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特許7063703乳化物の安定化方法および乳化物とそれを用いたエマルション燃料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】乳化物の安定化方法および乳化物とそれを用いたエマルション燃料
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/00 20060101AFI20220426BHJP
   C10L 1/32 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
B01J13/00 A
C10L1/32 D
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018081785
(22)【出願日】2018-04-20
(65)【公開番号】P2019188294
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000114318
【氏名又は名称】ミヨシ油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174702
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 拓
(72)【発明者】
【氏名】高松 雄一朗
(72)【発明者】
【氏名】矢野 亘記
(72)【発明者】
【氏名】小川 隆
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-191288(JP,A)
【文献】特開2002-029919(JP,A)
【文献】特開2013-107865(JP,A)
【文献】国際公開第2011/121989(WO,A1)
【文献】特開2012-092276(JP,A)
【文献】特開2013-057013(JP,A)
【文献】特開平10-066855(JP,A)
【文献】特開2012-125236(JP,A)
【文献】国際公開第2017/121831(WO,A1)
【文献】特開平05-049909(JP,A)
【文献】特開2017-225381(JP,A)
【文献】国際公開第2017/149701(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J13/00
C10L 1/00- 1/32
B01F 1/00- 5/26
C11B 1/00-15/00
C11C 1/00- 5/02
A23D 7/00- 9/06
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)植物油および動物油から選ばれる少なくとも1種の油、(B)水、(C)多価アルコールヒドロキシ脂肪酸エステルまたはその誘導体から選ばれる少なくとも1種の乳化剤、任意成分として(D)脂肪酸を含有させ、
乳化剤(C)の含有量は、油(A)と水(B)との合計量に対して2.5質量%以下であり、
油(A)と脂肪酸(D)の全体における酸価が0.3~100mgKOH/gとなるように油中水型(W/O)乳化物を調製する、乳化物の安定化方法。
【請求項2】
(A)植物油および動物油から選ばれる少なくとも1種の油、(B)水、(C)多価アルコールヒドロキシ脂肪酸エステルまたはその誘導体から選ばれる少なくとも1種の乳化剤、任意成分として(D)脂肪酸を含有させ、
乳化剤(C)の含有量は、油(A)と水(B)との合計量に対して2.5質量%以下であり、
乳化物の酸価が0.4~100mgKOH/gとなるように油中水型(W/O)乳化物を調製する、乳化物の安定化方法。
【請求項3】
油中水型(W/O)乳化物を調製する際に、脂肪酸(D)を添加する請求項1または2に記載の乳化物の安定化方法。
【請求項4】
脂肪酸(D)を油(A)と水(B)との合計量に対して0.1~8質量%となる量で添加する請求項3に記載の乳化物の安定化方法。
【請求項5】
脂肪酸(D)が、炭素数8~24の脂肪酸である、請求項1~4のいずれか一項に記載の乳化物の安定化方法。
【請求項6】
油(A)と水(B)との容積比が40:60~95:5である、請求項1~5のいずれか一項に記載の乳化物の安定化方法。
【請求項7】
乳化剤(C)は、ポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル、グリセリンヒドロキシ脂肪酸エステルのエチレンオキシド付加体またはその脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種を含む請求項1~6のいずれか一項に記載の乳化物の安定化方法。
