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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】光コネクタ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/36 20060101AFI20220426BHJP
   G02B 6/38 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
G02B6/36
G02B6/38
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018110268
(22)【出願日】2018-06-08
(65)【公開番号】P2019003186
(43)【公開日】2019-01-10
【審査請求日】2020-12-18
(31)【優先権主張番号】62/517,172
(32)【優先日】2017-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000147350
【氏名又は名称】株式会社精工技研
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】地引 正幸
(72)【発明者】
【氏名】板垣 孝紀
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0002586(US,A1)
【文献】特開2008-191318(JP,A)
【文献】国際公開第2009/014277(WO,A1)
【文献】特開2011-118348(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0341511(US,A1)
【文献】特許第5702884(JP,B1)
【文献】特開2018-81144(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1519602(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24
6/255
6/36-6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端側にフェルール部を収容し、前記フェルール部に保持された内蔵ファイバと外被を除去して露出された光ファイバとを接続するファイバ接続部を有する光コネクタであって、
前記フェルール部を収容する第1ハウジング部と、
前記第1ハウジング部の後側に配置されて前記ファイバ接続部を収容する第2ハウジング部とを備え、
前記第1ハウジング部と前記第2ハウジング部とを軸線方向を合わせて一方を他方に挿入し、一回転未満の角度で回転させて嵌合し、
前記第1ハウジング部と前記第2ハウジング部の一方は、軸線方向に他方の側に突き出て前記内蔵ファイバを挿通させる筒状に形成されて、周面に径方向に突き出る突起が形成された係合筒部を有し、
前記第1ハウジング部と前記第2ハウジング部の他方は、前記係合筒部を収容可能であるとともに、前記突起が干渉しないで挿入可能な突起逃げ部を有し、かつ、前記突起逃げ部ではない部位の内周面であって前記突起と対面可能な位置に該突起と嵌合可能な係合凹部を形成した、係合受部を有することを特徴とする光コネクタ。
【請求項2】
前記係合筒部の突起は、前記係合筒部における周面で複数個形成され、前記係合受部の前記突起逃げ部と前記係合凹部は、前記複数個の突起に対応して複数個形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光コネクタ。
【請求項3】
前記係合受部の内周面は、前記係合筒部の突起を形成していない部位を収容できる小径部位と、前記係合筒部の突起の高さに対応した大径部位とが形成され、前記係合凹部は前記小径部位に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光コネクタ。
【請求項4】
前記係合筒部は、前記第1ハウジング部の内部から外部に突き出て、所定範囲で移動可能に収容され、前記第1ハウジング部の内部で前端に向けて弾性部材にて付勢して支持されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光コネクタ。
【請求項5】
前記係合筒部と前記係合受部とが嵌合した状態で、回転不能とするように外周を覆うように装着されるツマミを有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光コネクタ。
【請求項6】
前記フェルール部は、前記第1ハウジング部内で所定範囲で移動可能に収容され、前記係合筒部は、その前端で当該フェルール部に突き当たって前端側に付勢していることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の光コネクタ。
