(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】蒸気加温ユニット、蒸気加温方法、菓子製造装置及び菓子製造方法
(51)【国際特許分類】
A21B 1/26 20060101AFI20220426BHJP
A23G 3/02 20060101ALI20220426BHJP
F22G 1/00 20060101ALI20220426BHJP
F22G 3/00 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
A21B1/26
A23G3/02
F22G1/00
F22G3/00 Z
(21)【出願番号】P 2018161318
(22)【出願日】2018-08-30
【審査請求日】2021-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】399074813
【氏名又は名称】株式会社ひよ子
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(74)【代理人】
【識別番号】100194984
【氏名又は名称】梶原 圭太
(72)【発明者】
【氏名】石坂 淳子
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-139407(JP,A)
【文献】特開昭49-108253(JP,A)
【文献】米国特許第4574827(US,A)
【文献】特開平08-010160(JP,A)
【文献】特開2015-146944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21B 1/26
A23G 3/02
F22G 1/00
F22G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気が流通する幹管と、
該幹管から複数に分岐して同幹管を囲むように配置され、前記蒸気の流通方向を変更する流通方向変更部、及び該流通方向変更部で流通方向が変更された同蒸気が噴出する噴出孔を有すると共に、内部を流通する同蒸気を外部の熱源によって加温する第1の加温部、及び該第1の加温部で加温された蒸気で前記幹管内の前記蒸気を加温する第2の加温部を有する分岐管と、
前記第1の加温部で加温されて前記噴出孔から噴出する同蒸気に接して同蒸気を加温する加温体とを備える
蒸気加温ユニット。
【請求項2】
前記熱源が、前記加温体であり、前記加温体は蒸気を用いて加熱される
請求項1に記載の蒸気加温ユニット。
【請求項3】
幹管に蒸気を流通させる第1の蒸気流通工程と、
該第1の蒸気流通工程で、前記幹管内を流通する前記蒸気を、同幹管から分岐させて同幹管を囲むように配置された分岐管内に流通させる第2の蒸気流通工程と、
該第2の蒸気流通工程で前記幹管から分岐されて前記分岐管内を流通する前記蒸気の流通方向を変更させる蒸気流通方向変更工程と、
該蒸気流通方向変更工程で、前記流通方向を変更されて前記分岐管内を流通する前記蒸気を、同分岐管と内部に加温用の蒸気が流通する加温用蒸気管とを接触若しくは近接させて加温する第1の加温工程と、
該第1の加温工程で加温された前記蒸気が流通する分岐管を前記幹管に接触若しくは近接させて同幹管内を流通する蒸気を加温する第2の加温工程と、
前記第1の加温工程で加温されて前記分岐管内を流通する前記蒸気を噴出孔から噴出させて前記加温用蒸気管に接触して加温する第3の加温工程とを備える
蒸気加温方法。
【請求項4】
蒸気が流通する幹管と、該幹管から複数に分岐して同幹管を囲むように配置され、前記蒸気の流通方向を変更する流通方向変更部、及び該流通方向変更部で流通方向が変更された同蒸気が噴出する噴出孔を有すると共に、内部を流通する同蒸気を外部の熱源によって加温する第1の加温部、及び該第1の加温部で加温された蒸気で前記幹管内の前記蒸気を加温する第2の加温部を有する分岐管と、前記第1の加温部で加温されて前記噴出孔から噴出する同蒸気に接して同蒸気を加温する加温体とを有する蒸気加温ユニットと、
外気を取込む外気取込み口と、同外気を加熱する加熱部と、該加熱部を通過した同外気を整流化する第1の整流部とを有する外気加熱整流ユニットと、
該外気加熱整流ユニットで加熱され整流化された加熱整流化外気と、前記蒸気加温ユニットを通過した前記蒸気とを混合して生成された混合気体を放出する混合気体放出ユニットと、
前記混合気体により加湿された被焼成物を所定の温度で焼成する焼成部とを備える
菓子製造装置。
【請求項5】
前記幹管内、分岐管内及び加温部内に流入する蒸気の圧力を調整可能な蒸気圧調整手段を有する
請求項4に記載の菓子製造装置。
【請求項6】
前記混合気体放出ユニットは、その内部を通過する前記混合気体を整流化する第2の整流部を有する
請求項4又は請求項5に記載の菓子製造装置。
【請求項7】
前記混合気体放出ユニットは、前記混合気体の風向を調整可能な風向調整部を有する
請求項4、請求項5又は請求項6に記載の菓子製造装置。
【請求項8】
幹管に蒸気を流通させる第1の蒸気流通工程、該第1の蒸気流通工程で、前記幹管を流通する前記蒸気を、同幹管から分岐して同幹管を囲むように配置された分岐管に流通させる第2の蒸気流通工程、該第2の蒸気流通工程で前記幹管から分岐されて前記分岐管内を流通する前記蒸気の流通方向を変更させる蒸気流通方向変更工程、該蒸気流通方向変更工程で、前記流通方向を変更されて前記分岐管内を流通する前記蒸気を、同分岐管と内部に加温用の蒸気が流通する加温用蒸気管とを接触若しくは近接させて加温する第1の加温工程、該第1の加温工程で加温された前記蒸気が流通する分岐管を前記幹管に接触若しくは近接させて同幹管内を流通する蒸気を加温する第2の加温工程、前記第1の加温工程で加温されて前記分岐管内を流通する前記蒸気を噴出孔から噴出させて前記加温用蒸気管に接触させて加温する第3の加温工程を有する蒸気加温フローと、
外気を取込む外気取込み工程、同外気を加熱する加熱工程、該加熱工程を通過した同外気を濾過して整流化する濾過整流化工程を有する外気加熱整流フローと、
該外気加熱整流フローで加熱され整流化された加熱整流化外気と、前記蒸気加温フローで加温された前記蒸気とを混合して、被焼成物へ向け放出する混合気体を生成する混合工程、該混合工程で生成された前記混合気体を被焼成物へ向け放出する放出工程を有する放出フローと、
前記混合気体により加湿された被焼成物を所定の温度で焼成する焼成フローとを備える
菓子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気加温ユニット、蒸気加温方法、菓子製造装置及び菓子製造方法に関する。詳しくは、簡易な構造で蒸気の温度降下を抑制すると共に、蒸気を整流化して加湿ムラによる加熱ムラを抑制する蒸気加温ユニット、蒸気加温方法、菓子製造装置及び菓子製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