【請求項8】
(A)植物油および動物油から選ばれる少なくとも1種の油、(B)水、(C)多価アルコールヒドロキシ脂肪酸エステルまたはその誘導体から選ばれる少なくとも1種の乳化剤、任意成分として(D)脂肪酸を含有し、
乳化剤(C)の含有量は、油(A)と水(B)との合計量に対して2.5質量%以下であり、
(A)油と(D)脂肪酸の全体における酸価が0.3~100mgKOH/gである油中水型(W/O)乳化物。
【請求項9】
(A)植物油および動物油から選ばれる少なくとも1種の油、(B)水、(C)多価アルコールヒドロキシ脂肪酸エステルまたはその誘導体から選ばれる少なくとも1種の乳化剤、任意成分として(D)脂肪酸を含有し、
乳化剤(C)の含有量は、油(A)と水(B)との合計量に対して2.5質量%以下であり、
乳化物の酸価が0.4~100mgKOH/gである油中水型(W/O)乳化物。
【請求項10】
油(A)と脂肪酸(D)との全体における酸価が0.5~50mgKOH/gである請求項8に記載の油中水型(W/O)乳化物。
【請求項11】
脂肪酸(D)の含有量が油(A)と水(B)との合計量に対して0.1~8質量%である請求項8~10のいずれか一項に記載の乳化物。
【請求項12】
脂肪酸(D)が、炭素数8~24の脂肪酸である、請求項8~11のいずれか一項に記載の乳化物。
【請求項13】
油(A)と水(B)との容積比が40:60~95:5である、請求項8~12のいずれか一項に記載の乳化物。
【請求項14】
乳化剤(C)は、ポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル、グリセリンヒドロキシ脂肪酸エステルのエチレンオキシド付加体またはその脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種を含む請求項8~13のいずれか一項に記載の乳化物。
【請求項15】
請求項8~14のいずれか一項に記載の乳化物を用いたエマルション燃料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動植物油に水を分散した油中水型(W/O)乳化物の安定化方法および乳化物に関する。
【背景技術】
【0002】
動植物油などの油脂は、再生可能なバイオマスであり、化石原料から調製される石油製品よりも生分解性が良好なため、石油資源枯渇、地球環境保全、安全性、自然志向などの観点から改めて注目が集まっている。油脂原料の分解物である脂肪酸やグリセロール、高級アルコール、さらにはこれらの誘導体は、油脂基礎化学品として化粧品、医薬品、界面活性剤、可塑剤、滑剤、塗料、燃料、インキなどの様々な最終製品として使用されているが、油脂そのものも油脂加工品として単独にもしくはエマルション(乳化物)として広く用いられている(非特許文献1)。
【0003】
非特許文献2には、エマルション(乳化物)の状態とその測定法、安定化に関する基礎、乳化技術について解説されている。エマルションとは、水と油のように互いに溶解しない液相の一方が他の一方に微細な液滴として分散したものであり、粒子(液滴)として分散している相を「分散相」、外側の媒質を「連続相」と呼び、水中に油滴が分散した系はOil-in-Water(O/W)、油中に水滴が分散した系はWater-in-Oi1(W/O)型エマルションと呼ばれている。
【0004】
エマルションを生成させるためには、分散相の塊に機械的エネルギーを加えて、細かい粒子とする必要があるが、通常、エマルションはエネルギー状態が高く熱力学的に不安定であるため、界面活性剤により界面エネルギーを低下させてかつ、外力によるエネルギーを加える必要がある。
【0005】
界面活性剤を用いない水と油のみからなるエマルションとして、例えば、特許文献1には、エマルション液が接する接液部の表面を絶縁材料としたエマルション製造装置により、水と椿油からエマルションを作製する方法、特許文献2には、高圧ポンプを利用して水と燃料油を加圧し、エジェクターを用いて水と燃料油とを混合する装置によりエマルション燃料を製造する方法が記載されている。前者のエマルションは、O/Wエマルションであり、その安定化メカニズムとしては、油滴表面に電荷を帯びさせることで油滴同士が反発して、分散安定化する。後者のエマルションは、装置により外力エネルギーを加えてW/Oエマルションを調製している。
【0006】
しかしながら、界面活性剤を用いない水と油のみからなるエマルションは、いったんは分散相が連続相に分散した状態になっても、長期間にわたって分散状態を安定化させることはできない。一旦、安定化したとしても貯蔵タンクや使用環境によって安定性が失われやすく、実用には適さない。
