(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】既設管の更生構造および更生方法
(51)【国際特許分類】
F16L 1/00 20060101AFI20220426BHJP
B29C 63/32 20060101ALI20220426BHJP
F16L 55/163 20060101ALI20220426BHJP
E03F 3/06 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
F16L1/00 J
B29C63/32
F16L55/163
E03F3/06
(21)【出願番号】P 2018076567
(22)【出願日】2018-04-12
【審査請求日】2021-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】北山 康
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-329259(JP,A)
【文献】特開2016-079601(JP,A)
【文献】特開2005-299198(JP,A)
【文献】特開昭63-268832(JP,A)
【文献】特開2009-144493(JP,A)
【文献】特開平01-284699(JP,A)
【文献】実開昭64-052726(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 1/00
B29C 63/32
F16L 55/163
E03F 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管を更生する構造であって、
上記既設管の内周にライニングされた更生管と、上記既設管と上記更生管の間に充填された充填材と、を備え、
上記更生管が、帯状体を螺旋状に巻くとともに隣接する巻部分の側縁を嵌合の手段で連結することにより構成され、上記帯状体の幅方向両側縁から離れた箇所には、上記帯状体の長手方向に延びるとともに径方向外方向に突出する複数の突条が幅方向に離間して形成され、
さらに上記既設管の周方向に間隔をおいて配置された複数の介装部材を備え、各介装部材は、前記更生管の複数の巻部分にわたって上記既設管の軸方向に延びるベース部と、このベース部から径方向内方向に突出するとともに軸方向に離れた複数の突起を有し、
上記介装部材のベース部が固定手段により上記既設管の内面に固定され、上記介装部材の複数の突起が上記更生管の複数の巻部分の上記突条間にそれぞれ入り込んでいることを特徴とする既設管の更生構造。
【請求項2】
上記固定手段がアンカーボルトを有し、このアンカーボルトが上記介装部材の上記ベース部を貫通して上記既設管に打ち込まれていることを特徴とする請求項1に記載の既設管の更生構造。
【請求項3】
上記更生管が上記アンカーボルトを覆っていることを特徴とする請求項2に記載の既設管の更生構造。
【請求項4】
既設管を更生する構造であって、
上記既設管の内周にライニングされた更生管と、上記既設管と上記更生管の間に充填された充填材と、を備え、
上記更生管が、帯状体を螺旋状に巻くとともに隣接する巻部分の側縁を嵌合の手段で連結することにより構成され、上記帯状体の幅方向両側縁から離れた箇所には、上記帯状体の長手方向に延びるとともに径方向外方向に突出する複数の突条が幅方向に離間して形成され、
さらに上記既設管の周方向に間隔をおいて配置された複数の介装部材を備え、各介装部材は、前記更生管の複数の巻部分にわたって上記既設管の軸方向に延びるベース部と、このベース部から径方向内方向に突出するとともに軸方向に離れた複数の突起を有し、上記ベース部が上記既設管の内面に固着されており、
上記更生管が、上記介装部材の突起により上記既設管の内周から離隔された状態でライニングされ、
上記介装部材の複数の突起が上記更生管の複数の巻部分の上記突条間にそれぞれ入り込んでおり、
さらに、上記更生管と上記充填材と上記介装部材のベース部を貫通して上記既設管に打ち込まれたアンカーボルトを備えていることを特徴とする既設管の更生構造。
【請求項5】
既設管を更生する方法であって、
帯状体を螺旋状に巻くとともに上記帯状体の隣接する巻部分の側縁を嵌合の手段で連結することにより更生管を製管し、この更生管により上記既設管の内周をライニングするライニング工程と、
上記既設管と上記更生管の間に充填材を充填する工程と、
を備え、
上記帯状体の上記帯状体の幅方向両側縁から離れた箇所には、上記帯状体の長手方向に延びるとともに径方向外方向に突出する複数の突条が、幅方向に離間して形成され、
さらに、上記ライニング工程に先立ち、複数の介装部材を、周方向に間隔をおいて上記既設管の内面に固定する工程を備え、
