(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】ラベンダー油を含有する経皮治療システム
(51)【国際特許分類】
A61K 36/53 20060101AFI20220426BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20220426BHJP
A61K 31/045 20060101ALI20220426BHJP
A61K 31/22 20060101ALI20220426BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220426BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220426BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20220426BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
A61K36/53
A61K9/70 401
A61K31/045
A61K31/22
A61K47/32
A61K47/34
A61P25/20
A61P25/22
(21)【出願番号】P 2016568541
(86)(22)【出願日】2015-05-08
(86)【国際出願番号】 EP2015000955
(87)【国際公開番号】W WO2015176801
(87)【国際公開日】2015-11-26
【審査請求日】2018-04-23
【審判番号】
【審判請求日】2020-10-30
(32)【優先日】2014-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】300005035
【氏名又は名称】エルテーエス ローマン テラピー-ジステーメ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ペトラ・ボッツェム
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ヒル
【合議体】
【審判長】原田 隆興
【審判官】鳥居 福代
【審判官】穴吹 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-64193(JP,A)
【文献】特表2002-539239(JP,A)
【文献】特表平2-500193(JP,A)
【文献】特表2008-515833(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0300198(US,A1)
【文献】特表2008-531742(JP,A)
【文献】特表平9-511230(JP,A)
【文献】特表2007-502795(JP,A)
【文献】Jager W. et al.,Percutaneous absorption of lavender oil from a massage oil,Journal of the Society of Cosmetic Chemists, 1992年, Vol.43, No.1,p.49-54
【文献】Appleton J., Lavender Oil for Anxiety and Depression, Review of the literature on the safety and efficacy of lavender,Natural Medicine Journal [online], 2012年 2月, Vol.4, No.2, [retrieved on 2019-10-9], Retrieved from the Internet:<URL,https://www.naturalmedicinejournal.com/journal/2012-02/lavender-oil-anxiety-and-depression-0(Printer Friendly Page: https://www.naturalmedicinejournal.com/print/312)>
【文献】渡邉 哲也, 皮膚適用製剤の現状と展望 Globalな視点から, Drug Delivery System, 2007年, 第22巻, 第4号, p.450-457
【文献】岡田 弘晃, 中村 泰彦 監修,経皮吸収型製剤の発展と今後の展望(小西 良士),製剤の達人による製剤技術の伝承 下巻 非経口投与製剤の製剤設計と製造法, 株式会社 じほう, 2013年 5月20日, p.194-203
【文献】Herbs at a glance Lavender, [online], 2012年, [2020年6月24日検索], インターネット<URL:https://naturalingredient.org/wp/wp-content/uploads/Herbs_At_A_Glance_Lavender_06-15-2012_0.pdf>