高温の蒸気を用いて加熱する「蒸す」という調理方法は一般に知られており、「飲茶」や「茶わん蒸し」などの調理方法として広く行われている。
【0003】
一方で、上記調理に限らず、一般的に蒸気が配管等の経路を流通する際には、配管抵抗により徐々に温度降下が生じてしまいやすいため、供給源の蒸気の温度に近い一定温度の蒸気を供給し続けることは困難であるという問題があった。
【0004】
また、ボイラーで発生した蒸気は、湧き上がるように配管内を流通するため、蒸気の密度や圧力等にムラがあり、均一ではない。このようなムラのある蒸気を、例えば食品などに直接吹き付けると、必要量の蒸気が充分に吹き付けられる部分と、充分には吹き付けることができない部分が生じる。この状態で食品を調理すると、焼成の程度が食品の場所によって異なり、加熱ムラが生じやすくなり、食品の品質が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、蒸気を一定温度に保つために、特許文献1に記載されているように、熱交換器を用いて蒸気を適切な温度で確実に提供する「蒸気供給装置および蒸気供給方法」が提案されている。具体的には、ボイラーから供給された熱媒体用蒸気が主要熱交換機内に流入し、伝熱管内の水との間で熱交換を行い、水を加熱して蒸気を発生させる。そして、主要熱交換器から流出した蒸気は、補助熱交換機内に流入し、補助熱交換機内の熱媒管路内を流れる熱媒体用蒸気によりさらに加熱される。これにより、蒸気を段階的に徐々に加熱することができるため、温度むら等の発生の防止、及び温度分布の均等化を確実に図ることができ、安定した状態の蒸気を供給することができる。
【0006】
また、特許文献2に記載されているように、整流板を吹き出し口付近に設け、送風空間内において下降気流に沿って移動する空気流の一部を、加熱部から加熱空間へ誘導する「食品温調装置」が提案されている。
具体的には、温調装置内で加熱された温風を吐き出す際、送風空間内において下降気流に沿って移動する空気流の一部を、整流板によってそれぞれの吹出し口から加熱空間へと誘導し、加熱空間内の被加熱物を加熱することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-198439号公報
【文献】特開2017-196232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されている「蒸気供給装置および蒸気供給方法」では、大がかりな装置になってしまい、限られた空間内で用いることは困難である。
【0009】
また、特許文献2に記載されている「食品温調装置」では、空気流を吹出し口へと誘導することは可能であるが、空気流は整流化及び蒸気の密度や圧力の均一化がされていないので、加湿ムラによる加熱ムラが生じるおそれがある。
【0010】
本発明は以上の点に鑑みて創案されたものであり、簡易な構造で蒸気の温度降下を抑制すると共に、蒸気を整流化して加湿ムラによる加熱ムラを抑制する蒸気加温ユニット、蒸気加温方法、菓子製造装置及び菓子製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の蒸気加温ユニットは、蒸気が流通する幹管と、該幹管から複数に分岐して同幹管を囲むように配置され、前記蒸気の流通方向を変更する流通方向変更部、及び流通方向変更部で流通方向が変更された同蒸気が噴出する噴出孔を有すると共に、内部を流通する同蒸気を外部の熱源によって加温する第1の加温部、及び該第1の加温部で加温された蒸気で前記幹管内の前記蒸気を加温する第2の加温部を有する分岐管と、前記第1の加温部で加温されて前記噴出孔から噴出する同蒸気に接して同蒸気を加温する加温体とを備える。
【0012】
ここで、蒸気が流通する幹管によって、蒸気を幹管内に流通させることができる。
【0013】
また、幹管から複数に分岐した分岐管によって、幹管内を流通した蒸気を分岐管内に流通させることができる。
【0014】
そして、分岐管が幹管を囲むように配置されることで、幹管と分岐管が近接していることから、第1の加温部で加温された、分岐管内を流通する蒸気は、幹管内を流れる蒸気よりも高い温度となっている。これにより、幹管に近接する分岐管から発せられる熱は幹管に伝わりやすく、幹管内を流通する蒸気が加温されるので、蒸気が流通する際の配管抵抗による温度降下を抑制することができ、専用の加熱装置を備えるなどの大掛かりな設備とすることなく、簡易な構造で蒸気の温度降下を抑制することができる。
【0015】
さらに、分岐管が蒸気の流通方向を変更する流通方向変更部を有することで、蒸気の流通方向を変更することができると共に、流通方向変更部で蒸気が撹拌されて密度や圧力のムラが緩和されるので、ボイラーで発生した蒸気の流れを整流化することができる。
【0016】
加えて、流通方向変更部で流通方向が変更された同蒸気が噴出する噴出孔を有する分岐管によって、分岐管内を流れる整流化された蒸気を噴出孔から噴出されて加湿ムラが生じるのを抑えられるので、加熱ムラが生じにくい。
【0017】
また、内部を流通する同蒸気を外部の熱源によって加温する第1の加温部によって、蒸気を外部の熱源によって加温することができるので、蒸気の温度降下を抑制することができる。
【0018】
そして、第1の加温部で加温された蒸気で幹管内の蒸気を加温する第2の加温部によって、流通する過程において温度が降下した、幹管内を流通する蒸気を加温することができるので、専用の加熱装置を備えるなどの大掛かりな設備とすることなく、簡易な構造で蒸気の温度降下を抑制することができる。
【0019】
さらに、第1の加温部で加温されて噴出孔から噴出する蒸気に接して蒸気を加温する加温体によって、噴出孔から噴出された蒸気が分岐管の外部に放出されたことによる圧力の低下及び蒸気より温度が低い外気との熱交換で温度が降下した蒸気を加温することができるので、大掛かりな設備とすることなく、簡易な構造で蒸気の温度降下を抑制することができる。
【0020】
また、熱源が、加温体であり、加温体が蒸気を用いて加熱される場合には、第1の加温部において加温される蒸気を、蒸気を用いて加熱された加温体で加温することができ、専用の加熱装置を備えるなどの大掛かりな設備とすることなく、簡易な装置とすることができる。
【0021】
