(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】振動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
B06B 1/14 20060101AFI20220426BHJP
【FI】
B06B1/14
(21)【出願番号】P 2018073932
(22)【出願日】2018-04-06
【審査請求日】2020-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000112565
【氏名又は名称】フォスター電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】千葉 雄介
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 義一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 元
(72)【発明者】
【氏名】山上 憲
(72)【発明者】
【氏名】飛鳥川 孝史
(72)【発明者】
【氏名】原 晃
(72)【発明者】
【氏名】笹沼 起史
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-203227(JP,A)
【文献】特開昭64-019568(JP,A)
【文献】特開2000-234645(JP,A)
【文献】特開2016-101572(JP,A)
【文献】特開2004-309080(JP,A)
【文献】特開平11-324914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/14
B06B 1/04
H02K 33/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のケースと、
該ケースの内部に設けられた電磁駆動部と、
該電磁駆動部により前記ケースの振動軸線に沿って振動する可動子と、
前記可動子を挟んで一方の側と他方の側とに配置され、前記可動子が取り付けられる支持部、前記
ケースに取り付けられる環状枠部,前記支持部と前記環状枠部とを接続する複数の渦巻き状の腕部とからなる第1板ばね、第2板ばねと、
を有し、
前記第1板ばね、前記第2板ばねの隣接する腕部を橋絡する弾性材を設けた
ことを特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項2】
前記弾性材は、
隣接する腕部を橋絡する橋絡部と、
該橋絡部に連設され、前記腕部に沿って、前記支持部方向に延出し、前記腕部に重ねられる支持部方向積層腕部と、
該支持部方向積層腕部に連設され、前記支持部に重ねられる積層支持部と、
を有する
ことを特徴とする請求項1記載の振動アクチュエータ。
【請求項3】
前記橋絡部に連設され、前記腕部に沿って、前記環状枠部方向に延出し、前記腕部に重ねられる環状枠部方向
積層腕部
を有する
ことを特徴とする請求項2記載の振動アクチュエータ。
【請求項4】
前記弾性材は前記橋絡部を複数有し、
前記環状枠部方向積層腕部は隣接する橋絡部の間を接続する
ことを特徴とする請求項3に記載の振動アクチュエータ。
【請求項5】
前記弾性材は、
エラストマ、ポリエチレンのうちの少なくとも一方を有する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の振動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータに関し、更に詳しくは、可動子が重い振動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、仮想現実を実現するための触感インターフェースとして、回転モータにより偏心マスを回転させて振動を得るという方法が用いられてきた。
しかし、従来の回転モータを利用した方法は、偏心マスの慣性力により振動を発生させるため、偏心マスが回転を始め振動が触感として得られるまでの反応が鈍く、リアリティが損なわれるという欠点があった。
【0003】
そこで、よりリアルな触感を得るためのアクチュエータとして、ボイスコイル型アクチュエータを用いることが検討されている。
可動磁石型の可動子を有した振動アクチュエータでは、往復運動をする可動子を支持するのに複数のダンパ(板ばね)が用いられている。また、振動力を大きくするために、可動子に錘を付加する場合もある(例えば、引用文献1参照)。
