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特許7063595フラッシュライト照射方法およびこれによって得られる有機電子デバイス素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】フラッシュライト照射方法およびこれによって得られる有機電子デバイス素子
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/10 20060101AFI20220426BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220426BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20220426BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20220426BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20220426BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220426BHJP
   H01L 51/42 20060101ALI20220426BHJP
   H01L 51/46 20060101ALI20220426BHJP
   H01L 51/48 20060101ALI20220426BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20220426BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
H05B33/10
H05B33/14 A
H05B33/22 Z
H05B33/12 B
H05B33/04
H05B33/22 C
H05B33/22 A
H01L27/32
H01L31/08 T
H01L31/04 162
H01L31/04 188
G09F9/00 338
G09F9/30 365
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017238459
(22)【出願日】2017-12-13
(65)【公開番号】P2018098209
(43)【公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-11-25
(31)【優先権主張番号】16203671.9
(32)【優先日】2016-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503180100
【氏名又は名称】ノヴァレッド ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー,ラングート
(72)【発明者】
【氏名】トビーアス,カンツラー
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-018759(JP,A)
【文献】特開2004-158436(JP,A)
【文献】特開2014-032817(JP,A)
【文献】特開2008-243559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/00 - 33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)有機電子デバイスを作成するのに適用可能な層構造を提供する工程であって、前記層構造は、
aa)第一電極構造および非電極部を有する基板と、
bb)グリッド材料で形成されたグリッドであって、前記グリッドの複数の開口領域が前記第一電極構造の少なくとも一部の上方に配置され、前記グリッド材料が前記非電極部の少なくとも一部の上方に配置されている、グリッドと、
cc)少なくとも1E‐7 S/cmの導電率を有する少なくとも一層のレドックスドープ層を含む積層であって、前記グリッド上に堆積される積層と、を含み、
シマヅサイエンティフィックインスツルメンツ(日本、東京)が提供する分光光度計UV‐2450 PCを用いて吸光光度法によって測定された前記グリッド材料の光学密度は前記複数の開口領域の光学密度より高い、工程と、
b)前記層構造に、持続時間が10ms未満でありエネルギーが1パルスにつき0.1から20 J/cm、または1から10 J/cmである光パルスを照射する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記積層は発光層をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記グリッド材料はフォトレジストを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記層構造は、前記積層の上端の上に配置された第二電極をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記層構造は、前記第二電極の上端の上に配置されたバリア層をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
照射はフラッシュランプを用いて行われ、前記フラッシュランプはキセノンまたはLEDまたはレーザー光源である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記積層の厚みの合計は10nmより大きく5000nm未満、または30nmより大きく300nm未満、かつ/または、前記グリッドの厚みは前記少なくとも一層のレドックスドープ層の厚みより大きい、または500nmより大きく10000nm未満である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
i.前記少なくとも一層のレドックスドープ層はレドックスドーパントから成り、またはii.前記少なくとも一層のレドックスドープ層はレドックスドーパントおよびマトリクス材料から成り、前記マトリクス材料は電荷移動材料であり、または
iii.前記少なくとも一層のレドックスドープ層は、注入材料から成る第一層と、電荷移動材料から成る第二層とから成る二重層であり、前記電荷移動材料はレドックスドープされていてもよく、されていなくてもよい、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記レドックスドーパントは、
1.p型ドーパントであって、当該p型ドーパントは、
1.1.分子量が350から1700である有機または有機金属分子ドーパントであって、当該有機または有機金属分子ドーパントは、ジマロノニトリル化合物、芳香族/複素環式芳香族ニトリル化合物、フラーレン誘導体、または式1のラジアレン誘導体から選択され、式1においてAr1-3は同じであるか異なり、それぞれ独立してアリールまたはヘテロアリールから選択される、有機または有機金属分子ドーパント、
【化1】
または、
1.2.MoOおよびVから選択される遷移金属酸化物、または、
1.3.ルイス酸であって、(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド化合物であり、元素周期系の第1から第12族の金属のビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド化合物から選択され、前記第1から第12族の金属は、Li、Mg、Ba、Sc、Mn、Cu、Agまたはそれらの混合物から選択される、ルイス酸
であり、
または、
2.n型ドーパントであって、当該n型ドーパントは、
2.1.分子量が300から1500である有機または有機金属分子ドーパント、または
2.2.金属ドーパントであって、当該金属ドーパントは、分子量が25から500の金属ハロゲン化物、分子量が150から1500の金属錯体、および0価金属から成る群から選択され、当該0価金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および希土類金属から成る群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記注入材料は、
1.p型材料であって、当該p型材料は、
