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特許7063459咀嚼機能評価システム及び咀嚼機能評価方法並びに評価機能評価プログラム
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  • 特許-咀嚼機能評価システム及び咀嚼機能評価方法並びに評価機能評価プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】咀嚼機能評価システム及び咀嚼機能評価方法並びに評価機能評価プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20220426BHJP
【FI】
A61B5/11 300
A61B5/11 ZDM
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018159160
(22)【出願日】2018-08-28
(65)【公開番号】P2020031764
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】507184591
【氏名又は名称】株式会社エグザマスティカ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】早船 康二
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/020588(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/060353(WO,A1)
【文献】特開2011-103586(JP,A)
【文献】特開2015-001376(JP,A)
【文献】特開2014-147546(JP,A)
【文献】特開平4-005958(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0017101(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06- 5/22
A61C 1/00- 5/00
A61C 5/40- 5/68
A61C 5/90- 7/36
A61C 19/00-19/10
A61G 15/14-15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材に含有された微粒子とを有する咀嚼機能評価用人工食塊を用いて、ヒトの咀嚼機能の評価を行うための解析装置を含む咀嚼機能評価システムであって、
前記解析装置は、
圧延された前記咀嚼機能評価用人工食塊の画像データに含まれる前記微粒子のうち、外径が所定の外径よりも小さい小径微粒子と、外径が所定の外径よりも大きい大径微粒子の数をそれぞれ計数し、
前記咀嚼機能評価用人工食塊に含まれる前記小径微粒子の基準数と、前記計数された前記小径微粒子の数と、に基づいて、小径微粒子咀嚼率を算出するとともに、
前記咀嚼機能評価用人工食塊に含まれる前記大径微粒子の基準数と、前記計数された前記大径微粒子の数と、に基づいて、大径微粒子咀嚼率を算出する、
ことを特徴とする咀嚼機能評価システム。
【請求項2】
前記解析装置が、ユーザー端末であることを特徴とする請求項1に記載の咀嚼機能評価システム。
【請求項3】
前記解析装置が、ユーザー端末とネットワークを介して接続されるサーバーコンピュータであり、
前記サーバーコンピュータは、前記ユーザー端末から送信された前記画像データに基づいて前記小径微粒子咀嚼率及び前記大径微粒子咀嚼率を算出するとともに、前記小径微粒子咀嚼率及び前記大径微粒子咀嚼率を前記ユーザー端末に送信するように構成することを特徴とする請求項1に記載の咀嚼機能評価システム。
【請求項4】
基材と、該基材に含有された微粒子とを有する咀嚼機能評価用人工食塊を用いて、ヒトの咀嚼機能の評価を行う咀嚼機能評価方法であって、
圧延された前記咀嚼機能評価用人工食塊の画像データに含まれる前記微粒子のうち、外径が所定の外径よりも小さい小径微粒子と、外径が所定の外径よりも大きい大径微粒子の数をそれぞれ計数し、
前記咀嚼機能評価用人工食塊に含まれる前記小径微粒子の基準数と、前記計数された前記小径微粒子の数と、に基づいて、小径微粒子咀嚼率を算出するとともに、
前記咀嚼機能評価用人工食塊に含まれる前記大径微粒子の基準数と、前記計数された前記大径微粒子の数と、に基づいて、大径微粒子咀嚼率を算出する、
ことを特徴とする咀嚼機能評価方法。
【請求項5】
請求項4に記載の咀嚼機能評価方法をコンピュータにより実行させるためのプログラム。
【請求項6】
