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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】光モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/02 20060101AFI20220426BHJP
   H01S 5/0231 20210101ALI20220426BHJP
【FI】
H01L31/02 B
H01S5/0231
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018075398
(22)【出願日】2018-04-10
(65)【公開番号】P2019186380
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本ルメンタム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】平井 将大
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/134967(WO,A1)
【文献】特開2004-235571(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0180013(US,A1)
【文献】特開2004-221095(JP,A)
【文献】特開平10-062655(JP,A)
【文献】特開2008-135696(JP,A)
【文献】特開2008-041772(JP,A)
【文献】特開2017-123414(JP,A)
【文献】KOBAYASHI, Wataru et al.,40-Gb/s Operation of a 1.3-/1.55-μm InGaAlAs Electroabsorption Modulator Integrated With DFB Laser in Compact TO-CAN Package,IEEE Journal of Selected Topics in Quantum Electronics,2011年03月22日,Vol. 7, No. 5,pp. 1183-1190,DOI: 10.1109/JSTQE.2011.2106483
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/0392
H01L 31/08-31/119
H01S 5/00-5/50
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に反対の第1面及び第2面を有して前記第1面から前記第2面まで貫通する貫通穴を有する導電性のステムと、
前記ステムに前記第1面の側で固定されて光信号及び電気信号を少なくとも一方から他方に変換するための光電素子と、
前記貫通穴の内側に前記ステムとは非接触で配置されて前記光電素子と電気的に接続されるリードピンと、
前記ステムに前記第1面の側で固定され、前記貫通穴の外側で前記リードピンを保持する絶縁基板と、
絶縁層並びに前記絶縁層に密着する信号配線及びグランドプレーンを含み、前記グランドプレーンをシールドとして、前記絶縁層の誘電率に従った特性インピーダンスを有する伝送線路が構成される基板と、
を有し、
前記絶縁層の端部及び前記信号配線の端部が前記貫通穴に前記第2面から入り込み、
前記信号配線は、前記リードピンに接合されることを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載された光モジュールであって、
前記信号配線と前記リードピンは、前記貫通穴の内側及び外側で連続的に接合されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された光モジュールであって、
前記信号配線と前記リードピンの間に、はんだ及びろう材を含む溶加材をさらに有することを特徴とする光モジュール。
【請求項4】
請求項3に記載された光モジュールであって、
前記基板は、少なくとも前記貫通穴に入る先端部に前記信号配線を覆うレジスト層を有し、
前記レジスト層は、前記溶加材の隣で前記信号配線と前記リードピンの間に介在することを特徴とする光モジュール。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載された光モジュールであって、
前記基板は、前記リードピンとは反対の面で、前記貫通穴の内周面に接触していることを特徴とする光モジュール。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載された光モジュールであって、
前記貫通穴の少なくとも外側で前記リードピンと前記絶縁層の間には空隙が存在しないことを特徴とする光モジュール。
【請求項7】
