(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】圧力駆動式のアクチュエータの機能状態を監視する方法、及び圧力駆動式のアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
B25J 9/20 20060101AFI20220426BHJP
B25J 15/06 20060101ALI20220426BHJP
F16H 59/68 20060101ALI20220426BHJP
F16H 61/4017 20100101ALI20220426BHJP
F16H 61/433 20100101ALI20220426BHJP
G05B 23/02 20060101ALN20220426BHJP
【FI】
B25J9/20
B25J15/06
F16H59/68
F16H61/4017
F16H61/433
G05B23/02 302S
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017092989
(22)【出願日】2017-05-09
【審査請求日】2020-03-24
(32)【優先日】2016-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517273548
【氏名又は名称】イョット.シュマルツ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】アライン デフランセスキ
(72)【発明者】
【氏名】ワルター ダンクマン
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-351527(JP,A)
【文献】国際公開第2001/072479(WO,A1)
【文献】特開2010-110863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/20
B25J 15/06
F16H 59/68
F16H 61/4017
F16H 61/433
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟に変形可能な壁部(14)によって少なくとも区域的に区切られるアクチュエータ空間(12)を有する圧力駆動式のアクチュエータ(10)の機能状態を監視する方法であって、
前記アクチュエータ(10)は動作圧力供給部(16)による前記アクチュエータ空間(12)への圧力での負荷によって操作され、
前記アクチュエータ(10)を操作するために初期状態から最終状態への前記アクチュエータ(10)の移行を伴う作業プロセスが実行され、
初期状態から最終状態への移行中に前記アクチュエータ空間(12)を負荷する圧力を測定するためのセンサ装置(24)によって圧力が時間に依存して測定され、
前記測定によって得られた作業プロセス中の圧力の時間推移を表す特性曲線(a,b,c,d)が、メモリ装置(26)に保存さ
れ、
前記特性曲線が前記メモリ装置(26)に保存されている参照特性曲線と比較され、および/または参照特性曲線との差異が判定され、
特性曲線の推移および/または参照特性曲線との差異から前記アクチュエータ(10)の機能状態を表す機能データが判定され、
異なる機能状態に関する異なる機能データは、前記特性曲線の異なる
時間領域から判定さ
れ、
前記圧力は、連続的に測定され、前記特性曲線は、離散的な参照時点(t
1
,t
2
)についての、定義され、制限された個数の圧力の参照値と比較され、および/または前記参照値からの差異が判定され、
前記機能データから、把持される対象物の質量、前記アクチュエータの摩耗状態、前記アクチュエータ空間(12)の現在の圧縮状態、および/またはアクチュエータ空間(12)の現在の変形状態を判定する、
方法。
【請求項2】
前記圧力は、連続的に測定され、
前記特性曲線は、規定された離散的な参照時点(t
1,t
2)についての、定義され制限された個数の圧力の参照値と比較され、および/または前記参照値からの差異が判定される、
ことを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
アクチュエータ空間(12)を負荷する圧力が作業プロセスの開始から定義された時間間隔でそれぞれ所定の目標値に呼応するように、または、それぞれ所定の目標値からの差異が最大でも所定の許容誤差となるように、前記動作圧力供給部(16)が制御され、および/または前記アクチュエータ空間(12)の圧力での負荷が制御されることを特徴とする、請求項1
又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
作業プロセスを実行するように前記アクチュエータ(10)を操作するために前記動作圧力供給部(16)が定義された出力および/または定義された容積流量の作業流体を提供することを特徴とする、請求項1~請求項
