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特許7063566樹脂発泡シート、樹脂発泡シートの製造方法、及び粘着テープ
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  • 特許-樹脂発泡シート、樹脂発泡シートの製造方法、及び粘着テープ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】樹脂発泡シート、樹脂発泡シートの製造方法、及び粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/06 20060101AFI20220426BHJP
   C09J 7/24 20180101ALI20220426BHJP
   C09J 7/26 20180101ALI20220426BHJP
【FI】
C08J9/06 CES
C09J7/24
C09J7/26
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017192259
(22)【出願日】2017-09-29
(65)【公開番号】P2019065191
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】濱田 哲史
(72)【発明者】
【氏名】矢野 秀明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健人
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-061669(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094723(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/052556(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/131082(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/052557(WO,A1)
【文献】特開2009-258274(JP,A)
【文献】特開2017-002292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
B29C 44/00-44/60,67/20
C09J 7/00-7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂発泡シート中の全気泡の数に対し、MD方向における気泡径が20μm超40μm以下である気泡の数の割合が12%以上であり、TD方向における気泡径が20μm超40μm以下である気泡の数の割合が12%以上であり、MD方向における気泡径が20μm超80μm以下である気泡の数の割合が0%以上であり、TD方向における気泡径が20μm超80μm以下である気泡の数の割合が50%以上であり、MD方向における気泡径が40μm超60μm以下である気泡の数の割合が23~50%であり、TD方向における気泡径が40μm超60μm以下である気泡の数の割合が12~40%であり、MD方向における気泡径が80μm超100μm以下である気泡の数の割合が1~25%であり、TD方向における気泡径が80μm超100μm以下である気泡の数の割合が1~30%である、樹脂発泡シート。
【請求項2】
前記樹脂発泡シートのMD方向及びTD方向のそれぞれの平均気泡径が100μm以下である、請求項1に記載の樹脂発泡シート。
【請求項3】
前記樹脂発泡シートの厚さが1.2mm以下である、請求項1又は2に記載の樹脂発泡シート。
【請求項4】
前記樹脂発泡シートのMD方向の破断点強度が7~30MPaであり、TD方向の破断点強度が5~30MPaである、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂発泡シート。
【請求項5】
前記樹脂発泡シートの25%圧縮強度が40~600kPaである、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂発泡シート。
【請求項6】
前記樹脂発泡シートの発泡倍率が1.2~11cm/gである、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂発泡シート。
【請求項7】
前記樹脂発泡シートはポリオレフィン樹脂を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂発泡シート。
【請求項8】
前記ポリオレフィン樹脂がポリエチレン樹脂である、請求項7に記載の樹脂発泡シート。
【請求項9】
前記ポリエチレン樹脂が、メタロセン化合物の重合触媒で重合された直鎖状低密度ポリエチレンである、請求項8に記載の樹脂発泡シート。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂発泡シートの製造方法であって、
樹脂及び熱分解型発泡剤を含むシート状の発泡性組成物を架橋し、加熱して前記熱分解型発泡剤を発泡させ、延伸倍率1.1倍以上でTD方向及びMD方向の少なくともいずれか一方に延伸する、樹脂発泡シートの製造方法。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂発泡シートと、該樹脂発泡シートの少なくともいずれか一方の面に設けた粘着剤層とを備える粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂発泡シート、樹脂発泡シートの製造方法、及び粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話、カメラ、ゲーム機器、電子手帳、タブレット端末、ノート型パーソナルコンピュータ等の電子機器では、樹脂発泡シートからなるシール材又は衝撃吸収材が使用されている。これらシール材又は衝撃吸収材は、樹脂発泡シートを基材とした粘着テープ等にして使用されることがある。例えば、上記電子機器における表示装置は、一般的に、LCD等の表示パネルの上に保護パネルを設置した構造を有するが、その保護パネルを、表示パネル外側の額縁部分と貼り合わせるために、樹脂発泡シートを基材とした粘着テープが使用される。