上記介装部材は前記更生管の複数の巻部分にわたって上記既設管の軸方向に延びるベース部と、このベース部から径方向内方向に突出するとともに軸方向に離れた複数の突起を有し、上記ベース部が上記既設管の内面に固定され、
上記ライニング工程では、上記介装部材の複数の突起を、それぞれ上記帯状体の複数の巻き部分の上記突条間に入り込ませながら上記更生管を製管することを特徴とする既設管の更生方法。
【請求項6】
上記介装部材を上記既設管に固定する工程では、アンカーボルトを上記介装部材のベース部を貫通させて上記既設管に打ち込むことを特徴とする請求項
5に記載の既設管の更生方法。
【請求項7】
さらに、上記充填材を充填する工程の後で、アンカーボルトを、上記既設管と上記充填材を貫通させて上記既設管に打ち込む工程を備えたことを特徴とする請求項
5に記載の既設管の更生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道管その他の既設管の内周に更生管をライニングすることで既設管を更生する構造および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した下水道管等の既設管を更生管でライニングすることにより更生することは公知である。
特許文献1~3に開示された更生方法では、帯状体を螺旋状に巻くとともに帯状体の隣接する巻き部分の縁同士を嵌合させて更生管を製管して既設管の内周に配置し、既設管と更生管との間にモルタル等からなる裏込め材を充填している。
【0003】
また、次の更生方法も公知である。既設管の内周に沿う鋼製リングを既設管の軸方向に間隔をおいて配置し、この鋼製リングに軸方向に延びる嵌合部材を、周方向に間隔をおいて嵌め込み、さらに軸方向に延びる表面部材の両縁部を篏合部材に嵌合させる。この表面部材が周方向に隙間なく並べることにより更生管を構築する。最後に既設管と更生管との間に裏込め材を充填する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-65170号公報
【文献】特開2015-105658号公報
【文献】特開2016-43555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~3に開示された方法では、既設管が、強化プラスチック等の樹脂管や鋼管である場合、または既に樹脂製の更生管でライニングされている場合に、既設管の内面が滑らかなため、既設管に対する裏込め材の付着性が弱く、既設管と更生管が裏込め材を介して一体化しにくい。
【0006】
上述の鋼製リングを用いる方法では、既設管と更生管の一体性を確保できるが、多数の鋼製リングを既設管内に配置し、これら鋼製リングに軸方向に延びる嵌合部材を架け渡し、さらにこれら嵌合部材に多数の表面材を篏合させるため、部品点数が多く、コスト高であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、既設管を更生する構造であって、上記既設管の軸方向に延びるベース部とこのベース部から径方向内方向に突出する突起を有し、上記既設管の周方向に間隔をおいて配置された複数の介装部材と、上記介装部材のベース部を上記既設管の内面に固定する固定手段と、径方向外方向に突出する係合部を有し、上記係合部が上記突起に係合された状態で、上記既設管の内周にライニングされた更生管と、を備えたことを特徴とする。
上記構成によれば、既設管の内面が滑らかであっても、介装部材を介して既設管と更生管を一体化することができる。しかも鋼製リングが不要であり、コストを低減できる。
【0008】
好ましくは、上記固定手段がアンカーボルトを有し、このアンカーボルトが上記介装部材の上記ベース部を貫通して上記既設管に打ち込まれている。
上記構成によれば、介装部材を既設管に強固に固定できる。
【0009】
好ましくは、上記更生管が上記アンカーボルトを覆っている。
上記構成によれば、更生管の滑らかな内面を維持することができる。
【0010】
好ましくは、上記既設管と上記更生管の間に充填材が充填されている。
上記構成によれば、既設管と更生管を、より一層確実に一体化することができる。
【0011】
好ましくは、上記更生管が、螺旋状に巻かれた帯状体からなり、この帯状体の隣接する巻部分が嵌合することにより構成され、この帯状体には、上記係合部として、上記帯状体の長手方向に延びるとともに幅方向に離間した複数の突条が形成され、上記突条間に上記介装部材の上記突起が入り込んでいる。
上記構成によれば、更生管は帯状体を螺旋状に巻くことにより構成されるので、既設管の軸方向に伸縮可能であり、地震等の際に変形や破壊を免れる。