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
作業プロセスに追加して、前記アクチュエータが定義された再現可能な負荷で負荷されて前記動作圧力供給部(16)が定義された出力および/または定義された容積流量の作業流体を提供するキャリブレーションプロセスが実行され、前記アクチュエータ(10)が初期状態から最終状態へと移行し、圧力の時間依存性が時間的な圧力推移を表す参照特性曲線の形態で前記メモリ装置(26)に保存されることを特徴とする、請求項1~請求項
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
測定された圧力の時間的な推移から、前記アクチュエータ(10)に対して負荷として作用する力が判定されることを特徴とする、請求項1~請求項
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
多数の作業プロセスが周期的に反復されて連続するように実行されることを特徴とする、請求項1~請求項
6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
アクチュエータ空間(12)の圧力での負荷によってアクチュエータ(10)を操作可能であるように柔軟に変形可能な壁部(14)によって少なくとも区域的に区切られるアクチュエータ空間(12)を有している圧力駆動式のアクチュエータ(10)であって、前記アクチュエータ(10)は柔軟に変形可能な前記壁部(14)を変形させながら初期状態から最終状態へと移行し、前記アクチュエータ空間(12)を負荷する圧力を時間依存的に測定するためのセンサ装置(24)が設けられている、そのようなアクチュエータにおいて、請求項1~請求項
7のいずれか1項に記載の方法を実施するために構成された制御装置(26)が設けられていることを特徴とする圧力駆動式のアクチュエータ(10)。
【請求項9】
前記アクチュエータ(10)は対象物(22)を把持するために負圧により負荷可能である前記アクチュエータ空間を形成する吸引空間(12)を備えた負圧把持装置である、請求項
8に記載の圧力駆動式のアクチュエータ(10)。
【請求項10】
前記アクチュエータは前記アクチュエータ空間を形成するリフトチューブのチューブ内部空間を備えたチューブリフタであり、前記リフトチューブはチューブ内部空間を負荷する負圧によって伸長した初期状態から収縮した最終状態へと移行可能である、請求項
8に記載の圧力駆動式のアクチュエータ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提項に記載されている圧力駆動式のアクチュエータの機能状態を監視する方法、ならびに、当該方法を実施するための圧力駆動可能なアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
1つの適用分野は負圧駆動式のアクチュエータ、たとえば負圧グリッパ、ベローズ、またはリフトチューブを有するチューブリフタなどであり、たとえば特許文献1や特許文献2に記載されている。さらに別の適用分野は過圧駆動式のアクチュエータ、たとえば空気圧式もしくは油圧式のアクチュエータやマニピュレータである。
【0003】
このようなアクチュエータに共通するのは、アクチュエータを操作するために、柔軟に変形可能なアクチュエータ空間が圧力で負荷されることである。これは原則として過圧(過圧駆動式のアクチュエータの場合)であっても負圧(負圧駆動式のアクチュエータの場合)であってもよい。アクチュエータ空間への負荷は、特に、動作圧力供給部(たとえば圧力源、負圧ポンプ、エゼクタなど)から提供される作業流体によって行われる。作業流体は、原則として、周囲に対する過圧または負圧を有することができる。作業流体は、たとえば油圧流体や圧縮ガス、たとえば圧縮空気などであり得る。本発明は、特に、作業流体として空気を用いる空気圧式のアクチュエータを対象とする。
【0004】
上述したアクチュエータは、多くの場合、たとえば対象物を持ち上げ、把持し、クランプし、加工し、またはその他の取り扱いを行わなければならない、複雑な取り扱いプロセスや製造プロセスに取り入れるためのものである。特に、自動的に進行するプロセスが望まれる。このことは、個々の機能単位の動作が互いに適合され、かつ、必要性に即して行われることを必要とする。
【0005】
このことを実現するために、アクチュエータの機能状態が作動中に監視されるのがよい。特に機能状態を表す、たとえばアクチュエータの最新の動作状態、コンフィギュレーション、負荷状態などに関わる、機能データが判定されるのがよい。
【0006】
