(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】自動分析装置における給水方法及び給水装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20220426BHJP
【FI】
G01N35/00 E
G01N35/00 F
(21)【出願番号】P 2017231311
(22)【出願日】2017-12-01
【審査請求日】2020-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川辺 俊樹
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-294763(JP,A)
【文献】特開2013-000725(JP,A)
【文献】実開昭58-187815(JP,U)
【文献】特開平09-143779(JP,A)
【文献】特開2016-061656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00 - 35/10
C02F 1/00 - 1/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動分析装置における給水方法であって、
複数の自動分析装置の内部にそれぞれ設けられた内部貯水タンクに、該
複数の自動分析装置の外部に設けられた外部貯水タンクから、大気圧を利用して水を供給する工程を含み、
該内部貯水タンクのいずれか1つ以上がオーバーフロー排水路を備える、
給水方法。
【請求項2】
前記外部貯水タンクと前記内部貯水タンク
の各々は配管により連通されており、
該外部貯水タンクは水位低下を感知する水位センサを備え、
該配管は、該外部貯水タンクに対して、該水位センサの感知水位と同位置又はより低位置に接続されている、
請求項1記載の給水方法。
【請求項3】
前記オーバーフロー排水路が逆流防止部材を備える、請求項1又は2記載の給水方法。
【請求項4】
前記オーバーフロー排水路が漏水センサを備える、請求項1~3のいずれか1項記載の給水方法。
【請求項5】
前記内部貯水タンク
のいずれか1つ以上が水位低下を感知する水位センサを備える、請求項1~4のいずれか1項記載の給水方法。
【請求項6】
前記内部貯水タンクの各々に接続された配管がそれぞれ弁を備える、請求項1~5のいずれか1項記載の給水方法。
【請求項7】
前記外部貯水タンクが、該タンクに水を供給する水製造装置と連通されている、請求項1~6のいずれか1項記載の給水方法。
【請求項8】
自動分析装置への給水装置であって、
複数の自動分析装置の内部にそれぞれ設けられた内部貯水タンクと、該
複数の自動分析装置の外部に設けられた外部貯水タンクを備え、
該外部貯水タンクと該内部貯水タンク
の各々は、該外部貯水タンクから該内部貯水タンク
の各々に大気圧を利用して水を供給するように連通されており、
該内部貯水タンクのいずれか1つ以上がオーバーフロー排水路を備える、
給水装置。
【請求項9】
前記外部貯水タンクと前記内部貯水タンク
の各々は配管により連通されており、
該外部貯水タンクは水位低下を感知する水位センサを備え、
該配管は、該外部貯水タンクに対して、該水位センサの感知水位と同位置又はより低位置に接続されている、
請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記オーバーフロー排水路が逆流防止部材を備える、請求項8又は9記載の装置。
【請求項11】
前記オーバーフロー排水路が漏水センサを備える、請求項8~10のいずれか1項記載の装置。
【請求項12】
前記内部貯水タンク
のいずれか1つ以上が下限水位を感知する水位センサを備える、請求項8~11のいずれか1項記載の装置。
【請求項13】
前記内部貯水タンクの各々に接続された配管がそれぞれ開閉弁を備える、請求項8~12のいずれか1項記載の装置。
【請求項14】
前記外部貯水タンクに水を供給する水製造装置をさらに備える、請求項
8~13のいずれか1項記載の装置。
【請求項15】