請求項5に記載のプログラムを記録したコンピュータ可読記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、咀嚼により微細に粉砕する性質を有する球形微粒子を含有する人工食塊を用いて咀嚼機能評価を行う咀嚼機能評価装置及び咀嚼機能評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
咀嚼、すなわち、食物をかみ砕き、唾液とよく混和させ、適当な大きさで水気のある食塊を作り、飲み込む準備をする行為は、ヒトが固形物を食べるために必要であるほか、覚醒効果やリラックス効果を得られたり、肥満,ぼけ,視力低下,姿勢悪化,むし歯,ガンなどを予防し、脳内の血液量の増加による加齢変化の抑制などの効果も得られるとされている。
【0003】
この咀嚼の能力(咀嚼効率)は、歯数,歯の健否,咬合面の形態,歯周組織の状態,顎型,咀嚼筋力,下顎運動様式,年齢,補綴物の状態など、無数の条件に影響されるものである。
【0004】
このような咀嚼効率を定量化するため、本発明者等は、「咀嚼により微細に粉砕、すり潰される性質を有するほぼ均一な球形微粒子」を含有した人工食塊、および、この人工食塊を用いて咀嚼機能を評価するシステムを開発した(特許文献1)。
【0005】
この咀嚼機能評価システムは、咀嚼により微細に粉砕、すり潰され、咀嚼されないときは球形の形状を有する微粒子を含有する人工食塊をヒトに咀嚼させる工程と、この咀嚼された人工食塊を2枚のプレパラートの間に挟んで微粒子を押し潰さない程度の適切な厚みに圧延する工程と、この2枚のプレパラートの間に圧延された人工食塊中の残存する球形の形状を有する微粒子を計数する工程を含んでいる。
【0006】
この咀嚼機能評価システムで用いられる人工食塊は、例えば、ポリイソブチレンからなる基材に、天然ワックスの一種であるカルナバワックスをほぼ均一な球形微粒子に調整したものが練和、含有されている。
【0007】
一般的に、咀嚼の時には、上下の歯が各々100μm程度変異することが知られている。このため、「咀嚼により微細に粉砕、すり潰される微粒子」とするため、微粒子の直径は約100~500μmとしている。
【0008】
このような大きさの微粒子を含有する人工食塊をヒトに咀嚼させ、この咀嚼させた人工食塊を2枚のプレパラートの間に挟んで微粒子を押し潰さない程度の適切な厚みに圧延して、この2枚のプレパラートの間に圧延された人工食塊中の残存する球形の形状を有する微粒子を計数することによって咀嚼効率を定量化している。
【0009】
なお、咀嚼効率を精度良く検査するために、人工食塊には約2000個の微粒子が含有されており、人工食塊中に微粒子が均一に分散している。これによって、人工食塊の個体差(例えば、人工食塊中に含まれる微粒子の数など)により生じる検査結果の誤差を抑制することができる。
【0010】
また、本発明者等は、このような人工食塊を用いた咀嚼効率の検査を、ユーザーがスマートフォンなどを用いて自身で行えるようにするため、人工食塊に含まれる微粒子の大きさを500μm~2mmとしたものも開発している(特許文献2)。
【0011】
このように微粒子の大きさを大きくすることにより、専用に設計された撮影装置や計数システムを用いずとも、スマートフォンなどにより撮影した写真データを用いて、人工食塊中の残存する球形の形状を有する微粒子を計数することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】国際公開公報第2008/020588号
【文献】国際公開公報第2017/130948号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、所望の外形を有する微粒子を含む人工食塊を製造しようとした場合、所望の外形よりも小さい微粒子や大きい微粒子が含まれてしまう。このため、このような人工食塊をユーザーが咀嚼した場合、大きい微粒子は咀嚼により潰されやすく、一方で小さい微粒子は潰されにくいという偏りが生じる。
【0014】
このような偏りは、歯周組織が弱っていたり、入れ歯をしているユーザーに顕著であり、特に、歯周病に罹患していたり、入れ歯が合っていない場合には、外径が小さい微粒子をほとんど潰すことができない場合がある。
【0015】
また、歯は歯根膜により、噛むことでわずかに沈んだり揺れが生じたりする。このため、しっかりと噛めていないと、大きい微粒子は潰せても、小さい微粒子は潰すことが難しい。
【0016】