このような特徴的な情報については数多くのさまざまな影響要因がある。一方では、アクチュエータの機械的特性が時間の経過につれて、たとえば使用材料の経年劣化や摩耗に基づいて変化することがある。同様に、作業流体の油圧機械的な特性も時間とともに変化することがある。さらにはアクチュエータそのものの現在の機能状態も、測定可能な特徴量に対して影響を及ぼす。たとえばアクチュエータ空間の現在の圧縮状態、および/またはアクチュエータ空間の現在の変形状態は、圧力変化が印加されたときにその挙動に対して影響を及ぼす。
【0007】
複雑な設備における個々の単位の機能状態に関する確実で信用性の高い情報を得るために、圧力駆動式または圧力制御式のさまざまな単位に、さまざまな特性を監視するセンサをそれぞれ配設することが知られている。たとえば、負圧グリッパ装置の供給圧力を監視することができ(たとえば特許文献3)、あるいは、圧縮空気作動式のエゼクタに供給される供給圧縮空気を監視することができる(たとえば特許文献4)。さらに、アクチュエータのそれぞれの初期コンフィギュレーションまたは最終コンフィギュレーションへの到達をセンサによって監視することが知られている。したがって、さまざまな種類の機能状態を監視するために、多数のセンサおよびこれに付属するデータ通信部や制御部が必要であり、このことは、いっそう高い設計コストや故障発生につながりかねない。
【0008】
特許文献5は、請求項1の前提項の構成要件を有する、吸引グリッパが接続された真空生成装置を作動させる方法を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2005/110907号明細書
【文献】米国特許出願公開第4,413,853A号明細書
【文献】ドイツ特許出願公開第102014206308A1号明細書
【文献】国際公開第2013120801A1号明細書
【文献】ドイツ特許出願公開第102007061820A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、圧力駆動式のアクチュエータの機能状態の確実な監視を、設計的に簡素な仕方で可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項1に記載の圧力駆動式のアクチュエータの機能状態を監視する方法によって解決される。それに呼応してこの課題は、請求項1に記載された、以下において詳しく説明する方法構成要件を有する、駆動式のアクチュエータを作動させる方法によっても解決される。
【0012】
本方法は、圧力駆動式であり、柔軟に変形可能なアクチュエータ空間を有するアクチュエータを用いて実施される。そのためにアクチュエータ空間は、柔軟な壁部によって少なくとも部分的に区切られる。特に、壁部は柔軟かつ弾性変形可能なように構成される。
【0013】
アクチュエータを作動させるために、アクチュエータ空間が圧力(過圧または負圧)で負荷される。アクチュエータを駆動する圧力は動作圧力供給部から提供される。
【0014】
アクチュエータを操作するために、本方法に基づいて作業プロセスが実施され、この作業プロセスは、初期コンフィギュレーションから最終コンフィギュレーションへのアクチュエータの移行を伴う。この移行は、圧力によるアクチュエータ空間の負荷によって引き起こされる。初期コンフィギュレーションから最終コンフィギュレーションへの移行はアクチュエータ空間の変形と結びついており、特に、アクチュエータ空間の柔軟な壁部の変形と結びついている。
【0015】
機能状態を監視するために、アクチュエータ空間を負荷する圧力を測定するために構成されたセンサ装置が利用される。センサ装置により、初期コンフィギュレーションから最終コンフィギュレーションへの移行中に、すなわち作業プロセス中に、アクチュエータを負荷する圧力が時間に依存して測定される。そのためにセンサ装置は、特に、アクチュエータ空間で生じている圧力を測定する。動作圧力供給部との接続が行われるアクチュエータへのアクセス部で、圧力を測定することも考えられる。
【0016】
機能状態の監視は、アクチュエータ空間を負荷する圧力が動作圧力供給部によってのみ規定されるのではないことによって可能となる。むしろ、動作圧力供給部から提供がなされるときのアクチュエータ空間の時間的な圧力推移に多様な仕方によって影響が及ぼされ、たとえば材料特性、アクチュエータの現在のコンフィギュレーション(たとえば負荷されているアクチュエータ空間の容積、アクチュエータ空間の変形状態、アクチュエータ空間を区切る壁部の変形状態ないし圧縮状態)、ならびにアクチュエータに対して作用する負荷状態(たとえば当接する対象物の重量に基づく)などによって影響が及ぼされる。アクチュエータ空間は少なくとも区域的に柔軟に変形可能な壁部で区切られているので、壁部の機械的特性およびこれに伴うアクチュエータ空間の変形は、圧力に依存して比較的大きく変化することがある。その帰結となるのは、柔軟な壁部を有する上述した種類のアクチュエータでは、アクチュエータ空間を負荷する圧力の、機能状態に対する特徴的な依存性が生じるということである。