【文献】「世界のウェブアーカイブ|国立国会図書館インターネット資料収集保存事業」, [online], 2009年 1月20日, [2020年6月23日検索], インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20090120185806/https://www.t-tree.net/seiyu/d_3_internaltake.htm>
【文献】MEDCHEM NEWS No.4 NOVEMBER 2013, p.43-44, https://www.jstage.jst.go.jp/article/med
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K36/00-36/9068,A61K31/00-31/80,A61K9/00-9/72,A61K47/00-47/69
PubMed
医中誌WEB
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦燥、睡眠障害、不安および神経症の予防及び/又は治療用の経皮治療システム(TTS)であって、
皮膚とは反対の面で、かつ有効成分に対して不透過性である裏打ち層と、
a)有効成分としてのラベンダー油、又はリナロール若しくは酢酸リナリルを含有する有効成分徐放製剤と、
b)有効成分徐放製剤と接触し、有効成分の送達を制御するマトリクスと、
c)皮膚上の治療システムのための感圧接着固定手段と、
d)取り外し可能な保護層とを含み、
前記マトリクスと感圧接着固定手段とが、同一であるか又は異なっており、かつその材料がアクリル酸及び/又はメタクリル酸及びそれらのエステル、ポリアクリレート、ポリイソブチレン、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、天然ゴム及び/又は合成ゴム、例えば、アクリロニトリル
-ブタジエンゴム、ブチルゴム又はネオプレンゴム、スチレン-ブタジエンブロック共重合体等のスチレン-ジエン共重合体、及びホットメルト接着剤をベースとする感圧接着性ポリマーからなる群から選択された材料を含み、又は、感圧接着性シリコーンポリマー若しくはポリシロキサンをベースとして製造した材料を含み、
有効成分含有量が30~400mgであり、有効成分徐放製剤は、更に繊維成分を含む支持材料を含有する、前記経皮治療システム(TTS)。
【請求項2】
有効成分徐放製剤がリナロール又は酢酸リナリルを含有する、請求項1に記載のTTS。
【請求項3】
有効成分徐放製剤が少なくとも1種の薬学的に受容可能な賦形剤を含む、請求項1に記載のTTS。
【請求項4】
有効成分としてのラベンダー油、又はリナロール若しくは酢酸リナリルを30~400mg、好ましくは40~300mg、より詳細には50~150mg含有する、請求項1~3の何れか1項に記載のTTS。
【請求項5】
支持材料が紙、織物材料又は不織布である、請求項1~4の何れか1項に記載のTTS。
【請求項6】
有効成分徐放製剤の面積が10~35cm
2、好ましくは12~30cm
2、より詳細には15~25cm
2である請求項1~5の何れか1項に記載のTTS。
【請求項7】
裏打ち層がポリエチレンテレフタレート、可塑化酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、ナイロン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、可塑化ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン又はポリアミドを含む群から選択された材料からなる請求項1~6の何れか1項に記載のTTS。
【請求項8】
マトリクスと感圧接着固定手段が同一であるか又は異なっており、かつ、ジメチルアミノエチルメタクリレート及び中性メタクリル酸エステルをベースとするカチオン性共重合体、並びにブチルメタクリレートおよびメチルメタクリレートをベースとする中性共重合体、からなる群から選択された材料を含む、請求項1~7の何れか1項に記載のTTS。
【請求項9】
TTSの製造方法であり、
取り外し可能な保護層、感圧接着固定層及びマトリクス層から構成される積層体を製造し、
有効成分を収容するための徐放製剤層であって、繊維成分を含む支持材料をさらに含む徐放製剤層を前記積層体のマトリクス側に適用し、
自由流動性の有効成分含有製剤を個別に調合した部分を、印刷工程によって前記徐放製剤層に適用し、
場合により、その上に更にマトリックス層を積層し、及び、
このようにして得られた積層体に、有効成分不透過性裏打ち層を最後に設けることに特徴を有し、
有効成分含有製剤を施用する前又は後に、ここまでに形成した複合積層体から、切断及び/又は打抜きすることにより、経皮治療システムを個々に分割することが可能である、請求項1~8の何れかに記載の前記TTSの製造方法。
【請求項10】
印刷工程がパッド印刷工程である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