また、上記課題を解決するために、本発明の蒸気加温方法は、幹管に蒸気を流通させる第1の蒸気流通工程と、該第1の蒸気流通工程で、前記幹管内を流通する前記蒸気を、同幹管から分岐させて同幹管を囲むように配置された分岐管内に流通させる第2の蒸気流通工程と、該第2の蒸気流通工程で前記幹管から分岐されて前記分岐管内を流通する前記蒸気の流通方向を変更させる蒸気流通方向変更工程と、該蒸気流通方向変更工程で、前記流通方向を変更されて前記分岐管内を流通する前記蒸気を、同分岐管と内部に加温用の蒸気が流通する加温用蒸気管とを接触若しくは近接させて加温する第1の加温工程と、該第1の加温工程で加温された前記蒸気が流通する分岐管を前記幹管に接触若しくは近接させて同幹管内を流通する蒸気を加温する第2の加温工程と、前記第1の加温工程で加温されて前記分岐管内を流通する前記蒸気を噴出孔から噴出させて前記加温用蒸気管に接触して加温する第3の加温工程とを備える。
【0022】
ここで、幹管に蒸気を流通させる第1の蒸気流通工程によって、蒸気を幹管内に流通させることができる。
【0023】
また、第1の蒸気流通工程で、幹管内を流通する蒸気を、幹管から分岐させて幹管を囲むように配置された分岐管内に流通させる第2の蒸気流通工程によって、幹管を流通した蒸気を分岐管内に流通させることができる。
【0024】
そして、第2の蒸気流通工程で幹管から分岐されて分岐管内を流通する蒸気の流通方向を変更させる蒸気流通方向変更工程によって、蒸気の流通方向を変更することで蒸気が撹拌されるので密度や圧力のムラが緩和され蒸気の流れを均一化及び整流化することができる。
【0025】
さらに、蒸気流通方向変更工程で、流通方向を変更されて分岐管内を流通する蒸気を、分岐管と内部に加温用の蒸気が流通する加温用蒸気管とを接触若しくは近接させて加温する第1の加温工程によって、蒸気が幹管及び分岐管内を流通する過程において温度が降下した蒸気を加温することができるので、大掛かりな設備とすることなく、簡易な構造で蒸気の温度降下を抑制することができる。
【0026】
加えて、第1の加温工程で加温された蒸気が流通する分岐管を幹管に接触若しくは近接させて幹管内を流通する蒸気を加温する第2の加温工程によって、第1の加温工程で加温された蒸気を用いて幹管内を流通する蒸気を加温することができるので、大掛かりな設備とすることなく、簡易な構造で蒸気の温度降下を抑制することができる。
【0027】
また、第1の加温工程で加温されて分岐管内を流通する蒸気を噴出孔から噴出させて加温用蒸気管に接触して加温する第3の加温工程によって、噴出孔から噴出された蒸気が分岐管の外部に放出されて圧力の低下及び蒸気より温度が低い外気との熱交換が生じたことにより、温度が降下した蒸気を加温することができるので、大掛かりな設備とすることなく、簡易な構造で蒸気の温度降下を抑制することができる。
【0028】
また、上記課題を解決するために、本発明の加温された蒸気を用いた菓子製造装置は、蒸気が流通する幹管と、該幹管から複数に分岐して同幹管を囲むように配置され、前記蒸気の流通方向を変更する流通方向変更部と、及び該流通方向変更部で流通方向が変更された同蒸気が噴出する噴出孔を有すると共に、内部を流通する同蒸気を外部の熱源によって加温する第1の加温部、及び該第1の加温部で加温された蒸気で前記幹管内の前記蒸気を加温する第2の加温部を有する分岐管と、前記第1の加温部で加温されて前記噴出孔から噴出する同蒸気に接して同蒸気を加温する加温体とを有する蒸気加温ユニットと、外気を取込む外気取込み口と、同外気を加熱する加熱部と、該加熱部を通過した同外気を整流化する第1の整流部とを有する外気加熱整流ユニットと、該外気加熱整流ユニットで加熱され整流化された加熱整流化外気と、前記蒸気加温ユニットを通過した前記蒸気とを混合して生成された混合気体を放出する混合気体放出ユニットと、前記混合気体により加湿された被焼成物を所定の温度で焼成する焼成部とを備える。
【0029】
ここで、蒸気が流通する幹管によって、蒸気を幹管内に流通させることができる。
【0030】
また、幹管から複数に分岐した分岐管によって、分岐管内に幹管を流通した蒸気を分岐管内に流通させることができる。
【0031】
そして、分岐管が幹管を囲むように配置されることで、幹管と分岐管が近接していることから幹管から発せられる熱は分岐管に伝わりやすく、分岐管内を流通する蒸気は、幹管から発せられる熱により加温されるので、分岐管内を流通する際の配管抵抗による、蒸気の温度降下を抑制することができ、専用の加熱装置を備えるなどの大掛かりな設備とすることなく、簡易な構造で蒸気の温度降下を抑制することができる。
【0032】
さらに、分岐管が蒸気の流通方向を変更する流通方向変更部を有することで、蒸気の流通方向を変更することができると共に、流通方向変更部で蒸気が撹拌されて密度や圧力のムラが緩和されるので、ボイラーで発生した蒸気の流れを整流化することができる。
【0033】
加えて、流通方向変更部で流通方向が変更された同蒸気が噴出する噴出孔を有する分岐管によって、分岐管内を流れる蒸気を噴出孔から噴出させることができる。
【0034】
また、蒸気が流通する経路内を流通する蒸気を外部から加温する第1の加温部によって、経路内を流通する蒸気を加温することができる。
【0035】
そして、第1の加温部で加温された蒸気で幹管内の蒸気を加温する第2の加温部によって、流通する過程において温度が降下した、幹管内を流通する蒸気を加温することができるので、専用の加熱装置を備えるなどの大掛かりな設備とすることなく、簡易な構造で蒸気の温度降下を抑制することができる。
【0036】
さらに、また、第1の加温工程で加温されて分岐管内を流通する蒸気を噴出孔から噴出させて加温用蒸気管に接触させて加温する第3の加温工程によって、噴出孔から噴出された蒸気が分岐管の外部に放出されて圧力の低下及び蒸気より温度が低い外気との熱交換が生じたことにより、温度が降下した蒸気を加温することができるので、大掛かりな設備とすることなく、簡易な構造で蒸気の温度降下を抑制することができる。
【0037】
加えて、このような幹管、分岐管及び加温体を有する蒸気加温ユニットによって、蒸気を整流化できると共に、温度が降下した蒸気を加温することができるので、大掛かりな設備とすることなく、簡易な構造で蒸気の温度降下を抑制することができる。
【0038】
また、外気を取込む外気取込み口によって、菓子製造装置内に外気を取り込むことができる。
【0039】
そして、外気を加熱する加熱部によって、外気を所定の温度に加熱することができる。
【0040】
さらに、外気を整流化する第1の整流部によって、外気を整流化することができる。
【0041】
加えて、外気取込み口、加熱部及び第1の整流部を有する外気加熱整流ユニットによって、取り込んだ外気を整流化すると共に、所定の温度に加熱することができる。
【0042】
また、外気加熱整流ユニットで加熱され整流化された加熱整流化外気と、蒸気加温ユニットを通過した蒸気とを混合することによって、加熱整流化外気中に蒸気をムラなく拡散させることができるので、整流化され、かつ蒸気密度が均一化された混合気体を生成することができる。