【0007】
界面活性剤を用いず第3の物質を用いる方法も種々検討されている。非特許文献3には、油水界面に吸着した固体粒子によって安定化されたエマルションであるピッカリングエマルションが紹介されている。また、特許文献3では油/両親媒性化合物/水系の中で独立相として存在する両親媒性化合物のナノ粒子をファンデルワールス力により油に付着させることで乳化を行なう三相乳化法が開示されている。
【0008】
しかしながらこれらの方法では界面張力は下がらないため、最適化すれば安定化は図れるものの粒子の界面吸着やエマルションの調製方法に制限があるため品質の安定性や再現性、コストに課題がある。
【0009】
一方で界面活性剤を用いた乳化法では、油と水との界面に界面活性剤を吸着させ、その界面エネルギーを低下させることを乳化・分散法の基本としている。W/Oエマルションは、油性の成分を皮膚に展開しやすく、高いエモリエント性を持つため、これらの技術を用いた油中水型(W/O)乳化物は、化粧品、医薬品、食品、燃料、インキなど多岐にわたり利用されている(特許文献4~8)。
【0010】
化石燃料や動植物油を用いた油中水型(W/O)乳化物は、燃料用途として様々な乳化剤を用いたエマルション燃料への取り組みがなされている(特許文献9~12)。動植物油は再生可能原料であり、地球温暖化や化石燃料の枯渇等の問題から、重油や軽油に代わる主な内燃機関用燃料油として注目されている。直接燃料化に関しては古くから検討が行われてきたが、動植物油は、粘度が高く、高沸点・低蒸発性であるため、低NOである一方、噴霧特性が悪化し、エンジン内のノズルチップ先端部に炭素状物質が堆積するとともにピストンリングのスティックが生じるなど重大な障害を引き起こす等の問題があり、継続して使用することが困難であった(非特許文献4、5)。これらの課題を解決するために上記エマルション燃料、さらにはナノエマルション燃料(非特許文献6)が開発されている。しかし、一般的に動植物油中では、ある程度の極性があるため乳化剤が動植物油中に溶け込んでしまって効率よく油水界面に吸着しないために、乳化を安定に保つために多量の乳化剤の添加が必要となる問題があった。そこで本発明者らは、水にカルボキシメチルセルロース塩等の高分子を配合することで、高温安定性を向上する処方を開発している(特許文献13)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2013-000704号公報
【文献】特開2009-203323号公報
【文献】特開2006-241424号公報
【文献】国際公開第1999/025310号
【文献】特開2005-126369号公報
【文献】特開2005-151834号公報
【文献】特開2012-184366号公報
【文献】特開2007-308617号公報
【文献】特開平6-346071号公報
【文献】特開2003-201485号公報
【文献】特開2009-280761号公報
【文献】特開2015-214616号公報
【文献】特開2016-121250号公報
【文献】特開2012-016668号公報
【文献】特開平8-192001号公報
【非特許文献】
【0012】
【文献】油脂・脂質の基礎と応用 日本油化学会編(2005)
【文献】色材、77(10)462-469(2004)
【文献】現代界面コロイド科学の辞典 p186-187 化粧品1-ピッカリングエマルション(2010)
【文献】パーム油・パーム核油の利用
【文献】Low Carbon Flower Buildup, Low Smoke, and Efficient Diesel Operation with Vegetable Oils by Conversion to Mono-Esters and Blending with Diesel Oil or Alcohols 1984, SAE Paper, No.841161, Murayama, T. et al
【文献】新エネルギーベンチャー技術革新事業新エネルギーベンチャー技術革新事業(バイオマス)パーム原油の脱ガム・水エマルジョン化による実用バイオマス燃料の開発(平成22年度~23年度成果報告書)
【文献】J.Soc.Cosmet.Chem.Jpn.44(4)1269-277(2010)
