(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】コイル、無接点給電ユニット、及びコイルの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 5/00 20060101AFI20220426BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20220426BHJP
H01F 38/14 20060101ALI20220426BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
H01F5/00 R
H01F41/04 C
H01F38/14
H01F41/02 D
(21)【出願番号】P 2018054976
(22)【出願日】2018-03-22
【審査請求日】2020-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000194918
【氏名又は名称】ホシデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英次
(72)【発明者】
【氏名】江馬 弘
(72)【発明者】
【氏名】滋野 安広
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/001812(WO,A1)
【文献】特開2013-201415(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0176282(US,A1)
【文献】国際公開第2015/064694(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/187930(WO,A1)
【文献】特開2010-074621(JP,A)
【文献】特開2016-160504(JP,A)
【文献】特開2009-212102(JP,A)
【文献】特開昭57-097608(JP,A)
【文献】特開2007-109898(JP,A)
【文献】特開2015-103722(JP,A)
【文献】特開2005-209992(JP,A)
【文献】特開平07-106141(JP,A)
【文献】特開平09-199333(JP,A)
【文献】特開平09-148135(JP,A)
【文献】特開平02-194601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 5/00
H01F 41/04
H01F 38/14
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材を含む樹脂コンパウンドを用いて射出成形で形成された状態の磁性樹脂体と、
前記磁性材が露出するように前記磁性樹脂体のスキン層を除去して形成された状態の溝部と、
無電解メッキ処理により前記溝部に形成された状態の導体層と、
を備え
、
前記溝部に露出した前記磁性材は、前記無電解メッキ処理における触媒核として利用されるコイル。
【請求項2】
前記溝部の底面からの前記導体層の厚さよりも、前記底面から前記溝部の開口部までの高さの方が高い請求項1に記載のコイル。
【請求項3】
前記溝部において前記磁性樹脂体を貫通する貫通穴を更に備える請求項1又は2に記載のコイル。
【請求項4】
前記導体層は、リンを含有するニッケルメッキ層と、当該ニッケルメッキ層に積層された金メッキ層とを有する請求項1から3のいずれか一項に記載のコイル。
【請求項5】
前記磁性樹脂体は、前記スキン層の表面を覆う樹脂コーティング層を有し、
前記溝部は、前記スキン層と共に前記樹脂コーティング層を除去して形成される請求項1から4のいずれか一項に記載のコイル。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のコイルを用いて形成され、磁界に基づいて電力伝送が行われる無接点給電用コイルと、
前記導体層と電気的に接続して形成された端子電極と、
を備えた無接点給電ユニット。
【請求項7】
磁性材を含む樹脂コンパウンドを用いて射出成形で磁性樹脂体を形成する磁性樹脂体形成ステップと、
前記磁性材が露出するように前記磁性樹脂体のスキン層を除去して溝部を形成する溝部形成ステップと、
無電解メッキ処理により前記溝部に導体層を形成する導体層形成ステップと、
を備え
、
