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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】包装箱及びシート材
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/54 20060101AFI20220426BHJP
【FI】
B65D5/54 311E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017209318
(22)【出願日】2017-10-30
(65)【公開番号】P2019081568
(43)【公開日】2019-05-30
【審査請求日】2020-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】荒川 康廣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 治紀
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-192940(JP,A)
【文献】特開2015-143105(JP,A)
【文献】特開2012-254821(JP,A)
【文献】特開2015-020783(JP,A)
【文献】特開2012-091799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に互いに離隔して配置される底板及び天板と、前記底板及び前記天板の周縁部間に立設された周壁板と、を有する包装箱であって、
前記周壁板には、前記周壁板の周方向に沿って破線状に形成された多数の切れ目からなる少なくとも二つの破断予定部が前記周方向に直列状に並設され、
前記破断予定部の間には、破線状の切れ目が形成されず、前記周方向に互いに離隔して配置されるとともに互いに向き合う括弧形状の一対のスリットを有する破断開始部が設けられ
前記破断開始部は、前記一対のスリットの上端部どうしを繋ぐ直線と下端部どうしを繋ぐ直線との少なくとも一方の中間部に沿って形成された直線状の補助スリットを有し、
前記補助スリットは、前記一対のスリットの前記上端部及び前記下端部から、前記破断予定部の前記切れ目の間隔よりも長い距離だけ離隔して配置されている
ことを特徴とする、包装箱
【請求項2】
本包装箱は、段ボール製であって、
前記周壁板は、前記一対のスリットで挟まれる領域が厚み方向に潰されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の包装箱。
【請求項3】
前記破断開始部は、前記一対のスリットの各上部が前記破断予定部の端部と連続して設けられている
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の包装箱。
【請求項4】
前記破断予定部は、前記破断開始部から所定範囲内の前記切れ目が、前記破断開始部から離隔する方向に上り傾斜する線に沿って形成されている
ことを特徴とする、請求項1~の何れか1項に記載の包装箱。
【請求項5】
前記破断開始部は、前記周壁板のうちの互いに対向する二箇所に設けられている
ことを特徴とする、請求項1~の何れか1項に記載の包装箱。
【請求項6】
請求項1~の何れか1項に記載の包装箱に組立可能なシート材であって、
前記底板及び前記天板となる矩形状の第一パネル部と、
前記第一パネル部と第一方向に沿って交互に並設され、前記周壁板の一部となる矩形状の第二パネル部と、
前記第一パネル部から前記第一方向と直交する第二方向に突設され、前記周壁板の一部となる外フラップ部と、
前記第二パネル部から前記第二方向に突設され、前記外フラップ部の内側に重ねられて前記周壁板の一部となる内フラップ部と、を備え、
前記破断予定部は、前記第二パネル部と前記内フラップ部とにわたって設けられ、
前記破断開始部は、前記第二パネル部に設けられている
