(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】音声伝送通気マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20220426BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
(21)【出願番号】P 2020126263
(22)【出願日】2020-07-27
(62)【分割の表示】P 2018136025の分割
【原出願日】2018-07-19
【審査請求日】2020-09-01
(32)【優先日】2017-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】320012439
【氏名又は名称】ティーオーツーエム コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100166372
【氏名又は名称】山内 博明
(72)【発明者】
【氏名】ツァ ギャリー
(72)【発明者】
【氏名】ツァ フランク
(72)【発明者】
【氏名】王▲ティン▼▲ファ▼
(72)【発明者】
【氏名】ツァ ナンシー
(72)【発明者】
【氏名】ツァ エミリー
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-42753(JP,A)
【文献】登録実用新案第3121691(JP,U)
【文献】特開2014-250(JP,A)
【文献】登録実用新案第3206318(JP,U)
【文献】実開平8-992(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/11
A62B18/02、18/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気が通る繊維の複数の隙間を有する通気領域と、前記隙間を有さない音声通過領域とを備えるマスク本体を含み、
前記音声通過領域は、装着時に携帯電話のマイクロフォンの位置に対応する位置で、マスクの内側層と外側層とを四角形状又は円形状の1つのヒートシールでシールした
無孔構造の領域であ
り、
前記音声通過領域の長さと幅、又は直径は0.5~2センチである音声通過通気マスク。
【請求項2】
前記音声通過通気マスクは1層、2層又は3層、或は3層以上の構造を有し、このうち、前記ヒートシールにより各層を互いに溶着させる請求項1に記載の音声通過通気マスク。
【請求項3】
前記音声通過通気マスクの材料は人工繊維である請求項1に記載の音声通過通気マスク。
【請求項4】
前記人工繊維は、ポリウレタン(PU、polyurethanes)、ポリエチレン(PE、Polyethylene)、ポリエチレンテレフタレート (PET 、polyethylene terephthalate)、ポリプロピレン(PP 、Polypropylene)、ポリブチレン(PB、Polybutylene)、ポリスチレン(PS、Polystyrene)からなる群から選ばれる請求項
3に記載の音声通過通気マスク。
【請求項5】
ヒートシール後に前記シールされたところで特定色を呈するように、前記
音声通過通気マスクのいずれか一層に特定色の不織布を設ける請求項1に記載の音声通過通気マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声を伝えられる通気マスクに関する。本発明により、マスクを外さずに音声をしっかり伝えられる。
【背景技術】
【0002】
マスクによって空気における有害物質が呼吸を通して人体に吸い込まれることが避けられる。工業化の発展に伴い、空気汚染も益々深刻になり、とくに粉じんの問題について、マスクを掛ける人の数も多くなり、インフルエンザの期間にわたって、伝染されないように数多くの人がいつもマスクを掛けている。
【0003】
マスクは空気における埃、細菌、ウイルス、化学気体、花粉などの有害物質を阻隔できるが、空気を進出させるため、マスクの主体はほとんど多孔性材料であり、このうち、マスクのピンホール構造が音声を吸収し、マスクを掛けて喋る場合に声が小さくなり、かつ歪んでしっかり聞こえない。
【0004】
近年、人々が携帯電話を持っており、マスクを掛けたまま電話に出る機会が増えるが、マスクの吸音問題で要事を話し合う時、大部分の人がマスクを外して電話をする形になり、これにより、マスクの保護機能がなくなる。
【0005】
したがって、音声をしっかり伝えられるマスクを設計する必要があり、マスクを掛ける場合に人の声もよく伝えられることがマスクの機能として現代人にとって大切なのである。
【0006】