【文献】Langmuir,7(7),1370-1377(1991)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、エマルションは一般に熱力学的に不安定であり、高温や長期の安定性を保持するためには、より多くの乳化剤が必要であることから、乳化剤由来の皮膚刺激、異臭、異味や増粘、用途によっては効果への影響が問題とされている。特に、W/Oエマルションの安定化方法に関しては、O/Wエマルションに比べてはるかに方法が少なく、水の添加量が増えるにつれてその安定性はさらに低下することが知られている。
【0014】
非特許文献1には、O/Wエマルションの安定化方法として、D相乳化法、液晶乳化法、転相温度乳化法、乳化助剤として高級アルコールを添加する方法が述べられている。乳化助剤として高級アルコールを添加する方法では系が増粘し、液晶状態となることで安定性が向上することが知られているが、界面活性剤の添加量も多く、脂肪酸での安定性向上の記載はない。
【0015】
非特許文献7には、特定の製剤において高級脂肪酸を使用することで系の安定性向上について述べられているが、O/Wエマルションの安定化方法についてであり、W/Oエマルションについての効果は述べられていない。
【0016】
非特許文献8には、W/Oエマルションの安定化剤として、種々のアルコールやステアリン酸を用いることが述べられているが、スチレンージビニルベンゼンの油剤を用いており、動植物油においての記載はない。
【0017】
また、特許文献14は、油相が石油系炭化水素溶剤、乳化剤として逆ベシクルを用いた三相乳化法によって得られた油中水(W/O)型エマルションに関するものであり、粘度低下を目的として炭素数12以上の長鎖脂肪酸またはその塩を含有させることができるとあるが、安定性向上効果発現についての示唆は全くされていない。
【0018】
特許文献15には、脂肪酸の併用効果は、乳化を補助し少ない乳化剤で優れたエマルション安定性を付与するためにも役立つとあるが、シリコーンオイルと微粉末シリカとからなるオルガノポリシロキサン組成物と水とのW/Oエマルション型消泡剤組成物に対するものであるとともに、脂肪酸および乳化剤を用いた実施例3は、その合計使用量は25%(80部中20部)とやはり多量である。
【0019】
エマルション燃料用途において、燃料油の中でも植物油、動物油は融点が高い場合や、常温での粘度が高い場合があり、このような燃料油を使用する際は、輸送やエンジンに負荷がかからない粘度にするため、高温でエマルション燃料を保管する必要がある。
【0020】
ところが、エマルション燃料の分離は乳化剤の添加量が少なく高温であるほど促進されるため、特に乳化剤の添加量が少なく、60℃以上でも分離を抑え均一なエマルション状態を長時間保つ安定なエマルション燃料を製造することが重要である。また、同種の動植物油を使用してもエマルション燃料の安定性にばらつきが生じる問題があった。
【0021】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、乳化剤の使用量を低減しても高温や長期での乳化状態を安定に保持することを可能にする動植物油に水を分散した油中水型(W/O)乳化物の安定化方法および油中水型(W/O)乳化物とそれを用いたエマルション燃料を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記の課題を解決するために、本発明の乳化物の安定化方法は、(A)植物油および動物油から選ばれる少なくとも1種の油、(B)水、(C)多価アルコールヒドロキシ脂肪酸エステルまたはその誘導体から選ばれる少なくとも1種の乳化剤、任意成分として(D)脂肪酸を含有させ、油(A)と脂肪酸(D)の全体における酸価が0.3~100mgKOH/gとなるように油中水型(W/O)乳化物を調製することを特徴としている。
【0023】
本発明の乳化物の安定化方法は、(A)植物油および動物油から選ばれる少なくとも1種の油、(B)水、(C)多価アルコールヒドロキシ脂肪酸エステルまたはその誘導体から選ばれる少なくとも1種の乳化剤、任意成分として(D)脂肪酸を含有させ、乳化物の酸価が0.4~100mgKOH/gとなるように油中水型(W/O)乳化物を調製することを特徴としている。
【0024】
本発明の油中水型(W/O)乳化物は、(A)植物油および動物油から選ばれる少なくとも1種の油、(B)水、(C)多価アルコールヒドロキシ脂肪酸エステルまたはその誘導体から選ばれる少なくとも1種の乳化剤、任意成分として(D)脂肪酸を含有し、(A)油と(D)脂肪酸の全体における酸価が0.3~100mgKOH/gであることを特徴としている。
【0025】
本発明の油中水型(W/O)乳化物は、(A)植物油および動物油から選ばれる少なくとも1種の油、(B)水、(C)多価アルコールヒドロキシ脂肪酸エステルまたはその誘導体から選ばれる少なくとも1種の乳化剤、任意成分として(D)脂肪酸を含有し、乳化物の酸価が0.4~100mgKOH/gであることを特徴としている。