【0043】
そして、混合気体を放出する混合気体放出ユニットによって、加熱整流化外気と蒸気加温ユニットを通過した蒸気とを混合して生成された混合気体を被焼成物に対して放出して加湿することができる。
【0044】
さらに、混合気体により加湿された被焼成物を所定の温度で焼成する焼成部によって、適度に加湿された被焼成物を焼成することができる。
【0045】
また、幹管内、分岐管内及び加温部内に流入する蒸気の圧力を調整可能な蒸気圧調整手段を有する場合には、蒸気圧を調整することで蒸気の温度を調整することができる。
【0046】
また、混合気体放出ユニットは、その内部を通過する混合気体を整流化する第2の整流部を有する場合には、混合気体を整流化することができる。
【0047】
また、混合気体放出ユニットは、混合気体の風向を調整可能な風向調整部を有する場合には、混合気体の風向を調整することができる。これにより、必要量の蒸気が充分に吹き付けられる部分と、充分には吹き付けることができない部分とを生じさせることなく、混合気体を被焼成物にムラなく放出することができるので加湿ムラが抑えられ、これによりその後の焼成部での焼成の際に生じる焼成加熱ムラを抑制することができる。
【0048】
また、上記課題を解決するために、本発明の菓子の製造方法は、幹管に蒸気を流通させる第1の蒸気流通工程、該第1の蒸気流通工程で、前記幹管を流通する前記蒸気を、同幹管から分岐して同幹管を囲むように配置された分岐管に流通させる第2の蒸気流通工程、該第2の蒸気流通工程で前記幹管から分岐されて前記分岐管内を流通する前記蒸気の流通方向を変更させる蒸気流通方向変更工程、該蒸気流通方向変更工程で、前記流通方向を変更されて前記分岐管内を流通する前記蒸気を、同分岐管と内部に加温用の蒸気が流通する加温用蒸気管とを接触若しくは近接させて加温する第1の加温工程、該第1の加温工程で加温された前記蒸気が流通する分岐管を前記幹管に接触若しくは近接させて同幹管内を流通する蒸気を加温する第2の加温工程、前記第1の加温工程で加温されて前記分岐管内を流通する前記蒸気を噴出孔から噴出させて前記加温用蒸気管に接触させて加温する第3の加温工程を有する蒸気加温フローと、外気を取込む外気取込み工程、同外気を加熱する加熱工程、該加熱工程を通過して同外気を濾過して整流化する濾過整流化工程を有する外気加熱整流フローと、該外気加熱整流フローで加熱され整流化された加熱整流化外気と、前記蒸気加温フローで加温された前記蒸気とを混合して、被焼成物へ向け放出する混合気体を生成する混合工程、該混合工程で生成された前記混合気体を被焼成物へ向け放出する放出工程を有する放出フローと、前記混合気体により加湿された被焼成物を所定の温度で焼成する焼成フローとを備える。
【0049】
ここで、幹管に蒸気を流通させる第1の蒸気流通工程によって、幹管内に蒸気を流通させることができる。
【0050】
また、第1の蒸気流通工程で、幹管内を流通する蒸気を、幹管から分岐して幹管を囲むように配置された分岐管に流通させる第2の蒸気流通工程によって、幹管内を流通した蒸気を分岐管内に流通させることができる。
【0051】
そして、第2の蒸気流通工程で幹管から分岐されて分岐管内を流通する蒸気の流通方向を変更させる蒸気流通方向変更工程によって、蒸気の流通方向を変更することで蒸気が撹拌されるので密度や圧力のムラが緩和され蒸気の流れを均一化及び整流化することができる。
【0052】
さらに、蒸気流通方向変更工程で、流通方向を変更されて分岐管内を流通する蒸気を、分岐管と内部に加温用の蒸気が流通する加温用蒸気管とを接触若しくは近接させて加温する第1の加温工程によって、蒸気が幹管及び分岐管内を流通する過程において温度が降下した蒸気を加温することができるので、大掛かりな設備とすることなく、簡易な構造で蒸気の温度降下を抑制することができる。
【0053】
加えて、第1の加温工程で加温された蒸気が流通する分岐管を幹管に接触若しくは近接させて幹管内を流通する蒸気を加温する第2の加温工程によって、第1の加温工程で加温された蒸気を用いて幹管内を流通する蒸気を加温することができるので、大掛かりな設備とすることなく、簡易な構造で蒸気の温度降下を抑制することができる。
【0054】
また、第1の加温工程で加温されて分岐管内を流通する蒸気を噴出孔から噴出させて加温用蒸気管に接触させて加温する第3の加温工程によって、噴出孔から噴出された蒸気が分岐管の外部に放出されて圧力の低下及び蒸気より温度が低い外気との熱交換が生じたことにより、温度が降下した蒸気を加温することができるので、大掛かりな設備とすることなく、簡易な構造で蒸気の温度降下を抑制することができる。
【0055】
さらに、第1の蒸気流通工程、第2の蒸気流通工程、蒸気流通方向変更工程、第1の加温工程、第2の加温工程及び第3の加温工程を有する蒸気加温フローによって、蒸気を整流化すると共に、蒸気の温度降下を抑制することができるので、大掛かりな設備とすることなく、簡易な構造で蒸気の温度降下を抑制することができる。
【0056】
また、外気を取込む外気取込み工程によって、装置内に外気を取り込むことができる。
【0057】
そして、整流化工程を通過した外気を加熱する加熱工程によって、外気を所定の温度に加熱することができる。
【0058】
さらに、加熱工程を通過した外気を濾過して整流化する濾過整流化工程によって、外気を整流化することができる。
【0059】
加えて、外気取込み工程、加熱工程及び濾過整流化工程を有する外気加熱整流フローによって、取り込んだ外気を整流化すると共に、所定の温度に加熱することができる。
【0060】
また、外気加熱整流フローで加熱され整流化された加熱整流化外気と、蒸気加温フローで加温された蒸気とを混合して、被焼成物へ向け放出する混合気体を生成する混合工程によって、加熱整流化外気と蒸気とを混合して、混合気体を生成することができる。
【0061】
そして、混合工程で生成された混合気体を被焼成物へ向け放出する放出工程によって、被焼成物に向けて混合気体を放出することができる。
【0062】
さらに、混合工程及び放出工程を有する放出フローによって、加熱整流化外気と蒸気加温フローによって加温された蒸気とを混合した混合気体を被焼成物へ向け放出することができるので、均一に被焼成物へ向け放出することができるので加湿ムラによる加熱ムラが生じるのを抑止することができる。
【0063】
また、混合気体により加湿された被焼成物を所定の温度で焼成する焼成フローによって、混合気体が放出された被焼成物を焼成することができる。
【発明の効果】
【0064】