【請求項7】
前記第2ハウジング部の後端に装着され、前記外被を前記第2ハウジング部の後端に対して押さえ付ける外被押さえ部材と、
前記外被押さえ部材を収容するように前記第2ハウジング部の後端に装着される外被固定部材とを備え、
前記外被押さえ部材は、前記外被を前記第2ハウジング部の後端の筒状部に対して押さえつけ、前記外被固定部材は、前記外被押さえ部材を収容するように前記第2ハウジング部にねじ込んで固定され、内蔵された抗張力繊維を前記外被と共に前記第2ハウジング部の後端に固定することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェルール部に保持された内蔵ファイバと光ファイバとを接続する光コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
前端側にフェルール部を収容し、このフェルール部に保持された内蔵ファイバと光ケーブルの外被を除去して露出された光ファイバとを接続するファイバ接続部を有する光コネクタが利用されている。
従来、この種の光コネクタとして、特許文献1に示すものが開示されている。同文献には、ファイバ接続部を収容するために、全体で内部に収容空間を形成する樹脂製の前端側部材と後端側部材とを使用している。前端側部材の後部側は筒または柱状となっていて、外面に突起を形成してあり、後端側部材の前部側は、前端側部材の後部側を挿入できる筒状としてあり、筒状とした壁面には前記突起が嵌合可能な凹部を形成してある。該突起は、前端側部材の後部側から前部側に向けて徐々に隆起する斜面を形成し、最も隆起した直後に、垂直面を形成している。前端側部材の後部側の外径と、前端側部材の前部側の内径はほぼ一致している。
【0003】
後端側部材の前端側に、前方から前端側部材の後端側を挿入していくと、前記突起が当接するものの、前記斜面を形成してあるので、無理に押し込むと挿入されていき、該突起と前記凹部とが一致する位置に至ると両者が嵌合する。嵌合後は、前記垂直面が凹部の周面に突き当たり、抜け止めを図る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許5369053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光コネクタの前端側部材は、別部材と接続され、後端側部材は別途光ファイバに接続される。仕様上、光ファイバを支持した状態で引っ張り、前記別部材から離れることのないように、前端側部材と後端側部材との結合耐力が求められている。
上述した従来の光コネクタの場合、上述したような無理嵌めをしているが、引っ張りに対する耐力を上げようとすると無理嵌め時の抗力が大きくなる。必要な耐力を確保し、組み付け作業で許容できる抗力以下とすることが難しかった。
【0006】
本発明は、組み付けが容易で引っ張りに対する対抗力が大きい光コネクタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前端側にフェルール部を収容し、前記フェルール部に保持された内蔵ファイバと外被を除去して露出された光ファイバとを接続するファイバ接続部を有する光コネクタであって、前記フェルール部を収容する第1ハウジング部と、前記第1ハウジング部の後側に配置されて前記ファイバ接続部を収容する第2ハウジング部とを備え、前記第1ハウジング部と前記第2ハウジング部とを軸線方向を合わせて一方を他方に挿入し、一回転未満の角度で回転させて嵌合させる構成としてある。
【0008】
前記構成において、前記第1ハウジング部は、前記フェルール部を収容し、第2ハウジング部は前記第1ハウジング部の後側に配置されて前記ファイバ接続部を収容する。
【0009】
組み付けるときには、前記第1ハウジング部と前記第2ハウジング部とを軸線方向を合わせて一方を他方に挿入し、一回転未満の角度で回転させて嵌合させる。
本発明の他の態様では、前記第1ハウジング部と前記第2ハウジング部の一方は、軸線方向に他方の側に突き出て前記内蔵ファイバを挿通させる筒状に形成されて、周面に径方向に突き出る突起が形成された係合筒部を有し、前記第1ハウジング部と前記第2ハウジング部の他方は、前記係合筒部を収容可能であるとともに、前記突起が干渉しないで挿入可能な突起逃げ部を有し、かつ、前記突起逃げ部ではない部位の内周面であって前記突起と対面可能な位置に該突起と嵌合可能な係合凹部を形成した、係合受部を有する。
【0010】