請求項6に記載された光モジュールであって、
前記貫通穴の内側でも前記リードピンと前記絶縁層の間には空隙が存在しないことを特徴とする光モジュール。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載された光モジュールであって、
前記リードピンは、一対のリードピンであり、
前記信号配線は、一対のリードピンにそれぞれ接合される一対の信号配線であり、
前記貫通穴は、1つの貫通穴であることを特徴とする光モジュール。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載された光モジュールであって、
前記絶縁層は、本体から前記端部が突出する平面形状を有することを特徴とする光モジュール。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載された光モジュールであって、
前記グランドプレーンは、前記貫通穴に入らないことを特徴とする光モジュール。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載された光モジュールであって、
前記基板は、フレキシブル基板であることを特徴とする光モジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、インターネットや電話ネットワークの大部分が光通信網によって構築されている。光通信機器であるルータ/スイッチや伝送装置のインターフェースとして使用される光モジュールは、電気信号を光信号に変換する重要な役割を担っている。
【0003】
光通信で使用されるTO-CAN(Transistor Outline-Can)型光モジュールは、一般に、電気的に接地されているステムと、ステムを貫通し且つステムから絶縁されているリードピンとを有している。また、ステムとステムに取り付けられるキャップとによって、光半導体素子を収容する筐体が構成されている。リードピンとステムは同軸線路を構成している。リードピンの一方の端部は、光半導体素子に接続される。リードピンの他方の端部は、信号線路とそれに沿って形成されるグランドとを有しているフレキシブルプリント基板(FPC)などの配線基板を介して、変調電気信号を出力する駆動デバイスに接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5273600号公報
【文献】特開2016-195217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構造では、ステムとFPCの間に隙間ができるため、リードピンとステムで構成される同軸線路と、FPC上に構成されるマイクロストリップ線路又はコプレーナー線路との間に、特性インピーダンスの不整合が生じる。
【0006】
特許文献2には、光半導体素子が実装されたキャリアをFPCとボンディングワイヤで直接接続した構造が開示されている。しかし、気密が難しい、ワイヤボンディングのために金メッキを厚くする必要があって高コスト化する、リードピンが無いことで組立及び検査工程で多種多様なFPCコネクタが必要になるなどの問題がある。
【0007】
本発明は、特性インピーダンスの不整合を避けることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る光モジュールは、相互に反対の第1面及び第2面を有して前記第1面から前記第2面まで貫通する貫通穴を有する導電性のステムと、前記ステムに前記第1面の側で固定されて光信号及び電気信号を少なくとも一方から他方に変換するための光電素子と、前記貫通穴の内側に前記ステムとは非接触で配置されて前記光電素子と電気的に接続されるリードピンと、前記ステムに前記第1面の側で固定され、前記貫通穴の外側で前記リードピンを保持する絶縁基板と、絶縁層並びに前記絶縁層に密着する信号配線及びグランドプレーンを含み、前記グランドプレーンをシールドとして、前記絶縁層の誘電率に従った特性インピーダンスを有する伝送線路が構成される基板と、を有し、前記絶縁層の端部及び前記信号配線の端部が前記貫通穴に前記第2面から入り込み、前記信号配線は、前記リードピンに接合されることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、基板の一部がステムの貫通穴に入るので、ステムの外側では、基板の特性インピーダンスが維持される。これにより、特性インピーダンスの不整合を避けることができる。
【0010】
(2)(1)に記載された光モジュールであって、前記信号配線と前記リードピンは、前記貫通穴の内側及び外側で連続的に接合されていることを特徴としてもよい。
【0011】
(3)(1)又は(2)に記載された光モジュールであって、前記信号配線と前記リードピンの間に、はんだ及びろう材を含む溶加材をさらに有することを特徴としてもよい。
【0012】
