(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】アンチブロッキング剤及びアンチブロッキングフィルム
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20220426BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20220426BHJP
C08F 283/12 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
C08F290/06
C08J7/04 Z CFD
C08F283/12
(21)【出願番号】P 2017251497
(22)【出願日】2017-12-27
【審査請求日】2020-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2017001126
(32)【優先日】2017-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 沙織
(72)【発明者】
【氏名】山田 恭幸
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/076322(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/046374(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
10%K値が500N/mm
2未満である粒子を含有
し、
前記粒子が、シリコーン樹脂を含む基材粒子と、前記基材粒子の表面上に、有機樹脂を含むバリア部とを備える、アンチブロッキング剤。
【請求項2】
前記バリア部の厚みが、5nm以上、300nm以下である、請求項
1に記載のアンチブロッキング剤。
【請求項3】
前記基材粒子の表面積全体に占める前記バリア部により被覆されている部分の面積である被覆率が、90%以上である、請求項
1又は
2に記載のアンチブロッキング剤。
【請求項4】
前記バリア部が、粒状物の集合体であり、
前記バリア部の前記粒状物の粒子径が、5nm以上、300nm以下である、請求項
1~
3のいずれか1項に記載のアンチブロッキング剤。
【請求項5】
前記バリア部の材料が、芳香族骨格を有し、かつ、ビニル基を有する化合物を含む、請求項
1~
4のいずれか1項に記載のアンチブロッキング剤。
【請求項6】
前記バリア部の材料が、ジビニルベンゼン化合物を含む、請求項
1~
5のいずれか1項に記載のアンチブロッキング剤。
【請求項7】
前記10%K値が500N/mm
2未満である粒子の粒子径が、1μm以上、20μm以下である、請求項1~
6のいずれか1項に記載のアンチブロッキング剤。
【請求項8】
基材フィルムと、前記基材フィルムの少なくとも一方の表面に配置されたアンチブロッキング部とを備えるフィルムにおいて、前記アンチブロッキング部の材料として用いられるアンチブロッキング剤である、請求項1~
7のいずれか1項に記載のアンチブロッキング剤。
【請求項9】
基材フィルムと、
前記基材フィルムの少なくとも一方の表面に配置されたアンチブロッキング部とを備え、
前記アンチブロッキング部の材料が、請求項1~
8のいずれか1項に記載のアンチブロッキング剤である、アンチブロッキングフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材粒子を含有するアンチブロッキング剤に関する。また、本発明は、上記アンチブロッキング剤を用いたアンチブロッキングフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラスチックフィルムの表面は平滑である。このため、プラスチックフィルム同士を重ね合わせて長く接触させたり、重ね合わされたプラスチックフィルムに熱が付与されたりすると、プラスチックフィルム同士が互いに密着して、プラスチックフィルム同士の剥離が困難になることがある。この現象はブロッキングと呼ばれる。
【0003】
ブロッキングが、プラスチックフィルムの製造工程等で発生すると、製造装置の停止による生産性の低下や、得られるプラスチックフィルムの外観の悪化等の問題が生じる。
【0004】
ブロッキングを防止するためには、フィルムの表面を粗くして、フィルム同士が接触する面積を少なくする方法がある。ブロッキングを防止する具体的な方法としては、フィルム成形用樹脂の溶融成形時にアンチブロッキング剤であるフィラーを混練する方法、複数の樹脂を混合して硬化させる際に、混合した樹脂に相分離を生じさせ、表面に微細な凹凸を形成する方法、及びフィルムの表面にアンチブロッキング剤であるフィラーを塗布する方法等が挙げられる。
【0005】
下記の特許文献1には、チューブ状シートを押し出しし、一対のピンチロールにより引き取られたチューブ状の多層未延伸原反を用いてインフレーション二軸延伸するポリプロピレン系多層延伸フィルムの製造方法が開示されている。このポリプロピレン系多層延伸フィルムでは、ポリプロピレン系樹脂により構成されたチューブ最内層に、アンチブロッキング剤が添加されており、ポリプロピレン系樹脂により構成されたチューブ最外層に、アンチブロッキング剤が添加されていない。上記チューブ最内層の厚みは、チューブ状多層未延伸原反の全体厚みの50%以下である。上記アンチブロッキング剤は、平均粒径が0.2~5μmの球状物である。上記アンチブロッキング剤の含有量は、1000~7000ppmである。特許文献1には、上記アンチブロッキング剤が、シリコーン樹脂微粉末であることが記載されている。
【0006】
下記の特許文献2には、第1成分、第2成分及びシリコーン系化合物を含むアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物が開示されている。上記第1成分は、少なくとも1種以上の樹脂である。上記第2成分は、1種以上のモノマーもしくはオリゴマーの群から選択される1種以上のモノマーもしくはオリゴマーである。上記アンチブロッキング性硬化性樹脂組成物では、上記組成物の塗布後に上記第1成分の樹脂が相分離により析出し、表面に微細な凹凸が形成される。特許文献2では、相分離や析出を制御して、より均一で微細な凹凸を形成するために、有機粒子を用いてもよいことが記載されており、有機粒子として、シリコーンが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平4-008530号公報
【文献】特開2009-013384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1,2のような従来の方法では、フィルムをロール状に巻き取る際に、アンチブロッキング剤(樹脂微粉末等)と接触するフィルムの表面が、アンチブロッキング剤(樹脂微粉末等)によって傷付くことがある。
【0009】
