(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】プローブピン及びソケット
(51)【国際特許分類】
G01R 1/067 20060101AFI20220426BHJP
【FI】
G01R1/067 C
(21)【出願番号】P 2017249771
(22)【出願日】2017-12-26
【審査請求日】2020-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 峻
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-529789(JP,A)
【文献】特開2006-98254(JP,A)
【文献】国際公開第01/37381(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/084730(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/067
G01R 1/073
G01R 31/26
G01R 31/28
H01R 13/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に第1接触部が設けられ
、前記第1接触部よりも他端側に、第1押圧面を有する、第1プランジャと、
前記第1プランジャよりも他端側に配置され、且つ、他端側に第2接触部が設けられ
、前記第2接触部よりも一端側に、第2押圧面を有する、第2プランジャと、
前記第1接触部と前記第2接触部が相対的に近づくと、前記第1プランジャによって圧縮される第1バネと、
一端が前記第1押圧面に対向し、他端が前記第2押圧面に対向するよう配置され、前記第1接触部と前記第2接触部の距離が所定長さ未満になった場合に、前記第1プランジャによって圧縮される第2バネと、
を備
え、
前記第1プランジャの他端に、前記第2バネを案内する第1案内部が設けられている、
プローブピン。
【請求項2】
前記距離が前記所定長さよりも長い場合、前記第1押圧面と前記第2バネの一端、及び、前記第2押圧面と前記第2バネの他端の少なくとも一方は、互いに接触しない、
請求項
1に記載のプローブピン。
【請求項3】
前記第2プランジャの一端に、前記第2バネを案内する第2案内部が設けられている、
請求項
1に記載のプローブピン。
【請求項4】
前記第2バネは、コイルバネである、
請求項
1から
3のいずれかに記載のプローブピン。
【請求項5】
前記第1プランジャの少なくとも他端部、前記第2プランジャの少なくとも一端部、前記第1バネ及び前記第2バネを収容するバレルを更に備える、
請求項1から
4のいずれかに記載のプローブピン。
【請求項6】
前記バレルは、前記第2プランジャに固定されている、
請求項
5に記載のプローブピン。
【請求項7】
一端側に第1接触部が設けられた第1プランジャと、
前記第1プランジャよりも他端側に配置され、且つ、他端側に第2接触部が設けられた第2プランジャと、
前記第1接触部と前記第2接触部が相対的に近づくと、前記第1プランジャによって圧縮される第1バネと、
前記第1接触部と前記第2接触部の距離が所定長さ未満になった場合に、前記第1プランジャによって圧縮される第2バネと、
前記第1プランジャの少なくとも他端部、前記第2プランジャの少なくとも一端部、前記第1バネ及び前記第2バネを収容し、前記第2プランジャに固定されたバレルと、
を備え。
前記第1プランジャは、前記第1接触部よりも他端側に、第3押圧面を有し、
前記バレルは、前記第2接触部よりも一端側に、第4押圧面を有し、
前記第1バネは、一端が前記第3押圧面に接触し、他端が前記第4押圧面に接触する、
プローブピン。
【請求項8】
前記第1バネは、コイルバネである、
請求項
7に記載のプローブピン。
【請求項9】
一端側に第1接触部が設けられた第1プランジャと、
前記第1プランジャよりも他端側に配置され、且つ、他端側に第2接触部が設けられた第2プランジャと、
前記第1接触部と前記第2接触部が相対的に近づくと、前記第1プランジャによって圧縮される第1バネと、
前記第1バネよりも長い
第2バネであって、前記第1接触部と前記第2接触部の距離が所定長さ未満になった場合に、前記第1プランジャによって圧縮される、第2バネと、
を備えるプローブピン。
【請求項10】
前記第2バネは、前記第1バネに囲まれている、
請求項
9に記載のプローブピン。
【請求項11】
請求項1から
10のいずれかに記載のプローブピンと、
前記プローブピンを支持する支持体と、
を備える、ソケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICパッケージ等の性能試験等に使用されるプローブピン及びソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載されているように、従来、ICパッケージ等の電気部品を検査する際、ソケットが用いられている。このソケットは、電気部品と検査装置側の基板である検査用基板とを電気的に接続する複数のプローブピンと、これらのプローブピンを支持するハウジングとを備えている。