(4)(3)に記載された光モジュールであって、前記基板は、少なくとも前記貫通穴に入る先端部に前記信号配線を覆うレジスト層を有し、前記レジスト層は、前記溶加材の隣で前記信号配線と前記リードピンの間に介在することを特徴としてもよい。
【0013】
(5)(1)から(4)のいずれか1項に記載された光モジュールであって、前記基板は、前記リードピンとは反対の面で、前記貫通穴の内周面に接触していることを特徴としてもよい。
【0014】
(6)(1)から(5)のいずれか1項に記載された光モジュールであって、前記貫通穴の少なくとも外側で前記リードピンと前記絶縁層の間には空隙が存在しないことを特徴としてもよい。
【0015】
(7)(6)に記載された光モジュールであって、前記貫通穴の内側でも前記リードピンと前記絶縁層の間には空隙が存在しないことを特徴としてもよい。
【0016】
(8)(1)から(7)のいずれか1項に記載された光モジュールであって、前記リードピンは、一対のリードピンであり、前記信号配線は、一対のリードピンにそれぞれ接合される一対の信号配線であり、前記貫通穴は、1つの貫通穴であることを特徴としてもよい。
【0017】
(9)(1)から(8)のいずれか1項に記載された光モジュールであって、前記絶縁層は、本体から前記端部が突出する平面形状を有することを特徴としてもよい。
【0018】
(10)(1)から(9)のいずれか1項に記載された光モジュールであって、前記グランドプレーンは、前記貫通穴に入らないことを特徴としてもよい。
【0019】
(11)(1)から(10)のいずれか1項に記載された光モジュールであって、前記基板は、フレキシブル基板であることを特徴としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1の実施形態に係る光モジュールの斜視図である。
図2】フレキシブル基板の無い光モジュールを示す斜視図である。
図3】キャップを取り外した光モジュールの斜視図である。
図4図3に示す光モジュールの平面図である。
図5図4に示す光モジュールのV-V線断面図である。
図6図4に示す光モジュールのVI-VI線断面図である。
図7】絶縁基板の第3面を示す図である。
図8】絶縁基板の第4面を示す図である。
図9図1に示す光モジュールのIX-IX線断面図である。
図10】フレキシブル基板の平面図である。
図11】フレキシブル基板及びリードピンの接合の詳細を説明するための概略図である。
図12】フレキシブル基板及びリードピンの接合の変形例を説明するための概略図である。
図13】第2の実施形態に係る光モジュールの正面側斜視図である。
図14】第2の実施形態に係る光モジュールの背面側斜視図である。
図15】第2の実施形態で使用されるフレキシブル基板の平面図である。
図16図13に示す光モジュールのXVI-XVI線断面である。
図17】第3の実施形態に係る光モジュールの斜視図である。
図18図17に示す光モジュールのXVIII-XVIII線断面である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面に基づき、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。全図において同一の符号を付した部材は同一又は同等の機能を有するものであり、その繰り返しの説明を省略する。なお、図形の大きさは倍率に必ずしも一致するものではない。
【0022】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る光モジュールの斜視図である。光モジュールは、TO-CAN(Transistor Outline-Can)型光モジュールであり、発光素子を備える光送信サブアセンブリ(TOSA: Transmitter Optical Sub-Assembly)、受光素子を備える光受信サブアセンブリ(ROSA: Receiver Optical Sub-Assembly)、発光素子及び受光素子の両方を備える双方向モジュール(BOSA;Bidirectional Optical Sub-Assembly)のいずれであってもよい。光モジュールは、ステム10とステム10に取り付けられるキャップ12から構成される筐体を有し、後述するフレキシブル基板62を有する。
【0023】
図2は、フレキシブル基板62の無い光モジュールを示す斜視図である。図3は、キャップ12を取り外した光モジュールの斜視図である。図4は、図3に示す光モジュールの平面図である。図5は、図4に示す光モジュールのV-V線断面図である。図6は、図4に示す光モジュールのVI-VI線断面図である。
【0024】
