(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】枕
(51)【国際特許分類】
A47G 9/10 20060101AFI20220426BHJP
【FI】
A47G9/10 F
(21)【出願番号】P 2019116123
(22)【出願日】2019-06-24
【審査請求日】2021-07-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592150930
【氏名又は名称】富士ベッド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100011
【氏名又は名称】五十嵐 省三
(72)【発明者】
【氏名】菊池 崇
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3091548(JP,U)
【文献】特開2016-106908(JP,A)
【文献】特開2018-015329(JP,A)
【文献】特開2015-134146(JP,A)
【文献】特開2020-110293(JP,A)
【文献】登録実用新案第3169132(JP,U)
【文献】特開2013-233192(JP,A)
【文献】特開2018-110642(JP,A)
【文献】特開2011-152318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の充填部材内蔵の枕本体と、
前記枕本体の下面全面又は一部に設けられた第2の充填部材内蔵の柱ユニットと
を具備し、
前記枕本体は、後頭支持領域、該後頭支持領域の前方側に隣接する頸支持領域、並びに前記後頭支持領域及び前記頸支持領域に隣接する第1、第2の側頭支持領域を有し、
前記枕本体の前記第1、第2の側頭支持領域の少なくとも前方側領域は前記柱ユニットより前方側へ突出している枕。
【請求項2】
前記柱ユニットは1つであり、
前記枕本体の少なくとも前記第1、第2の側頭支持領域の厚さを前記後頭支持領域の厚さより大きくした請求項1に記載の枕。
【請求項3】
前記柱ユニットは複数であり、
前記枕本体の少なくとも前記各第1、第2の側頭支持領域の下面に前記柱ユニットの1つを設けた請求項1に記載の枕。
【請求項4】
前記柱ユニットの1つは前記枕本体の前記頸支持領域の下面の一部にも延在する請求項3に記載の枕。
【請求項5】
前記枕本体の第1の充填部材と前記柱ユニットの第2の充填部材とは相異ならせた請求項1に記載の枕。
【請求項6】
前記枕本体及び前記柱ユニットは、それぞれ、
ファスナ付の袋状収納室と、
前記袋状収納室に格納されるための充填部材を予め収容した充填部材収容袋と
を具備する請求項1に記載の枕。
【請求項7】
枕本体と、前記枕本体の下面の一部に設けられた柱ユニットとを充填部材を導入して一体的に縫製した枕であって、
前記枕本体は、後頭支持領域、該後頭支持領域の前方側に隣接する頸支持領域、並びに前記後頭支持領域及び前記頸支持領域に隣接する第1、第2の側頭支持領域を有し、
前記枕本体の前記第1、第2の側頭支持領域の少なくとも前方側領域は前記柱ユニットより前方側へ突出している枕。
【請求項8】
前記枕本体と前記柱ユニットとの間に仕切を設けた請求項7に記載の枕。
【請求項9】
前記枕本体の充填部材と前記柱ユニットの充填部材とを相異ならせた請求項7に記載の枕。
【請求項10】
前記柱ユニットは1つ又は複数である請求項7に記載の枕。
【請求項11】
前記枕本体は上面視で矩形である請求項1又は7に記載の枕。
【請求項12】
前記枕本体は上面視で前方側に凹状に屈曲している請求項1又は7に記載の枕。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被験者の頭頸部を安定的に支持するための枕に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は従来の枕を示し、(A)は上面斜視図、(B)は側面斜視図である。
【0003】
図6においては、充填部材内蔵の枕100は、中央に位置する凹状後頭支持領域101、後頭支持領域101の前方側に位置する凸状頸支持領域102、並びに後頭支持領域101及び凸状頸支持領域102の側方側に位置する凸状側頭支持領域103、104よりなる。後頭支持領域101の中央の縫合箇所Xで縫合することにより後頭支持領域101の中央部が薄くなっている。これにより、凹状後頭支持領域101及び凸状頸支持領域102は
図7の仰臥状態の被験者200の後頭部201及び頸部202のS字状稜線曲線203にフィットし易くなる。他方、側頭支持領域103、104は凸状となっており、つまり、側頭支持領域103、104は後頭支持領域101より高くなっているので、被験者の後頭部201は横臥状態で移動しにくくなっている。尚、
図7において、300はマットレス、Fは充填部材、Hhは後頭部高さ、Hnは頸部高さ、ΔHは差Hn-Hhである。
【0004】
