(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】チョコレートの風味増強剤及びチョコレートの風味強化組成物並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/10 20160101AFI20220426BHJP
A23G 1/30 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
A23L27/10 Z
A23G1/30
(21)【出願番号】P 2021089345
(22)【出願日】2021-05-27
【審査請求日】2021-07-08
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505234188
【氏名又は名称】ケミ・コム・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東谷 晶
(72)【発明者】
【氏名】柴▲崎▼ 彩人
(72)【発明者】
【氏名】下川 祐子
(72)【発明者】
【氏名】清水 龍之助
【審査官】緒形 友美
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-101471(JP,A)
【文献】特開2015-027280(JP,A)
【文献】国際公開第2021/085489(WO,A1)
【文献】特表2016-538881(JP,A)
【文献】米国特許第02887388(US,A)
【文献】特開昭55-054857(JP,A)
【文献】特開昭54-092662(JP,A)
【文献】特開2006-121958(JP,A)
【文献】特開2012-210183(JP,A)
【文献】特開2011-250702(JP,A)
【文献】特開2011-152080(JP,A)
【文献】特開2020-092672(JP,A)
【文献】特開2011-092088(JP,A)
【文献】特開2006-158213(JP,A)
【文献】特開2011-178730(JP,A)
【文献】特開2021-145572(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111406775(CN,A)
【文献】特開2009-297017(JP,A)
【文献】特開2010-268786(JP,A)
【文献】特表2004-517618(JP,A)
【文献】Owusu, M. et al.,Assessment of aroma of chocolate produced from two Ghanaian cocoa fermentation types,Expression of Multidisciplinary Flavour Science, Proceedings of the Weurman Symposium, 12th, Interlaken, Switzerland,2008年,Meeting Date 2008,363-366
【文献】Fadel, H. H. M. et al.,Cocoa substitute: Evaluation of sensory qualities and flavour stability,European Food Research and Technology,2006年,Vol.223, No.1,pp.125-131
【文献】Lin, Mei-li et al.,Separation and identification of aroma compounds in yeast extract,食品科学,2013年,34(8),259-262
【文献】YUST, Maria M. et al.,Determination of tryptophan by high-performance liquid chromatography of alkaline hydrolysates with spectrophotometric detection,Food Chemistry,2004年,Vol.85,pp.317-320
【文献】AYAZ, F. A. et al.,DETERMINATION OF CHEMICAL COMPOSITION OF ANATOLIAN CAROB POD (CERATONIA SILIQUA l.): SUGARS, AMINO ACID AND ORGANIC ACIDS, MINERALS AND PHENOLIC COMPOUNDS,Journal of Food Quality,2007年,Vol.30,pp.1040-1055
【文献】Lau, B. et al.,Cocoa substitutes - a future must,Modern Dairy,1980年,Vol.59, No.3,pp.12-14
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/10
A23G 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョコレートの風味増強剤の製造方法であって、
