(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】装飾シート
(51)【国際特許分類】
G09F 3/10 20060101AFI20220426BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220426BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20220426BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
G09F3/10 B
C09J7/38
C09J133/00
C09J11/04
(21)【出願番号】P 2018054943
(22)【出願日】2018-03-22
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】阿部 秀俊
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-164229(JP,A)
【文献】特開2017-008222(JP,A)
【文献】特表2009-522411(JP,A)
【文献】特開2008-239684(JP,A)
【文献】特開2006-346885(JP,A)
【文献】特開2017-161594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 3/10
C09J 7/38
C09J 133/00
C09J 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース層、及び前記ベース層の上又は上方に配置された接着層を含む装飾シートであって、前記接着層は、重量平均分子量400,000以下の(メタ)アクリル系ポリマー及び疎水性ナノシリカ粒子を含む感圧接着剤組成物の硬化物を含み、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部を基準として前記疎水性ナノシリカ粒子を0.1~25質量部含
み、前記(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度が-40℃以下であり、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、アルキル基の炭素原子数が8以上の(メタ)アクリルエステルモノマーに由来する単位を50質量%以上含む、装飾シート。
【請求項2】
前記接着層は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部を基準として前記疎水性ナノシリカ粒子を5~10質量部含む、請求項
1に記載の装飾シート。
【請求項3】
前記疎水性ナノシリカ粒子の平均一次粒径が100nm以下である、請求項1
又は2のいずれ
かに記載の装飾シート。
【請求項4】
前記感圧接着剤組成物が、エポキシ系架橋剤及びビスアミド架橋剤からなる群より選択される熱架橋剤を含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の装飾シート。
【請求項5】
前記感圧接着剤組成物が、紫外線照射により水素ラジカルを引き抜くことが可能な構造を有する紫外線架橋剤を含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の装飾シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内外装用途に使用される装飾シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両、建築物、交通標識、包装材料、看板などにおいて、フィルム、合成皮革、紙などの基材に感圧接着層が設けられたマーキングフィルム、装飾フィルム又は装飾シートが使用されている。
【0003】
特許文献1(特開平5-271628号公報)は、「乾式法で製造された一次粒子の平均粒子径が40nm以下でpH6以下の粒子表面にシラノール基を有する微粉末シリカを表面に有する基材上にアクリル系粘着剤層を設けた再剥離性粘着シート」を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
装飾シートは大面積の形態で使用されることがあるため、施工時の位置決め作業において貼り剥がしを繰り返すことができるようにリワーク性(再作業性)に優れていることが望ましい。また、一年を通じた温度変化に対応して装飾シートが過度に収縮又は膨張すると、被着体表面からの装飾シートの浮き、装飾シート面内における亀裂の発生、装飾シートの変形による意匠性の低下などが生じるおそれがあり、このことは特に大面積の装飾シートで顕著である。そのため、装飾シートは高い寸法安定性を有することが望ましい。
【0006】
本開示は、リワーク性及び寸法安定性に優れた装飾シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施態様によれば、ベース層、及び前記ベース層の上又は上方に配置された接着層を含む装飾シートであって、前記接着層は、重量平均分子量400,000以下の(メタ)アクリル系ポリマー及び疎水性ナノシリカ粒子を含む感圧接着剤組成物の硬化物を含み、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部を基準として前記疎水性ナノシリカ粒子を0.1~25質量部含む、装飾シートが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、接着層に重量平均分子量400,000以下の(メタ)アクリル系ポリマー及び疎水性ナノシリカ粒子の組み合わせを使用することで、装飾シートに優れたリワーク性及び寸法安定性を付与することができる。
【0009】