図6の従来の枕100を構成するために、枕中央の縫合箇所Xで後頭支持領域101を縫合することにより後頭支持領域101を薄くすると共に、側頭支持領域103、104の外縁にマチYを設けて側頭支持領域103、104を厚くしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、
図6の従来の枕100においては、枕内の充填部材は、後頭支持領域101、頸支持領域102及び側頭支持領域103、104において単層構造をなしている。この結果、枕の硬軟度を精度よく調整できないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本発明に係る枕は、第1の充填部材内蔵の枕本体と、枕本体の下面全面又は一部に設けられた第2の充填部材内蔵の柱ユニットとを具備し、枕本体は、後頭支持領域、後頭支持領域の前方側に隣接する頸支持領域、並びに後頭支持領域及び頸支持領域に隣接する第1、第2の側頭支持領域を有し、枕本体の第1、第2の側頭支持領域の少なくとも前方側領域は柱ユニットより前方側へ突出しているものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、充填部材は、枕本体の第1の充填部材と柱ユニットの第2の充填部材とで2層構造をなしているので、枕本体の硬軟度と柱ユニットの硬軟度とを組合せることにより、枕全体の後頭支持領域、頸支持領域及び側頭支持領域の硬軟度を精度よく維持できるようにし、この結果、枕に対して被験者の自然の状態を精度よく維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る枕の第1の実施の形態を示し、(A)は上面斜視図、(B)は下面斜視図、(C)は(A)の断面図である。
【
図2】枕における寝返りを説明するための図であり、(A)は
図1の枕の場合、(B)は
図6の枕の場合を示す。
【
図3】本発明に係る枕の第2の実施の形態を示し、(A)は上面斜視図、(B)は前面斜視図、(C)は下面斜視図である。
【
図4】
図3の柱ユニットの組立を説明するための下面斜視図である。
【
図6】従来の枕を示し、(A)は上面斜視図、(B)は側面斜視図である。
【
図7】仰臥状態の被験者の後頭部及び頸部のS字状稜線曲線を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は本発明に係る枕の第1の実施の形態を示し、(A)は上面斜視図、(B)は下面斜視図、(C)は(A)の断面図である。
【0010】
図1において、枕は、充填部材内蔵の枕本体1及び枕本体1の下面に設けられた充填部材内蔵の柱ユニット2よりなる。この場合、枕本体1の充填部材たとえば粒綿は柱ユニット2の硬い充填部材たとえばパイプより柔らかくすることにより、枕本体1を被験者のS字状稜線曲線203(
図7参照)に合致させるようにすると共に枕底部を安定化させる。
【0011】
枕本体1は、後頭支持領域11、後頭支持領域11の前方側に隣接する頸支持領域12、後頭支持領域11及び頸支持領域12の両側に隣接する側頭支持領域13、14によって区分されている。たとえば、後述の充填部材収容袋を調整することにより領域区分する。この場合でも、枕本体1の充填部材は1層構造である。
【0012】
柱ユニット2は枕本体1の下面全体に設けられている。柱ユニット2の充填部材はもう1つの1層構造である。従って、枕全体は充填部材の2層構造をなしている。この場合、たとえば枕本体1は柱ユニット2より厚くされる。
【0013】
図1の枕においては、枕本体1の領域区分を調整すると共に枕本体1の充填部材と柱ユニット2の充填部材とを組合せることにより、枕全体の硬軟度を調整して、後頭支持領域11の低さを精度よく維持できるようにし、他方、側頭支持領域13、14の高さを精度よく維持できるようにする。
【0014】
図1においては、枕全体は、上面視で前方側に凹状に(“く”の字状)に屈曲している。これにより、被験者の肩と枕との接触がなくなる。すなわち、
図2の(A)に示すごとく、被験者200の肩と枕本体1の後頭支持領域13、14との間に肩と枕との非重なり部分Z1が生じ、部分Z1に肩がフィットすることにより枕が邪魔せずに被験者はスムーズに仰臥位から横臥位へ左右に寝返りすることができる。この場合、枕本体1の充填部材は柱ユニット2の充填部材より硬くても柔らかくてもよい。これに対し、
図6の従来の枕においては、
図2の(B)に示すごとく、被験者200の肩と枕との重なる部分Z2が生じる。この結果、枕の端が肩に当って邪魔なために、左右に寝返りできず、無理に寝返りすると、矢印に示すごとくアーチ状の寝返りとなる。
【0015】
尚、柱ユニット2は枕本体1の形状と一致する必要はなく、上面視で枕本体1より小さくてもよい。これにより、柱ユニット2によって枕の通気性を確保できる。この場合も、肩が枕本体1の下部の柱ユニット2が存在しない隙間に入り込めるので、やはり、被験者はスムーズに仰臥位から横臥位へ左右に寝返りすることができる。さらに、柱ユニット2の形状は、種々の形状たとえば丸型、角型等でもよい。
【0016】