該製造方法が、プロテアーゼ処理された脱脂濃縮乳、醤油、及び酵母エキスからなる群から選択される少なくとも1種の食品と、糖とを含む混合物を、pH9~12の条件下において90~160℃の温度範囲で高温加熱処理することを含み、
該チョコレートの風味増強剤が、チョコレートの風味増強剤の全体に対して、100ppm以上のFurfurylalcohol、30ppm以上のγ―Butyrolactone、及び1.8ppm以上のMethylPyrazineを含有する、
上記チョコレートの風味増強剤の製造方法。
【請求項2】
前記混合物がプロテアーゼ処理されたカカオマスをさらに含む、請求項1に記載のチョコレートの風味増強剤の製造方法。
【請求項3】
チョコレートの風味増強剤であって、
該チョコレートの風味増強剤が、チョコレートの風味増強剤の全体に対して、100ppm以上のFurfurylalcohol、30ppm以上のγ―Butyrolactone、及び1.8ppm以上のMethylPyrazineを含有し、かつ
プロテアーゼ処理された脱脂濃縮乳、醤油、及び酵母エキスからなる群から選択される少なくとも1種の食品と、糖とを含む混合物
であって、加熱前のpHが9~12である上記混合物の加熱反応物からなる、
上記チョコレートの風味増強剤。
【請求項4】
前記混合物がプロテアーゼ処理されたカカオマスをさらに含む、請求項
3に記載のチョコレートの風味増強剤。
【請求項5】
請求項3
又は4に記載のチョコレートの風味増強
剤を含有する飲食品
であって、前記チョコレートの風味増強剤の添加量が、前記飲食品の質量に基づいて、約0.01~約5.0質量%である、上記飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品と糖の加熱反応により、自然なチョコレート特有の香りや呈味を強く表現できる香気成分の組合せを見出し、それらの香気成分をいずれも高濃度に含有し、より自然なチョコレート特有の香りや呈味を強く表現できるチョコレートの風味増強剤及びチョコレートの風味強化組成物並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カカオ、カカオの加工品であるチョコレートを主原料にするチョコレート加工品、チョコレートの風味増強剤或いはチョコレートフレーバーは、従来から加工食品において、コストダウンの為にチョコレート原料を多く使用出来ない場面や、加工工程で失われる風味を補う用途で広くニーズがある。
また、チョコレート風味を増強したい場合に、ココアパウダーを増やすと食品がアルカリに振れる為pH調整が必要となり、味づくりが難しくなる事情も挙げられる。しかしながら、チョコレート風味を増強したい場面で、従来の風味増強剤では満足する風味が得られない。よりロースト香を含む自然なチョコレート特有の香り、呈味に濃厚感やコクが感じられるチョコレートの風味増強剤やチョコレートの風味強化組成物が求められている。
【0003】
食品の香気成分の生成に関与する反応として、糖とアミノ酸の混合物を加熱することで起こるメイラード反応が知られている。メイラード反応は、アマドリ化合物を生成する初期段階、分子内閉環しピロール類やピリジン類が生成し,一方でアマドリ化合物が開裂した後に閉環するとフラン類やフルフラールなどの含酸素ヘテロ化合物が生成する中期段階、ジカルボニル化合物、不飽和カルボニル化合物、フルフラール類などがさらにアミノ化合物と反応する終期段階を経て様々な香気成分を生じる。また、メイラード反応によって生じたカルボニル化合物によるストレッカー分解反応も同時に起こり、この反応でも香気成分が生成される。メイラード反応による化合物の変化は、反応物、反応物の配合量や配合比、pH、温度などの様々な因子によって大きく変動するため、非常に複雑であり、前記因子の変化によって、生成される香気成分も大きく変わることが知られている。
【0004】
特許文献1には、良好なローストミート様の風味を有する、アミノ酸を含む酵母エキスと糖を加熱反応させた調味料について記載されている。
【0005】
特許文献2には、ミートフレーバーを呈する、アミノ酸を含有する酵母エキスの加熱反応調味料について記載されている。
【0006】
特許文献3には、コク味を増強する、グルタミン酸含有エキス及び糖の加熱処理した調味料について明記されている。
【0007】
カカオ原料を処理し、その香味や香気を改善する方法やカカオマスの代替品に関する従来技術として以下のものが挙げられる。
【0008】
特許文献4には、香味が増強されたカカオ処理物を製造するための酵素処理法について明記され、焙焼処理したカカオ豆から得られる各種原料をプロテアーゼ処理することにより、旨味が増強され、マイルドな香味を有するカカオ酵素処理物が得られることが記載されている。
【0009】
特許文献5には、ココア液の酸処理後にプロテアーゼ処理を含んでなる、酵素処理した未発酵ココア液の製造方法について明記され、ココア液をプロテアーゼで処理して、フレーバー前駆体を増大させ、ロースト後の香気を改善する方法が記載されている。
【0010】