印刷工程が、少なくとも1つの開口部を備えた塗布装置の分配プレートにより、有効成分含有製剤を、有効成分の収容のための徐放製剤層に転写する工程である請求項9に記載の方法。
【請求項12】
自由流動性の有効成分含有製剤の粘度を、適切な溶媒及び/又は賦形剤の添加により調整する請求項9~11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
焦燥、睡眠障害、不安および神経症の予防及び/又は治療に使用するための経皮治療システム(TTS)であって、該TTSは、
a)皮膚とは反対の面で、かつ有効成分に対して不透過性である裏打ち層と、
b)有効成分としてのラベンダー油、又はリナロール若しくは酢酸リナリルを含有する有効成分徐放製剤と、
c)有効成分徐放製剤と接触し、有効成分の送達を制御するマトリクスと、
d)皮膚上の治療システムのための感圧接着固定手段とを含み、
有効成分含有量が30~400mgであり、かつ有効成分徐放製剤は更に繊維成分を含む支持材料を含有する、TTSを皮膚に接着し、かつ、有効成分が、予防的に又は治療的に有効な量で、好ましくは少なくとも2時間から最大48時間の時間をかけて経皮的に送達
さ
れ、
前記マトリクスと感圧接着固定手段とが、同一であるか又は異なっており、かつその材料がアクリル酸及び/又はメタクリル酸及びそれらのエステル、ポリアクリレート、ポリイソブチレン、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、天然ゴム及び/又は合成ゴム、例えば、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ブチルゴム又はネオプレンゴム、スチレン-ブタジエンブロック共重合体等のスチレン-ジエン共重合体、及びホットメルト接着剤をベースとする感圧接着性ポリマーからなる群から選択された材料を含み、又は、感圧接着性シリコーンポリマー若しくはポリシロキサンをベースとして製造した材料を含む、
前記TTS。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分としてラベンダー油を含有する経皮治療システム(TTS)に関し、並びに焦燥、睡眠障害、不安及び神経症、特に不安な気分からくる焦燥の予防及び/又は治療時におけるその使用に関する。
【0002】
本発明は、又、前記経皮治療システムを製造する方法に関し、前記システムは繊維成分から構成される支持材料を用いて製造され、かつ印刷工程により有効成分を充填する。
【0003】
特許文献1では、神経衰弱、身体化障害及び他のストレス関連疾患の治療のためのラベンダー油の予防的及び治療的使用、及びラベンダー油含有医薬、及び栄養食品、及び経口投与形態の製剤、並びにカプセル剤を開示している。
【0004】
しかしながら、ラベンダー油を経口投与すると、偶に吐き気や曖気(あいき)、及びラベンダー油の口臭が発生し得る。
【0005】
それらは半減期が短く、初回通過効果の畏れがあるため、有効成分の経口投与は問題となり得る。これに関しては、半減期が短いと、物質摂取を頻繁にする必要が生じ、初回通過効果が高いと高用量を必要とすることになる。摂取頻度は適切な経口製剤により、どうにか克服し得るが、初回通過効果が高いという問題は、原理的には有効成分を非経口的に摂取することによってのみ解決できる。
【0006】
本発明の目的は、焦燥、睡眠障害、不安及び神経過敏の予防及び/又は治療に効果的な方法で使用し得る手段を提供することであり、これは前述の欠点を示さず、しかも、おしなべて有害な影響がない。
【0007】
この目的は、有効成分としてラベンダー油を含有する経皮治療システム(TTS)により達成される。
【0008】
経皮治療システムは、皮膚を横断する有効医薬成分を制御下で投与するためのシステムである。これは、様々な病気、身体的及び精神的機能不全、愁訴及び不快感の治療にかなり長期間使用されて来た。経皮治療システムは、膏薬形態の層状の製品であり、有効成分不透過性裏打ち層、少なくとも1種の有効成分含有リザーバ又はマトリクス層、場合により有効成分の放出速度を制御する1層の膜、及びその使用前にTTSから取除かれる取外し可能な保護層を含む。
【0009】
経皮治療システムには、感圧接着層が設けられていて、TTSを皮膚上に固定し、かつ有効成分の投与を確実に制御する。前記感圧接着層は、有効成分含有マトリクス層又は皮膚側有効成分含有層と同一であってもよいが、しかし(皮膚側)有効成分含有層又は場合により存在する膜が感圧接着性でなければ、追加的に存在しても良い。
【0010】
TTSの裏打ち層は、皮膚とは反対面のTTSからの有効成分の望ましくない逸失を防ぐために、TTSに存在する有効成分に対して不透過性でなければならない。このために、特に、金属箔、特定のプラスチックフィルム、及び前記材料の複合積層体も使用される。アルミニウムとポリエチレンテレフタレートのようなプラスチック材料とからなる複合積層体が最も一般的である。前記複合積層体の利点は、アルミニウム箔を経済的に製造することができ、かつ事実上すべての有効医薬成分に対して不透過性であることである。更に、アルミニウム箔は光不透過性であり、特に感光性有効成分について、光に対し信頼性ある保護をするという利点を提供する。
