(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】戸挟み検知装置及び戸挟み検知システム
(51)【国際特許分類】
E05F 15/42 20150101AFI20220426BHJP
E05F 15/655 20150101ALI20220426BHJP
E05F 15/611 20150101ALI20220426BHJP
【FI】
E05F15/42
E05F15/655
E05F15/611
(21)【出願番号】P 2017243152
(22)【出願日】2017-12-19
【審査請求日】2020-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】石田 拓司
(72)【発明者】
【氏名】中谷 興司
(72)【発明者】
【氏名】坂本 圭司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】上田 晋司
(72)【発明者】
【氏名】朴木 豊
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-125340(JP,A)
【文献】特開2008-106476(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0070820(US,A1)
【文献】米国特許第04301621(US,A)
【文献】独国特許出願公開第02917797(DE,A1)
【文献】独国実用新案第202008004592(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00 - 15/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ドアの戸先に設けられた回転体の回転を検知するセンサからの出力に基づいて、前記車両ドアに戸挟み状態が発生しているか否かを、所定期間中に判断する判断部を備えた戸挟み検知装置であって、
前記所定期間外に、前記出力により前記センサが動作しているか否かを確認する動作確認部を備え、
前記所定期間は、前記車両ドアの全閉中の期間であり、
前記所定期間外は、
前記車両ドアが開閉動作しているときである
戸挟み検知装置。
【請求項2】
車両ドアの戸先に設けられた回転体の回転を検知するセンサからの出力に基づいて、前記車両ドアに戸挟み状態が発生しているか否かを、所定期間中に判断する判断部を備えた戸挟み検知装置であって、
前記所定期間外に、前記出力により前記センサが動作しているか否かを確認する動作確認部と、
前記回転体を強制的に回転させる回転作用部
と、を備え、
前記所定期間外は、前記回転作用部により前記回転体が回転しているときである
戸挟み検知装置。
【請求項3】
前記回転作用部は、前記回転体の表面であって回転体に回転力を生じさせる位置に、力を作用させるものである
請求項2に記載の戸挟み検知装置。
【請求項4】
さらに、
前記車両ドアの戸先側端面に設けられる回転体と、前記回転体の回転を検出する回転検出部とを有する前記センサを備える
請求項1~3のいずれか一項に記載の戸挟み検知装置。
【請求項5】
車両ドアの戸先に設けられた回転体の回転を検知するセンサからの出力に基づいて、前記車両ドアに戸挟み状態が発生しているか否かを、所定期間中に判断する判断部を備えた戸挟み検知装置であって、
前記所定期間外に、前記出力により前記センサが動作しているか否かを確認する動作確認部と、
前記車両ドアの戸先側端面に設けられる回転体と、前記回転体の回転を検出する回転検出部とを有する前記センサと、を備え、
前記車両ドアに当接する封止部において前記回転体の回転軸方向に沿う方向における中央部は、前記中央部以外の部分よりも変形し易い
戸挟み検知装置。
【請求項6】
車両ドアの戸先に設けられた回転体の回転を検知するセンサからの出力に基づいて、前記車両ドアに戸挟み状態が発生しているか否かを、所定期間中に判断する判断部を備えた戸挟み検知装置であって、
前記所定期間外に、前記出力により前記センサが動作しているか否かを確認する動作確認部と、
前記車両ドアの戸先側端面に設けられる回転体と、前記回転体の回転を検出する回転検出部とを有する前記センサと、を備え、
前記回転体は、複数の分割回転体の連結体であり、
前記複数の分割回転体は、回転軸に垂直な断面で多角形状であって前記回転軸と平行で回転軸を含む断面で先端に向かって径が小さくなっている形状のジョイント部を介して連結される
戸挟み検知装置。
【請求項7】
車両ドアの戸先に設けられた回転体の回転を検知するセンサからの出力に基づいて、前記車両ドアに戸挟み状態が発生しているか否かを、所定期間中に判断する判断部を備えた戸挟み検知装置であって、
前記所定期間外に前記回転体が受動的に揺れているかを前記センサによって検出することにより、前記センサが動作しているか否かを確認する動作確認部を備える
戸挟み検知装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の戸挟み検知装置と、前記車両ドアを制御するドア制御装置とを備える、戸挟み検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の戸挟み検知装置及び戸挟み検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
戸挟み検知装置として、特許文献1に記載の技術が知られている。同文献に記載の戸挟み検知装置は、戸先に回転体を備えている。戸挟み検知装置は、回転体の回転に基づいてドアに物が挟まれたか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の戸挟み検知装置の場合、戸挟み検知装置の動作不良に起因して誤判定を出力し続ける虞がある。誤判定の出力を抑制できる戸挟み検知装置、及び戸挟み検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記課題を解決する戸挟み検知装置は、車両ドアの戸先に設けられた回転体の回転を検知するセンサからの出力に基づいて、前記車両ドアに戸挟み状態が発生しているか否かを、所定期間中に判断する判断部を備えた戸挟み検知装置であって、前記所定期間外に、前記出力により前記センサが動作しているか否かを確認する動作確認部を備える。
【0006】
センサの動作を確認しない場合、センサに動作不良が生じているとき、戸挟みについて誤った判定結果を出力し続ける。この点、上記構成によれば、上記期間において動作確認部でセンサの動作を判定し、センサの動作を確認するため、戸挟み検知装置が、センサの動作不良に起因して戸挟みの誤判定を出力し続けるような事態の発生を抑制できる。
【0007】
(2)上記戸挟み検知装置において、前記所定期間外は、車両ドアが開閉動作しているときである。
車両ドアの開閉動作するとき回転体が揺れるため、回転体の揺れに基づく信号がセンサから出力される。上記構成によれば、回転体の揺れに基づく信号を検出することにより、センサの動作を確認する。本構成では、センサの動作を確認するための手段として、回転体を回転させるための部品を用いていない。このように、部品点数を増やすことなく、センサの動作確認を行うことができる。
【0008】
(3)上記戸挟み検知装置において、前記回転体を強制的に回転させる回転作用部を備え、前記所定期間外は、前記回転作用部により前記回転体が回転しているときである。
この構成によれば、回転体を回転作用部により回転させて、センサの動作を確認するため、戸挟み検出が可能か否かを確実に確認できる。
【0009】
(4)上記戸挟み検知装置において、前記回転作用部は、前記回転体の表面であって回転体に回転力を生じさせる位置に、力を作用させるものである。
この構成によれば、回転体の表面であって回転体に回転力を生じさせる位置に力を作用させるため、簡単な構成で回転体を強制的に回転させることができる。例えば、車両ドアの閉鎖が完了する直前で、回転体と回転作用部との接触過程における最初に、センサの回転体の表面で上記交線からずれた部分に封止部が接触する構成とすることで、車両ドアの全閉の直前で、回転体が円滑に回転する。このようにして、回転体を封止部により回転させることができるため、回転体の動作を確認できる。また、封止部が、回転体に接触する構造であるため、部品点数を増やすことなくセンサの動作確認を行うことができる。
【0010】
(5)上記戸挟み検知装置において、さらに、車両ドアの戸先側端面に設けられる回転体と、前記回転体の回転を検出する回転検出部とを有する前記センサを備える。この構成によれば、センサを備える戸挟み検知装置を提供できる。
【0011】
(6)上記戸挟み検知装置において、前記車両ドアに当接する封止部において前記回転体の回転軸方向に沿う方向における中央部は、前記中央部以外の部分よりも変形し易い。
この構成によれば、人体の一部が車両ドアに挟まるときの痛みを軽減できる。
【0012】