【0012】
好ましくは、上記介装部材の上記突起の先端部は一対の返し部を有して矢尻形状をなし、上記帯状体の上記突条は先端部に上記返し部が引っ掛かる引掛部を有している。
上記構成によれば、介装部材と帯状体が確実に係合され、ひいては既設管と更生管をより一層確実に一体化することができる。
【0013】
本発明の他の態様は、既設管を更生する構造であって、上記既設管の周方向に間隔をおいて配置され、軸方向に延びるベース部とこのベース部から径方向内方向に突出する突起を有し、上記ベース部が上記既設管の内面に固着された複数の介装部材と、上記介装部材の突起により上記既設管の内周から離隔された状態でライニングされた更生管と、上記既設管と上記更生管の間に充填された充填材と、上記更生管と上記充填材を貫通して上記既設管に打ち込まれたアンカーボルトと、を備えたことを特徴とする。
上記構成によれば、充填材とアンカーボルトにより既設管と更生管の一体化を図ることができる。しかも鋼製リングが不要であり、コストを低減できる。
【0014】
好ましくは、上記更生管が、螺旋状に巻かれた帯状体からなり、この帯状体の隣接する巻部分が嵌合することにより構成され、この帯状体には、上記帯状体の長手方向に延びるとともに幅方向に離間した複数の突条が形成され、上記突条間に上記介装部材の突起が入り込んでおり、上記アンカーボルトは上記介装部材のベース部をも貫通している。
上記構成によれば、介装部材も既設管と更生管との一体化に寄与することができる。
【0015】
本発明のさらに他の態様は、既設管を更生する方法であって、上記既設管の軸方向に延びるベース部とこのベース部から径方向内方向に突出する突起を有する複数の介装部材を、周方向に間隔をおいて上記既設管の内面に固定する工程と、帯状体を螺旋状に巻くとともに上記帯状体の隣接する巻部分同士を嵌合させることにより更生管を製管し、この更生管により上記既設管の内周をライニングする工程であって、上記帯状体がその長手方向に延びるとともに幅方向に間隔をおいて形成された複数の突条を有し、上記突条間に上記突起を入り込ませながら製管する工程と、上記既設管と上記更生管の間に充填材を充填する工程と、を備えたことを特徴とする。
上記方法によれば、更生管を製管する過程で、更生管と介装部材を係合することができる。
【0016】
上記方法において、一つの具体的態様では、上記介装部材を上記既設管に固定する工程では、アンカーボルトを上記介装部材のベース部を貫通させて上記既設管に打ち込む。
他の具体的態様では、さらに、上記充填材を充填する工程の後で、アンカーボルトを、上記既設管と上記充填材を貫通させて上記既設管に打ち込む工程を備えている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、既設管の内面が滑らかであっても、低コストで更生管との一体化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る既設管の更生方法を順を追って説明する概略横断面図であり、(A)は既設管の更生前の状態、(B)は軸方向に延びる介装部材を既設管内周にアンカーボルトで固定した状態、(C)は上記介装部材を介して更生管をライニングした状態をそれぞれ示す。
【
図2】更生前の既設管を示す要部拡大縦断面図である。
【
図3】上記介装部材を既設管の内周に上記アンカーボルトで固定した状態を示す要部拡大縦断面図である。
【
図4】帯状体により更生管を製管しながら、帯状体を上記介装部材に係合させる工程を示す要部拡大縦断面図である。
【
図5】更生管が完成した状態を示す要部拡大縦断面図である。
【
図6】既設管と更生管との間に裏込め材を充填した状態を示す要部拡大縦断面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る既設管の更生方法において、既設管の内周に軸方向に延びる介装部材を固定した状態を示す要部拡大縦断面図である。
【
図8】同第2実施形態において、帯状体により更生管を製管しながら、帯状体を上記介装部材に係合させる工程を示す要部拡大縦断面図である。
【
図9】更生管をアンカーボルトで既設管に固定した状態を示す要部拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第1実施形態を
図1~
図6を参照しながら説明する。更生対象の既設管は、例えば地中の下水道管である。
図1(A)、