また、従来のアンチブロッキング剤(樹脂微粉末等)では、ブロッキングを抑制する機能が十分ではなく、ロール状に巻き取ったフィルム同士が貼り付いて、ロールの巻き出しが困難なことがある。従来のアンチブロッキング剤(樹脂微粉末等)では、フィルムの表面の傷付きの抑制と、フィルム同士の貼り付きの抑制とを、両立することは困難である。
【0010】
さらに、従来のアンチブロッキング剤(樹脂微粉末等)では、ロール状に巻き取ったフィルムを巻き出す際に、フィルムの表面からアンチブロッキング剤(樹脂微粉末等)が脱落することがある。
【0011】
本発明の目的は、フィルムの表面の傷付きを抑え、フィルム同士の貼り付きを効果的に抑制することができるアンチブロッキング剤を提供することである。また、本発明の目的は、上記アンチブロッキング剤を用いたアンチブロッキングフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の広い局面によれば、10%K値が500N/mm2未満である粒子を含有する、アンチブロッキング剤が提供される。
【0013】
本発明に係るアンチブロッキング剤のある特定の局面では、前記粒子が、シリコーン樹脂を含む基材粒子と、前記基材粒子の表面上に、有機樹脂を含むバリア部とを備える。
【0014】
本発明に係るアンチブロッキング剤のある特定の局面では、前記バリア部の厚みが、5nm以上、300nm以下である。
【0015】
本発明に係るアンチブロッキング剤のある特定の局面では、前記基材粒子の表面積全体に占める前記バリア部により被覆されている部分の面積である被覆率が、90%以上である。
【0016】
本発明に係るアンチブロッキング剤のある特定の局面では、前記バリア部が、粒状物の集合体であり、前記バリア部の前記粒状物の粒子径が、5nm以上、300nm以下である。
【0017】
本発明に係るアンチブロッキング剤のある特定の局面では、前記バリア部の材料が、芳香族骨格を有し、かつ、ビニル基を有する化合物を含む。
【0018】
本発明に係るアンチブロッキング剤のある特定の局面では、前記バリア部の材料が、ジビニルベンゼン化合物を含む。
【0019】
本発明に係るアンチブロッキング剤のある特定の局面では、前記10%K値が500N/mm2未満である粒子の粒子径が、1μm以上、20μm以下である。
【0020】
本発明に係るアンチブロッキング剤のある特定の局面では、前記アンチブロッキング剤は、基材フィルムと、前記基材フィルムの少なくとも一方の表面に配置されたアンチブロッキング部とを備えるフィルムにおいて、前記アンチブロッキング部の材料として用いられるアンチブロッキング剤である。
【0021】
本発明の広い局面によれば、基材フィルムと、前記基材フィルムの少なくとも一方の表面上に配置されたアンチブロッキング部とを備え、前記アンチブロッキング部の材料が、上述したアンチブロッキング剤である、アンチブロッキングフィルムが提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るアンチブロッキング剤は、10%K値が500N/mm2未満である粒子を含有するので、フィルムの表面の傷付きを抑え、フィルム同士の貼り付きを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るアンチブロッキング剤を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2の実施形態に係るアンチブロッキング剤を示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すアンチブロッキング剤を用いたアンチブロッキングフィルムの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0025】
(アンチブロッキング剤)
本発明に係るアンチブロッキング剤は、粒子を含有する。本発明に係るアンチブロッキング剤は、複数の上記粒子を含有することが好ましい。本発明に係るアンチブロッキング剤は、複数の上記粒子である粉体を含有することが好ましい。本発明に係るアンチブロッキング剤では、上記粒子の10%K値(粒子を10%圧縮したときの圧縮弾性率)が、500N/mm2未満である。上記アンチブロッキング剤は、上記粒子以外の成分を含んでいてもよい。フィルム成形前に、上記アンチブロッキング剤は、バインダー及び散乱粒子等と混合されて用いられてもよい。
【0026】
本発明では、上記の構成が備えられているので、フィルムの表面の傷付きを抑え、フィルム同士の貼り付きを効果的に抑制することができる。本発明に係るアンチブロッキング剤を用いることにより、フィルムの表面の傷付きの抑制と、フィルム同士の貼り付きの抑制とを、両立することが可能となる。
【0027】
フィルムの表面の傷付きをより一層効果的に抑え、フィルム同士の貼り付きをより一層効果的に抑制する観点からは、上記粒子の10%K値は、好ましくは200N/mm2未満、より好ましくは100N/mm2未満である。上記粒子の10%K値の下限は特に限定されない。上記粒子の10%K値は、10N/mm2以上であってもよい。
【0028】
上記粒子の10%K値(粒子を10%圧縮したときの圧縮弾性率)は、以下のようにして測定できる。
【0029】
微小圧縮試験機を用いて、円柱(直径50μm、ダイヤモンド製)の平滑圧子端面で、25℃、最大試験荷重90mNを30秒かけて負荷する条件下で粒子を圧縮する。このときの荷重値(N)及び圧縮変位(mm)を測定する。得られた測定値から、10%K値を下記式により求めることができる。上記微小圧縮試験機として、例えば、フィッシャー社製「フィッシャースコープH-100」等が用いられる。上記粒子の10%K値は、任意に選択された50個の粒子の10%K値を算術平均することにより、算出することが好ましい。
【0030】
10%K値(N/mm2)=(3/21/2)・F・S-3/2・R-1/2
F:粒子が10%圧縮変形したときの荷重値(N)
S:粒子が10%圧縮変形したときの圧縮変位(mm)
R:粒子の半径(mm)
【0031】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るアンチブロッキング剤を示す断面図である。
【0032】
図1に示す粒子1は、基材粒子2と、基材粒子2の表面上にバリア部3とを備える。
【0033】
図2は、本発明の第2の実施形態に係るアンチブロッキング剤を示す断面図である。
【0034】
図2に示す粒子1Aは、粒子単体であって、バリア部を備えていない。
【0035】