(7)上記戸挟み検知装置において、前記回転体は、複数の分割回転体の連結体であり、前記複数の分割回転体は、回転軸に垂直な断面で多角形状であって前記回転軸と平行で回転軸を含む断面で先端に向かって径が小さくなっている形状のジョイント部を介して連結される。この構成によれば、湾曲する車両ドアに、回転体を有するセンサを取り付けることができる。
【0013】
(8)上記課題を解決する戸挟み検知システムは、上記いずれかの戸挟み検知装置と、前記車両ドアを制御するドア制御装置とを備える。
センサの動作を確認しない場合、センサに動作不良が生じているとき、戸挟みについて誤った判定結果を出力し続ける。この点、上記構成の戸挟み検知システムによれば、動作確認部でセンサの動作を判定し、センサの動作を確認するため、戸挟み検知システムが、センサの動作不良に起因して戸挟みの誤判定を出力し続けるような事態の発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
上記戸挟み検知装置及び戸挟み検知システムによれば、車両運行の支障の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図9】回転体について、支持部材で支持されている部分の断面図。
【
図11】支持部材について、
図10のXI-XI線に沿う断面図。
【
図28】(a)は、接触時における、車両ドアの第6変形例の断面図、(b)は、全閉時における、車両ドアの第6変形例の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1~
図21を参照して、戸挟み検知システム及び戸挟み検知装置について説明する。
本実施形態において、各方向は、戸挟み検知装置10の戸挟みセンサ11(センサ)が車両ドア3に搭載されたときの回転体12(
図4参照)の姿勢を基準として定義される。「上」は、回転体12の基準姿勢において、鉛直方向における上を示し、「下」は、鉛直方向における下を示す。また、基準姿勢をとる回転体12において、車両幅方向DXとは、車両1の前後方向DY及び上下方向DZに交差する方向を示す。
【0017】
戸挟み検知装置10及び戸挟み検知システム9は、鉄道車両の車両ドアに適用できる。車両ドアは、片開きドア、両開きドア、折り畳み式のドア、プラグアウトドアのいずれにも適用できる。本実施形態では、戸挟み検知装置10を両開きドアに適用した例を示す。
【0018】
図1及び
図2に示されるように、両開きの車両ドアは、車両1の乗降口2を開閉する2つの車両ドア3を備える。2つの車両ドア3は、他方に対して反対方向に移動する。全閉時において、2つの車両ドア3の戸先が互いに接触する。車両ドア3が全閉したことを検出するドアクローズセンサ52は、車両ドア3の周囲に設けられている。また、全閉で車両ドア3をロックするロック機構(図示省略)が後述のドア駆動装置51に設けられている。
【0019】
図3に示されるように、本実施形態に示される車両ドア3は湾曲する。具体的には、車両ドア3は、上下方向DZに平坦に延びる平坦部3cと、平坦部3cから湾曲するように下方に延びる湾曲部3dと、湾曲部3dから下方に斜めに延びる傾斜部3eとを有する。湾曲部3dは、下方に行くに従って車両幅方向DXの内方に向かうように曲がる。
【0020】
戸挟み検知システム9は、少なくとも、戸挟み検知装置10と、ドア制御装置50とを備える。
ドア制御装置50は、車両ドア3を開閉するドア駆動装置51を制御する。ドア制御装置50は、車両1の制御装置4から出力される信号、及び戸挟み検知装置10から出力される信号に基づいて、ドア駆動装置51を制御する。
【0021】
車両1に搭載される制御装置4は、例えば、車両情報管理装置である。車両情報管理装置は、ドア開信号、ドア閉信号、車両の乗車率を示す信号、車両1の速度を示す信号、等、様々な信号を管理する。また、後述するように、車両情報管理装置は、連絡信号、緊急信号、警告、車両1外側のランプを点灯または点滅させたりするための情報、車両に流すアナウンス情報、戸挟みセンサ11が動作不良である情報、車両1の発車後において駅のホームの端から最後尾の車両1が離れたことを示す信号(以下、「ホーム出信号」)、等を管理する。
【0022】
例えば、ドア制御装置50は、車両1の制御装置4が出すドア開信号に基づいて、車両ドア3を開く解放信号をドア駆動装置51に出力する。
ドア制御装置50は、車両1の制御装置4が出すドア閉信号に基づいて、ドアを閉じる信号をドア駆動装置51に出力する。ドア制御装置50は、車両ドア3の全閉に基づいてドアクローズセンサ52が出力するクローズ信号を受信する。ドア制御装置50は、車両ドア3のロック完了に基づいてドアロックセンサ53が出力するロック信号を受信する。
【0023】
また、ドア制御装置50は、車両1の制御装置4から各種信号を受信する。例えば、車両1の制御装置4から出力される、乗車率を示す信号、車両1の速度を示す信号、上記ホーム出信号、等を受信する。
【0024】
さらに、ドア制御装置50は、戸挟み検知装置10が戸挟みを検知したときに戸挟み検知装置10が出力する各種の信号を受信する。例えば、ドア制御装置50は、戸挟み検知装置10が出力する「戸挟み発生信号」、「車内における戸挟み発生信号」、「引摺り発生信号」等(後述参照)を受信する。
【0025】
ドア制御装置50は、「戸挟み発生信号」の受信に基づいて、車両ドア3を開く解放信号をドア駆動装置51に出力する。
また、ドア制御装置50は、「車内における戸挟み発生信号」の受信に基づいて、車両1の制御装置4に、車内で戸挟み発生した虞があることを伝達する連絡信号を出力する。
【0026】
また、ドア制御装置50は、「引摺り発生信号」の受信に基づいて、車両1の制御装置4に、引摺りが発生した虞があることを伝達する緊急信号を出力する。車両1の制御装置4は、このような緊急信号に基づいて、緊急状態であることを示す警告を出力する。例えば、車両1の制御装置4は、車両1の運転席にある表示器または車両1外側のランプを点灯または点滅させたり、車両1の緊急停止をするためのアナウンスを出力したりする。
【0027】
戸挟み検知装置10は、戸挟みを検知する。戸挟みとは、車両ドア3の全閉の状態で、車両ドア3により物(人及び人の一部を含む)が挟まれている戸挟み状態を示す。
戸挟み検知装置10は、少なくとも、戸挟みセンサ11が動作するか否かを判定する動作確認部45(後述参照)を備える。好ましくは、戸挟み検知装置10は、戸挟みを判定する判定部40を備える。判定部40(後述参照)は、戸挟みセンサ11から出力される出力信号(センサからの出力)に基づいて戸挟みが発生しているか否かを判定する。
【0028】
図4~
図14を参照して、戸挟みセンサ11について説明する。
戸挟みセンサ11は、回転体12の回転に応じた信号を出力する。以下、戸挟みセンサ11を具体的に説明する。
【0029】
戸挟みセンサ11は、一方の車両ドア3のドア本体部3aの戸先側端面3bに設けられる。他方の車両ドア3において、一方の車両ドア3の戸先に対向する部分すなわちドア本体部3aの戸先側端面3bには、封止部36が設けられる(
図13参照)。後述するように、封止部36は、車両ドア3の全閉時、一方の車両ドア3の戸先と他方の車両ドア3の戸先との間の隙間を封止する。
【0030】
図4に示されるように、戸挟みセンサ11は、回転体12と、回転体12の回転を検出する回転検出部30(
図14参照)とを備える。回転体12は、車両ドア3の戸先に沿うように延びる。したがって、回転体12は、全体として、車両ドア3の湾曲に沿うように湾曲する。
【0031】
図5に示されるように、回転体12は、複数の分割回転体13の連結体として構成される。例えば、回転体12は、車両ドア3の平坦部3cに設けられる1つの分割回転体13と、車両ドア3の湾曲部3dに設けられる複数の分割回転体13と、車両ドア3の傾斜部3eに設けられる1つの分割回転体13とにより構成される。各分割回転体13は、シャフト14と、シャフト14を覆う筒状の弾性部材15とを有する。1つのシャフト14には、複数の弾性部材15が取り付けられる。弾性部材15の貫通孔にシャフト14が挿通するようにして、弾性部材15がシャフト14に取り付けられる。複数の弾性部材15は、所定幅の隙間をあけてシャフト14に取り付けられる。隙間には、後述の支持部材20が配置される。シャフト14は、鉄、ステンレス、アルミニウム合金等の金属により形成される。弾性部材15は、ゴム、エラストマ、または弾性を有する樹脂(発泡部材)により形成される。弾性部材15は、ゴム、エラストマ、及び弾性を有する樹脂(発泡部材)のいずれか2つを積層したものであってもよい。
【0032】
図6に示されるように、シャフト14は、シャフト本体部14aと、シャフト本体部14aの一方の端に設けられるジョイント部14bと、シャフト本体部14aの他方の端に設けられる結合部14cとを有する。シャフト本体部14aは、例えば、円柱形状を有する。ジョイント部14bは、他のシャフト14の結合部14cに結合する。
【0033】