【0026】
本発明のエマルション燃料は、前記乳化物を用いたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、乳化剤の使用量を低減しても高温や長期での乳化状態を安定に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】乳化物の顕微鏡写真である。
図2】乳化物の相分離状況(60℃)の写真である。
図3】乳化物の相分離状況(80℃)の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0030】
本発明において乳化物に使用される油(A)は、植物油および動物油から選ばれる少なくとも1種である。
【0031】
植物油としては、ジャトロファ油、ナタネ油、大豆油、米ぬか油、ひまし油、綿実油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、パーム油およびその分別油(パームオレイン油、パームダブルオレイン油、高融点画分であるパームステアリン油など)等が挙げられる。動物油としては、牛脂、豚脂、羊脂、鶏脂、魚油等が挙げられる。これらは原油を精製処理、改質処理、または脱ガム処理したものであってもよい。また精製した動植物油を水素添加、エステル交換、分別結晶化したものでもよい。また、これらは排水処理コストの低減、資源リサイクルの観点から廃食用油などの廃動植物油を用いてもよい。
【0032】
本発明の乳化物に使用される水(B)は、精製水、超純水、RO水、イオン交換水や水道水、井戸水など特に限定されないが、例えば、中性の水を使用することが望ましく、酸性またはアルカリ性の水を使用する場合は、中和またはイオン交換等で精製して使用することもできる。
【0033】
本発明において乳化物に使用される乳化剤(C)は、多価アルコールヒドロキシ脂肪酸エステルまたはその誘導体から選ばれる少なくとも1種である。
【0034】
多価アルコールヒドロキシ脂肪酸エステルは、3価以上の脂肪族多価アルコールとヒドロキシ脂肪酸とがエステル結合した構造を有する化合物である。
【0035】
多価アルコールヒドロキシ脂肪酸エステルの誘導体としては、多価アルコールヒドロキシ脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加体またはその脂肪酸エステルが挙げられる。
【0036】
多価アルコールヒドロキシ脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加体は、多価アルコールヒドロキシ脂肪酸エステルにアルキレンオキシドが付加した構造を有する化合物である。
【0037】
多価アルコールヒドロキシ脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加体の脂肪酸エステルは、多価アルコールヒドロキシ脂肪酸エステルアルキレンオキシド付加体と脂肪酸とがエステル結合した構造を有する化合物である。
【0038】
多価アルコールヒドロキシ脂肪酸エステルにおける3価以上の脂肪族多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ショ糖等が挙げられる。これらの中でも、グリセリン、ポリグリセリンが好ましい。
【0039】
多価アルコールヒドロキシ脂肪酸エステルにおけるヒドロキシ脂肪酸としては、例えば、2-ヒドロキシラウリン酸(C12)、2-ヒドロキシミリスチン酸(C14),2-ヒドロキシパルミチン酸(C16)、3-ヒドロキシパルミチン酸(C16)、8-ヒドロキシパルミチン酸(C16)、2-ヒドロキシステアリン酸(C18)、3-ヒドロキシステアリン酸(C18)、12-ヒドロキシステアリン酸(C18)、17-ヒドロキシステアリン酸(C18)、18-ヒドロキシステアリン酸(C18)、リシノール酸(C18:1)、α-オキシリノレン酸(C18:3)、3,11-ジヒドロキシミリスチン酸、3,12-ジヒドロキシミリスチン酸、トレオ-9、10-ジヒドロキシステアリン酸(C18)、エリトロ-9、10-ジヒドロキシステアリン酸(C18)、2、15、16-トリヒドロキシパルミチン酸(C16)、ひまし油脂肪酸、硬化ひまし油脂肪酸、ジヒドロキシ化ナタネ油脂肪酸等が挙げられ、さらにこれらヒドロキシ脂肪酸の単独あるいは異種の脱水縮合物である縮合ヒドロキシ脂肪酸が挙げられる。これらの中でも、リシノール酸、12-ヒドロキシステアリン酸、9,10-ジヒドロキシステアリン酸、縮合リシノール酸、縮合ヒドロキシステアリン酸、縮合ジヒドロキシステアリン酸、縮合ひまし油脂肪酸が好ましい。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