1.1.分子量が350から1700である有機または有機金属分子ドーパントであって、当該有機または有機金属分子ドーパントは、ジマロノニトリル化合物、芳香族/複素環式芳香族ニトリル化合物、フラーレン誘導体、または式1のラジアレン誘導体から選択され、式1においてAr1-3は同じであるか異なり、それぞれ独立してアリールまたはヘテロアリールから選択される、有機または有機金属分子ドーパント、
【化2】
または
1.2.MoOおよびVから選択される遷移金属酸化物、または、
1.3.ルイス酸であって、(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド化合物であり、元素周期系の第1から第12族の金属のビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド化合物から選択され、前記第1から第12族の金属は、Li、Mg、Ba、Sc、Mn、Cu、Agまたはそれらの混合物から選ばれてよい、ルイス酸、または
1.4.MgFであってよい金属ハロゲン化物
であり、
または、
2.n型材料であって、当該n型材料は、
2.1.分子量が300から1500である有機または有機金属分子ドーパント、または
2.2.金属ドーパントであって、当該金属ドーパントは、分子量が25から500の金属ハロゲン化物、分子量が150から1500の金属錯体、および0価金属から成る群から選ばれ、当該0価金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および希土類金属から成る群から選択される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記第一電極構造は、前記基板上の多数の画素を構成し、前記多数の画素の画素ギャップは、50μm未満、または1μmより大きく30μm未満であり、画素ピッチは150μm未満、または2μmより大きく125μm未満である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラッシュライト照射を用いて有機電子デバイスを作成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子工学では、クロストークとは、一つの回路またはデバイスに送られた信号が他の回路またはデバイスに望ましくない効果をもたらす現象である。クロストークは通常、一つの回路またはデバイス素子もしくはそれらの一部から、他の回路またはデバイス素子もしくはそれらの一部への、望ましくない静電結合、誘電結合、または導電結合によって引き起こされる。回路間またはデバイス素子間の距離が非常に短い電子デバイス、例えば高解像度ディスプレイスクリーンや、高解像度アクティブマトリクス有機電子ダイオード(AMOLED)ディスプレイまたは薄膜トランジスタ(TFT)アレイや、光検知器アレイや、イメージセンサでは、クロストークの弊害は特に目立っている。根本原因は、通常、隣接する回路間またはデバイス素子間に、デバイスアレイに用いられる共通の導電層または導電材料がもたらす導電路である。
【0003】
例えば、共通の導電層はディスプレイOLEDの電極上の電荷注入層、またはディスプレイOLED中の電荷発生層(OGL)中の導電層でありうる。そのような導電注入層は、ディスプレイの画素中の、すべてではないにしてもいくつかのOLED間で共有されうるので、「共通」層と称される。このため、電流が、アドレスされた画素から、アドレスされていない隣接画素へと、導電層を通って流れうる。これにより、隣接画素が、スイッチを入れられていないのに発光するという望ましくない結果がもたらされる。ディスプレイOLEDの導電層は、通常、レドックスドープされた電荷移動層である。
【0004】
クロストークを減らすいくつかの方法が、関連する従来技術に記載されている。例えば、有機機能材料(もっとも一般的には発光層)を、ファインメタルマスク(FMM)によって、共通の導電層または電荷移動層上に真空蒸着することによって、OLEDディスプレイを産業的に大規模に製造する(特許文献1)。FMMを用いて、表示装置のOLED中のすべての機能的有機層を分離し、それによって電気クロストークが発生する可能性を減らしてよい。回路またはデバイス素子を空間的に分離する他の方法として、非特許文献1に記載されたマイクロおよびナノパターニング技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第2008100204号明細書(2008年5月1日公開)
【非特許文献】
【0006】
【文献】Menard et al.Chem.Rev.2007,107,1117-1160“Micro- and Nanopatterning Techniques for Organic Electronic and Optoelectronic Systems”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の方法は、費用と時間がかかるという欠点がある。
【0008】
共通の導電層の厚みを10nm未満の最小値に減らすことでクロストーク現象を減らすことができるが、デバイスの性能がしばしば犠牲になる。ドーピング濃度を1wt%より大幅に低くまで減らす場合も同様である。他の選択肢は、回路間またはデバイス素子間の距離を増やすことである。しかしこれは、デバイス密度および解像度を高めるという電子産業の大望に反する。
【0009】
走査ビーム法を用いて、隣接する回路間またはデバイス素子間の共通導電層を選択的に無効にすることができる。特に大規模な応用では、これらの技術は時間がかかりすぎる。
【0010】
したがって、従来技術を踏まえて、本発明の目的は、従来技術の諸欠点を克服する、隣接する回路またはデバイス素子のアレイから構成されうる個々の有機電子デバイス、および一個の有機電子デバイスを作成する方法を提供することである。特に、有機電子デバイスに含まれる隣接する電極領域間の電気クロストークを回避するための、有機電子デバイスの作製方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本方法は費用も時間もかからず、すぐれたデバイス性能を得るのに適している。
【0012】
この目的は、第一に、
a)有機電子デバイスを作成するのに適用可能な層構造を提供する工程であって、前記層構造は、
aa)第一電極構造および非電極部を有する基板と、
bb)グリッド材料で形成されたグリッドであって、前記グリッドの複数の開口領域が前記第一電極構造の少なくとも一部の上方に配置され、前記グリッド材料が前記非電極部の少なくとも一部の上方に配置されている、グリッドと、
cc)少なくとも1E‐7 S/cmの導電率を有する少なくとも一層のレドックスドープ層を含む積層であって、前記グリッド上に堆積される積層と、を含み、
吸光光度法によって測定された前記グリッド材料の光学密度は前記複数の開口領域の光学密度より高い、工程と、
b)前記層構造に、持続時間が10ms未満、または0.1から10msであり、エネルギーが1パルスにつき0.1から20 J/cm、または1から10 J/cmである光パルスを照射する工程と、を含む、方法によって達成された。
本発明における「有機電子デバイスを作成するのに適用可能な層構造」とは、本技術分野で公知の、それぞれ層化された有機電子デバイスの一部と解されたい。本開示によれば、前記層構造は、基板と、第一電極構造と、グリッドと、積層を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】層構造を有する基板を、流体冷却型キセノンフラッシュランプの下方に置いた概略図である。
図2】クロストーク電流を測定するためのテストレイアウトを示す。
図3】層構造の、a)照射前、b)照射中、c)照射後の概略断面図である。
図4】グリッドを有するレドックスドープ層と有さないレドックスドープ層の抵抗比を示す。
図5】画素化したOLEDレイアウトにおける基板上のグリッドの上面図(広域および詳細)である。
図6】照射前および照射後におけるクロストーク電流比を示す。
図7】グリッドの光学密度対第一電極の光学密度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本方法は費用も時間もかからず、すぐれたデバイス性能を得るのに適している。
【0015】
この目的は、第一に、
