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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/16 20060101AFI20220426BHJP
【FI】
H02K5/16 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017209155
(22)【出願日】2017-10-30
(65)【公開番号】P2019083611
(43)【公開日】2019-05-30
【審査請求日】2020-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110788
【弁理士】
【氏名又は名称】椿 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100124589
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 竜郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166811
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 剛
(72)【発明者】
【氏名】桜木 克則
(72)【発明者】
【氏名】小田 高根
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-032759(JP,U)
【文献】特開平11-285191(JP,A)
【文献】特開2013-192363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周部を有する取付面と筒状の外周部とを有する、フレームと、
前記フレームの取付面に取り付けられたホルダと、
前記フレームの内周部を通過するシャフトと、
前記シャフトを支持する軸受と
前記フレームの外周部に固定された固定子と、を備え、
前記ホルダは、前記軸受を保持する筒部と、周方向に配置された複数の孔部を有する外周部とを有し、
前記フレームの内周部の一部が、前記複数の孔部に挿入されている、モータ。
【請求項2】
前記孔部を通過した前記フレームの内周部の一部は、折り曲げられている、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
記取付面には、前記フレームの内周部の一部である複数の突出部が周方向に配置されており、
前記複数の突出部は、前記ホルダに向けて突出し、前記複数の孔部を通過している、請求項1又は2に記載のモータ。
【請求項4】
前記複数の突出部のそれぞれは板状の形状を備え、
前記孔部を通過した前記複数の突出部の一部が折れ曲がっており、
前記ホルダの前記外周部の一部が、前記取付面と前記複数の突出部の一部との間にある、請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
前記折れ曲がった複数の突出部のそれぞれの一方の面には凹部が形成されており、
前記一方の面が折れ曲がり面となっている、請求項4に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータに関し、特に、シャフトを支持する軸受が設けられているホルダを有するモータに関する。
【背景技術】
【0002】
モータは、例えば事務機器や家電機器における駆動源として多く用いられている。モータのシャフトは、軸受によって、固定子側に支持されている。従来のモータの構造としては、例えば、固定子が設けられるフレームに設けられたホルダによって軸受を保持するものが知られている。
【0003】
なお、下記特許文献1には、出力軸を支承する出力軸支承部ユニットに、電動機アタッチメントを設けた電動機の構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-035267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、軸受を保持するホルダを有するモータにおいて、モータのフレームに対するホルダの取り付け構造の信頼性を高めることが重要である。
【0006】
本発明は、このような問題点に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、この発明は、良好な性能を有するモータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、モータは、内周部を有する取付面と筒状の外周部とを有する、フレームと、フレームの取付面に取り付けられたホルダと、フレームの内周部を通過するシャフトと、シャフトを支持する軸受と、フレームの外周部に固定された固定子と、を備え、ホルダは、軸受を保持する筒部と、周方向に配置された複数の孔部を有する外周部とを有し、フレームの内周部の一部が、複数の孔部に挿入されている。