光モジュールは、導電性のステム10を有する。ステム10は電気的に接地される。ステム10は、厚さ0.5mm以上の円板状であり、フランジ14を有し、相互に反対の第1面16及び第2面18を有する。フランジ14があることで第2面18が第1面16よりも大きい。ステム10は、第1面16から第2面18まで貫通する貫通穴20を有する。貫通穴20は、内周面22を有する。内周面22は、対向する一対の面領域22aを有する。一対の面領域22aの間隔は0.6mm以上である。貫通穴20の開口が矩形であれば辺(例えば短辺)の長さが0.6mm以上であり、貫通穴20の開口が円形であれば直径が0.6mm以上である。貫通穴20を小さくすることでステム10を小型化することができる。ステム10(例えば第2面18)には、接地のためのGNDピン24が固定されている。貫通穴20の両側に一対のGNDピン24が設けられている。
【0025】
光モジュールは、電気信号(高周波信号)を伝達するための1つ又は複数(例えば2つ)のリードピン26を有する。リードピン26の直径は0.25mm以上0.4mm未満(例えば0.3mm)である。一対のリードピン26が、対向する一対の面領域22aに沿った方向に並ぶ。その配列方向であって一対のリードピン26の両側に一対のGNDピン24が並ぶ。
【0026】
リードピン26は、貫通穴20の内側にステム10とは非接触で配置されている。リードピン26は、ステム10を貫通し、ステム10から絶縁されている。1つの貫通穴20に一対のリードピン26が配置されている。リードピン26は、外周面28を有する。外周面28と貫通穴20の内周面22は、空隙(空気)によって分離されている。つまり、外周面28と内周面22の間には固体が存在しないか、あるいは、固体が存在するとしても外周面28と内周面22を連結しない。内周面22と外周面28は、対向領域では相互に連結されない。
【0027】
光モジュールには、伝送線路が構成される。伝送線路は、貫通穴20の内側で、内周面22がシールド面であり、内周面22と外周面28の間に介在する媒質(空気)の誘電率に従った特性インピーダンス(例えば50オーム)を有する。一対の面領域22aと2つのリードピン26が、差動線路を構成する。言い換えると、内周面22と、その間に介在する媒質の誘電率で一意に決まる特性インピーダンスを有する伝送路を構成する。また本差動線路は、内周面22を接地電位とした伝送線路を構成している。なお、リードピン26とより近い内周面22が電気的に強く接続される。そして遠い側の内周面22(例えば図1の内周面22aと直角方向で接する内周面)とリードピン26との距離が離れていれば、回路基板に形成されたストリップ線路(スラブ線路)と同等のものであるとみなすことが出来る。
【0028】
本実施形態によれば、リードピン26とステム10は空隙(空気)によって分離されているので、誘電率の低い媒質(空気)に従って、所望の特性インピーダンスを得ることができ、特性インピーダンスの不整合を避けて小型化を可能にすることができる。
【0029】
ステム10は、第2貫通穴30を有する。第2貫通穴30の内側には、ガラスなどの固体の媒質32によって絶縁されて、第2リードピン34が固定されている。第2リードピン34は、電源の供給(DC電圧)などに用いられ、電気信号の伝達ほど高精度の特性インピーダンス整合が要求されない。
【0030】
光モジュールは、絶縁基板36を有する。絶縁基板36は、ステム10に第1面16の側で固定されている。絶縁基板36は、第1面16に対向する第3面38及びその反対の第4面40を有する。絶縁基板36の第3面38が、ステム10の第1面16に固定されている。
【0031】
図7は、絶縁基板36の第3面38を示す図である。絶縁基板36は、セラミックからなり、第3面38に第1導電パッド42を有する。第1導電パッド42は、貫通穴20に対向する位置にあってステム10に非接触になっており、薄膜であるため図5及び図6には表れていない。第1導電パッド42は、絶縁基板36を貫通する第1コンタクト44に接続されている。絶縁基板36は、第3面38にさらに第2導電パッド46を有する。第2導電パッド46は、絶縁基板36を貫通する第2コンタクト48に接続されている。絶縁基板36とステム10は、図5図6に示すように、はんだ50で固定されている。はんだ50は、第2導電パッド46及びステム10の間に介在して両者を電気的に接続するとともに、絶縁基板36をステム10に固定する。
【0032】
図8は、絶縁基板36の第4面40を示す図である。絶縁基板36は、第4面40に、第1コンタクト44に接続する第1電極52を有する。第1コンタクト44を介して、第1導電パッド42及び第1電極52は電気的に接続する。絶縁基板36は、第4面40に、第2コンタクト48に接続する第2電極54を有する。第2コンタクト48を介して、第2導電パッド46及び第2電極54は電気的に接続する。
【0033】
図5及び図6に示すように、絶縁基板36は、貫通穴20の外側で1つ又は一対のリードピン26を保持する。リードピン26は、第1導電パッド42に接合する。1つのリードピン26が1つの第1導電パッド42に接合される。接合には、溶接(例えば融接)を適用することができる。
【0034】