前記第1ハウジング部と前記第2ハウジング部とを軸線方向を合わせると、前記係合筒部と前記係合受部とが対面する。前記係合受部は前記係合筒部を収容可能である。係合筒部の周面には径方向に突き出る突起が形成されているが、係合受部には前記突起が干渉しないで挿入可能な突起逃げ部を有しているので、前記突起と前記突起逃げ部との位置を合わせれば、前記係合受部に前記係合筒部を挿入して収容できる。前記係合受部における突起逃げ部ではない部位の内周面には、前記突起と対面可能な位置に該突起と嵌合可能な係合凹部を形成してあるため、係合筒部を係合受部に挿入し、前記突起が前記係合凹部に対面するまで一回転未満の角度で回転させると前記第1ハウジング部と前記第2ハウジング部は嵌合される。
【0011】
なお、前記内蔵ファイバは、軸線方向に他方の側に筒状に形成された前記係合筒部と前記係合受部を挿通する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光コネクタは、無理嵌めをせず、一回転未満の角度で回転させて嵌合しており、組み付けが容易で引っ張りに対する対抗力も大きい。また、周面に突起を形成した係合筒部と、突起逃げ部を有する係合受部とを備える場合、前記突起が干渉しないで挿入でき、前記突起を前記係合凹部に対面するまで一回転未満の角度で回転させるだけで前記第1ハウジング部と前記第2ハウジング部を嵌合できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】光コネクタの斜視図である。
図2】各部品の組付斜視図である。
図3】光コネクタの断面図である。
図4】第1ハウジング部の第1の斜視図である。
図5】第1ハウジング部の第2の斜視図である。
図6】フェルール部の斜視図である。
図7】ツマミの斜視図である。
図8】第1ハウジングの斜視図である。
図9】第1ハウジングの断面図である。
図10】第1固定部品の斜視図である。
図11】スプリングの斜視図である。
図12】第2固定部品の斜視図である。
図13】第2固定部品の平面図である。
図14】第2ハウジングの斜視図である。
図15】第2ハウジングを前方正面図である。
図16】融着保護スリーブの斜視図である。
図17】外被固定部材の斜視図である。
図18】ブーツの斜視図である。
図19】外被押さえ部材の斜視図である。
図20】光ケーブルの先端部分の平面図である。
図21】光コネクタの斜視図である。
図22】光コネクタの断面図である。
図23】第2ハウジングの斜視図である。
図24】ブーツの斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面にもとづいて本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる光コネクタを斜視図により示しており、図2は各部品の組付斜視図により示しており、図3は断面図により示している。図1および図2の紙面において、左下方を前方および前端側、右上方を後方および後端側、上方を上方、下方を下方、手前側を右面側、背面側を左面側と呼ぶことにする。
同図において、第1ハウジング部10は、筒状に形成され、フェルール部20を収容する。第1ハウジング部10は、第1ハウジング30と、第1固定部品40と、スプリング50と、第2固定部品60とを備えている。第2ハウジング部70は、第2ハウジング80と、融着保護スリーブ90と、外被固定部材100と、ブーツ110と、外被押さえ部材120とを備えている。また、第1ハウジング部10から第2ハウジング部70の先端を覆うツマミ130が備えられている。図2に示すように、各部品は、後述する光ファイバーを軸線とする方向に挿入して装着されている。以下、各部について説明する。
図4図5は、第1ハウジング部10を異なる視点による斜視図により示している。図4は正面左上方から見下ろした斜視図により示しており、図5は正面右下から見上げる斜視図により示している。
【0015】
図6は、フェルール部の斜視図である。
フェルール部20は、円柱状の本体部21にて内蔵ファイバ22を貫通させて保持しており、本体部21の後端からは所定長の該内蔵ファイバ22が露出している。また、本体部21における前端側から所定長の位置には径方向に拡大する鍔状のフランジ部23が形成されている。
【0016】
図7は、ツマミの斜視図である。
第1ハウジング30と第2ハウジング80の前端部分とが概ね断面矩形の角柱状に形成されているのに対応して、ツマミ130は、これらを収容可能なように、第1ハウジング30の先端から第2ハウジング80の前端部分を覆う角筒状に形成されている。これにより、第1ハウジング30の先端から第2ハウジング80の前端部分をツマミ130に挿入した状態では、第1ハウジング30と第2ハウジング80とは挿入時の角度を保持され、相対的に自由に回転することはできない。
第1ハウジング30と第2ハウジング80には、後述する係合筒部66と係合受部86とが形成されており、ツマミ130は両者が嵌合した状態で回転不能とするように外周を覆うように装着されることになる。
【0017】
図8は、第1ハウジングを斜視図により示しており、図9は断面図により示している。