多価アルコールヒドロキシ脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加体におけるアルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、あるいはブチレンオキシド等が挙げられる。これらの中でも、エチレンオキシドを単独で使用することが好ましい。
【0041】
多価アルコールヒドロキシ脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加体の脂肪酸エステルにおける脂肪酸は、特に限定されないが、例えば、油脂に含まれる飽和、不飽和および分岐脂肪酸が挙げられる。飽和脂肪酸としては、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等が挙げられる。また、不飽和脂肪酸としては、例えば、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、リノレン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸等が挙げられる。また、分岐脂肪酸としては、例えば、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、ジメチルオクタン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
本発明の乳化物に使用される乳化剤(C)の多価アルコールヒドロキシ脂肪酸エステルとしては、ポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステルが好ましい。ポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、ポリグリセリン縮合ヒドロキシステアリン酸エステル、ポリグリセリン縮合ジヒドロキシステアリン酸エステル等が挙げられる。
【0043】
ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルとしては、例えば、ジグリセリン縮合リシノール酸エステル、テトラグリセリン縮合リシノール酸エステル、ペンタグリセリン縮合リシノール酸エステル、ヘキサグリセリン縮合リシノール酸エステル、オクタグリセリン縮合リシノール酸エステル、デカグリセリン縮合リシノール酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、ジグリセリン縮合リシノール酸エステル、テトラグリセリン縮合リシノール酸エステル、ペンタグリセリン縮合リシノール酸エステル、ヘキサグリセリン縮合リシノール酸エステルが好ましい。
【0044】
ポリグリセリン縮合ヒドロキシステアリン酸エステルとしては、例えば、ジグリセリン縮合ヒドロキシステアリン酸エステル、テトラグリセリン縮合ヒドロキシステアリン酸エステル、ペンタグリセリン縮合ヒドロキシステアリン酸エステル、ヘキサグリセリン縮合ヒドロキシステアリン酸エステル、オクタグリセリン縮合ヒドロキシステアリン酸エステル、デカグリセリン縮合ヒドロキシステアリン酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、ジグリセリン縮合ヒドロキシステアリン酸エステル、テトラグリセリン縮合ヒドロキシステアリン酸エステル、ペンタグリセリン縮合ヒドロキシステアリン酸エステル、ヘキサグリセリン縮合ヒドロキシステアリン酸エステルが好ましい。
【0045】
ポリグリセリン縮合ジヒドロキシステアリン酸エステルとしては、例えば、ジグリセリン縮合ジヒドロキシステアリン酸エステル、テトラグリセリン縮合ジヒドロキシステアリン酸エステル、ペンタグリセリン縮合ジヒドロキシステアリン酸エステル、ヘキサグリセリン縮合ジヒドロキシステアリン酸エステル、オクタグリセリン縮合ジヒドロキシステアリン酸エステル、デカグリセリン縮合ジヒドロキシステアリン酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、ジグリセリン縮合ヒドロキシステアリン酸エステル、テトラグリセリン縮合ヒドロキシステアリン酸エステル、ペンタグリセリン縮合ヒドロキシステアリン酸エステルが好ましい。
【0046】