前記溝部形成ステップにおいて、露出した前記磁性材は、前記無電解メッキ処理における触媒核として利用されるコイルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に用いられるコイル、このようなコイルを用いた無接点給電ユニット、及びコイルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器が広く利用され、当該電子機器は様々な電子部品を用いて構成される。このような電子部品として、例えば下記に出典を示す特許文献1-3に記載のものがある。
【0003】
特許文献1にはコイル装置が記載されている。このコイル装置は、金属粒子が絶縁相で絶縁されている磁性体コアを用いて構成される。磁性体コアには、表面の一部の絶縁相が除去され、金属粒子の表面が所定面積領域内で露出する電極予定部分と、ワイヤが巻回される巻芯部とが形成される。
【0004】
特許文献2には電子部品が記載されている。この電子部品は、絶縁体及び金属磁性体の粒子を含有する材料により作製された素体と、当該素体の表面に設けられている外部電極とを備えている。素体には、コイル導体及びビア導体を含むコイルが設けられる。
【0005】
特許文献3には表面実装インダクタが記載されている。この表面実装インダクタは、導線を巻回して形成されたコイルと、金属磁性体粉末と樹脂を含有する封止材でコイルを封止した成形体を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-4815号公報
【文献】国際公開第2015/115180号パンフレット
【文献】特開2016-58418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1-3に記載の技術では、コイルはワイヤやコイル導体や導体(以下「ワイヤ等」とする)をコアに巻くように形成される。例えばワイヤ等をコアに巻くようにする際、ワイヤ等とコアとの間に隙間があったり、ワイヤ等にほつれがあればコイルの電気的特性に影響が出る。このように特許文献1-3に記載の技術は、コイルの製造工程が電気的特性に影響を与える可能性がある。
【0008】
そこで、製造工程に起因する電気的特性に対する影響が少ないコイルが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るコイルの特徴構成は、磁性材を含む樹脂コンパウンドを用いて射出成形で形成された状態の磁性樹脂体と、前記磁性材が露出するように前記磁性樹脂体のスキン層を除去して形成された状態の溝部と、無電解メッキ処理により前記溝部に形成された状態の導体層と、を備え、前記溝部に露出した前記磁性材は、前記無電解メッキ処理における触媒核として利用されている点にある。
【0010】
このような特徴構成とすれば、所謂巻線型コイルのように磁性樹脂体に巻線を巻き回す必要がなく、任意な位置に導体層を形成することができる。また、磁性樹脂体の表面に導体層を直接形成することができるため、導体層と磁性樹脂体との間隔を一定にでき、インダクタ値を安定させることが可能となる。したがって、製造工程に起因する電気的特性に対する影響が少ないコイルを実現できる。
【0011】
また、前記溝部の底面からの前記導体層の厚さよりも、前記底面から前記溝部の開口部までの高さの方が高いと好適である。
【0012】
このような構成とすれば、導体層の厚さの値よりも溝部の深さの値の方が大きくできるので、互いに隣接する導体層同士の短絡を防止できる(すなわち、導体層同士を絶縁する沿面距離を延ばすことができる)。また、仮に前記導体層同士が短絡した場合でも、短絡した部分の導電層のみを例えば研磨により除去すれば良いので修正を容易に行うことができる。また、磁性樹脂体における互いに隣接する溝部同士の間に導体が付着した場合であっても、溝部の深さの方が導体層の厚さよりも深いので前記導体層同士が短絡することがない。更には、前記導体層同士の間隔を狭くして、夫々の導体層の幅を広くすることができるので、より大きな電流を流すことが可能となる。
【0013】
また、前記コイルは、前記溝部において前記磁性樹脂体を貫通する貫通穴を更に備えると好適である。
【0014】
このような構成とすれば、導体層が形成された磁性樹脂体の面とは異なる面を配線に利用することができる。したがって、コイルの端子と導体層の端部との間に別の導体層が形成されている場合であっても、コイルの端子と導体層の端部とを電気的に接続することが可能となる。
【0015】
また、前記導体層は、リンを含有するニッケルメッキ層と、当該ニッケルメッキ層に積層された金メッキ層とを有すると好適である。
【0016】
このような構成とすれば、磁性樹脂体に磁石のような磁気を持たせることなく、導体層を形成することが可能となる。
【0017】