【0011】
特許文献2には、少なくとも1つの有効医薬成分を送達するためのTTSが記載され、そのTTSは、とりわけラベンダー油等の少なくとも1種を封入した、好ましくはカプセル化した香料を含み、この香料はシステムが適用された時すぐ、放出される。香料は、TTSの使用に関して患者の受容性を改善するのに役立つが、ラベンダー油を全身的に投与するには役立たない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許公開第2008/124410号
【文献】国際特許公開第2007/006529号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、
a)皮膚とは反対の面で、かつ有効成分に対して不透過性である裏打ち層、
b)有効成分としてのラベンダー油を含有する有効成分徐放製剤、
c)有効成分徐放製剤と接触し、有効成分の送達を制御するマトリクス、
d)皮膚上の治療システムのための感圧接着固定手段、及び
e)取外し可能な保護層、
を含む経皮治療システム(TTSs)を提供し、有効成分徐放製剤は、繊維成分を含む支持材料をさらに含有する。
【0014】
真正ラベンダー、すなわち細葉のラベンダー((コモン・ラベンダー(Lavandula angustifolia)、ラバンデュラ・オフィキナリス(Lavandula officinalis)又はラバンデュラ・ベラ(Lavandula vera)としても知られている)は、シソ科(Lamiaceae)の植物種である。この植物は、主に観賞植物として、又は香料採取用に使用されている。分布域は、カナリア諸島から地中海地域全体を通じインド亜大陸に広がる。特に地上部の精油(ラベンダー油)、又、葉内のカフェイン酸及びそのデプシドも成分として記載されている。ラベンダー油は、酢酸リナリル、リナロール、樟脳及びユーカリプトールで構成されている。その成分はエステル40~50%、モノテルペノール25~35%、モノテルペン、セスキテルペン、ケトン及び酸化物である。ラベンダーから製造される精油は、伝統的に化粧品に使用されているが、例えばアロマセラピーなどの治療目的にも使用されている。例えば、ラベンダー油に関して抗菌、抗真菌、鎮痙、鎮静及び抗うつ効果が示されている(H. M. A. Cavanaghら(2002)、Phytother。Res。16、301-308)。
【0015】
ラベンダー油は、既知の製造方法により、好ましくは収穫されたばかりのラベンダー花の水蒸気蒸留により、製造できる。
【0016】
ドイツでは、ラベンダー花からの製剤が、煎じ茶の形での抽出物として、及び焦燥の兆候、入眠障害、機能性上腹部愁訴、鼓腸及び温泉療法におけるバス添加剤として、積極的に小論文にされている(monography of commission E of the former German federal health office)。
【0017】
本発明のTTSの有効成分徐放製剤は、ラベンダー油又は純粋な有効成分であるリナロール又は酢酸リナリル、又、少なくとも1種の薬学的に許容可能な賦形剤と組み合わせた含有もできる。 TTSの有効成分含量は30~400mg、好ましくは40~300mg、特に50~150mgである。
【0018】
本発明によるTTSの支持材料は、天然又は合成材料を主体として構成された比較的長く薄く柔軟な繊維状成分を全体に含む。天然材料からなる繊維成分は、例えば、植物繊維、動物繊維及び鉱物繊維をも含む。ラフィア、綿、麻、ココナッツ、リネン、カポック又はラミー等の植物繊維は、一般にセルロースからなる。動物繊維には、絹及び毛(ウール)が含まれる。天然に存在する鉱物繊維はアスベストである。合成繊維としては、ポリカプロラクタム、ナイロン、人絹も、ガラス繊維、炭素繊維から構成される繊維が挙げられる。複数の繊維は共同して、より大きな構造を形成する。例えば、織物繊維は、フィラメント、細いひも、又は布地を共同で形成できる。セルロース繊維は、例えば、紙及び織物の製造に使用される。好ましい支持材料は、紙、織物材料又は不織布である。
【0019】
好ましい実施形態では、有効成分徐放性製剤は10~35cm2、好ましくは12~30cm2、より好ましくは15~25cm2の面積を有する。
【0020】
本発明によるTTSのマトリクス層及び感圧接着固定手段は、同じ材料か又は異なる材料からなる。これらは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸及びそれらのエステル、ポリアクリレート、ポリイソブチレン、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、天然ゴム及び/又は合成ゴム、例えば、アクリロニトリルーブタジエンゴム、ブチルゴム又はネオプレンゴム、スチレン-ブタジエンブロック共重合体等のスチレン-ジエン共重合体、及びホットメルト接着剤をベースとする感圧接着性ポリマからなる群から選択された材料、又は、感圧接着性シリコーンポリマー又はポリシロキサンをベースとして製造された材料を含む。