フィルムの表面の傷付きをより一層効果的に抑え、フィルム同士の貼り付きをより一層効果的に抑制する観点からは、上記粒子は、シリコーン樹脂を含むことが好ましく、シリコーン樹脂を含む基材粒子を備えることがより好ましい。フィルムの表面の傷付きをより一層効果的に抑え、フィルム同士の貼り付きをより一層効果的に抑制する観点、及びフィルムの表面からの粒子の脱落をより一層効果的に抑制する観点からは、上記粒子は、基材粒子と、上記基材粒子の表面上にバリア部とを備えることが好ましい。フィルムの表面の傷付きをより一層効果的に抑え、フィルム同士の貼り付きをより一層効果的に抑制する観点、及びフィルムの表面からの粒子の脱落をより一層効果的に抑制する観点からは、上記粒子は、有機樹脂を含むバリア部を備えることがより好ましい。上記バリア部は、層状に形成されていてもよく、バリア層であってもよい。上記粒子は、上記バリア部を備えていなくてもよく、粒子単体であってもよい。
【0036】
上記バリア部は、上記基材粒子の表面に接していることが好ましく、上記基材粒子の表面を被覆していることがより好ましい。上記基材粒子は、上記基材粒子の表面が上記バリア部により被覆された被覆粒子であってもよい。上記バリア部は、上記基材粒子の表面を完全に被覆していてもよく、上記基材粒子の表面を完全に被覆していなくてもよい。上記基材粒子は、上記バリア部によって被覆されていない部分を有していてもよい。
【0037】
上記バリア部は、有機樹脂を含むことが好ましい。上記バリア部は、粒状物の集合体であることが好ましく、複数の粒状物により形成されていることが好ましい。複数の上記粒状物は、上記基材粒子の表面に接していることが好ましく、上記基材粒子の表面を被覆していることがより好ましい。上記基材粒子は、上記基材粒子の表面が複数の上記粒状物により被覆された被覆粒子であることが好ましい。複数の上記粒状物は、上記基材粒子の表面を完全に被覆していてもよく、上記基材粒子の表面を完全に被覆していなくてもよい。
【0038】
複数の上記粒状物により、単層構造のバリア部が形成されていてもよく、2層以上の積層構造のバリア部が形成されていてもよい。
【0039】
バリア部の厚みは、上記バリア部が上記基材粒子の表面上に配置されている部分のバリア部の厚みを平均することにより、算出することができる。上記バリア部の厚みには、上記バリア部が上記基材粒子の表面上に配置されていない部分(バリア部の厚み(0mm))は考慮されない。
【0040】
フィルムの表面からの粒子の脱落をより一層効果的に抑制する観点からは、上記バリア部の厚みは、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上であり、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。
【0041】
上記バリア部の厚みは、例えば、断面観察により測定できる。断面観察するために、アンチブロッキング剤を埋め込み用樹脂に埋め込んで、アンチブロッキング剤の断面を露出させてもよい。
【0042】
フィルムの表面からの粒子の脱落をより一層効果的に抑制する観点からは、上記有機樹脂は、シリコーン樹脂ではないことが好ましい。フィルムの表面からの粒子の脱落をより一層効果的に抑制する観点からは、上記有機樹脂は、シロキサン結合を有さないことが好ましい。フィルムの表面からの粒子の脱落をより一層効果的に抑制する観点からは、上記有機樹脂がケイ素原子を含む場合に、上記有機樹脂中のケイ素原子の含有量は、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下、より一層好ましくは1重量%以下である。上記有機樹脂中のケイ素原子の含有量の下限は特に限定されない。上記有機樹脂中のケイ素原子の含有量は、0%(未含有)以上であってもよい。上記有機樹脂中のケイ素原子の含有量は、0%(未含有)であってもよい。
【0043】
上記有機樹脂中のケイ素原子の含有量は、上記粒子を室温硬化性樹脂に分散させた後、上記室温硬化性樹脂を常温硬化させて、上記粒子の中心の断面が出るようにミクロトームで切片を切り出し、その断面をTEM-EDXにて観察し、元素組成比を分析することにより測定できる。
【0044】
フィルムの表面の傷付きをより一層効果的に抑え、フィルム同士の貼り付きをより一層効果的に抑制する観点、及びフィルムの表面からの粒子の脱落をより一層効果的に抑制する観点からは、上記基材粒子の表面積全体に占める上記バリア部により被覆されている部分の面積である被覆率は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。上記被覆率の上限は特に限定されない。上記被覆率は、99%以下であってもよい。
【0045】
上記被覆率は、有機樹脂を含むバリア部を備える基材粒子を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、バリア部がある部分の表面積の基材粒子の投影面積に対する百分率を算出することにより求められる。
【0046】
フィルムの表面の傷付きをより一層効果的に抑え、フィルム同士の貼り付きをより一層効果的に抑制する観点、及びフィルムの表面からの粒子の脱落をより一層効果的に抑制する観点からは、上記バリア部は、粒状物の集合体であることが好ましく、複数の粒状物を有することが好ましく、複数の粒状物により形成されていることが好ましい。フィルムの表面の傷付きをより一層効果的に抑え、フィルム同士の貼り付きをより一層効果的に抑制する観点、及びフィルムの表面からの粒子の脱落をより一層効果的に抑制する観点からは、上記バリア部の上記粒状物の粒子径は、好ましくは5nm以上、より好ましくは30nm以上、さらに好ましくは50nm以上である。フィルムの表面の傷付きをより一層効果的に抑え、フィルム同士の貼り付きをより一層効果的に抑制する観点、及びフィルムの表面からの粒子の脱落をより一層効果的に抑制する観点からは、上記バリア部の上記粒状物の粒子径は、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下である。
【0047】
上記粒状物の粒子径は、任意に選択された50個の粒状物を走査型電子顕微鏡で観察し、観察された画像における各粒状物の最大径を算術平均することにより、算出することが好ましい。
【0048】
フィルムの表面の傷付きをより一層効果的に抑え、フィルム同士の貼り付きをより一層効果的に抑制する観点からは、上記粒子の圧縮回復率は、好ましくは1%以上、より好ましくは5%以上であり、好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下である。
【0049】
上記粒子の圧縮回復率は、以下のようにして測定できる。
【0050】
試料台上に粒子を散布する。散布された粒子1個について、微小圧縮試験機を用いて、円柱(直径100μm、ダイヤモンド製)の平滑圧子端面で、25℃で、粒子の中心方向に、粒子が40%圧縮変形するまで負荷(反転荷重値)を与える。その後、原点用荷重値(0.40mN)まで除荷を行う。この間の荷重-圧縮変位を測定し、下記式から圧縮回復率を求めることができる。なお、負荷速度は0.33mN/秒とする。上記微小圧縮試験機として、例えば、フィッシャー社製「フィッシャースコープH-100」等が用いられる。
【0051】
