(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】玩具
(51)【国際特許分類】
A63H 9/00 20060101AFI20220426BHJP
A63H 33/00 20060101ALI20220426BHJP
A63F 9/00 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
A63H9/00 Q
A63H33/00 302A
A63F9/00 503Z
(21)【出願番号】P 2017204330
(22)【出願日】2017-10-23
【審査請求日】2020-09-23
(31)【優先権主張番号】P 2016207487
(32)【優先日】2016-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503061197
【氏名又は名称】大杉 千里
(74)【代理人】
【識別番号】100091465
【氏名又は名称】石井 久夫
(72)【発明者】
【氏名】大杉 千里
【審査官】西村 民男
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-011191(JP,A)
【文献】特開2007-330654(JP,A)
【文献】特開2005-027946(JP,A)
【文献】登録実用新案第3093546(JP,U)
【文献】登録実用新案第3071005(JP,U)
【文献】たかがキリン、されどキリン,「世界のウェブアーカイブ|国立国会図書館インターネット資料収集保存事業」、浅岡さやかオフィシャルブログ Morning Star [online],2016年06月14日,https://web.archive.org/web/20160614115154/https://sayalondon.exblog.jp/15057798/,[2022年04月14日検索]
【文献】コンビ,トイジャーナル 春のおもちゃカタログ ,東京玩具人形協同組合 トイジャーナル編集局,2014年02月28日,p. 11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 9/00- 9/20,
9/26-11/00,
A63H 1/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳児(10)及び幼児が手で持つことのできる大きさの
円形、楕円形、多角形、リング形、動物又は乗物のいずれかの平面外形状を有する立体形状をなし、表面に母親の瞳の大きさに相当する
10mm~13mmの範囲内の直径の複数の円形又は楕円形
を分散させてなるドット模様(330)を有する伸縮性及び/又は不伸縮性の軟質の外皮カバー(300)と、
該外皮カバー(300)内にカバー内容積に対して流動し得る量が内蔵され、乳幼児が違和感を感じない大きさを有する合成樹脂製の発泡ビーズ(320)とを備え、
乳児及び幼児が積み木遊び、輪投げ遊び、抱き玩具、パズル玩具として用いられるようになしたことを特徴とする乳幼児用知育玩具。
【請求項2】
上記発泡ビーズ(
320)の内蔵量が上記外皮カバー(300)の内容積に対して75容量%~120容量%の範囲内の量である請求項
1記載の
乳幼児用知育玩具。
【請求項3】
上記発泡ビーズ(
320)の平均粒径が0.5mm~20.0mm範囲内の粒径である請求項
1記載の
乳幼児用知育玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は玩具に関し、特に幼児だけでなく、乳児にも安全に使用でき、又高齢者が指先の運動に使用して認知症の予防に活用できるようにした玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、幼児が玩具遊びをすることによって、幼児の知能の発達を図るようにした幼児用の知育玩具が種々提案されている。
例えば、綿や軟質発泡体などからなる詰め物を布や軟質合成樹脂シートなどの柔軟なシート材で覆い、幼児が積み木遊びをすることができるようにした幼児用の知育玩具が知られている(特許文献1)。
【0003】
また、弾性ゴム質材料を用いて種々な立体形状の積み木ブロックを製作し、積み木ブロックの各表面を鏡面仕上げによって粘着性を付与し、積み木遊びができるようにした幼児用の知育玩具が提案されている(特許文献2)。