ことを特徴とする、シート材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下に分割されて下半部がトレーとして利用される包装箱及びこの包装箱に組立可能なシート材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミシン目状の切れ目(カット線)で上下に分割可能に構成された包装箱が知られている(例えば特許文献1参照)。一般に、このような包装箱は、上半部と下半部との境目の全域にわたって前述した切れ目が加工されており、この切れ目に沿って裂かれることで上下に分割された後、下半部がトレーとして利用される。このため、包装箱内に収容された商品を売り場に陳列する作業が容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3156835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述したように上半部と下半部との境目の全域にわたって切れ目が設けられた包装箱は、作業者が意図的に切れ目を裂く場合だけでなく、意図しない衝撃が入力された場合にも切れ目が裂けることで上下に分割されやすい。このため、例えば輸送時のように、外部から衝撃が入力されうる場面において、包装箱が意に反して上下に分割される虞がある。
【0005】
本件は、前述したような課題に鑑みて創案されたものであり、意図しない衝撃に対して包装箱を上下に分割されにくくして、包装箱の形状が保持されるようにすることを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用及び効果であって、従来の技術では得られない作用及び効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)ここで開示する包装箱は、上下に互いに離隔して配置される底板及び天板と、前記底板及び前記天板の周縁部間に立設された周壁板と、を有する包装箱であって、前記周壁板には、前記周壁板の周方向に沿って破線状に形成された多数の切れ目からなる少なくとも二つの破断予定部が前記周方向に直列状に並設され、前記破断予定部の間には、破線状の切れ目が形成されず、前記周方向に互いに離隔して配置されるとともに互いに向き合う括弧形状の一対のスリットを有する破断開始部が設けられ、前記破断開始部は、前記一対のスリットの上端部どうしを繋ぐ直線と下端部どうしを繋ぐ直線との少なくとも一方の中間部に沿って形成された直線状の補助スリットを有し、前記補助スリットは、前記一対のスリットの前記上端部及び前記下端部から、前記破断予定部の前記切れ目の間隔よりも長い距離だけ離隔して配置されていることを特徴としている。
【0007】
(2)本包装箱は、段ボール製であることが好ましい。この場合、前記周壁板は、前記一対のスリットで挟まれる領域が厚み方向に潰されていることが好ましい。
【0008】
)前記破断開始部は、前記一対のスリットの各上部が前記破断予定部の端部と連続して設けられていることが好ましい。
)前記破断予定部は、前記破断開始部から所定範囲内の前記切れ目が、前記破断開始部から離隔する方向に上り傾斜する線に沿って形成されていることが好ましい。
)前記破断開始部は、前記周壁板のうちの互いに対向する二箇所に設けられていることが好ましい。
【0009】
)ここで開示するシート材は、前記包装箱に組立可能なシート材であって、前記底板及び前記天板となる矩形状の第一パネル部と、前記第一パネル部と第一方向に沿って交互に並設され、前記周壁板の一部となる矩形状の第二パネル部と、前記第一パネル部から前記第一方向と直交する第二方向に突設され、前記周壁板の一部となる外フラップ部と、前記第二パネル部から前記第二方向に突設され、前記外フラップ部の内側に重ねられて前記周壁板の一部となる内フラップ部と、を備え、前記破断予定部は、前記第二パネル部と前記内フラップ部とにわたって設けられ、前記破断開始部は、前記第二パネル部に設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
開示の包装箱及びシート材によれば、意図しない衝撃に対して包装箱を上下に分割されにくくし、包装箱の形状を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る包装箱の斜視図である。
図2図1の包装箱の要部を拡大した図である。
図3図1の包装箱に組立可能なシート材の平面図である。