台湾の実用新案M536070は本考案の創作者による先願であって、ホールが設けられる主体と、通音膜を有する通音構造とを含み、マスク内部の音声がホール及び通音構造を介してしっかりとマスクの外部に伝えられることを特徴とするマスクである。このマスクによって、喋る時にマスクを外さずに音声をマスクの外部に伝えられる。この前願において通音膜を介してマスク内部の音声が伝えられるが、封口が密着していないことによるマスクの保護性能を失って更に音声の伝えに影響を及ばす恐れがあり、一方、粘着剤で通音膜を固定する場合、粘着剤における揮発性有機溶媒が健康に悪いおそれがあるうえで、もう一枚の通音膜を更に設けることもマスクのコスト向上に関係している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、マスクのコストを抑制するため材料を追加しないように音声がしっかり伝えられることは、本発明が解決すべき重要な課題になる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、複数の通気ピンホールである通気構造と、通気ピンホールを有さない伝音構造とを備える本体を含み、前記伝音構造は、通気マスクで伝音領域を特定し、マスクの内側と外側方向にヒートシールを行い、前記ヒートシールによって伝音領域における複数の通気ピンホールが熱溶接で無孔構造になる方法で製造されることを特徴とする音声伝送通気マスクを提供する。
【0009】
上記の発明の目的を達成するために、前記伝音領域の長さと幅、又は直径は0.5~2センチである。
【0010】
上記発明の目的を達成するために、前記通気マスクは1層、2層又は3層、或は3層以上の構造を有し、このうち、前記ヒートシールにより各層を互いに溶着させる。
【0011】
上記発明の目的を達成するために、前記通気マスクの材料は人工繊維から選ばれる。
【0012】
上記発明の目的を達成するために、前記人工繊維は、ポリウレタン(PU、polyurethanes)、ポリエチレン(PE、Polyethylene)、ポリエチレンテレフタレート (PET 、polyethylene terephthalate)、ポリプロピレン (PP 、Polypropylene)、ポリブチレン(PB、Polybutylene)、ポリスチレン(PS、Polystyrene)からなる群から選ばれる。
【0013】
上記発明の目的を達成するために、ヒートシール後に前記シールされたところで特定色を呈するように、前記通気マスクのいずれか一層に特定色の不織布を設ける。
【0014】
本発明の他の目的は、複数の通気ピンホールである通気構造と、通気ピンホールを有さない伝音構造と、通気ピンホールを有さない折りリングとを備える本体を含み、前記折りリングは伝音構造の外周にある環状構造であり、前記伝音構造は、通気マスクで伝音領域を特定し、マスクの内側と外側方向にヒートシールを行い、前記ヒートシールによって伝音領域における複数の通気ピンホールが熱溶接で無孔構造になる方法で製造され、前記折りリングは、前記通気マスクの伝音構造の外周で音声拡大領域を選定し、マスクの内側と外側方向にヒートシールを行うことによって通気ピンホールが溶接で無孔構造になり、前記折りリングの数量は一つ又は一つ以上であることを特徴とする音声拡大機能を有する音声伝送通気マスクを提供する。
【0015】
上記発明の目的を達成するために、前記伝音領域の長さと幅、又は直径は0.5~2センチであり、前記折りリングの長さと幅、又は直径は0.6~3センチである。
【0016】
上記発明の目的を達成するために、前記通気マスクは1層、2層又は3層、或は3層以上の構造を有し、このうち、前記ヒートシールにより各層を互いに溶着させる。
【0017】
上記発明の目的を達成するために、前記通気マスクの材料は人工繊維から選ばれる。
【0018】
上記発明の目的を達成するために、前記人工繊維は、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレンからなる群から選ばれる。
【0019】
上記発明の目的を達成するために、ヒートシール後に前記シールされたところで特定色を呈するように、前記通気マスクのいずれか一層に特定色の不織布を設ける。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】折りリングを有する伝音構造マスクを示す図である。
【
図4】折りリングを有する伝音構造マスク断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下は実施例で本発明を更に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1 一層構造を有する伝音マスク
【0022】
図1には、単層ポリプロピレン(PP)繊維不織布であるマスク本体(10)を有するマスク(1)が示されている。超音波シール機によって前記マスクの右下部でシールを行い、シールされたところは、ヒートシールの高温でPP繊維のピンホールが互いに溶着して直径0.5~2センチの円形の伝音構造(11)になり、シールされたところは透明であってもよいが、これに限定されていない。マスクの材料は、ポリプロピレン以外、他の人工繊維、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンまたはポリスチレンで置換されてもよい。
【0023】