本発明では、このような現状に鑑み、微粒子を含む人工食塊を用いて、歯周病の早期発見や、使用している入れ歯が合っているか否かを、また、ユーザーがしっかりと噛んで咀嚼をすることができているかを、ユーザー自身によって簡易的に知ることができる咀嚼機能評価システム及び咀嚼機能評価方法並びに咀嚼機能評価プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、前述したような課題を解決するために発明されたものであって、本発明の咀嚼機能評価システムは、
基材と、該基材に含有された微粒子とを有する咀嚼機能評価用人工食塊を用いて、ヒトの咀嚼機能の評価を行うための解析装置を含む咀嚼機能評価システムであって、
前記解析装置は、
圧延された前記咀嚼機能評価用人工食塊の画像データに含まれる前記微粒子のうち、外径が所定の外径よりも小さい小径微粒子と、外径が所定の外径よりも大きい大径微粒子の数をそれぞれ計数し、
前記咀嚼機能評価用人工食塊に含まれる前記小径微粒子の基準数と、前記計数された前記小径微粒子の数と、に基づいて、小径微粒子咀嚼率を算出するとともに、
前記咀嚼機能評価用人工食塊に含まれる前記大径微粒子の基準数と、前記計数された前記大径微粒子の数と、に基づいて、大径微粒子咀嚼率を算出する、
ことを特徴とする。
【0018】
このような咀嚼機能評価システムでは、前記解析装置として、ユーザー端末を用いることができる。
【0019】
また、前記解析装置として、ユーザー端末とネットワークを介して接続されるサーバーコンピュータを用いることもでき、この場合には、
前記サーバーコンピュータは、前記ユーザー端末から送信された前記画像データに基づいて前記小径微粒子咀嚼率及び前記大径微粒子咀嚼率を算出するとともに、前記小径微粒子咀嚼率及び前記大径微粒子咀嚼率を前記ユーザー端末に送信するように構成することが好ましい。
【0020】
また、本発明の咀嚼機能評価方法は、
基材と、該基材に含有された微粒子とを有する咀嚼機能評価用人工食塊を用いて、ヒトの咀嚼機能の評価を行う咀嚼機能評価方法であって、
圧延された前記咀嚼機能評価用人工食塊の画像データに含まれる前記微粒子のうち、外径が所定の外径よりも小さい小径微粒子と、外径が所定の外径よりも大きい大径微粒子の数をそれぞれ計数し、
前記咀嚼機能評価用人工食塊に含まれる前記小径微粒子の基準数と、前記計数された前記小径微粒子の数と、に基づいて、小径微粒子咀嚼率を算出するとともに、
前記咀嚼機能評価用人工食塊に含まれる前記大径微粒子の基準数と、前記計数された前記大径微粒子の数と、に基づいて、大径微粒子咀嚼率を算出する、
ことを特徴とする。
【0021】
また、本発明の咀嚼機能評価プログラムは、上述する咀嚼機能評価方法をコンピュータにより実行させるためのプログラムである。
【0022】
また、このようなプログラムを記録したコンピュータ可読記録媒体を本発明の一態様に含まれる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、所定の外径よりも小さい小径微粒子の小径微粒子咀嚼率と、所定の外径よりも大きい大径微粒子の大径微粒子咀嚼率と、をそれぞれ算出するようにしているため、歯周病の初期状態や、本人も気付かない程度に入れ歯が合わなくなってきている状況などをも知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の咀嚼機能評価装置の一実施例を説明するための概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいて、より詳細に説明する。
図1は、本発明の咀嚼機能評価装置の一実施例を説明するための概略構成図である。
【0026】
本実施形態の咀嚼機能評価システム20は、解析装置として後述するような計数プログラムを備えるサーバーコンピュータ22と、ユーザー端末24とサーバーコンピュータ22とを接続するネットワーク26とを有している。
【0027】
サーバーコンピュータ22としては、既存のコンピュータを用いることができ、例えば、クラウドコンピューティングなどを用いても構わない。
また、ユーザー端末24としては、後述するような画像データをサーバーコンピュータ22に送信可能なものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、パーソナルコンピュータ(デスクトップ、ラップトップ、タグレット等を含む。)やスマートフォン、ネットワーク26への接続機能を有するデジタルカメラなどを用いることができる。
【0028】
また、ネットワーク26としては、サーバーコンピュータ22とユーザー端末24とを接続するものであれば、特に限定されるものではなく、インターネットでも、イントラネットでも構わない。
【0029】
なお、サーバーコンピュータ22やユーザー端末24は、ネットワーク26と有線で接続してもよいし、無線で接続してもよい。