図4図1の包装箱を開ける手順を例示した模式図であって、(A)は破断開始部が除去される前の状態を示し、(B)は破断開始部が除去された後の状態を示し、(C)は包装箱の上半部が取り去られた状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、実施形態としての包装箱及びシート材について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0013】
[1.包装箱]
図1に示すように、本実施形態に係る包装箱1は、外観形状が横長な六面体であって、内部に物品を収容可能とされている。以下、この包装箱1が水平な面に載置された状態であるものとして、上下方向を定める。また、本実施形態では、包装箱1が段ボール製である場合について説明する。
【0014】
包装箱1は、互いに上下に離隔して配置された底板2及び天板3と、これらの底板2及び天板3の周縁部間に立設された周壁板4とを有する。底板2及び天板3は、互いに等しい矩形状であって、互いに平行に配置される。底板2は、包装箱1の底面をなす部位である。また、天板3は、包装箱1の天面をなす部位であって、底板2の上方に配置される。周壁板4は、上下方向に立設された四角筒状に形成される。周壁板4は、互いに対向する一対の第一壁部4Aと、これらの第一壁部4Aと直交する方向に立設されるとともに、互いに対向する一対の第二壁部4Bとを有する。
【0015】
本実施形態では、包装箱1がラップアラウンド式のものである場合を例示する。すなわち、包装箱1において、底板2,天板3及び第一壁部4Aのそれぞれは一枚の平板(後述するシート材10のパネル部11~13)で形成され、第二壁部4Bのそれぞれは複数枚の平板(後述するシート材10のフラップ部14,15)が重ね合わされて形成される。
【0016】
包装箱1は、周壁板4が周方向に沿って裂かれることで、上下に分割可能である。包装箱1は、上下に分割された状態では、下半部がトレーとして機能し、上半部が蓋として機能しうる。周壁板4には、このように包装箱1を上下に分割するための構成として、破断予定部5と破断開始部6とが設けられる。
【0017】
破断予定部5は、包装箱1の上半部が上方へ引っ張られることで裂けるように形成された部位である。破断予定部5は、周壁板4の周方向に沿って破線状(ミシン目状)に形成された多数の切れ目からなる。なお、破断予定部5を構成する切れ目の間隔は、必要に応じて適宜変更可能である
【0018】
破断予定部5は、周壁板4の周方向において破断開始部6と連続するように設けられる。本実施形態では、四つの破断予定部5が周壁板4の周方向に直列状に並んで設けられている場合を例示する。各破断予定部5は、第一壁部4Aから第二壁部4B(具体的には、後述するシート材10の第二パネル部13から内フラップ部15)にわたって延在する。
【0019】
各破断予定部5のうちの第一壁部4Aに設けられる部分は、波形の曲線に沿って形成される。また、図2に示すように、この波形の曲線に沿って形成される破断予定部5の切れ目のうち、破断開始部6から所定範囲R内の切れ目は、破断開始部6から離隔する方向に上り傾斜する線に沿って形成される。ここで、所定範囲Rは、少なくとも破断予定部5の切れ目を二つ以上配置可能な大きさとされる。
【0020】
破断開始部6は、包装箱1の上半部を上方へ引っ張る力を入力するための部位である。本実施形態の破断開始部6は、各第一壁部4Aの略中心部において、二つの破断予定部5の間に設けられている。すなわち、破断開始部6は、周壁板4のうちの互いに対向する二箇所に設けられる。
【0021】
各破断開始部6は、周壁板4の周方向に互いに離隔して配置された一対のスリット7と、この一対のスリット7の間に設けられた補助スリット8とを有する。ただし、一対のスリット7の間には、補助スリット8以外の切れ目は設けられない。
【0022】
一対のスリット7は、互いに向き合う括弧形状とされる。本実施形態では、亀甲括弧形状(すなわち〔 〕という形状)のスリット7を例示する。各スリット7は、上下方向に延びる縦線部7aと、縦線部7aの上下両端部から第一壁部4Aの中心側(一対のスリット7の間)に向かって延びる内向き部7bとを有する。ここで、縦線部7aが「上下方向に延びる」とは、縦線部7aが上下方向の成分を含む線に沿って延びることを意味する。すなわち、縦線部7aは、例えば、上下方向に対して傾斜した線状であってもよい。本実施形態では、スリット7が亀甲括弧形状であるため、縦線部7aが上下方向と平行な直線状である。また、一方の内向き部7bが縦線部7aの上端部から緩やかに上り傾斜する直線状であり、他方の内向き部7bが縦線部7aの下端部から緩やかに下り傾斜する直線状である。