【0008】
好ましくは、孔部を通過したフレームの内周部の一部は、折り曲げられている。
【0009】
好ましくは、取付面には、フレームの内周部の一部である複数の突出部が周方向に配置されており、複数の突出部は、ホルダに向けて突出し、複数の孔部を通過している。


【0010】
好ましくは、複数の突出部のそれぞれは板状の形状を備え、孔部を通過した複数の突出部の一部が折れ曲がっており、ホルダの外周部の一部が、取付面と複数の突出部の一部との間にある。
【0011】
好ましくは、折れ曲がった複数の突出部のそれぞれの一方の面には凹部が形成されており、一方の面が折れ曲がり面となっている。
【0012】
上記発明によれば、良好な性能を有するモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態におけるモータを示す側断面図である。
図2】ホルダの側面図である。
図3】ホルダの背面図(後面図)である。
図4】ホルダの正面図(前面図)である。
図5】ホルダが取り付けられていない状態のハウジングの背面図(後面図)である。
図6図5のB-B線断面図である。
図7】ホルダをハウジングに取り付ける工程を説明する第1の図である。
図8】ホルダをハウジングに取り付ける工程を説明する第2の図である。
図9】ホルダをハウジングに取り付ける工程を説明する第3の図である。
図10】溝部が形成されている部位を示す部分拡大断面図である。
図11】本実施の形態の一変形例に係るモータのハウジングであってホルダが取り付けられていないハウジングの背面図(後面図)である。
図12図11の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態におけるモータについて説明する。
【0015】
[実施の形態]
【0016】
図1は、本発明の実施の形態におけるモータ1を示す側断面図である。
【0017】
以下の説明において、図1における左右方向(シャフト2の長手方向)を軸方向又は回転軸方向と呼ぶことがある。特に、図1における左方向(基板50に対してコイル37等が配置されている側の方向)を前と呼び、右方向(基板50に対してカバー60が配置されている側の方向)を後と呼ぶことがある(前方、後方、前側、後側、前端部、後端部等の表現における「前」又は「後」も、これと同様である。)。また、シャフト2に近づく方向又は離れる方向を、径方向と呼ぶことがある。シャフト2周りの方向(モータ1の回転方向)を、周方向と呼ぶことがある。また、例えば図1における左方向を出力軸側と呼び、図1における右方向を反出力軸側と呼ぶことがある。なお、以下の説明でいう右、左、前、後などは、モータ1のみに着目した場合において説明のために呼ぶものであり、モータ1を機器に搭載した場合における方向などをいうものではない。
【0018】
図1に示されるように、モータ(回転装置)1は、大まかに、固定子30が設けられている円柱形状のフレーム組立体1aと、フレーム組立体1aに対してシャフト2周りに回転可能に支持されたロータ1bと、基板50と、カバー60とを有している。本実施形態において、モータ1は、いわゆるインナーロータ型のブラシレスモータである。
【0019】
ロータ1bは、シャフト(回転軸)2と、ロータヨーク3と、マグネット4とを有している。シャフト2の後方には、エンコーダ用基板5が取り付けられている。シャフト2は、モータ1のハウジング(フレームの一例)20に取り付けられたホルダ10に保持された2つの軸受81,82によって保持されている。
【0020】
ロータヨーク3は、シャフト2に対して固定されている。ロータヨーク3は、前方に向かって開口する椀形状を有している。
【0021】
マグネット4は、環状に形成されており、ロータヨーク3の外周面に固定されている。マグネット4の外周部は、異なる磁極が周方向に沿って並ぶように着磁されている。
【0022】
シャフト2の後方には、エンコーダ用基板5が設けられている。エンコーダ用基板5は、基板50に配置されたエンコーダ57により読み取り可能である。エンコーダ57は、図示しないホール素子、受光素子等のセンサを備えている。ホール素子をセンサとして用いている場合には、エンコーダ用基板5には磁石が設けられ、受光素子がセンサとして用いられる場合には、エンコーダ用基板5には光が通過するスリットが設けられている。なお、エンコーダ57は、ブラシ、給電部を備えるものであってもよい。この場合には、エンコーダ用基板5には、ブラシと接触する配線が形成されている。
【0023】
フレーム組立体1aは、プレート9と、ホルダ10と、ハウジング20と、固定子(ステータ)30とで構成されている。
【0024】
固定子30は、インシュレータ31、コア36、及びコイル37を含む。固定子30は、大まかに円筒形状を有している。固定子30の径方向の中央部には、ロータ1bと、ホルダ10とが配置される空間が設けられている。固定子30は、後方に開口する開口部31aを有している。