【0004】
そして、錘とダンパのばね成分から導かれる固有共振周波数で、大きな振動出力が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、組立、部品のばらつきにより、振動アクチュエータ内部の磁場が不均一になることにより、ダンパにねじり共振が発生し、固有共振周波数以外で大きな振動が発生する問題点がある。
本発明の実施形態は、上記問題点に鑑みて成されたもので、その課題は、固有共振周波数以外での大きな振動が抑制でき、更に、固有共振周波数の変化が少なく、十分な振動出力が得られる振動アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決する請求項1に係る発明の振動アクチュエータは、
筒状のケースと、
該ケースの内部に設けられた電磁駆動部と、
該電磁駆動部により前記ケースの振動軸線に沿って振動する可動子と、
前記可動子を挟んで一方の側と他方の側とに配置され、前記可動子が取り付けられる支持部、前記ケースの内面に取り付けられる環状枠部,前記支持部と前記環状枠部とを接続する複数の渦巻き状の腕部とからなる第1板ばね、第2板ばねと、
を有し、
前記第1板ばね、前記第2板ばねの隣接する腕部の中間部を橋絡する弾性材を設けた
ことを特徴とする。
【0008】
本発明の実施形態の他の特徴は、以下に述べる発明を実施するための形態並びに添付の図面から一層明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0009】
前記第1板ばね、前記第2板ばねの隣接する腕部の中間部を橋絡する弾性材を設けたことにより、板ばねのねじれ共振が抑制され、固有共振周波数以外の周波数での大きな振動の発生がなくなる。また、弾性材は腕部の中間部を橋絡するので、第1板ばね、第2板ばねの固有共振周波数の変化が少なく、十分な振動出力が得られる。
【0010】
本発明の実施形態の他の効果は、以下に述べる発明を実施するための形態並びに添付の図面から一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の振動アクチュエータの実施形態を説明する分解斜視図である。
【
図8】
図5の切断線VIII-VIIIにおける断面図である。
【
図9】
図1の第1ダンパに第1弾性材を設けた第1ダンパユニットの斜視図である。
【
図11】
図9の第1ダンパユニットの正面図である。
【
図12】
図1の第1弾性材の構造を説明する構成図である。
【
図13】
図1に示す振動アクチュエータの作動を説明する図である。
【
図14】
図1に示す第1弾性ダンパ、第2弾性ダンパのねじれ共振を説明する図である。
【
図15】
図1に示す第1弾性ダンパ、第2弾性ダンパの腕部の共振を説明する図である。
【
図16】
図1の第1ダンパに他の実施形態の第1弾性材を設けた第1ダンパユニットの斜視図である。
【
図18】
図1の第1弾性材の他の構造を説明する構成図である。
【
図19】
図1の第1弾性材の他の構造を説明する構成図である。
【
図20】
図1の第1弾性材の他の構造を説明する構成図である。
【
図21】
図1の第1弾性材の他の構造を説明する構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図を用いて実施形態を説明する。
図1は本発明の振動アクチュエータの実施形態を説明する分解斜視図、
図2は
図1を組み付けた際の平面図、
図3は
図2の正面図、
図4は
図2の背面図、
図5は
図2の下面図、
図6は
図3の左側面図、
図7は
図3の右側面図、
図8は
図5の切断線VIII-VIIIにおける断面図、
図9は
図1の第1
板ばねに弾性材を設けたダンパユニットの斜視図、
図10は
図9の平面図、
図11は
図10の正面図、
図12は
図1の第1弾性材の構造を説明する構成図、
図13は
図1に示す振動アクチュエータの作動を説明する図、
図14は
図1に示す第1弾性ダンパ、第2弾性ダンパのねじれ共振を説明する図、
図15は
図1に示す第1弾性ダンパ、第2弾性ダンパの腕部の共振を説明する図である。
(全体構成)
図1-
図8を用いて振動アクチュエータ
10の全体構成を説明する。
【0013】
ケース1は両端に開口を有する円筒状でABS等の樹脂でなるケース1の内部には円筒状の軟磁性材料でなるヨーク11が設けられている。ヨーク11の内周面には、ヨーク11と電気的に絶縁された状態でコイル21が取り付けられている。