図7に示されるように、ジョイント部14bにおいてシャフト14の中心軸Dに垂直な断面形状は、多角形状であり、好ましくは、正多角形である。また、好ましくは、当該断面形状は、正六角形である。ジョイント部14bにおいて、ジョイント部14bの回転軸(中心軸D)と平行であって回転軸(中心軸D)を含む断面の先端側は、先端に向かって径が小さくなっている。また、シャフト14の中心軸Dに垂直な断面の大きさは、ジョイント部14bの先端からシャフト本体部14aに向かって徐々に拡大して最大面積になった後、徐々に縮小する。ジョイント部14bの側面形状は、概ね円形または楕円形である。結合部14cは、ジョイント部14bが入る孔14dを有する。結合部14cの孔14dにおいてシャフト14の中心軸Dに垂直な断面形状は、ジョイント部14bの断面形状と同じ形状を有する。ジョイント部14bの断面形状が正六角形の場合、結合部14cの孔14dの形状も正六角形である。孔14dの断面の大きさ(孔14dの空間部分の面積)は、シャフト14の中心軸Dに沿って一定であり、ジョイント部14bの断面の大きさよりも大きい。なお、上記多角形状には、星形や、辺の一部が窪んでいる形状、花びら形状のような形状も含むものとし、また、辺の一部が曲線状であってもよい。
【0034】
図8に示されるように、シャフト14の中心軸Dが所定角度範囲内で交差するように、2つのシャフト14が結合するとき、ジョイント部14bの角が結合部14cの孔14dの角に当たる。この構造により、連結された2つのシャフト14は、同期して回転する。すなわち、一方のシャフト14が回転すると、当該一方のシャフト14の回転角度と同じ角度で他方が回転する。
【0035】
図9、
図10及び
図11に示されるように、各分割回転体13は、回転可能に支持部材20で支持される。支持部材20は、ブラケット21と、軸受け22とを備える。ブラケット21は、車両ドア3の戸先側端面3bに取り付けられる取付部材29(例えば、スペーサ)に固定される。ブラケット21は、取付部材29に固定される固定部21aと、固定部21aに交差するように固定部21aから延びてシャフト14を支持する支持部21bとを有する。支持部21bには、円形の貫通孔21cが設けられている。貫通孔21cには、フランジ22bを有する軸受け22が嵌る。フランジ22bは、軸受け22の本体部22aから径方向外方に延びる。軸受け22は、フランジ22bがブラケット21の支持部21bの上面に接触することで、ブラケット21に回転可能に支持される。シャフト14は、軸受け22に挿通する。軸受け22は、シャフト14に固定される。
【0036】
図12及び
図13を参照して、回転体12を覆うカバー26について説明する。
図12に示されるように、回転体12の少なくとも一部は、カバー26により覆われる。カバー26は、取付部材29を介して車両ドア3の戸先側端面3bに固定される。カバー26は、取付部材29に固定される基部27と、基部27において車両幅方向DXの両端から戸先側に延びる2つの側壁(以下の第1側壁28a及び第2側壁28b)とを有する。
【0037】
車両幅方向DXにおいて内側の側壁(以下、「第1側壁28a」という。)は、基部27から戸先に向かって延びる形状である。例えば、第1側壁28aは、基部27から戸先に向かって延び、途中から、湾曲して、徐々に外方に向かう形状であってもよい。車両幅方向DXにおいて外側の側壁(以下、「第2側壁28b」という。)は、基部27から戸先に向かって延びる形状である。例えば、第2側壁28bは、基部27から戸先に向かって延び、途中から、湾曲して、徐々に内方に向かう形状であってもよい。
【0038】
カバー26の第1側壁28aの端面28s及び第2側壁28bの端面28tは、回転体12の回転軸Cを通りかつ車両ドア3の開閉方向DTに垂直な面よりも、戸先側まで延びる。
【0039】
回転体12は、第1側壁28aと第2側壁28bとの間に配置される。回転体12は、カバー26の基部27、第1側壁28a及び第2側壁28bのいずれにも接触しない。回転体12の戸先側の部分は、カバー26から露出する。回転体12の戸先側の部分は、カバー26の戸先側の端面(すなわち第1側壁28aの端面28s、第2側壁28bの端面28t)よりも、車両ドア3の閉方向DCにおける戸先側に配置される。
【0040】
図13を参照して、封止部36について説明する。
上述したように封止部36は、車両ドア3の全閉時、2つの車両ドア3の戸先の間の隙間を封止する。
【0041】
封止部36は、戸挟み検知装置10が取り付けられている車両ドア3と対向する車両ドア3に取り付けられる。封止部36は、車両ドア3の戸先に設けられる。封止部36は、車両ドア3が全閉したとき、カバー26に接触して、2つの車両ドア3の戸先間の隙間を封止する。好ましくは、封止部36は、回転体12に接触しない。
【0042】
具体的には、封止部36は、車両ドア3の戸先側端面3bに沿うように設けられる。封止部36は、車両ドア3の戸先側端面3bに固定される基部37と、基部37において車両幅方向DXの両端から戸先側に延びる2つの突起(以下の第1突起38a,第2突起38b)とを備える。基部37には、支持部材37aが設けられてもよい。支持部材37aは、基部37よりも高剛性であることが好ましい。
【0043】
車両幅方向DXにおいて内側の突起(以下、「第1突起38a」という。)は、基部37から戸先に向かって延びる。車両ドア3の全閉時において、第1突起38aは、カバー26の第1側壁28aの内面(車両幅方向DXにおける内側の面)に接触する。
【0044】
車両幅方向DXにおいて外側の突起(以下、「第2突起38b」という。)は、基部37から戸先に向かって延びる。車両ドア3の全閉時において、第2突起38bは、カバー26の第2側壁28bの外面(車両幅方向DXにおける外側の面)に接触する。
【0045】
第1突起38aの戸先側の先端から第2突起38bの戸先側の先端にわたる戸先面36aは、湾曲する。車両ドア3の全閉時において、戸先面36aは、回転体12の表面12aに接触しない。これにより、全閉時において、回転体12の回転が制限されないため、戸挟みされた物の引き抜きが阻害されない。
【0046】
封止部36は、弾性を有する。例えば、封止部36は、ゴム、エラストマ、または弾性を有する樹脂(発泡部材)により形成される。封止部36は、ゴム、エラストマ、及び弾性を有する樹脂(発泡部材)のいずれか2つを積層したものであってもよい。また、封止部36は、長手方向(回転体12の回転軸C方向に沿う方向)において中央部36s(
図2参照)は、中央部36s以外の部分よりも変形し易い。具体的には、封止部36において中央部36sは、中央部36sよりも上の上部36r及び中央部36sよりも下の下部36tよりも、硬度が小さい物質(柔らかい物質)で形成されることが好ましい。硬度は、例えば、デュロメータで測定される値である。封止部36を構造的に中空または中実のように構成して、封止部36の変形のしやすさを変えてもよい。
【0047】
図14を参照して、回転検出部30について説明する。
回転検出部30は、回転体12が取り付けられている車両ドア3の上部に配置される。回転検出部30は、回転を検出するエンコーダ31と、回転体12に取り付けられるアダプタ32と、アダプタ32とエンコーダ31とを結合させるカップリング部材33とを備える。アダプタ32の一端部は、回転体12において最上部に配置される分割回転体13の上部に固定され、アダプタ32の他端部は、カップリング部材33に固定される。
【0048】
回転検出部30は、回転体12の回転角度が所定角度に達する都度、位相がずれた2系統の出力信号を出力する。2系統の出力信号に基づいて所定の演算により、回転体12の回転方向と回転体12の回転角度が算出される。例えば、出力信号は、パルス信号として出力される。
【0049】
回転検出部30は、ケース34により覆われる。ケース34は、鉄、ステンレス、アルミニウム合金等の金属により形成される。ケース34は、車両ドア3の全閉時に封止部36から加えられる力では変形しない程度の強さを有する。ケース34の下部には、アダプタ32が挿通する貫通孔が設けられている。ケース34は、平面視において回転検出部30の戸先側を覆う。ケース34は、戸先側に封止部36に当接する当接部34aを有する。ケース34の当接部34aは、車両ドア3の全閉時において、封止部36と当接する。車両ドア3の全閉時において、ケース34と封止部36の上部との当接により、一方の車両ドア3のカバー26と他方の車両ドア3の封止部36との間の距離が所定距離に規定される。これにより、封止部36の2つの突起(第1突起38aと第2突起38b)の間に、カバー26が入り込み過ぎることが抑制され、回転体12と封止部36との間に空間が形成される。
【0050】
車両ドア3の戸挟み検知について説明する。
車両ドア3の戸挟み検知には、車両ドア3の閉鎖時に実行される第1次の戸挟み検知と、車両ドア3の全閉後に実行される第2次の戸挟み検知とがある。好ましくは、第1次の戸挟み検知と第2次の戸挟み検知の両者が行われる。第1次の戸挟み検知は、モータ電流や車両ドア3の移動速度に基づいて行われる。第2次の戸挟み検知は、戸挟みセンサ11を用いて行われる。第1次の戸挟み検知は、例えば、閉鎖開始から全閉が完了するまでの期間(
図16の時刻t1~時刻t2の期間)に行われる。
【0051】