【0003】
これらのプローブピンは、電気部品の端子に接触する第1可動部材と、検査用基板の端子に接触する第2可動部材と、第1可動部材と第2可動部材の間に配置され、第1可動部材と第2可動部材とが互いに離れるように反発するコイルバネとを有する。
【0004】
このようなソケットを用いて検査を行う際、まず、ソケットが検査用基板にセットされる。このとき、第2可動部材が検査用基板の端子に押しつけられる。よって、第2可動部材が第1可動部材に相対的に近づくとともに、コイルバネが圧縮される。
【0005】
このとき、第2可動部材と検査用基板の端子との間には、コイルバネの反発力に起因する力、いわゆるプリロードが加わる。プリロードは、第2可動部材と検査用基板の端子との安定的な接触、ひいては、これらの間における接触抵抗の低減及び安定化に寄与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、プローブピンの数が多くなるに従って、コイルバネの反発力を受けるハウジングに加わる力が大きくなり、ハウジングが反ってしまう可能性が大きくなる。ハウジングが反ってしまうと、プローブピンの一部は、検査用基板から遠ざかってしまう。すると、検査用基板から遠ざかったプローブピンの第2可動部材は、検査用基板の端子から遠ざかってしまい、これらの間におけるプリロードが生じなくなる。すなわち、第2可動部材と検査用基板の端子との間における接触抵抗の低減及び安定化が損なわれる。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みなされたものであり、適切な荷重発生させることが可能なプローブピンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るプローブピンの一態様は、
一端側に第1接触部が設けられ、前記第1接触部よりも他端側に、第1押圧面を有する、第1プランジャと、
前記第1プランジャよりも他端側に配置され、且つ、他端側に第2接触部が設けられ、前記第2接触部よりも一端側に、第2押圧面を有する、第2プランジャと、
前記第1接触部と前記第2接触部が相対的に近づくと、前記第1プランジャによって圧縮される第1バネと、
一端が前記第1押圧面に対向し、他端が前記第2押圧面に対向するよう配置され、前記第1接触部と前記第2接触部の距離が所定長さ未満になった場合に、前記第1プランジャによって圧縮される第2バネと、
を備え、
前記第1プランジャの他端に、前記第2バネを案内する第1案内部が設けられている。
本発明に係るプローブピンの他の態様は、
一端側に第1接触部が設けられた第1プランジャと、
前記第1プランジャよりも他端側に配置され、且つ、他端側に第2接触部が設けられた第2プランジャと、
前記第1接触部と前記第2接触部が相対的に近づくと、前記第1プランジャによって圧縮される第1バネと、
前記第1接触部と前記第2接触部の距離が所定長さ未満になった場合に、前記第1プランジャによって圧縮される第2バネと、
前記第1プランジャの少なくとも他端部、前記第2プランジャの少なくとも一端部、前記第1バネ及び前記第2バネを収容し、前記第2プランジャに固定されたバレルと、
を備え。
前記第1プランジャは、前記第1接触部よりも他端側に、第3押圧面を有し、
前記バレルは、前記第2接触部よりも一端側に、第4押圧面を有し、
前記第1バネは、一端が前記第3押圧面に接触し、他端が前記第4押圧面に接触する。
本発明に係るプローブピンのさらに他の態様は、
一端側に第1接触部が設けられた第1プランジャと、
前記第1プランジャよりも他端側に配置され、且つ、他端側に第2接触部が設けられた第2プランジャと、
前記第1接触部と前記第2接触部が相対的に近づくと、前記第1プランジャによって圧縮される第1バネと、
前記第1バネよりも長い第2バネであって、前記第1接触部と前記第2接触部の距離が所定長さ未満になった場合に、前記第1プランジャによって圧縮される、第2バネと、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、適切な荷重を発生させることが可能なプローブピンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係るプローブピンの部分断面図。
【
図2】第1実施形態に係るプローブピンが取り付けられたソケットの部分断面図。
【
図3】プリロードが掛かった状態のソケットの部分断面図。
【
図4】被検査物を検査している状態のソケットの部分断面図。
【
図7】第2実施形態に係るプローブピンの部分断面図。
【
図8】第3実施形態に係るプローブピンの部分断面図。
【
図9】第4実施形態に係るプローブピンの部分断面図。
【