ケース1の一方の開口側の端面には、ABS等の樹脂でなる円筒状の第1カバーケース31が配置される。ケース1の他方の開口側の端面には、ABS等の樹脂でなる円筒状の第2カバーケース41が配置されている。
【0014】
第1カバーケース31のケース1と反対側の開口側の端面には、第1ダンパユニット153が配置されている。第1ダンパユニット153は、ステンレス(本実施形態では、SUS304)の薄板を加工してなり、ケース1の振動軸線Oに沿って可撓可能な板ばねである第1ダンパ51と、第1ダンパ51に設けられた第1弾性材150とからなっている。
【0015】
第2カバーケース41のケース1と反対側の開口側の端面には、第2ダンパユニット353が配置されている。第2ダンパユニット353は、ステンレスの薄板を加工してなり、ケース1の振動軸線Oに沿って可撓可能な板ばねである第2ダンパ251と、第2ダンパ251に設けられた第2弾性材350とからなっている。
【0016】
なお、第1ダンパユニット153、第2ダンパユニット353の詳細は、後述する。
第1カバーケース31と協働して第1ダンパユニット153を挟むように第1ダンパカバー71が配置されている。第2カバーケース41と協働して第2ダンパユニット353を挟むように第2ダンパカバー81が配置されている。
【0017】
第1ダンパカバー71の縁部に沿って120°ピッチで3つの貫通した穴71aが形成されている。第1カバーケース31には、第1ダンパカバー71の穴71aに対向する3つの貫通した穴31aが形成されている。ケース1の一方の開口側の端面には、第1カバーケース31の3つの穴31aに対向する3つのねじ穴1aが形成されている。
【0018】
そして、3本のねじ91が、第1ダンパカバー71の穴71a、第1カバーケース31の穴31aを挿通し、ケース1のめねじ穴1aに螺合する3本のねじ91により、第1ダンパ51の周縁部が第1ダンパカバー71と第1カバーケース31とに挟持された状態で、第1ダンパカバー71、第1ダンパユニット153、第1カバーケース31は、ケース1の一方の開口側に取り付けられている。
【0019】
第2ダンパカバー81の縁部に沿って120°ピッチで3つの貫通した穴81aが形成されている。第2カバーケース41には、第2ダンパカバー81の穴81aに対向する3つの貫通した穴41aが形成されている。ケース1の他方の開口側の端面には、第2カバーケース41の3つの穴41aに対向する3つのねじ穴(図示せず)が形成されている。
【0020】
そして、3本のねじ101が、第2ダンパカバー81の穴81a、第2カバーケース41の穴41aを挿通し、ケース1の他方の開口側の端面に形成されためねじ穴に螺合する3本のねじ101により、第2ダンパ251の周縁部が第2ダンパカバー81と第2カバーケース41とに挟持された状態で、第2ダンパカバー81、第2ダンパユニット353、第2カバーケース41が、ケース1の他方の開口側に取り付けられている。
【0021】
第1ダンパユニット153と第2ダンパユニット353との間には、コイル21に包囲され、振動軸線Oに沿って振動する可動子111が配置される。可動子111は、円板状のマグネット113と、マグネット113を挟むように配置された円板状の第1ポールピース115、第2ポールピース117と、マグネット113、第1ポールピース115、第2ポールピース117を挟むように配置される第1マス(錘)119、第2マス(錘)121からなっている。
【0022】
マグネット113は着磁方向が振動軸線O方向である。第1ポールピース115、第2ポールピース117は、難磁性材料でなり、マグネット113の磁気吸着力及び接着剤等により、マグネット113に取り付けられている。第1マス119、第2マス121は、非磁性体でなり、接着剤等により、第1ポールピース115、第2ポールピース117に取り付けられている。このため、可動子111を構成するマグネット113、第1ポールピース115、第2ポールピース117、第1マス119、第2マス121は一体化されている。
【0023】
第1マス119、第2マス121には、中心軸に沿って貫通した穴119a、貫通した穴121aが形成されている。また、第1ダンパ51、第1弾性材150の中心には、第1マス119の穴119aに対向し、貫通した穴51a、穴150aが形成されている。同様に、第2ダンパ251、第2弾性材350の中心には、第2マス121の穴121aに対向し、貫通した穴251a、穴350aが形成されている。
【0024】