【0017】
したがって、さまざまな時点でアクチュエータ空間を負荷する圧力の測定された値から、アクチュエータの機能状態や負荷状態に関する情報を導き出すことができる。そして、センサ測定結果を用いて機能データを判定することができる。
【0018】
判定される機能データが機能状態を表す。機能状態と機能データは、さまざまな情報を対象とすることができる。以下に一例としてこの種の情報を掲げる。
【0019】
-アクチュエータの現在の動作状態、たとえば繰り込まれた状態と繰り出された状態(たとえば駆動アクチュエータの最終位置状態)、把持状態または解放状態(たとえば負圧把持装置の)。
【0020】
-アクチュエータの、またはアクチュエータ空間を区切る壁部の、現在のコンフィギュレーションおよび/または変形、たとえば圧力空間の圧縮、弾性変形の程度(たとえばベローズ型アクチュエータや変形可能な負圧吸引機の)。
【0021】
-たとえばアクチュエータで操作される(たとえば把持される、取り扱われる)対象物の重量の力や慣性力によるアクチュエータの現在の負荷状態;特に操作されるべき対象物の存在または不在の認識も含む。
【0022】
-アクチュエータの現在の摩耗状態、たとえば材料疲労による剛性や弾性などの変化した材料特性(たとえばベローズ、リフトホース、または負圧グリッパなどの場合)、互いに摩擦を生じる材料区域の変化した摩擦係数。さらに摩耗は、過圧作動式または負圧作動式のアクチュエータの封止品質の変化につながることがある。
【0023】
本方法により、ただ1つのセンサ装置(たとえばただ1つの圧力センサ)によって多様な情報を判定することができる。複数のセンサを含む複雑なセンサ装置を有するシステムと比較して、故障発生性を削減することができる。判定される機能データは、アクチュエータを必要性に即して制御するために利用することができる。特に、測定された圧力の時間的推移に依存して、動作圧力供給を調節することが可能である。たとえばアクチュエータが負圧把持装置である場合、把持工程(作業プロセス)中に、所望の取り扱いのために対象物のそれぞれの型式について最適な力を及ぼすことができる。そのようにして、損傷し易い対象物の場合に表面損傷や変形を回避することができる。それに加えて時間的な圧力推移の監視は、作業プロセスの監視と評価も可能にする。たとえば圧力推移の特徴から、アクチュエータとしての負圧グリッパにおいて対象物が用途に即して把持されていかどうか、その対象物がどれだけ重いか、および/またはその対象物がどれだけ大きいかを判定することができる。
【0024】
原則として、機能状態に関する情報はその他の流体の特性量の測定からも判定することができる。その意味においては、アクチュエータ空間に流入する容積流量および/またはアクチュエータ空間から流出する容積流量を測定することが原則として考えられる。そのような測定データからも、上述した特性に関わる機能データを判定することができる。
【0025】
特に、アクチュエータが用途に即して作動しているときに発生する負荷の作用のもとで作業プロセスが実行されると好ましい。その意味において、測定はアクチュエータの本来の作業プロセス中に行われ、たとえば対象物の取り扱い中や、アクチュエータによる装置の駆動中に行われる。その意味において、機能状態の監視をするために、用途に即した利用を中断することは必要ない。
【0026】
測定される圧力の時間的な変化を確実に監視できるようにするために、1つの好ましい実施形態では、動作圧力供給部から提供される作業流体の容積流量を、アクチュエータ空間の広さおよび/または機械的特性に合わせて適合化することができる。そのために、動作圧力供給部とアクチュエータ空間との間にスロットルバルブ、流動抵抗、流動絞り等が介在することが意図されていてよい。それにより、容積流量の変化をより少なくすることができ、圧力の変化を抑えることができる。それにより、圧力の時間的変化が急速に行われすぎて、監視が不正確になるのを防止することができる。
【0027】
本発明によると、作業プロセス中の圧力の時間的推移を表す特性曲線が判定されて、メモリ装置に保存される。記録される特性曲線は、影響要因およびこれに伴って機能状態のさまざまな種類の推定を可能にする。特に、さまざまな種類の影響が特性曲線のそれぞれ異なる領域に対して、たとえばそれぞれ異なる圧力レベルで、および/またはそれぞれ異なる時間に作用する。特性曲線の推移において、たとえばアクチュエータの材料特性の変化(たとえば経年劣化プロセスおよび/または摩耗プロセスに基づく)を、アクチュエータの負荷(たとえば対象物の重量の力による)から区別することができる。このことは特に、柔軟な壁部によって(少なくとも部分的に)区切られたアクチュエータ空間を有するアクチュエータについて当てはまる。壁部の機械的特性は変形状態とともに変化するので、作業プロセスの初期における時間的な圧力推移は、作業プロセスの最後における時間的な圧力推移と特徴的な仕方で相違する。したがってさまざまに異なる機能状態が、良好に区別可能な特性曲線をもたらす。