電子機器内部に使用される樹脂発泡シートとしては、熱分解型発泡剤を含む発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを発泡且つ架橋させて得られる架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開2005/007731号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、昨今、電子機器は小型化が進む一方で各種部品の高機能化も進み、電子機器内部のスペースの制約が大きくなるだけでなく、機器の内部構造が複雑化している。内部構造の複雑化に伴い、大小さまざまな段差をもった筐体が増えると想定される。その際、樹脂発泡シートを基材とするシール材と筐体との間に隙間があいてしまうと防水性が失われ、そこを起点にして剥がれやすくなる。
したがって、樹脂発泡シートを基材とするシール材を電子機器等に貼り付ける際、防水性や接着強度の観点から、段差追従性が求められる。また、これと共に部品を再利用する観点で、シール材が千切れることなく容易に剥離できるリワーク性が求められる。
【0005】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、段差に追従して良好な接着性を示すと共に、リワーク性が良好なシール材の基材として用いることができる樹脂発泡シート、該樹脂発泡シートの製造方法、及び該樹脂発泡シートを備える粘着テープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、鋭意検討の結果、比較的小さい気泡径の存在割合を特定の範囲に調整した樹脂発泡シートであれば、段差に追従して良好な接着性を示し、且つ良好なリワーク性を示すシール材の基材として用いることができることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は下記のとおりである。
【0007】
[1]樹脂発泡シート中の全気泡の数に対し、MD方向における気泡径が20μm超40μm以下である気泡の数の割合が12%以上であり、TD方向における気泡径が20μm超40μm以下である気泡の数の割合が12%以上であり、MD方向における気泡径が20μm超80μm以下である気泡の数の割合が50%以上であり、TD方向における気泡径が20μm超80μm以下である気泡の数の割合が45%以上である、樹脂発泡シート。
[2]前記樹脂発泡シートのMD方向及びTD方向のそれぞれの平均気泡径が100μm以下である、上記[1]に記載の樹脂発泡シート。
[3]前記樹脂発泡シートの厚さが1.2mm以下である、上記[1]又は[2]に記載の樹脂発泡シート。
【0008】
[4]前記樹脂発泡シートのMD方向の破断点強度が7~30MPaであり、TD方向の破断点強度が5~30MPaである、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の樹脂発泡シート。
[5]前記樹脂発泡シートの25%圧縮強度が40~600kPaである、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の樹脂発泡シート。
[6]前記樹脂発泡シートの発泡倍率が1.2~11cm/gである、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の樹脂発泡シート。
[7]前記樹脂発泡シートはポリオレフィン樹脂を含む、上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の樹脂発泡シート。
【0009】
[8]前記ポリオレフィン樹脂がポリエチレン樹脂である、上記[7]に記載の樹脂発泡シート。
[9]前記ポリエチレン樹脂が、メタロセン化合物の重合触媒で重合された直鎖状低密度ポリエチレンである、上記[8]に記載の樹脂発泡シート。
[10]上記[1]~[9]のいずれか1項に記載の樹脂発泡シートの製造方法であって、
樹脂及び熱分解型発泡剤を含むシート状の発泡性組成物を架橋し、加熱して前記熱分解型発泡剤を発泡させ、延伸倍率1.1倍以上でTD方向及びMD方向の少なくともいずれか一方に延伸する、樹脂発泡シートの製造方法。
[11]上記[1]~[9]のいずれか1項に記載の樹脂発泡シートと、該樹脂発泡シートの少なくともいずれか一方の面に設けた粘着剤層とを備える粘着テープ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、段差に追従して良好な接着性を示すと共に、リワーク性が良好なシール材の基材として用いることができる樹脂発泡シート、該樹脂発泡シートの製造方法、及び該樹脂発泡シートを備える粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】プッシュ試験の概略を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について実施形態を用いて詳細に説明する。
[樹脂発泡シート]
本発明の実施形態に係る樹脂発泡シートは、樹脂発泡シート中の全気泡の数に対し、MD方向における気泡径が20μm超40μm以下である気泡の数の割合が12%以上であり、TD方向における気泡径が20μm超40μm以下である気泡の数の割合が12%以上であり、MD方向における気泡径が20μm超80μm以下である気泡の数の割合が50%以上であり、TD方向における気泡径が20μm超80μm以下である気泡の数の割合が45%以上である、樹脂発泡シートである。
なお、MD方向は、Machine directionを意味し、押出方向等と一致する方向であるとともに、TD方向は、Transverse directionを意味し、MD方向に直交する方向であり、樹脂発泡シートのシート面に平行な方向である。
【0013】
<MD方向における気泡径が20μm超40μm以下である気泡の数の割合>
本発明の樹脂発泡シートは、MD方向における気泡径が20μm超40μm以下である気泡の数の割合が12%以上である。前記気泡の数の割合が12%未満であると、必然的に気泡径が大きな気泡が発泡樹脂シート中に多くなるため、該気泡を起点として樹脂発泡シートが千切れたり破れたりしやすくなり、樹脂発泡シートを基材として有するシール材のリワーク性が低下する。そのような観点から、MD方向における気泡径が20μm超40μm以下である気泡の数の割合は、15%以上が好ましく、18%以上がより好ましく、そして、上限値に制限はないが、70%以下が好ましく、65%以下がより好ましく、60%以下が更に好ましい。
【0014】
<TD方向における気泡径が20μm超40μm以下である気泡の数の割合>