上述の記載は、本発明の全ての実施態様及び本発明に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施態様の装飾シートの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の代表的な実施態様を例示する目的でより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。
【0012】
本開示において「装飾シート」とは装飾用途に使用されるシートを意味し、無色又は有色であってよく、透明、半透明又は不透明であってよく、意匠を有しても有さなくてもよい。
【0013】
本開示において「(メタ)アクリル」とはアクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0014】
本開示において「感圧接着」とは、使用温度範囲で、例えば0℃以上、50℃以下の範囲で恒久的に粘着性であり、軽い圧力で様々な表面に接着し、相変化(液体から固体へ)を呈さない材料又は組成物の特性を意味する。
【0015】
本開示において「透明」とは、ある材料又は物品の波長範囲400~700nmにおける全光線透過率が約85%以上であることを意味し、「半透明」とは、ある材料又は物品の波長範囲400~700nmにおける全光線透過率が約20%以上、約85%未満であることを意味し、「不透明」とは、ある材料又は物品の波長範囲400~700nmにおける全光線透過率が約20%未満であることを意味する。全光線透過率はJIS K 7361-1:1997(ISO 13468-1:1996)に準拠して決定される。
【0016】
一実施態様の装飾シートは、ベース層、及びベース層の上又は上方に配置された接着層を含む。接着層は、重量平均分子量400,000以下の(メタ)アクリル系ポリマー及び疎水性ナノシリカ粒子を含む感圧接着剤組成物の硬化物を含む。(メタ)アクリル系ポリマー100質量部を基準とした疎水性ナノシリカ粒子の配合量は、0.1質量部以上、25質量部以下である。「ベース層の上に配置された接着層」とは、接着層がベース層に直接接触して配置されていることを意味し、「ベース層の上方に配置された接着層」とは、接着層がベース層に直接接触せずに、例えば接合層などの他の層を介して配置されていることを意味する。本開示で他の層について言及される「上」及び「上方」の定義も同様である。
【0017】
一実施態様の装飾シートの概略断面図を
図1に示す。
図1の装飾シート10は、ベース層12及び接着層14を含む。接着層14は、重量平均分子量400,000以下の(メタ)アクリル系ポリマーと疎水性ナノシリカ粒子16とを含む。
【0018】
ベース層は透明材料で形成されてもよく、半透明材料又は不透明材料で形成されてもよい。ベース層は無色又は有色であってよく、模様、文字、パターンなどをその表面又は内部に有してもよい。
【0019】
ベース層として、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミドなどの樹脂;織布、不織布、編布などの布帛;天然皮革及び人工皮革;紙及びラミネート紙;木材;鉄、アルミニウムなどの金属などの、フィルム、箔、シート又は板を使用することができる。一実施態様ではベース層は樹脂フィルムである。
【0020】
一実施態様では、接着層はベース層の上に配置される、すなわちベース層に直接接触する。別の実施態様では、接着層はベース層の上方に配置される、すなわち接着層とベース層との間に他の層、例えばプライマー層、接合層、着色層、金属層、印刷層、バルク層などが介在する。ベース層の接着層との接触面にコロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理などの表面処理が施されてもよい。
【0021】
ベース層の上又は上方に他の層、例えば着色層、金属層、印刷層、バルク層、表面保護層、クリア層などが配置されていてもよい。ベース層にマット加工、エンボス加工などの表面処理が施されてもよい。
【0022】
ベース層の厚みは、例えば約5μm以上、約10μm以上、又は約20μm以上、約500μm以下、約300μm以下、又は約200μm以下とすることができる。
【0023】
一実施態様では、接着層は、重量平均分子量400,000以下の(メタ)アクリル系ポリマー及び疎水性ナノシリカ粒子を含む感圧接着剤組成物の硬化物を含む。
【0024】
(メタ)アクリル系ポリマーは、モノエチレン性不飽和モノマーを含むモノマー混合物を重合又は共重合することにより得ることができる。(メタ)アクリル系ポリマーは粘着性ポリマーであってよい。粘着性ポリマーとは使用温度(例えば5℃、10℃、15℃、20℃又は25℃)でタックを有し、接着剤に感圧接着性を付与するポリマーを意味する。必要に応じて1種又は2種以上のモノエチレン性不飽和モノマーを使用することができる。
【0025】
モノエチレン性不飽和モノマーとして、式(1):
CH2=CR1COOR2 (1)
で表される(メタ)アクリルエステルモノマーを使用することができる。式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素原子数1~20の直鎖、環状又は分岐状のアルキル基、炭素原子数6~20の置換又は非置換のフェニル基、炭素原子数2~20のアルコキシアルキル基、炭素原子数7~20のフェノキシアルキル基、炭素原子数1~20のヒドロキシアルキル基、又は炭素原子数2~20の環状エーテル基である。
【0026】
式(1)で表される(メタ)アクリルエステルモノマーとして、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、p-トリル(メタ)アクリレートなどの芳香族(メタ)アクリレート;メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-メトキシブチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどの環状エーテル基含有(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0027】