光モジュールは、光信号及び電気信号を少なくとも一方から他方に変換するための光電素子56を有する。光電素子56は、ステム10に第1面16の側で固定されている。詳しくは、ステム10の第1面16に絶縁基板36が固定され、絶縁基板36の第4面40に光電素子56が搭載される。光電素子56は、第1面16に直交する方向(搭載面に直交する方向)に光が入出力するように搭載される。
【0035】
本実施形態では光モジュールはROSAであり、集積回路チップ58を有する。集積回路チップ58は、光電素子56とその小信号をインピーダンス変換し電圧信号として増幅し出力するTIA(Trance Impedance Amplifier)と、データ信号に同期したクロック信号からデータを復調するCDR(Clock Data Recovery)等の機能を集積する。集積回路チップ58は、絶縁基板36に搭載され、集積回路チップ58の裏面が第2電極54と電気的に接続し(接地電位)、第2コンタクト48及び第2導電パッド46を介して、ステム10に電気的に接続される。ステム10には、コンデンサなどの電子部品60も搭載されている。電子部品60は、絶縁基板36に搭載されず、ステム10の第1面16に直接搭載されている。
【0036】
集積回路チップ58は、ワイヤW1によって第1電極52に接続され、ワイヤW2によって光電素子56に接続されている。光電素子56は、集積回路チップ58を介して、第1電極52に接続される。リードピン26は、光電素子56と電気的に接続される。集積回路チップ58は、ワイヤW3によって電子部品60にも接続される。電子部品60は、ワイヤW4によって第2リードピン34と接続される。集積回路チップ58は、ワイヤW5によって、他の第2リードピン34に接続される。
【0037】
図9は、図1に示す光モジュールのIX-IX線断面図である。図10は、フレキシブル基板62の平面図である。図11は、フレキシブル基板62及びリードピンの接合の詳細を説明するための概略図である。
【0038】
フレキシブル基板62は、絶縁層64を含む。絶縁層64は、本体から端部64Eが突出する平面形状を有する。例えば、矩形の本体の短辺の中央から端部64Eが突出する。フレキシブル基板62は、一対の信号配線66を含む。一対の信号線路66は差動伝送線路である。信号配線66は絶縁層64に密着しており、両者間に隙間がない。信号線路66は、伝送線よりも幅の広い信号端子66Tを有する。一対の信号線路66は、相互に離れる方向に、信号端子66Tが伝送線から拡がるようになっている。一対の信号配線66の一対の信号端子66Tは、絶縁層64の1つの端部64Eに至るように隣同士並んでいる。信号配線66は、図9には示さない第1レジスト層68(図11参照)に覆われている。ただし、第1レジスト層68は、リードピン26との接合領域(信号端子66T)では信号配線66を避けている。
【0039】
フレキシブル基板62は、グランドプレーン70を含む。グランドプレーン70は絶縁層64に密着しており、両者間に隙間がない。絶縁層64の相互に反対の面に信号配線66及びグランドプレーン70がそれぞれ形成されている。絶縁層64には、信号配線66と同じ側に、グランドプレーン70と電気的に接続するGND端子72が設けられている。グランドプレーン70とGND端子72は、絶縁層64を貫通するビア74によって電気的に接続される。グランドプレーン70は、全体的に、第2レジスト層76に覆われている。フレキシブル基板62には、伝送線路が構成される。伝送線路は、グランドプレーン70をシールドとして、絶縁層64の誘電率に従った特性インピーダンス(例えば50オーム)を有する。リードピン26及び信号配線66は、特性インピーダンスが等しい。
【0040】
絶縁層64の端部64Eが貫通穴20に第2面18から入り込む。信号配線66の端部(信号端子66T)が貫通穴20に第2面18から入り込む。第1レジスト層68は、貫通穴20の内側には存在しない。グランドプレーン70は、貫通穴20に入らない。フレキシブル基板62は、リードピン26とは反対の面で、貫通穴20の内周面22に接触している。詳しくは、グランドプレーン70を覆う第2レジスト層76が、内周面22に接触している。これにより、フレキシブル基板62がステム10(貫通穴20)に支えられる。
【0041】
信号配線66は、リードピン26に接合される。一対のリードピン26に一対の信号配線66がそれぞれ接合される。信号配線66とリードピン26は、貫通穴20の内側及び外側で連続的に接合されている。信号配線66とリードピン26の間に、はんだ及びろう材を含む溶加材78が介在する。貫通穴20の少なくとも外側でリードピン26と絶縁層64の間には空隙(空気)が存在しない。貫通穴20の内側でもリードピン26と絶縁層64の間には空隙(空気)が存在しない。
【0042】