図10】第5実施形態に係るプローブピンが取り付けられたソケットの部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本明細書では、便宜的に、プローブピンの中心軸が鉛直となり、第1プランジャが下側に配置され、第2プランジャが上側に配置されているものとして説明を行う。但し、プローブピン及びソケットの配置形態がそのような形態に限られないことは言うまでもない。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るプローブピン100の非使用状態における部分断面図である。プローブピン100は、いずれも金属製の第1プランジャ110、第2プランジャ120、バレル130、第1バネ140及び第2バネ150を備えている。
【0014】
第1プランジャ110は、プローブピン100の下端に配置される棒状部材である。水平面による第1プランジャ110の切断面は、円形を呈する。第1プランジャ110の一端すなわち下端には、第1接触部111が設けられている。第1接触部111の形状は、先端が丸められた円錐状である。
【0015】
第1プランジャ110の他端側すなわち上側には、有底の筒状部112が設けられている。筒状部112の上端すなわち第1プランジャ110の上端には、円環面113が設けられている。また、筒状部112の底には、底面114が設けられている。なお、必要に応じて、底面114及び円環面113を、それぞれ第1押圧面及び第3押圧面と記載する。
【0016】
第1プランジャ110の外面には、他端側から順に、第1段部115及び第2段部116が設けられている。第1プランジャ110の外径は、第1段部115を介して、一端側が小さく、他端側が大きい。また、第1プランジャ110の外形は、第2段部116を介して、一端側が小さく、他端側が大きい。
【0017】
第2プランジャ120は、プローブピン100の上端に、第1プランジャ110と共通の軸線上に並ぶように配置される棒状部材である。水平面による第2プランジャ120の切断面は、上端付近の一部を除いて円形を呈する。第2プランジャ120の他端すなわち上端には、第2接触部121が設けられている。第2接触部121の形状は王冠状である。
【0018】
第2プランジャ120の一端すなわち下端には、棒状の支柱122が設けられている。支柱122の根元の周囲には、円錐台123が設けられている。なお、必要に応じて、円錐台123の表面(円錐面)を、第2押圧面と記載する。
【0019】
第2プランジャ120の外面の、第2接触部121と円錐台123との間に位置する部分には、第2プランジャ120を周方向に取り巻く溝124が設けられている。
【0020】
バレル130は、部位によって内径及び外径が異なる円筒状の部材である。バレル130の一端側すなわち下側には、大径部131が設けられている。大径部131の内径は、第1段部115の上側部分すなわち大径側部分が、大径部131の内面に接触しながら大径部131内を移動できるようにするために、第1段部115の上側部分の外径よりもわずかに大きくされている。
【0021】
バレル130の下端には、絞り部132が設けられている。絞り部132の内径は、第1プランジャ110の第1段部115よりも上側の部分の外径よりも小さく、第1プランジャ110の第1段部115よりも下側の部分の外径よりも大きい。
【0022】
大径部131内には、第1プランジャ110が出没自在に配置されている。大径部131及び絞り部132は上記のような寸法とされているので、第1プランジャ110の第1段部115よりも下側部分のみが、バレル130の下側から突出することができる。
【0023】
大径部131の他端側すなわち上側には、縮径部133を介して小径部134が設けられている。小径部134の内径は、筒状部112の内径と略等しい。なお、必要に応じて、縮径部133の下面を、第4押圧面と記載する。
【0024】
小径部134内には、第2プランジャ120の下部が挿入されている。小径部134には、溝124に対向する位置に、カシメ部135が設けられている。カシメ部135は、第2プランジャ120が挿入された後に、小径部134がかしめられることによって設けられる。カシメ部135が設けられることによって、第2プランジャ120とバレル130とは一体化されている。
【0025】
第1プランジャ110とバレル130の間、且つ、大径部131内には、コイルバネである第1バネ140が、所定長さ圧縮された状態で配置されている。すなわち、第1バネ140の長さは、第1バネ140の自由高さよりも小さくなっている。言い換えると、第1バネ140の一端すなわち下端は、常に、円環面113(第3押圧面)に反発力を加えて押しており、第1バネ140の他端すなわち上端は、常に、縮径部133の下面(第4押圧面)に反発力を加えて押している。
【0026】
つまり、第1バネ140は、第1プランジャ110に直接反発力を加えるとともに、バレル130を介して第2プランジャ120に反発力を加えている。なお、第1段部115よりも上側の部分が絞り部132に引っかかるため、第1プランジャ110はバレル130から抜けない。
【0027】