本発明の乳化物に使用される乳化剤(C)の多価アルコールヒドロキシ脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加体またはその脂肪酸エステルとしては、グリセリンヒドロキシ脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加体またはその脂肪酸エステルが好ましい。
【0047】
グリセリンヒドロキシ脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加体またはその脂肪酸エステルとしては、例えば、グリセリントリリシノール酸エステルポリオキシアルキレン付加体が主成分であるポリオキシアルキレンひまし油、グリセリントリヒドロキシステアリン酸ポリオキシアルキレン付加体が主成分であるポリオキシアルキレン硬化ひまし油、グリセリントリジヒドロキシステアリン酸ポリオキシアルキレン付加体が主成分であるポリオキシアルキレンジヒドロキシ化ナタネ油、グリセリントリリシノール酸エステルポリオキシアルキレン付加体脂肪酸エステルであるポリオキシアルキレンひまし油脂肪酸エステル、グリセリントリヒドロキシステアリン酸ポリオキシアルキレン付加体脂肪酸エステルであるポリオキシアルキレン硬化ひまし油脂肪酸エステル、グリセリントリジヒドロキシステアリン酸ポリオキシアルキレン付加体脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンジヒドロキシ化ナタネ油脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0048】
ポリオキシアルキレンひまし油としては、例えば、ポリオキシエチレン(4)ひまし油、ポリオキシエチレン(7.5)ひまし油、ポリオキシエチレン(10)ひまし油、ポリオキシエチレン(20)ひまし油、ポリオキシエチレン(25)ひまし油、ポリオキシエチレン(30)ひまし油、ポリオキシエチレン(50)ひまし油等が挙げられる。
【0049】
ポリオキシアルキレン硬化ひまし油としては、例えば、ポリオキシエチレン(5)硬化ひまし油、ポリオキシエチレン(10)硬化ひまし油、ポリオキシエチレン(15)硬化ひまし油、ポリオキシエチレン(20)硬化ひまし油、ポリオキシエチレン(25)硬化ひまし油、ポリオキシエチレン(30)硬化ひまし油、ポリオキシエチレン(40)硬化ひまし油、ポリオキシエチレン(50)硬化ひまし油、ポリオキシエチレン(60)硬化ひまし油、ポリオキシエチレン(80)硬化ひまし油、ポリオキシエチレン(100)硬化ひまし油等が挙げられる。
【0050】
ポリオキシアルキレンひまし油脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリオキシエチレン(4)ひまし油トリイソステアレート、ポリオキシエチレン(7.5)ひまし油トリイソステアレート、ポリオキシエチレン(10)ひまし油トリイソステアレート、ポリオキシエチレン(20)ひまし油トリイソステアレート、ポリオキシエチレン(25)ひまし油トリイソステアレート、ポリオキシエチレン(30)ひまし油トリイソステアレート、ポリオキシエチレン(50)ひまし油トリイソステアレート、ポリオキシエチレン(4)ひまし油ジイソステアレート、ポリオキシエチレン(7.5)ひまし油ジイソステアレート、ポリオキシエチレン(10)ひまし油ジイソステアレート、ポリオキシエチレン(20)ひまし油ジイソステアレート、ポリオキシエチレン(25)ひまし油ジイソステアレート、ポリオキシエチレン(30)ひまし油ジイソステアレート、ポリオキシエチレン(50)ひまし油ジイソステアレート、ポリオキシエチレン(4)ひまし油トリオレエート、ポリオキシエチレン(7.5)ひまし油トリオレエート、ポリオキシエチレン(10)ひまし油トリオレエート、ポリオキシエチレン(20)ひまし油トリオレエート、ポリオキシエチレン(25)ひまし油トリオレエート、ポリオキシエチレン(30)ひまし油トリオレエート、ポリオキシエチレン(50)ひまし油トリオレエート、ポリオキシエチレン(4)ひまし油ジオレエート、ポリオキシエチレン(7.5)ひまし油ジオレエート、ポリオキシエチレン(10)ひまし油ジオレエート、ポリオキシエチレン(20)ひまし油ジオレエート、ポリオキシエチレン(25)ひまし油ジオレエート、ポリオキシエチレン(30)ひまし油ジオレエート、ポリオキシエチレン(50)ひまし油ジオレエート等が挙げられる。
【0051】