そして、ピン131が第1ダンパ51の穴51a、第1弾性材150の穴150aを挿通し、第1マス119の穴119aに圧入され、ピン141が第2ダンパ251の穴251a、第2弾性材350の穴350aを挿通し、第2マス121の穴121aに圧入されることにより、可動子111はケース1の振動軸線Oに沿って振動可能に支持されている。
【0025】
ケース1の周面には、リード線が接続され、コイル21に電流を供給するターミナル3が形成されている。
(コイル21)
図1-
図8を用いて
コイル21について説明する。
【0026】
本実施形態のコイル21は、振動軸線Oに沿って配置され、第1コイル23、第2コイル25からなっている。第1コイル23、第2コイル25は、ヨーク11の内周面に沿って巻回されている。
このように、ケース1の内部において、ケース1側に設けられた第1コイル23、第2コイル25と、可動子111側に設けられたマグネット113により、振動アクチュエータ10の電磁駆動部が形成されている。図13を用いて後述する電磁駆動部の電磁的作用により、可動子111はケース1の振動軸線Oに沿って振動する。
【0027】
(第1ダンパユニット153、第2ダンパユニット353)
図9-
図11を用いて、本実施形態の第1ダンパユニット153、第2ダンパユニット353について、更に詳しく説明する。尚、第1ダンパユニット153と第2ダンパユニット353とは同一形状で、ケース1への取り付け方も同じであるので、ここでは第1ダンパユニット153で説明を行い、第2ダンパユニット353の説明は省略する。そして、第2ダンパユニット353の第1ダンパユニット153と同一部分には、第1ダンパユニット153の各部分の符号に200加えた符号で説明を行う。例えば、第1ダンパユニット153の第1ダンパ51の第1腕部が符号53である場合、第2ダンパユニット353の第2ダンパ351の第1腕部の符号は253である。
【0028】
第1ダンパユニット153を構成する2つの部品のうちの一方の部品である第1ダンパ51の中央部には、穴51aを挿通するピン131を用いて可動子111に取り付けられる支持部51bが形成されている。
第1ダンパ51の環状枠部51cは、第1ダンパカバー71と第1カバーケース31とに挟持され、ケース1に取り付けられる第1ダンパ51の環状枠部51cには、ねじ91との干渉を防ぐために、3つの切り欠き51dが形成されている。
【0029】
そして、支持部51bと環状枠部51cとは、3つの同一形状の渦巻き状の第1腕部53、第2腕部55、第3腕部57で接続されている。第1腕部53、第2腕部55、第3腕部57は振動軸線Oの回りに120°ピッチで設けられている。
この構成は、第2ダンパ251も有している。
【0030】
第1ダンパユニット153を構成する他方の部品である第1弾性材150は、第1ダンパ51の隣接する腕部を橋絡する橋絡部を有している。即ち、第1ダンパ51の第1腕部53と第3腕部57とを橋絡する第1橋絡部152と、第2腕部55と第1腕部53とを橋絡する第2橋絡部155と、第3腕部57と第2腕部55とを橋絡する第3橋絡部157である。本実施形態の第1橋絡部152、第2橋絡部155、第3橋絡部157はそれぞれ穴152a、穴155a、穴157aを有している。
【0031】
よって、第1橋絡部152は、穴152aを介して2箇所で第1腕部53と第3腕部57とを橋絡している。第2橋絡部155は、穴155aを介して2箇所で第2腕部55と第1腕部53とを橋絡している。第3橋絡部157は、穴157aを介して2箇所で第3腕部57と第2腕部55とを橋絡している。
【0032】
また、第1弾性材150は、第1橋絡部152に連接され、第1腕部53に沿って延出し、第1腕部53に重ねられる第1積層腕部159を有している。この第1積層腕部159は、支持部51b方向に延出する第1支持部方向積層腕部159aと、環状枠部51c方向に延出し、第2橋絡部155に接続する第1環状枠部方向積層腕部159bとからなっている。
【0033】
また、第1弾性材150は、第2橋絡部155に連接され、第2腕部55に沿って延出し、第2腕部55に重ねられる第2積層腕部161を有している。この第2積層腕部161は、支持部51b方向に延出する第2支持部方向積層腕部161aと、環状枠部51c方向に延出し、第3橋絡部157に接続する第2環状枠部方向積層腕部161bとからなっている。
【0034】
更に、第1弾性材150は、第3橋絡部157に連接され、第3腕部57に沿って延出し、第3腕部57に重ねられる第3積層腕部163を有している。この第3積層腕部163は、支持部51b方向に延出する第3支持部方向積層腕部163aと、環状枠部51c方向に延出し、第1橋絡部152に接続する第3環状枠部方向積層腕部163bとからなっている。