a)有機電子デバイスを作成するのに適用可能な層構造を提供する工程であって、前記層構造は、
aa)第一電極構造および非電極部を有する基板と、
bb)グリッド材料で形成されたグリッドであって、前記グリッドの複数の開口領域が前記第一電極構造の少なくとも一部の上方に配置され、前記グリッド材料が前記非電極部の少なくとも一部の上方に配置されている、グリッドと、
cc)少なくとも1E‐7 S/cmの導電率を有する少なくとも一層のレドックスドープ層を含む積層であって、前記グリッド上に堆積される積層と、を含み、
吸光光度法によって測定された前記グリッド材料の光学密度は前記複数の開口領域の光学密度より高い、工程と、
b)前記層構造に、持続時間が10ms未満、または0.1から10msであり、エネルギーが1パルスにつき0.1から20 J/cm2、または1から10 J/cm2である光パルスを照射する工程と、を含む、方法によって達成された。
本発明における「有機電子デバイスを作成するのに適用可能な層構造」とは、本技術分野で公知の、それぞれ層化された有機電子デバイスの一部と解されたい。本開示によれば、前記層構造は、基板と、第一電極構造と、グリッドと、積層を含む。
【0016】
一つの実施形態では、前記基板は、例えばUS2005247946に記載されているような、ガラスまたはプラスチック基板でよい。
【0017】
他の実施形態では、前記基板は、シリコン薄膜トランジスタ(TFT)バックプレーン、またはポリシリコンバックプレーン(例えば、サムスンSDI社(韓国、京畿道、龍仁市)またはAU Optronics社(台湾)の提供するもの)でよい。
【0018】
さらなる実施形態では、前記第一電極構造は、例えばUS2005247946に記載されているような、画素電極でよい。
【0019】
一つの実施形態では、前記第一電極は、カソード、アノード、ソース電極、ドレイン電極、またはゲート電極でよい。
【0020】
他の実施形態では、前記積層は、例えばUS2005247946に記載されているOLEDを構成する。
【0021】
一つの実施形態では、前記グリッド材料は有機ポリマーを含む。
【0022】
さらなる実施形態では、前記グリッド材料は無機化合物を含み、当該無機化合物は金属化合物でよい。
【0023】
一つの実施形態では、前記グリッド材料は金属または合金である。
【0024】
他の実施形態では、前記グリッド材料は、有機化合物および無機化合物を含む複合材料である。
【0025】
他の実施形態では、前記グリッド材料は、有機化合物および少なくとも一つの金属を含む複合材料である。
【0026】
前記積層は、前記少なくとも一層のレドックスドープ層に加えて、有機電子デバイスを構成するのに好適にするため、本技術分野で周知の層をさらに含んでよい。しかし、他の実施形態では、前記積層はレドックスドープ層のみから成ってよい。本実施形態における前記積層のさらなる層は、前記照射する工程を終えたあと、前記レドックスドープ層上に堆積してよい。前記層構造は、さらなる諸要素、特にさらなる諸層、さらなる電極、カプセル封入、または本技術分野で公知の他の任意の素子と組み合わせて、一つの有機電子デバイスの作製に好適になるというかたちで、各有機電子デバイスの作成に適用可能である。
【0027】
前記基板は第一電極構造を含む。当該第一電極構造は、前記第一電極構造と前記積層間の直接的な電気接触が保証されるという前提が守られる限り、前記基板内に含まれるまたは前記基板上に堆積されるというかたちで、前記基板に含まれてよい。
【0028】
一つの実施形態では、第一電極構造はアノードである。アノード電極を形成するのに用いられる化合物は、正孔注入を容易にするため高仕事関数化合物でよい。アノード材料は、低仕事関数材料(例えば、アルミニウム)から選ばれてもよい。アノード電極は透明電極または反射性電極でよい。透明導電性化合物(例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、スズ二酸化物(SnO)、亜鉛酸化物(ZnO))を用いてアノード電極を形成してよい。アノード電極は、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウムリチウム(Al‐Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム‐インジウム(Mg‐In)、マグネシウム‐銀(Mg‐Ag)、銀(Ag)、金(Au)などを用いて形成してもよい。
【0029】
一つの実施形態では、第一電極はカソードである。カソード電極は、少なくとも一層の実質的に金属のカソード層を含み、当該カソード層は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、第3族遷移金属、およびそれらの混合物から成る群から選択される第一の0価金属を含む。
【0030】
「実質的に金属の」という語は、実質的な元素形態において少なくとも部分的に金属である金属を含むと解されるべきである。「実質的な元素」という語は、電子の状態およびエネルギーの観点から、および含有される金属原子の化学結合の観点から、元素金属または自由金属原子の形態により近い、あるいは金属原子のクラスタの形態により近く、さらに、有機金属化合物または金属と非金属との共有結合を含む他の化合物の金属塩の形態により近く、あるいは金属の配位化合物の形態により近い形態として解されるべきである。合金は、元素金属単体の他に、アトマイズ金属、金属分子、金属クラスタ、金属の実質的な元素形態である他の任意の例を表わすと解されるべきである。
【0031】
他の態様によれば、実質的に金属のカソード層は、金属ハロゲン化物を含まず、かつ/または、金属有機錯体を含まない。
【0032】
一つの実施形態では、前記第一電極構造は透明である。前記第一電極構造は前記基板上に配置されてよく、または前記基板中に含まれてもよい。
【0033】
前記グリッドは、グリッド材料から成る相互に連結した複数の部分から形成される。グリッド材料は固体材料でよい。相互に連結した複数の部分の構造は、多数の開口領域を含む。前記開口領域は、第一電極構造の少なくとも一部の上方に配置されている。前記開口領域は、第一電極構造全体の上方に配置されてよい。前記開口領域の特徴は、グリッド材料をまったく含まないことである。これは、第一電極が、グリッド上に配置された積層と直接接触できるようにするためである。積層はグリッド上に配置され、相互に連結した複数の部分(すなわち、グリッド材料)および開口領域を覆ってよい。
【0034】
グリッドの底辺は、基板と直接接触してよい。グリッドのうち、底辺以外の部分は積層と直接接触してよい。
【0035】
積層は、第一電極およびグリッド材料と直接接触してよい。
【0036】
一つの実施形態では、積層と第一電極との間に中間層が存在してよい。前記中間層は、表面の性質が改変された第一電極の表面領域でよい。
【0037】
他の実施形態では、グリッドと基板との間に中間層が存在してよい。前記中間層は、表面の性質が改変されたグリッドまたは基板の表面領域でよい。
【0038】
他の実施形態では、積層とグリッド材料との間に中間層が存在してよい。前記中間層は、表面の性質が改変されたグリッドの表面領域でよい。
【0039】
積層の個々の層は閉鎖層でよい。
【0040】
一つの実施形態では、積層中の個々の層は非閉鎖層でよい。これは、積層中の個々の層は第一電極の上方のみに配置されてよい、または積層中の個々の層はグリッド材料の上方のみに配置されてよいという意味においてである。
【0041】
他の実施形態では、グリッド材料に表面処理を施して、当該グリッド材料の表面の性質を改変してよい。前記表面処理はプラズマ処理でよい。さらなる実施形態では、積層中の層の少なくとも一層が、グリッドの相互に連結した複数の部分を覆うマスクを用いて、開口領域の中のみに堆積される。
【0042】
一つの実施形態では、グリッドの相互に連結した複数の部分は、US2005247946に記載されているような、第一電極構造を露出させる画素画定層を構成してよい。
【0043】
本発明の積層は、少なくとも一層のレドックスドープ層を含む。レドックスドープ層はエミッタドーパントを含まない。本開示に係るレドックスドープ層は、導電率が1E‐7 S/cm以上である。導電率は、テクトロニクス(米国、ビーバートン)が提供するパラメータ分析器ケースレー4200A‐SCSで測定してよい。レドックスドープ層は、積層の底部または上端に配置してよく、もしくは積層中の一層であってよい。