第1プランジャ110と第2プランジャ120の間には、コイルバネである第2バネ150が配置されている。第2バネ150は、第1バネ140によって囲まれるように、第1バネ140と同軸状に配置されている。第2バネ150の長さは、第2バネ150の自由高さとなっている。第2バネ150の一端すなわち下端は、筒状部112内に配置されるとともに底面114(第1押圧面)に接触している。第2バネ150の他端すなわち上端は、円錐台123の表面(第2押圧面)から所定長さである第1ストロークS1離れた状態で、小径部134内に配置されている。第2バネ150の上端近傍には、支柱122が挿入されている。
【0028】
なお、プローブピン100を上下反転させた場合、第2バネ150の他端すなわち下端が円錐台123の表面に接触し、第2バネ150の一端すなわち上端が底面114から第1ストロークS1離れた状態となることは言うまでもない。
【0029】
第1バネ140と第2バネ150とは、巻方向が互いに逆となっている。よって、仮にいずれか一方が蛇行して第1バネ140と第2バネ150とが接触しても、これらは絡み合いにくい。
【0030】
なお、第1バネ140及び第2バネ150は、金属等の固体製のコイルバネである。よって、第1バネ140及び第2バネ150に持たせるべきバネ特性の設計を容易に行うことができる。よって、後に説明するような荷重特性をプローブピン100に与えることが容易にできる。しかも、第2バネ150は、第1バネ140よりも常に長い。したがって、第1バネ140及び第2バネ150に持たせるべきバネ特性の設計を更に容易に行うことができ、ひいては、後に説明するような荷重特性をプローブピン100に与えることが更に容易にできる。
【0031】
以上のように構成されたプローブピン100の全長、すなわち、第1接触部111と第2接触部121の距離は、所定の第1長さL1となっている。また、プローブピン100において、第1接触部111と第2接触部121との間の導電経路は、いずれも金属製の部材である第1プランジャ110、バレル130及び第2プランジャ120によって構成されている。
【0032】
図2は、本発明の一実施形態であるソケット10の非使用状態における部分断面図である。ソケット10は、下側ハウジング11、上側ハウジング12及び上述のプローブピン100を備える。下側ハウジング11及び上側ハウジング12は支持体を構成する。
【0033】
下側ハウジング11には、水平面による切断面が円形を呈する下側貫通孔H1が設けられている。下側貫通孔H1は、小径の下側部分、大径の上側部分、及び、これらの間の径変化部分から構成されている。下側貫通孔H1の下側部分の内径は、第1プランジャ110の第2段部116よりも下側の部分の外径よりも大きく、第2段部116よりも上側の部分の外径よりも小さい。下側貫通孔H1の上側部分の内径は、バレル130の大径部131の外径よりも大きい。
【0034】
上側ハウジング12には、水平面による切断面が円形を呈する上側貫通孔H2が設けられている。上側貫通孔H2は、小径の上側部分、大径の下側部分、及び、これらの間の径変化部分から構成されている。上側貫通孔H2の上側部分の内径は、バレル130の小径部134の外径よりも大きく、大径部131の外径よりも小さい。上側貫通孔H2の下側部分の内径は、バレル130の大径部131の外径よりも大きい。上側貫通孔H2の下側部分の内径は、下側貫通孔H1の上側部分の内径に略等しい。
【0035】
下側ハウジング11と上側ハウジング12は、下側貫通孔H1と上側貫通孔H2が上下に並んで1つの貫通孔(以下、単に「貫通孔」と記載する。)を形成するように配置された状態で、互いに固定されている。
【0036】
貫通孔内には、プローブピン100が配置されている。このとき、第2段部116が下側貫通孔H1の径変化部分に接し、縮径部133が、上側貫通孔H2の径変化部分に接する。
【0037】
また、下側貫通孔H1の下側から、第1プランジャ110の一端側が、所定長さである第2ストロークS2突出する。なお、本実施形態において、第2ストロークS2は、第1ストロークS1に等しい。
【0038】
また、上側貫通孔H2の上側から、第2プランジャ120の他端側が、所定長さ(後に説明する第3ストロークS3以上の長さ)突出する。
【0039】
なお、下側貫通孔H1及び上側貫通孔H2は、それぞれ上述した寸法を有している。よって、第1プランジャ110の第2段部116よりも上側の部分が、下側貫通孔H1の下側部分内に進入することはなく、バレル130の大径部131が、上側貫通孔H2の上側部分内に進入することはない。すなわち、下側貫通孔H1の下側からも、上側貫通孔H2の上側からも、プローブピン100が抜け出ることはない。
【0040】
続いて、
図3及び
図4を参照しながら、プローブピン100及びソケット10の使用時の状態について説明する。
【0041】
図3は、第1プランジャ110の一端側に設けられた第1接触部111に対して、検査装置側の基板である検査用基板Bの端子E1が押しつけられた状態を示している。
【0042】