本発明に係る蒸気加温ユニット、蒸気加温方法、菓子製造装置及び菓子製造方法は、簡易な構造で蒸気の温度降下を抑制すると共に、蒸気を整流化して加湿ムラによる加熱ムラを抑制する蒸気加温ユニット、蒸気加温方法、菓子製造装置及び菓子製造方法となっている。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】本発明に係る蒸気加温ユニットの一実施の形態を示す側面視説明図である。
【
図3】本発明に係る菓子製造装置の一実施の形態を示す正面視説明図である。
【
図4】本発明に係る菓子製造装置の一実施の形態を示す平面視説明図である。
【
図5】本発明に係る菓子製造方法の一実施の形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下、本発明の菓子製造装置及び菓子製造方法について
図1乃至
図5を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
【0067】
〔蒸気ユニットAを用いた菓子製造装置について〕
図3及び
図4を用いて、菓子の製造装置について説明する。
蒸気ユニットAを用いた菓子の製造装置Bは、外気ARを取込む外気取込み部B1、取込んだ外気ARを加温し整流化する外気調温整流部B2、過熱し整流化された外気ARが流れ込むと共に、外気ARと、蒸気ユニットAから噴出される蒸気S3とが混合されて混合気体が生成されるダクトB3、ダクトB3から流入する混合気体を所定の幅に拡散して放出する蒸気放出部B4、ボイラー(図示せず)で発生した蒸気Sを、蒸気ユニットAに誘導する誘導管Y1及びY2、外気調温整流部B2に誘導する誘導管Y3、そして蒸気ユニットAから排出されるドレンを排水する排水管Z1及びZ2、外気調温整流部B2から排出されるドレンを排水するZ3を有する。
【0068】
まず、ボイラーで発生した蒸気Sは、
図4に示すように、3つの誘導管Y1、Y2及びY3に分流する。誘導管Y1内を流通する蒸気Sは幹管1内に流入し、誘導管Y2内を流通する蒸気S4は加温用蒸気管3a、3b内に流入し、誘導管Y3内を流通する蒸気S5は、外気調温整流部B2に設けられたヒータB2a内に流入する。
【0069】
なお、幹管1内に流入した蒸気S、及び加温用蒸気管3a、3b内に流入した蒸気S4については、後述する。
【0070】
本実施例における菓子製造装置Bでは、ボイラーからの供給蒸気流量は333kg/hであり、このうち誘導管Y1への蒸気流量は169kg/hであり、誘導管Y2への蒸気流量は82kg/hであり、誘導管Y3への蒸気流量は82kg/hである。また、ボイラーで発生した蒸気の温度は約160℃であり、蒸気密度は3.2kg/m3である。
【0071】
また、誘導管Y1の途中に減圧弁R1が設けられており、減圧弁R1を通過した蒸気Sは減圧により温度が降下している。減圧弁R1より下流側に配置された圧力計P1により測定を行ったところ蒸気Sの温度は約112℃であり、蒸気密度は0.87kg/m3であった。
【0072】
また、誘導管Y3の途中に減圧弁R2及びR3が設けられており、誘導管Y3内を流通する蒸気S5は、減圧弁R2を通過する際減圧されて温度が降下する。減圧弁R2より下流側に配置された圧力計P3により測定を行ったところ、蒸気S5の温度は約123℃であり、蒸気密度は1.2kg/m3であった。
【0073】
そして、減圧弁R2を通過した蒸気S5は、減圧弁R3を通過する際、減圧されて温度が降下する。減圧弁R3より下流側に配置された圧力計P4により測定を行ったところ、蒸気S5の温度は約111℃であり、蒸気密度は0.85kg/m3であった。
【0074】
このように、誘導管Y1内を流通する蒸気S、及び誘導管Y3内を流通する蒸気S5は、減圧弁R1乃至R3により減圧されて温度を下降させている。これは、蒸気Sは、先述した菓子体fに向けて放出して菓子体fを加湿するための蒸気であり、それほど高い温度に保つ必要はないからである。また、蒸気S5は、先述したように、外気ARを加熱するために用いる蒸気であるが、外気ARは後述する様に、蒸気ユニットAから噴出された蒸気S3と混合されることから、それほど高い温度に保つ必要はないからである。
【0075】
一方で、誘導管Y2には減圧弁は設けられていない。これは、誘導管Y2内を流れる蒸気S4は、加温用蒸気管3a、3bに流入し、蒸気S1、S2の加温のために用いられる加温用蒸気であり、蒸気の温度を減圧弁により降下させる必要がないからである。
【0076】
また、外気取込み部B1は、室内の空気である外気ARを外気取込み口B1aから製造装置B内に取込んだ後、外気ARをフィルタB1bにより濾過して清浄化する。そして、清浄化された外気ARは、外気取込み部B1内に設けられた電動送風機B1cにより、外気調温整流部B2に送られる。
【0077】
また、外気調温整流部B2には、外気取込み部B1から送られた外気ARが流入し、外気ARを加熱するラジエータB2a、及び外気ARから微粒子などの不純物を取り除く濾過フィルタB2b、及び外気ARの整流化フィルタB2cが設けられている。
【0078】
また、ラジエータB2a内には二本の加熱用蒸気管B2dが設けられており、誘導管Y3内を流通する蒸気S5が加熱用蒸気管B2d内に流入し、外気ARを加熱する。
【0079】
また、ラジエータB2a内に取り込まれた外気ARは、加熱用蒸気管B2d内を流通する蒸気S5により約60℃まで加熱される。外気ARは、後に、蒸気ユニットAから噴出される蒸気S3と混合されて混合気体Mを生成することから、仮に外気ARの温度が低い場合には、混合される蒸気S3が冷却されて液化してしまうおそれがあるため、蒸気S3が液化しない温度である約60℃に外気ARを加熱する必要があるからである。
【0080】
また、加熱された外気ARは、フィルタB2bにより微粒子サイズの不純物が濾過され、整流化フィルタB2cにより整流化された後、ダクトB3に流入する。ダクトB3の上流側の端部には横幅約410mm、高さ約410mmの流入口B3aが形成されている。そして、下流側に行くにしたがって徐々に高さが低くなると共に幅が広がった形状になり、下流側の端部付近で湾曲して下端側が下方に伸びた形状となっている。下流側の端部に設けられた流出口B3bは、横幅約1410mm、縦幅65mmに形成されている。なお、流出口B3bの横幅は、被焼成物である菓子体fを焼成するための、焼成部の一例であるオーブンFの幅と同一に形成されている。
【0081】
また、外気調温整流部B2から流入した外気ARは、ダクトB3内を通過する際、蒸気ユニットAから噴出された蒸気S3と混合され、混合気体Mが生成される。
【0082】
また、外気ARは、整流化フィルタB2cで整流化されているので、蒸気の密度や圧力も均一になっている。また、蒸気S3も蒸気ユニットAで蒸気の乱れが抑えられているので、外気ARと蒸気S3が混合する際、生成された混合気体Mの流れも乱れることがない。よって、混合気体Mは、蒸気密度及び温度において均質かつ整流化された気体となっている。流出口B3bから流入した混合気体Mは蒸気放出部B4内で拡散し、蒸気放出部B4の開口部B4eの全幅において蒸気を放出する。