また、前記磁性樹脂体は、前記スキン層の表面を覆う樹脂コーティング層を有し、前記溝部は、前記スキン層と共に前記樹脂コーティング層を除去して形成されると好適である。
【0018】
このような構成とすれば、磁性樹脂体の表面に磁性材が現れていた場合であっても、磁性樹脂体において導体層を形成する部位の磁性樹脂体の表面の樹脂コーティング層を除去することで、当該導体層を形成する部位以外には導体層を形成しないようにできる。すなわち、導体層を選択的に形成することが可能となる。
【0019】
また、前記コイルによれば、前記コイルを用いて形成され、磁界に基づいて電力伝送が行われる無接点給電用コイルと、前記導体層と電気的に接続して形成された端子電極と、を備えた無接点給電ユニットを構成することができる。
【0020】
このような構成とすれば、電気的特性の優れた無接点給電用コイルを構成できるので、伝送効率の優れた無接点給電ユニットを実現することが可能となる。
【0021】
また、本発明に係る電子部品の製造方法の特徴構成は、磁性材を含む樹脂コンパウンドを用いて射出成形で磁性樹脂体を形成する磁性樹脂体形成ステップと、前記磁性材が露出するように前記磁性樹脂体のスキン層を除去して溝部を形成する溝部形成ステップと、無電解メッキ処理により前記溝部に導体層を形成する導体層形成ステップと、を備え、前記溝部形成ステップにおいて、露出した前記磁性材は、前記無電解メッキ処理における触媒核として利用されている点にある。
【0022】
このような特徴構成とすれば、磁性樹脂体と導体層との間に隙間が生じたり、導体層がほつれることがないコイルを製造することができる。したがって、製造工程に起因する電気的特性に対する影響が少ないコイルを容易に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図3】走査電子顕微鏡による導体層の二次電子像である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係るコイルは、低コストで製造できるように構成されている。以下、本実施形態のコイル1について説明する。
図1はコイル1の模式図であり、
図2はコイル1の分解斜視図である。
図1及び
図2に示されるように、コイル1は、磁性樹脂体10、溝部20、導体層30を備えている。
【0025】
磁性樹脂体10は、磁性材を含む樹脂コンパウンドを用いて射出成形で形成された状態のものである。磁性材とは、例えばセンダスト等の軟磁性材料である。本実施形態では、このような軟磁性材料を射出成形の原料樹脂に混ぜ合わせたものが樹脂コンパウンドに相当する。本実施形態の磁性樹脂体10は、
図1及び
図2に示されるような形状となるような所定の金型と上記樹脂コンパウンドとを用いて射出成形により形成される。このような射出成形は公知であるのでここでは説明は省略する。
【0026】
このような磁性材を含む樹脂コンパウンドを用いて射出成形で磁性樹脂体10を形成する工程は、コイル1の製造方法における磁性樹脂体形成ステップと称される。
【0027】
ここで、射出成形では、金型で形成されたキャビティに溶融した材料(本実施形態では「樹脂コンパウンド」)を注入する際、材料がキャビティ内を流動するが、キャビティ内を前進するに応じて金型表面に接する材料は、金型表面よりも内部にある材料(「コア層」)に比べて冷えて固まり易くなる。このようなコア層に対して先に冷えて固まった層が「スキン層」と称される。
図1の#Aに示される磁性樹脂体10の径方向に直交する断面図において、このようなスキン層11及びコア層12が模式的に示される。このようなスキン層11の厚さは10μm程度である。
【0028】
溝部20は、磁性材が露出するように磁性樹脂体10のスキン層11を除去して形成された状態のものである。溝部20は、仮に磁性樹脂体10に巻線を巻き回したとした場合の当該巻線の位置に形成される。本実施形態では、スキン層11の除去は例えばミリングカッター等の切削加工機を用いてスキン層11を破壊することにより行われる。溝部20の深さはコイル1の巻線として用いられる後述する導体層30の厚さに応じて設定され、導体層30の厚さは導体層30を流れる電流の電流値に応じて設定される。したがって、溝部20の深さは、導体層30を流れる電流の電流値に応じて設定される。また、溝部20の幅も導体層30を流れる電流の電流値に応じて設定されるが、例えばミリングカッターのカッター歯を変えることで容易に変更することが可能である。これにより、幅が広い導体層30でも簡便に構成できる。
【0029】