端子E1が押しつけられることによって、第1プランジャ110は、貫通孔の中に、第2ストロークS2(第1ストロークS1)押し込まれる。一方、バレル130は、上側貫通孔H2の径変化部によって押しとどめられ、上側に移動しない。よって、第1プランジャ110は、バレル130の中に、第2ストロークS2(すなわち第1ストロークS1)押し込まれる。したがって、プローブピン100は、第1長さL1よりも第2ストロークS2(すなわち第1ストロークS1)短い第2長さL2(=L1-S2=L1-S1)となる。
【0043】
このとき、元々圧縮されていた第1バネ140は、第2ストロークS2(すなわち第1ストロークS1)更に圧縮される。このとき第1バネ140から発生する反発力が、第1プランジャ110と検査用基板Bの端子との間に作用するプリロードとなる。
【0044】
また、このとき、第2バネ150は、第1プランジャ110によって第2ストロークS2(すなわち第1ストロークS1)持ち上げられるだけで、なんら圧縮されない。つまり、第2バネ150から反発力は発生しない。
【0045】
よって、本実施形態に係るプローブピン100及びソケット10において、プリロードとなる反発力を発生させる部材は、第1バネ140のみである。
【0046】
図4は、第2プランジャ120の一端側に設けられた第2接触部121に対して、被検査品である電気機器Oの端子E2が押しつけられた状態、すなわち、電気機器Oの検査が行われる状態を示している。
【0047】
端子E2は、第2プランジャ120が第3ストロークS3移動するまで、第2プランジャ120に対して押しつけられる。このとき、第2プランジャ120及びバレル130は、貫通孔の中に、第3ストロークS3押し込まれる。したがって、プローブピン100は、第2長さL2よりも第3ストロークS3短い第3長さL3(=L2-S3)となる。
【0048】
このとき、第1バネ140は、第3ストロークS3更に圧縮される。また、第2バネ150は、第3ストロークS3圧縮される。
【0049】
なお、このとき、筒状部112及び支柱122は、第2バネ150が蛇行しないように、第2バネ150を案内する。よって、第2バネ150が第1バネ140と絡み合うことを防止することができる。
【0050】
この状態で第1バネ140から発生する反発力と第2バネ150から発生する反発力の和が、第1接触部111と検査用基板Bの端子E1との間、及び、第2接触部121と電気機器Oの端子E2との間に荷重として作用する。
【0051】
図5は、プローブピン100の荷重特性を示すグラフである。このグラフの縦軸は、プローブピン100が外部に与える荷重である。このグラフの横軸は、第1接触部111と第2接触部121の距離(すなわちプローブピン100の全長)であり、右側ほど小さな値となる。
【0052】
図5中の太い実線は、本実施形態に係るプローブピン100の荷重特性を示している。第1接触部111及び第2接触部121が何にも接触していないとき、すなわち、プローブピン100の全長がL1であるとき、第1バネ140は所定長さ圧縮されている。よって、プローブピン100の全長をL1よりも短くするとき、わずかではあるが初期荷重P0が必要となる。
【0053】
第1プランジャ110が貫通孔の中にS2押し込まれ、プローブピン100の全長がL2になるまでは、圧縮されるバネは第1バネ140のみである。よって、プローブピン100の全長がL1からL2になる間、荷重は緩やかに増加する。
【0054】
プローブピン100の全長がL2になったとき、すなわち、第1プランジャ110が貫通孔内にS2(=S1)押し込まれたとき、プローブピン100は外部に荷重P1を与える。荷重P1はプローブピン100のプリロードであり、第1接触部111と端子E1とを安定的に導通させるのに必要十分な荷重である。
【0055】
続いて、第2プランジャ120がバレル130の中にS3押し込まれ、プローブピン100の全長がL3になる。この段階で圧縮されるバネは第1バネ140と第2バネ150である。よって、プローブピン100の全長がL2からL3になる間、荷重は、プローブピン100の全長がL2からL3になる間と比較して急激に増加する。
【0056】
プローブピン100の全長がL3になったとき、すなわち、第1プランジャ110が貫通孔内にS2(=S1)押し込まれるとともに、第2プランジャ120が貫通孔内にS3押し込まれたとき、プローブピン100は外部に荷重P2を与える。荷重P2は、電気機器Oの検査を行う際に必要となる荷重として設計段階で設定された荷重(設計荷重)であり、第1プランジャ110、バレル130及び第2プランジャ120を介して端子E1と端子E2とを安定的に導通させるのに必要十分な荷重である。
【0057】
このように、プローブピン100は、所定の長さL2となったときに、プリロードとして必要十分な荷重P1を、端子E1に加えることができる。つまり、支持体が支持するプローブピン100の数が多くなっても、支持体に加わるプリロードの合計値は過度に大きくならず、支持体が反ってしまうことが防止される。しかも、プローブピン100は、所定の長さL3となったときに、電気機器Oの検査を行う際に必要となる荷重P2を端子E1及び端子E2に確実に加えることができる。