【0044】
一つの実施形態では、前記少なくとも一層のレドックスドープ層はレドックスドーパントから成る。
【0045】
他の実施形態では、前記少なくとも一層のレドックスドープ層はレドックスドーパントとマトリクス材料を含んでよく、当該マトリクス材料は有機マトリクス材料でよい。
【0046】
前記マトリクス材料は電荷移動材料でよい。
【0047】
さらなる実施形態では、前記少なくとも一層のレドックスドープ層は、注入材料から成る第一層と、電荷移動材料から成る第二層とから成る二重層であり、前記電荷移動材料はレドックスドープされていてもよく、されていなくてもよい。
【0048】
他の実施形態では、多数のレドックスドープ層が互いに直接接触している。
【0049】
他の実施形態では、隣接するレドックスドープ層は、厚みが約0.5から約10nmである中間層によって分けられている。当該中間層は有機でも無機でもよい。
【0050】
さらなる実施形態では、前記中間層は金属、金属錯体、金属塩、またはそれらの混合物から成ってよい。
【0051】
さらなる実施形態では、前記中間層は、有機電荷移動材料から成ってよい。
【0052】
レドックスドープ層に加えて、積層は、有機電子デバイスを形成するのに好適になるため、本技術分野で公知のさらなる層を含んでよい。積層の個々の層の順番、種類、および数は特に定義されず、限定されない。
【0053】
一つの実施形態では、前記積層は、以下から成る群から選択される一層または複数の層を含んでよい。
【0054】
正孔注入層 (HIL)。HILを形成するのに用いてよい化合物の例として、フタロシアニン化合物、例えば、銅フタロシアニン(CuPc)、4,4',4’’-tris (3‐メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m-MTDATA)、TDATA、2T‐NATA、ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルフォン酸(Pani/DBSA)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/カンファースルホン酸(Pani/CSA)、およびポリアニリン)/ポリ(4-スチレンスルホネート(PANI/PSS))が挙げられる。前記HILはp型ドーパントから成る層でよく、またはp型ドーパントでレドックスドープされた正孔移動マトリクス化合物から選ばれてよい。公知のレドックスドープ正孔移動材料の典型例として、テトラフルオロ-テトラシアノキノンジメタン(F4TCNQ)でドープされた銅フタロシアニン(CuPc) 、F4TCNQでドープされた銅フタロシアニン(ZnPc)、F4TCNQでドープされたα -NPD(N,N’-ビス(ナフタレン-1-イル)-N,N'-ビス(フェニル)-ベンジジン、2,2'-(パーフルオロナフタレン-2,6-ジイリデン)ジマロノニトリルでドープされたα-NPD、2,2',2''-(シクロプロパン-1,2,3-トリイリデン)トリス(2-(p-シアノテトラフルオロフェニル)アセトニトリルでドープされたα-NPDが挙げられる。ドーパント濃度は、1から20wt%、または3wt%から10wt%から選択してよい。
正孔移動層(HTL)。当該HTLは、HTLを形成するのに通常用いられる任意の化合物から形成してよい。好適に用いられる化合物が、例えばYasuhiko Shirota and Hiroshi Kageyama, Chem. Rev. 2007, 107, 953-1010に開示されており、これは参照により本願に含まれる。前記HTLを形成するのに用いてよい化合物の例としては、N‐フェニルカルバゾールまたはポリビニルカルバゾールのようなカルバゾール誘導体や、N,N’‐ビス(3‐メチルフェニル)‐N,N’‐ジフェニル‐[1,1‐ビフェニル]‐4,4’‐ジアミン(TPD)またはN,N’‐ジ(ナフタレン‐1‐イル)‐N,N’‐ジフェニルベンジジン(アルファ‐NPD)のような、芳香族縮合環を有するアミン誘導体や、4,4’,4’’‐tris(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)のような、トリフェニルアミンベースの化合物が挙げられる。
【0055】
電子ブロック層(EBL)。典型的には、前記EBLはトリアリールアミンまたはカルバゾール化合物を含む。前記電子ブロック層が高い三重項レベルを有する場合、三重項制御層と記載してもよい。三重項制御層の役割は、燐光性の緑または青の発光層が用いられる場合に、三重項の消光を減らすことである。それにより、OLEDデバイスにおいて、燐光発光層からの発光効率をより高くすることができる。前記三重項制御層は、隣接する発光層中の燐光エミッタの三重項レベルよりも高い三重項レベルを有するトリアリールアミンから選択される。好適な三重項制御層、特にトリアリールアミン化合物が、EP2722908A1に記載されている。
【0056】
発光層(EML)。前記EMLはOLEDで通常用いられるものであり、ホストとエミッタドーパントの組み合わせでよい。エミッタドーパントが、EMLの発光スペクトルを主に制御する。前記ホストの例として、Alq3、4,4'-N,N'- ジカルバゾール-ビフェニル(CBP)、ポリ(n‐ビニルカルバゾール)PVK)、9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン(ADN)、4,4',4''-Tris(カルバゾール-9-イル)-トリフェニルアミン(TCTA)、1,3,5-tris(N-フェニルベンズイミダゾール-2-イル)ベンゼン(TPBI)、3-tert-ブチル-9,10-ジ-2-ナフチルアントラセン(TBADN)、ジスチリルアリーレン(DSA)、ビス(2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾレート)、および亜鉛(Zn(BTZ)2)が挙げられる。前記エミッタドーパントは、燐光エミッタまたは蛍光エミッタでよい。効率がより高いことから、燐光エミッタおよび熱活性化遅延蛍光(TADF)メカニズムによって発光するエミッタを用いてよい。エミッタドーパントは低分子またはポリマーでよい。赤色エミッタドーパントの例としてPtOEP、Ir(piq)およびBtpIr(acac)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの化合物は燐光エミッタであるが、蛍光性赤色エミッタドーパントも用いうる。
【0057】
【化1】
【0058】
燐光性緑色エミッタドーパントの例としては、Ir(ppy)(ppy=フェニルピリジン)、Ir(ppy)(acac)、Ir(mpyp)が挙げられる。それらを以下に示す。
【0059】
【化2】
【0060】
燐光性青色エミッタドーパントの例としては、FIrpic、(Fppy)Ir(tmd)およびIr(dfppz)、テルフルオレンが挙げられ、それらの構造を以下に示す。4,4’‐ビス(4‐ジフェニルアミノスチリルビフェニル(DPAVBi)、2,5,8,11‐テトラ‐tert‐ブチルペリレン(TBPe)は、蛍光性青色エミッタドーパントの例である。
【0061】
【化3】
【0062】
正孔ブロック層(HBL)。HBLを形成するのに通常用いられる任意の化合物を用いてよい。前記HBLを形成するのに用いる化合物の例として、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、およびフェナントロリン誘導体が挙げられる。
【0063】