前記水製造装置から前記外部貯水タンクへの水供給を制御する制御部をさらに備える、請求項14記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体由来サンプル中の標的物質の分析を行う自動分析装置における給水方法、及び当該方法を使用した給水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液や尿などの生体由来サンプル中の標的物質の定性又は定量分析を行う自動分析装置は、臨床検査の分野で広く使用されている。自動分析装置を使用した分析では、多くの場合、サンプルや試薬の希釈、流路等の装置の洗浄、反応槽の温度制御などのために水が使用される。自動分析装置への水の供給手段には、自動分析装置に接続された貯水タンクに操作者がマニュアルで水を補給する方法、及び外部の精製水製造装置から自動分析装置に接続された貯水タンクに自動給水する方法が主に用いられている。
【0003】
特許文献1には、自動分析装置の外部に設けられた給水手段から供給される水を貯水するタンクと、該給水手段から該タンクへの水の供給状態を制御する給水調整弁と、該タンクの水を水使用箇所に供給するポンプと、該ポンプから該水使用箇所への水の供給状態を制御する水使用調整弁と、該給水調整弁及び水使用調整弁の開閉動作を制御する制御部と、該タンク内に設けられ該制御部に信号を送る水位センサとを備える自動分析装置が記載されている。特許文献2には、純水製造装置を内部に組み込み、純水製造装置から送られた水を貯留する純水貯水タンク内に設けたフロートスイッチで純水精製の起動停止を制御する自動分析装置が記載されている。特許文献3には純水供給器と接続され、液位センサが設けられた貯水タンクを備えた試薬調製装置が記載されている。特許文献4には水生成装置と接続され、水位検出手段が設けられた貯水タンクを備えた自動分析装置が記載されている。これらの自動分析装置では、タンク内に設けた水位センサによってタンク内の水量が検出されると、ポンプや弁が制御されてタンクへの水供給量が調節される。
【0004】
水位センサやポンプを使用しない水供給制御方法として、特許文献5には、ウォーターバスとの連通口より高位置かつ空気取入口より低位置に開口して給水タンクからの水を供給する細管と、該細管の開口部よりも下位に設けた排水菅とを有する水位調節器を用いるウォーターバスの水位調節装置が記載されている。この方法では、ウォーターバスに対する水位調節装置の高さを変えることで、ウォーターバスの水位を所望の高さに調節する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-002589号公報
【文献】特開2000-266763号公報
【文献】特開平9-033538号公報
【文献】特開2014-010097号公報
【文献】実用新案出願公開昭58-187815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、複数の自動分析装置で1台の純水製造装置を共有することが可能であり、かつ、各々の自動分析装置に対して、内部の貯水タンクの水量不足やオーバーフローを起こすことなく、水供給制御を容易に行うことができる自動分析装置用の給水方法、及び当該方法を使用した自動分析装置用の給水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、以下を提供する。
〔1〕自動分析装置における給水方法であって、
少なくとも1台の自動分析装置の内部にそれぞれ設けられた内部貯水タンクに、該自動分析装置の外部に設けられた外部貯水タンクから、大気圧を利用して水を供給する工程を含み、
該内部貯水タンクのいずれか1つ以上がオーバーフロー排水路を備える、
給水方法。
〔2〕前記外部貯水タンクと前記内部貯水タンクは配管により連通されており、
該外部貯水タンクは水位低下を感知する水位センサを備え、
該配管は、該外部貯水タンクに対して、該水位センサの感知水位と同位置又はより低位置に接続されている、
〔1〕記載の給水方法。
〔3〕前記オーバーフロー排水路が逆流防止部材を備える、〔1〕又は〔2〕記載の給水方法。
〔4〕前記オーバーフロー排水路が漏水センサを備える、〔1〕~〔3〕のいずれか1項記載の給水方法。
〔5〕前記内部貯水タンクが水位低下を感知する水位センサを備える、〔1〕~〔4〕のいずれか1項記載の給水方法。
〔6〕前記内部貯水タンクの各々に接続された配管がそれぞれ弁を備える、〔1〕~〔5〕のいずれか1項記載の給水方法。