モノエチレン性不飽和モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などの不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸;ω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチルアクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸などの、カルボキシル基含有不飽和モノマーを使用してもよい。カルボキシル基含有不飽和モノマーを使用することで接着層の凝集力を高めることができる。
【0028】
その他のモノエチレン性不飽和モノマーとして、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニルモノマー、酢酸ビニルなどのビニルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリルを使用してもよい。不飽和ニトリルを使用することで接着層の凝集力を高めることができる。
【0029】
いくつかの実施態様では、(メタ)アクリル系ポリマーは、例えば(メタ)アクリルエステルモノマーを約80質量部以上、約85質量部以上、又は約90質量部以上、約99.5質量部以下、約99質量部以下、又は約98質量部以下、その他のモノエチレン性不飽和モノマーを約0.5質量部以上、約1質量部以上、又は約2質量部以上、約15質量部以下、約10質量部以下、又は約10質量部以下の量で含むモノマー混合物を共重合することにより得ることができる。
【0030】
いくつかの実施態様では、(メタ)アクリル系ポリマーは、アルキル基の炭素原子数が8以上の(メタ)アクリルエステルモノマー、すなわち式(1)においてR2が炭素原子数8以上の直鎖、環状又は分岐状のアルキル基である(メタ)アクリルエステルモノマーを約50質量部以上、約55質量部以上、又は約60質量部以上、約90質量部以下、約85質量部以下、又は約80質量部以下の量で含むモノマー混合物を共重合することにより得ることができる。得られた(メタ)アクリル系ポリマーは、アルキル基の炭素原子数が8以上の(メタ)アクリルエステルモノマーに由来する単位を、約50質量%以上、約55質量%以上、又は約60質量%以上、約90質量%以下、約85質量%以下、又は約80質量%以下含む。この実施態様の(メタ)アクリル系ポリマーは耐候性、透明性、及び耐低温性に優れている。
【0031】
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は約400,000以下である。いくつかの実施態様において、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、約100,000以上、約150,000以上、又は約200,000以上、約400,000以下、約380,000以下、又は約350,000以下である。本開示における「重量平均分子量」とはGPC法による標準ポリスチレンで換算した分子量を意味する。重量平均分子量が上記範囲であることにより、耐低温性に優れるとともに、疎水性ナノシリカ粒子と組み合わせたときに接着層に十分な凝集力と接着性を付与することができる。
【0032】
いくつかの実施態様において、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、約-40℃以下、約-45℃以下、又は約-50℃以下であり、約-80℃以上、約-75℃以上、又は約-70℃以上である。Tgが上記範囲であることにより接着層に十分な凝集力と接着性を付与することができる。
【0033】
(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度Tg(℃)は、各ポリマーがn種類のモノマーから共重合されているとして、以下のFOXの式
【数1】
より求めることができる。式中、Tg
iは成分iのホモポリマーのガラス転移温度(℃)、X
iは重合の際に添加した成分iのモノマーの質量分率をそれぞれ示し、iは1~nの自然数であり、
【数2】
である。
【0034】
(メタ)アクリル系ポリマーの重合又は共重合は、ラジカル重合により行なうことが好ましく、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状重合などの公知の重合方法を用いることができる。開始剤として、過酸化ベンゾイル、ラウロイルペルオキシド、ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートなどの有機過酸化物、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジメチル-2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリアン酸)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(AVN)などのアゾ系重合開始剤を用いることができる。開始剤の使用量は、モノマー混合物100質量部に対して、一般に約0.01質量部以上、又は約0.05質量部以上、約5質量部以下、又は約3質量部以下である。
【0035】
疎水性ナノシリカ粒子は、一般に、ナノシリカ粒子の表面に存在するシラノール基(Si-OH基)の少なくとも一部を表面処理により疎水化することで得ることができる。ナノシリカ粒子の表面処理に、疎水性基としてメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基などのアルキル基などを有するシラン、シラザン、アルミネート、チタネートなどの表面処理剤又はカップリング剤を用いることができる。疎水性ナノシリカ粒子は、(メタ)アクリル系ポリマー中に分散して(メタ)アクリル系ポリマーの濡れ性を制御すること、及び/又は接着層の凝集力を高めることに寄与し、その結果、優れたリワーク性及び寸法安定性を接着層に付与することができる。