電子移動層(ETL)。前記ETLは、マトリクス化合物および添加物またはn型ドーパントを含んでよい。前記マトリクス化合物は、ベンゾ[k]フルオランテン、ピレン、アントラセン、フルオレン、スピロ(ビフルオレン)、フェナントレン、ペリレン、トリプチセン、スピロ[フルオレン-9,9'-キサンテン]、コロネン、トリフェニレン、キサンテン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、ジナフトフラン、アクリジン、ベンゾ[c]アクリジン、ジベンゾ[c,h]アクリジン、ジベンゾ[a,j]アクリジン、トリアジン、ピリジン、ピリミジン、カルバゾール、フェニルトリアゾール、ベンゾイミダゾール、フェナントロリン、オキサジアゾール、ベンゾオキサゾール、オキサゾール、キナゾリン、ベン-ゾ[h]キナゾリン、ピリド[3,2-h]キナゾリン、ピリミド[4,5-f]キナゾリン、キノリン、ベンゾ‐キノリン、ピロロ[2,1-a]イソキノリン、ベンゾフルオロ[2,3-d]ピリダジン、チエノピリミジン、ジチエノチオフェン、ベンゾチエノピリミジン、ベンゾチエノピリミジン、ホスフィンオキシド、ホスホール、トリアリールボラン、2-(ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)フェノキシ金属錯体、2-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)フェノキシ金属錯体またはそれらの混合物から成る群から選ばれてよい。前記添加物またはn型ドーパントは、金属、金属錯体、金属ハロゲン化物、グアニジンあるいはホスフィン‐イミン、アクリジンオレンジ塩基(AOB);テトラキス(1,3,4,6,7,8‐ヘキサヒドロ‐2H‐ピリミド[1,2‐a]ピリミジナト)ジタングステン(II)(W(hpp)); 3,6-ビス-(ジメチルアミノ - アクリジン;ビス(エチレン-ジチオ(テトラチアフルバレン(BEDT-TTF);オキソカーボン;疑似オキソカーボン誘導体から成る群から選ばれてよい。
【0064】
電子注入層(EIL)。前記EILは、アルカリ、アルカリ土類、または希土類金属、またはそれらの錯体または塩を含んでよい。前記EILは、ホスフィンオキシド、ジフェニルホスフィンオキシド、ベンズイミダゾール、フェナントロリン、キナゾリン、ベンゾ[h]キナゾリン、ピリド[3,2-h]キナゾリンから成る群から選択される有機マトリクス化合物を含んでよい。前記EILは、添加物またはn型ドーパントを含んでよい。前記添加物またはn型ドーパントは、金属、金属錯体、金属ハロゲン化物、グアニジンあるいはホスフィン‐イミン、アクリジンオレンジ塩基(AOB);テトラキス(1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1、2-a]ピリミジナト)ジタングステン(II)(W2(hpp)4);3,6-ビス-(ジメチルアミノ)-アクリジン;ビス(エチレン-ジチオ)テトラチアフルバレン(BEDT-TTF);オキソカーボン;疑似オキソカーボン誘導体から成る群から選ばれてよい。
電荷発生層(CGL)。前記CGLは、US2012098012AにOLEDで使用するものとして記載されているが、他の電子デバイスに用いてよい。前記CGLは一般に二重層から成り、当該二重層CGLの二つの層は、厚みが約0.5から約10nmの中間層によって分けられてよい。前記中間層の材料は、金属、金属錯体、金属塩、または有機化合物でよい。
【0065】
前記CGLは、p型CGLとn型CGLをつなげるpn接合CGLでありうる。前記p型CGLは、p型ドーパントでドープされた有機ホスト材料または金属から成ってよい。ここで、前記金属は、Al、Cu、Fe、Pb、Zn、Au、Pt、W、In、Mo、Ni、およびTiから成る群から選択される一つ、または二つ以上から成る合金でありうる。また、p型ドーパントおよびホスト材料は、従来の材料でよい。例えば、前記p型ドーパントは、テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(F4-TCNQ)、テトラシアノキノジメタン誘導体、ラジアレン誘導体、ヨウ素、FeCl、FeF、およびSbC1から成る群から選択される一つでありうる。前記ホストは、N,N’‐ジ(ナフタレン‐1‐イル)‐N,N‐ジフェニル‐ベンジジン(NPB)、N,N’‐ジフェニル‐N,N’‐ビス(3‐メチルフェニル)‐1,1‐ビフェニル‐4,4’‐ジアミン(TPD)、およびN,N’,N’‐テトラナフチル‐ベンジジン(TNB)から成る群から選択される一つでありうる。n型電荷発生層は、金属またはn型ドーパントでドープされた有機金属から成りうる。前記金属は、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、La、Ce、Sm、Eu、Tb、Dy、およびYbから成る群から選択される一つでありうる。また、n型ドーパントおよびホスト材料は従来の材料でよい。例えば、n型ドーパントは、アルカリ金属, アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、またはアルカリ土類金属化合物でありうる。より具体的には、n型ドーパントは、Cs、K、Rb、Mg、Na、Ca、Sr、Eu、およびYbから成る群から選ばれてよい。n型ドーパントは、金属錯体, 金属ハロゲン化物, グアニジンあるいはホスフィン‐イミン、アクリジンオレンジ塩基(AOB);テトラキス(1,34,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジナト)ジタングステン(II)(W2(hpp)4);3,6-ビス-(ジメチルアミノ)-アクリジン;ビス(エチレン-ジチオ)テトラチアフルバレン(BEDT‐TTF);オキソカーボン;疑似オキソカーボン誘導体から成る群から選ばれてもよい。ホスト材料は、tris(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム、トリアジン、ヒドロキシキノリン誘導体、ベンザゾール誘導体、およびシロール誘導体から成る群から選ばれてもよい。
【0066】
光吸収層。光吸収層は、太陽電池デバイスで用いられる、単層、またはフラットヘテロ接合二重層、またはバルクヘテロ接合層でよい。光吸収層は、少なくとも一つの吸収材化合物を含む。フラットヘテロ接合二重層およびバルクヘテロ接合層は、電子アクセプタ材料(例えばフラーレンC60)および電子ドナー材料(例えばP3HT)を含んでよい。光吸収層は、AMXまたはAMXの化学量論を有するペロブスカイト構造中で結晶化する材料を含んでよい。AとMはカチオンであり、Xはアニオンである。光吸収層は、光検知器の光電変換層でよい。
【0067】
誘電層。誘電層はトランジスタデバイスで用いてよく、誘電材料を含む。誘電材料とは、導電体としては劣っているが、静電界を効率的に支持する物質である。誘電材料は有機でも無機でもよい。無機誘電材料は酸化物でも窒化物でもよい。無機材料は、SiO、Ta、Al、SiNxから成る群から選ばれてよい。有機誘電材料は、ポリビニルピロリドン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリパーフルオロアルケニルビニルエーテル、ポリクロロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ-オキシメチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルフェノール、ポリスルホン、ポリカーボネート、またはリソグラフィで用いられる任意の種類のフォトレジストから成る群から選ばれてよい。
半導体層。半導体層用のP型半導体は、ペンタセン、ジナフトチエノチオフェン(DNTT)、さらに、DNTT誘導体(例えば、C10-DNTT(一般にはCx‐DNTT))、金属フタロシアニン(ZnPc、CuPc)、ペリレン(例えば、ジインデノペリレン(DIP)、テトラプロピル‐テトラフェニル‐ジインデノペリレン(P4‐PH4‐DIP))でよい。半導体層用のN型半導体は、C60、C70、ZnPc、CuPc、F16CuPc、F4CuPc、ジインデノペリレン(DIP)でよい。また、トリ-フェニル-ジアミン(TPD)、3‐(N‐マレイミドプロピオニル)-ビオシチン(MPB)、およびバソフェナントロリン(BPHEN)、2,4,7,9-テトラフェニル-1,10-フェナントロリン(TPHEN)、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸3,4,9,10-二無水物(PTCDA)、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)も用いてよい。さらに、半導体材料は、ポリマー、例えば、ポリ(3‐ヘキシルチオフェン‐2,5-ジイル)(P3HT)、DIPs‐ペンタセン、ポリ[2,5‐ビス(3‐アルキルチオフェン‐2‐イル)チエノ(3,2-b)チオフェン](PBTTT)のようなp型材料、またはポリ{[N,N9-ビス(2-オクチルドデシル)-ナフタレン-1,4,5,8-ビス(ジカルボキシミド)-2,6-ジイル]-alt-5,59-(2,29-ビチオフェン)}(P(NDI2OD-T2)のようなn型材料でよい。