【0028】
1つの単純な方法は、連続的な特性曲線が判定されるのではなく、作業プロセスの開始から定義された時間間隔をおいて測定される圧力が、メモリ装置に保存されている離散的な参照値と比較され、および/または保存されている参照値との差異が判定されることによって可能となる。
【0029】
別の態様では、連続的な特性曲線が判定されて記録されるが、特性曲線のうち定義された個数の点だけが、離散的な参照時点(作業プロセスの開始から測定)についての対応する個数の参照値と比較され、および/または参照値との差異が判定される。離散的な定義された点での特性曲線の監視が十分であり得るが、それは、さまざまな影響(材料経年劣化、負荷、変形など)が、典型的には、特性曲線の特徴的な領域に影響を与えるからである。
【0030】
厳密な監視は、判定された特性曲線が、メモリ装置に保存されている参照特性曲線と比較され、および/または参照特性曲線との差異が判定されることによって可能となる。参照特性曲線からの逸脱から、後でまた詳しく説明するように、さまざまな種類の機能状態を判定することができる。
【0031】
本方法は、アクチュエータのための作動方法としてさらに構成することができるのが好ましい。そのために特に、アクチュエータ空間を負荷する圧力が固定的に定義された時間間隔(作業プロセスの開始から測定)をおいてそれぞれ所定の目標値に呼応するように動作圧力供給が制御され、および/または圧力によるアクチュエータ空間の負荷が制御される(たとえば前置されるバルブ装置によって)ことが意図されていてよい。それぞれ所定の目標値との差異が最大でも許容誤差となるように、制御がなされることも考えられる。
【0032】
特に、測定される圧力(および/または判定される特性曲線)が、所望の目標特性曲線に実質的にしたがうように制御を行うこともできる。特に、圧力を表す測定された特性曲線が、作業プロセス中に、目標特性曲線からの許容範囲内で推移するように制御を行うこともできる。
【0033】
比較可能なデータを得るために、作業プロセスが実行されるときにアクチュエータを操作するために動作圧力供給部が事前に定義された出力および/または事前に定義された作業流体の容積流量を提供することが意図されるのが好ましい。それによって再現可能な動作圧力供給が提供され、比較可能な測定が保証される。
【0034】
さらに発展させた実施形態のために、キャリブレーションプロセスで参照特性曲線を判定することができる。キャリブレーションプロセスは作業プロセスに追加して実行され、特に、定義された回数の作業プロセスが実行された後に、または上位の設備でのアクチュエータの初回の使用開始時に直接実行される。キャリブレーションプロセスでは特に、たとえば定義された再現された力の作用のもとで、アクチュエータが定義された再現可能な負荷によって負荷されることが意図される。このことは、たとえばアクチュエータとしての過圧駆動式の駆動装置の場合には、負荷のないアイドリング状態であるニュートラル状態であり得る。キャリブレーションプロセスでは特に、動作圧力供給部が定義された出力および/または定義された作業流体の容積流量を提供することも意図される。作業プロセスのときと同様にキャリブレーションプロセスは、アクチュエータが初期コンフィギュレーションから最終コンフィギュレーションへと移行することを特徴とする。移行中に、アクチュエータ空間を負荷する圧力の時間依存性が、時間的な圧力推移を表す参照特性曲線の形態で判定されて、メモリ装置に保存される。
【0035】
本方法のさらに発展させた実施形態のために、時間に依存して測定された圧力からそのつど機能データが判定される。このことは制御装置で行い得るのが好ましい。機能データはアクチュエータの機能状態を表す。たとえば特性曲線の推移、参照値との差異の大きさ、および/または参照特性曲線に対する測定された特性曲線の差異の大きさなどから、冒頭に挙げた情報を機能データとして判定することができる。
【0036】
特に、測定された圧力の時間依存性から、アクチュエータに作用する力による負荷を判定するのが好ましい。たとえば持ち上げアクチュエータ(たとえばチューブリフタ)の場合、取り扱われる対象物の重量(ないし重量の力)を判定することができる。
【0037】
本方法のさらに発展させた実施形態のために、多数の作業プロセスが順次実行されることが意図される。これらの作業プロセスは特に周期的に反復するように構成され、すなわち、アクチュエータが最終コンフィギュレーションへ到達した後、再び初期コンフィギュレーションへと移行する。たとえば判定された特性曲線の平均化を行うことができる。定義された時点の後に、および/または定義された回数の作業プロセスの後に、上で説明したようにキャリブレーションプロセスを実行することも考えられる。
