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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】揚水装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 23/02 20060101AFI20220426BHJP
   F04B 53/20 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
F04B23/02 C
F04B53/20 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020166813
(22)【出願日】2020-10-01
(65)【公開番号】P2022059218
(43)【公開日】2022-04-13
【審査請求日】2022-01-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504039764
【氏名又は名称】株式会社 フルカワ
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 和夫
【審査官】大屋 静男
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-183566(JP,A)
【文献】実開昭63-102986(JP,U)
【文献】特開2012-184719(JP,A)
【文献】特開昭62-253900(JP,A)
【文献】特開2018-091218(JP,A)
【文献】特開昭60-172389(JP,A)
【文献】特開2009-209684(JP,A)
【文献】特開2019-210911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 23/02、37/16、53/20
F04C 25/02
F04D 29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラムの内部スペースを減圧し水を揚水させる真空ポンプと、
前記内部スペースに保持された前記水を前記ドラムから外部送水する送水ポンプと、
前記水を収容して固形成分を沈降させてから排水するタンクと、
前記タンクに収容された前記水の一部を前記真空ポンプに冷媒として供給する供給ホースと、
前記タンクに収容した前記水の排水に関与する排水スペースと前記冷媒の供給に関与する供給スペースとを区画すると共に前記固形成分を通過させずに前記水を通過させるストレーナと、を備え
前記タンクの前記排水スペースは、
前記ドラムから送り出された前記水が注水される第1収容室と、
前記第1収容室に収容された前記水が上層で分断され下層で連通する第2収容室と、
前記第2収容室に収容された前記水が下層で分断され上層で連通し下層から前記排水される第3収容室と、から構成される揚水装置。
【請求項2】
請求項1に記載の揚水装置において、
前記タンクの前記供給スペースは、
前記第1収容室、前記第3収容室に収容された前記水が連通することなく分断されると共に前記第2収容室に収容された前記水が前記ストレーナを介して連通する第4収容室として構成される揚水装置。
【請求項3】
請求項2に記載の揚水装置において、
前記第4収容室に配置される分離箱は、
下部が開口する空洞を持つ箱体と、
前記ドラムを減圧した吸気と前記冷媒の排液との混合体を前記真空ポンプから前記空洞の上部に導入する導入ポートと、
前記混合体から分離した前記吸気を前記空洞から外部放出する放出ポートと、を有する揚水装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の揚水装置において、
前記送水ポンプは、前記ドラムの前記内部スペースに配置されている揚水装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の揚水装置において、
前記真空ポンプは、前記タンクの底部の下側に配置されている揚水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェルポイント工法に採用される揚水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水の多い地盤を掘削する場合、真空吸引し強制排水して地下水位を低下させ、地盤を安定化させる補助工事が実施される。そのような補助工事として、ウェルポイント工法が広く実施されている。
【0003】