【0025】
インシュレータ31は、絶縁性を有する樹脂部材で形成されている。インシュレータ31は、環状の平面形状を有する部材である。コア36は、ケイ素鋼板や強磁性体製の板(例えば鋼板)である。コア36は、シャフト2に向かって径方向に突出する突出部を有している。この突出部には、コイル37が巻回されている。突出部は、コア36にコイル37に通電されることで励磁する磁極部(突極部)である。突極部は、ロータ1b側のマグネット4に対向している。すなわち、固定子30は、周方向に並ぶ複数の突極部を有している。モータ1を駆動させるためにコイル37に電流が流れることで、各突極部が励磁され、シャフト2が回転する。
【0026】
インシュレータ31の後端部の近傍には、後方に突出する端部31bが形成されている。端部31bの平面形状は環状である。端部31bの内側は、開口部31aとなっている。換言すると、端部31bは、開口部31aを形成している。端部31bのうち一部には、カバー60及び基板50をインシュレータ31に対して固定するための固定部が設けられている。固定部は、カバー60や基板50に係合し、カバー60や基板50をインシュレータ31に対して固定する。
【0027】
基板50は、フレーム組立体1aの後方の開口部(すなわち、固定子30の開口部31a)に取り付けられている。具体的には、基板50は、インシュレータ31の端部31bの近傍に取り付けられている。本実施の形態における基板50は、モータ1の駆動回路が搭載された回路基板であり、平面形状が略円形の板形状を有している。基板50の構成は本実施の形態に限定されず、配線が複数形成された基板であったり、後述するようなハウジング20の開口部をふさぐ基板などであったりしても構わない。
【0028】
基板50には、外部機器に接続されるコネクタ部52や、モータ1の回転状況を把握するためのエンコーダ57や、その他の回路素子が搭載されている。コネクタ部52は、モータ1を駆動させるドライバ回路や、外部制御回路からの入力信号を受信したり外部制御回路への出力信号を送信するためのコネクタ部となっている。エンコーダ57は、モータ1の回転数、回転方向を検出し、検出結果を外部制御回路にフィードバックする。これらの回路素子等は、主に、基板50の後側の面に取り付けられている。また、基板50は、各コイル37に接続されている。基板50は、コネクタ部52を介して基板50に外部制御回路から送信された入力信号が入力されることで、コイル37に通電し、ロータ1bを回転させ、モータ1を駆動させる。
【0029】
カバー60は、大まかに、前方に開口する開口部を有する椀形状を有している。具体的には、底部を有する筒形状を有している。カバー60の開口部は、環状の端部(前端部)で形成されている。後方側におけるカバー60の面は、底部60aとなる。底部60aから前方に向けて延在する、平面形状が円筒状の筒部60bが底部60aの前方側に設けられている。カバー60は、基板50の後方に配置され、基板50の後側の表面の全体を覆うように配置されている。これにより、基板50上の駆動回路や電子部品が保護されている。カバー60の筒部60bは、インシュレータ31に係合する係合部である。筒部60bがインシュレータ31の端部31bの一部に係合し、カバー60が固定子30に固定される。
【0030】
カバー60の筒部60bのうち、コネクタ部52が設けられている部分には、開口部63が形成されている。コネクタ部52は、開口部63を介して、カバー60の外部に露出している。これにより、コネクタ部52に外部装置に接続するためのハーネス等を接続することができる。
【0031】
ハウジング20は、モータ1のフレームである。本実施の形態において、ハウジング20は、モータ1を構成する部材(例:ロータ1b等)を収容する。
【0032】
ハウジング20は、前側の中央部からシャフト2が突出するようにして前側の部位がふさがれた、筒形状を有している。具体的には、ハウジング20は、内周部22により形成された開口部を有する前面(取付面の一例)21bと、外周部21cとを有する。外周部21cの後端部21eは、開口部を構成しており、ハウジング20は、後方に開口している。前面21bの内周部22により構成された開口部は、後側の後端部21eにより構成された開口部よりも小さい。前面21bの開口部は、略円形を有する孔部である。ハウジング20は、例えば鋼板に板金加工を行うことにより形成することができる。なお、ハウジング20の素材や成形方法はこれに限られず、例えば、金属板等の金属部材を用いて形成されていてもよい。
【0033】
ハウジング20の内部には、固定子30が配置されている。固定子30は、ハウジング20の外周部21cの内側に嵌め込まれて、固定されている。
【0034】
ハウジング20の前側の中央部には、ホルダ10が配置されている。ホルダ10は、筒部(内周部)11と、突出部15と、外周部16とを有している。ホルダ10は、例えばダイカスト製又は樹脂製等の部材である。