〔7〕前記外部貯水タンクが、該タンクに水を供給する水製造装置と連通されている、〔1〕~〔6〕のいずれか1項記載の給水方法。
【0008】
さらに本発明は、以下を提供する。
〔8〕自動分析装置への給水装置であって、
少なくとも1台の自動分析装置の内部にそれぞれ設けられた内部貯水タンクと、該自動分析装置の外部に設けられた外部貯水タンクを備え、
該外部貯水タンクと該内部貯水タンクは、該外部貯水タンクから該内部貯水タンクに大気圧を利用して水を供給するように連通されており、
該内部貯水タンクのいずれか1つ以上がオーバーフロー排水路を備える、
給水装置。
〔9〕前記外部貯水タンクと前記内部貯水タンクは配管により連通されており、
該外部貯水タンクは水位低下を感知する水位センサを備え、
該配管は、該外部貯水タンクに対して、該水位センサの感知水位と同位置又はより低位置に接続されている、
〔8〕記載の装置。
〔10〕前記オーバーフロー排水路が逆流防止部材を備える、〔8〕又は〔9〕記載の装置。
〔11〕前記オーバーフロー排水路が漏水センサを備える、〔8〕~〔10〕のいずれか1項記載の装置。
〔12〕前記内部貯水タンクが下限水位を感知する水位センサを備える、〔8〕~〔11〕のいずれか1項記載の装置。
〔13〕前記内部貯水タンクの各々に接続された配管がそれぞれ弁を備える、〔8〕~〔12〕のいずれか1項記載の装置。
〔14〕前記外部貯水タンクに水を供給する水製造装置をさらに備える、〔8〕~〔13〕のいずれか1項記載の装置。
〔15〕前記水製造装置から前記外部貯水タンクへの水供給を制御する制御部をさらに備える、〔14〕記載の装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、1台の純水製造装置を複数の自動分析装置で共有することが可能となり、かつ、内部の貯水タンクの水量不足やオーバーフローを起こすことなく、各々の自動分析装置に対して水供給制御を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】従来の水製造装置接続型自動分析装置の構成の概略図。矢印は水流。
【
図2】大気圧を利用した自動分析装置への給水方法の構成の概略図。矢印は水流。
【
図3】本発明による自動分析装置への給水方法の第1の実施形態の概略図。矢印は水流。
【
図4】外部貯水タンクと内部貯水タンクを接続する配管の接続高さと水供給状態との関係を示した模式図。
【
図5】オーバーフロー排水路の機能を示す概略図。矢印は水流。
【
図7】外部貯水タンクに複数の自動分析装置を接続した場合の本発明の給水方法の構成を示す概略図。矢印は水流。
【発明を実施するための形態】
【0011】
従来の水製造装置接続型の自動分析装置では、水供給制御の都合上、複数の自動分析装置で一台の純水製造装置を共有することは困難であり、通常、自動分析装置一台毎に一台の純水製造装置を備える。
【0012】
図1は、従来の水製造装置接続型の自動分析装置における給水手段の構成を概略的に示す図である。
図1において、水製造装置200は、自動分析装置100の内部にある貯水タンク10と配管50により接続されており、貯水タンク10は自動分析装置100の分析部102に水を供給する。貯水タンク10は水位センサ30を備えており、水位が所定位置(水量不足の境界水位)まで低下すると、水位センサ30がそれを感知し、自動分析装置内の制御部101に水供給の必要を知らせる信号が送られる。該信号を受信した制御部101は、水製造装置200に対し、貯水タンク10への水供給を指示する信号を送信する。制御部101からの信号を受信した水製造装置200は、貯水タンク10への水を供給する。この構成の下で一台の水製造装置200を複数の自動分析装置100で共有しようとする場合、水製造装置200は、複数の自動分析装置100からの信号を峻別し、適切な自動分析装置100に水を供給する機能を備える必要がある。しかしながら、当該機能を水製造装置200に求めることは、水製造装置200の設計面あるいは費用面から現実的ではなかった。
【0013】
本発明者は、上記のような自動分析装置における給水上の問題を解決するための手段として、PCT/JP2017/021702に記載される給水方法を開発した。この方法では、自動分析装置の外部に設けられた水供給源から、一台又は複数台の自動分析装置の内部に設けられた貯水タンクに、大気圧を利用して水を供給する。