本発明の樹脂発泡シートは、TD方向における気泡径が20μm超40μm以下である気泡の数の割合が12%以上である。前記気泡の数の割合が12%未満であると、前述のMD方向における理由と同様に、気泡径が大きな気泡が発泡樹脂シート中に多くなるため、該気泡を起点として樹脂発泡シートが千切れたり破れたりしやすくなる。そのような観点から、TD方向における気泡径が20μm超40μm以下である気泡の数の割合は、15%以上が好ましく、18%以上がより好ましく、そして、上限値に制限はないが、70%以下が好ましく、60%以下がより好ましく、55%以下が更に好ましく、50%以下がより更に好ましい。
【0015】
<MD方向における気泡径が20μm超80μm以下である気泡の数の割合>
本発明の樹脂発泡シートは、MD方向における気泡径が20μm超80μm以下である気泡の数の割合が50%以上である。前記気泡の数の割合が50%未満であると、必然的に気泡径が大きな気泡が発泡樹脂シート中に極端に多くなるため、該気泡を起点として樹脂発泡シートが千切れたり破れたりしやすくなる。また、発泡樹脂シート中の気泡径の大きさのバラツキが多くなるため、この樹脂発泡シートを用いたシール材のリワーク性が低下する。そのような観点から、MD方向における気泡径が20μm超80μm以下である気泡の数の割合は、55%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、64%以上が更に好ましく、68%以上がより更に好ましい。そして、上限値に制限はないが、95%以下が好ましく、90%以下がより好ましく、85%以下が更に好ましく、80%以下がより更に好ましく、75%以下がより更に好ましい。
【0016】
<TD方向における気泡径が20μm超80μm以下である気泡の数の割合>
本発明の樹脂発泡シートは、TD方向における気泡径が20μm超80μm以下である気泡の数の割合が45%以上である。前記気泡の数の割合が45%未満であると、前記MD方向における理由と同様の理由から、樹脂発泡シートが千切れたり破れたりしやすくなる。また、発泡樹脂シート中の気泡径の大きさのバラツキが多くなるため、この樹脂発泡シートを基材として有するシール材のリワーク性が低下する。そのような観点から、TD方向における気泡径が20μm超80μm以下である気泡の数の割合は、48%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、52%以上が更に好ましく、そして、上限値に制限はないが、80%以下が好ましく、75%以下がより好ましく、70%以下が更に好ましく、65%以下がより更に好ましい。
【0017】
<気泡径が20μm以下である気泡の数の割合>
全気泡の数に対し、MD方向における気泡径が20μm以下である気泡の数の割合は、10%以下であることが好ましい。発泡樹脂シートを基材とするシール材のリワーク性を向上させることを考慮すると気泡径が20μm以下である気泡が多く存在しても問題はないが、気泡径が20μm以下である気泡を多く有する樹脂発泡シートは、コストの点で製造が困難である。よって、MD方向における気泡径が20μm以下である気泡の数の割合は、好ましくは8%以下、より好ましくは7%以下、更に好ましくは6%以下である。
また、TD方向における気泡径が20μm以下である気泡の数の割合は、同様に製造コストの観点から、好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下、更に好ましくは7%以下、より更に好ましくは6%以下である。
気泡径が20μm以下である気泡の数の割合の下限値は、MD方向及びTD方向のいずれも制限はないが、好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上である。
【0018】
<気泡径が40μm超60μm以下である気泡の数の割合>
本発明の樹脂発泡シートにおいて、MD方向における気泡径が40μm超60μm以下である気泡の数の割合は15~50%が好ましい。前記気泡の数の割合が前記範囲内であると発泡樹脂シート中の気泡径の大きさのバラツキが少なくなるため、この樹脂発泡シートを基材とするシール材のリワーク性が向上する。そのような観点から、MD方向における気泡径が40μm超60μm以下である気泡の数の割合は、20~45%がより好ましく、23~40%が更に好ましく、23~38%がより更に好ましい。また、同様の理由から、TD方向における気泡径が40μm超60μm以下である気泡の数の割合は、10~40%が好ましく、12~35%がより好ましく、15~30%が更に好ましい。
【0019】
<気泡径が60μm超80μm以下である気泡の数の割合>
本発明の樹脂発泡シートにおいて、MD方向における気泡径が60μm超80μm以下である気泡の数の割合は1~30%が好ましい。前記気泡の数の割合が前記範囲内であると発泡樹脂シート中の気泡径の大きさのバラツキが少なくなるため、この樹脂発泡シートを基材とするシール材のリワーク性が向上する。そのような観点から、MD方向における気泡径が60μm超80μm以下である気泡の数の割合は、1~28%が好ましく、1~25%がより好ましく、1~22%が更に好ましい。また、同様の理由から、TD方向における気泡径が60μm超80μm以下である気泡の数の割合は、1~30%が好ましく、1~25%がより好ましく、1~20%が更に好ましい。
【0020】
<気泡径が80μm超100μm以下である気泡の数の割合>
本発明の樹脂発泡シートにおいて、MD方向における気泡径が80μm超100μm以下である気泡の数の割合は、30%以下であることが好ましい。樹脂発泡シートにおいては、80μm超の気泡径を有する気泡が多いと、それらの気泡を起点として樹脂発泡シートが千切れたり破れたりしやすくなる。この樹脂発泡シートを用いた発泡樹脂シートのリワーク性が低下する。そのような観点から、MD方向における気泡径が80μm超100μm以下である気泡の数の割合は、1~25%が好ましく、1~20%がより好ましく、1~15%が更に好ましい。また、同様の理由から、TD方向における気泡径が80μm超100μm以下である気泡の数の割合は、1~30%が好ましく、1~25%がより好ましく、1~20%が更に好ましい。
【0021】
MD方向及びTD方向における気泡径を上記範囲とするには、例えば、後述する発泡剤を用いて製造したり、樹脂発泡シート作製時の延伸率を高くすればよい。また、架橋度、平均気泡径、発泡倍率等を適宜後述する範囲内等に設定することで調整することができる。