【0035】
突出部15は、回転軸方向(シャフト2の長手方向)において、外周部16から前方に突出している。突出部15は、円筒状の形状を有する。突出部15の外径D1(図4に示す)は、ハウジング20の内周部22により形成された開口部の内径D2(図5に示す)と同じか、わずかに小さい。
【0036】
外周部16は、突出部15の外径よりも大きい外径を有しているフランジ部である。言い換えれば、外周部16は、径方向において、突出部15の幅よりも大きい幅を有しているフランジ部である。外周部16は、後述のように延在部17が設けられている部分を除き略円形の平面形状を有している。
【0037】
ホルダ10は、取付面である前面21bに取り付けられている。ホルダ10は、ハウジング20の内周部22により形成された開口部に突出部15が嵌り込んだ状態であって、外周部16の前方の表面が前面21bの内面(後方の表面)に接触する状態で、ハウジング20に支持されている。
【0038】
ホルダ10の筒部11は、径方向において中央部にシャフト2が通過する空間を構成する内壁面12を有している。内壁面12には、軸受保持部13,14が形成されている。回転軸方向において、筒部11の中央部に対して筒部11の前端部近傍と後端部近傍とのそれぞれには、軸受81,82が固定されている。すなわち、ホルダ10の筒部11は、複数の軸受81,82を保持している。本実施の形態において、軸受81,82は、ホルダ10の軸受保持部13,14(図3及び図4などに示す)に圧入されているが、これに限られるものではない。
【0039】
軸受81,82は、シャフト2を支持している。軸受81,82には、シャフト2が回転可能に固定(本実施実施形態では圧入)されている。すなわち、シャフト2は、ハウジング20の内周部22とホルダ10の内側(例えば、筒部11)とを通過している。シャフト2は、2箇所の軸受81,82に支持されている状態で、フレーム組立体1aの各部材に対して回転可能である。なお、軸受82の前方には、スペーサ85が配置されているが、これに限られるものではない。
【0040】
軸受81,82は、それぞれ、ボールベアリングである。軸受81,82の種類はボールベアリングに限られず、それらの一方又は両方が、例えばメタル等のすべり軸受など、他の種の軸受であってもよい。また、軸受81,82のほか、さらに別の軸受がモータ1に設けられていてもよい。
【0041】
マグネット4及びそれを支持するロータヨーク3の筒部は、ホルダ10の筒部11の外周面と固定子30の内周部との間の空間に位置している。そして、ロータヨーク3の内側に、軸受82が位置している。基板50よりも前側に、軸受81に対して後側に位置する軸受82を配置することができるので、軸受82を基板50よりも後側に配置した場合と比較して、モータ1の前後方向の寸法を小さくすることができる。
【0042】
プレート9は、モータ1を機器に搭載するためのボルト等が通過する孔部などを有している。プレート9は、フレーム組立体1aの前面すなわちハウジング20の前面21bに取り付けられている。本実施の形態において、プレート9は、例えば溶接などの方法でハウジング20に固定されている。
【0043】
ここで、本実施の形態において、ホルダ10は、ハウジング20に、以下のようにして固定されている。すなわち、ホルダ10の外周部16は、周方向に配置された複数の孔部19を有している。そして、ハウジング20の内周部22の一部が、複数の孔部19に挿入されている。本実施の形態においては、ハウジング20の内周部22の一部である複数の突出部25が、ハウジング20の前面21bに周方向に配置されている。複数の突出部25は、ホルダ10が配置される側に向けてすなわち後方に向けて突出し、複数の孔部19を通過している。
【0044】
また、孔部19を通過したハウジング20の内周部22の一部は、折り曲げられている。すなわち、孔部19を通過した複数の突出部25が折れ曲がっている。ホルダ10の外周部16の一部は、ハウジング20の前面21bと、折れ曲がった複数の突出部25の一部との間にある。すなわち、ホルダ10の外周部16の一部は、ハウジング20の前面21bと複数の突出部25の一部とで前後に挟まれている。なお、ハウジング20の内周部22の一部は、折り曲げ部と、端部とを備えている。端部は突出部25の一部となっている。折り曲げ部は、径方向において、孔部19に対向する面を備えている。
【0045】
複数の突出部25のそれぞれは、板状である。複数の突出部25のそれぞれの一方の面には溝部(凹部の一例)25c(図7などに示す)が形成されている。複数の突出部25は、溝部25cが形成されている部位が谷となる側に折れ曲がっている。この溝部25cはハウジング20の内周部22の折り曲げ部に設けられている。溝部25cは、径方向において、孔部19に対向する折り曲げ部の面に設けられている。
【0046】
以下、本実施の形態におけるより具体的なホルダ10のハウジング20への取り付け構造について説明する。
【0047】