圧縮回復率(%)=[L2/L1]×100
L1:負荷を与えるときの原点用荷重値から反転荷重値に至るまでの圧縮変位
L2:負荷を解放するときの反転荷重値から原点用荷重値に至るまでの除荷変位
【0052】
フィルムの表面の傷付きをより一層効果的に抑え、フィルム同士の貼り付きをより一層効果的に抑制する観点、及びフィルムの表面からの粒子の脱落をより一層効果的に抑制する観点からは、上記粒子の粒子径は、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下である。
【0053】
フィルムの表面の傷付きをより一層効果的に抑え、フィルム同士の貼り付きをより一層効果的に抑制する観点、及びフィルムの表面からの粒子の脱落をより一層効果的に抑制する観点からは、上記基材粒子の粒子径は、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上である。フィルムの表面の傷付きをより一層効果的に抑え、フィルム同士の貼り付きをより一層効果的に抑制する観点、及びフィルムの表面からの粒子の脱落をより一層効果的に抑制する観点からは、上記基材粒子の粒子径は、好ましくは20μm以下、より好ましくは20μm未満、さらに好ましくは15μm以下である。
【0054】
上記粒子及び上記基材粒子の粒子径は、任意に選択された50個の粒子又は基材粒子をレーザー回折式粒度分布計を用いて測定し、各粒子又は各基材粒子の粒子径を算術平均することにより、求めることが好ましい。上記レーザー回折式粒度分布計としては、マルバルーン社製「マスターサイザー2000」等が挙げられる。
【0055】
フィルムの表面の傷付きをより一層効果的に抑え、フィルム同士の貼り付きをより一層効果的に抑制する観点、及びフィルムの表面からの粒子の脱落をより一層効果的に抑制する観点からは、上記粒子の粒子径の変動係数(CV値)は、好ましくは10%以下、より好ましくは7%以下である。上記粒子の粒子径のCV値の下限は特に限定されない。上記粒子の粒子径のCV値は、0.1%以上であってもよい。上記粒子の粒子径の変動係数(CV値)が、上記上限以下であると、フィルムの歩留まりをより一層向上させることができる。上記粒子の粒子径の変動係数(CV値)が、上記下限以上であると、フィルムの光拡散特性をより一層良好にすることができる。
【0056】
上記粒子の粒子径の変動係数(CV値)は、下記式で表される。
【0057】
CV値(%)=(ρ/Dn)×100
ρ:粒子の粒子径の標準偏差
Dn:粒子の粒子径の平均値
【0058】
フィルムの表面の傷付きをより一層効果的に抑え、フィルム同士の貼り付きをより一層効果的に抑制する観点からは、アンチブロッキング剤100重量%中、上記粒子の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上であり、好ましくは40重量%以下、より好ましくは35重量%以下である。
【0059】
また、上記アンチブロッキング剤には、各種添加剤が含まれていてもよい。上記添加剤としては、各種安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、カップリング剤又は着色剤等が挙げられる。上記添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0060】
(粒子単体である粒子、又は、基材粒子)
上記粒子は、シリコーン樹脂を含むことが好ましい。上記基材粒子は、シリコーン樹脂を含むことが好ましい。上記粒子又は上記基材粒子の材料は、好ましくは、ラジカル重合性基を有するシラン化合物と炭素数5以上の疎水基を有するシラン化合物とを含むか、ラジカル重合性基を有しかつ炭素数5以上の疎水基を有するシラン化合物を含むか、もしくは、ラジカル重合性基を両末端に有するシラン化合物を含むことが好ましい。これらの材料を反応させた場合には、シロキサン結合が形成される。得られる粒子又は基材粒子において、ラジカル重合性基及び炭素数5以上の疎水基は一般に残存する。このような材料を用いることで、1μm以上、200μm以下の粒子径を有する上記粒子又は上記基材粒子を容易に得ることができ、しかも上記粒子又は上記基材粒子の耐薬品性を高くし、かつ透湿性を低くすることができる。
【0061】
上記ラジカル重合性基を有するシラン化合物では、ラジカル重合性基はケイ素原子に直接結合していることが好ましい。上記ラジカル重合性基を有するシラン化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0062】
上記ラジカル重合性基を有するシラン化合物は、アルコキシシラン化合物であることが好ましい。上記ラジカル重合性基を有するシラン化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジビニルメトキシビニルシラン、ジビニルエトキシビニルシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、及び1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0063】
上記炭素数5以上の疎水基を有するシラン化合物では、炭素数5以上の疎水基はケイ素原子に直接結合していることが好ましい。上記炭素数5以上の疎水基を有するシラン化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0064】
上記炭素数5以上の疎水基を有するシラン化合物は、アルコキシシラン化合物であることが好ましい。上記炭素数5以上の疎水基を有するシラン化合物としては、フェニルトリメトキシシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、ジメチルメトキシフェニルシラン、ジメチルエトキシフェニルシラン、ヘキサフェニルジシロキサン、1,3,3,5-テトラメチル-1,1,5,5-テトラペニルトリシロキサン、1,1,3,5,5-ペンタフェニル-1,3,5-トリメチルトリシロキサン、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン、フェニルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、及びオクタフェニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。
【0065】
上記ラジカル重合性基を有しかつ炭素数5以上の疎水基を有するシラン化合物では、ラジカル重合性基はケイ素原子に直接結合していることが好ましく、炭素数5以上の疎水基はケイ素原子に直接結合していることが好ましい。上記ラジカル重合性基を有しかつ炭素数5以上の疎水基を有するシラン化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0066】