特許文献6には、酵母細胞壁と、糖と、油脂とを含み、色差計により測定したL値が50.0以下であることを特徴とする飲食品用組成物の製造方法について明記されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】WO2008/069173
【文献】WO2013/140901
【文献】特開2011-155967
【文献】特開2007-43931
【文献】WO2002/063974
【文献】特開2020-184941
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1~3に記載のアミノ酸を含有した酵母エキスを糖と加熱反応させた調味料は、いずれもチョコレート風味を発生させるものではない。
また特許文献4~5に記載の方法は、いずれもカカオ豆から得られる各種原料に対して各種処理を施し、チョコレートの香味や風味の改善を図るものであり、これらの方法ではカカオ豆由来の原料が必須であり、主原料となる。また、従来のチョコレートを主原料にするチョコレート加工品又はチョコレートフレーバーに関する技術として、カカオの原料をアセトンなどの溶剤を用いて抽出し溶剤を除去したココアオレオレジンなどが挙げられるが、いずれもチョコレート特有の風味が弱く、また、石油合成品で成り立つチョコレートフレーバーに関しては自然な風味を付与することが難しいため、焼き菓子、フラワーペーストやプリンといった飲食品に対して、自然なチョコレート特有の香りや呈味を強く風味付けできない問題があった。
また特許文献6に記載の酵母細胞壁と、糖と、油脂とを含み、色差計により測定したL値が50.0以下であることを特徴とする飲食品用組成物について、酵母細胞壁については一般的に入手できるものではなく、またアミノ酸が豊富な食品ではない。酵母から搾り取ったエキスが酵母エキスであり、残渣が酵母細胞壁である。前者はアミノ酸を多く含むが、後者は炭水化物や脂質が多く、アミノ酸含量は少ない。
【0013】
本発明は、より自然なチョコレート特有の香りや呈味を強く表現できるチョコレートの風味増強剤及びチョコレートの風味強化組成物、並びにその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、食品と糖とを含む混合物をアルカリ条件下で加熱反応することにより、チョコレート様香気成分の生成が促進され、チョコレート様香気を強く発現することを発見した。すなわち、特定の食品と糖とを含む混合物をアルカリ条件下において高温加熱処理することにより、ミートフレーバー様の香気であるフランチオールの発生を抑えつつ、自然なチョコレート特有の香りや呈味を強く表現できる香気成分を高濃度に含有し、自然なチョコレート特有の香りや呈味を強く表現できるチョコレートの風味増強剤が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、下記の通りである。
(1)乳製品、大豆由来食品、及び調味料食品からなる群から選択される少なくとも1種の食品と、糖とを含む混合物を、アルカリ条件下において90~160℃の温度範囲で高温加熱処理することを含む、チョコレートの風味増強剤の製造方法。
(2)前記少なくとも1種の食品が、プロテアーゼ処理された生乳、プロテアーゼ処理された生クリーム、プロテアーゼ処理された濃縮乳、プロテアーゼ処理された脱脂濃縮乳、プロテアーゼ処理された全脂粉乳液、プロテアーゼ処理された脱脂粉乳液、プロテアーゼ処理されたヨーグルト、チーズ、プロテアーゼ処理された豆乳、醤油、味噌、シイタケエキス、及び酵母エキスからなる群から選択される、(1)に記載のチョコレートの風味増強剤の製造方法。
(3)前記アルカリ条件下が、pH8~12の条件下である、(1)又は(2)に記載のチョコレートの風味増強剤の製造方法。
(4)前記チョコレートの風味増強剤が、Furfurylalcohol、γ―Butyrolactone及びMethylPyrazineを含有する、(1)~(3)のいずれかに記載のチョコレートの風味増強剤の製造方法。
(5)チョコレートの風味増強剤の全体に対して、前記Furfurylalcoholの含有量が100ppm以上、前記γ―Butyrolactoneの含有量が30ppm以上、及び前記MethylPyrazineの含有量が1.8ppm以上である、(4)に記載のチョコレートの風味増強剤の製造方法。
(6)前記混合物がプロテアーゼ処理されたカカオマスをさらに含む、(1)~(5)のいずれかに記載のチョコレートの風味増強剤の製造方法。
(7)チョコレートの風味増強剤の全体に対して、Furfurylalcoholの含有量が100ppm以上、γ―Butyrolactoneの含有量が30ppm以上、及びMethylPyrazineの含有量が1.8ppm以上である、チョコレートの風味増強剤。
(8)(7)に記載のチョコレートの風味増強剤、及び飲食品として許容可能な希釈剤又は担体を含む、チョコレートの風味強化組成物。
(9)(7)に記載のチョコレートの風味増強剤又は(8)に記載のチョコレートの風味強化組成物を含有する飲食品。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、より自然なチョコレート特有の香りや呈味を強く表現できるチョコレートの風味増強剤、該風味増強剤を含む風味強化組成物、及びその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明について、以下具体的に説明する。