【0068】
一つの実施形態では、前記積層の個々の層は、真空蒸着、スピンコーティング、プリンティング、キャスティング、スロットダイコーティング、ラングミュア‐ブロジェット(LB)蒸着などにより、次々に堆積される。前記積層の個々の層が真空蒸着によって形成される場合、蒸着条件は、個々の層を形成するのに用いられる化合物や、個々の層の望ましい構造や熱的性質に応じて異なってよい。しかしながら、一般に、真空蒸着の条件は、100℃から500℃の蒸着温度、10-8から10-3Torr(1Torは133.322Paに等しい)の圧力、および0.1から10nm/秒の蒸着速度を含んでよい。
【0069】
一つの実施形態では、前記積層はOLEDに含まれる。
【0070】
他の実施形態では、前記積層はOLEDに含まれ、前記CGLは少なくとも一層のレドックスドープ層を含む。
【0071】
他の実施形態では、前記積層はOLEDに含まれ、前記少なくとも一層のレドックスドープ層はHILである。
【0072】
他の実施形態では、前記積層はOLEDに含まれ、前記少なくとも一層のレドックスドープ層はEILである。
【0073】
他の実施形態では、前記積層は有機太陽電池に含まれる。
【0074】
他の実施形態では、前記積層は有機電界効果トランジスタに含まれる。
【0075】
他の実施形態では、 前記積層は光検知器に含まれる。
【0076】
明確に断りのない限り、本発明の層構造および本発明の有機電子デバイスの方向は以下の通りである。本開示に関して、前記基板は層構造の底部を構成する。前記積層の底層(または、言い換えれば、前記積層の第一層)は、前記積層のうち、前記基板にもっとも近く配置されている層である(すなわち、前記グリッド上にある)。同様に、前記積層の最上層(または、言い換えれば、前記積層の最終層)は、前記基板からもっとも離れている層である。層構造の最上端は、当該層構造の最上面層のうち、前記基板からもっとも離れている表面によって形成される。
【0077】
本開示によれば、吸光光度法によって測定される、相互に連結した複数の部分(すなわち、グリッド材料)の光学密度は、複数の開口領域の光学密度より高い。グリッド材料の吸光度は、複数の開口領域の吸光度より大幅に高くてよく、特に二倍高くてよい。相互に連結した複数の部分の光学密度は、複数の開口領域の光学密度より十倍高くてよい。光学密度は、シマヅサイエンティフィックインスツルメンツ(日本、東京)が提供する分光光度計UV‐2450 PCで測定してよい。
【0078】
本発明の方法に従えば、光パルスの層構造への照射は、層構造の最上端から層構造の底部へ行ってよい。すなわち、前記積層を通してグリッド/第一電極構造へと行ってよい。しかし、本発明の照射はこの方向に限定されない。例えば、透明基板が用いられる場合(例えば、底部発光構造を作成するために)、照射は層構造の底部から層構造の最上端へと行ってもよい。すなわち、前記基板を通してグリッドへと行ってよい。同様に、グリッドが光パルスに対して本当に露出するならば、照射は任意の角度または方向から行ってよい。
【0079】
さらなる実施形態では, 前記積層は発光層をさらに含む。当該発光層はレドックスドーパントを含まない。また、当該発光層は注入材料を含まない。
さらなる実施形態では, 前記グリッド材料はフォトレジストを含む。当該フォトレジストはポジティブフォトレジストでもよく、あるいはネガティブフォトレジストでもよい。ネガティブフォトレジストは、当該フォトレジストのうち露光している部分がフォトレジスト現像剤に対して不溶性になる種類のフォトレジストである。フォトレジストのうち露光していない部分はフォトレジスト現像剤によって溶かされる。ポジティブレジストは、露光している部分がフォトレジスト現像剤に対して溶性になる種類のフォトレジストである。フォトレジストのうち露光していない部分はフォトレジスト現像剤に対して不溶性のままである。
【0080】
一つの実施形態では、ネガティブフォトレジストはポリイミド化合物を含む。ポリイミド化合物としては、例えば、旭硝子が提供しているものや、メルク社(ドイツ、ダルムシュタット)が提供しているものや、マイクロケム社(米国、ウェストボロー)が提供しているSU‐8が挙げられる。
一つの実施形態では、ポジティブフォトレジストは、フェノール樹脂およびジアゾナフトキノン増感剤またはポリメタクリル酸メチル(PMMA)化合物(例えば、マイクロケミカルズ社(ドイツ、ウルム)またはブリューワーサイエンス社(米国、ローラ)またはJSRマイクロ社(米国、サニーベール)によって提供されるもの)を含む。
【0081】
さらなる実施形態では、前記層構造は、前記積層の最上端の上に配置された第二電極をさらに含む。
【0082】
一つの実施形態では、前記第二電極はカソードである。前記カソード電極は、第一の0価金属を含む少なくとも一層の実質的に金属のカソード層を含む。当該0価金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、第3族遷移金属およびそれらの混合物から成る群から選択される。
【0083】
「実質的に金属の」という語は、実質的な元素形態において少なくとも部分的に金属である金属を含むと解されるべきである。「実質的な元素」という語は、電子の状態およびエネルギーの観点から、および含有される金属原子の化学結合の観点から、元素金属または自由金属原子の形態により近い、あるいは金属原子のクラスタの形態により近く、さらに、有機金属化合物または金属と非金属との共有結合を含む他の化合物の金属塩の形態により近く、あるいは金属の配位化合物の形態により近い形態として解されるべきである。合金は、元素金属単体の他に、アトマイズ金属、金属分子、金属クラスタ、金属の実質的な元素形態である他の任意の例を表わすと解されるべきである。
【0084】
他の態様によれば、実質的に金属のカソード層は、金属ハロゲン化物を含まず、かつ/または、金属有機錯体を含まない。
【0085】
他の実施形態では、第二電極構造はアノードである。アノード電極を形成するのに用いられる化合物は、正孔注入を容易にするため高仕事関数化合物でよい。アノード材料は、低仕事関数材料(例えば、アルミニウム)から選ばれてもよい。アノード電極は透明電極または反射電極でよい。透明導電性化合物(例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、スズ二酸化物(SnO)、亜鉛酸化物(ZnO)を用いてアノード電極を形成してよい。アノード電極は、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウムリチウム(Al-Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム‐インジウム(Mg‐In)、マグネシウム‐銀(Mg‐Ag)、銀(Ag)、金(Au)などを用いて形成してもよい。
【0086】
一つの実施形態では、第二電極構造は透明である。さらなる実施形態では、前記有機電子デバイスはカプセル封入をさらに含んでよい。
さらなる実施形態では、層構造は第二電極の最上端の上に配置されたバリア層をさらに含む。当該バリア層は透明でよい。透明なバリア層および透明な第二電極を用いることにより、本発明の方法に係る照射を、有機電子デバイスの作成後に行うことができる。
【0087】
一つの実施形態では 、前記バリア層はカプセル封入を構成してよい。
【0088】
さらなる実施形態では、照射はフラッシュランプを用いて行われる。前記フラッシュランプはキセノンまたはLED光源または一回の照射パルスで1cmより大きい領域を照射するのに適したレーザー光源でよい。前記フラッシュランプは、一回の照射パルスで1cm未満の領域を照射する走査集束レーザーではない。
【0089】
前記フラッシュランプは、ヘレウス・ノーブルライト社(英国、ケンブリッジ)から販売されている流体冷却型キセノンフラッシュランプ部品P3775でよい。
【0090】
本開示に従って、異なる方法の照射を行って前記層構造を光パルスに露光してよい。一般に、照射には四つの異なる方法がある。
【0091】
i)グリッド上にレドックスドープ層を堆積した直後、または、前記積層のうち、レドックスドープ層を堆積する前に形成した部分の上にレドックスドープ層を堆積した直後に行う。