上記ラジカル重合性基を有しかつ炭素数5以上の疎水基を有するシラン化合物としては、フェニルビニルジメトキシシラン、フェニルビニルジエトキシシラン、フェニルメチルビニルメトキシシラン、フェニルメチルビニルエトキシシラン、ジフェニルビニルメトキシシラン、ジフェニルビニルエトキシシラン、フェニルジビニルメトキシシラン、フェニルジビニルエトキシシラン、及び1,1,3,3-テトラフェニル-1,3-ジビニルジシロキサン等が挙げられる。
【0067】
上記粒子又は上記基材粒子を効率的に得る観点、及び粒子の10%K値を好適な範囲に制御する観点からは、上記ラジカル重合性基を有するシラン化合物と、上記炭素数5以上の疎水基を有するシラン化合物とを用いることが好ましい。この場合に、上記粒子又は上記基材粒子を効率的に得る観点、及び粒子の10%K値を好適な範囲に制御する観点からは、上記ラジカル重合性基を有するシラン化合物と、上記炭素数5以上の疎水基を有するシラン化合物とは重量比で、1:1~1:20で用いることが好ましく、1:5~1:15で用いることがより好ましい。
【0068】
上記粒子又は上記基材粒子を得るためのシラン化合物の全体において、ラジカル重合性基の数と炭素数5以上の疎水基の数とは、1:0.5~1:20であることが好ましく、1:1~1:15であることがより好ましい。
【0069】
粒子の10%K値を好適な範囲に制御する観点からは、上記粒子又は上記基材粒子は、1つのケイ素原子に2つのメチル基が結合したジメチルシロキサン骨格を有することが好ましく、上記粒子の材料又は上記基材粒子の材料は、1つのケイ素原子に2つのメチル基が結合したシラン化合物を含むことが好ましい。
【0070】
粒子の10%K値を好適な範囲に制御する観点からは、上記粒子又は上記基材粒子は、上述したシラン化合物を、ラジカル重合開始剤により反応させて、シロキサン結合を形成させることが好ましい。一般に、酸又は塩基触媒を用いた重縮合によって粒子又は基材粒子を合成する場合には、10μm以上、500μm以下の粒子径を有する粒子又は基材粒子を得ることは困難であり、100μm以下の粒子径を有する粒子又は基材粒子を得ることは特に困難である。これに対して、ラジカル重合開始剤を用いる場合でも、上記構成のシラン化合物を用いることで、1μm以上、500μm以下の粒子径を有する粒子又は基材粒子を得ることができ、100μm以下の粒子径を有する粒子又は基材粒子を得ることもできる。
【0071】
上記粒子又は上記基材粒子を得るために、ケイ素原子に結合した水素原子を有するシラン化合物を用いなくてもよい。この場合には、金属触媒を用いずに、ラジカル重合開始剤を用いて、シラン化合物を重合させることができる。結果として、上記粒子又は上記基材粒子に金属触媒が含まれないようにすることができ、上記粒子又は上記基材粒子における金属触媒の含有量を少なくすることができ、粒子の10%K値を好適な範囲に制御することができる。
【0072】
上記粒子又は上記基材粒子の具体的な製造方法としては、懸濁重合法、分散重合法、ミニエマルション重合法、又は乳化重合法等でシラン化合物の重合反応を行い、粒子又は基材粒子を作製する方法等がある。シラン化合物の重合を進行させてオリゴマーを得た後、懸濁重合法、分散重合法、ミニエマルション重合法、又は乳化重合法等で重合体(オリゴマー等)であるシラン化合物の重合反応を行い、粒子又は基材粒子を作製してもよい。例えば、ビニル基を有するシラン化合物を重合させて、末端においてケイ素原子に結合したビニル基を有するシラン化合物を得てもよい。フェニル基を有するシラン化合物を重合させて、重合体(オリゴマー等)として、側鎖においてケイ素原子に結合したフェニル基を有するシラン化合物を得てもよい。ビニル基を有するシラン化合物とフェニル基を有するシラン化合物とを重合させて、重合体(オリゴマー等)として、末端においてケイ素原子に結合したビニル基を有しかつ側鎖においてケイ素原子に結合したフェニル基を有するシラン化合物を得てもよい。
【0073】
上記アンチブロッキング剤は、基材フィルムと、上記基材フィルムの少なくとも一方の表面に配置されたアンチブロッキング部とを備えるフィルムにおいて、上記アンチブロッキング部の材料として用いられることが好ましい。
【0074】
(バリア部)
フィルムの表面の傷付きをより一層効果的に抑え、フィルム同士の貼り付きをより一層効果的に抑制する観点、及びフィルムの表面からの粒子の脱落をより一層効果的に抑制する観点からは、上記バリア部の材料は、芳香族骨格を有する化合物を含むことが好ましく、ビニル基を有する化合物を含むことが好ましい。フィルムの表面の傷付きをより一層効果的に抑え、フィルム同士の貼り付きをより一層効果的に抑制する観点、及びフィルムの表面からの粒子の脱落をより一層効果的に抑制する観点からは、上記バリア部の材料は、芳香族骨格を有し、かつ、ビニル基を有する化合物を含むことがより好ましい。フィルムの表面の傷付きをより一層効果的に抑え、フィルム同士の貼り付きをより一層効果的に抑制する観点、及びフィルムの表面からの粒子の脱落をより一層効果的に抑制する観点からは、上記粒状物の材料は、芳香族骨格を有する化合物を含むことが好ましく、ビニル基を有する化合物を含むことが好ましい。フィルムの表面の傷付きをより一層効果的に抑え、フィルム同士の貼り付きをより一層効果的に抑制する観点、及びフィルムの表面からの粒子の脱落をより一層効果的に抑制する観点からは、上記粒状物の材料は、芳香族骨格を有し、かつ、ビニル基を有する化合物を含むことがより好ましい。芳香族骨格を有し、かつ、ビニル基を有する化合物としては、スチレン、ジビニルベンゼン、及び4-ビニル安息香酸等が挙げられる。
【0075】
フィルムの表面の傷付きをより一層効果的に抑え、フィルム同士の貼り付きをより一層効果的に抑制する観点、及びフィルムの表面からの粒子の脱落をより一層効果的に抑制する観点からは、上記バリア部の材料は、ジビニルベンゼン化合物を含むことが好ましい。フィルムの表面の傷付きをより一層効果的に抑え、フィルム同士の貼り付きをより一層効果的に抑制する観点、及びフィルムの表面からの粒子の脱落をより一層効果的に抑制する観点からは、上記粒状物の材料は、ジビニルベンゼン化合物を含むことが好ましい。ジビニルベンゼン化合物としては、1,4-ジイソプロペニルベンゼン等が挙げられる。
【0076】
(アンチブロッキングフィルム)
本発明に係るアンチブロッキングフィルムは、上述したアンチブロッキング剤を含む。フィルムの表面の傷付きをより一層効果的に抑え、フィルム同士の貼り付きをより一層効果的に抑制する観点からは、上記粒子は、上記アンチブロッキングフィルムの少なくとも一方の表面に配置されていることが好ましい。フィルムの表面の傷付きをより一層効果的に抑え、フィルム同士の貼り付きをより一層効果的に抑制する観点からは、上記アンチブロッキングフィルムは、基材フィルムと、上記基材フィルムの少なくとも一方の表面に配置されたアンチブロッキング部とを備えることが好ましい。フィルムの表面の傷付きをより一層効果的に抑え、フィルム同士の貼り付きをより一層効果的に抑制する観点からは、上記粒子は、上記基材フィルムの少なくとも一方の表面上に配置されている部分を有することが好ましく、上記基材フィルムの表面から突出していることが好ましい。上記粒子は、上記基材フィルムの表面から突出していない部分と、上記基材フィルムの表面から突出している部分とを有していてもよい。上記粒子は、上記基材フィルムの一方の表面から突出している部分を有することが好ましい。上記アンチブロッキングフィルムは表面に、上記粒子の突出部を有することが好ましい。