【0018】
チョコレートの風味増強剤は、特定の食品と糖とを含む混合物(以下「加熱用混合物」と称することがある)をアルカリ条件下において90~160℃の温度範囲で高温加熱処理することによって得られる。加熱用混合物は、当該食品と、糖とを少なくとも含む。例えば、食品と糖とを混合する際に、イオン交換水を加えて混合して当該加熱用混合物を得てもよい。
上記得られたチョコレートの風味増強剤は、飲食品に自然なチョコレート特有の香りや呈味を強く付与することができる。
さらに、上記得られたチョコレートの風味増強剤に飲食品として許容可能な希釈剤又は担体を組み合わせることで、チョコレートの風味強化組成物として使用することができる。
【0019】
チョコレートやココアの香気は100種類以上の成分で構成されるが、その中でもMethyl Pyrazineはココア様のナッティーな香り、Furfuryl alcoholは香ばしいカラメル様の香り、γ-Butyrolactoneはココア様の甘い香りと呈味を示すことが知られている。本発明のチョコレートの風味増強剤は、Furfuryl alcohol、γ-Butyrolactone、Methyl Pyrazineをチョコレートの風味増強剤の全体に対しそれぞれ好ましくは100ppm以上、30ppm以上、1.8ppm以上含有することで、よりチョコレートらしい香りを呈する。
【0020】
より好ましくは、本発明のチョコレートの風味増強剤は、Furfuryl alcohol、γ-Butyrolactone、Methyl Pyrazineをチョコレートの風味増強剤の全体に対しそれぞれ100ppm~480ppm、30ppm~390ppm、1.8ppm~7ppm含有する。
【0021】
本発明で用いる食品には、乳製品、大豆由来食品、及び調味料食品が挙げられ、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。乳製品は、好ましくはプロテアーゼ処理された生乳、プロテアーゼ処理された生クリーム、プロテアーゼ処理された濃縮乳、プロテアーゼ処理された脱脂濃縮乳、プロテアーゼ処理された全脂粉乳液、プロテアーゼ処理された脱脂粉乳液、プロテアーゼ処理されたヨーグルト、チーズであり、より好ましくはプロテアーゼ処理された生クリーム、プロテアーゼ処理された濃縮乳、プロテアーゼ処理された脱脂濃縮乳である。大豆由来食品は、好ましくは味噌、醤油、プロテアーゼ処理された豆乳であり、より好ましくは醤油、プロテアーゼ処理された豆乳である。調味料食品は、好ましくはシイタケエキス、酵母エキスである。いずれもグルタミン酸、アスパラギン酸、ロイシンを比較的多く含む食品であり、特に制限されるものではなく、任意に使用できるが、例えば、醤油であれば商品名:キッコーマン食品(株)製特選丸大豆しょうゆ、シイタケエキスであれば商品名:佐藤食品工業(株)製椎茸エキスコンクS、チーズであれば商品名:フォンテラ製GoudaMCheese、酵母エキスであれば商品名:アサヒグループ食品(株)製ハイパーミーストHG-PS等を挙げることがきる。また食品の形態は、液状でも粉末状でもいずれでも採用することができる。
上述の食品は、食品100g当たり約1000.0-30000.0mgの総遊離アミノ酸を含有する。本発明で用いる好ましい食品として、総遊離アミノ酸が食品100g当たり1000.0mg以上であり、かつ、食品100g当たり約90mg以上の遊離グルタミン酸、食品100g当たり約20mg以上の遊離アスパラギン酸、食品100g当たり約260mg以上の遊離ロイシンを含有する食品を挙げることができる。
昆布エキスや鰹節もグルタミン酸、アスパラギン酸、ロイシンが比較的多く含まれる食品であるが、これらの食品は、加熱反応時に海藻様の香りが強く発生し、本発明での使用には適していない。
また、グルタミン酸、アスパラギン酸、又はロイシンのアミノ酸単体と糖の加熱反応の場合、香りはキャラメル様になり、チョコレート香とはならない。したがって、複数のアミノ酸をはじめとする、食品に含まれる様々な成分が複雑に反応することで、チョコレート香が発生すると考えられる。
【0022】
本発明で用いる糖は、単糖、二糖、多糖を含み、特に制限されるものではなく、任意に使用できるが、例えば、商品名:キシロース(岡村製油(株)製)、グルコース(日本食品化工(株)製日食含水結晶ぶどう糖(#50))、トレハロース((株)林原製)、フルクトース(日新製糖(株)製フルーツシュガー)等を挙げることがきる。これらの糖は単独又は数種組み合わせて利用することができる。また、本発明で用いる好ましい糖としては、還元糖が挙げられる。
【0023】
本発明で用いる加熱用混合物は、プロテアーゼ処理されたカカオマスをさらに含んでもよい。
本発明に係る風味増強剤の製造方法における、プロテアーゼ処理されたカカオマスをさらに含む加熱用混合物の調製方法としては以下の、
i)乳製品、大豆由来食品、及び調味料食品からなる群から選択される少なくとも1種の食品と糖と予めプロテアーゼ処理されたカカオマスとを混合して加熱用混合物を得る、