図2に示すように、水製造装置200に接続された外部貯水タンク20は、各自動分析装置の内部に設けられた内部貯水タンク10と配管40を介して連通し、タンク20から各タンク10に純水が供給される。このとき水の供給には大気圧が利用されるので、各タンク10の水位は、自動的にタンク20の水位と同じ水位に調節される。タンク10内の水が消費されて水位が低下した場合、タンク20の水位も低下する。タンク20の水位低下をタンク20内に設けられたセンサ30が感知すると、制御部300に信号が送られ、制御部300は水製造装置200に対して外部タンク20への水供給を指示する。水製造装置200から水が供給され外部タンク20の水位が上昇すれば、大気圧に従って、各タンク10の水位も上昇する。したがって、この方法では、外部タンク20に十分な水が供給されている限り、一台の純水製造装置を用いて、複数台の自動分析装置の内部タンク10に常に十分な水を供給することができる。
【0014】
上記の給水方法においては、内部タンク10の水位は、大気圧に従って、外部タンク20の水位によって決定される。そのため、タンク10の内部はタンク外気に対して開放されている。こうした構成の下では、何らかの事情で内部タンクの位置に対して外部タンク20の水位が過度に上昇した場合、例えば清掃や点検等のために水の入った外部タンク20を持ち上げたとき、多量の水がタンク20からタンク10に流入し、タンク10の水のオーバーフローを引き起こすことがある。タンク10からの水のオーバーフローは、自動分析装置の内部又は周辺への水漏れ、さらには装置の汚染や故障の原因となり得る。
【0015】
上述のような外部タンクの水位変化による自動分析装置内でのオーバーフローの問題は、制御部による制御の下で内部タンクに水供給する従来の自動分析装置では発生しないことであり、本発明者らにより新たに開発された大気圧を利用した給水方法(PCT/JP2017/021702に開示される方法)を用いた自動分析装置において初めて生じた問題である。したがって本発明は、大気圧を利用して外部水源から自動分析装置に水供給する機構を有する自動分析装置用の給水装置における、該外部水源の水位変化に伴って起こる内部タンクのオーバーフローの回避という、従来は存在しなかった課題を解決するものである。
【0016】
本発明においては、上述した内部タンクからのオーバーフローの問題は、内部タンクにオーバーフロー排水路を設けることによって解決される。
すなわち本発明は、自動分析装置における給水方法であって、少なくとも1台の自動分析装置の内部にそれぞれ設けられた少なくとも1個の内部貯水タンクに、該自動分析装置の外部に設けられた外部貯水タンクから、大気圧を利用して水を供給する工程を含み、該内部貯水タンクのいずれか1つ以上がオーバーフロー排水路を備えることを特徴とする、方法を提供する。
また本発明は、自動分析装置への給水装置であって、少なくとも1台の自動分析装置の内部にそれぞれ設けられた少なくとも1個の内部貯水タンクと、該自動分析装置の外部に設けられた外部貯水タンクを備え、該外部貯水タンクと該内部貯水タンクは、該外部貯水タンクから該内部貯水タンクに大気圧を利用して水を供給するように連通されており、該内部貯水タンクのいずれか1つ以上がオーバーフロー排水路を備えることを特徴とする、装置を提供する。
また本発明は、当該給水装置を備える自動分析装置を提供する。
【0017】
以下、本発明の実施の例示的形態を、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る構成を概略的に示す図である。
図3においては、自動分析装置100の外部に、水製造装置200、及び外部貯水タンク20が設けられている。自動分析装置100の内部には内部貯水タンク10が設けられている。内部貯水タンク10は、自動分析装置100に水を供給する。