【0036】
疎水性ナノシリカ粒子は、その粒径が可視光線及び一部の紫外線の波長よりも小さいため、接着層の光透過性にほとんど影響しない。一実施態様では、接着層は波長範囲400~700nmにおいて高い全光線透過率、例えば約85%以上、約90%以上、又は約95%以上の全光線透過率を有する。この実施態様では、無色透明又は有色透明なベース層を用いて透明な装飾シートを得ることができる。
【0037】
いくつかの実施態様において、疎水性ナノシリカ粒子の平均一次粒径は、約1nm以上、約2nm以上、又は約5nm以上、約100nm以下、約50nm以下、又は約30nm以下である。疎水性ナノシリカ粒子の平均一次粒径を上記範囲とすることにより、疎水性ナノシリカ粒子をより均一に接着層に分散させて、装飾シートのリワーク性及び寸法安定性を高めることができる。疎水性ナノシリカ粒子の平均一次粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定を用いて得られる体積累積粒径D50である。
【0038】
疎水性ナノシリカ粒子の配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して約0.1質量部以上、約25質量部以下である。疎水性ナノシリカ粒子の配合量は、上記範囲内で、疎水性ナノシリカ粒子の平均一次粒径、表面処理の種類などを考慮して、感圧接着剤組成物をゲル化させずに疎水性ナノシリカ粒子が感圧接着剤組成物中に均一に分散するように適宜選択することができる。いくつかの実施態様において、疎水性ナノシリカ粒子の配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して約1質量部以上、約3質量部以上、又は約5質量部以上、約15質量部以下、又は約12質量部以下、又は約10質量部以下である。
【0039】
感圧接着剤組成物は、疎水性ナノシリカ粒子の感圧接着剤組成物中への分散を助ける公知の分散剤、例えばアニオン性化合物、カチオン性化合物及び非イオン性化合物を包含する低分子分散剤、又はアニオン性、カチオン性若しくは非イオン性の極性基を有する高分子分散剤を含んでもよい。
【0040】
一実施態様では、高分子分散剤はアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含む。アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、疎水性ナノシリカ粒子の分散性を高めるだけではなく、カルボキシル基などの酸性基を有する(メタ)アクリル系ポリマーとの相溶性にも優れている。アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は特に限定されないが、例えば、約1,000以上、約5,000以上、約10,000以上、約500,000以下、約200,000以下、又は約100,000以下とすることができる。
【0041】
いくつかの実施態様では、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は約0℃以上、約20℃以上、又は約40℃以上、約150℃以下、約135℃以下、又は約120℃以下である。アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度は、(メタ)アクリル系ポリマーと同様にFOXの式を用いて決定することができる。
【0042】
分散剤の配合量は、疎水性ナノシリカ粒子100質量部に対して約1質量部以上、約5質量部以上、又は約10質量部以上、約100質量部以下、約50質量部以下、又は約30質量部以下とすることができる。
【0043】
感圧接着剤組成物は架橋剤を含んでもよい。架橋剤として熱架橋剤又は紫外線架橋剤を使用することができる。架橋剤を用いて(メタ)アクリル系ポリマーを架橋することにより、接着層の凝集力を高め、装飾シートのリワーク性及び寸法安定性を高めることができる。
【0044】
熱架橋剤としてエポキシ架橋剤及びビスアミド架橋剤からなる群より選択される熱架橋剤を使用することができる。これらの熱架橋剤は、(メタ)アクリル系ポリマーがカルボキシル基又は水酸基などの極性基を有する場合、これらのポリマー鎖間に共有結合性の架橋を形成して、接着層の凝集力をより効果的に高めることができる。エポキシ架橋剤として、例えばN,N,N’,N’-テトラグリシジル-1,3-ベンゼンジ(メタンアミン)(三菱ガス化学社製:TETRAD-X、綜研化学株式会社製:E-AX、E-5XM)、N,N’-(シクロヘキサン-1,3-ジイルビスメチレン)ビス(ジグリシジルアミン)(三菱ガス化学社製:TETRAD-C、綜研化学株式会社製:E-5C)などが挙げられる。ビスアミド架橋剤として、例えば、1,1’-(1,3-フェニレンジカルボニル)-ビス(2-メチルアジリジン)(1,1’-イソフタロイル-ビス(2-メチルアジリジン))、1,4-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ベンゼン、4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、1,8-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)オクタンなどが挙げられる。
【0045】
一実施態様では熱架橋剤はイソシアネート基を有さない。本開示において、熱架橋剤としてイソシアネート基を有するイソシアネート架橋剤を使用することはできるが、感圧接着剤組成物の硬化速度が製造上の要求を満足しない場合がある。
【0046】