【0077】
上記アンチブロッキング部の材料が、上述したアンチブロッキング剤であることが好ましい。フィルムの表面の傷付きをより一層効果的に抑え、フィルム同士の貼り付きをより一層効果的に抑制する観点からは、上記アンチブロッキング部は、上記基材フィルム側とは反対側に突出している突出部を有することが好ましい。この突出部が、上記粒子の一部であることが好ましい。上記アンチブロッキング部の上記突出部は、上記粒子により形成されていることが好ましい。上記アンチブロッキング部は、上記基材フィルムの片側の表面にのみ配置されていてもよく、両側の表面に配置されていてもよい。
【0078】
図3は、
図1に示すアンチブロッキング剤を用いたアンチブロッキングフィルムの一例を示す断面図である。なお、
図3において、アンチブロッキング部及び粒子の大きさ、厚み、形状及び添加量等は、図示の便宜上、実際の大きさ及び形状から適宜変更している。
【0079】
図3に示すアンチブロッキングフィルム11は、基材フィルム12とアンチブロッキング部13とを備える。上記基材フィルムは、フィルム層のみの単層構造であってもよく、フィルム層に加えて保護層及び粘着層等を有する2層以上の多層構造であってもよい。上記基材フィルムは、光透過性を有するフィルムであることが好ましい。
【0080】
基材フィルム12は、一方の表面(第1の表面)12aと他方の表面(第2の表面)12bとを有する。一方の表面(第1の表面)12aと他方の表面(第2の表面)12bとは対向している。アンチブロッキング部13は、一方の表面(第1の表面)13aと他方の表面(第2の表面)13bとを有する。一方の表面(第1の表面)13aと他方の表面(第2の表面)13bとは対向している。
【0081】
基材フィルム12の表面上に、アンチブロッキング部13が配置されている。アンチブロッキング部13は、アンチブロッキングフィルム11における表面部である。基材フィルム12の一方の表面(第1の表面)12a側に、アンチブロッキング部13が配置されている。アンチブロッキング部13は、他方の表面(第2の表面)13b側から、基材フィルム12の一方の表面(第1の表面)12a上に配置されている。アンチブロッキングフィルム11では、基材フィルム12の一方の表面(第1の表面)12a側にのみ、アンチブロッキング部13が配置されている。上記アンチブロッキングフィルムでは、上記基材フィルムの一方の表面(第1の表面)側だけでなく、上記基材フィルムの他方の表面(第2の表面)側にも、上記アンチブロッキング部が配置されていてもよい。上記アンチブロッキング部は、光透過性の高い材料により形成されていることが好ましい。
【0082】
アンチブロッキング部13は、粒子1と、散乱粒子21とを含む。散乱粒子21は、アンチブロッキングフィルム11に防眩性を付与するために、アンチブロッキング部13にて配置されている。粒子1に代えて、粒子1Aを用いてもよい。
【0083】
アンチブロッキング部13は、基材フィルム12側とは反対側に向かって突出している突出部を有する。アンチブロッキング部13は、アンチブロッキング部13の一方の表面(第1の表面)13a側に突出部を有する。アンチブロッキング部13は、基材フィルム12側に向かって突出している突出部を有しない。アンチブロッキング部13は、アンチブロッキング部13の他方の表面(第2の表面)13b側に突出部を有しない。アンチブロッキング部13の上記突出部は、粒子1及び散乱粒子21により形成されている。
【0084】
フィルムの表面の傷付きをより一層効果的に抑え、フィルム同士の貼り付きをより一層効果的に抑制する観点からは、上記粒子は、上記アンチブロッキング部において、均一に分散していることが好ましく、少なくとも一部の粒子同士が凝集していないことが好ましく、全部の粒子同士が凝集していないことがより好ましい。フィルムの表面の傷付きをより一層効果的に抑え、フィルム同士の貼り付きをより一層効果的に抑制する観点からは、上記アンチブロッキング部は、凝集していない粒子を含むことが好ましく、凝集した粒子を含まないことが好ましい。フィルムの表面の傷付きをより一層効果的に抑え、フィルム同士の貼り付きをより一層効果的に抑制する観点からは、上記アンチブロッキング部内において、少なくとも一部の粒子同士が接触していないことが好ましく、全部の粒子同士が接触していないことがより好ましい。
【0085】
フィルムをより一層薄くする観点からは、上記基材フィルムの厚みは、好ましくは0.03mm以上、より好ましくは0.05mm以上であり、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.3mm以下である。上記基材フィルムが2層以上の構造を有する場合には、上記基材フィルムの厚みは、基材フィルム全体の厚みを意味する。
【0086】
フィルムの表面の傷付きをより一層効果的に抑え、フィルム同士の貼り付きをより一層効果的に抑制する観点からは、アンチブロッキングフィルム100重量%中、上記粒子の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上であり、好ましくは40重量%以下、より好ましくは35重量%以下である。
【0087】
基材フィルム:
上記基材フィルムは、1層の単層フィルムから構成されていてもよく、2層以上の多層フィルムから構成されていてもよい。上記多層フィルムの場合には、保護層、粘着層及び剥離層等から構成されていてもよい。
【0088】
上記基材フィルムは、高い光透過性を有することが好ましい。上記基材フィルムの材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン、ポリエーテルサルフォン、ポリスルホン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリアリレート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、及びセルロースナノファイバー等が挙げられる。上記基材フィルムは、樹脂により形成されていることが好ましい。上記基材フィルムの材料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0089】
また、上記基材フィルムには、各種添加剤が含まれていてもよい。上記添加剤としては、各種安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、カップリング剤、滑剤又は着色剤等が挙げられる。上記添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0090】