【0038】
冒頭で課された課題は、圧力駆動式の(ないしは圧力駆動可能な、すなわち圧力によって駆動可能な)アクチュエータによっても解決される。このアクチュエータは、圧力(過圧または負圧)でのアクチュエータ空間の負荷によって作動可能であるように構成されており、アクチュエータは圧力での負荷によって初期コンフィギュレーションから最終コンフィギュレーションへと移行する(作業プロセス)。アクチュエータ空間は、柔軟に変形可能な壁部で区切られている。特に、壁部は弾性変形可能である。初期コンフィギュレーションから最終コンフィギュレーションへの移行のときに壁部が変形する。上に説明した方法に準じて、アクチュエータ空間を負荷する圧力を時間依存的に測定するために構成されたセンサ装置が設けられる。センサ装置は、特に、アクチュエータ空間またはアクチュエータ空間へのアクセス部の圧力センサであってよい。
【0039】
アクチュエータのさらに発展させた実施形態のために、上に説明したようなアクチュエータの機能状態を監視する方法を実施するために構成および/またはプログラミングされた、センサ装置と協同作用する制御装置が設けられていてよい。制御装置は、たとえばセンサのマイクロコントローラに統合されていてよい。特に制御装置には、上に説明した方法を実施するために制御装置を制御するコンピュータプログラムが格納されていてよい。
【0040】
制御装置は、アクチュエータの動作圧力供給部を、測定された圧力に依存して制御するために構成されていてもよい。上述したとおり、特に動作圧力供給部の制御は、測定される特性曲線が、目標特性曲線に対して所望の許容範囲内で保たれるように行うことができる。
【0041】
圧力駆動式のアクチュエータは、冒頭に説明したとおり、原則として、アクチュエータ空間の圧力負荷によって作動可能である一切の種類のアクチュエータであってよい。たとえばアクチュエータは、過圧駆動式または負圧駆動式のアクチュエータとして構成されていてよい。
【0042】
1つの好ましい適用分野は、特に、吸引空間が上記のアクチュエータ空間を形成する負圧把持装置として構成されたアクチュエータである。吸引空間は、対象物を把持するために負圧で負荷可能である。特に負圧把持装置は、吸引空間と連通する吸引開口部を備える当接面を有している。吸引開口部を備える当接面は、対象物を把持するためにこれに当接する。
【0043】
さらに別の好ましい実施形態は、アクチュエータがチューブリフタとして構成されることにある。チューブリフタは、アクチュエータ空間を形成するチューブ内部空間を有するリフトチューブを含んでいる。リフトチューブは柔軟に変形可能な壁部として、チューブ内部空間を負荷する負圧によってリフトチューブが短縮するように構成されており、すなわち、伸長した初期コンフィギュレーションから収縮した最終コンフィギュレーションへと移行可能である。このような種類のチューブリフタでは、特性曲線から、チューブリフタにより持ち上げられる対象物の重量を判定できるのが好ましい。
【0044】
1つの特別に好ましい適用分野は、いわゆる流体式エラストマーアクチュエータである。これは、アクチュエータ空間を取り囲むエラストマーからなる柔軟な壁部を有している。アクチュエータ空間は、特に、作業流体を供給および排出するためのアクセス部を有している。このアクチュエータ空間は、その他のところではエラストマーからなる壁部により周囲に対して閉鎖されるのが好ましい。流体式エラストマーアクチュエータにより、圧力で誘起される初期コンフィギュレーションから最終コンフィギュレーションへの移行によって、たとえば対象物を取り扱うことができる。
【0045】
次に、図面を参照しながら本発明について詳しく説明する。図面は次のものを示す:
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】本発明の方法を実施するための本発明によるアクチュエータを示す略図である。
【
図2】アクチュエータのさまざまな動作条件についての特性曲線を示す一例としてのグラフである。
【
図3】定義された参照時点での参照値との比較を説明するための一例としてのグラフである。
【
図4】特性曲線に対するさらに別の影響要因を説明するための一例としてのグラフである。
【
図5】本発明によるアクチュエータのさらに別の実施形態を初期コンフィギュレーションで示す図である。
【
図6】
図5のアクチュエータを最終コンフィギュレーションで示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下の記述ならびに図面においては、同一または互いに対応する構成要件にはそれぞれ同一の符号が使われている。
【0048】