第1ハウジング30は概略角筒状に形成されている。第1ハウジング30は内部に仕切り壁31が形成されており、後方側からフェルール部20を挿入すると、フェルール部20の円柱状の本体部21は該仕切り壁31に形成された貫通穴31aを貫通するもののフランジ部23は該仕切り壁31に突き当たる。突き当たる位置がフランジ部23の最前端位置となり、このときにフェルール部20の前端が第1ハウジング30の前端から所定長さだけ突き出た位置となる。
【0018】
第1ハウジング30に対して、その後方からフェルール部20と、第1固定部品40と、スプリング50と、第2固定部品60の順番で挿入されることになる。以下、各部品について説明する。
フェルール部20の後方側から第2固定部材60と、スプリング50と、第1固定部材40とを装着する。
図10は、第1固定部品の斜視図であり、図11は、スプリングの斜視図であり、図12は、第2固定部品の斜視図である。
第1固定部材40は、筒状部41と、筒状部41の後方の蓋部42とから形成されており、第1ハウジング30の後端側の開口32に装着する。第1ハウジング30内に挿入される筒状部41の外側の周面には突起43が形成されており、一方、第1ハウジング30の後端側の周壁面には該突起43に対面する位置には開口33が形成されている。これにより、第1ハウジング30の後方から第1固定部材40を挿入していくと、筒状部41が第1ハウジング30内に進入していく。このとき、突起43の隆起分だけ第1ハウジング30の後端側の周壁は外側に押し広げられる。第1ハウジング30はこのように押し広げられるのに対応して、後端側周壁の上壁面と下壁面には、後端から前方に向けて所定長さに亘って切り欠き部34が形成されている。
【0019】
第1固定部材40の蓋部42が第1ハウジング30における開口32の縁部に突き当たる位置まで挿入していくと、突起43が開口33に対面し、両者が嵌合する。この時点で突起43の隆起分は開口33内に収まるので、押し広げられていた第1ハウジング30の後端側の周壁は元の外形に戻る。なお、第1固定部材40の筒状部41における外周面には、第1ハウジングの切り欠き部34に対応する位置に当該切り欠き部34に挿入可能な凸部45を形成してあるので、両者が凹凸嵌合することで位置決めの作用を奏している。
【0020】
第1固定部材40は、このようにして第1ハウジング30に嵌合されるが、その前に第2固定部材60にスプリング50と第1固定部材40とを挿通しておく。第2固定部材60は、前端の鍔状部61と、筒状の本体部62とを備えている。本体部62はスプリング50を挿通できる筒状に形成されており、スプリング50は、第2固定部材60における前端の鍔状部61と第1固定部材の筒状部41の外径とほぼ同一となっている。また、第2固定部材60の本体部62は、第1固定部材40の筒状部41に挿入できる大きさとなっている。このため、第2固定部材60の本体部62をスプリング50に挿入し、さらに第1固定部材40の筒状部41に挿入すると、スプリング50は鍔状部61と筒状部41との間に挟まれた状態で支持される。
【0021】
第2固定部材60にスプリング50とともに挿通された第1固定部材40を第1ハウジング30の開口32から挿入するときは、あらかじめ挿入されているフェルール部20の内蔵ファイバ22を第2固定部材60の本体部62に挿通させた状態としておく。すると、フェルール部20における本体部21も第2固定部材60の本体部62に挿入されるが、この本体部62の前端はフランジ部23に突き当たる。第2固定部材60はスプリング50を介して第1固定部材40に弾性支持されている状態であり、この第2固定部材60が前方側で突き当たるフェルール部20もスプリング50を介して第1固定部材40に支持される。この結果、フェルール部20は、第1ハウジング30内において、最前端の位置では仕切り壁31に突き当たることでそれ以上は前方へ移動しないように規制されるものの、後方側についてはスプリング50が収縮可能な長さに亘っては該スプリング50の弾力によって弾性支持されていることになる。
【0022】
図13は、第2固定部品の平面図である。
第2固定部材60の本体部62は概ね円筒形状であるが、その周面を所定位置で切削した形状としている。まず、上下の周面部分を後端側から前方に向けて所定長さだけ鉛直方向に切り欠いた平面部63を形成してある。平面部63を形成した部分の断面は概略矩形状ともいえる。むろん、平面部63を形成していない部分は円筒形状となる曲面のままである。
【0023】
第2固定部材60における後端側であって、平面部63を形成した部分に対応して、第1固定部材40の筒状部41における内周面には平面部63に対面する直壁面44aと円筒の曲面に対面する円筒面44bとを形成してある。このような断面形状とすることにより、平面部63を形成している長さに限って第2固定部材60の本体部62を第1固定部材40の筒状部41に挿入できるし、挿入した状態で第1固定部材40と第2固定部材60の角度は固定されることになる。