本実施形態によれば、フレキシブル基板62の一部がステム10の貫通穴20に入り、リードピン26と接続するため、フレキシブル基板62とステム10との間に隙間ができない。そのため信号配線66とリードピン26の接続部付近において、リードピン26の周りに接地電位が無い状態が存在せず、接続部におけるインピーダンスの不整合を避けることが出来る。
【0043】
さらに本実施形態によれば、リードピン26と信号配線66の特性インピーダンスを等しくさせているために、インピーダンスの不整合のない優れた伝送線路を構築することが出来る。なお、GNDピン24は、図9に示すように、ステム10に隣接してGND端子72に接合している。その接合にもはんだ及びろう材を含む溶加材78を使用する。さらに、本実施形態ではフレキシブル性を備えたフレキシブル基板を用いた例で説明したが、フレキシブル性のないリジットな基板(例えば、PCB:Printed Circuit Board)であっても本発明の効果は得られる。
【0044】
図12は、フレキシブル基板及びリードピンの接合の変形例を説明するための概略図である。この例では、フレキシブル基板162は、少なくとも貫通穴120に入る先端部に、信号配線166を覆う第1レジスト層168を有する。第1レジスト層168は、溶加材178の隣で信号配線166とリードピン126の間に介在する。第1レジスト層168は、溶融した溶加材178の流れ止めになっている。
【0045】
[第2の実施形態]
図13は、第2の実施形態に係る光モジュールの正面側斜視図である。図14は、第2の実施形態に係る光モジュールの背面側斜視図である。本実施形態では、光モジュールは、TOSAである。
【0046】
ステム210は、厚さ0.5mm以上の円板状のアイレット280を含む。アイレット280は、複数(例えば2つ)の貫通穴220を有する。貫通穴220の開口は円形である。2つの貫通穴220の間に、図14に示すように、アイレット280にはGNDピン224が固定されている。また、アイレット280は、第2貫通穴230を有する。
【0047】
ステム210は、第1面216に突出する台座282を有する。台座282は、第1面216から立ち上がる台座面284を有する。台座面284には、スペーサ286が載り、その上に光電素子256が搭載されているセラミック基板である。スペーサ286には、上面に配線パターン288が形成されている。絶縁基板236は、台座面284に固定されている。絶縁基板236は、電極パターン290を有する。電極パターン290は、台座面284とは反対の面に形成されている。電極パターン290には、光電素子256がワイヤW6,W7によって電気的に接続される。詳しくは、光電素子256と配線パターン288がワイヤW6で接続され、配線パターン288と電極パターン290がワイヤW7で接続される。光電素子256は、第1面216に直交する方向(搭載面に平行な方向)に光が入出力するように搭載される。
【0048】
リードピン226は、電極パターン290に接合されている。その接合は、第1面216からの突出部226aで、はんだ及びろう材を含む溶加材278によってなされる。貫通穴220の内周面222と1つのリードピン226が、同軸線路を構成する。なお、内周面222とリードピン226の間の媒質は空気である。第2貫通穴230の内側には、ガラスなどの固体の媒質232によって絶縁されて、第2リードピン234が固定されている。
【0049】
図15は、第2の実施形態で使用されるフレキシブル基板262の平面図である。フレキシブル基板262の絶縁層264は、本体から一対の端部264Eが突出する平面形状を有する。例えば、矩形の本体の一辺(短辺)の中央で一対の端部264Eが間隔をあけて突出する。フレキシブル基板262は、絶縁層264に密着する一対の信号配線266を含む。1つの信号配線266の端部(信号端子266T)が、絶縁層264の1つの端部264Eに至る。フレキシブル基板262は、絶縁層264に密着するグランドプレーン270を含む。信号配線266と同じ側に、絶縁層264には、グランドプレーン270にビア274によって電気的に接続するGND端子272が設けられている。GND端子272は、一対の信号端子266Tの間にある。
【0050】
図16は、図13に示す光モジュールのXVI-XVI線断面である。信号配線266は、リードピン226に接合される。その接合には、はんだ及びろう材を含む溶加材278が使用される。貫通穴220の少なくとも外側でリードピン226と絶縁層264の間には空隙が存在しない。貫通穴220の内側でもリードピン226と絶縁層264の間には空隙が存在しない。
【0051】
本実施形態によれば、フレキシブル基板262の一部がステム210の貫通穴220に入るので、ステム210の外側では、フレキシブル基板262の特性インピーダンスが維持される。これにより、特性インピーダンスの不整合を避けることができる。その他の詳細は、第1の実施形態で説明した内容が該当する。
【0052】
[第3の実施形態]