さらに、弾力的で可撓性のある発泡体からなるコアを布製の外側カバーで覆い、外側カバーに雌雄の面ファスナーを設け、幼児が積み木遊びをすることができるようにした幼児用の知育玩具が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-27946号公報
【文献】特開2012-75757号公報
【文献】特表2001-501517号公報
【文献】特開2007-330654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、赤ちゃんは生まれてから1歳までの乳児期と、1歳から6歳未満の幼児期に大別されており、知育玩具についても幼児だけでなく、乳児にも使用できる玩具が望ましい。
しかし、特許文献1~3記載の玩具は1歳から6歳未満の幼児の使用を意図し、乳児の使用は考慮されておらず、乳児には固すぎて乳児が使用を嫌うおそれがあるだけでなく、乳児の安全性が懸念される。
【0006】
本発明はかかる点に鑑み、幼児だけでなく、乳児にも安全に使用できるようにした玩具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本件発明者は軟質の表皮内に、プラスチック製微小球、蕎麦殼、ストロー小片などの流動材料を詰め、軟質表皮には傾斜面を形成し、傾斜面に飲料用びん、特に哺乳瓶が搭載され保持されるようにした飲料補助具を開発し提供するに至った(特許文献4)。
【0008】
本件発明者は上述の飲料補助具が乳児の抱き玩具として利用でき、乳児が強い興味を抱き愛着を感じ、その後の幼児期になっても手放さなくなることが経験されたが、乳児が玩具として使用するにはもう少し軟らかくすることが求められた。
【0009】
また、高齢者が指先の運動をすることによって脳が活性化され、認知症の予防に役立つことが知られており、高齢者が上述の軟らかい玩具を利用して指先の運動をするようにすると、認知症の予防が期待できる。
【0010】
そこで、本発明に係る玩具は、乳児、幼児及び高齢者が手で持つことのできる大きさの任意の平面外形状、例えば円形、楕円形、多角形、リング形、動物、乗物などの平面外形を有する立体形状をなす伸縮性及び/又は不伸縮性の軟質の外皮カバーと、該外皮カバー内にカバー内容積に対して流動し得る量が内蔵され、乳幼児が違和感を感じない大きさを有する合成樹脂製の発泡ビーズとを備え、乳児及び幼児が積み木遊び、輪投げ遊び、抱き玩具、パズル、音の鳴る玩具、結んで遊ぶ玩具、輪っかにして遊ぶ玩具として用いることができ、又高齢者が指先の運動に用いることができるようにしたことを特徴とする。
【0011】
本発明の特徴の1つは乳児、幼児及び高齢者が手で持つことのできる大きさの平面円形、平面楕円形、平面多角形、平面リング形などの任意の平面外形の立体形状、例えば板状、柱状、棒状をなす軟質の外皮カバーに、乳幼児が違和感を感じない大きさの合成樹脂製の発泡ビーズを内蔵し、発泡ビーズを流動させ得るようにした点にある。
【0012】
これにより、軟質外皮カバーに合成樹脂製の発泡ビーズを内蔵しているので、小さな乳児が使っても安全である。
また、乳児及び幼児が手で持つことのできる大きさとし、乳児及び幼児が違和感を感じない大きさの発泡ビーズとしているので、小さな乳児が抱き玩具として用いることができ、小さな乳児の知育玩具に対する興味を強く惹起させることができ、又1歳近くなった乳児や1歳を過ぎた幼児が玩具に対する強い興味を保ち、積み木遊び、輪投げ遊び、抱き玩具、パズル、音の鳴る玩具、結んで遊ぶ玩具、輪っかにして遊ぶ玩具として用いることができ、これを通して乳児及び幼児の知能の発達を期待できる。
【0013】
また、乳児や幼児が安全に持つことのできる柔らかさであり、発泡ビーズも適切な大きさであるので、軟らかい発泡ビーズの流動感が手先に心地よく、高齢者も安心して玩具を持って指先の運動に用いることができる結果、脳を活性化して認知症の予防ができることが期待される。
【0014】
外皮カバーの材質は柔軟なものであればよく、例えば織布や不織布、塩化ビニル樹脂製シート、シリコン樹脂製シートあるいはエラストマー樹脂製のシートなどを用いることができる。この場合、外皮カバーの素材は伸縮性があってもよく、伸縮性がなくてもよく、これらの組合せであってもよい。
例えば、伸縮性の素材には綿糸、ポリエステル糸及びポリウレタン糸を用いてパイル編みで編成したパイル編み生地、ポリウレタン弾性糸、ポリウレタン・ナイロン混紡糸あるいはナイロン巻きポリウレタン糸(カバーリングヤーン)を用いて平編み、リブ編みあるいはパイル編みなどで編成した生地を用いることができる。
【0015】