【0024】
第2固定部材60における後端側の所定範囲は係合筒部66となる。この係合筒部66について説明する。
第2固定部材60の本体部62の後端近辺では上下の平面部63に加えて左右の面を切削することで後端に突起64が残るように切削部65を形成してある。すなわち、突起64の手前側(前方側)を周面方向に沿って所定距離だけ平面状に切削している。突起64の外周面は本体部62の外周面とほぼ同じ径ではあるが、その手前側(前方側)に切削部65を形成してあるので、それとの比較で隆起しているといえる。第2固定部材60における後端側の突起64と切削部65を形成した部位が係合筒部66に相当する。少なくとも切削部65と突起64とが第1固定部材40を貫通して後方側へ突き出る程度に第2固定部材60は第1固定部材40を貫通しており、さらに平面部63に余裕があるので第2固定部材60は後方側へわずかに移動できる。この移動可能な長さがフェルール部20が弾性支持されて後方へ移動できる長さとなる。
【0025】
図14は、第2ハウジングの斜視図であり、図15は、第2ハウジングを前方側から見た図である。
第2ハウジング80は、前端側が概ね断面矩形形状となる概略角形筒状に形成され、後端側は断面円形形状となる概略円筒状に形成されている。第2ハウジング80はフェルール部20の内蔵ファイバ22と光ケーブルの外被を除去して露出された光ファイバとを接続するファイバ接続部を収容するため、筒状に形成されている。
【0026】
第2ハウジング80の前端の開口81は概ね円形であるが、第1固定部材40から突出する第2固定部材60の外形に対応した断面形状としてある。第2ハウジング80の開口81に第2固定部材60の係合筒部66が挿入されるため、この部位が係合受部86に相当する。係合受部86は係合筒部66を挿入した後、互いに相対的に90度回転させて嵌合される。このため、係合受部86の内周面等を以下のように形成してある。
係合受部86の内周面には、第1固定部材40の筒状部41と同様に平面部63に対面する直壁面81aと円筒の曲面に対面する円筒面81bとを形成してある。また、開口端から所定長さに亘って上壁面と下壁面を切り欠いて切り欠き部82が形成されている。
係合受部86の開口端からわずかな長さだけについては円筒となっており、その後ろ側(奥側)を直壁面81aと円筒面81bと呼んでいる。円筒となっている長さは係合筒部66における切削部65の長さよりもやや短い。第1ハウジング30を組み付けたときに第2固定部材60の本体部62における係合筒部66は固定部材40から突出する。係合筒部66の切削部65と突起64が第1固定部材40から突き出ており、この部位が係合受部86に挿入される。開口端の円筒状の部位から先には直壁面81aが形成されるが、前記切削部65の長さだけ奥側に位置するところに前記突起64に対面するように係合凹部83を形成してある。従って、突起64は係合凹部83の形成位置まで挿入されることになる。突起64が係合受部86に挿入されていくとき、円筒面となっている部位を通過していく。すなわち、開口の円筒部分と、それに続く円筒面81bである。この突起64が通過する部位に相当する円筒面81bの部位が突起逃げ部に相当する。
【0027】
後述するようにして内蔵ファイバ22と光ファイバとを接続した後、第2ハウジング80と第1ハウジング30とを軸線方向に沿って近づけてくると、第2ハウジング80の開口81に第2固定部材60の本体部62が挿入し始める。すなわち、係合受部86に係合筒部66が挿入し始める。本体部62の後端の外形形状にほぼ一致するように開口81には直壁面81aと円筒面81bとが形成してあるので、対応する相対角度に維持したまま、第2ハウジング80を第1ハウジング30の開口を塞いでいる第1固定部材40に突き当たるまで挿入することができる。
【0028】
第2固定部材60における本体部62の突起64は本体部62の円柱表面とほぼ同じ高さであり、第2ハウジング80の円筒面81bも本体部62の円筒面とほぼ同じ大きさとなっているので、突起64は第2ハウジング80と干渉することなく挿入可能である。
【0029】
次に、第2ハウジング80を第1ハウジング30に対して90度回転させる。すると、円筒面81bに対面していた突起64は直壁面81aに対面するように回転させられるので、突起64の隆起分だけ直壁面81aは外側に押し広げられる力を受ける。押し広げられる分は切り欠き部82が広がることで吸収し、大きな抗力を生じさせることなく、第2ハウジング80を第1ハウジング30に対して90度回転させることができる。第2ハウジング80を第1ハウジング30に対して90度回転させると、突起64が直壁面81aに形成した係合凹部83に対面して入り込み、押し広げられて撓んでいた第2ハウジング80は元の形に戻り、これによって突起64と係合凹部83とがしっかり嵌合される。