図3においては、自動分析装置100は内部貯水タンク10から該装置に水を供給するための配管を備え、内部貯水タンク10は、該配管を通じて自動分析装置100の分析部102に水を供給する。外部貯水タンク20は、内部貯水タンク10と配管40により連通されている。外部貯水タンク20は、該タンク20の水位低下を感知する水位センサ30を内部に備える。好ましくは、該水位センサ30は、該タンク20に対して設定された許容下限水位を感知するように設定されている。該水位センサ30は、内部貯水タンク10への水供給を制御するように働く。すなわち、タンク20内の水位が低下すると、水位センサ30はそれを感知して制御部300に信号を送り、次いで制御部300は、水製造装置200に信号を送り、タンク20への水供給を開始させる。
【0019】
外部貯水タンク20と内部貯水タンク10とをつなぐ配管40は、外部貯水タンク20内の水位センサ30の感知水位と同位置又はそれよりも低い位置で、外部貯水タンク20と内部貯水タンク10を接続している。より詳細には、配管40は、外部貯水タンク20に対して、該水位センサ30の感知水位と同位置又はより低位置に接続されている。また配管40と内部貯水タンク10は、該水位センサ30による感知水位と同位置又はそれよりも低い位置で接続されている。
【0020】
外部貯水タンク20から内部貯水タンク10への水の供給には大気圧が利用される。すなわち、外部貯水タンク20に水が供給されて外部貯水タンク20内の水と内部貯水タンク10内の水との間に水位差が生じると、配管40を介して外部貯水タンク20から内部貯水タンク10へと水が流入する。外部貯水タンク20内の水位センサ30は、該タンク20内の水位が所定位置まで低下したことを感知すると、純水製造装置制御部300に信号を送り、純水製造装置制御部300は、水製造装置200に外部貯水タンク20への純水の供給を指示する。水製造装置200から外部貯水タンク20へは、配管50を介して水が供給される。水製造装置200から外部貯水タンク20への水供給量は、水位センサ30の感知水位とタンク容量などを考慮して予め決定しておいてもよく、あるいは外部貯水タンク20内に水位上限を感知する別のセンサ(図示せず)を設置することにより制御してもよい。
【0021】
図3においては、1台の水製造装置200と外部貯水タンク20に対して1台の自動分析装置100が接続されているが、本発明においては、1台の水製造装置200に対して2台以上の自動分析装置100を接続してもよい。各自動分析装置100の内部に設けられた内部貯水タンク10の各々は、配管40を直列又は並列に接続することによって、外部貯水タンク20と直接的(他のタンク10を介さずに)又は間接的に(他のタンク10を介して)連通することができる(例えば
図7参照)。
【0022】
図4は、本発明における外部貯水タンク20と内部貯水タンク10を接続する配管40の接続高さと、タンク20からタンク10への水供給状態との関係を示した模式図である。
図4において、Iはタンク10への配管40の接続位置、Hはタンク20への水供給が停止する水位、Mはタンク20への純水供給が開始される水位(水位センサ30の感知水位)、Lは内部貯水タンク10の下限水位(例えば後述する水位センサ30aの感知水位、その位置はI>Lである)を、それぞれ示す。
図4において、上段は、配管40の接続位置Iが好適な場合(I<M)を示し、中段は、配管40の接続位置Iが好適な場合の境界(I=M)を示し、下段は、配管40の接続位置Iが不適切な場合(I>M)を示す。
【0023】
図4の各段において、配管40により接続された外部貯水タンク20(図中、左側のタンク)と内部貯水タンク10(図中、右側のタンク)を一対として、それぞれ8つの状態(状態1~8)を例示した。
図4は、本発明による外部貯水タンク20から内部貯水タンク10への水供給が、大気圧との関係により両方のタンクの水位が同一になることを利用していることを示している。このようにI≦Mである場合、ポンプ等の手段を使用することなく、水供給を制御できることがわかる。
【0024】
本発明において、外部貯水タンク20への純水供給が開始される水位(水位センサ30の感知水位)Mと、外部貯水タンク20と内部貯水タンク10の配管40による接続位置Iについて、I≦Mであるとき、外部貯水タンク20への水の供給量をA(L/h)、自動分析装置100の1台あたりの水使用量をB(L/h)とした場合、A/B台まで、自動分析装置100を接続することができる。例えば、A=15L/h、B=3.2L/hである場合、A/B=4.6となるので、1つの外部貯水タンク20に対して自動分析装置100を4台接続することが可能である。
【0025】