図2に示すように、本実施形態の既設管10は、老朽化した元管11を一度更生させたものであり、元菅11の内側に旧更生管12がライニングされ、元管11と旧更生管12との間にモルタル等の裏込め材13が充填されている。本実施形態の旧更生管12は樹脂製であり、後述する新更生管40と同様の構成であるので詳述しないが、内面が平滑であるためモルタル等の裏込め材が付着しにくい。なお、旧更生管12は他の構造を有する樹脂管であってもよい。
【0020】
上記既設管10の更生方法を順を追って説明する。最初に、
図1(B)、
図3に示すように、既設管10の軸方向に延びる複数の細長い介装部材20が、周方向に等間隔をおいて既設管10の内面に固定される。本実施形態では、介装部材20は90°間隔で4箇所に配置されている。
【0021】
介装部材20は、直線状に延びる細長い板形状のベース部21と、このベース部21と一体をなしベース部21の長手方向に等間隔をおいて複数(本実施形態では3つ)形成された突起22とを有している。
【0022】
突起22は先端部が矢尻形状をなしており、上記ベース部21から既設管10の径方向内方向に向かって突出する板状の主部22aと、この主部22aの先端からベース部21に向かって斜めに延びる一対の返し部22bとを有している。これら一対の返し部22bは、主部22aに対してベース部21の長手方向両側に配置されている。
【0023】
介装部材20のベース部21の一端部21aは他の部位より、ベース部21の厚み分だけ既設管10の径方向内側に偏倚しており、このベース部21の一端部21aと既設管10の内面との間に、隣接する介装部材20のベース部21の他端部21bが入り込んでいる。このようにして複数の介装部材20のベース部21は、既設管10の内面に接するとともに、端部21a,21b同士が重なり合うようにして既設管10の軸方向に連なっている。
なお、介装部材20の軸方向位置合わせは、旧更生管12の線状痕(帯状体の継目)を目安にするので、事前の測定を必要としない。
【0024】
上記介装部材20は、その長手方向に間隔をおいて複数箇所(本実施形態では3箇所)で固定手段30により、既設管10に固定される。固定手段30はアンカーボルト31を有し、このアンカーボルト31は、介装部材20のベース部21を貫通して既設管10に打ち込まれる。
【0025】
上記アンカーボルト31は、既設管10における旧更生管12を貫通し、元管11と裏込め材13の少なくとも一方に突き刺さっていればよい。例えば、
図1(A)に示すように、旧更生管12の中心が元管11の中心より下方に偏倚している場合には、
図1(B)に示すように下側のアンカーボルト31は、元菅11だけに突き刺さり、上側のアンカーボルト31は元管11に達せず、裏込め材13だけに突き刺さり、左右のアンカーボルト31は、裏込め材13と元管11の両方に突き刺さっている。
【0026】
アンカーボルト31には、介装部材20のベース部21から既設管10の径方向内方向に突出する端部に雄ネジ部が形成されており、この雄ネジ部に螺合されたナット32を締め付けることにより、上記介装部材20が固定されている。
【0027】
次に、
図1(C)、
図4、
図5に示すように、樹脂製、例えばポリエチレン製の長尺の帯状体41を用いて新規に更生管40が既設管10内周にライニングされる。この帯状体41の一方の面は平滑であり、他方の面には長手方向に延びる突条42が幅方向に等間隔で複数形成されている。これら突条42は断面T字形をなし、先端に横に張り出す一対の引掛部42aを有している。突条42は、後述する裏打ち材50(充填材)との付着性を向上させる役割を担うが、選択された突条42は、後述するように介装部材20の突起22と係合する係合部としての役割も担う。
帯状体41は、幅方向の一方側の縁に雌型嵌合部43を有し、他方の縁に雄型嵌合部44を有している。
【0028】
図4に示すように、既設管10内において、製管機(図示しない)を用いて帯状体41を螺旋状に巻き、隣接する巻部分41aの縁部同士を重ね合わせ、一方の巻き部分41aの雌型嵌合部43に他方の巻き部分41aの雄型嵌合部44を篏合させることにより、
図5に示すように新規の更生管40が製管される。更生管40の内周面は帯状体41の平滑な面により構成されるので、平滑である。この製管方法は特許文献1~3に示すように公知であるので詳細な説明を省略する。
【0029】
上記更生管40を製管する際、帯状体41の各巻き部分41aの突条42間に、介装部材20の突起22が係合される。より具体的には、突起22の一対の返し部22bが弾性変形しながら突条42間に入り込んで係合される。突起22の一対の返し部22bが、その両側の突条42の引掛部42aに引っ掛かるので、帯状体41ひいては更生管40は、既設管10の内周面から離間した状態で、介装部材20に安定して支持されている。
【0030】
上述のように介装部材20を介して更生管40を製管することにより、更生管40は既設管10の内周から離間した状態で支持される。