なお、MD方向における気泡径が100μm超である気泡の数の割合は、実質的に存在しないことが好ましいが、この樹脂発泡シートを基材として用いたシール材のリワーク性を向上させる観点から、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、4%以下が更に好ましい。
【0022】
<平均気泡径>
樹脂発泡シートは、MD及びTD方向の平均気泡径のいずれもが、好ましくは100μm以下、より好ましくは95μm以下、更に好ましくは90μm以下、より更に好ましくは85μm以下である。このような平均気泡径の気泡は一般的に微細気泡と呼ばれる。樹脂発泡シートの25%圧縮強度が小さいと層間強度が低下してテープ強度が損なわれることがあるが、平均気泡径が100μm以下であることで強度を補填することができる。また、樹脂発泡シートは、微細気泡を有することでシート幅を狭くしたような場合でも、その狭い幅の間に独立気泡が多数存在することになる。そのため、幅を狭くした場合でも、適度な圧縮強度、破断点強度が確保できる。
また、MD及びTDの平均気泡径それぞれは、製造容易性の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、更に好ましくは30μm以上である。
【0023】
なお、気泡の数の割合、及び平均気泡径は下記の要領で測定したものをいう。
樹脂発泡シートを50mm四方にカットしたものを測定用の発泡体サンプルとして用意した。これを液体窒素に1分間浸した後にカミソリ刃でMD方向、TD方向に沿ってそれぞれ厚さ方向に切断した。この断面をデジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製「VHX-900」)を用いて200倍の拡大写真を撮り、MD方向、TD方向のそれぞれにおける長さ2mm分の切断面に存在する全ての気泡について気泡径を測定し、その操作を5回繰り返した。そして、前記各範囲に存在する気泡の数の割合を算出し気泡の数の割合とすると共に、全ての気泡の平均値をMD方向、TD方向の平均気泡径とした。
【0024】
<破断点強度>
本発明の樹脂発泡シートのMD方向における破断点強度は、7~30MPaが好ましく、10~25MPaがより好ましく、10~20MPaが更に好ましい。
一方、本発明の樹脂発泡シートのTD方向における破断点強度は、5~30MPaが好ましく、5~25MPaがより好ましく5~20MPaが更に好ましい。
MD方向及びTD方向の破断点強度が前記範囲内であると、樹脂発泡シートを細く打ち抜いたものを基材として用いたシール材のリワーク時に、MD方向及びTD方向のいずれの方向に力が加わっても千切れることなく容易に剥離することができる。
【0025】
<破断までの伸び率>
本発明の樹脂発泡シートのMD方向における破断までの伸び率は、100~600%が好ましく、150~550%がより好ましく、200~500%が更に好ましく、250~500%がより更に好ましい。
一方、本発明の樹脂発泡シートのTD方向における破断までの伸び率は、100~600%が好ましく、120~400%がより好ましく140~350%が更に好ましく、160~320%がより更に好ましい。MD方向及びTD方向の伸び率が600%以下であると、樹脂発泡シートを基材として用いたシール材を引っ張って剥離する際に、伸びにくく容易に剥離することができる。
【0026】
<25%圧縮強度>
本発明の樹脂発泡シートの25%圧縮強度は40~600kPaが好ましく、45~600kPaがより好ましく、140~550kPaがさらに好ましく、150~500kPaがより更に好ましく、なかでも160~450kPaがより更に好ましい。25%圧縮強度が前記範囲内であると、段差のある被着体に対して樹脂発泡シートを基材として有するシール材を隙間なく貼り付けることが可能になり防水性を担保することができる。
なお、25%圧縮強度は、樹脂発泡シートをJIS K6767に準拠して測定したものをいう。
【0027】
<架橋度>
本発明に係る樹脂発泡シートは架橋されていることがこのましく、架橋度は35質量%以上が好ましい。架橋度が35質量%未満では、樹脂発泡シート中の気泡径の大きさを一定の範囲に制御することが難しくなる。架橋度を35質量%以上とすることで樹脂シートの気泡を微細化しやすくなり、また各気泡の大きさのバラツキも少なくしやすくなり、この樹脂発泡シートを基材として有するシール材のリワーク性、及び機械強度を向上させることができる。そのような観点から、架橋度は40~65質量%が好ましく、45~60質量%がより好ましく、45~55質量%が更に好ましい。これら上限値以下とすることで気泡径のバラツキを小さくなるように発泡させやすくなり、発泡倍率を高めやすくなる。樹脂発泡シートは、発泡倍率を高めることで柔軟性を高めやすくなり、圧縮強度を適切な値としやすくなる。
【0028】
<独立気泡率>
本発明の樹脂発泡シートは、独立気泡を有するものであることが好ましい。独立気泡を有するとは、全気泡に対する独立気泡の割合(「独立気泡率」という)が70%以上となることを意味する。独立気泡率は、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上、より更に好ましくは90%以上、より更に好ましくは95%以上である。樹脂発泡シートの独立気泡率が70%以上であると、樹脂発泡シートの防水性が向上する。
独立気泡率は、ASTM D2856(1998)に準拠して求めることができる。市販の測定器では、乾式自動密度計アキュピック1330等が挙げられる。
【0029】
独立気泡率は、より具体的には下記の要領で測定される。樹脂発泡シートから一辺が5cmの平面正方形状で、且つ一定厚さの試験片を切り出す。試験片の厚さを測定し、試験片の見掛け体積Vを算出するとともに試験片の重量Wを測定する。次に、気泡の占める見掛け体積Vを下記式に基づいて算出する。なお、試験片を構成している樹脂の密度は、1g/cmとする。
気泡の占める見掛け体積V=V-W
続いて、試験片を23℃の蒸留水中に水面から100mmの深さに沈めて、試験片に15kPaの圧力を3分間に亘って加える。しかる後、試験片を水中から取り出して試験片の表面に付着した水分を除去し、試験片の重量Wを測定し、下記式に基づいて連続気泡率F及び独立気泡率Fを算出する。
連続気泡率F(%)={(W-W)/V}×100
独立気泡率F(%)=100-F
【0030】
<樹脂発泡シートの寸法>