図1は、圧力駆動式のアクチュエータ10の略図を示している。あくまで一例として、アクチュエータ10は負圧グリッパとして構成されている。このアクチュエータは、柔軟に変形可能な壁部14で区切られたアクチュエータ空間12を有している。図示した例では、柔軟に変形可能な壁部14は柔軟に変形可能なベローズとして構成されている。
【0049】
アクチュエータ空間12を圧力で負荷するために、アクチュエータ空間12は、動作圧力供給部16と圧力接続および/または流動接続されている。
【0050】
図1では負圧把持装置として構成されているアクチュエータ10は、アクチュエータ空間12と連通する吸引開口部20を備えた当接面18を有している。対象物22を把持するために、吸引開口部の当接面18が対象物22に当て付けられて、アクチュエータ空間12が負圧で負荷される。
【0051】
しかしながら、これ以外の種類のアクチュエータ空間12を有するアクチュエータ、たとえばリフトチューブなども適用することができ、その場合、アクチュエータ空間12はリフトチューブ壁部(たとえば壁部14に相当)で取り囲まれる。同様にアクチュエータ10が、圧力での負荷によって形状を変える流体式エラストマーアクチュエータとして構成されていてもよい。
【0052】
アクチュエータ10を作動させるために、アクチュエータ空間12が圧力で負荷される。
図1に示すようにこれが負圧作動式のアクチュエータである場合、アクチュエータ空間12が周囲に対する負圧で負荷される。
【0053】
アクチュエータ10は、アクチュエータ空間12を負荷する圧力を測定するために構成されたセンサ装置24(本例では圧力センサ)を有している。さらにアクチュエータ10は、アクチュエータ空間12を負荷する圧力を時間依存的に測定できるようにセンサ装置24と協同作用する制御装置26を有することができる(
図1参照)。特にアクチュエータ10は、たとえば制御装置の構成要素としてのメモリ装置を含むことができる。メモリ装置には、測定されたデータを保存することができる。
【0054】
アクチュエータ10の機能状態は、作業プロセスの実行中に監視することができる。作業プロセスを実行するために、アクチュエータ空間12が動作圧力供給部16により圧力(図示した例では負圧)で負荷される。その帰結として、アクチュエータが初期コンフィギュレーションから最終コンフィギュレーションへと移行する。
図1の例では初期コンフィギュレーションは、
図1に示すように、柔軟に変形可能な壁部14の伸長したコンフィギュレーションである。アクチュエータ空間12が排気されると、アクチュエータ10の(厳密には
図1の壁部14ないしベローズの)コンフィギュレーションが、圧縮方向28に沿った圧縮によって変化する。最終コンフィギュレーションに到達するのは、ベローズ14がその材料特性と幾何学特性に応じて完全に押し縮められたときである。その意味において、初期コンフィギュレーションから最終コンフィギュレーションへの移行は柔軟な壁部14の変形と結びついている。
【0055】
センサ装置24により、アクチュエータ空間12を負荷する圧力を、またはアクチュエータ空間12で生じている圧力を、時間に依存して作業プロセスの開始時から、すなわち初期コンフィギュレーションから最終コンフィギュレーションへの移行の開始時から、測定することができる。時間的な圧力推移は、時間に対する圧力の依存性を表す特性曲線の形態で記録することができ、たとえば制御装置26ないしメモリ装置に保存しておくことができる。
【0056】
図2から4は、さまざまな特性曲線、および特性曲線に対するアクチュエータ10のさまざまな動作状態の影響を示している。
【0057】
たとえば
図2は、アクチュエータ空間12を負荷する圧力の特性曲線をさまざまな作業プロセスについて示している。各々の作業プロセスは、ここでは時点t
A=0で開始され、時点t
Eで終了する。
【0058】
たとえば動作圧力供給部16は、作業プロセス全体を通じて一定の出力を提供するように制御することができる。このとき時点tEは作業プロセスの終了を示しており、アクチュエータの最終コンフィギュレーションへの到達によって定義される。
【0059】
図2では、さまざまな特性曲線に割り当てられているさまざまな作業プロセスは、たとえばアクチュエータ10により把持される対象物22の質量によって区別される。対象物22のさまざまな質量は、アクチュエータ10にとってのさまざまな負荷状態をもたらす。
図1の図示した例では、さまざまな負荷状態は、初期コンフィギュレーションから最終コンフィギュレーションへのアクチュエータ空間12の移行に抗するように吸着される対象物22に基づいて作用する、さまざまな重量の力に相当する。
【0060】
図2に明らかに見られるとおり、さまざまな負荷状態(本例では対象物22の質量)についての特性曲線が特徴的な仕方で互いに相違する、作業プロセスの区域XおよびY(すなわち特性曲線推移のさまざまな領域)が存在している。一例として、さまざまな質量についての特性曲線a,b,c,dが図示されている。