第1次の戸挟み検知は、ドア制御装置50で判定される。第2次の戸挟み検知は、判定部40で判定される。第1次の戸挟み検知は、次の通りである。
2つの車両ドア3の間に物が挟まれると、2つの車両ドア3は、物の存在により、互いに接近できなくなる。そうすると、車両ドア3の閉鎖開始時点から所定時間内にドアクローズセンサ52が車両ドア3の全閉を検知しない。車両ドア3の閉鎖開始時点から所定時間、ドア制御装置50は、モータ電流や車両ドア3の移動速度の変化に基づいて、車両ドア3が正常に閉鎖しているか否か、すなわち戸挟みが発生しているか否かを判定する。
【0052】
一方、2つの車両ドア3の間に紐などの薄物が挟まれると、2つの車両ドア3は、物の存在によっても、互いに接近し、全閉になる。この場合、車両ドア3の閉鎖開始時点から所定時間内にドアクローズセンサ52は車両ドア3の全閉を検知する。すなわち、挟まれたものが薄物の場合、戸挟みが発生していたとしても、戸挟みと判定しないことがある。
【0053】
第2次の戸挟み検知は、次の通りである。
物が挟まった状態で2つの車両ドア3が全閉になると、挟まった物を引き抜く人の操作または挟まった物の動きにより、回転体12が回転する。そうすると、回転検出部30が回転体12の回転に応じた信号を判定部40に出力する。判定部40は、この信号に基づいて戸挟みの発生を判定する。このように、戸挟みセンサ11によれば、全閉時でも戸挟みを検知できる。したがって、戸挟みセンサ11によれば、第1の戸挟み検知によって戸挟みが検出できない物でも、戸挟みセンサ11によって、戸挟みを検出できる。
【0054】
図15~
図20を参照して、第2次の戸挟み検知を実行する戸挟み検知装置10について具体的に説明する。戸挟み検知装置10は、第2次の戸挟み検知だけでなく、第1次の戸挟み検知を行ってもよい。以下では、第2次の戸挟み検知のみ説明する。
【0055】
上述のように、本実施形態に係る戸挟み検知装置10は、判定部40及び動作確認部45を備える。
図15に示されるように、判定部40は、回転検出部30の出力信号に基づいて出力値(以下、「検出値」という。)を算出する検出値演算部41と、検出値に基づいて戸挟みの発生を判定する判定演算部(判断部)42と、基準値である判定値(なお、以下の説明では判定値として説明する)を設定する設定部43とを備える。
【0056】
検出値演算部41は、回転検出部30から出力される少なくとも2つの出力信号に基づいて、回転体12の回転方向を検出し、回転体12の回転量を算出する。回転量として、例えば、回転角度、回転速度、回転の加速度、等が挙げられる。本実施形態では、検出値演算部41は、回転角度を算出する。
【0057】
例えば、検出値演算部41は、2つ出力信号において位相ずれの方向に基づいて、回転体12の回転方向を検出する。本実施形態において、回転体12においてカバー26から露出する部分が車両幅方向DXの外側に移動するように、回転体12が回転するときの回転体12の回転方向を「外回転方向RA」といい、外回転の反対の回転を「内回転方向RB」という。また、検出値演算部41は、いずれか一方の出力信号に基づいて回転角度を算出する。例えば、検出値演算部41は、規定時間(例えば、数十マイクロ秒~数百マイクロ秒の間の範囲内で設定される規定時間)における出力信号のパルスの数をカウントとし、このカウント値またはカウント値に応じた値を回転角度とする。
【0058】
検出値演算部41は、少なくとも、判定演算部(判断部)42が戸挟みの発生を判定する所定期間(後述参照)において、回転体12の回転角度を算出する。
検出値演算部41は、下記に示す例では、後述の第1期間T1(
図16参照)において、回転体12の回転角度を算出する。また、検出値演算部41は、後述の第2期間T2(
図16参照)において、所定の周期で、回転体12の回転角度の算出と回転方向の検出とを行う。第1期間T1における規定時間と、第2期間T2における規定時間とは、同じであっても、異ならせてもよい。
【0059】
判定演算部42は、上述したように、検出値に基づいて戸挟み状態が発生しているか否かを判断する。この判断は、次の所定期間に行われる。
所定期間の開始時期は、次の(A)及び(B)のいずれかである。所定期間の終了時期は、次の(A)~(D)のいずれかである。所定期間は、開始時期の(A)及び(B)のいずれか1つと、終了時期の(A)~(D)のいずれか1つとにより、設定される。なお、車両ドア3の閉動作の開始点を基準時刻とすると、開始時期の(A)及び(B)のいずれも、終了時期の(A)~(D)のいずれの時期よりも、早い。
【0060】
「所定期間の開始時期」は、(A)車両ドア3が閉動作を開始して、車両ドア3の戸先同士または車両ドア3戸先と相手部材との距離が所定距離になったとき、及び(B)車両ドア3が閉動作を開始して所定時間が経過したとき、のいずれかである。
【0061】
「所定期間の終了時期」は、(A)車両ドア3が全閉位置に達したとき。(B)車両ドア3が全閉状態になってから所定時間が経過したとき。(C)車両ドア3が全閉状態になり、車両1が発車したとき。(D)車両ドア3が全閉状態になり、車両1が発車し所定速度または所定時間が経過したとき、のいずれかである。
【0062】
図16~
図18を参照して、判定演算部(判断部)42についての具体例を説明する。
図16は、車両ドア3の閉鎖時における各種信号の出力タイミングを示す。車両ドア3の閉鎖開始から車両1が駅のホームから離れるまでに出される信号は、次の通りである。
【0063】
時刻t1において、車両1が、ドア閉信号をドア制御装置50に出力する。これにより、車両ドア3が閉方向DCに移動する。その後、車両ドア3が閉鎖して全閉になる。
そうすると、時刻t2において、ドアクローズセンサ52がクローズ信号を出力する。車両ドア3の全閉後に、車両ドア3にロックがかかる。車両ドア3が正常にロックする。そうすると、時刻t3において、ドアロックセンサ53は、車両ドア3のロックを検知して、ロック信号を出力する。全ての車両ドア3が正常にロックされると、運転席に、全クローズアンドロックを示す情報が示される。
【0064】
時刻t4において、運転者が、車両1を発信させる。車両1は、その後、徐々に速度を上げて、駅のホームから出る。
その後、時刻t5において、最後尾の車両1がホームの端に到達する。
【0065】
時刻t5において、判定部40は、次のような手段により、最後尾の車両1がホームの端に到達したことを示す情報を受信する。最後尾の車両ドア3が、ホームの端に到達したことを検知してもよい。例えば、当該検知について、車両1の最後尾の車両ドア3の下にセンサをつけて、ホームを通過したこと検知してもよいし、ホームドアと連携して最後尾の車両ドア3がホームを通過したことを検知してもよい。さらに、最後尾の車両ドア3だけでなく、各車両ドア3のそれぞれがホームを通過したことを検知してもよい。
【0066】
このような、車両ドア3の閉鎖時における各種信号の出力タイミング(
図16参照)において、判定演算部42は、車両ドア3の動作に応じて、次のように異なる処理を実行する。
【0067】
判定演算部42は、クローズ信号の受信からロック信号の受信までの期間(以下、「第1期間T1」、
図16参照。)において、後述の第1判定処理(第2次の戸挟み検知)を実行する。判定演算部42は、ロック信号の受信後の所定期間(以下、「第2期間T2」、
図16参照。)において、後述の第2判定処理(第2次の戸挟み検知)を実行する。
【0068】
図17を参照して、第1判定処理について説明する。
判定演算部42は、第1期間T1において第1判定処理を周期的に繰り返し実行する。ステップS1において、判定演算部42は、第1期間T1中に検出値演算部41が算出した回転角度を得る。次に、ステップS2において、判定演算部42は、回転角度と第1判定値とを比較する。回転角度が第1判定値よりも小さいとき、第1判定処理を終了する。回転角度が第1判定値以上の値であるとき、ステップS3において、第1非常処理を実行する。第1非常処理は、別のフローで実行される。第1非常処理の開始後、第1判定処理は終了する。第1非常処理において、判定演算部42は、「戸挟み発生信号」をドア制御装置50に出力する。上述のように、ドア制御装置50は、「戸挟み発生信号」を受信すると、車両ドア3を開く解放信号をドア駆動装置51に出力するため、このように戸挟みが判定されたとき、車両ドア3が開く。
【0069】
図18を参照して、第2判定処理(第2次の戸挟み検知)について説明する。
判定演算部42は、ロック信号の受信以降、所定の停止条件が成立するまでの期間(以下、「第2期間T2」)において、第2判定処理を周期的に繰り返し実行する。戸挟みの検出漏れの抑制のため、好ましくは、所定周期は、判定演算部42の実行可能な範囲で、最小周期に設定される。
【0070】
停止条件とは、第2判定処理を停止するための条件である。停止条件の例として、次の3つが挙げられる。第1例の停止条件は、ロック信号の受信を起点として、予め設定された時間が経過することである。第2例の停止条件は、車両1が発車して、最後尾の車両1がホームの所定の位置(例えば、車両1の進行方向における下流側の端)に到達することである。第2例の停止条件の成立は、上記時刻t5(