このように溝部20は、市販されている基板加工機等を使った切削加工で容易に高精度な細線パターン(例えば0.05mm間隔)でも形成することができる。また、このような切削加工により同一面でのみでなく、互いに異なる面においても溝部20を形成することができる。すなわち、図示はしないが、溝部20を磁性樹脂体10の天面に形成し、磁性樹脂体10の側面にも溝部20を形成することが可能である。このように溝部20を形成する場合には、磁性樹脂体10に対して3次元的に溝部20を形成することが可能となる。
【0030】
このような磁性材が露出するように磁性樹脂体10のスキン層11を除去して溝部20を形成する工程は、コイル1の製造方法における溝部形成ステップと称される。なお、スキン層11はコア層12よりも先に冷えて固まった層である。このようなスキン層11は原料樹脂に混ぜ合わされた軟磁性材料(磁性材)が一様に分布していない可能性がある。係る場合、後述する導体層30を形成する際、磁性材を無電解メッキ処理における触媒核として利用することができず、所期の場所に導体層30を形成することができない。そこで、溝部形成ステップにおいてスキン層11の除去が行われる。
【0031】
導体層30は、無電解メッキ処理により溝部20に形成された状態のものである。導体層30は、上述したようにコイル1における巻線に相当する。ここで、上述したように溝部20は磁性樹脂体10のスキン層11を除去して磁性材が露出するように形成されている。導体層30は、このように露出した磁性材を触媒核として活性化し、無電解メッキ処理を施すことにより磁性樹脂体10の表面に形成される。
【0032】
このような無電解メッキ処理は、例えば無電解銅メッキ処理を用いることが可能である。
図3には、無電解銅メッキ処理により形成された導体層30の走査電子顕微鏡による二次電子像が示される。また、
図4は、エネルギー分散型X線分光法による
図3における二次電子像を取得した領域の元素分析結果である。なお、
図3及び
図4共に、電子の加速電圧を15kVとして取得している。
図4に示されるように銅(Cu)のピークが大きいことから、
図3に示される二次電子像内には無電解メッキ処理により適切に銅からなる導体層30が形成されていることがわかる。
【0033】
なお、導体層30はリンを含有するニッケルメッキ層と、当該ニッケル層に積層された金メッキ層とを有するように行っても良い。これにより、磁性樹脂体10に永久磁石のような磁気を帯びさせることなく導体層30を形成することが可能となる。なお、ニッケルメッキ層のリンの含有量は例えば8%以上であると好適である(すなわち、含有量8%以上の高リンであると好適である)。このような高リンを用いることにより磁気を帯びさせることがない。
【0034】
溝部20の底面からの導体層30の厚さよりも、溝部20の底面から溝部20の開口部までの高さの方が高く形成すると良い。これにより、互いに隣接する導体層30同士の短絡を防止でき、当該導体層30同士に間隔を短くすることが可能となる。したがって、導体層30を高密度に形成し、コイル1のコンパクト化に寄与できる。
【0035】
また、仮に互いに隣接する導体層30同士が短絡した場合であっても、短絡した部分の導体層30のみを除去(例えば研磨により)することで、正規の導体層30を残したまま修正することが可能となる。更には、互いに隣接する導体層30同士の間に位置する磁性樹脂体10の表面に、仮に導体が付着した場合であっても互いに隣接する導体層30同士が付着した導体によりブリッジされることがないので、絶縁処理を施す必要もない。
【0036】
なお、導体層30における溝部20の壁面に接する部位には、上述した
図1の#B(#Aの拡大図)に示されるように、導体層30の延出方向(磁性樹脂体10の径方向)に直交する断面ではテーパー状のフィレット32が形成されるが、上述した導体層30の厚さはこのようなフィレット32を含めて設定すると好適である。
【0037】
ここで、
図1に示されるように、導体層30を磁性樹脂体10の天面に渦巻き状に形成した際に、導体層30の電極40を磁性樹脂体10の側面に配置する場合には、径方向外側の導体層30との短絡をしないようにする必要がある。そこで、溝部20において磁性樹脂体10を貫通する一対の貫通穴50を備えると良い。これにより径方向内側の導体層30の端部から一方の貫通穴50を介して磁性樹脂体10における上記天面とは異なる面に補助導体層31を形成して、径方向外側の導体層30の回避後、他方の貫通穴50で磁性樹脂体10における上記天面に戻って導体層30を形成することが可能となる。このように構成することで、例えば磁性樹脂体10の側面において電極40を近接して設けることが可能となる。
【0038】
なお、このような貫通穴50は後工程(磁性樹脂体10を射出成形よりも後の工程)で形成することができるので、磁性樹脂体10の形成に用いられる金型の構造を簡素にすることができる。