熱架橋剤の配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、約0.01質量部以上、約0.02質量部以上、約0.05質量部以上、約0.5質量部以下、約0.4質量部以下、約0.3質量部以下とすることができる。
【0047】
疎水性ナノシリカ粒子はその粒径が一部の紫外線の波長よりも小さく、当該波長の紫外線の透過に影響しないため、感圧接着剤組成物に紫外線架橋剤を含ませて紫外線硬化性組成物とすることができる。紫外線架橋剤として、紫外線照射により活性化されて(メタ)アクリル系ポリマー鎖の間に架橋を形成することが可能な部位、例えば紫外線照射により水素ラジカルを引き抜くことが可能な構造を有する化合物を使用することができる。この構造は、紫外線照射により励起されて、(メタ)アクリル系ポリマーから水素ラジカルを引き抜く。その結果、(メタ)アクリル系ポリマー上にラジカルが生成し、生成したラジカル同士の結合による架橋の形成、酸素分子との反応によるパーオキシドラジカルの生成及び生成したパーオキシドラジカルを介した架橋の形成、生成したラジカルによる別の水素ラジカルの引き抜きなど、様々な反応が系中で起こり、最終的に(メタ)アクリル系ポリマーが架橋される。そのような化合物として、例えば、ベンゾフェノン構造、ベンジル構造、o-ベンゾイル安息香酸エステル構造、チオキサントン構造、3-ケトクマリン構造、2-エチルアントラキノン構造、カンファーキノン構造などの水素ラジカル引き抜き構造を有する化合物が挙げられる。透明性及び反応性の点でベンゾフェノン構造を有する化合物を用いることが有利である。
【0048】
紫外線架橋剤は、ベンゾフェノン構造、ベンジル構造、o-ベンゾイル安息香酸エステル構造、チオキサントン構造、3-ケトクマリン構造、2-エチルアントラキノン構造、及びカンファーキノン構造からなる群より選択される水素ラジカル引き抜き構造を有する(メタ)アクリル系ポリマーであってもよい。水素ラジカル引き抜き構造を有する(メタ)アクリル系ポリマーを用いることで、感圧接着剤組成物の粘度を調整しつつ架橋反応性を高めることができる。一実施態様では紫外線架橋剤はベンゾフェノン変性(メタ)アクリル系ポリマーである。
【0049】
水素ラジカル引き抜き構造を有する(メタ)アクリル系ポリマーがアミノ基をさらに有してもよい。水素ラジカル引き抜き構造及びアミノ基を有する(メタ)アクリル系ポリマーは紫外線架橋剤及び分散剤として機能することができる。
【0050】
いくつかの実施態様では、水素ラジカル引き抜き構造を有する(メタ)アクリル系ポリマーにおいて、水素ラジカル引き抜き構造を有する重合単位を、(メタ)アクリル系ポリマーの全重合単位を基準として、約0.1質量%以上、約0.5質量%以上、又は約1質量%以上、約10質量%以下、約8質量%以下、又は約6質量%以下とすることができる。
【0051】
紫外線架橋剤の配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、約0.1質量部以上、約0.5質量部以上、約1質量部以上、約20質量部以下、約10質量部以下、約5質量部以下とすることができる。
【0052】
(メタ)アクリル系ポリマーが水素ラジカル引き抜き構造を分子内に有して、それ自体が紫外線架橋剤として機能してもよい。
【0053】
感圧接着剤組成物は、その他の成分として、上記疎水性ナノシリカ粒子以外のフィラー、顔料、染料、酸化防止剤、熱安定剤、UV安定剤、粘着付与剤などを含んでもよい。
【0054】
感圧接着剤組成物は溶剤系でもあってもよく、無溶剤系であってもよい。一実施態様では感圧接着剤組成物は溶剤系である。感圧接着剤組成物に含まれる溶剤として、例えばメタノール、エタノール、ヘキサン、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなど又はこれらの混合溶剤が挙げられる。溶剤としてアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステルなどの非プロトン性極性溶剤を含む溶剤を有利に使用することができる。
【0055】
感圧接着剤組成物の固形分含量は、約10質量%以上、約20質量%以上、約30質量%以上、約95質量%以下、約90質量%以下、又は約80質量%以下とすることができる。固形分含量には(メタ)アクリル系ポリマー、疎水性ナノシリカ粒子、並びに任意に添加される分散剤、架橋剤、その他の不揮発成分が含まれる。いくつかの実施態様では、感圧接着剤組成物の固形分含量は、約50質量%以上、約60質量%以上、又は約70質量%以上、約95質量%以下、約90質量%以下、又は約80質量%以下であり、このように高い固形分含量であっても優れた塗工性を有している。
【0056】
感圧接着剤組成物は、疎水性ナノシリカ粒子と分散剤とを混合したプレミックス剤を含んでもよい。プレミックス剤の形態で、すなわち分散剤中に予め分散した状態で疎水性ナノシリカ粒子を感圧接着剤組成物に含ませることによって、より多くの疎水性ナノシリカ粒子を感圧接着剤組成物中に安定に分散することができる。
【0057】
プレミックス剤は、疎水性ナノシリカ粒子と分散剤とを公知の方法で混合することにより得ることができる。混合には、例えば、ペイントシェイカー(株式会社シンキー製)、サンドグラインドミル、ボールミル、アトライターミル、三本ロールミルなどを用いることができる。必要に応じて有機溶剤を混合時に使用してもよい。
【0058】
プレミックス剤に含まれる分散剤の量を、感圧接着剤組成物に含まれる分散剤の100質量%としてもよい。分散剤をプレミックス剤とは別に感圧接着剤組成物に添加してもよい。
【0059】
プレミックス剤において、分散剤の配合量は、疎水性ナノシリカ粒子100質量部に対して約1質量部以上、約5質量部以上、又は約10質量部以上、約100質量部以下、約50質量部以下、又は約30質量部以下とすることができる。
【0060】