【0035】
そして、第1弾性材150は、支持部51bに重ねられ、第1支持部方向積層腕部159a、第2支持部方向積層腕部161a、第3支持部方向積層腕部163a、が連設する積層支持部165を有している。
この構成は第2弾性材350も有している。
【0036】
(第1弾性材150、第2弾性材350の構造)
図12を用いて
第1弾性材150、第2弾性材350について説明する。尚、本実施形態の第1弾性材150、第2弾性材350は、同一構造であるので、第2弾性材350の説明は省略する。
【0037】
図12に示すように、第1弾性材150は、第1ダンパ51上に積層された、接着剤でなる第1接着層171、PE(ポリエチレン)でなるPE層173と、接着剤でなる第2接着層175と、エラストマ(エラストマとしては、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)があるが限定するものではない)でなるエラストマ層177とからなっている。そして、第1弾性材150の弾性変形(本実施形態では、PE層173のずり変形、エラストマ層177の曲げ変形)により、第1ダンパ51の制振を行う。
この構造は第2弾性材350も同様である。
【0038】
(作動)
図13を用いて、本実施形態の振動アクチュエータ
10の作動を説明する。
第1コイル23、第2コイル25に通電していない状態では、第1ダンパユニット153、第2ダンパユニット353で支持される可動子111は、コイル21の中央に位置している。
【0039】
第1コイル23、第2コイル25には、交互に逆極性の磁界を発生する向きに交流を通電させる。即ち、第1コイル23、第2コイル25の隣り合う部分に同極が発生するようになっている。
図13の極性では、可動子111には下方(矢印A方向)への推力が発生し、第1コイル23、第2コイル25へ流す電流を反転させれば、可動子111には上方向(矢印B方向)への推力が発生する。
【0040】
このように、第1コイル23、第2コイル25に交流を通電させれば、可動子111はケース1、第1ダンパユニット153、第2ダンパユニット353よる付勢力を両側から受けながら、振動軸線Oに沿って振動する。
ところで、可動子111に発生する推力は、基本的にはフレミングの左手の法則に基づいて与えられる推力に準じられる。本実施形態では、第1コイル23、第2コイル25が固定されているので、可動子111に第1コイル23、第2コイル25に発生する力の反力としての推力が発生する。
【0041】
よって、推力に寄与するのは、可動子111のマグネット113の磁束の水平成分(マグネット113の軸方向に直交する成分)である。そして、ヨーク11はマグネット113の磁束の水平成分を増大するものである。
【0042】
上記構成によれば、以下のような効果が得られる。
(1) 第1弾性材150は、第1ダンパ51の隣接する腕部を橋絡する橋絡部、即ち、第1腕部53と第3腕部57とを橋絡する第1橋絡部152と、第2腕部55と第1腕部53とを橋絡する第2橋絡部155と、第3腕部57と第2腕部55とを橋絡する第3橋絡部157を有している。
【0043】
また、第2弾性材350は、第2ダンパ251の隣接する腕部を橋絡する橋絡部、即ち、第1腕部253と第3腕部257とを橋絡する第1橋絡部352と、第2腕部255と第1腕部253とを橋絡する第2橋絡部355と、第3腕部257と第2腕部255とを橋絡する第3橋絡部357を有している。
【0044】
よって、第1ダンパ51、第2ダンパ251のねじれによる共振が抑制される。また、固有共振振動数における振幅への影響も少なくでき、十分な振動出力が得られる。
尚、第1ダンパ51、第2ダンパ251のねじれによる共振とは、
図14に示すように、組立、部品のバラツキにより、アクチュエータ内部の磁場が不均一になり、第1ダンパ51、第2ダンパ251の隣接する腕部の間隔が変化し、可動子111が軸ずれした状態(傾いた状態)での共振をいう。
【0045】
(2) 第1弾性材150は、第1橋絡部152に連接され、第1腕部53に沿って延出し、第1腕部53に重ねられる第1積層腕部159と、第2橋絡部155に連接され、第2腕部55に沿って延出し、第2腕部55に重ねられる第2積層腕部161と、第3橋絡部157に連接され、第3腕部57に沿って延出し、第3腕部57に重ねられる第3積層腕部163とを有している。そして、各積層腕部は、支持部51b方向に延出すると共に、環状枠部51c方向にも延出し、他の橋絡部に接続されている。