このように、第1ハウジング30と第2ハウジング80とを軸線方向を合わせて一方を他方に挿入し、一回転未満の角度で回転させて嵌合することができる。
【0030】
本実施例では、第1ハウジング30と、これに収容される第1固定部材40とスプリング50と第2固定部材60とで、第1ハウジング部10を構成している。第2ハウジング80と、後述する外被固定部材100と、ブーツ110と、外被押さえ部材120とで、第2ハウジング部70を構成している。第2ハウジング部70は、第1ハウジング部10の後側に配置されている。両者の嵌合部分は、実質的には、第2固定部材60における本体部62の突出部位と第2ハウジング80の開口近辺で該突出部位を収容している部位である。
【0031】
第2固定部材60における本体部62の突出部位は、軸線方向に他方の側に突き出て前記内蔵ファイバを挿通させる略円筒状に形成されて、周面に径方向に突き出る突起64が形成された係合筒部66に相当する。また、第2ハウジング80の開口近辺で該突出部位を収容している部位は、前記係合筒部66を収容可能であるとともに、前記突起64が干渉しないで挿入可能な軸線方向に沿う円筒面81b(突起逃げ部)を有し、かつ、前記円筒面81ではない部位(直壁面81a)の内周面であって前記突起64と対面可能な位置に該突起64と嵌合可能な係合凹部83を形成した係合受部86に相当する。これらの形状の対で係合構造を構成しており、いずれが第1ハウジング部10にあり、いずれが第2ハウジング部70にあってもよい。
【0032】
本実施例の場合、突起64は本体部62の上面と下面の対象位置に二つ形成され、円筒面81bと係合凹部83はこれに対応して対象位置に二つ形成されている。しかし、挿入して一回転未満の回転で嵌合できればよく3つ以上の対象位置に組として形成するようにしてもよい。
このように、前記係合筒部66の突起64は、前記係合筒部66における周面で複数個形成され、前記係合受部86の円筒面81bと係合凹部83は、前記複数個の突起に対応して複数個形成されてもよい。
【0033】
また、前記係合受部86の内周面では、前記係合筒部66の突起64を形成していない部位である切削部65を収容できる直壁面81aが小径部位に相当し、前記突起64の高さに対応して本体部62の外形と一致する円筒面81bが大径部位に相当し、前記係合凹部83は前記小径部位に形成されている。
上述したように、ツマミ130は、第1ハウジング30と第2ハウジング80の前端部分とが概ね断面矩形の角柱状に形成されていることに対応しており、これらの部分を覆うように装着される。装着するのは第1ハウジング30に第2ハウジング80を挿入後、90度回転して嵌合させた後である。ツマミ130を装着することで第1ハウジング30に第2ハウジング80とが自由に回転できなくなるため、嵌合が解除されることを防止できる。また、第1ハウジング30に第1固定部材40を嵌合するとき、および、第2ハウジング80を第1ハウジング30に対して90度回転させるとき、突起43と突起64の隆起分だけ撓みやすいように切り欠き部34,82を形成してある。切り欠き部34,82を形成することで撓みやすくなって組付作業が容易になる反面、強い力がかかれば撓んで外れやすいともいえる。しかし、本実施例のようにツマミ130を装着することで外側から押さえ、切り欠き部34,82で押し広げられないようにすることで、強い力がかかっても撓んで押し広げられるということが不可能になり、引っ張り力に対する抗力をあげるように作用する。
【0034】
上述したように、フェルール部20は、第1ハウジング30内でスプリング50が収縮可能な距離である所定範囲で移動可能に収容されており、係合筒部66となる第2固定部材60は、その前端でフェルール部20のフランジ部23に突き当たっており、スプリング50によって該フェルール部20を前端側に付勢している。
言い換えると、前記係合筒部66である第2固定部材60は、前記第1ハウジング部10の内部から外部に突き出ており、所定範囲で移動可能に収容され、さらに、前記第1ハウジング部10の前記第1ハウジング30内部で前端に向けて弾性部材である前記スプリング50によって付勢されている。
【0035】
第1ハウジング部10と、第2ハウジング部70とを嵌合させる構造および作用については上述したとおりである。次に、光ケーブルの光ファイバとフェルール部20の内蔵ファイバ22とを接続して光コネクタとする組付工程について説明する。
図16は、融着保護スリーブの斜視図であり、図17は、外被固定部材の斜視図であり、図18は、ブーツの斜視図であり、図19は、外被押さえ部材の斜視図である。
【0036】
第2ハウジング部70は、第2ハウジング80とともに、融着保護スリーブ90と、外被固定部材100と、ブーツ110と、外被押さえ部材120を備えている。