【0058】
次に、
図6に示される比較例に係るプローブピン200を参照しながら、本実施形態に係るプローブピン100及びソケット10について、更に説明する。
【0059】
図6に示されるプローブピン200は、
図1に示されるプローブピン100と比べて、第2バネ250の長さのみが異なる。具体的には、プローブピン200の全長がL1であるとき、第2バネ250は所定長さ圧縮されているという点のみにおいて、プローブピン200はプローブピン100と異なる。
【0060】
すなわち、プローブピン200は、いずれも金属製の第1プランジャ210、第2プランジャ220、バレル230、第1バネ240及び第2バネ250を備えている。第1プランジャ210は、第1接触部211、筒状部112、円環面213、底部214、第1段部215及び第2段部216を有している。第2プランジャ220は、第2接触部221、支柱222、円錐台223及び溝224を有している。バレル230は、大径部231、絞り部232、縮径部233、小径部234及びカシメ部235を有している。
【0061】
このようなプローブピン200の荷重特性は、
図5中に破線で示されている。第1接触部211及び第2接触部221が何にも接触していないとき、すなわち、プローブピン200の全長がL1であるとき、第1バネ240及び第2バネ250はそれぞれ所定長さ圧縮されている。よって、プローブピン200の全長をL1よりも短くするとき、初期荷重P3という大きな荷重が必要となる。
【0062】
プローブピン200が、全長L1の状態から、全長L3であり外部に与える荷重がP2である状態に移行するまで、常に第1バネ240及び第2バネ250が圧縮される。よって、全長L2の状態となったとき、プローブピン200は、プリロードとして、外部に比較的大きな荷重P4を与える。つまり、比較例に係るプローブピン200が用いられる場合、支持体が支持するプローブピン200の数が多くなると、支持体に加わるプリロードの合計値は過度に大きくなり、支持体が反ってしまうおそれがある。
【0063】
これに対し、本実施形態に係るプローブピン100が用いられる場合は、上述したとおり、支持体が支持するプローブピン100の数が多くなっても、支持体に加わるプリロードの合計値が過度に大きくなり、支持体が反ってしまうことはない。
【0064】
なお、本実施形態に係るプローブピン100において、第2ストロークS2は、第1ストロークS1よりも長くても良い。この場合、プローブピン100の全長がL2となる前に、第2バネ150が圧縮され始める。そのため、
図5中に細い実線で示されるように、プローブピン100は、全長がL2となったときに、プリロードとして荷重P5を外部に与える。荷重P5は、荷重P1よりも若干大きいものの、第1バネ140及び第2バネ150の弾性係数を適切な値とすることにより、十分に小さな値とすることができる。よって、この場合も、支持体が支持するプローブピン100の数が多くなっても、支持体に加わるプリロードの合計値は過度に大きくならず、支持体が反ってしまうことが防止される。
【0065】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態に係るプローブピン300の非使用状態における部分断面図である。第2実施形態に係るプローブピン300は、第1実施形態に係るプローブピン100と比較して、第1プランジャ310の構成のみが異なる。以下、第1実施形態に係るプローブピン100と異なる点を中心に説明を行う。
【0066】
プローブピン300は、いずれも金属製の第1プランジャ310、第2プランジャ320、バレル330、第1バネ340及び第2バネ350を備えている。第2プランジャ320は、第2接触部321、支柱322、円錐台323及び溝324を有している。バレル330は、大径部331、絞り部332、縮径部333、小径部334及びカシメ部335を有している。
【0067】
第1プランジャ310は、棒状部材である第1プランジャ構成ピン310Aと、筒状部材である第1プランジャ構成スリーブ310Bとから構成されている。第1プランジャ構成ピン310Aの上側部分が、第1プランジャ構成スリーブ310Bの下側部分に挿入され、接合部319で互いに接合されることによって、両者は一体化されている。
【0068】
第1プランジャ310は、プローブピン300の下端に配置される棒状部材である。水平面による第1プランジャ310の切断面は円形を呈する。第1プランジャ310(具体的には第1プランジャ構成ピン310A)の一端すなわち下端には、第1接触部311が設けられている。第1接触部311の形状は、先端が丸められた円錐状である。
【0069】
第1プランジャ310の他端側すなわち上側には、有底の筒状部312が設けられている。第1プランジャ310(具体的には第1プランジャ構成スリーブ310B)の上端すなわち筒状部312の上端には、円環面313が設けられている。また、筒状部312の内部には、第1プランジャ構成ピン310Aの他端部が配置されている。第1プランジャ構成ピン310Aの他端部は、第2支柱317、及び、第2支柱317の根元に配置された第2円錐台318から構成されている。なお、第2円錐台318の表面(円錐面)は、第1押圧面に相当する。