【0083】
また、外気ARは、ラジエータB2aで約60℃に加熱されているので、混合される際蒸気S3の蒸気温度が降下することにより蒸気S3が液化することを抑止することができる。
【0084】
また、ダクトD3で生成された混合気体Mは、蒸気放出部B4に流入する。蒸気放出部B4内には混合気体Mの流れを整える整流板B4aが設けられており、この整流板B4aを操作するハンドルB4bが蒸気放出部B4外に設けられている。整流板B4aは、ハンドルB4bを操作することにより、整流板B4aの傾斜角度を調整することができる。これにより、蒸気放出部B4内に流入した混合気体Mをさらに整流化することが出来ると共に、仮に混合気体Mの流れに偏りが生じた場合であっても整流板B4aを調整することで、混合気体Mの流れの偏りを修正することができる。
【0085】
そして、蒸気放出部B4の下流側端部には、混合気体Mを焼成前の菓子体fに向けて放出する蒸気放出器B4cが設けられている。蒸気放出器B4cは、下流側に向かうにしたがって、徐々に幅広に形成されている。具体的には、上流側に設けられた流入口B4dは横幅約1410mm、縦幅65mmであるが、下流端に設けられた蒸気放出口B4eは横幅約1410mm、縦幅260mmとなっている。
【0086】
蒸気放出部B4内を流通した混合気体Mは、蒸気放出器B4c内に流入すると徐々に蒸気放出口B4eの広さにまで拡散する。これにより、広い範囲で混合気体Mを焼成前の菓子体fにムラなく放出することができるので、混合気体Mは、オーブンFの入り口付近で菓子体fに向けて放出されて菓子体f表面を均等に加湿することができる。更に、オーブンFの焼成室(図示せず)内部で雰囲気となって、菓子体f表面の湿度の好適な状態を、焼成域に移動するまで維持することができ、その後の焼成により焼きムラが生じるのを抑止することができる。なお、蒸気放出口B4eから放出される混合気体Mの流量は、38.7m3/minである。
【0087】
混合気体Mにより加湿された菓子体fは、その後オーブンF内に搬入後焼成されて、菓子が製造される。
【0088】
〔蒸気加温ユニットAについて〕
ここで、蒸気加温ユニットの一例である蒸気ユニットAについて説明する。
蒸気ユニットAは、
図1に示すように、幹管1、及び幹管1から分岐し、幹管1の長さ方向に沿って一定間隔で8本設けられた、分岐管の一例である枝管2、及び枝管2と接して、枝管2を外部から加温する加温用蒸気管3a、3bを有する。そして、
図2において示すように、後述する枝管2の湾曲管23及び加温用蒸気管3a、3bは、保温のためにその全体を、アルミ板などの金属板で作られたカバー4により覆われている。なお、カバー4は、
図2では省略している。
【0089】
ボイラ(図示せず)で発生した蒸気Sは、
図4に示すように、誘導管Y1、Y2、Y3に分流する。誘導管Y1は蒸気ユニットAの幹管1と連通して設けられており、蒸気Sは誘導管Y1内を流通して幹管1内に流入する。誘導管Y2は加温用蒸気管3a、3bに連通して設けられており、蒸気S4は誘導管Y2内を流通して加温用蒸気管3a、3bに流入する。そして、誘導管Y3は、後述する菓子製造装置BのヒータB2aに連通して設けられており、蒸気S5は誘導管Y3内を流通してヒータB2a内に流入する。
【0090】
また、誘導管Y1の一端に設けられ、内部を流通する蒸気Sを排出する蒸気排出口Y1aは、幹管1の上流側に位置する流入口11と略直角に連通して設けられている。この蒸気排出口Y1aと流入口11の連結部は、流通方向変更部の一例であり、蒸気Sの流通方向はこの連結部で変更される。このとき、蒸気Sの流通方向は略90度変更されることで撹拌され、温度や蒸気密度、圧力が均等化する。蒸気Sは蒸気排出口Y1aから流入口11を通過して幹管1内に流入して幹管1内を流れる。そして、
図1に示すように、蒸気Sの一部は枝管2内に流入し、残りは幹管1の下流側に位置する流出口12から外気へ放出される。
【0091】
また、
図1に示すように、枝管2は幹管1に連通して設けられており、一端側が幹管1に連通して設けられた連通管20、連通管20の他端側には、連通管20と略直交して連通して設けられる横管21、21、横管21、21と略直交して連通して設けられる縦管22、22、縦管22、22と略直交して連通して設けられると共に、略中央付近の一部が幹管1に近づく方向に湾曲した湾曲部23eを有する湾曲管23から成る。
【0092】
即ち、枝管2は、直線状の連通管20、横管21、21、縦管22、22と、湾曲部23eを有する湾曲管23を有し、中央部分は幹管1を挿通可能な大きさに開口されている。また、
図2に示すように、蒸気ユニットAにはこのような枝管2が、幹管1に沿って、等間隔に8つ並設されており、幹管1は枝管2の中央を貫通するように配置されている。
【0093】
また、幹管1の上部側の側面には、流通方向変更部の一例である蒸気分流孔(図示せず)が、幹管1の長手方向に沿って略一列に、枝管2の本数に対応して、所定の間隔で8つ設けられている。そして、蒸気分流孔に対応して、枝管2の連通管20の上流側の一端である一端口20aはそれぞれ、各蒸気分流孔と連通して設けられている。幹管1内を流通する蒸気Sの一部は蒸気分流孔から一端口20aを通って枝管2内に流入する。このとき、蒸気Sの流通方向は略90度変更されることで撹拌され、温度や蒸気密度、圧力が均等化する。
【0094】
また、連通管20内に流入した蒸気Sは、連通管20内を移動する。連通管20の下流側の他端口20bは、流通方向変更部の一例である三口(みつくち)継手24と連通して設けられている。三口継手24は、略「T」の字状の形状を有し、連通管20内を移動した蒸気Sが流入する流入管24aと、流入管24aと略直交する方向に連通して設けられた流出管24bとから成る。流出管24bの両端には流出口24c、24dが設けられている。
【0095】
また、他端口20bから流入管24aを通って三口継手24内に流入した蒸気Sは、流出管24bの内壁に当たって分流し、流出管24b内を相反する方向に流れる蒸気S1、S2が生じる。このとき蒸気S1、S2の流通方向は略90度変更されることで撹拌され、温度や蒸気密度、圧力が均等化する。そして、蒸気S1、S2は、流出管24b内をそれぞれ流出口24c、24dに向かって流れ、横管21、21内に流入する。
【0096】
また、横管21、21の上流側の端部である端部21a、21aは、三口継手24の流出口24c、24dと連通して設けられており、横管21、21の下流側の端部である他端部21b、21bは、流通方向変更部の一例であってL字型の継手であるエルボ25、25の上流側の端部である一端部25a、25aに連通して設けられている。このとき蒸気S1、S2の流通方向は略90度変更されることで撹拌され、温度や蒸気密度、圧力が均等化する。