【0023】
各スリット7は、その上部が破断予定部5の端部と連続して設けられる。スリット7の上部とは、具体的には、スリット7のうちの上下方向における中心よりも上側の部分(上半部)である。本実施形態では、各スリット7の縦線部7aの上端部(すなわち、縦線部7aと上側の内向き部7bとの接続部分7c)が破断予定部5と連続して設けられている。なお、ここでいう「連続して設けられている」という表現には、破断予定部5の切れ目とスリット7とが繋がっていることだけでなく、破断予定部5の切れ目とスリット7とが、破断予定部5の切れ目の間隔程度の微小な隙間をあけて隣接することも含まれる。
【0024】
補助スリット8は、破断開始部6をより適切に破断しやすくするためのものである。本実施形態では、周壁板4の周方向に沿って直線状に延びるとともに、上下方向に互いに離隔して配置された一対の補助スリット8を例示する。一方の補助スリット8は、一対のスリット7の各上端部7d(本実施形態では上側の内向き部7bの内端部)どうしを結ぶ仮想的な直線L1の中間部に沿って形成される。また、他方の補助スリット8は、一対のスリット7の各下端部7e(本実施形態では下側の内向き部7bの内端部)どうしを結ぶ仮想的な直線L2の中間部に沿って形成される。これらの補助スリット8は、各スリット7の上下端部7d,7eから、前述した破断予定部5の切れ目の間隔よりも長い距離だけ離隔して配置される。このため、破断開始部6は、補助スリット8を有していても、破断予定部5と比べて周方向に裂けにくくなっている。
【0025】
本実施形態の周壁板4は、一対のスリット7で挟まれる領域(図2中の斜線を付けた領域)が厚み方向に潰されている。すなわち、一対のスリット7で挟まれる領域は、段ボールの中芯が潰されることにより、相対的に強度が低くなるように形成されている。ここで、一対のスリット7で挟まれる領域とは、具体的には、一対のスリット7と前述した直線L1,L2とで囲まれる領域である。したがって、厚み方向に潰された領域の境界線の一部は、各補助スリット8と重なる。
【0026】
[2.シート材]
図3は、前述した包装箱1に組立可能なシート材10の平面図(包装箱1の展開図)である。シート材10は、包装箱1の底板2及び天板3となる第一パネル部11,12と、包装箱1の第一壁部4Aとなる第二パネル部13と、包装箱1の第二壁部4Bとなるフラップ部14,15とを備えている。また、シート材10は、包装箱1に組み立てられるときに、一方の第一パネル部12と一方の第二パネル部13とを繋ぐための継ぎ代として機能する接合フラップ部16を備えている。なお、シート材10における各部11~16の境界線上には、シート材10を包装箱1に組み立てるときに折り曲げられる罫線Lが加工されている。
【0027】
二つの第一パネル部11,12と二つの第二パネル部13とは、横方向(第一方向)Xに沿って交互に並設される。本実施形態では、底板2となる一方の第一パネル部11が、二つの第二パネル部13の間に配置される場合を例示する。また、二つの第二パネル部13のうち、第一パネル部11,12の間に配置されない一方(図3では左側の第二パネル部13)からは、横方向Xの外側(図3では左側)に向かって接合フラップ部16が突設される。
【0028】
接合フラップ16は、シート材10が包装箱1に組み立てられるときに、天板3となる第一パネル部12の端部に接合される。図3に斜線を付けて示すように、本実施形態のシート材10は、前述した破断開始部6の一対のスリット7で挟まれる領域に加えて、接合フラップ部16と、第一パネル部12のうちの接合フラップ部16が接合される端部とも、厚み方向に潰されている。
【0029】
フラップ部14,15は、第一パネル部11,12及び第二パネル部13から縦方向(第二方向)Yの両側に突設される。ここでいう縦方向Yとは、横方向Xと直交する方向である。すなわち、横方向Xと縦方向Yとは、シート材1が延在する平面に沿って互いに直交する。