アンチブロッキング部:
上記アンチブロッキング部の材料は、上記アンチブロッキング剤である。上記アンチブロッキング部の材料は、上記アンチブロッキング剤以外の材料を含んでいてもよい。上記アンチブロッキング部は、高い光透過性を有することが好ましい。上記アンチブロッキング部における上記アンチブロッキング剤以外の材料は、樹脂であることが好ましい。
【0091】
フィルム成形前に、上記アンチブロッキング剤は、バインダー及び散乱粒子等と混合されて用いられてもよい。
【0092】
上記バインダーは、溶媒であってもよく、樹脂材料であってもよい。
【0093】
上記溶媒としては、水及び有機溶剤等が挙げられる。溶媒の除去性をより一層高める観点からは、上記溶媒は、有機溶剤であることが好ましい。上記有機溶剤としては、エタノール等のアルコール化合物;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン化合物;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素化合物;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル化合物;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素化合物;並びに石油エーテル、ナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。
【0094】
上記樹脂材料としては、上述した基材フィルムの材料と同様の材料が挙げられる。
【0095】
上記基材フィルムの材料と上記アンチブロッキング部の樹脂材料とは、同一であってもよい。
【0096】
上記アンチブロッキング部の上記アンチブロッキング剤以外の材料は、上述した基材フィルムの材料であってもよく、硬化性化合物であってもよい。上記硬化性化合物としては、熱硬化性化合物及び活性エネルギー線硬化性化合物等が挙げられる。
【0097】
上記熱硬化性化合物としては、例えば、フェノール化合物、エポキシ化合物、尿素化合物、メラミン化合物、ウレタン化合物、ポリイミド化合物及び不飽和ポリエステル化合物等が挙げられる。上記活性エネルギー線硬化性化合物は、光硬化性化合物であることが好ましく、紫外線硬化性化合物であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基を複数有する多官能(メタ)アクリルモノマー又は(メタ)アクリロイル基を複数有する多官能(メタ)アクリルモノマーの重合体であることがより好ましい。
【0098】
上記多官能(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート等の3官能(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の4官能(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の5官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記多官能(メタ)アクリルモノマーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0099】
「(メタ)アクリレート」の用語は、アクリレートとメタクリレートとを示す。「(メタ)アクリル」の用語は、アクリルとメタクリルとを示す。「(メタ)アクリロイル」の用語は、アクリロイルとメタクリロイルとを示す。
【0100】
また、上記活性エネルギー線硬化性化合物を用いる場合には、上記活性エネルギー線硬化性化合物に、光重合開始剤、光増感剤、レベリング剤、希釈剤等を添加してもよい。
【0101】
また、上記熱硬化性化合物を用いる場合には、上記熱硬化性化合物に、熱硬化剤、レベリング剤、希釈剤等を添加してもよい。
【0102】
フィルムをより一層薄くする観点、及びフィルムの表面からの粒子の脱落をより一層効果的に抑制する観点からは、上記アンチブロッキング部の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下である。
【0103】
フィルムの表面の傷付きをより一層効果的に抑え、フィルム同士の貼り付きをより一層効果的に抑制する観点からは、アンチブロッキング部100重量%中、上記粒子の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上であり、好ましくは40重量%以下、より好ましくは35重量%以下である。
【0104】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0105】
(参考例1)
(1)アンチブロッキング剤である粒子Aの作製
両末端アクリルシリコーンオイル(信越化学工業社製「X-22-2445」)30重量部に、tert-ブチル-2-エチルペルオキシヘキサノアート(重合開始剤、日油社製「パーブチルO」)0.5重量部を溶解させた溶解液Aを用意した。また、イオン交換水150重量部に、ラウリル硫酸トリエタノールアミン塩40重量%水溶液(乳化剤)0.8重量部とポリビニルアルコール(重合度:約2000、けん化度:86.5~89モル%、日本合成化学社製「ゴーセノールGH-20」)の5重量%水溶液80重量部とを混合して、水溶液Bを用意した。温浴槽中に設置したセパラブルフラスコに、上記溶解液Aを入れた後、上記水溶液Bを添加した。その後、Shirasu Porous Glass(SPG)膜(細孔平均径約10μm)を用いることで、乳化を行った。その後、85℃に昇温して、9時間重合を行った。重合後の粒子の全量を遠心分離により水洗浄した後、分級操作を行って、粒子Aを得た。
【0106】
(2)アンチブロッキング部形成用組成物の作製
ジペンタエリストールペンタ及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(東亜合成社製「アロニックスM402」)100重量部と、トルエン90重量部と、シクロヘキサノン10重量部とを混合し、混合液を得た。得られた混合液に対して、上記粒子Aを10重量部分散させて、アンチブロッキング部形成用組成物を作製した。
【0107】
(3)アンチブロッキングフィルムの作製
厚さ0.2mmのポリエチレンテレフタレート(PET)製の基材フィルム上に、得られたアンチブロッキング部形成用組成物をバーコーターにて塗工し、塗工層を形成した。このとき、アンチブロッキング部形成用組成物の塗工量は、塗工層(アンチブロッキング部)の乾燥後の厚みが10μmとなるように調整した。乾燥後、高圧水銀灯にて紫外線を500mJ/cm2で照射して、塗工層(アンチブロッキング部)を硬化させることにより、アンチブロッキングフィルムを作製した。