一実施形態において、各々の内部貯水タンク10と接続する配管40に開閉弁60を設けてもよい。開閉弁60の設置により、外部貯水タンク20に対する各々の内部貯水タンク10の連通を個別に遮断することが可能になる。これは、外部貯水タンク20に影響を与えることなく内部貯水タンク10の洗浄を行う際に有利である。例えば、1台目の自動分析装置100が分析を実行している状態で、2台目の自動分析装置100の内部貯水タンク10を洗浄することが可能である。開閉弁60は、手動で操作されてもよく、又は各自動分析装置100内にある制御部101によって制御されてもよい。
【0026】
一実施形態において、各自動分析装置100内の内部貯水タンク10は、該タンク10内の水位低下を感知する水位センサ30aを備えていてもよい。例えば、水位センサ30aがタンク10内の水位低下を感知すると、制御部101に信号が送られ、制御部101は分析部102に信号を送り、分析を停止させることができる。当該構成により、水の不足した状態での不正確な分析を防止することができる。
【0027】
本発明においては、
図3に示すとおり、少なくとも1つの内部貯水タンク10がオーバーフロー排水路70を備える。自動分析装置100が2台以上の場合、いずれか1つ以上の内部貯水タンク10がオーバーフロー排水路70を備えていればよい。オーバーフロー排水路を設ける内部貯水タンクが1つのみの場合は、該内部貯水タンクに対するオーバーフロー排水路の接続位置は、他の内部貯水タンクの許容上限水位のいずれに対してもより低い位置にあることが好ましい。好ましくは、全ての内部貯水タンク10はオーバーフロー排水路70を備える。
【0028】
図5は、オーバーフロー排水路70の機能を示す概略図である。外部貯水タンク20を持ち上げた場合、外部貯水タンク20内の水位は内部貯水タンク10内の水位に対して上昇するため、タンク20内の水はタンク10内に流入する。このとき、たとえタンク20内の水量が減少しても、水位センサ30が働いて水製造装置200からタンク20への水供給が行われるため、タンク20の水はタンク10に流れ続け、流入量は最終的にタンク10の容量を超える。しかしながら、本発明では、タンク10内の水位が一定以上を超えると、余剰の水はオーバーフロー排水路70から自動分析装置100の外に排出されるので、タンク10から自動分析装置100内への水のオーバーフローは生じない。オーバーフロー防止の観点からは、オーバーフロー排水路70からの水排出量(容量/時)は、タンク10内に水を供給する配管40からの水流入量(容量/時)よりも大きいことが好ましい。好ましくは、オーバーフロー排水路70の内径は、タンク10内に水を供給する配管40の内径よりも大きい。
【0029】
好ましくは、オーバーフロー排水路70は、逆流防止部材を備える。該逆流防止部材は、オーバーフロー排水路70内に残留する排水や気体、又はオーバーフロー排水路70につながる排水経路(例えば下水、廃水タンク等)内の汚染物質が内部貯水タンク10内に逆流してタンク10内部を汚染することを防止する。該逆流防止部材は、タンク10からの流出を許容する一方で、タンク10への流入を防止する構造を有するものであればよく、好ましい例としては逆止弁、ボールバルブなどが挙げられる。逆止弁の種類としては、弁自体の可撓性により逆流を防止するタイプ、弾性部材やヒンジ等により弁に対して一方向性に圧力をかけることで逆流を防止するタイプ(スイングチャッキバルブ、ウエハチャッキバルブ、リフトチャッキバルブ等)、弁が自重によって流路を閉鎖することで逆流を防止するタイプ、などが挙げられるが、これらに限定されない。オーバーフロー排水路70における逆流防止部材80の設置位置は特に限定されないが、内部貯水タンク10の汚染防止の観点からは、タンク10に近い位置に設置することが好ましい。
図5では、逆流防止部材80は、オーバーフロー排水路70のタンク10との接続口近くに設けられている。
【0030】
図6は、オーバーフロー排水路70に設けられた逆流防止部材80の一例について、その動作を概念的に示した図である。ここでは、自重によって流路を閉鎖するタイプの弁を示す。弁80は、軸81により排水路70の壁に係合されており、軸81を中心に旋回することで排水路70を開閉する。弁80は、通常は自重により排水路70を閉鎖しているが、タンク側からの流れにより流路を開放する。タンク側からの流れがなくなれば、再び弁80の自重により排水路70は閉鎖される。一方、排水路70の壁に設けられたストッパ71により、排水路側からの流れに対しては、弁80は動かず、排水路70は開放されない。