マスクの効果は以下の通りである。マスクを掛ける状態で右手で携帯電話を持ちながら話すことによって伝音効果を試験する結果、携帯電話を介して使用者の声がはっきり聞こえる一方、伝音構造(11)がない左側で、音量が小さくなるとともに、音声が歪んだ状況が発生した。試験によって、マスクにおいてシールされたところは、ピンホールによる音声吸収がないので、音声が有効に伝送できる。
実施例2 彩色の伝音構造を有するマスク
【0024】
PP繊維マスクにおいて、マスク内部のいずれか一層に特定色の不織布を設け、マスクの下方中央部で超音波シール機によってシールを行い、シールされたところでPP繊維のピンホールがヒートシールの高温で互いに溶着されて直径0.5~2センチの円形の伝音構造になり、また、シールされたところのPP材料は透明であるので、上記の特定色を示させる。マスクの材料は、ポリプロピレン以外、他の人工繊維、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンまたはポリスチレンで置換されてもよい。
【0025】
マスクの効果は以下の通りである。マスクを掛ける状態で右手で携帯電話を持ちながら話すことによって伝音効果を試験する結果、携帯電話を介して使用者の声がはっきり聞こえる一方、マスクにおいてシールされたところは、ピンホールによる音声吸収がないので、音声が有効に伝送できると分かる。また、シールされたところが特定色を呈しているので、用途又は使用者によって区別できる利点があり、マスクの見た目を更に綺麗にすることができる。
実施例3 三層構造を有する伝音マスク
【0026】
図1において、本体(10)がポリエチレン繊維不織布である三層マスク(1)が示されている。前記マスクの下方中央部で、超音波シール機によってシールを行い、シールされたところでPE繊維のピンホールがヒートシールの高温によって互いに溶着して寸法が0.5~2センチの四角形の伝音構造(11)を形成する。マスクの断面は
図2に示され、伝音構造(11)でマスク内層(101)、マスク中間層(102)及びマスク外層(103)の三層がヒートシールによって粘着されてピンホールを有さない状態になる。シールされたところは透明であってもよいが、これに限定されていない。マスクの材料は、ポリエチレン(PE)以外、他の人工繊維、例えば、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンまたはポリスチレンで置換されてもよい。
【0027】
マスクの効果は以下の通りである。マスクを掛ける状態で右手で携帯電話を持ちながら話すことによって伝音効果を試験する結果、携帯電話を介して使用者の声がはっきり聞こえる一方、伝音構造(11)がない左側で、音量が小さくなるとともに、音声が歪んだ状況が発生した。試験によって、マスクにおいてシールされたところは、ピンホールによる音声吸収がないので、音声が有効に伝送できる。
実施例4 音声拡大効果を有する伝音マスク
【0028】
図3において、PET繊維不織布である本体(10)を含む三層マスク(1)が示されている。前記マスクの右下部で、超音波シール機によってシールを行い、シールされたところ(11)でPET繊維のピンホールがヒートシールの高温で互いに溶着されており、シールされたところは、直径0.5~2センチの円形の伝音構造(11)が形成されるとともに、前記円の外周に環状構造の折りリング(12)が形成され、この折りリングの直径又は寸法が0.6~3センチである。マスクの断面は
図4で示され、マスク内層(101)、マスク中間層(102)、マスク外層(103)が伝音構造(11)と折りリング(12)にある部分は、ヒートシールで三層が粘着されるのでピンホールを有さず、シールされたところは透明であってもよいが、これに限られていない。マスクの材料は、PET以外、他の人工繊維、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンまたはポリスチレンで置換されてもよい。
【0029】
マスクの効果は以下の通りである。マスクを掛けた状態で右手で携帯電話を持ちながら話すことによって伝音効果を試験した結果、携帯電話を介して使用者の声が大きくてはっきり聞こえる一方、伝音構造(11)がない左側で、音量が小さくなるとともに、音声が歪んだ状況が発生した。試験によって、マスクにおいてシールされたところは、ピンホールによる音声吸収がないので、音声が有効に伝送できる。また、伝音構造の外周にある折りリングの構造は、スピーカのエッジと似ているので、折りリングは、縦波が中央部の伝音構造においてパワーと弾力とを向上させ、音声拡大の効果をもたらせる。
【0030】
以上の詳細な説明は、本発明の実行できる実施例に対する具体的な説明であり、ただし、これらの実施例は本発明の特許請求の範囲を限定するものではなく、本発明の技術特徴から脱しない均等的な実施或いは変更はいずれも本願の特許請求の範囲に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0031】
1 マスク
10 マスク本体
11 伝音構造
101 マスク内層
102 マスク中間層
103 マスク外層
12 折りリング