樹脂発泡シートの厚さは1.2mm以下であることが好ましい。厚さが1.2mm以下であると薄型化が可能になり、小型化した電子機器に好適に使用できる。そのような観点から、樹脂発泡シートの厚さは、0.01mm~1.0mmが好ましく、0.01mm~0.7mmが好ましく、0.01mm~0.28mmがより好ましく、0.03~0.25mmが更に好ましく、0.05~0.2mmがより更に好ましい。樹脂発泡シートの厚さが0.01m以上であると、樹脂発泡シートの耐衝撃性及び柔軟性の確保が容易になる。
【0031】
樹脂発泡シートは、その幅が狭いものが好ましく、具体的には、細線状に加工したものが好ましい。例えば樹脂発泡シートの幅を5mm以下にして使用してもよく、好ましくは3mm以下、より好ましくは1mm以下で使用する。樹脂発泡シートの幅を狭くすると、小型化された電子機器内部において好適に使用することが可能である。
樹脂発泡シートの幅の下限値は特に限定されないが、例えば0.1mm以上のものであってもよいし、0.2mm以上のものであってもよい。なお、樹脂発泡シートの平面形状は、特に限定されないが、細長矩形状、枠状、L字状、コの字状等とするとよい。ただし、これらの形状以外でも、通常の四角形、円形等の他のいかなる形状であってもよい。
【0032】
<発泡倍率>
樹脂発泡シートの発泡倍率は、1.2~11cm/gであることが好ましい。発泡倍率をこれらの範囲内とすることで圧縮強度を上記範囲内に調整しやすくすることができる。また、発泡倍率を1.2cm/g以上とすることで、圧縮強度、柔軟性が良好となり、樹脂発泡シートの衝撃吸収性、シール性が良好となりやすい。一方で、11cm/g以下とすることで、機械強度が高くなり、耐衝撃性等を向上させやすくなる。
以上の観点から、発泡倍率は、1.2~10cm/gが好ましく、1.2~8cm/gがより好ましく、1.3~7cm/gが更に好ましく、1.3~6cm/gがより更に好ましく、1.3~5cm/gがより更に好ましく、1.3~3.5cm/gがより更に好ましく、1.5~3.0cm/gがより更に好ましい。なお、本発明では、JIS K7222に従い樹脂発泡シートの密度を求め、その逆数を発泡倍率とする。
【0033】
<ポリオレフィン樹脂>
樹脂発泡シートに使用される樹脂としては、各種の樹脂を使用すればよいが、中でもポリオレフィン樹脂を使用することが好ましい。ポリオレフィン樹脂を使用することで、樹脂発泡シートの適度な柔軟性を確保しつつ、平均気泡径を小さくすることが可能である。
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、これらの中ではポリエチレン樹脂が好ましい。
ポリエチレン樹脂としては、チーグラー・ナッタ化合物、メタロセン化合物、酸化クロム化合物等の重合触媒で重合されたポリエチレン樹脂が挙げられ、好ましくは、メタロセン化合物の重合触媒で重合されたポリエチレン樹脂が用いられる。
【0034】
また、ポリエチレン樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンを用いることにより、樹脂発泡シートに柔軟性を付与するとともに、樹脂発泡シートの薄型化が可能になる。この直鎖状低密度ポリエチレンは、メタロセン化合物等の重合触媒を用いて得たものがより好ましい。また、直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレン(例えば、全モノマー量に対して75質量%以上、好ましくは90質量%以上)と必要に応じて少量のα-オレフィンとを共重合することにより得られる直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましい。
α-オレフィンとして、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、及び1-オクテン等が挙げられる。なかでも、炭素数4~10のα-オレフィンが好ましい。
ポリエチレン樹脂、例えば上記した直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、0.870~0.910g/cmが好ましく、0.875~0.907g/cmがより好ましく、0.880~0.905g/cmが更に好ましい。ポリエチレン樹脂としては、複数のポリエチレン樹脂を用いることもでき、また、上記した密度範囲以外のポリエチレン樹脂を加えてもよい。
【0035】
(メタロセン化合物)
メタロセン化合物としては、遷移金属をπ電子系の不飽和化合物で挟んだ構造を有するビス(シクロペンタジエニル)金属錯体等の化合物を挙げることができる。より具体的には、チタン、ジルコニウム、ニッケル、パラジウム、ハフニウム、及び白金等の四価の遷移金属に、1又は2以上のシクロペンタジエニル環又はその類縁体がリガンド(配位子)として存在する化合物を挙げることができる。
このようなメタロセン化合物は、活性点の性質が均一であり各活性点が同じ活性度を備えている。メタロセン化合物を用いて合成した重合体は、分子量、分子量分布、組成、組成分布等の均一性が高いため、メタロセン化合物を用いて合成した重合体を含むシートを架橋した場合には、架橋が均一に進行する。その結果、均一に延伸できるため、樹脂発泡シートを薄くしてもその厚さを均一にしやすくなる。
【0036】
リガンドとしては、例えば、シクロペンタジエニル環、インデニル環等を挙げることができる。これらの環式化合物は、炭化水素基、置換炭化水素基又は炭化水素-置換メタロイド基により置換されていてもよい。炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種アミル基、各種ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種セチル基、フェニル基等が挙げられる。なお、「各種」とは、n-、sec-、tert-、iso-を含む各種異性体を意味する。
また、環式化合物をオリゴマーとして重合したものをリガンドとして用いてもよい。
更に、π電子系の不飽和化合物以外にも、塩素や臭素等の一価のアニオンリガンド又は二価のアニオンキレートリガンド、炭化水素、アルコキシド、アリールアミド、アリールオキシド、アミド、アリールアミド、ホスフィド、アリールホスフィド等を用いてもよい。
【0037】
四価の遷移金属やリガンドを含むメタロセン化合物としては、例えば、シクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、メチルシクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル-t-ブチルアミドジルコニウムジクロリド等が挙げられる。