【0021】
好ましくは、前記材料は、ジメチルアミノエチルメタクリレートおよび中性メタクリル酸エステルをベースとするカチオン性共重合体、例えばEudragit(登録商標)E 100、およびブチルメタクリレートおよびメチルメタクリレートをベースとする中性共重合体、例えばPlastoid(登録商標)Bを含む群から選択される。
【0022】
有効成分不透過性裏打ち層に適する材料は、特に、ポリエステル類であり、これは、例えばポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレート等の特定の強度により特徴付けられるが、更に、実質的に皮膚適合性のあるプラスチック類なら、他のどのようなものでも、例えばポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、セルロース誘導体など多くのものでよい。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、可塑化酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、ナイロン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、可塑化ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリアミドである。特殊な場合には、裏打ち層に、例えば金属、より具体的にはアルミニウムを用いる蒸着により追加的な被覆層を設けても良い。
【0023】
取外し可能な保護層の場合、裏打ち層と同じ材料を使用することは間違いなく可能であるが、但し、それらには、シリコン化等の適切な表面処理などの手段による取外しを可能にする仕上処理を施しておく。然しながら、例えばポリテトラフルオロエチレンで処理した紙やセロファン(登録商標)(セルロース水和物)等の他の取外し可能な保護層を使用することも可能である。
【0024】
本発明によるTTSの製造方法は、
有効成分不透過性支持層、感圧接着固定層及びマトリクス層から構成される積層体を製造し、
有効成分を収容するための徐放製剤層を前記積層体のマトリクス側に適用し、
自由流動性の有効成分含有製剤を個別に調合した部分を、印刷工程によって前記徐放製剤層に適用し、
場合により、その上に更にマトリックス層を積層し、及び、
このようにして得られた積層体に、有効成分不透過性裏打ち層を最後に設けることに、特徴を有し、
有効成分含有製剤を施用する前又は後に、ここまでに形成した複合積層体から、切断及び/又は打抜きすることにより、経皮的治療システムを個々に分割することが可能である。
【0025】
上記印刷工程は、パッド印刷工程でもよい。このようなプロセスは、米国特許第5110599号から知られており、十分に参照している。
【0026】
上記の印刷工程は、少なくとも1つの通路を備えた塗布装置の分配プレートによって有効成分含有製剤を、有効成分の収容を意図した徐放製剤層に転写する工程であってもよい。そのようなプロセスは、米国特許第6187322号から知られており、十分に参照している。
【0027】
有効成分としてのラベンダー油は、上記の2つの印刷工程によって直接適用することができる。然しながら慣習的には、その有効成分は適切な溶媒及び/又は賦形剤を添加して所望の粘度にした液体の形態で使用される。適切な溶媒としては、原則的に全ての一般的有機溶媒、例えば エタノール、イソプロピルアルコール、ヘプタン、ヘキサン、酢酸エチル、石油エーテル、ベンジン、アセトン、グリセロール、DEET(N、N-ジエチル-3-メチルベンズアミド)、THF、並びに、多くの油、例えば、シリコーン油、パラフィン、トリグリセリド、中性油又は植物油も挙げられる。ラベンダー油の粘度を増加する賦形剤としては、マトリクス層を製造するためにも使用されるポリマーである。 特にPVPまたはポリメタクリレートが適している。印刷媒体として使用される有効成分含有製剤の粘度は、好ましくは10~100 dPa・sの範囲内、特に好ましくは15~25 dPa・sの範囲内である。
【0028】
本発明は、更に
a)皮膚とは反対の面で、かつ有効成分に対して不透過性である裏打ち層、
b)有効成分としてのラベンダー油を含有する有効成分徐放製剤、
c)有効成分徐放製剤と接触し、有効成分の送達を制御するマトリクス、及び、
d)皮膚上の治療システムのための感圧接着固定手段、
前記有効成分徐放製剤は、更に繊維成分を含む支持材料を含有する、を含むTTSの使用を提供し、TTSを皮膚に接着させ、焦燥、睡眠障害、不安及び神経症の予防及び/又は治療において、有効成分を、予防又は治療に有効な量で経皮的に、好ましくは少なくとも2時間以上かけて送達し、並びに、焦燥、睡眠障害、不安および神経症の予防及び/又は治療のために、TTSが使用される方法を提供する。
【0029】