【0031】
好ましくは、オーバーフロー排水路70は、漏水センサを備える。該漏水センサは、オーバーフロー排水路70内に水が排出されたことを感知する。漏水センサは、その種類は特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、電極間抵抗検知方式の漏水センサ(2本の電極に液体が接触して電流が流れることで漏水を感知するセンサ、例えば、オムロン F03-16SF等)などを使用することができる。一実施形態において、漏水センサからのシグナルは、自動分析装置100の制御部101に送られ、制御部101は内部貯水タンク10に接続された配管40に設けられた開閉弁60を閉じる。別の一実施形態において、漏水センサからのシグナルは、制御部300に送られ、制御部300は、水製造装置200から外部貯水タンク20への水の供給を止める。これらの構成は、タンク10への水の過剰な流入を抑えることができるので、タンク10からのオーバーフローの抑制に有用である。
図5では、漏水センサ90は自動分析装置100の内部に設けられているが、自動分析装置100の外部に設けられていてもよい。なお
図5では、漏水センサ90から制御部101又は制御部300への信号経路は省略されている。
【0032】
図7は、本発明において外部貯水タンク20に複数の自動分析装置100を接続した構成を概略的に示す図である。
図7には、2台の自動分析装置100の外部に、1台の水製造装置200、及び1台の外部貯水タンク20が設けられている。2台の自動分析装置100のそれぞれの内部には、各々内部貯水タンク10が設けられている。各々の内部貯水タンク10は、それが収められた自動分析装置100に水を供給する。
図7においては、各自動分析装置100はその内部の内部貯水タンク10から該装置に水を供給するための配管を備え、内部貯水タンク10は、該配管を通じて、それが収められた自動分析装置100の分析部102に水を供給する。外部貯水タンク20は、2台の内部貯水タンク10に対して、それぞれ純水を供給可能な状態で配管40により接続されている。外部貯水タンク20は、タンク20内の水位低下を感知する水位センサ30を内部に備えている。配管40は、該水位センサ30の感知水位よりも低い位置で、外部貯水タンク20と2台の内部貯水タンク10それぞれを接続している。より詳細には、配管40は、水位センサ30の感知水位よりも低い位置で、2台の内部貯水タンク10と接続されている。また、外部貯水タンク20から配管40への接続部は、水位センサ30の感知水位よりも低い位置にある。外部貯水タンク20からそれぞれの内部貯水タンク10への水の供給には大気圧が利用される。すなわち、外部貯水タンク20に新たに水が供給されて外部貯水タンク20内の水と内部貯水タンク10内の水との間に水位差が生じると、配管40を介して外部貯水タンク20から内部貯水タンク10へと水が流入する。水製造装置200から外部貯水タンク20へは、配管50を介して水が供給される。
【0033】
図7において、内部貯水タンク10は、それぞれオーバーフロー排水路70を備え、各オーバーフロー排水路70は、逆流防止部材80と漏水センサ90を備える。各内部貯水タンク10内の水は、所定の水位以上になると、オーバーフロー排水路70から自動分析装置100の外に排出される。これにより、自動分析装置100内部への水のオーバーフローが防止されるので、溢れた水による自動分析装置100の汚染や故障を防止することができる。したがって、本発明によれば、大気圧を利用した水供給により1台の純水製造装置を複数の自動分析装置で共有することが可能となり、かつ、内部の貯水タンクからのオーバーフロー及びそれによる自動分析装置の汚染や故障を簡便な手段で防止することができる。
【0034】
図3又は