【0108】
(実施例2)
アンチブロッキング剤である粒子Bの作製:
参考例1で得られた粒子Aを用意した。温浴槽内に設置した500mlのセパラブルフラスコに、粒子A6.5重量部と、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド0.6重量部と、蒸留水240重量部と、メタノール120重量部とを入れた。40℃で1時間攪拌した後、ジビニルベンゼン3.0重量部とスチレン0.5重量部とを添加して、75℃まで昇温して0.5時間攪拌を行った。その後、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.4重量部を入れて8時間攪拌、反応を行った。重合後の粒子の全量を遠心分離により水洗浄して、粒子Aが基材粒子であり、該基材粒子の表面上にバリア部を備える粒子Bを得た。
【0109】
粒子Aの代わりに粒子Bを用いたこと以外は、参考例1と同様にして、アンチブロッキング部形成用組成物及びアンチブロッキングフィルムを得た。
【0110】
(参考例3)
アンチブロッキング剤である粒子Cの作製:
ポリテトラメチレングリコールジアクリレート750gと、スチレン250gと、過酸化ベンゾイル39gとを混合し、均一に溶解させてモノマー混合液を得た。ポリビニルアルコール1重量%水溶液5kgを作製し、反応器に入れた。この反応器に上記モノマー混合液をさらに入れ、2~4時間攪拌することで、モノマーの液滴が所定の粒子径になるように、粒子径を調整した。この後、85℃の窒素雰囲気下で9時間反応を行い、粒子を得た。得られた粒子を熱水にて数回洗浄した後、分級操作を行って、粒子Cを得た。
【0111】
粒子Aの代わりに粒子Cを用いたこと以外は、参考例1と同様にして、アンチブロッキング部形成用組成物及びアンチブロッキングフィルムを得た。
【0112】
(実施例4)
アンチブロッキング剤である粒子Dの作製:
参考例1で得られた粒子Aを用意した。温浴槽内に設置した500mlのセパラブルフラスコに、粒子A6.5重量部と、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド0.6重量部と、蒸留水240重量部と、メタノール120重量部とを入れた。40℃で1時間攪拌した後、ジビニルベンゼン2.45重量部とスチレン1.05重量部とを添加して、75℃まで昇温して0.5時間攪拌を行った。重合後の粒子の全量を遠心分離により水洗浄して、粒子Aが基材粒子であり、該基材粒子の表面上にバリア層を備える粒子Dを得た。
【0113】
粒子Aの代わりに粒子Dを用いたこと以外は、参考例1と同様にして、アンチブロッキング部形成用組成物及びアンチブロッキングフィルムを得た。
【0114】
(比較例1)
アンチブロッキング剤である粒子Xの作製:
ジビニルベンゼン1000gと、過酸化ベンゾイル56gとを混合し、均一に溶解させてモノマー混合液を得た。ポリビニルアルコール1重量%水溶液5kgを作製し、反応器に入れた。この反応器に上記モノマー混合液をさらに入れ、2~4時間攪拌することで、モノマーの液滴が所定の粒子径になるように、粒子径を調整した。この後、90℃の窒素雰囲気下で10時間反応を行い、粒子を得た。得られた粒子を熱水にて数回洗浄した後、分級操作を行って、粒子Xを得た。
【0115】
粒子Aの代わりに粒子Xを用いたこと以外は、参考例1と同様にして、アンチブロッキング部形成用組成物及びアンチブロッキングフィルムを得た。
【0116】
(評価)
(1)粒子の粒子径
アンチブロッキング剤である粒子について、粒子の粒子径を測定した。上記粒子の粒子径は、任意に選択した50個の粒子をレーザー回折式粒度分布計を用いて測定し、各粒子の粒子径を算術平均することにより、求めた。上記レーザー回折式粒度分布計としては、マルバルーン社製「マスターサイザー2000」を用いた。
【0117】
(2)粒子の10%K値
アンチブロッキング剤である粒子について、10%K値を、上述した方法により、微小圧縮試験機(フィッシャー社製「フィッシャースコープH-100」)を用いて測定した。
【0118】
(3)バリア部の厚み
アンチブロッキング剤である粒子の含有量が30重量%となるように、検査用埋め込み樹脂であるKulzer社製「テクノビット4000」に添加し、分散させて、試験片を作製した。試験片中の分散した粒子の中心付近を通るようにイオンミリング装置(日立ハイテクノロジーズ製「IM4000」)を用いて、粒子の断面を切り出した。そして、電界放射型透過電子顕微鏡(FE-TEM)(日本電子社製「JEM-ARM200F」)を用いて、20個の粒子を無作為に選択し、それぞれの粒子の断面を観察した。それぞれの粒子におけるバリア層の厚みを計測し、算術平均してバリア層の厚み(平均厚み)とした。
【0119】
(4)被覆率
アンチブロッキング剤である粒子について、基材粒子の表面積全体に占めるバリア部により被覆されている部分の面積である被覆率を測定した。電子顕微鏡による観察を行い、アンチブロッキング剤である粒子1個当たりの投影面積S1と未被覆部分の円換算面積S2とを画像解析ソフトを用いて算出し、下記式にて被覆率を求めた。
【0120】
被覆率(%)=(S1-S2)/S1×100
【0121】
(5)アンチブロッキング性の評価
得られたフィルムを2枚用意し、アンチブロッキング部同士で重ね合わせ、指圧にて約1kgの荷重を負荷した後、アンチブロッキング部同士が易滑性を有しているか否かを確認し、アンチブロッキング性を以下の基準で判定した。
【0122】
[アンチブロッキング性の判定基準]
○:フィルム同士が貼り付いていない
△:フィルム同士がわずかに貼り付いている
×:フィルム同士が貼り付いている
【0123】
(6)傷付きの評価
得られたフィルムを2枚用意し、アンチブロッキング部とアンチブロッキング部が形成されていない他方の表面とを重ね合わせ、指圧にて約200gの荷重をかけて10往復摩擦して、他方の表面が傷付くか否かを観察し、傷付きを以下の基準で判定した。
【0124】
[傷付きの判定基準]
○:傷なし
△:わずかに傷あり
×:傷あり
【0125】
(7)粒子の脱落の評価
得られたフィルムのアンチブロッキング部が形成された表面を電子顕微鏡により粒子100個に相当する面積を観察し、脱落した粒子の個数をカウントした。脱落を以下の基準で判定した。
【0126】
[粒子の脱落の判定基準]
○:脱落した粒子の個数が20個未満
△:脱落した粒子の個数が20個以上、40個未満
×:脱落した粒子の個数が40個以上
【0127】
結果を下記の表1に示す。
【0128】
【符号の説明】
【0129】
1…粒子
1A…粒子
2…基材粒子
3…バリア部
11…アンチブロッキングフィルム
12…基材フィルム
12a…一方の表面(第1の表面)
12b…他方の表面(第2の表面)
13…アンチブロッキング部
13a…一方の表面(第1の表面)
13b…他方の表面(第2の表面)
21…散乱粒子