図2は、ホルダ10の側面図である。図3は、ホルダ10の背面図(後面図)である。図4は、ホルダ10の正面図(前面図)である。
【0048】
図3及び図4に示されるように、ホルダ10の前側,後側には、それぞれ、軸受保持部13,14が形成されている。
【0049】
図2から図4に示されるように、ホルダ10の外周部16は、6つの延在部17を有している。延在部17は、正面図において全体として略円形の外周部16の外縁からさらに径方向外側に(径方向においてハウジング20の外周部21cに向かって)張り出した部位である。延在部17の前側の表面は、外周部16の前側の表面と同一平面にある。延在部17は、外周部16よりも、前後方向の厚みが薄くなっている。
【0050】
本実施の形態において、周方向に隣り合い比較的近づいた位置にある2つの延在部17が1つの組を構成している。そして、この2つの延在部17を含む組が、周方向に略等間隔に、3箇所に配置されている。すなわち、外周部16には、合計で6つの延在部17が設けられている。また、周方向に隣り合う3組の延在部17の組同士は、シャフト2の中心を中心に120度の間隔で離れている。これにより、外周部16の外周面のうち3箇所には、延在部17が比較的離れた位置にあり比較的小径の領域が設けられている。そのため、ハウジング20の前面21bやハウジング20の内部において、シャフト2に比較的近い位置に、回転軸方向にホルダ10に干渉せずに部材を配置することができる空間を設けることができる。なお、延在部17の配置はこのような態様に限られず、複数の延在部17が周方向に略等間隔に設けられているものであってもよい。また、延在部17の数は6に限られず、6より少なくても、6より多くてもよい。
【0051】
各延在部17には、孔部19が形成されている。すなわち、外周部16には、周方向に配置された6つの孔部19が設けられている。孔部19は、回転軸方向から見て略矩形状であって、ホルダ10を回転軸方向に通過している。孔部19は、延在部17の径方向内側に形成されている。
【0052】
図5は、ホルダ10が取り付けられていない状態のハウジング20の背面図(後面図)である。図6は、図5のB-B線断面図である。
【0053】
図5において、二点鎖線は、ハウジング20に支持されるホルダ10の位置を示している。以下、ホルダ10が取り付けられていない状態のハウジング20の構成について説明する。
【0054】
図5及び図6に示されるように、ハウジング20の前面21bは、回転軸方向から見て円形の略平板状である。前面21bの略中央には、回転軸方向から見て略円形の内周部22により囲まれた開口部が設けられている。
【0055】
内周部22のうち、孔部19に対応する位置には、凹み23と、突出部25とが設けられている。凹み23は、内周部22がなす略円形の縁(図5において二点鎖線で示されるホルダ10の突出部15と略同じ直径を有する縁)から径方向外側に窪んでいる。
【0056】
突出部25は、凹み23の内側に設けられている。突出部25は、前面21bから後方に突出している。突出部25の径方向内側の面は、内周部22がなす略円形の縁よりも径方向外側に位置している。本実施の形態において、突出部25は、板状である。各突出部25は、突出部25が設けられている位置とシャフト2の中心とを結ぶ直線に対して略垂直となる姿勢で形成されている。すなわち、突出部25は、径方向に折り曲げ可能である。本実施の形態において、各突出部25は、シャフト2の中心から径方向に見て、略矩形の舌片形状である。
【0057】
突出部25は、前面21bの一部である。すなわち、突出部25は、内周部22の一部である。
【0058】
突出部25は、例えば、ハウジング20を構成する金属板において、内周部22、凹み23、及び凹み23の縁部から径方向内側に延びる矩形状舌片部を形成するように打ち抜いた後、舌片部を後方に向けて折り曲げることにより成形することができる。なお、突出部25の成形方法はこれに限られるものではない。
【0059】
回転軸方向から見て、各突出部25の外周形状は、その突出部25に対応する孔部19の内周形状よりも小さくなっている。したがって、各突出部25は、その突出部25に対応する孔部19に挿入可能である。
【0060】
ホルダ10は、ハウジング20に、以下のようにして取り付けられる。
【0061】
図7は、ホルダ10をハウジング20に取り付ける工程を説明する第1の図である。図8は、ホルダ10をハウジング20に取り付ける工程を説明する第2の図である。図9は、ホルダ10をハウジング20に取り付ける工程を説明する第3の図である。
【0062】
図7から図9において示される断面は、図3のA-A線における断面及び図5のC-C線における断面に対応するものである。
【0063】