外皮カバーの大きさは乳幼児や高齢者が手で持つことのできる大きさであればよい。例えば、立体的な形状とする場合には厚さ1cm~15cm、縦横1cm~25cm程度が好ましい。また、結んで遊ぶ玩具や輪っかにして遊ぶ玩具の場合には直径1cm~15cm、長さ30cm~100cm程度の大きさとするのがよい。また、外皮カバーは素材の縫製、接着、溶着によって立体形状を保つように製作するのがよい。
【0016】
発泡ビーズにはポリエステルやポリスチレンなどの合成樹脂材料の発泡ビーズを用いるのがよい。また、発泡ビーズの外皮カバーへの内蔵量は発泡ビーズが外皮カバー内で流動することのできる量であればよいが、外皮カバーの立体形状をある程度維持できる量である必要があるので、発泡ビーズは外皮カバーの内容積に対して75容量%~120容量%の範囲内の量が好ましい。発泡ビーズの場合、押さえることによって容量が小さくなるので、100容量%を超える量であっても流動性は確保することができる。
【0017】
発泡ビーズの大きさは特に限定されず、0.5mm~20.0mm、好ましくは0.5mm~5.0mmの範囲内の平均粒径とするのがよい。0.5mm未満では細かくなりすぎて取り扱いが煩雑となる一方、20.0mmを超えると乳幼児や高齢者が触ったときにゴツゴツとした印象を受けるおそれがあり、20.0mmを上限とするのが好ましい。
【0018】
発泡ビーズは外皮カバー内に直接内蔵させるようにしてもよいが、汚れた外皮カバーの洗濯を考慮すると、発泡ビーズを内袋、例えばネット状内袋、織布製(伸縮生地又は不伸縮生地)、不織布製(伸縮生地又は不伸縮生地)の内袋に入れこれを外皮カバーに取外し可能に内蔵させるようにしてもよい。
【0019】
ところで、乳児は母親の顔、特に瞳を認識する傾向にあり、母親の瞳と似たようなドット模様に対して視覚を刺激され、視覚の発達によい影響があることが期待される。そこで、本発明の玩具についても表面に母親の瞳と似たような大きさや形状のドット模様を描くと、乳児の視覚を刺激して乳児の注意を喚起できる。
【0020】
すなわち、本発明によれば、乳児及び幼児が手で持つことのできる大きさの任意の平面外形状を有する立体形状をなし、表面に母親の瞳の大きさに相当する、例えば10mm~13mmの範囲内の直径の円形又は楕円形(楕円形の場合には短径が10mm~13mmの範囲内とする)のドット模様を有する伸縮性及び/又は不伸縮性の軟質の外皮カバーと、該外皮カバー内にカバー内容積に対して流動し得る量が内蔵され、乳幼児が違和感を感じない大きさを有する合成樹脂製の発泡ビーズとを備え、乳児及び幼児が積み木遊び、輪投げ遊び、抱き玩具、パズル玩具として用いられるようになしたことを特徴とする乳幼児用知育玩具を提供することができる。
【0021】
本例の乳幼児用知育玩具においても、外皮カバーや発泡ビーズは上述の玩具の場合と同様の構成とするのがよい。例えば、発泡ビーズの内蔵量を外皮カバーの内容積に対して75容量%~120容量%の範囲内の量とするのがよく、又発泡ビーズの平均粒径を0.5mm~20.0mm範囲内の粒径とするのがよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る玩具の好ましい実施形態の乳児が抱き玩具として使っている例を示す概略斜視図である。
【
図2】本発明に係る玩具の好ましい実施形態における立体形状の例を示す概略斜視図である。
【
図3】上記実施形態における構造例を示す一部切欠き概略斜視図である。
【
図4】上記実施形態における積み木の使用例を示す概略斜視図である。
【
図5】上記実施形態における他の立体形状の例を示す概略斜視図である。
【
図7】第3の実施形態における立体形状の例を示す概略斜視図である。
【
図8】上記実施形態における他の立体形状の例を示す概略斜視図である。
【
図9】上記実施形態におけるさらに他の立体形状の例を示す概略斜視図である。
【
図10】上記実施形態における構造例を示す一部切欠き概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を添付図面に示す具体例に基づいて説明する。
図1ないし
図4は本発明に係る玩具の好ましい実施形態を示す。図において、本例の玩具は平面長方形の板形状を有する矩形玩具20、平面リング状の立体形状を有するドーナッツ形玩具21、平面円形の立体形状を有する円板形玩具22、平面三角形の立体形状を有する三角形玩具23の組合せから構成されている。
【0024】
矩形玩具20、ドーナッツ形玩具21、円板形玩具22及び三角形玩具23の各玩具20~23は発泡ビーズ32をメッシュ状内袋31に入れて外皮カバー30内部に取外し可能に内蔵して製作されている。なお、発泡ビーズ32は直接内蔵してもよい。また、玩具は
