステップS501で受信したIPパケットのヘッダ情報を、表3に示すように書き換える。
【0034】
【表3】
【0035】
表3の書き換え後の宛先IPアドレス、宛先MACアドレスは分配先デバイス43aを指定するユニキャストのアドレスであってもよく、または分配先デバイス43aが受信可能な所定のマルチキャストアドレスであってもよい。ここで、「分配先デバイス43aが受信可能な所定のマルチキャストアドレス」とは、該当のIPパケットが分配されることになる分配先デバイス(例えば、該当のIPパケットが分配先デバイス43aおよび43bに分配される場合、分配先デバイス43aおよび43b)が属する、書き換え前のマルチキャストアドレスとは異なるマルチキャストアドレスを意味する。また、表3では、送信元IPアドレス、送信元MACアドレス、送信元UDPポート番号および宛先UDPポート番号を書き換えているが、この書き換えは、必須ではないことに留意されたい。また、表3に示したヘッダ情報に加え、VLANタグ内のVLAN ID、RTPヘッダのSSRCおよび/またはCSRCの値を書き換えてもよい。
【0036】
また、表1、表2、および表3で示したIPアドレスなどを相互に関連付けたマッピングテーブルを記憶部414に記憶し、当該マッピングテーブルに基づいて、ヘッダ情報を書き換えてもよい。
【0037】
ステップS505では、パケット出力部412aは、ステップS501で受信したIPパケットを、ステップS503で識別した出力ポート番号に対応する分配先デバイス43aに送信する。
【0038】
本実施形態ではパケット出力部412aのみが出力ポートとなっている例を示しているがそのような例に限定されない。例えば、パケット出力部412a乃至412h内の複数のパケット出力部をマッピングテーブル414a内で送信元IPアドレスに対応付けし、複数の出力ポートにIPパケットを出力し、複数の分配先に分配することも可能である。
【0039】
例えば、SMPTE2022-7では、複数の映像処理装置および複数の伝送経路で冗長化し、IPパケットがロストした場合などに対応する方式を規定している。この方式に従うために、分配先デバイス43a乃至43hのうちのいずれか2つ以上を送信元IPアドレスと関連付けてもよい(この場合、表2で示したマッピングテーブルでは、送信元IPアドレスと、パケット出力部412a乃至412hのうちのいずれか2つ以上の出力ポート番号とが関連付けられる)。
【0040】
以上説明したように、第1の実施形態では、送信元IPアドレスと分配先デバイス43a乃至43hのうちのいずれかとを関連付けて、その指定された分配先デバイスのみにIPパケットを分配するので、特定のIPパケットを特定の分配先デバイスのみに分配することができる。
【0041】
また、分配する際に、宛先IPアドレスなどを書き換えるため、分配対象となるIPパケットで指定された宛先IPアドレスなどの値に関わらず、宛先IPアドレスなどが常に一定となり、分配先デバイス43a乃至43hの設定変更を必要としない。
【0042】
さらに、ソースデバイス42と分配先デバイス43a乃至43hのうちのいずれか2つ以上とを関連付けることによって、上述したSMPTE2022-7に従った冗長構成にも対応することができる。
【0043】
<第2の実施形態>
次に、図6を参照して、本発明の第2の実施形態に係る映像分配器の構成の例を説明する。
【0044】
第2の実施形態に係る映像分配器61は、パケット入力部611と、パケット出力部612a乃至612hと、制御部613とを備えそれらが交互に接続されている。制御部613には、記憶部614と、サムネイル作成部615と、選択受付部616とが接続されている。サムネイル作成部615には表示部617が接続されている。パケット入力部611、パケット出力部612a乃至612h、制御部613、記憶部614は、図4で説明したパケット入力部411、パケット出力部412a乃至412h、制御部413、記憶部414にそれぞれ対応するので説明を省略する。また、ソースデバイス62および分配先デバイス63a乃至63hは、図4で説明したソースデバイス42および分配先デバイス43a乃至43hにそれぞれ対応する。
【0045】
サムネイル作成部615は、パケット出力部612a乃至612hから出力するIPパケットの中から選択受付部616により選択されたIPパケットのRTPペイロードのデータを抽出し伝送されている映像のサムネイル画像を作成する。このサムネイル画像の作成は、伝送されている映像が非圧縮映像の場合は例えば特定の映像フレームをIPストリームより取り出し、ピクセル情報を間引いて縮小することにより行われる。伝送されている映像が圧縮映像の場合には、例えば特定の映像フレームに関するデータをIPストリームより取り出し、デコードした後、ピクセル情報を間引いて縮小することにより行われる。いずれも、FPGA、ASICもしくはCPU、またはマイクロコントローラ上のソフトウエアで実現でき、その形式は限定されない。
【0046】