【0070】
すなわち、プローブピン300は、その内部に、支柱322及び第2支柱317を有している。支柱322及び第2支柱317は、それぞれ、第2バネ350の上端部及び下端部に挿入されている。よって、第1接触部311又は第2接触部321が外部から押されて、第2バネ350が圧縮されるとき、支柱322及び第2支柱317は、第2バネ350が蛇行しないように、第2バネ350を案内する。したがって、本実施形態におけるプローブピン300においては、第2バネ350が第1バネ340と絡み合うことがより確実に防止される。
【0071】
なお、本実施形態に係るプローブピン300は、第1実施形態に係るプローブピン100と同様の荷重特性を有する。よって、本実施形態に係るプローブピン300及びこれを備えるソケットも、第1実施形態に係るプローブピン100及びソケット10と同様の効果を奏する。
【0072】
(第3実施形態)
図8は、第3実施形態に係るプローブピン400の非使用状態における部分断面図である。第3実施形態に係るプローブピン400は、第1実施形態に係るプローブピン100と比較して、第1プランジャ410の構成、第2プランジャ420の形状、第1バネ440及び第2バネ450が異なる。以下、第1実施形態に係るプローブピン100と異なる点を中心に説明を行う。
【0073】
第1プランジャ410は、先に説明した第1プランジャ110と同様の部材である。但し、筒状部412には、円柱状の棒部材である突出部417が、円環面413から所定距離他端側に突出するように挿入されている。突出部417の他端には、平面からなる突出面418(第1押圧面に相当)が形成されている。
【0074】
第2プランジャ420は、一端側に円錐台及び支柱を有しておらず、代わりに、平面からなる天井面425(第2押圧面に相当)を有している。
【0075】
第1バネ440は、複数枚の皿バネによって構成されている。第1バネ440は、円環面413(第3押圧面に相当)及び縮径部433の下面(第4押圧面に相当)を有している。第1バネ440の弾性係数は、第1実施形態に係るプローブピン100が備える第1バネ140の弾性係数に等しい。
【0076】
第2バネ450は、ゴム等の弾性体(少なくとも、第1プランジャ410、第2プランジャ420及びバレル430の素材よりもヤング率が小さい素材)からなる棒状部材である。第2バネ450の下端が突出面418に接した状態で、第2バネ450の上端は、天井面425から第1ストロークS1離れている。第2バネ450の弾性係数は、第1実施形態に係るプローブピン100が備える第1バネ150の弾性係数に等しい。
【0077】
本実施形態に係るプローブピン400は、第1実施形態に係るプローブピン100と同様の荷重特性を有する。よって、本実施形態に係るプローブピン400及びこれを備えるソケットも、第1実施形態に係るプローブピン100及びソケット10と同様の効果を奏する。
【0078】
(第4実施形態)
図9は、第4実施形態に係るプローブピン500の非使用状態における部分断面図である。以下、第1実施形態に係るプローブピン100と異なる点を中心に説明を行う。
【0079】
バレル530は、大径部531の内側に、大径部531と同心の内側スリーブ536を有している。大径部531の上部と内側スリーブ536の上部は、縮径部533を介して連結されている。
【0080】
第1プランジャ510の筒状部512は、第1段部515よりも上側(大径側)の部分が大径部531の内面及び内側スリーブ536の外面に密接するように、大径部531と内側スリーブ536の間に挿入されている。
【0081】
大径部531、内側スリーブ536、縮径部533及び筒状部512によって、密封された閉空間Rが形成されている。閉空間Rには、空気等の圧縮性流体が封入されている。
【0082】
また、バレル530の小径部534、又は、第1プランジャ510の筒状部512には、それらの内外を連通する図示しない通気口が設けられている。
【0083】
第1接触部511又は第2接触点521に荷重が加わると、第1プランジャ510がバレル530内に入り込むように、第1プランジャ510とバレル530は相対的に移動する。このとき、閉空間R内の流体が圧縮され、反発力が発生する。この反発力が、第1接触点511及び第2接触点521と、図示しない端子との間に加わる荷重となる。すなわち、大径部531、内側スリーブ536、縮径部533、筒状部512、及び、閉空間R内に封入された圧縮性流体によって、流体バネである第1バネ540が構成されている。
【0084】
なお、バレル530の小径部534、又は、第1プランジャ510の筒状部512には、それらの内外を連通する図示しない通気口が設けられているので、内側スリーブ536よりも内側に流体バネが形成されることはない。
【0085】