図17は、第3の実施形態に係る光モジュールの斜視図である。ステム310には第1絶縁基板336が固定されている。第1絶縁基板336は、ステム310の第1面316に対向する第3面338を有し、第3面338が第1面316に固定されている。
【0053】
ステム310は、貫通穴320を有し、貫通穴320の内側にリードピン326が配置される。貫通穴320の内周面322と1つのリードピン326が、同軸線路を構成する。リードピン326は、第1絶縁基板336を貫通して、第1絶縁基板336に固定されている。固定には、はんだ及びろう材を含む溶加材378を使用してもよい。リードピン326は、第1絶縁基板336の第4面340から突出する。
【0054】
ステム310は、第1面316に突出する台座382を有する。台座382は、第1面316から立ち上がる台座面384を有する。光モジュールは、第2絶縁基板392を有する。第2絶縁基板392は、台座面384に搭載されている。
【0055】
リードピン326は、第4面340から突出する突出部326aを有する。リードピン326(突出部326a)は、電極パターン390に接合されている。その接合は、突出部326aで、はんだ及びろう材を含む溶加材378によってなされる。つまり、リードピン326は、第2絶縁基板392にも固定されている。
【0056】
台座382(台座面384)には、スペーサ386が載り、その上に光電素子356が搭載されている。スペーサ386には、上面に配線パターン388が形成されている。配線パターン388と光電素子356はワイヤW8で電気的に接続されている。配線パターン388と電極パターン390はワイヤW9で接続されている。これらを介して、光電素子356及びリードピン326が電気的に接続される。
【0057】
図18は、図17に示す光モジュールのXVIII-XVIII線断面である。信号配線366は、リードピン326に接合される。その接合には、はんだ及びろう材を含む溶加材378が使用される。貫通穴320の少なくとも外側でリードピン326と絶縁層364の間には空隙が存在しない。貫通穴320の内側でもリードピン326と絶縁層364の間には空隙が存在しない。
【0058】
本実施形態によれば、フレキシブル基板362の一部がステム310の貫通穴320に入り、リードピン326と接続するため、フレキシブル基板362とステム310との間に隙間ができない。そのため信号配線366とリードピン326の接続部付近において、リードピン326の周りに接地電位が無い状態が存在せず、接続部におけるインピーダンスの不整合を避けることが出来る。
その他の詳細は、第1の実施形態で説明した内容が該当する。
【0059】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0060】
10 ステム、12 キャップ、14 フランジ、16 第1面、18 第2面、20 貫通穴、22 内周面、22a 面領域、24 GNDピン、26 リードピン、28 外周面、30 第2貫通穴、32 媒質、34 第2リードピン、36 絶縁基板、38 第3面、40 第4面、42 第1導電パッド、44 第1コンタクト、46 第2導電パッド、48 第2コンタクト、50 はんだ、52 第1電極、54 第2電極、56 光電素子、58 集積回路チップ、60 電子部品、62 フレキシブル基板、64 絶縁層、64E 端部、66 信号線路、66T 信号端子、68 第1レジスト層、70 グランドプレーン、72 GND端子、74 ビア、76 第2レジスト層、78 溶加材、120 貫通穴、126 リードピン、162 フレキシブル基板、166 信号配線、168 第1レジスト層、178 溶加材、210 ステム、216 第1面、220 貫通穴、222 内周面、224 GNDピン、226 リードピン、226a 突出部、230 第2貫通穴、232 媒質、234 第2リードピン、236 絶縁基板、256 光電素子、262 フレキシブル基板、264 絶縁層、264E 端部、266 信号配線、266T 信号端子、270 グランドプレーン、272 GND端子、274 ビア、278 溶加材、280 アイレット、282 台座、284 台座面、286 スペーサ、288 配線パターン、290 電極パターン、310 ステム、316 第1面、320 貫通穴、322 内周面、326 リードピン、326a 突出部、336 第1絶縁基板、338 第3面、340 第4面、356 光電素子、362 フレキシブル基板、364 絶縁層、366 信号配線、378 溶加材、382 台座、384 台座面、386 スペーサ、388 配線パターン、390 電極パターン、392 第2絶縁基板、W1~W9 ワイヤ。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12
図13
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図17
図18