【0092】
ii)特に、非透明第二電極の場合、当該第二電極の堆積の前に行う。
【0093】
iii)第二電極の堆積後に行う(透明電極の場合)。または
iv)最終的なカプセル封入されたデバイスに対して行う(当該カプセル封入が透明である場合)。
【0094】
一つの実施形態では、上記方法の解像度を増すため、層構造への照射を、第一電極領域を覆うシャドー・マスクを通して行ってよい。
【0095】
一つの実施形態では、層構造を含む基板は、照射の間、照射源の上方または下方に配置される。
【0096】
他の実施形態では、層構造を含む基板は、照射の間、照射源の上方または下方をスライドまたは移動してよい。この作業態様は、面積の大きい基板の場合に有用かもしれない。
【0097】
さらなる実施形態では、前記積層の厚みの合計は、10nmより大きく、5000nm未満でよい。前記積層の厚みの合計は、30nmより大きく300nm未満でよい。前記グリッドの厚みは、前記少なくとも一層のレドックスドープ層の厚みより大きくてよい。前記グリッドの厚みは、500nmより大きく10000nm未満でよい。
【0098】
基板上の個々の層の厚みは、ブルカー社(米国、マサチューセッツ州、ビレリカ)が提供する表面形状測定装置である触針式プロファイラーDektakXTで測定してよい。
【0099】
個々の層の厚みは、電子顕微鏡を用いて、前記積層の断面で測定してよい。走査型または透過型電子顕微鏡を用いてよい。
【0100】
前記積層の断面は、マイクロ電子デバイスに一般的に用いられる試料調製、例えば、US20130110421にある、集束イオンビーム(FIB)またはウルトラミクロトーム調製によって得てよい。
【0101】
真空蒸着では、層の厚みは、蒸着プロセスのあいだ、水晶マイクロバランス(QCM)センサを用いてモニタしてよい。
【0102】
さらなる実施形態では、(i)前記少なくとも一層のレドックスドープ層はレドックスドーパントから成り、または(ii)前記少なくとも一層のレドックスドープ層はレドックスドーパントおよびマトリクス材料を含み、当該マトリクス材料は電荷移動材料であり、または(iii)前記少なくとも一層のレドックスドープ層は、注入材料から成る第一層と電荷移動材料から成る第二層とから成る二重層であり、前記電荷移動材料はレドックスドープされていてよく、されていなくてもよい。
【0103】
本開示の文脈では、「レドックスドープ」という語は、層の導電率を増すドーパントを指す。本開示のp型ドーパントおよびn型ドーパントは、本質的に非発光ドーパントである。「本質的に非発光」という語は、デバイスからの発光スペクトルに対する非発光ドーパントの貢献が、発光スペクトルに対して10%未満であることを意味し、これは5%未満でもよい。
【0104】
この点に関して、以下の通りでよい。
【0105】
前記レドックスドーパントは、
1.p型ドーパントであって、当該p型ドーパントは、
1.1.分子量が約350から約1700である有機または有機金属分子ドーパントであって、当該有機または有機金属分子ドーパントは、ジマロノニトリル化合物、芳香族/複素環式芳香族ニトリル化合物、フラーレン誘導体、または式1のラジアレン誘導体から選ばれてよく、式1においてAr1-3は同じであるか異なり、それぞれ独立してアリールまたはヘテロアリールから選択される、有機または有機金属分子ドーパント、
【0106】
【化4】
【0107】
または、
1.2.MoOおよびVから選ばれてよい遷移金属酸化物、または、
1.3.ルイス酸であって、(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド化合物であってよく、元素周期系の第1から第12族の金属のビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド化合物から選ばれてよく、前記第1から第12族の金属は、Li、Mg、Ba、Sc、Mn、Cu、Agまたはそれらの混合物から選ばれてよい、ルイス酸
であり、
または、
2.n型ドーパントであって、当該n型ドーパントは、
2.1.分子量が約300から約1500である有機または有機金属分子ドーパント、または
2.2.金属ドーパントであって、当該金属ドーパントは、分子量が約25から約500の金属ハロゲン化物、分子量が約150から約1500の金属錯体、および0価金属から成る群から選ばれ、当該0価金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および希土類金属から成る群から選択される。
【0108】
一つの実施形態では、前記レドックスドーパントは式2の化合物である。
【0109】
【化5】
【0110】
「分子量」または「分子質量」という語は、任意の分子の質量として定義される物理的特性である。分子量のSI基本単位はkg/molである。歴史的な事情により、分子量はほとんど常にg/molで表される。本開示でも同様である。分子量は標準原子量から計算してよい。それは、ある化合物におけるすべての標準原子量の合計である。標準元素原子量は、元素周期表で与えられる。実験的に、分子量は質量分析法によって、蒸気密度、凝固点降下、または沸点上昇から測定してよい。
【0111】
他の実施形態では、前記注入材料は、
1.p型材料であって、当該p型材料は、
1.1.分子量が約350から約1700である有機または有機金属分子ドーパントであって、当該有機または有機金属分子ドーパントは、ジマロノニトリル化合物、芳香族/複素環式芳香族ニトリル化合物、フラーレン誘導体、または式1のラジアレン誘導体から選ばれてよく、式1においてAr1-3は同じであるか異なり、それぞれ独立してアリールまたはヘテロアリールから選択される、有機または有機金属分子ドーパント、
【0112】
【化6】
【0113】
または
1.2.MoOおよびVから選ばれてよい遷移金属酸化物、または、
1.3.ルイス酸であって、(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド化合物であってよく、元素周期系の第1から第12族の金属のビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド化合物から選ばれてよく、前記第1から第12族の金属は、Li、Mg、Ba、Sc、Mn、Cu、Agまたはそれらの混合物から選ばれてよい、ルイス酸、または
1.4.MgFであってよい金属ハロゲン化物
であり、
または、
2.n型材料であって、当該n型材料は、
2.1.分子量が約300から約1500である有機または有機金属分子ドーパント、または
2.2.金属ドーパントであって、当該金属ドーパントは、分子量が約25から約500の金属ハロゲン化物、分子量が約150から約1500の金属錯体、および0価金属から成る群から選ばれ、当該0価金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および希土類金属から成る群から選択される。
【0114】
一つの実施形態では 前記注入材料は式2の化合物である。
【0115】
【化7】
【0116】
他の実施形態では、前記注入材料は自己組織化単層膜(SAM)を形成する。
【0117】
さらなる実施形態では、電極構造は、前記基板上の多数の画素を構成し、前記多数の画素の画素ギャップは、50μm未満である。前記画素ギャップは1μmより大きく30μm未満でよい。画素ピッチは150μm未満である。前記画素ピッチは2μmより大きく125μm未満でよい。
【0118】
この実施形態は、さまざまな有機発光ダイオードを含む有機電子デバイスの作製方法について特に言及する。前記有機電子デバイスに含まれる前記有機発光ダイオードのそれぞれは、この場合、前記第一電極構造の一部の上方に作成されてよい。この実施形態では、画素は、グリッドの複数の開口領域が電極構造の上方に配置され、その後、前記積層がその上に配置されるというやり方で、前記第一電極構造によって構成される。それから、少なくとも一つの第二電極構造を加えて電気接続を可能にすることにより、画素が完成する。
【0119】
前記第二電極は、前記積層と直接接触するよう配置してよい。前記第二電極と前記積層のあいだに中間層があってよい。
【0120】