ii)乳製品、大豆由来食品、及び調味料食品からなる群から選択される少なくとも1種の食品、糖、及びプロテアーゼ未処理のカカオマスを混合してプロテアーゼ処理して加熱用混合物を得る、又は
iii)乳製品、大豆由来食品、及び調味料食品からなる群から選択される少なくとも1種の食品とプロテアーゼ未処理のカカオマスを混合してプロテアーゼ処理し、得られた処理物に糖を添加して加熱用混合物を得る、
のいずれの方法も選択することができる。
上記i)~iii)により得られた加熱用混合物をアルカリ条件下において90~160℃の温度範囲で高温加熱処理することでも、本発明のチョコレートの風味増強剤が得られる。
上記i)~iii)におけるカカオマスの添加量としては、カカオマスをさらに含む加熱用混合物の質量を基準として5.0~70.0質量%、より好ましくは約10.0~60.0質量%の範囲を例示する事ができる。
特に制限されるものではなく、任意に使用できるが、例えば、カカオマスは大東カカオ(株)製カカオマスQMP等を挙げることができる。
【0024】
本発明において利用することのできる食品の添加量としては、特に制限されないが、加熱用混合物又はカカオマスをさらに含む加熱用混合物の質量を基準として5.0~70.0質量%、より好ましくは約20.0~60.0質量%、さらに好ましくは約20.0~30.0質量%の範囲を例示する事ができる。
【0025】
本発明において利用することのできる糖の添加量としては、加熱用混合物又はカカオマスをさらに含む加熱用混合物の質量を基準として5.0~70.0質量%、より好ましくは約20.0~50.0質量%、さらに好ましくは約20.0~30.0質量%の範囲を例示する事ができる。
【0026】
本発明において利用することのできる糖と食品の合計量としては、加熱用混合物又はカカオマスをさらに含む加熱用混合物の質量を基準として20~90質量%、より好ましくは約40~80質量%、さらに好ましくは約40~60質量%の範囲を例示する事ができる。
また、本発明において利用することのできる糖と食品の質量比(食品/糖)としては、約1/1~5/1、より好ましくは約1/1~3/1、さらに好ましくは約1/1~2/1の範囲を例示する事ができる。
【0027】
本発明において、食品と糖とを含む混合物は、加熱処理する前にアルカリ条件となるように調整する。好ましいアルカリ条件のpHは8~12であり、より好ましくはpH9~12である。pH8以上とすることで明らかにチョコレート香を構成する香気成分の発生が増加する。また、pH調整の効率の点からpH12以下とすることが好ましい。アルカリ条件とするために、特に制限されないが、30%水酸化ナトリウム溶液などのアルカリ性の水溶液を用いることができる。
【0028】
加熱反応条件として、反応温度は約90~160℃の温度範囲である。好ましくは、約110~140℃の温度範囲である。反応温度を100℃以上とすることで、海藻臭や培地様の香りの発生を抑制することができる。また、160℃以下とすることで、火薬様の焦げ臭を抑制することが出来る。
また加熱反応条件として、反応時間は好ましくは約5分~2時間、より好ましくは約20分~1時間程度である。
【0029】
プロテアーゼは食品中のたんぱく質を加水分解する酵素であって、本発明において利用することのできるプロテアーゼの起源としては、特に制限されるものではなく、例えば、アスペルギルス属、ムコール属、リゾープス属、ストレプトコッカス属、ラクトバチルス属、ペニシリウム属、バシルス属等の各種微生物から採取することのできるプロテアーゼ、植物から採取することのできるブロメライン、パパイン等のプロテアーゼ及び動物の臓器等から採取されるトリプシン、ペプシン等のプロテアーゼを挙げることが出来る。これらのプロテアーゼは単独又は数種組み合わせて利用することができる。
【0030】
食品、カカオマス、食品と糖とカカオマスとを混合したもの及び食品とカカオマスとを混合したもののプロテアーゼによるタンパク質分解条件(反応温度、反応時間、プロテアーゼの添加量など)は、特に制限されるものではなく、使用するプロテアーゼの種類、使用する原料の種類、所望するチョコレートの風味増強剤、風味強化組成物の香味などにより適宜設定することができるが、例えば、約20~70℃程度の温度範囲で、約30分~48時間を例示することができる。また、プロテアーゼの添加量は、食品、カカオマス、又はカカオマスをさらに含む加熱用混合物の質量を基準として、0.01~5.0質量%、好ましくは0.1~1.0質量%である。
生乳、生クリーム、濃縮乳、脱脂濃縮乳、全脂粉乳液、脱脂粉乳液、ヨーグルト、豆乳は、プロテアーゼ処理することで遊離のグルタミン酸、アスパラギン酸、ロイシン等の含量を上げることができる。
【0031】
本発明のチョコレートの風味増強剤はそのまま飲食品に添加して使用することもできるが、蒸留等により濃縮して濃縮物として用いることもできる。
更に、チョコレートの風味増強剤を遠心分離等の適宜な分離手段を用いて、油脂部を分離して用いることもできる。
上記濃縮物や油脂部を分離して得られた生成物も本発明に係るチョコレートの風味増強剤に含まれる。また、上記チョコレートの風味増強剤は粉末状、顆粒状、液状、乳液状、ペースト状、その他適宜の剤形に調整することが出来、カカオマスチップやココアパウダーと合わせて使用することも可能である。