【0097】
横管21、21を流通する蒸気S1、S2は、一端部25a、25aからエルボ25、25内に流入し、下流側の端部である他端部25b、25bから流出し、縦管22、22に流入する。このとき蒸気S1、S2の流通方向は略90度変更されることで撹拌され、温度や蒸気密度、圧力が均等化する。
【0098】
エルボ25、25を通過した蒸気S1、S2は、縦管22、22に流入する。縦管22、22の、上流側の端部である端部22a、22aは、エルボ25、25の他端部25b、25bと連通して設けられている。縦管22、22の、下流側の端部である他端部22b、22bは、流通方向変更部の一例であってL字型の継手であるエルボ26、26の上流側の端部である端部26a、26aと連通して設けられている。このとき蒸気S1、S2の流通方向は略90度変更されることで撹拌され、温度や蒸気密度、圧力が均等化する。
【0099】
縦管22、22内を移動した蒸気S1、S2は、エルボ26、26の端部26a、26aを通ってエルボ26、26内に流入し、下流側の端部である他端部26b、26bから流出し、湾曲管23の両端部である端部23a、23bから湾曲管23内に流入する。
【0100】
湾曲管23は、略「Ω」字状をしており、直線状に延びた直線部23c、23d、及び湾曲した湾曲部23eから成る。湾曲部23eの中央付近には蒸気S3が噴出する噴出孔23fを有する。湾曲部23eの入り口付近には、後述する2本の加温用蒸気管3a、3bが幹管1の長手方向と略平行に設けられ、内部を蒸気S4が流通している。
【0101】
湾曲管23内に流入した蒸気S1、S2は、直線部23c、23d内を移動し、湾曲部23e内に流入し、湾曲部23eの頂部付近23gで合流して蒸気S3となって、噴出孔23fから噴出する。このとき蒸気S1、S2と蒸気S3の流通方向は略90度変更されることで撹拌され、温度や蒸気密度、圧力が均等化する。
【0102】
ここで、加温用蒸気管3a、3bは10mm程度離間して設けられており、スリットSLが形成されている。噴出孔23fから噴出した蒸気S3は、スリットSLを通り抜けて外部に噴出する。
【0103】
〔蒸気の流れについての説明〕
このような構造を有する蒸気ユニットA内では、以下のように蒸気S、S1、S2の流れを整流化するため、蒸気S、S1、S2の流通方向の変更させている。
【0104】
まず、ボイラーで発生した蒸気Sは誘導管Y1によって誘導されながら、蒸気ユニットAの幹管1の流入口11まで到達した後、略直角方向に流通方向を変更されて(第1の流通方向変更箇所C1)、幹管1内に流入する。
【0105】
その後、蒸気Sは蒸気分流孔から枝管2内へ流入するが、その際流通方向を、約直角方向である上方向に変更される(第2の流通方向変更箇所C2)。枝管2内へ流入した後、蒸気Sは、三口継手24内で蒸気S1、S2に分流され、横管21、21内へ流入するが、その際、流通方向を、流出管24bの長さ方向であると共に、連通管20に対して略直角方向である水平方向に変更される(第3の流通方向変更箇所C3)。
【0106】
また、蒸気S1、S2は、横管21、21内を移動し、エルボ25、25内に流入する際、流通方向を、縦管22、22の長さ方向であると共に、横管21、21に対して略直角方向である下方向に変更される(第4の流通方向変更箇所C4)。
【0107】
また、蒸気S1、S2は、縦管22、22内を移動し、エルボ26、26内に流入する際、流通方向を、湾曲管23の長さ方向であると共に、縦管22、22に対して略直角方向である水平方向に変更される(第5の流通方向変更箇所C5)。なお、この時の流通方向は、先述した横管21、21内を移動する際の流通方向とは反対の方向である。
【0108】
また、蒸気S1、S2は、湾曲管23の端部23a、23bからそれぞれ湾曲管23内に流入する。ここで、直線部23c、23dと湾曲部23eは直角に連通して連結されており、角部23h、23iが形成されている。このため、蒸気S1、S2は、端部23a、23bから流入して直線部23c、23d内を通過し湾曲部23e内に流入する際、角部23h、23iにより直線部23c、23dに対して略直角方向である上方向に流通方向を変更される(第6の流通方向変更箇所C6)。
【0109】
また、蒸気S1、S2が湾曲部23eの頂点付近23gで合流して蒸気S3となり、噴出孔23fから噴出する。この際、蒸気S3は、噴出孔23fが下方向に開口していることから、蒸気S3の流通方向は下方向に変更される(第7の流通方向変更箇所C7)。
【0110】
このように、ボイラーで発生した蒸気Sは蒸気ユニットA内を流通し噴出孔23fから噴出されるまでの間に、流通方向を7回変更されることにより、撹拌されて密度や圧力のムラが緩和されるので徐々に蒸気の流れが整えられ、噴出孔23fから噴出された蒸気S3は、整流化された蒸気となっている。
【0111】
また、幹管1内に流入した蒸気Sは流出口12から蒸気S6として流出し、排水管Z1及びZ2を通って、ドレントラップD1及びD2で排水された後、蒸気S6のみが菓子製造装置B外へ排出される。そして、加温用蒸気管3a、3b内に流入した蒸気S4は蒸気S7として配水管Z1を通って、ドレントラップD1で排水された後、蒸気S6と共に菓子製造装置B外へ排出される。
【0112】
また、後述する様に、外気加熱工程STdにおいて、誘導管Y3内を流通してヒータB2a内に流入した蒸気S5は、外気ARを加熱した後、配水管Z3を通って、ドレントラップD3で排水された後、蒸気S8として、蒸気S6及び蒸気S7と共に、菓子製造装置B外へ排出される。
【0113】
〔蒸気の加温方法について〕
蒸気ユニットAにおいて、ボイラーから発生した蒸気Sは、誘導管Y1内の途中に設けられた減圧弁R1により蒸気圧が下げられたことにより、減圧弁R1の下流側に設けられた圧力計P1で計測したところ、蒸気Sの温度は約112℃となっている。蒸気Sはこの温度を保ったまま蒸気ユニットAの幹管1内に流入する。
【0114】
幹管1内に流入した蒸気Sは、その後蒸気S1、S2となって枝管2内を流通するが、流通する過程において、以下に述べるように、3つの加温構造H1~H3により加温される。
【0115】
〔第1加温構造H1〕
第1の加温部の一例である第1加温構造H1では、湾曲管23の角部23h、23iにおいて、加温用の蒸気である蒸気S4が流通する加温用蒸気管3a、3bが角部23h、23iに近接して設けられていることから、加温用蒸気管3a、3bが蒸気S4により加温され、加温された加温用蒸気管3a、3bが近接する角部23h、23iを加熱し、そして角部23h、23i内を流通する蒸気S1、S2が加温される。
【0116】