また、充填部材を収容し易いように、枕本体1及び柱ユニット2はファスナ付きの袋状収容室及び袋状収容室に収容される充填部材を予め収容した充填部材収容袋によって構成される。充填部材収容袋は洗浄できると共に、交換可能である。
【0017】
図3は本発明に係る枕の第2の実施の形態を示し、(A)は上面斜視図、(B)は前面斜視図、(C)は下面斜視図である。
【0018】
図3において、枕は、充填部材内蔵の枕本体1’及び枕本体1’の下面の一部に設けられた充填部材内蔵の柱ユニット2’、3’よりなり、上面視で矩形をなしている。この結果、柱ユニット2’、3’間で通気性を確保できる。この場合、たとえば枕本体1’の充填部材は柱ユニット2’、3’の充填部材より硬くする。
【0019】
枕本体1’は、後頭支持領域11’、後頭支持領域11’の前方側に隣接する頸支持領域12’、後頭支持領域11’及び頸支持領域12’の両側に隣接する側頭支持領域13’、14’によって区分されている。この場合でも、枕本体1’の充填部材は1層構造である。
【0020】
柱ユニット2’、3’の充填部材はもう1つの1層構造である。従って、枕全体は充填部材の2層構造をなしている。柱ユニット2’は枕本体1’の側頭支持領域13’の下面に設けられ、好ましくは頸支持領域12’の下面の一部にも設けられている。また、同様に、柱ユニット3’は枕本体1’の側頭支持領域14’の下面に設けられ、好ましくは頸支持領域12’の下面の一部にも設けられている。特に、柱ユニット2’、3’が枕本体1’の頸支持領域12’の下面の一部に延在すると、仰臥位の被験者の頸部と枕との隙間を小さくできるので、頸部を安定的に支持できる。
【0021】
図3の枕においても、枕本体1’の充填部材と柱ユニット2’、3’の充填部材とを組合せることにより、枕全体の硬軟度を調整して、後頭支持領域11’の低さを精度よく維持できるようにし、他方、側頭支持領域13’、14’の高さを精度よく維持できるようにする。たとえば、枕本体1’の充填部材を硬い材料たとえば硬ウレタンチップ又はビーズで構成し、柱ユニット2’、3’の充填部材を柔らかい材料たとえば軟ウレタンチップ又はビーズを構成する。
【0022】
図4は
図3の柱ユニット2’の組立を説明するための図である。
【0023】
図4に示すように、柱ユニット2’は、枕本体1’の下面の一部に設けられ、ファスナ21aによって開閉される袋状収納室21と、袋状収納室21に収納され、予め充填部材が収容された充填部材収容袋22とを有する。この場合、被験者は袋状収納室21内の充填部材収容袋22を取替えることができる。すなわち、
図4の(A)に示すごとく、ファスナ21aを開けて新たな充填部材収容袋22を袋状収納室21に挿入後、
図4の(B)に示すごとく、ファスナ21aを閉じることにより取替えることができる。柱ユニット3’及び枕本体1’も同様である。
【0024】
尚、
図3における柱ユニット2’、3’の形状は任意の形状、たとえば、
図5の(A)に示すごとく、三角形の柱ユニット2’、3’でもよく、
図5の(B)に示すごとく、丸形の柱ユニット2’、3’、4’、5’でもよく、
図5の(C)に示すごとく、四角形の柱ユニット2’、3’、4’、5’、6’、7’でもよい。また、柱ユニット2’、3’の数は3以上、たとえば、
図5の(B)に示すごとく、4、または、
図5の(C)に示すごとく、6にすることができる。この場合、各柱ユニット毎に充填部材の硬軟度を独立に調整できる。この結果、枕全体の硬軟度を調整できる。
【0025】
また、充填部材を収容し易いように、枕本体1’及び柱ユニット2’、3’もファスナ付きの袋状収容室及び袋状収容室に収容される充填部材を予め収容した充填部材収容袋によって構成される。充填部材収容袋は洗浄できると共に、交換可能である。
【0026】
さらに、上述の枕本体及び柱ユニットの代りに、枕本体と枕本体の下部の一部に設けられた柱ユニットとを充填部材を導入して縫製により一体的に構成してもよい。この場合も、充填部材は枕本体の充填部材と柱ユニットの充填部材との2層構造となり、この結果、枕に対して被験者の自然の状態に精度よく維持できる。尚、枕本体と柱ユニットとの間に仕切を設けなくても設けてもよい。仕切を設けた場合には、枕本体の充填部材と柱ユニットの充填部材とを相異ならせることもできる。また、枕本体は、上面視で、矩形でもよく、前方側に凹状(“く”の字状)に屈曲してもよい。さらに、柱ユニットは単数でもよく、複数でもよい。
【0027】
また、上述の実施の形態においては、枕本体に縫合箇所及びマチを設ける必要はないが、縫合箇所及び/又はマチを設けてもよい。
【0028】
さらに、本発明は上述の実施の形態の自明の範囲のいかなる変更にも適用し得る。
【符号の説明】
【0029】
1、1’:枕本体
11、11’:後頭支持領域
12、12’:頸支持領域
13、14、13’、14’:側頭支持領域
2、2’、3’、4’、5’、6’:柱ユニット
21:袋状収納室
21a:ファスナ
22:充填部材収容袋
100:枕
101:後頭支持領域
102:頸支持領域
103、104:側頭支持領域
200:被験者
201:後頭部
202:頸部
300:マットレス
X:縫合箇所
Y:マチ