感圧接着剤組成物は、(メタ)アクリル系ポリマー及び疎水性ナノシリカ粒子、並びに必要に応じて分散剤、架橋剤、その他の成分を、公知の方法を用いて混合することにより得ることができる。
【0061】
例えば、各成分をほぼ同時に又は順次混合容器に入れ、ペイントシェイカー(株式会社シンキー製)、サンドグラインドミル、ボールミル、アトライターミル、三本ロールミルなどを用いて混合してもよい。必要に応じて、水系溶剤又は有機溶剤を混合時に使用してもよい。疎水性ナノシリカ粒子を有機溶剤中に分散してから、他の成分と混合することもできる。
【0062】
上述のとおり、疎水性ナノシリカ粒子の全量又は一部と分散剤の全量又は一部とを混合してプレミックス剤を調製した後、得られたプレミックス剤と残りの成分を公知の方法で混合して、感圧接着剤組成物を調製することもできる。
【0063】
感圧接着剤組成物をベース層又はライナー上で硬化させることにより接着層を形成することができる。ライナー上に形成された接着層はベース層に転写してベース層上に積層することができる。
【0064】
接着層の厚さは、約5μm以上、約10μm以上、又は約20μm以上、約200μm以下、約100μm以下、又は約50μm以下とすることができる。
【0065】
このようにして形成した接着層に必要に応じて両面又は片面にライナーを配置して、接着層を両面接着シート又はテープとして使用することもできる。
【0066】
装飾シートは、ベース層とは反対側の接着層の表面にライナーを有していてもよい。任意の構成要素であるライナーとして、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、酢酸セルロースなどのプラスチック材料、紙、及びこれらのプラスチック材料のラミネート紙などを挙げることができる。ライナーは、シリコーンなどにより剥離処理した表面を有してもよい。
【0067】
ライナーの厚みは、例えば約10μm以上、又は約25μm以上、約500μm以下、又は約200μm以下とすることができる。
【0068】
接着層は中実であってもよく、多孔質又は発泡体であってもよい。接着層の内部に不織布などの支持体が埋め込まれていてもよい。接着層の接着面は平坦であってもよく、凹凸を有してもよい。
【0069】
凹凸接着面には、接着層の接着面に、感圧接着剤組成物の硬化物を含む凸部と、その凸部の周りを取り囲んだ凹部とが形成され、被着体に接着された状態で被着体表面と接着面との間に凹部が画する外部と連通した連通路が形成される接着面を含む。
【0070】
凹凸接着面を形成する方法の一例を以下説明する。所定の凹凸構造を有する剥離面を持つライナーを用意する。このライナーの剥離面に、感圧接着剤組成物を塗布し、必要に応じて加熱硬化して、接着層を形成する。これにより、接着層のライナーと接する面(これが装飾シートにおける接着面となる。)に、ライナーの凹凸構造(ネガ構造)を転写し、接着面に所定の構造(ポジ構造)を有する凹凸接着面を形成する。接着面の凹凸は、前述したように、被着体に凸部が接着した際に連通路が形成可能な溝を含むように予め設計される。
【0071】
接着層の溝は、装飾シートを施工する際に気泡残りを防止できる限り、一定形状の溝を規則的パターンに沿って接着面に配置して規則的パターンの溝を形成してもよく、不定形の溝を配置し不規則なパターンの溝を形成してもよい。複数の溝が互いに略平行に配置される様に形成される場合、溝の配置間隔は約10μm以上、約2000μm以下であることが好ましい。溝の深さ(接着面からベース層の方向に向かって測定した溝の底までの距離)は、通常約10μm以上、約100μm以下である。溝の形状も、本発明の効果を損なわない限り特に限定されない。例えば、溝の形状を、接着面に垂直な方向の溝の断面において、略矩形(台形を含む)、略半円形、又は略半楕円形とすることができる。
【0072】
装飾シートは公知の方法によって製造することができる。例えば、感圧接着剤組成物、又は感圧接着剤組成物を必要に応じて有機溶剤などで希釈した溶液を、ナイフコート、バーコートなどによりライナー上に塗布し乾燥して、感圧接着剤組成物の硬化物を含む接着層を形成する。架橋剤を反応させるために乾燥時に熱風、オーブンなどを用いて接着層を加熱してもよい。得られた接着層の上にベース層をドライラミネートなどにより積層して装飾シートを形成することができる。
【0073】
装飾シートは無色透明であってもよく、有色透明であってもよい。このような透明装飾シートは、例えば他の装飾シートの上に適用されるオーバーラミネートフィルムとして使用することができる。
【0074】
本開示の装飾シートは、車両、建築物、交通標識、包装材料、看板等の内外装用途に使用することができ、特にリワーク性及び寸法安定性を要求される用途で好適に使用することができる。
【実施例】
【0075】
以下の実施例において、本開示の具体的な実施態様を例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。部及びパーセントは全て、特に明記しない限り質量による。
【0076】
本実施例においては、表1に示す以下の略称を使用することがある。
【0077】
【0078】
粘着性ポリマー1(ADH1)の製造
2EHA64質量部、BA30質量部、及びAA6質量部を、酢酸エチル42質量部に溶解させ、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(商品名V-65、和光純薬工業株式会社製)0.67質量部を加えた後、窒素雰囲気下75℃で24時間反応させ、粘着性ポリマー1(ADH1)の酢酸エチル溶液(固形分70%)を調製した。ADH1の重量平均分子量(Mw)は280,000、ガラス転移温度(Tg)は-57℃であった。ADH1のTg(℃)は、各ポリマーがn種類のモノマーから共重合されているとして、以下のFOXの式
【数3】
より求めた。式中、Tg
iは成分iのホモポリマーのガラス転移温度(℃)、X