【0032】
また更に、チョコレートの風味増強剤を飲食品として許容可能な希釈剤若しくは担体と組み合わせて、チョコレートの風味強化組成物として用いてもよい。このような希釈剤若しくは担体としては、例えば、アラビアガム、デキストリン、シクロデキストリン、グルコース、シュークロース、カカオマスチップ、ココアパウダーなどの固体希釈剤若しくは担体、又は水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、界面活性剤などの液体希釈剤若しくは担体を例示することができ、上記のチョコレートの風味増強剤はこれらの希釈剤若しくは担体を用いて任意の剤形、例えば、粉末状、顆粒状、液状、乳液状、ペースト状、その他適宜の剤形に調製することができるが、例えば、アラビアガム、デキストリン、シクロデキストリンなどを添加して粉末状、顆粒状とすることが安定性の点で好ましい。
【0033】
本発明のチョコレートの風味増強剤又はチョコレートの風味強化組成物の使用用途である飲食品としては、特に限定されるものではないが、ホイップクリーム、チョコレートソース、フラワーペースト、バタークリーム等のチョコレートを原材料に使用したクリームやソース類、プリン、アイスクリーム、クレープ、ケーキ、ビスケット、クッキー、カステラ、パイ、ガレット、蒸しパンなどチョコレートを原材料に使用したデザートや菓子類、食パンやクロワッサンといった製パン類、菓子パン類、ココアドリンク、チョコレート風味のリキュールなどの飲料類などがあげられる。また、カレーソースなどチョコレートを隠し味に利用している飲食品も含まれる。さらには、プリン等のプレミックス、ホイップクリーム等、チョコレートを原材料としていない飲食品も本発明に係るチョコレートの風味増強剤又はチョコレートの風味強化組成物の使用用途に含まれる。
【0034】
本発明のチョコレートの風味増強剤又はチョコレートの風味強化組成物の使用用途である各種飲食品に対する添加量としては、例えば、当該飲食品の質量に基づいて、約0.001~約5.0質量%、好ましくは、約0.01~約2.0質量%、更に好ましくは約0.5~約2.0質量%の添加量を例示することができる。
【実施例】
【0035】
本発明を下記の実施例により説明する。ただし、これらは本発明の範囲を制限するものではない。
【0036】
(実施例1)
イオン交換水400質量部と酵母エキスであるハイパーミーストHG-PS(アサヒ食品グループ(株)製)300質量部及び糖類としてキシロース(岡村製油(株)製)300質量部を混合した。その後30%水酸化ナトリウム溶液でpHを9.0に調整し、120℃60分間加熱し、液状の反応物を得た(本発明品1の風味増強剤)。
【0037】
(実施例2)
実施例1の酵母エキス300質量部を醤油300質量部に変更し、pHを11.0とした以外は同様の方法を実施し、液状の反応物を得た(本発明品2の風味増強剤)。
【0038】
(実施例3)
実施例1の酵母エキスを、脱脂濃縮乳(高梨乳業(株)製タカナシ北海道脱脂濃縮乳)300質量部に1質量部のプロテアーゼであるウマミザイムG(天野エンザイム(株)製)を混合して50℃2時間反応して得られた液状の反応物に変更し、pH条件を12.0に変更した以外は同様の方法を実施し、液状の反応物を得た(本発明品3の風味増強剤)。
【0039】
(実施例4)
カカオマス400質量部に1質量部のプロテアーゼであるウマミザイムG(天野エンザイム(株)製)を混合して50℃2時間反応してペースト状の反応物を得た。このペースト状の反応物を、イオン交換水200質量部と、酵母エキスであるハイパーミーストHG-PS(アサヒ食品グループ(株)製)200質量部と、キシロース(岡村製油(株)製)200質量部とを混合して得られた混合物に混合した。その後30%水酸化ナトリウム溶液でpHを9.0に調整し、120℃60分間加熱し、黒色のペースト状の反応物を得た(本発明品4の風味増強剤)
【0040】
(実施例5)
実施例1の加熱条件を、160℃5分間に変更した以外は同様の方法を実施し、液状の反応物を得た(本発明品5の風味増強剤)。
【0041】
(実施例6)
実施例1の加熱条件を、90℃120分間に変更した以外は同様の方法を実施し、液状の反応物を得た(本発明品6の風味増強剤)。
【0042】
(比較例1)
実施例1の加熱条件を80℃に変更した以外は同様の方法を実施し、液状の反応物を得た(比較品1)。
【0043】
(比較例2)
実施例1のpH条件を7.0に変更した以外は同様の方法を実施し、液状の反応物を得た(比較品2)。
【0044】
(比較例3)
実施例3の脱脂濃縮乳のプロテアーゼ処理物を、プロテアーゼ未処理の脱脂濃縮乳に変更する以外は同様の方法を実施し、液状の反応物を得た(比較品3)。
【0045】
(比較例4)
酵母エキス、キシロースを使用せず、カカオマス400質量部に1質量部のプロテアーゼであるウマミザイムG(天野エンザイム(株)製)を混合し50℃2時間反応して得られたペースト状の反応物を使用する以外は実施例1と同様の方法を実施し、黒色のペースト状の反応物を得た(比較品4)。