流体バネである第1バネ540の弾性係数を適切に設定することにより、本実施形態に係るプローブピン500に、第1実施形態に係るプローブピン100と同様の荷重特性を持たせることができる。そうすることによって、本実施形態に係るプローブピン500及びこれを備えるソケットも、第1実施形態に係るプローブピン100及びソケット10と同様の効果を奏することができる。
【0086】
(第5実施形態)
図10は、第5実施形態に係るプローブピン600及びソケット20の非使用状態における部分断面図である。第5実施形態に係るプローブピン600は、第1実施形態に係るプローブピン100と比較して、第2プランジャ620の構造が異なる。また、第5実施形態に係るプローブピン600は、バレルを備えていない点で、第1実施形態に係るプローブピン100と異なる。以下、第1実施形態に係るプローブピン100と異なる点を中心に説明を行う。なお、支持体の構成に相違はない。
【0087】
第2プランジャ620は、一端側に、支柱622及び円錐台623、並びに、これらを取り囲むスカート部625を備えている。スカート部625は、上側(他端側)の円筒部と、下側(一端側)の拡径部とから構成されている。スカート部625の下端の外径は、上側ハウジング22に設けられた上側貫通孔H2の上側部分の内径よりも大きく、上側貫通孔H2の下側部分の内径よりも小さい。スカート部の下側の拡径部の下面(第4押圧面に相当)には、第1バネ640の上端が接している。スカート部の下側の拡径部の上面は、第1バネ640によって、上側貫通孔H2の径変化部分に押しつけられている。
【0088】
第1接触部611に、図示しない端子が押しつけられると、第1プランジャ610は、貫通孔の中に第2ストロークS2進入する。このとき、第1バネ640の反発力によって、図示しない端子と第1プランジャ610との間にプリロード(荷重P1、
図5参照)がかかる。
【0089】
また、第2接触部621に、図示しない端子が押しつけられると、第2プランジャ620は、上側貫通孔H2の中に第3ストロークS3(
図4参照)進入する。このとき、第1バネ640及び第2バネ650の反発力によって、図示しない端子と第1接触部611との間、及び、図示しない他の端子と第2接触部621との間に、予め設定されている所定の荷重(荷重P2、
図5参照)が加わる。
【0090】
すなわち、本実施形態に係るプローブピン600は、第1実施形態に係るプローブピン100と同様の荷重特性を有する。よって、本実施形態に係るプローブピン600及びこれを備えるソケットも、第1実施形態に係るプローブピン100及びソケット10と同様の効果を奏する。
【0091】
なお、本実施形態の場合、第1接触部611と第2接触部621との間の導電経路は、第1プランジャ610、第1バネ640及び第2プランジャ620という経路と、第1プランジャ610、第2バネ650及び第2プランジャ620という経路とから構成される。
【0092】
本発明が、先に説明された実施形態には限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形や応用が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、プローブピン及びソケットとして好適に利用される。
【符号の説明】
【0094】
100、200、300、400、500、600 プローブピン
110、210、310、410、510、610 第1プランジャ
111、211、311、411、511、611 第1接触部
112、212、312、412、512 筒状部
113、213、313、413、513 円環面
114、214、514、614 底面
115、215、315、415、515 第1段部
116、216、316、416、516、616 第2段部
120、220、320、420、520、620 第2プランジャ
121、221、321、421、521、621 第2接触部
122、222、322、522、622 支柱
123、223、323、523、623 円錐台
124、224、324、424、524 溝
130、230、330、430、530 バレル
131、231、331、431、531 大径部
132、232、332、432、532 絞り部
133、233、333、433、533 縮径部
134、234、334、434、534 小径部
135、235、335、435、535 カシメ部
140、240、340、440、540、640 第1バネ
150、250、350、450、550、650 第2バネ
10、20 ソケット
11、21 下側ハウジング
12、22 上側ハウジング
310A 第1プランジャ構成ピン
310B 第1プランジャ構成スリーブ
317 第2支柱
318 第2円錐台
319 接合部
417 突出部
418 突出面
425 天井面
536 内側スリーブ
625 スカート部
S1 第1ストローク
S2 第2ストローク
S3 第3ストローク
L1 第1長さ
L2 第2長さ
L3 第3長さ
H1 下側貫通孔
H2 上側貫通孔
B 検査用基板
E1、E2 端子
O 電気機器
R 閉空間