図7に示すようにウェルポイント工法は、ウェルポイント61と呼ばれる長さ70cmでφ50mmの濾過網が、1.8m~5.5mの吸水管62(ライザパイプ)の先端に設けられている。そして、多数の吸水管62が地盤中65に打ち込まれ、地上に設置した揚水装置10で真空吸引し、地下水を汲み上げて地上に強制排水する。この排水は、一部が取水され、揚水装置10に設けられた水封式真空ポンプの駆動に必要な封水として利用される。さらに、この封水は、真空ポンプの発熱により昇温するので、循環しながら冷却され冷媒として真空ポンプに再投入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-184719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウェルポイント工法は、砂地盤に適用されることも多く、この場合、濾過網で除去しきれない固形成分が、真空吸引された排水に含まれる場合がある。揚水装置の真空ポンプに供給された冷媒に固形成分が多く含まれると、機械部品の摩滅が進行し、真空ポンプの劣化が加速する課題があった。また、冷媒を真空ポンプに循環供給するにあたっても、除熱が不十分で真空ポンプが過熱してしまう課題があった。
【0006】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、固形成分を多く含む排水の一部を冷媒として取水する場合、固形成分の含有量を減らし、さらに十分に除熱された冷媒を利用できる揚水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の揚水装置は、ドラムの内部スペースを減圧し水を揚水させる真空ポンプと、前記内部スペースに保持された前記水を前記ドラムから外部送水する送水ポンプと、前記水を収容して固形成分を沈降させてから排水するタンクと、前記タンクに収容された前記水の一部を前記真空ポンプに冷媒として供給する供給ホースと、前記タンクに収容した前記水の排水に関与する排水スペースと前記冷媒の供給に関与する供給スペースとを区画すると共に前記固形成分を通過させずに前記水を通過させるストレーナと、を備え、前記タンクの前記排水スペースは、前記ドラムから送り出された前記水が注水される第1収容室と、前記第1収容室に収容された前記水が上層で分断され下層で連通する第2収容室と、前記第2収容室に収容された前記水が下層で分断され上層で連通し下層から前記排水される第3収容室と、から構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、固形成分を多く含む排水の一部を冷媒として取水する場合、固形成分の含有量を減らし、さらに十分に除熱された冷媒を利用できる揚水装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る揚水装置のZ-X縦断面図。
図2】実施形態で適用される真空ポンプの概要図。
図3】実施形態に係る揚水装置のX-Y水平断面図。
図4】(A)タンクのY-X水平断面図、(B)タンクのX-Z縦断面図。
図5】(A)図3のA-A断面における揚水装置のY-Z縦断面図、(B)図3のB-B断面における揚水装置のY-Z縦断面図。
図6】(A)実施形態で適用される分離箱のZ-X縦断面図、(B)Y-Z縦断面図、(C)X-Y水平断面図。
図7】ウェルポイント工法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る揚水装置10のZ-X縦断面図(図3のI-I断面)である。このように、揚水装置10は、ベース16の上面に、ドラム20と真空ポンプ30とが固定されており、この真空ポンプ30の上部にラック17を介してタンク40が固定されている。そして、地盤中65(図6)の地下水22は、吸水ポート26から吸水されて、排水ポート48から排水される。
【0011】
そして揚水装置10は、ドラム20の内部スペース21を減圧し水22を揚水させる真空ポンプ30と、この内部スペース21に保持された水22をドラム20から外部送水する送水ポンプ25と、水22を収容して固形成分41を沈降させてから排水するタンク40と、このタンク40に収容された水22の一部を真空ポンプ30に冷媒22aとして供給する供給ホース42と、タンク40に収容した水22の排水に関与する排水スペース15と冷媒22aの供給に関与する供給スペース14(図4)とを区画すると共に固形成分41を通過させずに水22を通過させるストレーナ45と、を備えている。
【0012】
図2は、実施形態で適用される真空ポンプ30の概要図である。この真空ポンプ30は、一般に、水封式真空ポンプと呼ばれるもので、ケーシング36と羽根車35とから本体が構成されている。この羽根車35は、ケーシング36と偏心した位置に取り付けられ、モータ37により回転する。なお、図示において真空ポンプ30は、羽根車35の位置のケーシング36においてベース16に固定されているものを例示しているが、モータ37の位置のケーシング36において固定される場合もある。