【0061】
このことは、記録された特性曲線の推移を分析することで、アクチュエータ10がどのような負荷状態に暴露されているかを判定することを可能にする。すなわち特性曲線を測定することで、たとえば把持されている対象物の質量などの機能状態を判定することができる。
【0062】
さまざまな負荷状態についての特性曲線は、特徴的な区域XおよびYにおいて互いに相違しているので、さまざまな特性曲線を作業プロセス全体を通じてではなく、規定された離散的な参照時点t
1およびt
2で評価するだけで十分であり得る。このことは
図3に明示されている。時点t
1およびt
2における特性曲線の値から、区域XおよびYでの特徴的な推移に基づいて、関心の対象となる機能状態(本例では対象物22の質量)を同じく判定することができる。このことは、
図2および3の例では、特性曲線a,b,c,d(
図2参照)を参照時点t
1およびt
2での特徴的な値によってすでに区別することができることを意味する。
【0063】
アクチュエータ12を負荷する圧力を時間に依存して測定することで、アクチュエータ10の機能状態に関するさまざまな種類の情報を判定することができる。そのために、さまざまな影響要因が、しばしば特性曲線のさまざまな特徴的な領域に影響を及ぼすことを利用することができる。このことは
図4に明示されている。示されているのは、やはりそれぞれ異なる重量の力による、アクチュエータのそれぞれ異なる負荷状態についてのさまざまな一連の特性曲線である。
図2の例を参照して説明したように、作業プロセスの区域Xにおける特性曲線は、重量による負荷に依存して特徴的な仕方で互いに相違している。
【0064】
図4では、符号e1およびe2が付された両方の特性曲線は、同一の重量ないし同一の質量による負荷状態に相当する。その意味において特性曲線e1およびe2は、上述した区域Xで実質的に一致している。
【0065】
しかし、
図4のケースでは特性曲線e1およびe2は、アクチュエータ空間12の変形可能性の程度という点で区別される、アクチュエータ10の2つの機能状態で記録されたものである。変形可能性の程度は、たとえば柔軟に変形可能な壁部14のコンフィギュレーションによって影響を受ける。たとえばそれがベローズである場合、個々の折り目が互いに当接する材料の圧縮状態になるまで、変形のもとで圧縮を行うことができる。同様に材料疲労や材料摩耗も、機械的特性の変化およびそれに伴って変化した変形挙動につながることがある。
図4に明らかなとおり、特性曲線e1およびe2は、区域Xとは相違する作業プロセスの特徴的な区域Zにおいて区別される。
【0066】
以上を総合すると、区域Xと区域Zの両方で特性曲線を分析することで、アクチュエータの負荷状態に関する情報、およびそれと同時に変形可能性の程度ないし場合により材料疲労に関する情報も判定することができる。
【0067】
特性曲線はたとえば制御装置26でデータセットとして保存し、評価することができる。冒頭で説明したとおり、評価はたとえば参照特性曲線との比較を含むことができる。そして、定義された参照時点における特性曲線ないし特性曲線の値から、アクチュエータの機能状態を特徴づける機能データを判定することができる。そのために制御装置26は、相応に構成された評価ユニットをプロセッサとともに有することができる。
【0068】
図5および6は、さらに別の好ましい適用分野を示している。ここではアクチュエータ10は流体エラストマーアクチュエータとして構成されている。これは、エラストマーで形成される壁部14で取り囲まれたアクチュエータ空間12を有している。アクチュエータ空間12は、アクセス部30を通して作業流体で負荷することができる。図示した例ではアクチュエータは、特にそれぞれ周囲に対して壁部14により完全に包囲された(アクセス部30を除く)2つのフィンガ状の区域を含んでいる。壁部14の定義された、および/または区切られた領域32が折り目状に構成されていてよい(
図5参照)。
【0069】
図5では、アクチュエータ10が初期コンフィギュレーションで示されている。アクチュエータ空間12が圧力で負荷されると、アクチュエータ10の柔軟に変形可能な壁部14が伸長する。このことは、アクチュエータ10の形状変化をもたらす。たとえば壁部14の定義された領域32が折り目状に構成されていれば、圧力負荷を受けたときに、折り目状に構成された領域32は、柔軟に変形可能な壁部14の他の領域よりも大きく伸長する。その結果として、流体エラストマーアクチュエータ10は
図6に示す最終コンフィギュレーションをとる。この最終コンフィギュレーションは、その全体的形状に関して初期コンフィギュレーションと区別される。このことを、対象物22を把持するために利用することができる。図示した例では、最終コンフィギュレーションが成立したときに、アクチュエータ10のフィンガ状の区域が対象物22を包囲する(
図6参照)。