外被固定部材100は、第2ハウジング80の後端部位を収容可能な概ね円筒状に形成され、前端側の内周面には、第2ハウジング80の後端部位の外周面に形成した雄ねじ84に螺合可能な雌ねじ101を形成してある。外被固定部材100の後端側の開口103は胴体部位102よりもやや小さな径としてある。これはブーツ110の先端側に形成した鍔部111よりも小径となるようにするためであり、これによりブーツ110を外被固定部材100の前端側の開口から挿入すると、ブーツ110の鍔部111が開口103の縁部に突き当たり、外被固定部材100とブーツ110とが一体化される。
【0037】
図20は、光ケーブルの先端部分を示している。
光ケーブルCは、光ファイバ芯線を外被で覆って形成してある。その構造は、光ファイバC4を含む光ファイバ芯線C5の周囲を抗張力繊維C2と外被C1とで覆っている。
光ケーブルを後端から外被固定部材100とブーツ110とに挿通し、さらにカップ形状の外被押さえ部材120と第2ハウジング80を挿通させる。図20に示すように、光ケーブルCの先端側から所定長に亘って外被C1を切り裂く。これにより外被C1から抗張力繊維C2が露出し、さらに抗張力繊維C2をかき分けることで光ファイバ芯線C5が露出する。光ファイバ芯線C5については、光ファイバC4の周囲を保護部材C3で被覆しており、この保護部材C3を取り去って光ファイバC4を露出させる。光ファイバC4は融着保護スリーブ90を挿通させる。融着保護スリーブ90を通過した光ファイバC4の先端を所定の器具を用いてフェルール部20から突出する内蔵ファイバ22の後端に融着固定し、融着保護スリーブ90を前方に移動させてこの融着部位を保護する。
【0038】
この後、第2ハウジング80を前方に移動させて第2固定部材60と嵌合させる。この状態で光ケーブルの外被は第2ハウジング80の後端のテーパー状とした筒状部85を覆う状態となっているので、カップ状の外被押さえ部材120を前方に移動させると、外被押さえ部材120と筒状部85との間で光ケーブルの外被C1と抗張力繊維C2が挟まれる。外被固定部材100を前方に移動させるとともに、その雌ねじ101を第2ハウジング80の雄ねじ84に螺合させると外被押さえ部材120は徐々に前進するが、筒状部85の外周面は前端に向かうほど径の大きくなるテーパー状となっているので、間に挟まれる外被と抗張力繊維を強く押さえつける作用をし、外被と抗張力繊維は強固に固定される。また、筒状部85は周面に沿って凹凸部が交互に連続して形成されている。従って、外被固定部材100との間に隙間の大きい部分と狭い部分とが連続して形成されるが、この間に外被や抗張力繊維を挟み込むことで、該外被や抗張力繊維が部分的に強く圧縮されたり弱く圧縮されたりし、結果的に抜けにくくすることができる。また、外被押さえ部材120は、前端側の開口が後端側よりも広いテーパー形状の周壁面を有し、また、該周壁面には前端側から後方に向けて二つの切り欠き121を形成してあるので、前端側の開口が広がりやすくなっている。外被を開いて抗張力繊維が露出しているときに、カップ状の外被押さえ部材120を前方に移動させ、該抗張力繊維を満遍なく筒状部85の周りに広げつつ押さえる。このときに開口端側が広がりやすいので、広がってしまう抗張力繊維を要領よく外被押さえ部材120で押さえつけることができる。
【0039】
このように、外被押さえ部材120は、光ケーブルの外被を第2ハウジング80の後端の筒状部85に対して押さえつけ、外被固定部材100は、外被押さえ部材120を収容するように第2ハウジング80にねじ込んで固定され、光ケーブルに内蔵された抗張力繊維を外被と共に前記第2ハウジング80の後端に固定する。このとき、雄ネジ84を覆うように配置された抗張力繊維を雄ネジ84と雌ネジ101とで挟み込む。この結果、光ケーブルは第2ハウジング80に強力に固定され、引っ張り強度を向上させることができる。本実施例では、第2ハウジング80に光ケーブルを固定する光コネクタとして実現しているが、光ケーブル以外にも光ファイバを収容するものをフェルール部に連結する光コネクタとして広く適用可能である。
以上のようにして光ケーブルを第2ハウジング80の後端に固定した後、ツマミ130を含む第1ハウジング部10を図示しないアダプタ側に挿入し、該アダプタ側と第1ハウジング部10とが嵌合した状態で光ケーブルを引っ張る。従来の光コネクタの場合、第1ハウジング部10と第2ハウジング部70とは一体となって嵌合されており、光コネクタの側から引っ張れば、第1ハウジング部10とアダプタの嵌合部位で全荷重を支えることになる。あるいは、第1ハウジング部10と第2ハウジング部70との嵌合部位で全荷重を支えることになる。瞬間的にわずかな時間だけ引っ張り力がかかっても同様である。
【0040】