メタロセン化合物は、特定の共触媒(助触媒)と組み合わせることにより、各種オレフィンの重合の際に触媒としての作用を発揮する。具体的な共触媒としては、メチルアルミノキサン(MAO)、ホウ素系化合物等が挙げられる。なお、メタロセン化合物に対する共触媒の使用割合は、10~100万モル倍が好ましく、50~5,000モル倍がより好ましい。
樹脂発泡シートに含まれるポリオレフィン樹脂は、上記した直鎖状低密度ポリエチレンを使用する場合、上記の直鎖状低密度ポリエチレンを単独で使用してもよいが、他のポリオレフィン樹脂と併用してもよく、例えば、以下に述べる他のポリオレフィン樹脂と併用してもよい。他のポリオレフィン樹脂を含有する場合、直鎖状低密度ポリエチレン(100質量%)に対する他のポリオレフィン樹脂の割合は、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
【0038】
ポリオレフィン樹脂として使用するエチレン-酢酸ビニル共重合体は、例えば、エチレンを50質量%以上含有するエチレン-酢酸ビニル共重合体が挙げられる。
また、ポリプロピレン樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、プロピレンを50質量%以上含有するプロピレン-α-オレフィン共重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
プロピレン-α-オレフィン共重合体を構成するα-オレフィンとしては、具体的には、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等が挙げることができ、これらの中では、炭素数6~12のα-オレフィンが好ましい。
【0039】
また、樹脂発泡シートは、樹脂としてポリオレフィン樹脂を使用する場合、樹脂発泡シートに含有される樹脂は、ポリオレフィン樹脂を単独で使用してもよいが、ポリオレフィン樹脂以外の樹脂を含んでもよい。樹脂発泡シートにおいて、ポリオレフィン樹脂の樹脂全量に対する割合は、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。
また、樹脂発泡シートに使用するポリオレフィン樹脂以外の樹脂としては、スチレン系熱可塑性エラストマー、EPDM等のエチレンプロピレン系熱可塑性エラストマー等の各種のエラストマー、ゴム成分等が挙げられる。
【0040】
(熱分解型発泡剤)
本発明の樹脂発泡シートは、上記樹脂と熱分解型発泡剤とを含む発泡性組成物を発泡してなることが好ましい。また、熱分解型発泡剤としては、粒径が15μm未満のものを使用することが好ましい。本発明においては、粒径が15μm未満のものを使用し、また、架橋度を特定の範囲に調整することによって、樹脂発泡シート中の気泡径の分布を制御することができ、その結果、この樹脂発泡シートを基材として有するシール材のリワーク性を向上させることができる。そのような観点から、熱分解型発泡剤の粒径は、2~14μmが好ましく、5~13μmがより好ましい。
なお、熱分解型発泡剤の粒径は、レーザー回折法により測定した値であって、累積頻度50%に相当する粒径(D50)を意味する。
【0041】
熱分解型発泡剤としては、有機発泡剤、無機発泡剤が使用可能である。有機発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸金属塩(アゾジカルボン酸バリウム等)、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、ヒドラゾジカルボンアミド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体、トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物等が挙げられる。
無機発泡剤としては、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ等が挙げられる。
これらの中では、微細な気泡を得る観点、及び経済性、安全面の観点から、アゾ化合物が好ましく、アゾジカルボンアミドがより好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
発泡性組成物における熱分解型発泡剤の配合量は、樹脂100質量部に対して、1~10質量部が好ましく、1~8質量部がより好ましく、1.5~7質量部が更に好ましい。
【0042】
また、発泡性組成物は、上記樹脂と熱分解型発泡剤に加えて、気泡核調整剤を含有することが好ましい。気泡核調整剤としては、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の亜鉛化合物、クエン酸、尿素の有機化合物等が挙げられるが、これらの中では、酸化亜鉛が好ましい。上記した小粒径の発泡剤に加えて気泡核調整剤を使用することで、気泡径及び標準偏差をより小さくしやすくなる。気泡核調整剤の配合量は、樹脂100質量部に対して、0.4~8質量部が好ましく、0.5~5質量部がより好ましく、0.8~2.5質量部が更に好ましい。
発泡性組成物は、必要に応じて、上記以外にも、酸化防止剤、熱安定剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、充填材等の発泡体に一般的に使用する添加剤を含有していてもよい。
【0043】
[樹脂発泡シートの製造方法]
樹脂発泡シートの製造方法は、特に制限はないが、例えば、樹脂及び熱分解型発泡剤を含むシート状の発泡性組成物を架橋し、加熱して熱分解型発泡剤を発泡させ、延伸倍率1.1倍以上でTD方向及びMD方向の少なくとも一方に延伸することで製造する。その製造方法は、より具体的には、以下の工程(1)~(4)を含む。
工程(1):樹脂、及び熱分解型発泡剤を含む添加剤を混合して、シート状の発泡性組成物(樹脂シート)に成形する工程
工程(2):シート状の発泡性組成物に電離性放射線を照射して発泡性組成物を架橋させる工程
工程(3):架橋させた発泡性組成物を加熱し、熱分解型発泡剤を発泡させて、樹脂発泡シートを得る工程
工程(4):延伸倍率1.1倍以上で、MD方向又はTD方向のいずれか一方又は双方の方向に樹脂発泡シートを延伸する工程
【0044】
工程(1)において、樹脂シートを成形する方法は、特に限定されないが、例えば、樹脂及び添加剤を押出機に供給して溶融混練し、押出機から発泡性組成物をシート状に押出すことによって樹脂シートを成形すればよい。