図16)の検出に相当する。第3例の停止条件は、車両1が発車して、車両1の速度が所定速度に達することである。停止条件の成立により、第2判定処理の実行が停止される。
【0071】
ステップS11において、判定演算部42は、検出値演算部41が算出した回転角度及び回転方向を得る。次に、判定演算部42は、ステップS12で、回転方向が内回転方向RBであるか否かを判定する。回転方向が内回転方向RBであるとき、ステップS13を実行する。回転方向が内回転方向RBでないとき、すなわち外回転方向RAであるとき、ステップS15を実行する。
【0072】
ステップS13において、判定演算部42は、回転角度と第2判定値とを比較する。回転角度が第2判定値よりも小さいとき、第2判定処理を終了する。回転角度が第2判定値以上の値であるとき、ステップS14において、第2非常処理を実行する。第2非常処理は、別のフローで実行される。第2非常処理の開始後、第2判定処理は終了する。第2非常処理において、判定演算部42は、「車内における戸挟み発生信号」をドア制御装置50に出力する。上述のように、ドア制御装置50は、「車内における戸挟み発生信号」を受信すると、車両1の制御装置4に、車内で戸挟み発生した虞があることを伝達する連絡信号を出力する。
【0073】
ステップS15において、判定演算部42は、回転角度と第3判定値とを比較する。回転角度が第3判定値よりも小さいとき、第2判定処理を終了する。回転角度が第3判定値以上の値であるとき、ステップS16において、緊急処理を実行する。緊急処理は、別のフローで実行される。緊急処理の開始後、第2判定処理は終了する。緊急処理において、判定演算部42は、「引摺り発生信号」をドア制御装置50に出力する。上述のように、ドア制御装置50は、「引摺り発生信号」を受信すると、車両1の制御装置4に、引摺りが発生した虞があることを伝達する緊急信号を出力する。
【0074】
次に、判定値の変更について説明する。
上述のように、本実施形態では、戸挟み判定に使われる判定値は、第1判定処理におけるステップS2の判定と、第2判定処理におけるステップS13と、第2判定処理におけるステップS15とで、変更される。
【0075】
判定値を変更する理由は、次の通りである。
車両ドア3が全閉状態にあるときでも、戸挟みセンサ11の回転体12は戸挟み以外の要因で回転し得る。例えば、車両1の発車時の車両ドア3の揺れ、車両1の走行時の車両ドア3の揺れ、人の凭れ掛かりに起因して車両ドア3に加えられる荷重等により車両ドア3が車両幅方向DXに移動するため、回転体12が回転し得る。また、駅のホームや車両1内が混雑しているとき、車両ドア3に人の荷重が加わる。そうすると、車両ドア3が車両幅方向DXに移動して、回転体12が回転する。このように、回転体12は戸挟み以外の要因で回転するため、判定部40は、戸挟みでない事象でも、戸挟み発生と判定する場合がある。以下、このような判定を「誤判定」という。
【0076】
一方、判定部40の誤判定の頻度は、判定値の設定によって変わり得る。
例えば、戸挟み判定の判定値を低くすれば、判定部40は、判定値を低くする前の場合に比べて、小さい回転角度を戸挟みと判定するため、戸挟みの検知頻度が高くなる。また、戸挟みと検出された結果のうち誤判定である確率も高くなる。一方で、判定値を低くすれば、実際の戸挟みを検出しない検出漏れを少なくできるというメリットがある。これに対して、判定値を高くすれば、判定部40は、判定値を高くする前の場合に比べて、大きい回転角度を戸挟みと判定するため、戸挟みの検知頻度が低くなる。また、戸挟みと検出された結果のうち誤判定である確率も低くなる。しかし、判定値を高くすれば、実際の戸挟みを検出しない検出漏れが多くなる虞がある。
【0077】
ところで、戸挟み検知において「戸挟み検知の頻度」についての要求や「戸挟みの検出漏れ」に対する要求は、車両ドア3の周辺状況及び車両ドア3の動作によって、相違する。例えば、車両1の停車中において混雑しているときには、戸挟み検知の頻度が低いことが望ましい。戸挟み検知の頻度が高く、誤判定が多いと、精確な車両運行に影響を及ぼす虞があるからである。一方、車両1の発車の直後は、「戸挟みの検出漏れ」が少なくかつ「誤判定」が少ないことが好ましい。車両1の発車時に戸挟み(「引摺り」)が実際に生じ、これが検知されないと、安全性に問題が生じるからである。
【0078】
このようなことから、判定値が所定値に固定されていると次のような問題が生じる。すなわち、判定値が、戸挟みの検知可能な範囲内において小さい値に設定されていると、誤判定が多く、駅のホームの混雑時に車両ドア3の開閉頻度が高くなり、車両1の運行に支障が生じる虞がある。判定値が、戸挟みの検知可能な範囲内において高い値に設定されていると、車両1の発車時に実際に生じた戸挟みが検出されないといった問題が生じ得る。そこで、判定値は、戸挟みの検知可能な範囲内において中間の値に設定されるが、この場合、混雑時において、車両ドア3の開閉頻度が低減できず、また、車両1の発車時の戸挟み(「引摺り」)が検知されないといった安全性に関わる問題が大きく改善されないままに残される。
【0079】
このような事情から、本実施形態では、判定部40の設定部43は、車両ドア3の周辺状況及び車両ドア3の動作の少なくとも1つに基づいて判定値(基準値)を変更する。「車両ドア3の周辺状況」とは、駅のホームの混雑度、車両1内の混雑度、車両1の発車により車両ドア3とホームとの相対位置関係が変化すること等を含む。「車両ドア3の動作」とは、車両ドア3の戸挟みセンサ11の動作(例えば、回転体12の動作)、車両ドア3が閉じること、車両ドア3にロックがかかること等を含む。具体的には、「車両ドア3の周辺状況」には、例えば、車両ドア3の全閉時から車両ドア3のロック時までの期間と車両ドア3のロック時以降の期間との変化、車両1の停車時と車両1の発車後に車両1の最後尾がホームの所定の位置に達するときとの変化、車両1の停車時と、車両1の発車後に所定速度に達するときまたは発車後から所定時間経過したときとの変化、乗車率及び駅のホームの人の密度の少なくとも1つに基づく混雑度、車両運行の線区を含む。また、「車両ドア3の動作」には、例えば、回転体12の回転方向を含む。このような車両ドア3の周辺状況や車両ドア3の動作に応じた判定を行うことによって、各状況または各状態に応じた適切な判定を行うことができる。
【0080】
具体的には、第1判定処理に示されるように、第1期間T1すなわち車両1の停車時において、クローズ信号の受信からロック信号の受信までの期間は、第1判定値で、戸挟み判定を行う。第1期間T1において、戸挟み検知が頻発すると、車両運行に乱れが生じる虞があるため、例えば、第1判定値は、戸挟みの検知可能な範囲内で低い値に設定され得る。
【0081】
第2判定処理において示されるように、第2期間T2、すなわちロック信号の受信後の所定期間すなわち車両1の発車の直前と発車後の期間は、第2判定値と第3判定値とで、戸挟みについて判定処理を行う。
【0082】
第2判定値は、回転体12の回転方向が内回転方向RBであるときに戸挟み判定に使われる。回転体12の回転方向が、内回転方向RBの場合は、戸挟みとなっている物が車内に引き込まれている状態を示す。この状況は、車両1の運行に影響を及ぼす虞が小さく、安全性の面でも支障が少ない。したがって、例えば、第2判定値は、戸挟みの検知可能な範囲内の中間の値に設定され得る。
【0083】
第3判定値は、回転体12の回転方向が外回転方向RAであるときに戸挟み判定に使われる。回転体12の回転方向が、外回転方向RAの場合は、戸挟みとなっている物が車外に引っ張られている状態を示す。この状況は、引摺りまたは物が車両1の外側に引っ張られている事態が発生していると推定される。このため、第3判定値は、戸挟みの検知可能な範囲内で低い値(以下、「第1例の値」)に設定される。一方、引摺りまたは物が車両1の外側に引っ張られる場合、回転体12の回転角度は大きくなることから、このことを鑑みて、第3判定値は、上記の「第1例の値」よりも高い値に設定することもできる。
【0084】
このように、判定値は、車両ドア3の周辺状況や車両ドア3の動作に応じて変更される。これによって、車両ドア3の周辺状況や車両ドア3の動作に応じた戸挟み検知が可能になり、戸挟みの誤判定に起因した車両運行の乱れを抑制でき、かつ、戸挟み検出漏れに起因した安全性の低下を抑制できる。
【0085】
判定値の変更は、上記では、判定処理を変更することによって行われているが、後述するように、各判定処理において、設定部43によって、各判定処理において、判定値そのものが変更され得る。
【0086】
図19及び
図20を参照して、設定部43について説明する。
設定部43は、車両ドア3の周辺状況及び車両ドア3の動作の少なくとも1つに基づいて、上記第1判定処理及び第2判定処理に用いられる第1判定値、第2判定値及び第3判定値を変更する。
【0087】
図19を参照して、設定部43が実行する「判定値の設定処理」について説明する。
判定値の設定処理は、所定の周期で実行される。