【0046】
(比較例5)
実施例1のpH条件を3.0に変更した以外は同様の方法を実施し、液状の反応物を得た(比較品5)。
【表1】
【0047】
本発明品のチョコレートの風味増強剤及び比較品中のFurfuryl alcohol、γ-Butyrolactone、Methyl pyrazineの含有量はガスクロマトグラフィー質量分析によって定量を行った。
ガスクロマトグラフィー質量分析の条件は、以下の通りである。
【0048】
<測定用試料の調整方法>
検体2.0gに食塩0.6gを添加し撹拌した後、内部標準物質として1.0% 2-Octanol溶液を100μL添加した。ここで、検量線用試料については、Furfuryl alcohol、γ-Butyrolactoneの場合には0、1、10%、Methyl pyrazineの場合には0、0.05、0.5%の濃度の標準品溶液をそれぞれ20μL添加した。
次いで、40mLのジエチルエーテルを添加して1時間浸漬し、検体中の香気成分を抽出した。その後、定性ろ紙で不溶成分を除去したジエチルエーテルを回収し、無水硫酸ナトリウムを適量添加して脱水した後、45℃の湯浴でジエチルエーテルを留去した後、40μLのアセトンを添加したものをGC-MS測定に供した。
【0049】
<測定条件>
測定機器:Agilent 7890B & 5977A (Agilent社製)
カラム:DB-WAX(60m×0.25mm(ID)×0.25μm(F.T)) (J&W社製)
オーブン温度:40℃(1min) → 3℃/min → 190℃ → 5℃/min → 230℃ (35min)
注入口温度:240℃
注入量:1μL
スプリット比:50:1
キャリア―ガス:He(1.0mL/min)
イオン源温度:230℃
四重極温度:150℃
イオン化法:EI(70eV)
【0050】
本発明品1、2、3と比較品1、2、5の香気分析比較結果を下記に示す
【表2】
【0051】
本発明品1~3は、Furfurylalcoholを約121.9±12.2ppm~435.0±43.5ppm、γ―Butyrolactoneを約35.5±3.6~351.1±35.1ppm、MethylPyrazineを約2.2±0.2~5.8±0.6ppm含むが、これは比較品1の含有量に対して、それぞれ約35~150倍、10~100倍、10~30倍の量であった。香気成分には各々閾値が有り、Methyl PyrazineはFurfuryl alcohol、γ-Butyrolactoneと比較して非常に閾値が低く、少量のppmでも強い香りを有する。
発明品1、比較品2、比較品5は、pH条件が異なる以外は、すべて同じ条件で作製されたものである。アルカリ条件下で反応させた発明品1と中性又は酸性条件下で反応させた比較品2及び比較品5を比較すると、Furfurylalcohol、γ―Butyrolactone及びMethylPyrazineの含有量は、比較品2及び比較品5では減少し、発明品1の含有量に対して、それぞれ約0.52~0.70倍、約0.09~0.11倍、約0.02~0.14倍だった。
【0052】
(官能評価)
年齢や性別の異なるよく訓練された10名のパネラーが、ブラインドで本発明のチョコレートの風味増強剤又は比較品を添加した飲食品を試食して評価を行い、下記に示す3段階で点数を付けた。
チョコレート風味に関する官能評価の項目は、匂った時に感じるチョコレート特有の香りの強さ(香り立ち)、口に含んだ時に感じるチョコレートの呈味の強さ(チョコレートのコク)の2項目の観点から判断してもらい、これらの各項目について、本発明のチョコレートの風味増強剤又は比較品を添加しない場合に比べ、
チョコレート風味を強く感じる場合:10点
チョコレート風味を感じる程度の場合:5点
チョコレート風味に全く変化がないもの:0点
として、上記10名のパネラーに点数を付けてもらい、10名の点数の平均値を採用した。
また、香り立ち及びチョコレートのコクについてどちらも強く感じると評価した人数をカウントした。
さらに評価時に各飲食品の印象を上記10名のパネラーに自由にコメントしてもらい、そのうち多かった意見を抽出した。
【0053】
(試験例1)
実施例1、実施例5、実施例6及び比較例1で得た発明品1、発明品5、発明品6、比較品1を各々、表3に示される配合組成に従って調製したココア飲料の質量全体に対して1.0%添加して官能評価を行った。その結果を表4に示す。
【表3】
【表4】
表4より明らかなように本発明品1、5、6は、少量の添加でココア飲料のチョコレート風味(チョコレート特有の香りの強さ(香り立ち)、口に含んだ時に感じるチョコレートの呈味の強さ(チョコレートのコク))を増強することが認められた。本発明品1、5、6をそれぞれ添加したココア飲料において、香り立ち及びチョコレートのコクについてどちらも強く感じると評価した人数はそれぞれ、順に3人、4人、2人だったのに対して、比較品1を添加したココア飲料において、香り立ち及びチョコレートのコクについてどちらも強く感じると評価した人数は一人もいなかった。