図7に示されるように、ホルダ10は、ハウジング20の後方から前面21bに配置される。図8に示されるように、ホルダ10は、延在部17を含む外周部16の前側の表面が前面21bの裏側の表面に接触するようにしてハウジング20に配置される。このとき、ホルダ10の突出部15が内周部22に嵌り込む。これにより、ハウジング20に対するホルダ10の径方向の位置を容易に位置決めすることができる。また、このとき、6つの孔部19のそれぞれに、それに対応するハウジング20の突出部25が挿入される。これにより、ハウジング20に対するホルダ10の周方向の位置(シャフト2周りの姿勢)を、容易に位置決めすることができる。また、このとき、外周部16が前面21bに接触する位置に配置される。これにより、ハウジング20に対するホルダ10の回転軸方向の位置を容易に位置決めすることができる。
【0064】
このようにしてホルダ10がハウジング20に配置されると、6つの突出部25が、6つの孔部19を通過し、突出部25の先端の端部25bが延在部17よりも後方に位置している状態となる。この状態で、各孔部19を通過した突出部25が径方向外側(図8において実線矢印で示される方向)に折り曲げられる。
【0065】
なお、突出部25の折り曲げは、種々の方法により行うことができる。例えば、突出部25に対応する位置に折り曲げるための加工面を有する治具TLを前方に押し付けることにより、各突出部25を径方向外側に折り曲げることができる。なお、このような折り曲げ工程は、治具TLの形状や位置を変更して2回又は複数回行い、確実に突出部25を折り曲げるようにしてもよい。
【0066】
このように突出部25が折り曲げられると、図9に示されるように、突出部25が折れ曲がった状態になる。これにより、ホルダ10がハウジング20に固定される。このとき、ホルダ10の外周部16の一部は、ハウジング20の前面21bと、折れ曲がった複数の突出部25の一部との間にある。すなわち、6箇所の延在部17は、ハウジング20の前面21bと、各突出部25の一部とで、前後に挟まれている。これにより、ハウジング20に対してホルダ10が強固に固定される。換言すると、ホルダ10は、ハウジングの突出部25がかしめられることにより、ハウジング20に対して固定される。
【0067】
以上のように周方向の複数箇所において突出部25を折り曲げることで、曲げかしめによりホルダ10がハウジング20に固定されているので、ホルダ10のハウジング20に対する取付強度が高くなる。
【0068】
従来、例えばいわゆるバーリングかしめによりホルダをハウジングに固定する構造が採用されることがあった。しかしながら、このような構造では、例えばモータのシャフトにプーリを設けて機器を駆動するような、シャフトに垂直方向の力が加わる(側圧が加わる)態様でモータを使用する場合などに、かしめ部分が変形してモータの動作が不良になる可能性があった。これに対し、本実施の形態の構造を有するモータ1では、複数の突出部25を径方向に比較的大きく折り曲げられてホルダ10がハウジング20に支持されているので、シャフト2に比較的大きな側圧が加わる態様でモータ1を使用する場合でも、折り曲げ部分の変形が発生しにくく、モータ1の耐久性を向上させることができ、モータ1の性能が長く良好に維持される。
【0069】
また、本実施の形態では、ホルダ10の外周部16がハウジング20の前面21bの内周部22に接触した状態で、延在部17が突出部25と前面21bとの間で挟まれた状態になっている。そのため、特にシャフト2に加わる側圧が大きくても、ホルダ10とハウジング20の前面21bとの比較的広い範囲でシャフト2を支持することができ、シャフト2に加わる大きな側圧に耐えられるようになる。
【0070】
モータ1の軸受81,82は、1つのホルダ10により保持されている。そして、ホルダ10のハウジング20に対する径方向の位置は、突出部15がハウジング20側の開口部に嵌り込むインロー構造により位置決めされている。そのため、例えば絞り加工などによってハウジングで軸受を保持する構造などと比較して、高い加工精度や組立精度を得ることができる。したがって、同軸度や軸の垂直度の精度を比較的容易に高くすることができ、かつ、側圧に強い構造を得ることができる。また、軸受81,82が比較的厚肉のホルダ10により保持されるので、モータ1の剛性を高くすることができる。
【0071】
なお、本実施の形態において、上述の通り、ホルダ10の突出部15の外径D1は、ハウジング20の内周部22により形成された開口部の内径D2と同じか、開口部の内径D2よりわずかに小さい寸法に設定されている。外径D1と内径D2とのはめあいは、ハウジング20にホルダ10を精度良く取りつけることができるように設定されている。すなわち、外径D1と内径D2とは、径方向において対抗し合う突出部15と内周部22との間に間隙がほとんど生じないように設定されている。これにより、ハウジング20にホルダ10を精度良く取り付けることができる。なお、径方向において対抗し合う突出部15と内周部22との間に間隙を設けても構わない。
【0072】
ここで、本実施の形態においては、6つの突出部25のそれぞれの、径方向外側の表面には、周方向に沿って溝部25cが形成されている。図9に示されるように、各突出部25は、溝部25cが形成されている部位が谷となる側に折れ曲がっている。