ステップS21において、設定変更を行う時期であるか否かを判定するための設定変更条件が成立しているか否かを判定する。
【0088】
ステップS21において、設定変更条件が満たされないときは、設定部43は、判定値の設定処理を終了する。設定変更条件が満たされるとき、設定部43は、ステップS22を実行する。ステップS22では、第1判定値、第2判定値及び第3判定値の少なくとも1つを変更する。
【0089】
設定部43は、例えば、混雑度に応じて第1判定値、第2判定値及び第3判定値の少なくとも1つを変更する。混雑度は、例えば、乗車率及び駅のホームの人の密度の少なくとも1つに基づいて算出される。乗車率としては、車両1の制御装置4から出力される乗車率を用いる。乗車率とは、1台の車両1の定員に対する乗員の比率であり、車両1の質量変化に基づいて算出され得る。ホームの人の密度は、例えば、ホームに取り付けられているカメラ画像の画像処理に基づいて算出される。例えば、設定部43は、混雑度が高くなることに従って、第1判定値を高くする。このような変更は、次の設定変更条件が成立するときに、行われる。すなわち、判定値の変更は、車両ドア3の全閉直後、すなわちクローズ信号の受信時と第1判定処理の開始時との間の期間に行われる。混雑が増すことに伴って戸挟み検知の誤判定の頻度が高くなるが、このような変更によれば、誤判定の発生頻度が低下するため、車両ドア3の不必要な開閉頻度の増大を抑制できる。
【0090】
また、設定部43は、車両1の線区に応じて第1判定値、第2判定値及び第3判定値の少なくとも1つを変更する。線区によっては、一日にわたる平均な混雑度が相違する。例えば、都心の線区では、一日中で混雑する。郊外の線区では、都心の線区に比べて混雑しない。このようなことから、例えば、第1判定値、第2判定値及び第3判定値が、線区毎に変更される。
【0091】
図20は、線区毎に設定された第1判定値、第2判定値及び第3判定値の表である。線区に基づく判定値の変更は、例えば、運行日の運行開始の前に行われる。または、当該変更は、線区の切替え前に行われる。
【0092】
また、設定部43は、所定の線区で、駅ごとに、第1判定値、第2判定値及び第3判定値の少なくとも1つを変更し得る。例えば、設定部43は、A駅と、B駅とで、第1判定値を変更する。さらに、設定部43は、駅ごとに、時間帯に応じて、第1判定値、第2判定値及び第3判定値の少なくとも1つを変更し得る。例えば、始発から7時までの早朝時間と、7時以降~10時までの通勤時間と、10時以降~16時までの昼時間と、16時以降~20時までの夜時間と、20時~24時までの深夜時間とで、第1判定値を変更する。
【0093】
また、設定部43は、車両1の移動に応じて第1判定値、第2判定値及び第3判定値の少なくとも1つを変更する。例えば、車両1が発車し、車両1の最後尾がホームの端から離れたとき以降では、戸挟み検知を行う必要がないことから、戸挟みの実質的に行われないようにするため判定値を、回転角度が実際に取り得る範囲の最大値よりも高い値に設定する。この変更によれば、車両1がホームから離れた時以降において、戸挟み検知を無効にできる。この場合の設定変更条件は、車両1の最後尾がホームの端から離れることである。
【0094】
また、設定部43は、停車時と、車両1の発車後に所定速度に達するときとで、第1判定値、第2判定値及び第3判定値の少なくとも1つを変更してもよい。例えば、設定部43は、予め設定された複数の速度毎に、第3判定値を変更する。具体的には、車両速度が1km/h、3km/h、及び5km/hに到達する都度、第3判定値を変更する。車両速度が速くなると、戸挟みセンサ11の回転角度が大きくなると考えられるため、車両速度の増大に応じて、判定値は高い値に変更される。これにより、戸挟み(引摺り)の誤判定を抑制でき、誤判定に基づく車両運行の乱れを抑制できる。なお、この場合の設定変更条件は、車両1が所定の車両速度に到達することである。
【0095】
また、設定部43は、停車時と、車両1の発車後に所定時間経過したときとで、第1判定値、第2判定値及び第3判定値の少なくとも1つを変更してもよい。所定時間とは、例えば、予め設定された複数の速度に対応する時間である。具体的には、車両速度が1km/hに到達するまでの第1の所定時間、車両速度が3km/hに到達するまでの第2の所定時間、車両速度が5km/hに到達するまでの第3の所定時間に、第3判定値を変更する。これにより、戸挟み(引摺り)の誤判定を抑制できる。なお、この変更での設定変更条件の成立は、車両1が、発車後に所定時間経過することである。
【0096】
図21を参照して、動作確認部45について説明する。
動作確認部45は、戸挟みセンサ11が、戸挟みを検知可能である状態にあるか否かの動作確認を行う。
【0097】
例えば、戸挟みセンサ11の回転体12が固着して動き難くなっていると、戸挟みセンサ11は、戸挟みが生じたとき、戸挟みセンサ11が正常動作時とは異なる信号を出力するようになるため、戸挟みについての誤検知が発生する。また、回転検出部30内の信号形成回路にショート等の異常があったりすると、戸挟みセンサ11が正常動作時とは異なる信号を出力するようになるため、戸挟みについての誤検知が発生する。戸挟みセンサ11が動作不良である場合に、戸挟みセンサ11が正常であることを前提として戸挟み検知を行っていると、実際に生じる戸挟みが発見されず、見過ごされる虞がある。このような事情から、戸挟みセンサ11について動作確認が行われる。
【0098】
動作確認部45は、判定演算部42が前記所定期間外(戸挟み状態を判断していない期間)に、戸挟みセンサ11が動作しているか否かを確認する。「判定演算部42が戸挟み状態を判断していない期間」とは、判定演算部42が戸挟み状態が発生しているか否かを判断する期間以外の期間、すなわち前記所定期間外の期間である。
【0099】
「判定演算部42が戸挟み状態を判断していない期間」のうち、好ましくは、車両ドア3の開閉中、または、車両ドア3が閉状態(但し、戸挟みしているか否かの判断している期間以外の期間)にあるとき、戸挟みセンサ11の動作確認が行われる。後述の変形例で示されるように、車両ドア3が開状態であるときに、戸挟みセンサ11の動作確認が行われてもよい。本実施形態では、車両ドア3の閉動作中に戸挟みセンサ11の動作確認が実行される。
【0100】
図21を参照して、動作確認部45が実行する動作確認処理について説明する。
動作確認部45は、期間T3において動作確認処理を周期的に繰り返し実行する。ステップS31において、動作確認部45は、車両ドア3の閉鎖開始後における所定期間T3(
図16参照)に、検出値演算部41が出力する出力信号を受信する。
【0101】
ステップS32において、動作確認部45は、回転体12が回転したときに出力される出力信号の有無を判定する。
車両ドア3が開閉するとき、車両ドア3の振動により、戸挟みセンサ11の回転体12が小さく揺れるため、回転検出部30から回転体12の揺れに対応した出力信号が出力される。一方、異物等が回転体12とカバー26との間に挟まる等の事情により、回転体12が固着するとき、車両ドア3の開閉において回転体12が揺れない。また、回転検出部30の信号形成回路にショートが生じていると、回転体12の揺れに対応した出力信号が出力されない。したがって、回転体12の揺れに対応する信号の検出により、戸挟みセンサ11の動作確認ができる。
【0102】
ステップS32において、動作確認部45は、検出値演算部41から出力される出力信号に基づいて回転体12の揺れに対応した出力信号が有ると判定するとき、動作確認処理を終了する。
【0103】
ステップS32において、動作確認部45は、検出値演算部41から出力される出力信号に基づいて回転体12の揺れに対応した出力信号が無いと判定するとき、動作確認部45は、ステップS33において、戸挟みセンサ11が動作不良であることを報知する。例えば、戸挟みセンサ11が動作不良である情報は、ドア制御装置50を介して車両1の制御装置4に送信される。制御装置4は、この情報に基づいて、運転席に、動作不良である戸挟みセンサ11に対応する車両ドア3に動作不良が発生しているという動作不良情報を表示する。
【0104】
戸挟み検知装置10の作用を説明する。
戸挟みセンサ11の動作を確認しない場合、戸挟みセンサ11に動作不良であるときでも、判定部40は、戸挟みセンサ11から出力される出力信号(センサからの出力)に基づいて戸挟みについて判定する。そうすると、戸挟みが実際に生じているときでも、判定部40は戸挟みと判定しない。このような事態が生じると、実際の戸挟みの発見が遅れ、安全性が損なわれたり、車両運行に支障が生じたりする虞がある。この点で、本実施形態では、戸挟みセンサ11が動作するか否かを確認する。具体的には、動作確認部45は、戸挟みしているか否かを判定している期間以外の期間において、戸挟みセンサ11の動作を確認する。すなわち、動作確認部45は、戸挟みセンサ11が、戸挟みに検知を行わないときに、動作確認を行う。従って、戸挟みセンサ11の動作確認の期間には、戸挟みに起因する出力信号が含まれることがないため、戸挟みセンサ11の動作確認を正確に行うことができる。このように戸挟みセンサ11の動作確認を行うことから、戸挟み検知装置10が、戸挟みセンサ11の動作不良に起因して戸挟みの誤判定を出力し続けるような事態の発生を抑制できる。