本発明を例示的な実施形態および添付図面に基づいて以下に説明し、本発明によるTTSの構造を模式的に示したが、本発明はこれに限定されるものではない。これに関連して、
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は本発明によるTTSの好ましい実施形態の断面を示す図である。
【
図2】
図2は有効成分の徐放製剤が裏打ち層とリザーバ・マトリクスとの間に位置する治療システムのさらに好ましい実施形態の断面を示す。前記図において、TTSは、取外し可能な保護層を除去した後に皮膚に接着しているように描かれている。
【0031】
図1は、本発明による治療システムの断面を概略的に示しており、この治療システムは、固定手段16により皮膚18の上に固定されている。固定手段16の上に位置しているのがリザーバ・マトリクス層12であり、これは製造時は有効成分を含まないのが好ましい(貯蔵中に有効成分の飽和が起こる)。リザーバ・マトリクス内に埋め込まれているのが、有効成分徐放製剤14であり、これはリザーバ・マトリクス材料に有効成分を送達し、次に固定手段16を介して皮膚18にそれを放出する。治療システムは、裏打ち層10によって外側から囲まれており、これは有効成分について、さらに好ましくは湿気に対しても不透過であり、同時にシステムの支持機能として働く。
【0032】
図2は、本発明によるシステムの別の変形例を示し、この変形例においては、有効成分徐放製剤14がリザーバ・マトリクス層12の上にあり、裏打ち層10によって被覆されている。この図では、固定手段は図示していないが、この場合、感圧接着リザーバーマトリクスが、固定手段の機能を持つと想定しているからである。この実施形態より、その製造はおそらく容易である点が有利であり、製造前のマトリクス層に、単に、所定量を適用し、次に裏打ち層10によって全体を囲む必要があるだけである。
【0033】
本発明によるTTSの代表的な厚さの測定値は、全体の厚さが、約123μm~5550μm、好ましくは285μm~1550μm、裏打ち層の厚さが、8~150μm、好ましくは15~100μm、有効成分徐放製剤と接触するマトリクスの厚さが、100~5000μm、好ましくは200~1300μm、保護層の厚さが、15~400μm、好ましくは70~150μmである。このような層の厚さは、マトリクスの表面被覆重量が100~5000g/m2に選択された場合にほぼ達成される。
【実施例】
【0034】
先ず、感圧接着剤HSを
a)市販品(Duro-Tak(登録商標)387-2516、ヘンケル社製、デュッセルドルフ、ドイツ国、これは、酢酸エチル、エタノール、ヘプタンおよびメタノールで構成する溶媒混合物中、アクリル酸2-エチルヘキシル、酢酸ビニル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル及びチタンキレートエステルをベースとする自己架橋性アクリレートポリマーの40%溶液である)933g、を
b)分画したヤシ脂肪酸トリグリセリド(C8-C10; Miglyol(登録商標)812、Evonik Witten社製、ドイツ国)8g
と均質化することにより調製した。
【0035】
更に、Duro-Tak(登録商標)387-2516 6210g、酢酸エチル 553g及びエタノール 311gを上記トリグリセリド 66g及びメタクリル酸ジメチルアミノエチル及び中性メタクリルエステル(Eudragit(登録商標) E100 Rhehm-Pharma社製、Darmstadt、ドイツ国)から構成されるアクリル樹脂626gとを混合し、均質化した(接着剤MS)。
【0036】
更に、Eudragit(登録商標)E100 72gをラベンダー油 100gに導入し、その中に溶解する。結果として、有効成分製剤が得られた。
【0037】
感圧接着剤HSを不粘着性に仕上げた保護層(A)に適用し、溶剤蒸発後の表面重量40g/m2を有する感圧接着剤層を形成した。
【0038】
接着剤MSを別の不粘着性に仕上げた保護層(B)に適用し、溶剤蒸発後の表面重量220g/m2 を有するフィルムを形成した。前記フィルムを保護層(A)に適用された感圧接着剤層の上に積層した。その結果が底部シートが得られた。
【0039】
更なる被覆工程において、接着剤MSを、不粘着性に仕上げた保護層(C)に更に適用し、溶剤蒸発後の表面重量が110g/m2を有するフィルムを形成し、そのフィルムの上に有効成分不透過性の裏打ち層を積層した。この場合が、トップシートの形成である。
【0040】
底面シートから不粘着性に仕上げた保護層(B)を除去した後、茶用濾紙(表面重量40g/m2)で構成する円形のブランク部を中央に配置した。
【0041】
その後、ショア硬度6を有する卵形シリコーンゴム製スポンジパッドを用いて、有効成分製剤を不織布円形ブランク部の上に印刷した。有効成分製剤の量は、各TTSが後にラベンダー油180mgを含有するように計量した。
【0042】
不粘着性に仕上げた保護層(C)を除去した後、トップシートを底面シート(不織布製円形ブランクを備え、有効成分製剤を浸透したもの)に積層し、次いでTTSを打ち抜いた。