【0013】
このケーシング36には、ドラム20を減圧した吸気31を吸引する吸引ポート38と、封水としても作用する冷媒22aを供給す供給ポート33と、吸気31と冷媒22a(封水)の排液との混合体32を排出する排出ポート39とが設けられている。
【0014】
このケーシング36の内部で、適当量の封水の存在の下、羽根車35を回転させると、この封水は遠心力によってケーシング36と同心の円形状の水膜34を作りながら運動する。ここで水膜34はガスを押し出すピストンのような役割を果たし、吸引ポート38から入った吸気31は圧縮されて、排出ポート39より排出される。羽根車35の回転にしたがって、吸気31の吸引、圧縮、混合体32の排出を連続的に行い、ポンプとしての機能を発現する。
【0015】
このように、真空ポンプ30は、吸引した吸気31の圧縮・排出を繰り返すため、封水の水膜34の温度は上昇し続けてしまう。そこで、タンク40に収容された水22を、供給ポート33からケーシング36の内部に、冷媒22aとして連続的に供給する。同時に、封水の一部を排液とし吸気31との混合体32にして、排出ポート39からケーシング36の外部に連続的に排出する。
【0016】
なお、真空ポンプ30が、タンク40の底部の下側に配置されていることにより、水頭圧を高めて冷媒22aを効率よくケーシング36の内部に供給することができる。さらに、真空ポンプ30とタンク40の設置スペースを共有化できるので、省スペース化を達成できる。なお本発明の実施において、真空ポンプ30の配置は、タンク40の底部の下側に限定されることはなく、タンク40の側壁に隣接する位置等、任意の位置とすることができる。
【0017】
水封式の真空ポンプ30は、このような原理を持つため、水蒸気や水滴を含んだ気体の吸気に適している。一方において、ケーシング36の内部で水膜34を形成する封水は、ケーシング36や羽根車35にダメージを与えないように、清浄であることが望ましい。このため、タンク40から供給される冷媒22a(封水)は、固形成分41等が極力除去されていることが望ましい。
【0018】
図1に戻って説明を続ける。ドラム20は、地盤中65(図6)のウェルポイント61から吸水管62を介して吸水された水22の入り口となる吸水ポート26と、上部が開口し内部スペース21を形成すると共に送水ポンプ25を収容する容体23と、この容体23の上部開口を閉止する蓋体24と、から構成される。そして、真空ポンプ30により内部スペース21が減圧されることで、地盤中65から揚水された水22がドラム20に溜まる。
【0019】
蓋体24には、送水ポンプ25に接続される送水管27と、下端が内部スペース21に開口し外側からガスを吸気31する吸気ポート28と、が固定されている。そして、この吸気ポート28の上端は、吸引ホース46を介して真空ポンプ30の吸引ポート38(図2)に接続されている。送水管27の基端は、送水ポンプ25に接続され、ドラム20の内部スペース21から外部送水された水22は、送水管27の先端からタンク40の排水スペース15に注水される。
【0020】
送水ポンプ25は、ドラム20の内部スペース21に配置されることにより、送水ポンプ25とドラム20の設置スペースを共有化できるので、省スペース化を達成できる。また、一方において、本発明の実施において、送水ポンプ25の配置は、ドラム20の内部スペース21に限定されることはなく、ドラム20の側壁に隣接する位置等、任意の位置とすることができる。
【0021】
また図3は、実施形態に係る揚水装置10のX-Y水平断面図(図1図5のIII-III断面)である。図4(A)はタンク40のY-X水平断面図(図4(B)のA-A断面)である。図4(B)はタンク40のX-Z縦断面図(図4(A)のB-B断面)である。
【0022】
このようにタンク40には、第1仕切り板43、第2仕切り板44及びストレーナ45が設けられている。第1仕切り板43と第2仕切り板44は、タンク40の内部を互いに平行となるように配置されている。そして、ストレーナ45は、第1仕切り板43、第2仕切り板44及びタンク40の底面に対し、直角を成すように配置されている。
【0023】
これによりタンク40の排水スペース15は、ドラム20から送り出された水22が注水される第1収容室11と、第1収容室11に収容された水22が上層で分断され下層で連通する第2収容室12と、第2収容室12に収容された水22が下層で分断され上層で連通し下層から排水される第3収容室13と、から構成される。
【0024】