最後に
図6に示すように、既設管10の内周と更生管40の外周との間に、モルタル等の裏込め材50(充填材)を充填する。この裏込め材50の硬化により既設管10の更生が完了する。
【0031】
図6の更生構造では、既設管10の内周面すなわち樹脂製の旧更生管12の内周面は平滑であるが、アンカーボルト31によって既設管10に固定された介装部材20に、更生管40が係合されているので、鋼製リング等を用いることなく少ない部品点数で、既設管10と更生管40を一体化することができる。裏込め材50は、水圧による更生管40の変形や劣化を防止する役割を有するが、介装部材20の突起22と帯状体41の突条42との係合構造を固めるので、既設管10と更生管40の一体化にも寄与している。
【0032】
上記実施形態において、地震が発生して裏込め材50がひび割れても、更生管40は軸方向に伸縮して破壊を免れる。更生管40が帯状体41を螺旋状に巻いて嵌合することにより構築されているため伸縮可能であり、しかも介装部材20が軸方向に多数並べてあり、更生管40の伸縮を許容するからである。
【0033】
上記実施形態において、裏打ち材50が充填される場合には、介装部材20の突起22は返し部22bを省き、帯状体41の突条42間に緩く挿入することにより係合状態を得てもよい。
なお、更生管40は帯状体41で螺旋状に巻いて構成しない場合でも、軸方向に伸縮可能な構造例えばベローズ構造にするのが好ましい。
【0034】
次に、
図7~
図9を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る更生方法について説明する。この第2実施形態において第1実施形態に対応する構成部には同番号または類似番号を付してその詳細な説明を省略する。
図7に示すように、本実施形態の既設管10Aは、強化プラスチック管等の樹脂製管からなるので、その内周面が平滑であり、裏込め材が付着しにくい。
【0035】
最初の工程で、既設管10Aの内周に、細長い介装部材20Aが第1実施形態と同様の配置で、接着剤等で固定される。
介装部材20Aは、ベース部21と長手方向に間隔をおいて配置された平板形状の突起22Aとを有している。
【0036】
次に、
図8に示すように、帯状体41を用いて新規に更生管40が製管され既設管10内周にライニングされる。この工程は第1実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
更生管40の製管の際、帯状体41の各巻き部分41aの2つの突条42間に、介装部材20Aの突起22Aが入り込んで係合される。突起22Aは、更生管40を既設管10Aの内周から離隔する役割も担う。
【0037】
次に、
図9に示すように既設管10Aの内周と更生管40の外周との間の隙間に、モルタル等の裏込め材50を充填する。この裏込め材50の硬化後に、アンカーボルト31が更生管40、裏込め材50および介装部材20のベース部21を貫通して既設管10Aに打ち込まれる。このアンカーボルト31の雄ネジ部に螺合されたナット32を締め付けることにより、更生管40が固定され、既設管10の更生が完了する。
【0038】
上記構成では、介装部材20およびアンカーボルト31により、更生管40を既設管10と強固に一体化することができる。
本実施形態の介装部材20は、アンカーボルト31が貫通していること、更生管40と係合していることにより、更生管40と既設管10を離隔させる役割を果たすだけではなく、更生管40と既設管10の一体化に寄与することができる。
【0039】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
既設管に打ち込まれるアンカーボルトは、既設管を突き抜けていてもよい。
介装部材は、端部を重ねることなく軸方向に並べてもよいし、間隔をおいて軸方向に並べてもよい。
充填材は、既設管と更生管との間において、軸方向に間隔をおいて充填してもよい。また充填材として衝撃吸収材を用いてもよい。
更生管は短冊状の板材を繋ぎ合わせることにより構成してもよい。
既設管は、下水道管に限られず、上水道管、農業用水管、ガス管等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、例えば老朽化した下水道管の更生に適用できる。
【符号の説明】
【0041】
10,10A 既設管
20,20A 介装部材
21 ベース部
22,22A 突起
22b 返し部
30 固定手段
31 アンカーボルト
40 更生管
41 帯状体
41a 巻き部分
42 突条(係合部)
42a 引掛部
50 裏込め材(充填材)