【0030】
このような咀嚼機能評価システム20では、以下のような咀嚼機能評価用人工食塊や特許文献2に開示されるような人工食塊を用いて、被験者の咀嚼機能の評価を行うことができる。
【0031】
咀嚼機能評価用人工食塊(以下、単に「人工食塊」とも呼ぶ。)は、基材と、この基材に含有された微粒子とから構成される。なお、微粒子は、咀嚼により微細に粉砕し、また、咀嚼されないときは球形の形状を有している。
【0032】
基材としては、口腔内に入れて人体に無害なものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、チクルなどの天然樹脂、ポリ酢酸ビニルやポリイソブチレンなどの合成樹脂などを用いることができ、好ましくは、市販のチューインガムなどと同様な成分とすることができる。
【0033】
微粒子としては、咀嚼により微細に粉砕される性質を有し、また、咀嚼されないときは球形の形状を有しているとともに、口腔内に入れて人体に無害なものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、白双糖や中双糖などの砂糖類自体、ゼラチンや寒天、デンプン、砂糖類などを皮膜とした可食性カプセル(例えば、森下仁丹株式会社製「シームレスカプセル」や糖衣菓子など)、カルナバワックスや蜜蝋などの天然ワックス、合成ワックスなどのワックス類を微粒子状にしたもの、米粒やケシの実、アマランサスの実など植物の実などを用いることができ、特に可食性カプセルを用いることが好ましい。可食性カプセルであれば、微粒子の大きさの調整などが容易である。
【0034】
なお、微粒子として、可食性カプセルを用いる場合には、ゼラチンや寒天、デンプンなどにより形成される皮膜は、咀嚼の際に唾液の影響を受けやすいため、その皮膜に不溶化処理を施すことが好ましい。例えば、皮膜としてゼラチンを使用している場合には、そのゼラチンを架橋化することにより、不溶化処理を施すことができる。
【0035】
なお、微粒子の外径としては、約500μm~約2mmとすることが好ましく、より好ましくは約600μm~約1mmである。微粒子の外径を約500μmよりも小さくすると、スマートフォンなどで撮影された写真データを用いて画像解析によって微粒子を計数したりすることが困難となる。一方で、微粒子の外径を約2mmよりも大きくすると、咀嚼効率を満足に把握することができなくなり、また、十分な数の微粒子を含有した人工食塊は咀嚼するのには大きすぎることになる。
【0036】
具体的には、微粒子の製造装置にもよるが、微粒子の外径の分布は、所望の外径を中心とした正規分布に従うと考えられる。このため、所望の外径の微粒子を製造することにより、所望の外径よりも小さい外径の微粒子(小径微粒子)と、所望の外径よりも大きい外径の微粒子(大径微粒子)がほぼ同程度含まれる。このため、人工食塊に含まれる小径微粒子の基準数及び大径微粒子の基準数は、基材に含有させる微粒子の個数若しくは重量から推算することができる。
【0037】
本実施例では、所望の外径を「所定の外径」として、所定の外径の微粒子(例えば、700μm)よりも外径が小さい微粒子(例えば、外径が700μm未満の微粒子)を「小径微粒子」とし、逆に、大きい微粒子(例えば、外径が700μmよりも大きい微粒子)を「大径微粒子」として規定している。しかしながら、「小径微粒子」及び「大径微粒子」の規定方法はこれに限らず、所定の外径の微粒子として所定の幅(例えば、650μm~750μm)を持たせ、これよりも小さい微粒子(例えば、外径が650μm未満の微粒子)を小径微粒子、これよりも大きい微粒子(例えば、外径が750μmを超過する微粒子)を大径微粒子と規定することもできる。さらには、小径微粒子及び大径微粒子としても所定の幅を持たせ、例えば、小径微粒子の外径を500μm~650μm、大径微粒子の外径を750μm~900μmと規定することもできる。
【0038】
また、人工食塊に含まれる微粒子の数は、1gの人工食塊において、10~500個であることが好ましい。微粒子の数が10個よりも少ないと、咀嚼効率を正確に把握することができなくなる。また、微粒子の数が500個よりも多いと、微粒子の計数を迅速に行うことが難しい。なお、人工食塊の重量としては、特に限定されるものではないが、一般的なチューインガムと同様に1g~1.5g程度とすることが好ましい。
【0039】
また、微粒子の色彩は、基材の色彩とは異なることが好ましい。このように、基材と微粒子の色彩を変えることによって、微粒子を目視や画像解析によって容易に特定でき、人工食塊中の残存する球形の形状を有する微粒子を目視や画像解析によって容易に計数することができる。