【0046】
また、第2弾性材350は、第1橋絡部352に連接され、第1腕部253に沿って延出し、第1腕部253に重ねられる第1積層腕部359と、第2橋絡部355に連接され、第2腕部255に沿って延出し、第2腕部255に重ねられる第2積層腕部361と、第3橋絡部357に連接され、第3腕部257に沿って延出し、第3腕部257に重ねられる第3積層腕部363とを有している。そして、各積層腕部は、支持部251b方向に延出すると共に、環状枠部251c方向にも延出し、他の橋絡部に接続されている。
よって、図15に示すような第1ダンパ51、第2ダンパ251の各腕部自体が共振することを抑制できる。
【0047】
本発明の実施形態は、上記実施形態に限定するものではない。以下のような変形例も可能である。
(1)弾性材として、
図16-
図17に示すものでもよい。
図16は
図1の第1ダンパに他の実施形態の第1弾性材を設けた第1ダンパユニットの斜視図、
図17は
図16の第1ダンパユニットの平面図である。
【0048】
他の実施施形態の第1ダンパユニット653、第2ダンパユニット853について説明する。尚、第1ダンパユニット653と第2ダンパユニット853とは同一形状で、ケース1への取り付け方も同じであるので、ここでは第1ダンパユニット653で説明を行い、第2ダンパユニット853の説明は省略する。そして、第2ダンパユニット853の第1ダンパユニット653と同一部分には、第1ダンパユニット653の各部分の符号に200加えた符号で説明を行う。例えば、第1ダンパユニット653の第1ダンパ551の第1腕部が符号553である場合、第2ダンパユニット853の第2ダンパ751の第1腕部の符号は753である。
【0049】
また、第1ダンパ551、第2ダンパ751は、前述した第1ダンパ51、第2ダンパ251と同一形状なので、重複する説明は省略する。
第1ダンパユニット653を構成する2つの部品のうちの他方の部品である第1弾性材650は、第1ダンパ551の隣接する腕部を橋絡する橋絡部を有している。即ち、第1ダンパ551の第1腕部553と第3腕部557とを橋絡する第1橋絡部652、652’と、第2腕部555と第1腕部553とを橋絡する第2橋絡部655、655’と、第3腕部557と第2腕部555とを橋絡する第3橋絡部657、657’である。
【0050】
よって、第1腕部553と第3腕部557とは、2箇所、即ち、第1橋絡部652と、第1橋絡部652’とで橋絡されている。第2腕部555と第1腕部553とは、2箇所、即ち、第2橋絡部655と第2橋絡部655’とで橋絡されている。第3腕部557と第2腕部555とは、2箇所、即ち、第3橋絡部657と第3橋絡部657’とで橋絡されている。
【0051】
また、第1弾性材650は、第1橋絡部652に連接され、第1腕部553に沿って延出し、第1腕部553に重ねられ、支持部551b方向に延出する第1支持部方向積層腕部659を有している。第2橋絡部655に連接され、第2腕部555に沿って延出し、第2腕部555に重ねられ、支持部551b方向に延出する第2支持部方向積層腕部661を有している。第3橋絡部657に連接され、第3腕部557に沿って延出し、第3腕部557に重ねられ、支持部551b方向に延出する第3支持部方向積層腕部663を有している。
【0052】
そして、第1弾性材650は、第1ダンパ551の支持部551bに重ねられ、第1支持部方向積層腕部659、第2支持部方向積層腕部661、第3支持部方向積層腕部663が連設する積層支持部665を有している。
更に、第1橋絡部652には、第3腕部557に重ねられて、第3橋絡部657’に接続される第1中間積層腕部667が連設されている。第2橋絡部655には、第1腕部553に重ねられて、第1橋絡部652’に接続される第2中間積層腕部669が連設されている。第3橋絡部657には、第2腕部555に重ねられて、第2橋絡部655’に接続される第3中間積層腕部671が連設されている。
【0053】
また、第3橋絡部657’には、第2腕部555に重ねられて、環状枠部551c方向に延出する第1環状枠部方向積層腕部673が連設されている。第1橋絡部652’には、第3腕部557に重ねられて環状枠部551c方向に延出する第2環状枠部方向積層腕部675が連設されている。第2橋絡部655’には、第1腕部553に重ねられて環状枠部551c方向に延出する第3環状枠部方向積層腕部677が連設されている。
この構成は第2弾性材850も有している。
【0054】