【0105】
戸挟み検知装置10の効果を説明する。
(1)戸挟み検知装置10の動作確認部45は、判定演算部(判断部)42が判断していない期間に、出力により前記センサが動作しているか否かを確認する。
【0106】
戸挟みセンサ11の動作を確認しない場合、戸挟みセンサ11に動作不良が生じているとき、戸挟みについて誤った判定結果を出力することになる。この点、上記構成によれば、上記「判定演算部42が判断していない期間」において動作確認部45で戸挟みセンサ11の動作を判定し、戸挟みセンサ11の動作を確認するため、戸挟み検知装置10が、戸挟みセンサ11の動作不良に起因して戸挟みの誤判定を出力し続けるような事態の発生を抑制できる。
【0107】
(2)例えば、判定演算部42が判断していない期間は、車両ドアが開閉動作しているときであり、この期間に、動作確認部45が判定を行う。
車両ドア3の開閉動作するとき回転体12が揺れるため、回転体12の揺れに基づく信号が戸挟みセンサ11から出力される。上記構成によれば、回転体12の揺れに基づく信号を検出することにより、戸挟みセンサ11の動作を確認する。本構成では、戸挟みセンサ11の動作を確認するための手段として、回転体12を回転させるための部品を用いていない。このように、部品点数を増やすことなく、戸挟みセンサ11の動作確認を行うことができる。
【0108】
(3)戸挟み検知装置10は、回転体12を強制的に回転させる後述の回転作用部39(
図28)を備えてもよい。この場合、「判定演算部42が判断していない期間」は、回転作用部39により回転体12が回転しているときであり、この期間に、動作確認部45が判定を行う。この構成によれば、回転体12を回転作用部39により回転させて、戸挟みセンサ11の動作を確認するため、戸挟み検出が可能か否かを確実に確認できる。
【0109】
(4)封止部36において、回転体12の回転軸方向に沿う方向における中央部36sは、中央部36s以外の部分よりも変形し易い。
戸挟みは、車両ドア3の上下方向の全体において、中央部で最も生じやすい。車両ドア3の中央部は、人が挟まり易い部分である。そこで、上記構成のように、封止部36の中央部36sが、中央部36s以外の部分よりも変形し易い構造とされる。これにより、人体の一部が挟まるときの痛みを軽減できる。また、上記構成では、物が封止部36よりも薄いものである場合、中央部36s以外の部分で車両ドア3の閉方向DCの移動が規制されることにより、挟まれた物に力が集中することを抑制でき、挟まれた物の変形を抑制できる。
【0110】
(5)上記戸挟み検知装置10において、回転体12は、複数の分割回転体13の連結体であり、複数の分割回転体13はジョイント部14bを介して連結される。ジョイント部14bは、中心軸D(回転軸)に垂直な断面で多角形であり、中心軸Dと平行で中心軸Dを含む断面で先端に向かって径が小さくなっている形状を備える。この構成によれば、湾曲する車両ドア3に、回転体12を有する戸挟みセンサ11を取り付けることができる。
【0111】
(6)戸挟みセンサ11の回転体12は、回転体12のうち車両ドア3における戸先側を露出させるカバー26により覆われる。カバー26は、車両ドア3の全閉時、回転体12に対向する封止部36に接触する。
【0112】
この構成によれば、全閉時において、封止部36はカバー26に接触する。このため、全閉時に、回転体12は、封止部36に接触しないか、または、回転体12が封止部36に接触する場合においても回転体12と封止部36との間の摩擦力は小さい。このように回転体12と封止部36との間の摩擦力が小さいため、戸挟みが生じたとき、挟まれた物を容易に引き抜くことができる。
【0113】
(7)車両ドア3において回転体12の上側には、車両ドア3の全閉時に封止部36が当たる当接部34aが設けられる。
車両ドア3の全閉時に、車両ドア3の当接部34aと封止部36とが接触すると、封止部36に対して車両ドア3の位置が規定される。これにより、封止部36が車両ドア3の回転体12にさらに接近することが抑制され、封止部36と回転体12との間の距離が規定される。封止部36と回転体12との距離が規定されない場合、封止部36と回転体12とが接触し、回転体12と封止部36との間に摩擦力が作用する虞がある。この点、上記構成によれば、封止部36と回転体12との間の距離が規定され、封止部36と回転体12とが接触することが少なくなるため、回転体12の回転が制限されることを抑制できる。
【0114】
(8)戸挟み検知システム9は、上記いずれかの戸挟み検知装置10と、車両ドア3を制御するドア制御装置50とを備える。
戸挟みセンサ11の動作を確認しない場合、戸挟みセンサ11に動作不良が生じているとき、戸挟みについて誤った判定を行うことになる。この点、上記構成の戸挟み検知システム9によれば、動作確認部45で戸挟みセンサ11の動作を判定し、戸挟みセンサ11の動作を確認するため、戸挟み検知システム9が、戸挟みセンサ11の動作不良に起因して戸挟みの誤判定を出力し続けるような事態の発生を抑制できる。
【0115】
<他の実施形態>
上記実施形態は、上記構成の例に限定されない。上記実施形態は、以下のように変更され得る。なお、以下の変形例では、上記実施形態の構成と実質的に構成の変更ない構成については、上記実施形態の構成と同一の符号をつけて説明する。
【0116】
・上記実施形態において、制御装置4の例として挙げられている車両情報管理装置は、上記に示した情報だけでなく、車両走行に関する情報を管理し得る。例えば、車両情報管理装置が管理し得る情報の例として、例えば、ブレーキを作動させるための情報、車輪を駆動させるための情報、管理センターとの通信情報、等が挙げられる。
【0117】
また、車両情報管理装置は、車両ドアの周辺状況及び車両ドアの動作の少なくとも1つの情報を管理するものにおいて、設定部43は、車両情報管理装置から送信されてくる、車両ドア3の周辺状況及び車両ドア3の動作の少なくとも1つの情報に基づいて基準値を変更してもよい。この構成によれば、車両情報管理装置が管理する車両ドア3の周辺状況及び車両ドア3の動作を検出するセンサを新たに追加することなく、基準値を変更できる。
【0118】
・上記実施形態において、戸挟みセンサ11の回転体12は、複数の分割回転体13を備えるが、車両ドア3が湾曲していないときは、回転体12は、回転軸C方向に分割されない1つの部品で構成され得る。
【0119】
・上記実施形態において、封止部36を以下のように変形できる。
例えば、
図22に示されるように、封止部36内に中空部36xを設けることができる。また、封止部36の上面または下面に、溝を設けることもできる。これにより、封止部36を変形し易くなるため、全閉時に人の一部が挟まったときの痛みを軽減できる。
【0120】
・上記実施形態において、カバー26の形態を以下のように変形できる。
図23に示されるように、カバー26の第1側壁28aの端面28s及び第2側壁28bの端面28tは、回転体12の回転軸Cを通りかつ車両ドア3の開閉方向DTに垂直な面と回転体12の表面12aとが交差する交線LA付近に配置されてもよい。これにより、回転体12の表面12aにおいて露出する面積が大きくなるため、戸挟みが生じたときに物と回転体12との接触面を大きくできる。これによって、物に対する回転体12の滑りが抑制されるようになるため、戸挟みを確実に検出できる。
【0121】
・
図24に示されるように、上記実施形態において、全閉時において、回転体12の表面12aと封止部36の戸先面36aとの間の空間SAの幅WAは、カバー26の厚さ以上に広げることもできる。空間SAの幅WAとは、当該空間SAにおいて、回転体12の回転軸Cを通りかつ車両ドア3の開閉方向DTに平行に延びる線に沿うところの幅を示す。これにより、車両ドア3の全閉時に、回転体12の表面12aと封止部36の戸先面36aとの間の距離をカバー26の厚さ以上になるため、回転体12と封止部36とが接触することが抑制される。
【0122】
・
図25に示されるように、カバー26の形態を以下のように変形できる。
カバー26の第1側壁28aの端面28s及び第2側壁28bの端面28tは、回転体12の回転軸Cを通りかつ車両ドア3の開閉方向DTに垂直な面と回転体12の表面12aとが交差する交線LBよりも開方向側に配置されてもよい。これにより、回転体12の表面12aにおいて露出する面積が大きくなるため、戸挟みが生じたときに物と回転体12との接触面を大きくできる。これによって、物に対する回転体12の滑りが抑制されるようになるため、戸挟みを確実に検出できる。
【0123】
・
図26に示されるように、カバー26と封止部36の接触の形態を以下のように変形できる。