【0073】
図10は、溝部25cが形成されている部位を示す部分拡大断面図である。
【0074】
図10においては、図8に示される断面における溝部25cの周辺の領域が示されている。図10において二点鎖線はホルダ10を示す。
【0075】
図10に示されるように、溝部25cは、突出部25の径方向外側の表面から径方向内側に向かって窪んでいる。溝部25cの断面形状は、例えばV字状である。このように突出部25に溝部25cが形成されていることにより、応力を集中させることができ、突出部25を容易に径方向外側に折り曲げることができる。また、突出部25に折り曲げるための力を加えたときに、応力を溝部25c付近の特定の部位に集中させることができるので、突出部25が折れ曲がる位置を特定の位置にすることができる。したがって、ホルダ10のハウジング20への取付作業を容易に行うことができる。
【0076】
本実施の形態において、ホルダ10が取り付けられる前における、ハウジング20の前面21bの後側の表面から溝部25cまでの回転軸方向の寸法L1(溝部25cの高さL1)は、突出部25により前面21bとの間で挟まれる延在部17の回転軸方向の寸法L2(延在部17の厚みL2)よりも、小さくなっている。このように、溝部25cの高さL1が延在部の厚みL2よりも小さいので、突出部25が折り曲げられたときに孔部19に近い位置において突出部25が延在部17の後側の表面に接触しやすくなり、より確実にホルダ10をハウジング20に固定することができる。
【0077】
[変形例の説明]
【0078】
図11は、本実施の形態の一変形例に係るモータ1のハウジング220であってホルダ10が取り付けられていないハウジング220の背面図(後面図)である。図12は、図11の側断面図である。
【0079】
以下において、上述のハウジング20と同じ構成については同一の符号を付して説明する。
【0080】
ハウジング220は、前面21bに複数の螺子穴部228が設けられている点が、上述の実施の形態に係るハウジング20とは相違する。その他のハウジング220の構造はハウジング20と同一である。
【0081】
本変形例において、ハウジング220は、4つの螺子穴部228を有している。図12に示されるように、各螺子穴部228は、ハウジング220の前面21bを回転軸方向に通過している。各螺子穴部228は、例えば、ハウジング220の前面21bにバーリング加工を施した上でめねじを設けることにより形成されているが、これに限られるものではない。
【0082】
ハウジング220にこのような螺子穴部228を設けることにより、例えばプレート9を用いることなく、螺子穴部228を利用してモータ1を機器等に搭載することができる。また、プレート9をモータ1に取り付けるのに、螺子穴部228を利用するようにしてもよい。
【0083】
なお、4つの螺子穴部228のうち3つは、前面21bのうち、隣り合う凹み23同士の間隔が比較的離れている位置に配置されている。また、それらの3つの螺子穴部228のうちいずれか2つの螺子穴部228の周方向中間の位置に、もう1つの螺子穴部228が設けられている。これにより、ハウジング220の前面21bの剛性を比較的高く維持することができ、モータ1の性能を高く維持することができる。なお、螺子穴部228の数や大きさはこれに限られるものではない。
【0084】
[その他]
【0085】
モータは、インナーロータ型のブラシレスモータに限定されず、アウターロータ型のモータ、インナーロータ型のブラシ付きモータ、アウターロータ型のブラシ付きモータ等であってもよい。
【0086】
上記の実施の形態の各部の構成のうち一部を他の構成としてモータを構成してもよい。
【0087】
インシュレータや、基板等が、完全にハウジングの内側に配置されていてもよい。
【0088】
ホルダを支持するフレームは、上述のようなハウジングではなくてもよい。フレームは、例えば上述のハウジングのような筒状の外周部を有するものではなくてもよい。例えば、略板状のフレームであってもよい。
【0089】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0090】
1 モータ
1a フレーム組立体
1b ロータ
2 シャフト
9 プレート
10 ホルダ
11 筒部
12 内壁部
13,14 軸受保持部
15 突出部
16 外周部
17 延在部
19 孔部
20,220 ハウジング(フレームの一例)
21b 前面(取付面の一例)
21c 外周部
22 内周部
23 凹み
25 突出部
25c 溝部(凹部の一例)
30 固定子
31 インシュレータ
31a 開口部
31b 端部
36 コア
37 コイル
50 基板
60 カバー
81,82 軸受
228 螺子穴部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12