タンク40には、水22を取水して供給ホース42に冷媒22aとして供給する取水ポート49が設けられている。この取水ポート49が接続する供給スペース14は、第1収容室11、第3収容室13に収容された水が連通することなく分断されると共に第2収容室12に収容された水がストレーナ45を介して連通する第4収容室14として構成される。そして、第4収容室14には、分離箱50が配置されている。
【0025】
図5(A)は図3のA-A断面における揚水装置10のY-Z縦断面図である。第1仕切り板43は、第1収容室11と第4収容室14を分断するとともに、第1収容室11と第2収容室14を下層に設けた開口18で連通させるとともにおいて上層において分断している。
【0026】
図5(B)は図3のB-B断面における揚水装置10のY-Z縦断面図である。第2仕切り板44は、第3収容室13と第4収容室14を分断するとともに、第2収容室12と第3収容室13の上層をV字切欠で連通させるとともに下層において分断している。
【0027】
このように、タンク40の内部が区画されることにより(ここで図1参照)、送水管27からの注水22は、排水スペース15(11,12,13)の内部を上下方向に蛇行しながら排水ポート48から排水される。水22に含まれる固形成分41は、重力や遠心力により沈降し、タンク40の底面に滞留する。
【0028】
図5(B)に戻って説明を続ける。第2収容室12に収容された水22は、第2仕切り板44の上部のV字切欠を超えて、第3収容室13に流入し、排水ポート48(図1)から排水される。
【0029】
ストレーナ45は、網目状の金属又は布メッシュで構成され、固形成分41を通過させずに水22を通過させる。そしてストレーナ45は、第2収容室12と第4収容室14とを区画し、第4収容室14に固形成分41を除去した水22を供給する。さらにストレーナ45は、熱伝導率の大きい銅メッシュ等を用いることにより、第4収容室14に収容される冷媒22aを冷却することができる。なおストレーナ45の設置位置は、特に限定はなく、タンク40に収容した水22の排水に関与する排水スペース15と冷媒22aの供給に関与する供給スペース14とを区画する位置に適宜設置される。
【0030】
図6(A)は実施形態で適用される分離箱50のZ-X縦断面図であり、図6(B)はそのY-Z縦断面図であり、図6(C)はそのX-Y水平断面図である(以下、適宜図1参照)。このように分離箱50は、下部が開口する空洞51を持つ箱体52と、ドラム20を減圧した吸気31と冷媒22aの排液との混合体32を真空ポンプ30から空洞51の上部に導入する導入ポート55と、混合体32から分離した吸気31を空洞51から外部放出する放出ポート56と、を有している。この分離箱50は、フック57によりタンク40の縁に係止されている。
【0031】
図5(B)に戻って説明を続ける。真空ポンプ30から排出された、吸気31と冷媒22a(封水)の排液との混合体32は、排出ホース47を介して導入ポート55から分離箱50に導入される。導入された混合体32は、空洞51において吸気31と冷媒22a(水22)に分離され、吸気31は放出ポート56から外部放出され、冷媒22a(水22)は第4収容室14に戻される。
【0032】
このように、冷媒22aは、供給ホース42及び排出ホース47を介して、第4収容室14と真空ポンプ30とを循環している。そしてこの循環している冷媒22aは、時間とともに、温度上昇し蒸発等で消失するが、ストレーナ45の機能により、冷却され補充される。
【0033】
以上説明したように、本発明に係る揚水装置は、排水を収容するタンクの一部のスペースをストレーナで区画することにより、固形成分の含有量を減らしさらに十分に冷却された状態で、排水を取水して真空ポンプの冷媒として利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
10…揚水装置、11…第1収容室、12…第2収容室、13…第3収容室、14…第4収容室(供給スペース)、15…排水スペース、16…ベース、17…ラック、18…開口、20…ドラム、21…内部スペース、22…水、22a…冷媒、23…容体、24…蓋体、25…送水ポンプ、26…吸水ポート、27…送水管、28…吸気ポート、30…真空ポンプ、31…吸気、32…混合体、33…供給ポート、34…水膜、35…羽根車、36…ケーシング、37…モータ、38…吸引ポート、39…排出ポート、40…タンク、41…固形成分、42…供給ホース、43…第1仕切り板、44…第2仕切り板、
45…ストレーナ、46…吸引ホース、47…排出ホース、48…排水ポート、49…取水ポート、50…分離箱、51…空洞、52…箱体、55…導入ポート、56…放出ポート、57…フック、61…ウェルポイント、62…吸水管、65…地盤。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7