(2)第1弾性材、第2弾性材の構造は、
図18のような構造でもよい。第1弾性材で説明を行うが、第2弾性材もこのような構造であってもよい。
図18は
図1の第1弾性材の他の構造を説明する構成図である。
【0055】
図18に示すように、第1弾性材750は、第1ダンパ51上に積層された、接着剤でなる接着層771、PE(ポリエチレン)でなるPE層773とからなっている。そして、第1弾性材750の弾性変形(本実施形態では、PE層773のずり変形)により、第1ダンパ51の制振を行う。
【0056】
(3)第1弾性材、第2弾性材の構造は、
図19のような構造でもよい。第1弾性材で説明を行うが、第2弾性材もこのような構造であってもよい。
図19は
図1の第1弾性材の他の構造を説明する構成図である。
図
19に示すように、第1弾性材
860は、第1ダンパ51の一方の面上に積層された、接着剤でなる第1接着層871、PE(ポリエチレン)でなる第1PE層873と、第1ダンパ51の他方の面上に積層された、接着剤でなる第2接着層875、PE(ポリエチレン)でなる第2PE層877とからなっている。そして、第1弾性材850の弾性変形(本実施形態では、第1PE層873、第2PE層877のずり変形)により、第1ダンパ51の制振を行う。
【0057】
(4)第1弾性材、第2弾性材の構造は、
図20のような構造でもよい。第1弾性材で説明を行うが、第2弾性材もこのような構造であってもよい。
図20は
図1の第1弾性材の他の構造を説明する構成図である。
図
20に示すように、第1弾性材880は、第1ダンパ51にインサート成形法で形成されたエラストマ層881である。
そして、第1弾性材880の弾性変形(本実施形態では、エラストマ層881の曲げ変形)により、第1ダンパ51の制振を行う。
【0058】
(5)第1弾性材、第2弾性材の構造は、
図21のような構造でもよい。第1弾性材で説明を行うが、第2弾性材もこのような構造であってもよい。
【0059】
図21は
図1の第1弾性材の他の構造を説明する構成図である。
図
21に示すように、第1弾性材950は、第1ダンパ51の一方の面上に積層された、接着剤でなる第1接着層971、PE(ポリエチレン)でなる第1PE層973と、接着剤でなる第2接着層975と、エラストマでなる第1エラストマ層977と、第1ダンパ51の他方の面上に積層された、接着剤でなる第3接着層981、PE(ポリエチレン)でなる第2PE層983と、接着剤でなる第4接着層985と、エラストマでなる第2エラストマ層987とからなっている。そして、第1弾性材950の弾性変形(本実施形態では、第1PE層973、第2PE層983のずり変形、第1エラストマ層977、第2エラストマ層987の曲げ変形)により、第1ダンパ
51の制振を行う。
【0060】
(6)ケース1は円筒状としたが、円筒状に限定するものではなく、筒状であればよく、例えば角筒状であってもよい。
【実施例】
【0061】
出願人は、本願発明の効果を確認するために、弾性材を有しないダンパを用いた従来例の相当する振動アクチュエータと、弾性材とダンパとからなるダンパユニットを用いた
図1-
図12に相当する振動アクチュエータ
10とを加速度検出器、FFTアナライザを用いて、周波数(Freqency[Hz])-加速度(G[Gp-p])の関係を調べた。その結果を
図22に示す。
【0062】
尚、単位Gp-pは、FFTアナライザで求めた加速度(m/s2)を9.8(m/s2)で割って、2√2倍して求めた値である。
破線で示す弾性材なしの場合は、第1ダンパ、第2ダンパのねじれによる共振(B部)が発生するが、実線で示す弾性材とダンパとからなる第1ダンパユニット、第2ダンパユニットを用いた場合、ねじれ共振が抑制されていることがわかる。
【0063】
また、固有共振振動数(A部)において、振幅(加速度を2回積分することで得られる)への影響も少なくなっており、十分な振動出力が得られている。
次に、破線で示す弾性材なしの場合は、第1ダンパ、第2ダンパの各腕部自体の共振(C部)が発生するが、実線で示す弾性材とダンパとからなる第1ダンパユニット、第2ダンパユニットを用いた場合、第1ダンパ、第2ダンパの各腕部自体の共振が抑制されていることがわかる。
【符号の説明】
【0064】
1 ケース
11 ヨーク
21 コイル
51 第1ダンパ(第1板ばね)
53、253 第1腕部
55、255 第2腕部
57、257 第3腕部
111 可動子
113 マグネット
150 第1弾性材(弾性材)
251 第2ダンパ(第2板ばね)
350 第2弾性材(弾性材)