図5(a)~(d)に示されるように、動物の外形状を模した動物玩具25、飛行機の外形状を模した飛行機玩具26、蒸気機関車の外形状を模した列車玩具27、星の外形状を有する星型玩具28などを組合せてもよい。
【0025】
外皮カバー30は伸縮性の生地、例えば綿糸70%、ポリエステル糸25%、ポリウレタン糸5%を用いてパイル編みで編成した伸縮性のあるパイル編み生地が用いられ、矩形玩具20、円板形玩具22及び三角形玩具23は2枚の矩形生地、2枚の円形生地、2枚の三角形生地の間に帯状の側面生地の周縁を縫合して外皮カバー30の立体形状を保持するように製作され、ドーナッツ形玩具21は帯状円形の生地の両縁を合わせて縫合して外皮カバー30のドーナッツ状立体形状を保持するように製作されている。他の玩具25~28についても同様に製作されている。
【0026】
外皮カバー30は乳児及び幼児が持つことのできる大きさ、例えば厚み1cm~15cm、縦及び横1cm~25cmに製作されている。なお、外皮カバー30は伸縮性生地を用いて製作したが、伸び縮みしない生地又は伸び縮みの小さい生地(「不伸縮性生地」という)を用いて製作してもよく、伸縮性生地と不伸縮性生地を組み合わせて製作するようにしてもよい。
【0027】
発泡ビーズ32には例えばポリエチレンやポリスチレンなどの合成樹脂材料を発泡させた平均粒径0.5mm(粒度分布0.4mm~0.6mm)の大きさの発泡ビーズが用いられているが、0.5mm~20.0mmの範囲内から選択される値の平均粒径(平均粒度を中央値として適度な粒度分布を有する)であればよい。
【0028】
乳児10を寝かせ、乳児10に例えば矩形玩具20を与えると、乳児10は
図1に示されるように抱き玩具として抱えることができる。乳児は矩形玩具20を抱き続けていると、矩形玩具20に強い興味を抱き愛着を感じるようになり、その後の幼児期になっても手放さなくなる。
【0029】
なお、鈴などを発泡ビーズとともに内蔵させ、音が鳴る玩具としても使えるようにしてもよい。
【0030】
1歳近くなった乳児や1歳を越えた幼児期は矩形玩具20に対する愛着を保ち続けているので、他の立体形状の玩具21~23、25~28についても直ぐになれ親しみ、
図4に示されるような積み木遊びや輪投げ遊びに興じる結果、乳幼児の知能の飛躍的な発達が期待できることとなる。
【0031】
また、高齢者が玩具20~23、25~28を手に持つと、柔らかい発泡ビーズ32の流動する感触が手に気持ちよく感じ、指先を閉じて開いてを繰り返して指先の運動をするので、脳を活性化させて認知症を防止できることが期待される。
【0032】
図6は第2の実施形態を示し、これは棒状玩具に適用した例を示す。本例の軟質の棒状玩具29では外皮カバーが直径1cm~15cm、長さ30cm~100cm程度の大きさの軟質棒状に製作され、両端には紐29Aが取付けられている。なお、内部構造は
図1ないし
図5の玩具と同一の構造となっているので、その詳細な説明は省略する。
【0033】
本例では
図6の(b)に示されるように、玩具29を輪っかにして腕などに結んで遊ぶことができ、又紐29Aを相互に結んで遊ぶこともできる。
【0034】
図11は第4の実施形態を示し、本例では手の立体形状の玩具20とし、例えば高齢者が手指の玩具20の指状部分に合わせて手に持ち、指先を閉じて開いてを繰り返して指先の運動をすると、柔らかい発泡ビーズの流動する感触が手に気持ちよく感じ、脳を活性化させて認知症を防止できることが期待される。
【0035】
図7は第3の実施形態を示し、乳幼児用知育玩具に適用した例である。本例の乳幼児用知育玩具210ではドーナッツ状の外皮カバー300内に、発泡ビーズ320をメッシュ状内袋310に内蔵して製作され、外皮カバー300は2枚のリング状素材を重ねて周囲を縫合することによって製作されている。340は縫い目である。
【0036】
図8及び
図9は乳幼児用知育玩具200~260の他の立体形状の例を示す。また、
図10は矩形状の乳幼児用知育玩具200の場合の構造例を示す。
【符号の説明】
【0037】
10 乳児
20 矩形玩具
21 ドーナッツ状玩具
22 円形玩具
23 三角形玩具
25 動物玩具
26 飛行機玩具
27 列車玩具
28 星型玩具
29 棒状玩具
30 外皮カバー
31 メッシュ状内袋
32 発泡ビーズ
200~260 乳幼児用知育玩具
300 外皮カバー
310 メッシュ状内袋
320 発泡ビーズ