図7に示すような本発明の方法においては、外部貯水タンク20からのオーバーフローを防止するため、外部貯水タンク20に満水エラー水位を設けることが可能である。例えば、外部貯水タンク20に別の水位センサ(図示せず)を設置することができる。該別の水位センサは、タンク20内の水位が予め設定した水位上限に達したことを感知し、制御部300に信号を送る。制御部300は、水製造装置200に信号を送り、タンク20への水供給を停止させる。あるいは、本発明においては、外部貯水タンク20にもオーバーフロー用排水路を設けることができる。当該タンク20のオーバーフロー用排水路は、上述したタンク10のオーバーフロー排水路70と同様に、逆流防止部材や漏水センサを備えていてもよい。
【0035】
本発明において、内部貯水タンク10からのオーバーフローを防止するためのさらなる手段として、各内部貯水タンク10のタンク上端の配置を、外部貯水タンク20のタンク上端の配置よりも高くすることができる。これにより、タンク20の水位がタンク上端まで達した場合でも、内部貯水タンク10の水位はタンク上端に達しないので、タンク10から自動分析装置100内部へのオーバーフローを抑制することができる。
【0036】
なお、本発明によって提供されるオーバーフロー排水路の設置による内部貯水タンクからのオーバーフロー防止の仕組みは、大気圧を利用した外部水供給源から自動分析装置への給水方法に限らず、他の給水方法(例えばポンプを利用した給水方法など)にも応用することができる。例えば、本発明は、少なくとも1台の自動分析装置の内部にそれぞれ設けられた貯水タンクに対して該装置の外部から水を供給する工程と、該貯水タンクから該装置に水を供給する工程とを含み、該タンクのいずれか1つ以上がオーバーフロー排水路を備える、自動分析装置における給水方法を提供し得る。あるいは、本発明は、少なくとも1台の自動分析装置の内部にそれぞれ設けられた少なくとも1個の貯水タンクと、該貯水タンクから該装置に水を供給するための配管とを備え、該貯水タンクは該装置の外部から水を補給するための給水口を有し、かつ該タンクのいずれか1つ以上がオーバーフロー排水路を備える、自動分析装置への給水装置、ならびに当該給水装置を備える自動分析装置を提供し得る。
【0037】
本明細書において「水位センサ」の語は、水位を検出する機構を意味する。水位の検出方法は、フロート(浮き)の位置で検知する方法や水圧で検知する方法等、公知の方法のいずれも採用可能である。また、内部貯水タンク10及び外部貯水タンク20の水位センサは、各タンクにおける水位を検知し、オペレータに報知する機能を有するか、又は各タンクにおける水位を検知し、純水製造装置制御部300又は自動分析装置内制御部101に情報を送る。より詳細には、外部貯水タンク20の水位センサ30で検出された情報は、純水製造装置制御部300に送られるか、又はその代わりにアラーム等によりオペレータに報知される。一方、内部貯水タンク10の水位センサ30aで検出された情報は、自動分析装置内制御部101に送られるか、又はその代わりにアラーム等によりオペレータに報知される。
【0038】
本明細書において「給水装置」の語は、本発明の「給水方法」を実施できるように構成された個別装置の組み合わせを意味しており、組み合わせの要素の全てが一体的に販売や提供されることは必要としない。
【0039】
本明細書において「連通」の語は、機器又は部品が配管により水が流通可能に接続されていることを意味する。
【0040】
本明細書において「水」の語は、自動分析装置で使用され得る水、例えば「純水」、「精製水」、「蒸留水」、「脱イオン水」、「イオン交換水」、「水道水」などを総称する語として使用している。本明細書においては、「水」は好ましくは純水又は精製水であるが、必ずしもそれらに制限されることなく、自動分析装置による分析の際の使用目的により、「水」の種類は適宜に選択できる。
【0041】
本発明の給水方法を適用することができる、あるいは本発明の給水装置を構成しうる範囲において、自動分析装置の仕様等に制限はない。例えば、純水をプローブ等に供給するためのポンプや廃液の廃棄方法やその機構、制御部、分析部などは、当業者であれば適宜に選択可能である。
【符号の説明】
【0042】
10 内部貯水タンク
20 外部貯水タンク
30、30a 水位センサ
40、50 配管
60 開閉弁
70 オーバーフロー排水路
71 ストッパ
80 逆流防止部材
81 軸
90 漏水センサ
100 自動分析装置
101 自動分析装置内制御部
102 自動分析装置内分析部
200 水製造装置
300 水製造装置制御部