iは重合の際に添加した成分iのモノマーの質量分率をそれぞれ示し、iは1~nの自然数であり、
【数4】
である。
【0079】
粘着性ポリマー2(ADH2)の製造
2EHA64質量部、BA30質量部、及びAA6質量部を、酢酸エチル66.7質量部に溶解させ、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(商品名V-65、和光純薬工業株式会社製)0.7質量部を加えた後、窒素雰囲気下75℃で24時間反応させ、粘着性ポリマー2(ADH2)の酢酸エチル溶液(固形分60%)を調製した。ADH2の重量平均分子量(Mw)は290,000、ガラス転移温度(Tg)は-57℃であった。
【0080】
粘着性ポリマー3(ADH3)の製造
2EHA62質量部、BA31質量部、AN2質量部、及びAA5質量部を、酢酸エチル66.7質量部に溶解させ、重合開始剤としてジメチル 2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート))(商品名V-601、和光純薬工業株式会社製)0.65質量部を加えた後、窒素雰囲気下65℃で24時間反応させ、粘着性ポリマー3(ADH2)の酢酸エチル溶液(固形分60%)を調製した。ADH3の重量平均分子量(Mw)は320,000、ガラス転移温度(Tg)は-56℃であった。
【0081】
粘着性ポリマー4(ADH4)の製造
2EHA62質量部、BA31質量部、AN2質量部、及びAA5質量部を、酢酸エチル66.7質量部に溶解させ、重合開始剤としてジメチル 2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート))(商品名V-601、和光純薬工業株式会社製)0.65質量部を加えた後、窒素雰囲気下65℃で24時間反応させ、粘着性ポリマー4(ADH4)の酢酸エチル溶液(固形分60%)を調製した。ADH4の重量平均分子量(Mw)は370,000、ガラス転移温度(Tg)は-56℃であった。
【0082】
粘着性ポリマー5(ADH5)の製造
BA94質量部、及びAA6質量部を、酢酸エチル150質量部に溶解させ、重合開始剤としてジメチル 2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート))(商品名V-601、和光純薬工業株式会社製)0.5質量部を加えた後、窒素雰囲気下75℃で24時間反応させ、粘着性ポリマー5(ADH5)の酢酸エチル溶液(固形分40%)を調製した。ADH5の重量平均分子量(Mw)は580,000、ガラス転移温度(Tg)は-48℃であった。
【0083】
粘着性ポリマー6(ADH6)の製造
IOA70質量部、MA22.5質量部、及びAA7.5質量部を、酢酸エチル150質量部に溶解させ、重合開始剤としてジメチル 2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート))(商品名V-601、和光純薬工業株式会社製)0.7質量部を加えた後、窒素雰囲気下75℃で24時間反応させ、粘着性ポリマー6(ADH6)の酢酸エチル溶液(固形分40%)を調製した。ADH6の重量平均分子量(Mw)は360,000、ガラス転移温度(Tg)は-35℃であった。
【0084】
本実施例において装飾シートの作製に使用した材料を表2に示す。
【0085】
【0086】
評価方法
装飾シートの特性を以下の方法に従って評価した。
【0087】
1.リワーク性
試験片を300mm長さ、210mm幅に切断した。試験片をメラミン焼き付け塗装板(株式会社パルテック製)に23℃の環境下においてスキージで貼り付けた。試験片を手で高速剥離した。試験片の変形なく容易に剥離できた場合を「良」、試験片の変形はないが剥離が重い場合を「不良」、タックが強く高速での試験片が変形して剥離できなかった場合を「劣悪」と判断した。
【0088】
2.20℃初期接着力-リン酸塩処理鋼板
試験片を150mm長さ、25mm幅に切断した。JIS Z 0237 8.2.3.に準拠して試験片をリン酸塩処理鋼板(株式会社パルテック製)に20℃の環境下で貼り付けた。試験片を20℃環境下に5分間放置した。20℃の環境下で引張試験機(株式会社オリエンテック製テンシロン「Tensilon(商標)」)により180度接着力を測定した。掴み間隔は100mm、剥離速さは300mm/分とした。
【0089】
3.5℃初期接着力-リン酸塩処理鋼板
試験片を150mm長さ、25mm幅に切断した。JIS Z 0237 8.2.3.に準拠して試験片をリン酸塩処理鋼板(株式会社パルテック製)に5℃の環境下で貼り付けた。試験片を5℃環境下に5分間放置した。5℃の環境下で引張試験機(株式会社オリエンテック製テンシロン「Tensilon(商標)」)により180度接着力を測定した。掴み間隔は100mm、剥離速さは300mm/分とした。
【0090】
4.5℃常態接着力-リン酸塩処理鋼板
試験片を150mm長さ、25mm幅に切断した。JIS Z 0237 8.2.3.に準拠して試験片をリン酸塩処理鋼板(株式会社パルテック製)に5℃の環境下で貼り付けた。試験片を5℃環境下に24時間放置した。5℃の環境下で引張試験機(株式会社オリエンテック製テンシロン「Tensilon(商標)」)により180度接着力を測定した。掴み間隔は100mm、剥離速さは300mm/分とした。
【0091】
5.糊残り
「20℃初期接着力-リン酸塩処理鋼板」に従って試験片を剥離した後に、リン酸塩処理鋼板の表面を目視で観察した。接着剤の残渣がリン酸塩処理鋼板の表面に残らなかった場合を「良」、接着剤の残渣がリン酸塩処理鋼板の表面に残った場合を「不良」とした。
【0092】
6.20℃初期接着力-メラミン焼き付け塗装板
試験片を150mm長さ、25mm幅に切断した。JIS Z 0237 8.2.3.に準拠して試験片をメラミン焼き付け塗装板(株式会社パルテック製)に20℃の環境下で貼り付けた。試験片を20℃環境下に5分間放置した。20℃の環境下で引張試験機(株式会社オリエンテック製テンシロン「Tensilon(商標)」)により180度接着力を測定した。掴み間隔は100mm、剥離速さは300mm/分とした。