【0030】
以下、第一パネル部11,12のそれぞれから縦方向Yに突設されたフラップ部14を外フラップ部14といい、第二パネル部13のそれぞれから縦方向Yに突設されたフラップ部15を内フラップ部15という。外フラップ部14は、包装箱1において第二壁部4Bの外表面をなす部位である。また、内フラップ部15は、包装箱1において外フラップ部14の内側に重なって配置される部位である。
【0031】
前述した破断予定部5は、第二パネル部13と、この第二パネル部13から突設された内フラップ部15とにわたって設けられる。本実施形態では、各第二パネル部13において、二つの破断予定部5が縦方向Yに直列状に配設されている。また、前述した破断開始部6は、第二パネル部13の縦方向Yの中間部に設けられる。
【0032】
シート材10は、底板2となる第一パネル部11上に物品が載置された状態で、罫線Lに沿って折り曲げられ、接合フラップ部16が他方の第一パネル12の端部に接合されるとともに、外フラップ部14が内フラップ部15に接合される。これにより、シート材10は、内部に物品を収容した包装箱1に組み立てられる。
【0033】
[3.包装箱の開け方]
以下、図4を参照して、包装箱1を開ける手順について説明する。ここでは、包装箱1内に、多数の缶飲料が並べられた状態で収容されている場合を例示する。図4(A)に示すように、作業者は、まず一対のスリット7に指を差し込み、破断開始部6を両側からちぎり取る(つまみ取る)ようにして、破断開始部6を破断させる。すなわち、ここでは一対のスリット7の上下端部7d,7eから上下の補助スリット8までの間が破られる。これにより、図4(B)に示すように、破断開始部6が包装箱1から除去される。
【0034】
次に、作業者は、包装箱1の二つの破断開始部6が除去されてできた孔に両手を入れ、破断開始部6の上縁部を掴んで包装箱1を引っ張り上げる。このとき作業者により破断開始部6の上縁部に入力された引張力は、破断予定部5へと伝達される。これにより、破断予定部5が破断開始部6に隣接する側から裂けていき、各破断予定部5の全域が裂けると、包装箱1が上下に分割される。
【0035】
図4(C)に示すように、上下に分割された包装箱1は、その下半部1Aがトレーとして利用可能である。このため、この下半部1Aをそのまま(内部に多数の缶飲料が並べられた状態のまま)売り場に設置すれば、個々の缶飲料を包装箱1から取り出して陳列する場合と比べて、缶飲料の陳列作業が容易になる。
【0036】
[4.効果]
(1)包装箱1によれば、破線状の切れ目からなる破断予定部5が周壁板4の周方向に直列状に並列され、これらの破断予定部5の間に一対のスリット7を有する破断開始部6が設けられる。このため、破断予定部5の切れ目が周壁板4の全周にわたって連続しない。すなわち、上下に分割される包装箱1の上半部と下半部との境目のうち、破断開始部6が設けられる部分には、破線状の切れ目が形成されない。したがって、例えば包装箱1の輸送時に、包装箱1に意図しない衝撃が入力されたとしても、破断開始部6により包装箱1の上半部と下半部とを繋ぎ止めておくことができる。よって、包装箱1を意図しない衝撃に対して上下に分割されにくくすることができ、包装箱1の形状を保持することができる。
【0037】
一方、包装箱1を意図的に開ける(上下に分割する)場合は、前述したように一対のスリット7に指を差し込み、破断開始部6を両側からつまみ取るようにして破断させることで、破断開始部6を包装箱1から除去すればよい。この場合、一対のスリット7が互いに向き合う括弧形状であることから、作業者は破断開始部6を容易に取り去ることができる。
【0038】
(2)また、図2に示すように、破断開始部6は、一対のスリット7の上端部7dどうしを繋ぐ直線L1と下端部7eどうしを繋ぐ直線L2とのそれぞれの中間部に沿って形成された補助スリット8を有するため、破断開始部6を破断させる作業を補助スリット8でガイドすることができる。これにより、作業者は、破断開始部6をより適切に且つより容易に破断させることができる。また、補助スリット8を設けることにより、破断開始部6が破れることで形成される破れ目の形状を、直線により近い形状とすることができる。このため、上下に分割された後の包装箱1の意匠性の低下を抑えることができる。