【0039】
貫通穴50は、磁性樹脂体10に溝部20を形成後、公知のビア形成技術を用いて形成することができる。また、貫通穴50にも上記無電解メッキ処理を施すことにより、あるいは、貫通穴50に公知のスルーホールピンを実装することにより、容易に貫通穴50の軸方向両側を電気的に接続することが可能である。したがって、予め磁性樹脂体10に穴を開けておく必要がない。また、補助導体層31は、上述した導体層30と同様に、補助導体層31を形成する位置に磁性材が露出するようにスキン層11を除去して溝部20を形成しておき、無電解メッキ処理を施すことにより形成することが可能である。なお、貫通穴50は磁性樹脂体10の成形と同時に形成しても良い。
【0040】
このような無電解メッキ処理により溝部20に導体層30を形成する工程は、コイル1の製造方法における導体層形成ステップと称される。
【0041】
以上のようにコイル1を構成することで、電気的特性に優れたコイルを低コストで実現することが可能となる。
【0042】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、
図1及び
図2において、溝部20及び導体層30が磁性樹脂体10の天面に形成されるように示したが、溝部20及び導体層30は磁性樹脂体10の側面に形成することも可能であるし、天面及び側面の双方に形成することも可能である。
【0043】
上記実施形態では、溝部20は磁性材が露出するように磁性樹脂体10のスキン層11を除去して形成された状態のものであるとして説明したが、磁性樹脂体10がスキン層11の表面を覆う樹脂コーティング層を有するように形成することも可能である。係る場合には、溝部20は、スキン層11と共に樹脂コーティング層を除去して形成すると良い。これにより、磁性樹脂体10の表面に磁性材が露出されていた場合でも、全表面が一旦、樹脂コーティング層で覆われ、導体層30を形成する部位のみ改めて磁性材を露出させることができる。したがって、無電解メッキ処理を施した場合でも不要な部分に導体層30が形成され難くすることができる。
【0044】
上記実施形態では、溝部20は切削加工で形成されるとして説明したが、レーザーを用いてスキン層11を除去するように構成しても良いし、エッチングによりスキン層11を除去しても良い。更には、熱でスキン層11を選択的に溶融させて除去しても良い。
【0045】
上記実施形態では、射出成形で形成された磁性樹脂体10を例に挙げて説明したが、所謂CT(Current Transformer)方式の電流センサのコアをフェライト系プラスチックマグネット材料を用いて射出成形で形成し、コアに上記実施形態で説明したように導体層30を形成することも可能である。
【0046】
例えば、上記実施形態で説明したコイル1を用いて形成した、磁界に基づいて電力伝送を行う無接点給電用コイルと、導体層30と電気的に接続して形成された端子電極とを備えた無接点給電ユニットを構成することも可能である。
【0047】
一般的な巻線コイルにおいて、巻線とコアとの間で距離が生じると、磁性体の透過率によってインダクタ値が変動するため、無接点給電においてインダクタ値に応じて共振調整用コンデンサを調整する必要がある。特に磁気共鳴方式の無接点給電では共振条件を厳格に合わせ込む必要があり、インダクタ値の変動が好ましくない。上記実施形態で説明したコイル1によれば、インダクタ値が安定するので、個体毎に調整が不要となる。また、効率良く一次コイルから電力伝送されることが可能となる。また、三次元的に無接点給電用コイルを形成することで給電の方向特性をなくし、磁性樹脂体10が磁束を集める働きをして、受電側のみで無指向に給電することが可能となる。更には、磁性樹脂体10に、無接点給電用コイルとの共振調整を行う共振調整用コンデンサを実装するためのランドを形成することも可能である。このようなランドも、上述した導体層30と同様に形成することができ、無接点給電用コイルを小型化することが可能となる。
【0048】
上記実施形態では、溝部20及び導体層30を備えたコイル1について説明したが、コイル1以外の電子部品の製造や回路基板のパターニングを行う場合に、上述した溝部20及び導体層30の形成方法を利用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、電子機器に用いられるコイル、このようなコイルを用いた無接点給電ユニット、及びコイルの製造方法に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1:コイル
10:磁性樹脂体
11:スキン層
20:溝部
30:導体層
50:貫通穴