工程(2)において発泡性組成物を架橋する方法としては、樹脂シートに電子線、α線、β線、γ線等の電離性放射線を照射する方法を用いる。上記電離放射線の照射量は、得られる樹脂発泡シートの架橋度が上記した所望の範囲となるように調整すればよいが、5~15Mradであることが好ましく、6~13Mradであることがより好ましい。
工程(3)において、発泡性組成物を加熱し熱分解型発泡剤を発泡させるときの加熱温度は、熱分解型発泡剤の発泡温度以上であればよいが、好ましくは200~300℃、より好ましくは220~280℃である。
【0045】
工程(4)における樹脂発泡シートの延伸は、MD及びTD方向の両方に行ってもよいし、一方のみに行ってもよいが、両方に行うことが好ましい。また樹脂発泡シートの延伸は、樹脂シートを発泡させて樹脂発泡シートを得た後に行ってもよいし、樹脂シートを発泡させつつ行ってもよい。なお、樹脂シートを発泡させて樹脂発泡シートを得た後、樹脂発泡シートを延伸する場合には、樹脂発泡シートを冷却することなく発泡時の溶融状態を維持したまま続けて樹脂発泡シートを延伸してもよく、樹脂発泡シートを冷却した後、再度、樹脂発泡シートを加熱して溶融又は軟化状態とした上で樹脂発泡シートを延伸してもよい。樹脂発泡シートは延伸することで薄厚にしやすくなる。
工程(4)において、樹脂発泡シートのMD方向及びTD方向の一方又は両方への延伸倍率は、1.2~4.0倍が好ましく、1.5~3.3倍がより好ましい。なかでも、両方への延伸倍率をこれら範囲内にすることが特に好ましい。かかる範囲とすることで、破断圧縮パラメータを所望の範囲としやすくなる。
また、延伸倍率を上記下限値以上とすると、樹脂発泡シートの柔軟性及び引張強度が良好になりやすくなる。一方、上限値以下とすると、樹脂発泡シートが延伸中に破断したり、発泡中の樹脂発泡シートから発泡ガスが抜けて発泡倍率が著しく低下したりすることが防止され、樹脂発泡シートの柔軟性や引張強度が良好になり、品質も均一なものとしやすくなる。
また、延伸時に樹脂発泡シートは、例えば100~280℃、好ましくは150~260℃に加熱すればよい。
以上のようにして得られた樹脂発泡シートは、抜き加工等の周知の方法により切断して、所望の形状に加工してもよい。
【0046】
ただし、本製造方法は、上記に限定されずに、上記以外の方法により、樹脂発泡シートを得てもよい。例えば、電離性放射線を照射する代わりに、発泡性組成物に予め有機過酸化物を配合しておき、発泡性組成物を加熱して有機過酸化物を分解させる方法等により架橋を行ってもよい。
【0047】
樹脂発泡シートの用途は、特に限定されないが、例えば電子機器内部でシール材として使用することが好ましい。本発明の樹脂発泡シートを基材として有するシール材は、薄くしても良好なリワーク性を有するので、配置するスペースが小さい各種の携帯電子機器内部で好適に使用できる。携帯電子機器としては、携帯電話、カメラ、ゲーム機器、電子手帳、タブレット端末、ノート型パーソナルコンピュータ等が挙げられる。樹脂発泡シートは、電子機器内部において、衝撃吸収材としても使用可能である。
また、樹脂発泡シートを基材とする粘着テープに使用してもよい。粘着テープは、段差追従性及びリワーク性の良好な本発明の樹脂発泡シートを基材とすることで、貼り付け不良等が生じにくくなる。
【0048】
[粘着テープ]
粘着テープは、例えば、本発明に係る樹脂発泡シートと、当該樹脂発泡シートの少なくともいずれか一方の面に設けた粘着剤層とを備えるものであるが、両面に粘着剤層を設けた両面粘着テープが好ましい。
粘着テープを構成する粘着剤層の厚さは、5~200μmであることが好ましい。粘着剤層の厚さは、より好ましくは7~150μmであり、更に好ましくは10~100μmである。粘着剤層の厚さが5~200μmの範囲であると、粘着テープを用いて固定した構成体の厚さを薄くできる。
粘着剤層に使用する粘着剤としては、特に制限はなく、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等を用いることができる。
また、粘着剤層の上には、更に離型紙等の剥離シートが貼り合わされてもよい。
樹脂発泡シートの少なくとも一面に粘着剤層を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、樹脂発泡シートの少なくとも一面にコーター等の塗工機を用いて粘着剤を塗布する方法がある。また、樹脂発泡シートの少なくとも一面にスプレーを用いて粘着剤を噴霧、塗布する方法、樹脂発泡シートの少なくとも一面に刷毛を用いて粘着剤を塗布する方法、剥離シート上に形成した粘着剤層を樹脂発泡シートの少なくとも一面に転写する方法等が挙げられる。
【実施例
【0049】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0050】
[測定方法]
各物性の測定方法及び評価方法は、次の通りである。
<見かけ密度及び発泡倍率>
樹脂発泡シートについてJIS K7222に準拠して見かけ密度を測定し、その逆数を発泡倍率とした。
【0051】
<架橋度>
樹脂発泡シートから約100mgの試験片を採取し、試験片の重量A(mg)を精秤する。次に、この試験片を120℃のキシレン30cm中に浸漬して24時間放置した後、200メッシュの金網で濾過して金網上の不溶解分を採取、真空乾燥し、不溶解分の重量B(mg)を精秤する。得られた値から、下記式により架橋度(質量%)を算出した。
架橋度(質量%)=(B/A)×100
【0052】
<独立気泡率>
樹脂発泡シートの独立気泡率は、明細書記載の方法で測定した。
【0053】
<平均気泡径、気泡の数の割合>
樹脂発泡シートの平均気泡径及び気泡の数の割合は、明細書記載の方法で測定した。
【0054】
<破断点強度及び伸び率>
樹脂発泡シートをJIS K6251 4.1に規定されるダンベル状1号形にカットした。これを試料として用い、測定温度23℃で、MD方向及びTD方向の破断点強度とそのときの伸び率をJIS K6767に準拠して測定した。
【0055】
<25%圧縮強度>
樹脂発泡シートについてJIS K6767に準拠して25%圧縮強度を測定した。
【0056】
<リワーク性評価試験>
実施例又は比較例で作成した樹脂発泡シートの片面にアクリル系粘着剤層を設けた粘着テープを用意した。室温23℃、相対湿度50%の環境下にて、2mm×100mmのサイズにカットした粘着テープをステンレス板に貼り付け、24時間放置した。その後、粘着テープを剥がして、剥がれ状態を目視で評価した。貼り付け前と同じ状態に剥がせればリワーク性良好として“A”、シートがちぎれたり、引伸ばされてステンレス板に糊が残ったりするとリワーク性不良として“B”と評価した。