【0093】
7.20℃初期接着力-アルミニウム板
試験片を150mm長さ、25mm幅に切断した。JIS Z 0237 8.2.3.に準拠して試験片をアルミニウム板(株式会社アサヒビーテクノ製A5052P)に20℃の環境下で貼り付けた。試験片を20℃環境下に5分間放置した。20℃の環境下で引張試験機(株式会社オリエンテック製テンシロン「Tensilon(商標)」)により180度接着力を測定した。掴み間隔は100mm、剥離速さは300mm/分とした。
【0094】
8.熱収縮性(寸法安定性)
試験片を50mm角の正方形に切断した。試験片をアルミニウム板(株式会社アサヒビーテクノ製A5052P)に23℃の環境下で貼り付け、23℃環境下に24時間放置した後、試験片に十字の切れ目を入れて25mm角の正方形に4分割した。試験片を65℃の環境下に24時間放置した。熱処理後の試験片の収縮状態を光学顕微鏡により観察し、25mm角の正方形の間の隙間で最も大きいものを熱収縮値(mm)とした。試験片の外周が収縮して25mm角の正方形の間に隙間が観察されなかったものを「閉鎖」とした。「閉鎖」は装飾シートの接着層の凝集力が小さいために、ベース層の収縮に接着層が追従できなかったことを意味し、一般に熱処理後の試験片の外周から外側にはみ出した接着層の残渣が観察される。
【0095】
例1
フィラー(F1)及び粘着性ポリマー1(ADH1)を混合して接着剤溶液を調製した。接着剤溶液は、固形分換算で、ADH1を100質量部、F1を5質量部含んでいた。接着剤溶液に、固形分換算で、架橋剤1(CL1)を100質量部のADH1に対してCL1が0.20質量部となる量で添加した。接着剤溶液の固形分は70質量%であった。接着剤溶液を剥離ライナー1(L1)のシリコーン処理面上にナイフコータで塗布した。塗布層を95℃で5分間乾燥して、厚さ38μmの透明感圧接着層を得た。透明感圧接着層を170μm厚ポリ塩化ビニルフィルムと貼り合わせて例1の装飾シートを得た。
【0096】
例2~17及び比較例1~5
例2~17及び比較例1~5の装飾シートを例1の装飾シートと同様に作製した。これらの装飾シートの粘着性ポリマーの種類、固形分、フィラーの種類及び量、架橋剤の種類及び量、剥離ライナーの種類、及び感圧接着層の厚さを表3に示す。
【0097】
例18
フィラー(F1)及び粘着性ポリマー2(ADH2)を混合して接着剤溶液を調製した。接着剤溶液は、固形分換算で、ADH2を100質量部、F1を5質量部含んでいた。接着剤溶液に、固形分換算で、架橋剤4(CL4)を100質量部のADH2に対してCL4が2.0質量部となる量で添加した。接着剤溶液の固形分は60質量%であった。接着剤溶液を剥離ライナー2(L2)のシリコーン処理面上にナイフコータで塗布した。塗布層を95℃で5分間乾燥して、厚さ38μmの透明感圧接着層を形成した。透明感圧接着層に高圧水銀灯を用いて紫外線を照射した。UVCの照射量は60mJ/cm2であった。透明感圧接着層を170μm厚ポリ塩化ビニルフィルムと貼り合わせて例18の装飾シートを得た。
【0098】
例19
CL4を4質量部とし、UVC照射量を30mJ/cm2とした以外は、例18と同様の手順で例19の装飾シートを得た。
【0099】
例20
UVC照射量を60mJ/cm2とした以外は、例19と同様の手順で例20の装飾シートを得た。
【0100】
【0101】
例1~18及び比較例1~8の装飾シートの評価結果を表4に示す。例8~10についてはメラミン焼き付け塗装板の20℃初期接着力、例9~10についてはアルミニウム板の20℃初期接着力を表5に示す。
【0102】
【0103】
【0104】
本発明の基本的な原理から逸脱することなく、上記の実施態様及び実施例が様々に変更
可能であることは当業者に明らかである。また、本発明の様々な改良及び変更が本開示の
趣旨及び範囲から逸脱せずに実施できることは当業者には明らかである。本発明の実施態様の一部を以下の態様1~7に記載する。
[態様1]
ベース層、及び前記ベース層の上又は上方に配置された接着層を含む装飾シートであって、前記接着層は、重量平均分子量400,000以下の(メタ)アクリル系ポリマー及び疎水性ナノシリカ粒子を含む感圧接着剤組成物の硬化物を含み、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部を基準として前記疎水性ナノシリカ粒子を0.1~25質量部含む、装飾シート。
[態様2]
前記(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度が-40℃以下である、態様1に記載の装飾シート。
[態様3]
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、アルキル基の炭素原子数が8以上の(メタ)アクリルエステルモノマーに由来する単位を50質量%以上含む、態様1又は2のいずれかに記載の装飾シート。
[態様4]
前記接着層は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部を基準として前記疎水性ナノシリカ粒子を5~10質量部含む、態様1~3のいずれかに記載の装飾シート。
[態様5]
前記疎水性ナノシリカ粒子の平均一次粒径が100nm以下である、態様1~4のいずれかに記載の装飾シート。
[態様6]
前記感圧接着剤組成物が、エポキシ系架橋剤及びビスアミド架橋剤からなる群より選択される熱架橋剤を含む、態様1~5のいずれかに記載の装飾シート。
[態様7]
前記感圧接着剤組成物が、紫外線照射により水素ラジカルを引き抜くことが可能な構造を有する紫外線架橋剤を含む、態様1~5のいずれかに記載の装飾シート。
【符号の説明】
【0105】
10 装飾シート
12 ベース層
14 接着層
16 疎水性ナノシリカ粒子