「画素ピッチ」は、一般に、「ドットピッチ」とも称される。それは、マイクロ電子機器中の画素またはデバイス素子の規則的アレイにおける、画素同士、またはサブ画素(例えば、表示画素を構成する赤、緑、青のサブ画素)同士、または最小の機能デバイス素子としての「ドット」同士の直接距離を、一つの画素、サブ画素、またはデバイス素子の中心から、隣接する画素またはデバイス素子の中心まで測ったものである。例として、イメージセンサにおけるセンサ素子またはAMOLEDディスプレイにおけるOLED画素が挙げられる。「画素ギャップ」は「ドットギャップ」とも称せる。それは、マイクロ電子機器中の画素またはデバイス素子の規則的アレイにおける、画素同士(あるいは、最小の機能デバイス素子としての「ドット」同士)の直接距離を、一つの画素またはデバイス素子の端から、隣接する画素またはデバイス素子のうちもっとも近い端まで測ったものである。さらに、上記目的は、本発明の方法によって得られる有機電子デバイスによって達成される。本開示の有機電子デバイスは、上記第一電極構造の異なる部分間の、非電極部を通してのクロストークが減るという点において、従来技術で公知のデバイスと異なる。
【0121】
さらなる実施形態では、前記有機電子デバイスは、OLED、光検知器、トランジスタ、または太陽電池である。
最後に、上記目的は、本発明の有機電子デバイスを有するデバイスによって達成される。
【0122】
この点に関して、前記デバイスは表示デバイスであってよい。
【0123】
さらなる実施形態では, 前記第一電極構造が前記表示デバイスの複数の画素を構成する。
【0124】
本明細書において、数値はすべて、明示の有無を問わず、「約」という語が前に付いていると見なされる。本明細書において、「約」という語は、数量において起こり得る変動を意味する。「約」という語による修飾の有無を問わず、本願請求項は前記量に対する均等物を含む。
【0125】
本明細書および添付の請求項において、単数形「a」、「an」、「the」は、明確な断りがない限り、複数の対象を含むことに留意されたい。
【0126】
「含まない」という語を用いる場合においては、不純物について考慮しない。不純物は、本開示によって達成される目的に関していかなる技術的効果ももたらさない。
【実施例
【0127】
以下に、本発明の方法を行うための材料および条件の具体例を、本願添付の図面を参照しながら参照することにより、本開示を詳述する。図面には以下のことが示されている。
【0128】
図1:層構造を有する基板を、流体冷却型キセノンフラッシュランプの下方に置いた概略図である。
【0129】
図2:クロストーク電流を測定するためのテストレイアウトを示す。
【0130】
図3:層構造の、a)照射前、b)照射中、c)照射後の概略断面図である。
【0131】
図4:グリッドを有するレドックスドープ層と有さないレドックスドープ層の抵抗比を示す。
【0132】
図5:画素化したOLEDレイアウトにおける基板上のグリッドの上面図(広域および詳細)である。
【0133】
図6:照射前および照射後におけるクロストーク電流比を示す。
【0134】
図7:グリッドの光学密度対第一電極の光学密度を示す。
【0135】
表1:40μmのチャネル用のテストレイアウトにおける5Vでのクロストーク電流
図1は、25mmの距離を置いた照射の間、層構造10をパルス照射11の源の下方に配置した概略図を示す。層構造10は、サンプルホルダー12に取り付けてよい。本開示に係る方法は、t≦2msである単一可視光フラッシュに基づく光パルスを用いる。したがって、基板にはわずかな熱しか伝わらず、温度上昇は局所的なものに留まり、熱放散はなく、非照射領域への熱応力は小さい。
【0136】
図2は、第一画素21の第一電極と第二画素22の第一電極間のクロストーク電流を測定するのに用いるテストレイアウトの概略図を示す。テストレイアウトにおける画素ギャップは、画素21の第一電極と画素22の第一電極間の直接最小距離に対応する。このテストレイアウトでは、この画素ギャップは40μmであり、例えばAMOLEDディスプレイの製造で用いられる実際の画素ギャップに極めて近い。用いた電圧は5Vであった。電流は、テクトロニクス社(米国、ビーバートン)が提供するパラメータアナライザであるケースレーS4200で測定した。ロボットを用いて電極同士を接触させた。第一電極の上に、1.5μmの厚さのポリイミドグリッド23を、フォトリソグラフィプロセスを用いて堆積させた。レドックスドープ層24は正孔注入層(HIL)であった。前記HILは、化合物
【0137】
【化8】
【0138】
を電荷移動材料として、また、
【0139】
【化9】
【0140】
をレドックスドーパントとして、92:8の重量比で含んだ。前記材料は蒸着によってともに堆積された。レドックスドープ層の厚みは10nmであった。
【0141】
図3は、層構造の、a)照射前、b)照射中、c)照射後の概略断面図を示す。前記層構造は、基板31、グリッド材料32、積層33、第一画素34の第一電極、および第二画素35の第一電極を含む。照射前(図3a)、前記積層のレドックスドープ層は、前記第一電極の領域の上方および前記グリッド材料の上方において、約4E‐5 S/cmという同じ導電率を有する。これは、以下のようにして計算される。
【0142】
【数1】
【0143】
前記層構造の照射後(図3c)、驚くべきことに、前記積層33のレドックスドープ層は、第一電極の領域(積層領域37)の上方の導電率は変わらないが、前記グリッド材料上方の領域(積層領域36)では、クロストーク電流は大幅に減少することがわかった。照射後、クロストーク電流は非常に小さかった(<100pA)。したがって、導電率は意味のあるかたちでは計算できなかった。測定設定(配線リーク電流、ノイズ)の影響が支配的であった。
【0144】
この結果、第一画素34の第一電極と第二画素35の第一電極間のレドックスドープ層を流れうるクロストーク電流も、大幅に減少する。この効果の根本原因は、おそらく、グリッド材料と、前記積層33のレドックスドープ層の導電率を消滅させる効果を有する照射光との、相互作用によるものである。グリッドの厚みと前記積層の厚みとが大きなアスペクト比を成すため、前記効果は、積層領域37中の前記積層の導電率を大幅に減少させることはない。
【0145】
図4は、テストレイアウトにおける、グリッドを有するレドックスドープ層と有さないレドックスドープ層の抵抗比を、異なる照射エネルギー密度それぞれについて示す。グリッドが用いられる場合、レドックスドープ層の抵抗値は、照射エネルギー密度に対して指数関数的に増大する。一方、グリッドが用いられない場合、レドックスドープ層の抵抗値は、照射後も変わらない。
【0146】
図5は、画素化したOLEDレイアウトにおけるITO基板上にある、グリッド材料51から作られ複数の開口領域52を有するグリッドの例示的上面図(広域および詳細)を示す。画素ピッチは125μmであり、画素ギャップは30μmである。
【0147】
【表1】
【0148】
表1は、40μmのチャネル(この場合、画素ピッチに対応)用のテストレイアウト上で5Vを印加したとき測定したクロストーク電流を示す。参照例は照射されなかった。本発明の実施例1は、パルスエネルギー密度4J/mで照射された。本発明の実施例2は、パルスエネルギー密度4.5J/mで照射された。本発明の実施例3は、パルスエネルギー密度5J/mで照射された。クロストーク電流は、パルスエネルギー密度の上昇とともに大幅に減少し、実施例3では、電流の減少が1000倍を超えている。実施例2ですでに、クロストーク電流は<1nAに減少している。
【0149】
図6は、表1の数値をグラフ形式で示す。
【0150】
図7は、グリッド材料の光学密度と第一電極の光学密度を示す。本開示の意味では、望ましい技術的効果をもたらすためには、グリッド材料の光学密度が第一電極の光学密度より高いことが重要である。参照例および実施例1~3における実験結果は、キセノンフラッシュランプを用いて得られた。しかし、ミリ秒の範囲で定義した短パルスを生成できる適切な光スペクトルを有する高光量光源(例えば、LED)ならいずれも、本開示の意味で適切である。照射源の種類および波長は特に限定または定義しない。重要なのは、広範な使用波長範囲にわたって、グリッド材料の光学密度が第一電極の光学密度より高いことである。
【0151】
上記記載、請求項、および添付の図面で開示された諸特徴は、別々でも任意の組み合わせでも、開示された方法を多様なかたちで実現する材料としてよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7