【0057】
<段差追従性>
(両面粘着テープの作製)
実施例及び比較例で作製した樹脂発泡シートの両面に下記方法により得られた粘着剤層を積層し、樹脂発泡シートを基材とする両面粘着テープを以下の要領で作製した。
【0058】
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器にブチルアクリレート75質量部、2-エチルヘキシルアクリレート22質量部、アクリル酸3質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.2質量部、及び酢酸エチル80質量部を加え、窒素置換した後、反応器を加熱して還流を開始した。続いて、上記反応器内に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を添加した。5時間還流させて、アクリル共重合体(z)の溶液を得た。得られたアクリル共重合体(z)について、カラムとしてWater社製「2690 Separations Model」を用いてGPC法により重量平均分子量を測定したところ、60万であった。
得られたアクリル共重合体(z)の溶液に含まれるアクリル共重合体(z)の固形分100質量部に対して、軟化点135℃の重合ロジンエステル15質量部、酢酸エチル(不二化学薬品株式会社製)125質量部、イソシアネート系架橋剤(東ソー株式会社製、コロネートL45)2質量部を添加し、攪拌することにより粘着剤(Z)を得た。なお、アクリル系粘着剤の架橋度は33質量%であった。
厚さ150μmの離型紙を用意し、この離型紙の離型処理面に粘着剤(Z)を塗布し、100℃で5分間乾燥させることにより、厚さ50μmのアクリル系粘着剤層を形成した。このアクリル系粘着剤層を、発泡シートからなる基材の表面と貼り合わせた。次いで、同様の要領で、基材の反対の表面にも上記と同じアクリル系粘着剤層を貼り合わせた。これにより、厚さ150μmの離型紙で両面が覆われた両面粘着テープを得た。
【0059】
(試験装置の作製)
(1)試験装置A:PC/Glass
図1に、両面粘着テープのプッシュ試験の模式図を示す。得られた両面粘着テープを外径が幅46mm、長さ61mm、内径が幅44mm、長さ59mmに打ち抜き、幅1mmの額縁状の試験片1を作製した。次いで、図1(a)に示すように、中央部分に幅38mm、長さ50mmの四角い穴のあいた厚さ2mmのポリカーボネート板3に対して離型紙を剥がした試験片1を四角い穴がほぼ中央に位置するように貼り付けた。その後、試験片1の上面から幅55mm、長さ65mm、厚さ2mmのガラス板5を試験片1がほぼ中央に位置するように貼り付け、試験装置Aを組み立てた。
その後、試験装置Aの上面に位置するガラス板5側から70℃で30kgfの圧力を10秒間加えて上下に位置するガラス板及びポリカーボネート板と試験片とを加熱圧着し、常温で24時間放置した。
【0060】
(2)試験装置B:SUS/Glass
ポリカーボネート板3をステンレス板(SUS304、厚さ:2mm)とした以外は、試験装置Aの場合と同様にして、試験装置Bを組み立てた。その後、試験装置Aの場合と同様にして、加熱圧着し、常温で24時間放置した。
【0061】
(プッシュ試験)
図1(b)に示すように、作製した試験装置A又は試験装置Bを裏返して(ガラス板5を下方に向けて)支持台に固定し、開口部側から10mm/minの速度で下面のガラス板5を押していき、ガラス板5が剥がれたときの荷重(N)〔PUSH粘着力〕を測定した。測定は23℃にて行った。
なお、PC/GlassにおいてPUSH粘着力が70~90Nであり、かつ、SUS/GlassにおいてPUSH粘着力が150~190Nであれば、やわらかさに起因する貼り付けやすさが優れる(段差追従性が優れる)として“A”とした。また、いずれか一方が上記範囲内であれば良好である(段差追従性が良好)として“B”、それ以外の場合を“C”とした。
【0062】
[ポリオレフィン系樹脂]
本実施例で使用したポリオレフィン系樹脂を以下に示す。
・樹脂A:直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(ダウケミカル社製、商品名「アフィニティーPL1850」、密度0.902g/cm
【0063】
[実施例1]
樹脂Aを100質量部と、熱分解型発泡剤として粒径13μmのアゾジカルボンアミド3質量部と、気泡核調整剤として酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製、商品名「OW-212F」)1.0質量部と、酸化防止剤(酸防)0.5質量部とを押出機に供給して130℃で溶融混練し、厚さが300μmの長尺状の樹脂シートに押出した。
次に、上記長尺状の樹脂シートの両面に加速電圧500kVの電子線を7Mrad照射して樹脂シートを架橋した後、架橋した樹脂シートを熱風及び赤外線ヒーターにより250℃に保持された発泡炉内に連続的に送り込んで加熱して発泡させて、厚さ500μmの樹脂発泡シートを得た。
【0064】
次いで、得られた樹脂発泡シートを発泡炉から連続的に送り出した後、この樹脂発泡シートをその両面の温度が200~250℃となるように維持した。その状態で、樹脂発泡シートをそのTD方向に2.5倍の延伸倍率で延伸させると共に、樹脂発泡シートの発泡炉への送り込み速度(供給速度)よりも速い巻取速度でもって樹脂発泡シートを巻き取ることによって樹脂発泡シートをMD方向にも2.0倍に延伸させて、樹脂発泡シート(厚さ:0.06mm)を得た。なお、上記樹脂発泡シートの巻取速度は、樹脂シート自身の発泡によるMD方向への膨張分を考慮しつつ調整した。得られた樹脂発泡シートを上記評価方法に従って評価し、その結果を表1に示す。
【0065】
[実施例2~6及び比較例1~2]
樹脂、添加剤、樹脂発泡シートの厚さを下記表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂発泡シートを得た。MD及びTDの延伸倍率は1.5~3.5の範囲内で調整した。得られた樹脂発泡シートを上記評価方法に従って評価し、その結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
表1より明らかなように、本発明によれば、段差に追従して良好な接着性を示すと共に、リワーク性が良好なシール材の基材として好適に用いることができる樹脂発泡シートを得ることができる。
【符号の説明】
【0068】
1 試験片
3 ポリカーボネート板
5 ガラス板
図1