【0039】
(3)周壁板4は、一対のスリット7で挟まれる領域が厚み方向に潰されることで、この領域の強度が相対的に低くされているため、破断開始部6をより適切に破れやすくすることができる。これにより、作業者は、破断開始部6をより適切に且つより容易に破断させることができる。また、潰される領域の輪郭線が直線L1,L2を含むため、破断開始部6が破れることで形成される破れ目の形状を、直線により近い形状とすることができる。よって、上下に分割された後の包装箱1の意匠性の低下を抑えることができる。
【0040】
(4)一対のスリット7の各上部が破断予定部5の端部と連続して設けられるため、作業者が破断開始部6を除去した部分に手を入れて包装箱1を上方へ引っ張ったときに、破断開始部6の上縁部から破断予定部5へとより効率よく力を伝達させることができる。よって、作業者は、破断予定部5を更に適切に且つ更に容易に破断させることができ、包装箱1をより簡単に開けることができる。
【0041】
(5)破断予定部5は、破断開始部6から所定範囲R内の切れ目が破断開始部6から離隔する方向に上り傾斜する線に沿って形成される。このため、作業者が破断開始部6を除去した部分に手を入れて包装箱1を上方へ引っ張った場合に、この引張力が破断予定部5に伝達されやすくなるとともに、所定範囲R内の切れ目の間においても力が伝達されやすくなる。よって、作業者は、破断予定部5を更に適切に且つ更に容易に破断させることができ、包装箱1をより簡単に開けることができる。
【0042】
(6)破断開始部6が周壁板4のうちの互いに対向する二箇所に設けられるため、作業者はこれらの破断開始部6を除去してできた孔に両手を入れて、包装箱1を上方へ引っ張ることができる。これにより、作業者は、周壁板4を二箇所から周方向に裂くことができるため、包装箱1を更に簡単に開けることができる。
【0043】
(7)シート材10によれば、前述した包装箱1に組立可能であるため、前述したように包装箱1を意図しない衝撃に対して上下に分割されにくくすることができ、包装箱1の形状を保持することができる。また、破断予定部5が第二パネル部13と内フラップ部15とにわたって設けられ、破断開始部6が第二パネル部13に設けられているため、包装箱1をラップアラウンド式により組み立てることができる。この場合、内フラップ部15と外フラップ部14とで周壁板4の一部が形成されるため、周壁板4を上下に分かれやすい構造とすることができる。よって、破断開始部6を多数設けなくても、包装箱1を上下に分割しやすくすることができる。
【0044】
[5.変形例]
以下、本実施形態の変形例について述べる。
一対のスリット7の形状は、互いに向き合う括弧形状であればよく、前述した亀甲括弧形状に限定されない。一対のスリット7は、例えば、丸括弧形状(すなわち( )という形状)や角括弧形状(すなわち[ ]という形状)や鉤括弧形状(すなわち「 」という形状)であってもよい。言い換えると、各スリット7は、前述したように、上下方向の成分を含む線に沿って延びる縦線部7aと、この縦線部7aの上下端部7d,7eの少なくとも一方から一対のスリット7の間に向かって延びる内向き部7bとを有していればよい。このようにスリット7を構成することで、破断開始部6をより除去しやすくすることができる。
【0045】
また、一対の補助スリット8は、その片方又は両方が省略されてもよい。
周壁板4は、底板2及び天板3の周縁部間に立設される筒状のものであればよく、前述したような四角筒状のものに限定されない。すなわち、包装箱1は、その外観形状が六面体以外の立体形状であってもよい。また、包装箱1は、ラップアラウンド式のものに限定されず、例えば、いわゆるA式のものであってもよい。さらに、包装箱1は、前述した段ボールに代えて、例えば厚紙で形成されてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 包装箱
2 底板
3 天板
4 周壁板
5 破断予定部
6 破断開始部
7 スリット
7d 上端部
7e 下端部
8 補助スリット
10 シート材
11,12 第一パネル部
13 第二パネル部
14 内フラップ部
15 外フラップ部
L1,L2 直線
R 所定範囲
X 横方向(第一方向)
Y 縦方向(第二方向)
図1
図2
図3
図4