【0040】
このように構成される人工食塊は、被験者に所定回数咀嚼させた後、例えば、ラミネートフィルムやプレパラートなどの透光性を有するシートに挟んで圧延することにより、微粒子を認識しやすくする。
【0041】
この状態で、人工食塊中に残存する球形の形状を有する微粒子を計数する。具体的には、圧延された人工食塊を、例えば、デジタルカメラやスマートフォンなどのカメラ、スキャナーなどの撮像手段を用いて画像データを作成する。そして、本発明の咀嚼機能評価システム20は、この画像データを用いて、被験者の咀嚼機能の評価を行う。
【0042】
なお、画像データとしては、ユーザー端末24やサーバーコンピュータ22などで扱える形式のデータであれば、特に限定されるものではなく、任意のファイルフォーマットとすることができる。
【0043】
咀嚼機能評価システム20の解析装置であるサーバーコンピュータ22には、以下のように動作する咀嚼機能評価プログラムが組み込まれている。
【0044】
被験者は、ユーザー端末24を用いて画像データを、ネットワーク26を介してサーバーコンピュータ22に送信する。
サーバーコンピュータ22では、受信した画像データを用いて、例えば、パターンマッチングなどの方法により、画像データに含まれる球形を有する微粒子を計数する。なお、パターンマッチングの方法としては、例えば、国際公開公報第2012/060353号に開示される方法などを用いることができる。
【0045】
このとき、サーバーコンピュータ22は、画像データに含まれる球形を有する微粒子の外径を各々算出し、小径微粒子の残存数と、大径微粒子の残存数を計数する。なお、微粒子の外径を各々算出するのではなく、パターンマッチングを行う際のパターンの大きさを小径微粒子及び大径微粒子にそれぞれあわせることによって計数するようにしてもよい。
【0046】
このようにして計数された小径微粒子の残存数と、小径微粒子の基準数と、に基づき、小径微粒子咀嚼率が算出される。具体的には、(小径微粒子咀嚼率)=((小径微粒子の基準数)―(小径微粒子の残存数))/(小径微粒子の基準数)と算出することができる。
【0047】
同様に、計数された大径微粒子の残存数と、大径微粒子の基準数と、に基づき、大径微粒子咀嚼率が算出される。具体的には、(大径微粒子咀嚼率)=((大径微粒子の基準数)―(大径微粒子の残存数))/(大径微粒子の基準数)と算出することができる。
【0048】
サーバーコンピュータ22は、このように算出された大径微粒子咀嚼率と小径微粒子咀嚼率を、ネットワーク26を介してユーザー端末24に送信し、ユーザー端末24は、受信した大径微粒子咀嚼率と小径微粒子咀嚼率とを表示する。
【0049】
大径微粒子咀嚼率と小径微粒子咀嚼率は、口腔内の健康状態に応じて変化する。すなわち、歯周病に罹患していたり、入れ歯が合っていなかったりする場合には、各咀嚼率は低下する傾向にある。特に、口腔内の健康状態が悪い場合には、大径微粒子咀嚼率及び小径微粒子咀嚼率の両方が低下する。一方で、歯周病の初期状態や、本人も気付かない程度に入れ歯が合わなくなってきている状況では、大径微粒子咀嚼率の変化は小さいが、小径微粒子咀嚼率が大きく低下する。このため、各微粒子咀嚼率が両方とも所定値よりも低い場合や、小径微粒子咀嚼率のみが所定値よりも低い場合には、被験者に対して歯科での検診を促すようなメッセージをユーザー端末24に表示するようにしてもよい。
【0050】
なお、上述する実施形態では、サーバーコンピュータ22を解析装置として用いた咀嚼機能評価システムとしているが、ユーザー端末24に上述するような計数プログラムをインストールして、ユーザー端末24を解析装置として用い、ユーザー端末24単独で各微粒子咀嚼率を算出するように構成することもできる。
【0051】
以上、本発明の好ましい実施の態様を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0052】
また、上述する咀嚼機能評価プログラムを記録した、例えば、磁気テープ(デジタルデータストレージ(DSS)など)、磁気ディスク(ハードディスクドライブ(HDD)、フレキシブルディスク(FD)など)、光ディスク(コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、ブルーレイディスク(BD)など)、光磁気ディスク(MO)、フラッシュメモリ(SSD(Solid State Drive)、メモリーカード、USBメモリなど)などのコンピュータ可読記録媒体も本発明の一態様として含まれる。
【符号の説明】
【0053】
20 咀嚼機能評価システム
22 サーバーコンピュータ
24 ユーザー端末
26 ネットワーク
図1