表示部617は、後述するIPアドレスおよびサムネイル画像などを表示するディスプレイデバイスである。表示部617は、液晶ディスプレイモニタなどで実装され、サムネイル作成部615によって生成されたサムネイル画像などを表示する。
【0047】
選択受付部616は、オペレータによる分配先デバイス63a乃至63hのいずれか、および分配対象となるIPパケットの選択を受け付けるユーザインタフェースである。選択受付部616は、ロータリースイッチ、タッチパネルを含む操作パネル、またはリモートコントローラからの信号を受信する信号受信モジュールであってもよい。
【0048】
次に、図7のフローチャートを参照して、図6で説明した映像分配器61が実行する動作の例を説明する。
【0049】
まず、映像分配器61のパケット入力部610は、映像信号から生成されたIPパケットをソースデバイス62から受信する(ステップS701)が、このステップは、図5で説明したステップS501と同様であるので、その詳細は省略する。
【0050】
次に、制御部613は、ステップS701で受信したIPパケットの送信元IPアドレスを表示部617に表示する(ステップS702)。また、制御部613は、サムネイル作成部615に受信したIPパケットを転送し、サムネイル作成部615は当該IPアドレス(すなわち、IPストリームを送信した送信元)に対応するサムネイル画像を作成し表示部617に表示する(ステップS703)。
【0051】
次に、オペレータが選択受付部616により、ステップS702で表示した送信元IPアドレスを選択した場合、選択受付部616はこの選択を制御部613に通知する(選択を受け付ける)(ステップS704)。また、オペレータが選択受付部616により、ステップS704で選択されたIPアドレスを分配する出力ポート(パケット出力部612a乃至612hのいずれか)を選択した場合、この選択を制御部613に通知する(選択を受け付ける)(ステップS705)。制御部613はこの選択情報を受け、記憶部614内のマッピングテーブル614aを更新する事により、選択されたIPパケットを選択された出力ポートに分配する。図8に、表示部617および選択受付部616の例を示す。
【0052】
図8に示すように、表示部617は、送信元IPアドレスを表示するアドレス表示部617aおよび送信元に対応するサムネイル画像を表示する画像表示部617bを有する。図8の例では、アドレス表示部617aには、映像分配器61が受信した送信元IPアドレスが異なる6つのIPパケット(IPストリーム)に対応するIPアドレスがそれぞれ表示されている。画像表示部617bには、そのIPアドレスに対応する6つのサムネイル画像が表示されている。
【0053】
なお、本実施形態では、表示部617に送信元IPアドレスを表示する例を示しているが、そのような例に限定されない。例えば、表示部617にIPヘッダの宛先IPアドレス、MACヘッダの宛先MACアドレス、VLANタグ内のVLAN ID、UDPヘッダの送信元ポート番号、宛先ポート番号、RTPヘッダのSSRCおよびCSRCのうちのいずれか、またはそれらのいずれかの組み合わせを表示してもよい。この場合は、対応するサムネイル画像も、上記送信元IPアドレスおよび送信元MACアドレスなどのいずれか、またはそれらの組み合わせと関連付けられる。
【0054】
選択受付部616は、パケット出力部612a乃至612hのいずれかを選択する出力ポート選択受付部616aおよび分配対象のIPパケット(IPストリーム)を選択するストリーム選択受付部616bを有する。出力ポート選択受付部616aのロータリースイッチで選択することができる1から8の番号は、パケット出力部612a乃至612hの各出力ポートの選択に対応する。また、ストリーム選択受付部616bのロータリースイッチで選択することができる1から6の番号は、画像表示部617bの左側の1から6の番号に対応する。
【0055】
図8の例では、アドレス表示部617aおよび/または画像表示部617bに表示された6つのアドレス/サムネイル画像のうちのいずれかをストリーム選択受付部616bによって選択され、その選択されたIPストリームを、出力ポート選択受付部616aによって選択された出力ポートに対応する分配先デバイスに分配することになる。
【0056】
このようにして、分配対象となるIPパケットに対応する映像ストリームを送信した送信元およびその分配先を選択し、その選択に従ってIPパケットを分配することができる。送信元に対応するサムネイル画像をも表示するので、映像ストリームを送信した送信元を視覚的に認識することができる。
【0057】
図8の例では、リアルタイムにIPパケット(IPストリーム)に対応するサムネイル画像を表示部617に表示する実施形態を示したが、リアルタイムにサムネイル画像を作成せず、前もって各送信元IPアドレスに対応するサムネイル画像を作成し、記憶部614に記憶し、制御部613が送信元IPアドレスに対応したサムネイル画像を画像表示部617bに表示する実施形態も可能である。この場合、サムネイル画像は、例えば、送信元IPアドレスに対応する送信元を示す事業者などの画像であってもよい。
【0058】