しかしながら、上述した本実施例の場合は、光ケーブルは第2ハウジング80の後端に固定されているので、光ケーブルを引っ張れば第2ハウジング80には全荷重がかかる。第2ハウジング80の先端は第1ハウジング30内でスプリング50を介して弾性支持されている第2固定部材60に嵌合しており、第2固定部材60にはわずかながら移動可能な状態で支持されているため、光ケーブルを引っ張ったときにはその引っ張り力がスプリング50でも支持される。スプリング50のような弾性部材が介在していることで、瞬発的に大きな引っ張り力が生じても、弾性部材で瞬発力を吸収し、わずかな時間の遅れを経て第1ハウジング部10とアダプタとの嵌合部位で支持されることになる。この結果、全体として引っ張り力に耐える力が大きくなっている。
【0041】
また、引っ張り力は各部の嵌合部位が外れるように周壁を押し広げようとするものの、押し広げられる部位を外側からツマミ130が覆っているので、押し広げることができず、嵌合部位が外れないようにしている。このような耐力があるものの、組立時はツマミ130を装着していないので、突起43や突起64の隆起分によって周壁が比較的容易に外側に撓んで逃げることができ、組立作業は容易である。
上述した実施例は、光ファイバ芯線を外被と抗張力繊維で被覆した光ケーブルを接続している。しかし、光ケーブルは、このような外被や抗張力繊維を備えていない細径のものもある。
図21から図24はこのような細径の光ケーブルを接続する光コネクタを示している。
図21は、光コネクタの外観を斜視図により示しており、図22は、断面図により示している。
同図において、第1ハウジング部10は、筒状に形成され、フェルール部20を収容する。第1ハウジング部10は、第1ハウジング30と、第1固定部品40と、スプリング50と、第2固定部品60とを備えている。第2ハウジング部270は、第2ハウジング280と、融着保護スリーブ290と、ブーツ310とを備えている。また、第1ハウジング部10から第2ハウジング部70の先端を覆うツマミ130が備えられている。
本実施例と、先の実施例とを対比すると、第2ハウジング部270は、第2ハウジング部70に相当し、第2ハウジング280は、第2ハウジング80に相当し、融着保護スリーブ290は、融着保護スリーブ90に相当し、ブーツ310は、ブーツ110に相当する。
光ケーブルが、外被や抗張力繊維を備えていないので、外被固定部材100と、外被押さえ部材120に相当する部品はない。
図23は、第2ハウジングの斜視図である。
第2ハウジング280の先端側は、第2ハウジング80とほぼ同一である。後端側については、外被を抑え込んで支持する構成でないため、相違している。なお、本実施例において、直壁面281aは直壁面81aに相当し、円筒面281bは円筒面81bに相当し、切り欠き部282は切り欠き部82に相当し、係合凹部283は係合凹部83に相当する。
図24は、ブーツの斜視図である。
ブーツ310の前端は、第2ハウジング280の後端に挿入して嵌合固定する。
本実施例においても、係合筒部66と係合受部286とで嵌合し、第1ハウジング部10と第2ハウジング部270とが嵌合する。
【0042】
なお、本発明は前記実施例に限られるものでないことは言うまでもない。当業者であれば言うまでもないことであるが、
・前記実施例の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること
・前記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって前記実施例の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
・前記実施例の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が前記実施例の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
は本発明の一実施例として開示されるものである。
【符号の説明】
【0043】
10…第1ハウジング部、20…フェルール部、21…本体部、22…内蔵ファイバ、23…フランジ部、30…第1ハウジング、31…仕切り壁、31a…貫通穴、32…開口、33…開口、34…切り欠き部、40…第1固定部品、41…筒状部、42…蓋部、43…突起、44a…直壁面、44b…円筒面、45…凸部、50…スプリング、60…第2固定部品、61…鍔状部、62…本体部、63…平面部、64…突起、65…切削部、70…第2ハウジング部、80…第2ハウジング、81…開口、81a…直壁面、81b…円筒面、82…切り欠き部、83…係合凹部、85…筒状部、90…融着保護スリーブ、100…外被固定部材、101…雌ねじ、102…胴体部位、103…開口、110…ブーツ、111…鍔部、120…外被押さえ部材、121…切り欠き、130…ツマミ、270…第2ハウジング部、280…第2ハウジング、281a…直壁面、281b…円筒面、282…切り欠き部、283…係合凹部、286…係合受部、290…融着保護スリーブ、310…ブーツ。
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