実施形態において、封止部36の第1突起38a及び第2突起38bは、カバー26の第1側壁28aの内面及び第2側壁28bの外面にそれぞれ接触する。これに対して、この変形例では、封止部36の第1突起38aの戸先側端面38c及び第2突起38bの戸先側端面38dとは、カバー26の第1側壁28aの戸先側端部を覆うゴム部材28qの端面28x及び第2側壁28bの戸先側端部を覆うゴム部材28rの端面28yにそれぞれ接触する。この構成によって、車両ドア3の全閉時、一方の車両ドア3の戸先と他方の車両ドア3の戸先との間の隙間が封止される。更に好ましくは、この例において、封止部36の第1突起38a及び第2突起38bには、それぞれに中空部36yが設けられる。これにより、第1突起38a及び第2突起38bが変形し易くなるため、車両ドア3の全閉時に、2つの車両ドア3の間に隙間が形成され難くなる。
【0124】
・封止部36において、第1突起38a及び第2突起38bの一方を省略できる。これにより、戸挟みが生じた場合において、カバー26と封止部36との間に挟まる物を引き抜くとき、その力を小さくできる。
【0125】
図27に示されるように、車両幅方向DXの外側にある第2突起38bを省略すると次の効果がある。第2突起38bを省略することにより、戸挟みが生じた場合において、カバー26と封止部36との間に挟まる物を外側に引き抜くとき、その力を小さくできる。例えば、引摺りが生じたとき、車両ドア3から物が抜け易いため、引摺りがスムーズに解消される。
【0126】
・上記実施形態では、動作確認部45は、戸挟みセンサ11の動作確認を目的として、車両ドア3の開閉時の回転体12の揺れを検出しているが、以下のように、回転体12を能動的に回転させて、その回転体12の回転の動作の状態により、戸挟みセンサ11を動作確認してもよい。
【0127】
図28(a)及び
図28(b)に示されるように、封止部36の第1突起38aまたは第2突起38bに替えて、封止部36に回転体12を回転させるための回転作用部39を設けることもできる。本実施形態では、第2突起38bが省略されている。
【0128】
回転作用部39は、全閉直前に、回転体12に接触する。例えば、回転作用部39は、封止部36に設けられる。回転作用部39を有する封止部36は、回転体12の表面12aにおいて、回転体12の回転軸Cを通りかつ車両ドア3の閉方向DCに延びる面SXと回転体12の表面12aとが交差する交線LC以外の部分(以下、接触部)に、最初に接触する形状を有する。封止部36において回転作用部39は、基部37から突出する突起として構成される。回転作用部39の戸先側の頂部が、上述の接触部に接触する。これにより、回転作用部39が、車両ドア3の全閉直前に回転体12に接触し、回転体12が回転するため(
図28(b)参照)、車両ドア3の全閉直前に回転検出部30から出力される出力信号を検出することにより、戸挟みセンサ11の動作確認を行うことができる。具体的には、戸挟みセンサ11が正常であるとき、回転作用部39と回転体12とが接触するときの回転体12の回転角度の基準範囲が試験等により予め求められる。そして、回転検出部30から出力される出力信号から回転角度を算出し、この回転角度が基準範囲内にあるか否かによって、戸挟みセンサ11が動作不良であるか否かを判定する。
【0129】
要するに、回転作用部39は、回転体12の表面であって回転体12に回転力を生じさせる位置に、力を作用させるものである。
この構成によれば、次の効果を奏する。回転体12の表面であって回転体12に回転力を生じさせる位置に力を作用させるため、簡単な構成で回転体12を強制的に回転させることができる。例えば、車両ドア3の閉鎖が完了する直前で、回転体12と回転作用部39との接触過程における最初に、戸挟みセンサ11の回転体12の表面12aで交線LCからずれた部分に封止部36が接触する。これにより、車両ドア3の全閉の直前で、回転体12が円滑に回転する。このようにして、回転体12を封止部36により回転させることができるため、回転体12の動作を確認できる。また、封止部36が、回転体12に接触する構造であるため、部品点数を増やすことなく戸挟みセンサ11の動作確認を行うことができる。
【0130】
・戸挟みセンサ11の動作確認をすることを目的として回転体12を回転させる回転作用部39の配置場所は、封止部36に限定されない。回転作用部39の配置場所は、車両ドア3の移動経路の周辺で、かつ車両ドア3の開閉時に回転体12に接触可能であるところであればよい。例えば、回転作用部39は、車両ドア3を収容する収容室(戸袋)内に配置され得る。
【0131】
・戸挟みセンサ11の動作確認において、上記実施形態及びその変形例では、車両ドア3の開閉時に回転体12が回転作用部39に接触することに伴う回転体12の回転または揺れを検出するが、次の構成によれば、車両ドア3が停止状態にあるときに、戸挟みセンサ11について動作確認できる。例えば、回転作用部は、戸挟みセンサ11の回転体に接触して、回転体12を回転させる動力を加えるアクチュエータ(図示省略)として構成される。アクチュエータは、例えば、モータにより回転するロータである。車両ドア3の全開で停止しているとき、ロータは戸挟みセンサ11の回転体12に接触し、モータの動力でロータが回転する。一方、戸挟みセンサ11が正常であるとき、ロータと回転体12とが接触し、ロータが所定角度だけ回転することに伴う回転体12の回転角度の基準範囲が試験等により予め求められる。そして、車両ドア3の全開時にロータが回転するとき、戸挟みセンサ11から出力される出力信号から回転角度を算出し、この回転角度が基準範囲内にあるか否かによって、戸挟みセンサ11が動作不良であるか否かを判定する。
【0132】
・戸挟みセンサ11の動作確認は、次の期間に行われ得る。例えば、車両ドア3が閉状態(但し、戸挟みしているか否かの判断している期間以外の期間)にあるとき、戸挟みセンサ11の動作確認が行われる。具体的には、車両運行中において車両が駅のホームから離れているときに、戸挟みセンサ11の動作確認が行われる。車両ドア3が閉状態でも、回転体12が固着していない場合は、車両の運行中、回転体12が僅かに揺れ動くため、このような期間に、回転体12の動作確認を行うことができる。
【0133】
・戸挟みセンサ11の動作確認に関する各種の技術は、本実施形態及び他の実施形態に挙げられた戸先構造を有する車両ドア3だけでなく、回転体12を有する車両ドア3であれば、当該車両ドア3に適用され得る。本実施形態及び他の実施形態に挙げられた車両ドア3の戸先構造は、車両ドア3の全閉時、カバー26と封止部36とが接触し、封止部36が回転体12に接触しないものであるが、次に示すように、封止部66が回転体12に接触する戸先構造を有する車両ドア3にも、戸挟みセンサ11の動作確認に関する各種の技術が適用可能である。
【0134】
図29は、封止部66が回転体12に接触する戸先構造を有する車両ドア3の断面図である。封止部66は、上下方向DZに垂直な断面において戸先側に突出するように構成される。封止部66の外周面において車両幅方向DXにおける中間部66mが最も回転体12に近づくように、封止部66が構成される。そして、車両ドア3の全閉時、回転体12と封止部66の外周面の中間部66mとが接触する。また、封止部66には、中空部66zが設けられている。
【0135】
・戸挟み検知装置10は、動作確認部45に加えて、ドア制御装置50を備え得る。この場合、ドア制御装置50と動作確認部45とは、1つのパッケージ内に収容され得る。また、ドア制御装置50の制御部は、動作確認部45が実行する演算を行うように構成され得る。この場合、当該制御部が、動作確認部45を含む。
【符号の説明】
【0136】
1…車両、2…乗降口、3…車両ドア、3a…ドア本体部、3b…戸先側端面、3c…平坦部、3d…湾曲部、3e…傾斜部、4…制御装置、9…戸挟み検知システム、10…戸挟み検知装置、11…戸挟みセンサ(センサ)、12…回転体、12a…表面、13…分割回転体、14…シャフト、14a…シャフト本体部、14b…ジョイント部、14c…結合部、14d…孔、15…弾性部材、20…支持部材、21…ブラケット、21a…固定部、21b…支持部、21c…貫通孔、22…軸受け、22a…本体部、22b…フランジ、26…カバー、27…基部、28a…第1側壁、28b…第2側壁、28s…端面、28t…端面、28q…ゴム部材、28r…ゴム部材、28x…端面、28y…端面、29…取付部材、30…回転検出部、31…エンコーダ、32…アダプタ、33…カップリング部材、34…ケース、34a…当接部、36…封止部、36a…戸先面、36r…上部、36s…中央部、36t…下部、36x…中空部、36y…中空部、37…基部、37a…支持部材、38a…第1突起、38b…第2突起、38c…戸先側端面、38d…戸先側端面、39…回転作用部、40…判定部、41…検出値演算部、42…判定演算部(判断部)、43…設定部(基準値設定部)、45…動作確認部、50…ドア制御装置、51…ドア駆動装置、52…ドアクローズセンサ、53…ドアロックセンサ、66…封止部、66m…中間部、66z…中空部、C…回転軸、D…中心軸、DX…車両幅方向、DY…前後方向、DZ…上下方向、DT…開閉方向、DC…閉方向、LA…交線、LB…交線、LC…交線、SA…空間、T1…第1期間、T2…第2期間、T3…所定期間、WA…幅、RA…外回転方向、RB…内回転方向。