この構成によって、より安価な方法で分配するIPストリームに対応する映像を視覚的に認識して選択することができる。
【0059】
図8の例では、パケット入力部611で受信したIPパケットの送信元IPアドレス、サムネイル画像を表示しているが、パケット出力部612a乃至612hから出力しているIPパケットの送信元IPアドレス、宛先IPアドレス、MACヘッダの宛先MACアドレス、VLANタグ内のVLAN ID、UDPヘッダの送信元ポート番号、宛先ポート番号、RTPヘッダのSSRCおよびCSRCのうちのいずれか、またはそれらのいずれかの組み合わせ(つまり、プロトコルヘッダ情報)と、サムネイル画像を表示する実装形態も可能である。また、図8の例では受信したIPパケットのヘッダ情報とサムネイル画像の2つの情報を表示しているが、どちらか1つの情報のみを表示する構成も可能である。
【0060】
また、図8の例では、ロータリースイッチなどの物理的な選択スイッチで選択受付部616を構成しているが、このような例に限定されない。例えば、選択受付部616を、タッチパネルを含む操作パネルなどで構成し、指などによる接触によって選択を受け付けてもよい。代わりに、選択受付部616を、リモートコントローラから特定の出力ポート/IPパケットの選択を示す信号を受信する信号受信モジュールなどで構成してもよい。後者の構成では、リモートコントローラにも送信元IPアドレス、送信元のサムネイル画像、および/またはIPパケットのサムネイル画像を表示するようにしてもよい。
【0061】
図7の説明に戻ると、ステップS706では、制御部613は、ステップS601で受信したIPパケットのヘッダ情報を書き換える。この書き換えは、例えば、出力ポート選択受付部616aによって分配先デバイスが選択されることになるので、表4に示すようにヘッダ情報を書き換える。
【0062】
【表4】
【0063】
表4の書き換え後の宛先IPアドレス、宛先MACアドレスは、選択された分配先デバイスを指定するユニキャストのアドレスでもよく、または選択された分配先デバイスが受信可能な所定のマルチキャストアドレスであってもよい。ここで、「選択された分配先デバイスが受信可能な所定のマルチキャストアドレス」とは、選択受付部616によって選択された出力ポートに対応する分配先デバイスが属する、書き換え前のマルチキャストアドレスとは異なるマルチキャストアドレスを意味する。また、表4では、送信元IPアドレス、送信元MACアドレス、送信元UDPポート番号および宛先UDPポート番号を書き換えているが、この書き換えは、必須ではないことに留意されたい。また、表4に示したヘッダ情報に加え、VLANタグ内のVLAN ID、UDPヘッダ内の送信元ポート番号、宛先ポート番号、RTPヘッダのSSRCおよび/またはCSRCの値を書き換えてもよい。
【0064】
最後に、出力ポート選択受付部616aで選択された出力ポートに対応するパケット出力部(612a乃至612hのいずれか)は、ストリーム選択受付部616bで選択されたIPパケット(IPストリーム)を対応する分配先デバイス(63a乃至63hのいずれか)に送信する(ステップS707)。
【0065】
図8の実施例では、出力ポート選択受付部616aで選択された出力ポートに、ストリーム選択受付部616bで選択されたひとつの画像(IPストリーム)を出力しているが、そのような例に限定されない。複数の出力ポートに同一の画像を出力し、または1つのポートに複数の画像を出力することは、選択受付部616において、例えば選択するロータリースイッチを増やすなどにより拡張することによって、例えば、パケット出力部612a乃至612h内の複数のパケット出力部をマッピングテーブル614a内で同一の送信元IPアドレスに対応付けし、複数の出力ポートにIPパケットを出力することによって可能であることが明白である。
【0066】
以上説明したように、第2の実施形態では、オペレータなどにより選択されたIPパケットを、選択された分配先デバイスに分配することができるので、ネットワーク機器を知らないオペレータが容易に分配する映像を選択することができる。
【0067】
以上のように、本発明に係る映像分配器を説明した。上述した第1の実施形態および第2の実施形態ではいずれも、分配先デバイスが複数存在する例を説明したが、分配先デバイスが1台であるケースにも本発明に係る映像分配器を適用することができる(つまり、ソースデバイスと分配先デバイスとが1対1の関係)。このケースでは、本発明に係る映像分配器が、IPパケットのアドレス指定などを検証するためのテスタとして機能することになる。
【0068】
最後に、上記実施例で説明した各構成要素が実行する処理、およびその処理の順序は例示的なものであることに留意されたい。また、上記実施例で説明した分配先デバイス、およびパケット出力部などを構成する数は例示的なものであることにも留意されたい。
【符号の説明】
【0069】
615a アドレス表示部
615b 画像表示部
616a 出力ポート選択受付部
616b ストリーム選択受付部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8