本発明品を添加したココア飲料に関しては、チョコレートの独特の香ばしい香りをトップから感じたとのコメントが多く、またチョコレートのコクに加え旨味や厚みといった味の広がりやチョコレートの鼻抜けを感じるとのコメントが多くみられた。それに対し、比較品1を添加したココア飲料に関しては、香り立ち、チョコレートのコクいずれにおいても酸味を感じるというコメントが多く、チョコレートの香りやコクが増強したとのコメントはみられなかった。
【0054】
(試験例2)
実施例2及び比較例2で得た発明品2、比較品2を各々、下記の表5に示される配合にて調製した蒸しパン全体の質量に対し2.0%添加して試験例1と同様の方法で官能評価を行った。その結果を表6に示す
【表5】
【表6】
表6より明らかなように本発明品2は、少量の添加で蒸しパンのチョコレート風味(チョコレート特有の香りの強さ(香り立ち)、口に含んだ時に感じるチョコレートの呈味の強さ(チョコレートのコク)を増強することが認められた。本発明品2を添加した蒸しパンにおいて、香り立ち及びチョコレートのコクについてどちらも強く感じると評価した人数は4人だったのに対して、比較品2を添加した蒸しパンにおいて、香り立ち及びチョコレートのコクについてどちらも強く感じると評価した人数は2人だった。
本発明品を添加した蒸しパンに関しては、ロースト香や香ばしさがアップしており、トップの甘いチョコレートの香りが増強しているといったコメントが多くみられた。それに対し、比較品2に関しては、香り立ち、チョコレートのコクいずれにおいても無添加とあまり変わらない、もしくは味が軽いというコメントが多く、チョコレートのコクが感じられないとの評価となった。
【0055】
(試験例3)
実施例3及び比較例3で得た発明品3、比較品3を各々、下記の表7に示される配合にて調製したチョコレートプリン全体の質量に対し0.5%添加して官能評価を行った。その結果を表8に示す。
【表7】
【表8】
表8より明らかなように本発明品3は、少量の添加でチョコレートプリンのチョコレート風味(チョコレート特有の香りの強さ(香り立ち)、口に含んだ時に感じるチョコレートの呈味の強さ(チョコレートのコク))を増強することが認められた。本発明品3を添加したプリンにおいて、香り立ち及びチョコレートのコクについてどちらも強く感じると評価した人数は4人だったのに対して、比較品3を添加したプリンにおいて、香り立ち及びチョコレートのコクについてどちらも強く感じると評価した人数は2人だった。
本発明品を添加したチョコレートプリンに関しては、チョコレートの独特の香りである甘いカカオ臭及び香ばしい香りを強く感じたとのコメントが多く、また濃厚なチョコレート感を感じるとのコメントが多くみられた。それに対し、比較品3のチョコレートの風味増強剤を添加したチョコレートプリンに関しては、香り立ち、チョコレートのコクいずれにおいても無添加とあまり変わらない、もしくはコクが無くなったというコメントが多かった。
【0056】
(試験例4)
実施例1、実施例4及び比較例4で得た発明品1、発明品4、比較品4を各々、下記の表9に示される配合にて調製したホイップクリーム全体の質量に対し1.0%添加して官能評価を行った。その結果を表10に示す。
【表9】
【表10】
表10より明らかなように本発明品1、4は、少量の添加でホイップクリームのチョコレート風味(チョコレート特有の香りの強さ(香り立ち)、口に含んだ時に感じるチョコレートの呈味の強さ(チョコレートのコク))を増強することが認められた。本発明品1、4をそれぞれ添加したホイップクリームにおいて、香り立ち及びチョコレートのコクについてどちらも強く感じると評価した人数は、順に5人、3人だったのに対して、比較品4を添加したホイップクリームにおいて、香り立ち及びチョコレートのコクについてどちらも強く感じると評価した人数は1人だった。
発明品1では、トップに香ばしい香りが強く出ているとのコメントが多くみられたが、発明品4の食品にカカオマス酵素処理物をさらに加えたホイップクリームに関しては、発明品1より点数は高くはないものの、チョコレートのコクに加え旨味や厚みといった味の広がりを強く感じるとのコメントが多くみられた。それに対し、比較品4のチョコレートの風味増強剤を添加したホイップクリームに関しては、香り立ち、チョコレートのコクいずれにおいても無添加とあまり変わらないというコメントが多かった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明により自然なチョコレート特有の香りや呈味を強く表現できるチョコレートの風味増強剤やチョコレートの風味強化組成物が提供される。よって、本発明により得られたチョコレートの風味増強剤やチョコレートの風味強化組成物は、食品工業分野において有用である。
【要約】
【課題】
より自然なチョコレート特有の香りや呈味を強く表現できるチョコレートの風味増強剤及びチョコレートの風味強化組成物、並びにその製造方法を提供すること。
【解決手段】
乳製品、大豆由来食品、及び調味料食品からなる群から選択される少なくとも1種の食品と、糖とを含む混合物を、アルカリ条件下において90~160℃の温度範囲で高温加熱処理することを含む、チョコレートの風味増強剤の製造方法、並びに該方法により得られたチョコレートの風味増強剤、該チョコレートの風味増強剤を含むチョコレートの風味強化組成物の提供。
【選択図】なし