なお、蒸気S4の温度は、誘導管Y2の下流側に設けられた圧力計P2により計測したところ、159℃であった。このように蒸気S4の温度が、蒸気Sの温度(約112℃)よりも高いことから、蒸気S1、S2は、蒸気S4により加温されるので、配管抵抗による温度降下を防ぐことができる。
【0117】
〔第2加温構造H2〕
第2の加温部の一例である第2加温構造H2では、第1加温構造H1により加温された蒸気S1、S2が幹管1に近接する湾曲部23eの頂部付近23g内を流通する際、蒸気S1、S2から放出される熱により頂部付近23gが加熱される。これにより、頂部付近23gに近接する幹管1が加熱され、幹管1内を流通する蒸気Sが加温される。
【0118】
〔第3加温構造H3〕
第3の加温部の一例である第3加温構造H3では、第1加温構造H1において加温された蒸気S1、S2が噴出孔23fから噴出する蒸気S3は、枝管2の外部へ放出されたこと及び蒸気より温度が低い外気との熱交換により温度が降下する。温度が降下した蒸気は、加温用蒸気管3a、3bと接触することにより熱交換が行われて加温される。
【0119】
このように、蒸気ユニットAは第1乃至第3加温構造H1~H3を有することにより、蒸気Sが幹管1及び枝管2内を流通する過程において配管抵抗などの圧力損失により温度が降下した蒸気Sを加温することができ、蒸気の温度降下を抑制する構造となっている。実際に、幹管1内を移動し流出口12付近で、温度計T1を用いて蒸気Sの温度を測定したところ約100℃であり、大幅な温度降下は確認されなかった。
【0120】
〔加温された蒸気を用いた菓子製造方法〕
本実施例に基づく菓子製造方法について、
図5を用いて説明する。
本実施例に基づく菓子製造方法は、以下の工程から成る。
【0121】
(ST1 第1工程)
第1工程ST1は、第1の蒸気流通工程の一例であって、ボイラーで発生した蒸気Sを幹管1内に流入させる幹管流入工程である。
(ST2 第2工程)
第2工程ST2は、第2の蒸気流通工程の一例であって、幹管流入工程ST1で、幹管1内を流通する蒸気Sを、幹管から分岐して幹管を囲むように配置された枝管2内に流入させる枝管流入工程である。
(ST3 第3工程)
第3工程ST3は、枝管流入工程ST2で枝管内を流通する蒸気Sの流通方向を変更させる蒸気流通方向変更工程である。
(ST4 第4工程)
第4工程ST4は、蒸気流通方向変更工程ST3で蒸気S1、S2が流通方向を変更されて流通する湾曲管23の角部23h、23iを、加温用蒸気管3a、3bと接触若しくは近接させて加温する第1の加温工程である。
(ST5 第5工程)
第5工程ST5は、第1の加温工程で加温された蒸気S1、S2が流通する枝管2を幹管1に接触若しくは近接させて幹管1内を流通する蒸気Sを加温する第2の加温工程である。
(ST6 第6工程)
第6工程ST6は、第1の加温工程ST4で加温された蒸気S1、S2を蒸気S3として噴出させる噴出孔23fから噴出させて加温用蒸気管3a、3bに接触させて加温する第3の加温工程である。
(ST7 第7工程)
第7工程ST7は、第3 の加温工程ST6で加温された蒸気S3を蒸気ユニットA外に噴出する蒸気噴出工程である。
【0122】
(STa 第1工程)
第1工程STaは、製造装置B内に外気ARを取込む外気取込み工程である。
(STb 第2工程)
第2工程STbは、外気取込み工程STaで取り込まれた外気ARを濾過する第1の外気濾過工程である。
(STc 第3工程)
第3工程STcは、濾過工程STbで濾過された外気ARを電動送風機B1bで外気調温整流部B2に送る外気送風工程である。
【0123】
(STd 第4工程)
第4工程STdは、加熱工程の一例である、外気送風工程STcで外気調温整流部B2に流入した外気ARを加熱用蒸気管B2d内を流通する蒸気S5を用いて加熱する外気加熱工程である。
(STe 第5工程)
第5工程STeは、濾過整流化工程の一例である、外気加熱工程STdで加熱された外気ARを濾過する第2の外気濾過工程である。
(STf 第6工程)
第6工程STfは、第2の外気濾過工程STeで濾過された外気ARを整流化する整流化工程である。
【0124】
(STg 第7工程)
第7工程STgは、整流化工程STfで整流化された外気ARを、蒸気噴出工程ST7で蒸気ユニットA外に噴出された蒸気S3と混合して混合気体Mを生成する混合工程である。
(STh 第8工程)
第8工程SThは、混合工程STgで生成された混合気体Mを蒸気放出部B4内で、整流板B4aにより整流化すると共に、流通方向を調整する整流・流通方向調整工程である。
(STi 第9工程)
第9工程STiは、整流・流通方向調整工程整流工程SThで整流化され流通方向が統制された混合気体Mを菓子体fに向けて放出する放出工程である。
【0125】
(STj 第10工程)
第10工程STjは、放出工程STiで混合気体Mにより加湿された菓子体fを焼成する焼成工程である。
【0126】
上記工程により、蒸気ユニットA内を流通する蒸気S、S1、S2が幹管1及び分岐管2内を流通する過程において配管抵抗により温度が降下した蒸気を簡易な設備で加温することができる。また、蒸気を整流化すると共に、蒸気密度や蒸気圧を均一にすることにより加湿ムラを抑制することができ、加熱ムラのない菓子を製造することができる。
【0127】
このように、本発明を適用した蒸気加温ユニット、蒸気加温方法、菓子製造装置及び菓子製造方法は、簡易な構造で蒸気の温度降下を抑制すると共に、蒸気を整流化して加湿ムラによる加熱ムラを抑制することができる。
【符号の説明】
【0128】
1 幹管
2 枝管(分岐管)
24 三口継手(流通方向変更部)
25、25 エルボ(流通方向変更部)
26、26 エルボ(流通方向変更部)
23f 噴出孔
3a、3b 加温用蒸気管
A 蒸気ユニット(蒸気加温ユニット)
B1a 外気取込み口
B2 外気調温整流部B(外気加熱整流ユニット)
B2a ラジエータ(加温部)
B2c 整流化フィルタ(整流部)
B4 蒸気放出部(混合気体放出ユニット)
B4a 整流板(整流部 風向調整部)
F 焼成部
f 菓子体(被焼成物)
R1、R2、R3 減圧弁(蒸気圧力調整手段)H1
H1 第1加温構造(第1の加温部)
H2 第2加温構造(第2の加温部)
H3 第3加温構造(第3の加温部)
M 混合気体(混合気体)
S、S1、S2、S3、S4、S5 蒸気
ST1 幹管流入工程(第1の蒸気流通工程)
ST2 枝管流入工程(第2の蒸気流通工程)
ST3 蒸気流通方向変更工程
ST4 第1の加温工程
ST5 第2の加温工程
ST6 噴出工程
ST7 第3の加温工程
STa 外気取込み工程
STd 外気加熱工程(加熱工程)
STe 第2の外気濾過工程(濾過整流化工程)
STf 整流化工程(濾過整流化工程)
STg 混合工程
STi 放出工程
STj 焼成工程