ポリオキシアルキレン硬化ひまし油脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリオキシエチレン(5)硬化ひまし油トリイソステアレート、ポリオキシエチレン(10)硬化ひまし油トリイソステアレート、ポリオキシエチレン(15)硬化ひまし油トリイソステアレート、ポリオキシエチレン(20)硬化ひまし油トリイソステアレート、ポリオキシエチレン(25)硬化ひまし油トリイソステアレート、ポリオキシエチレン(30)硬化ひまし油トリイソステアレート、ポリオキシエチレン(40)硬化ひまし油トリイソステアレート、ポリオキシエチレン(50)硬化ひまし油トリイソステアレート、ポリオキシエチレン(60)硬化ひまし油トリイソステアレート、ポリオキシエチレン(80)硬化ひまし油トリイソステアレート、ポリオキシエチレン(100)硬化ひまし油トリイソステアレート、ポリオキシエチレン(5)硬化ひまし油ジイソステアレート、ポリオキシエチレン(10)硬化ひまし油ジイソステアレート、ポリオキシエチレン(15)硬化ひまし油ジイソステアレート、ポリオキシエチレン(20)硬化ひまし油ジイソステアレート、ポリオキシエチレン(25)硬化ひまし油ジイソステアレート、ポリオキシエチレン(30)硬化ひまし油ジイソステアレート、ポリオキシエチレン(40)硬化ひまし油ジイソステアレート、ポリオキシエチレン(50)硬化ひまし油ジイソステアレート、ポリオキシエチレン(60)硬化ひまし油ジイソステアレート、ポリオキシエチレン(80)硬化ひまし油ジイソステアレート、ポリオキシエチレン(100)硬化ひまし油ジイソステアレート、ポリオキシエチレン(5)硬化ひまし油トリオレエート、ポリオキシエチレン(10)硬化ひまし油トリトリオレエート、ポリオキシエチレン(15)硬化ひまし油トリトリオレエート、ポリオキシエチレン(20)硬化ひまし油トリトリオレエート、ポリオキシエチレン(25)硬化ひまし油トリトリオレエート、ポリオキシエチレン(30)硬化ひまし油トリトリオレエート、ポリオキシエチレン(40)硬化ひまし油トリトリオレエート、ポリオキシエチレン(50)硬化ひまし油トリトリオレエート、ポリオキシエチレン(60)硬化ひまし油トリオレエート、ポリオキシエチレン(80)硬化ひまし油トリオレエート、ポリオキシエチレン(100)硬化ひまし油トリオレエート、ポリオキシエチレン(5)硬化ひまし油ジオレエート、ポリオキシエチレン(10)硬化ひまし油トリオレエート、ポリオキシエチレン(15)硬化ひまし油ジオレエート、ポリオキシエチレン(20)硬化ひまし油ジオレエート、ポリオキシエチレン(25)硬化ひまし油ジイソオレエート、ポリオキシエチレン(30)硬化ひまし油ジオレエート、ポリオキシエチレン(40)硬化ひまし油ジオレエート、ポリオキシエチレン(50)硬化ひまし油ジオレエート、ポリオキシエチレン(60)硬化ひまし油ジオレエート、ポリオキシエチレン(80)硬化ひまし油ジオレエート、ポリオキシエチレン(100)硬化ひまし油ジオレエート等が挙げられる。
【0052】
ポリオキシアルキレンジヒドロキシ化ナタネ油としては、例えば、ポリオキシエチレン(5)ジヒドロキシ化ナタネ油、ポリオキシエチレン(10)ジヒドロキシ化ナタネ油、ポリオキシエチレン(15)ジヒドロキシ化ナタネ油、ポリオキシエチレン(20)ジヒドロキシ化ナタネ油、ポリオキシエチレン(25)ジヒドロキシ化ナタネ油、ポリオキシエチレン(30)ジヒドロキシ化ナタネ油、ポリオキシエチレン(50)ジヒドロキシ化ナタネ油等が挙げられる。
【0053】
ポリオキシアルキレンジヒドロキシ化ナタネ油脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリオキシエチレン(5)ジヒドロキシ化ナタネ油テトライソステアレート、ポリオキシエチレン(10)ジヒドロキシ化ナタネ油テトライソステアレート、ポリオキシエチレン(15)ジヒドロキシ化ナタネ油テトライソステアレート、ポリオキシエチレン(20)ジヒドロキシ化ナタネ油テトライソステアレート、ポリオキシエチレン(25)ジヒドロキシ化ナタネ油テトライソステアレート、ポリオキシエチレン(30)ジヒドロキシ化ナタネ油テトライソステアレート、ポリオキシエチレン(50)ジヒドロキシ化ナタネ油テトライソステアレート、ポリオキシエチレン(5)ジヒドロキシ化ナタネ油トリイソステアレート、ポリオキシエチレン(10)ジヒドロキシ化ナタネ油トリイソステアレート、ポリオキシエチレン(15)ジヒドロキシ化ナタネ油トリイソステアレート、ポリオキシエチレン(20)ジヒドロキシ化ナタネ油トリイソステアレート、ポリオキシエチレン(25)ジヒドロキシ化ナタネ油トリイソステアレート、ポリオキシエチレン(30)ジヒドロキシ化ナタネ油トリイソステアレート、ポリオキシエチレン(50)ジヒドロキシ化ナタネ油トリイソステアレート、ポリオキシエチレン(5)ジヒドロキシ化ナタネ油テトラオレエート、ポリオキシエチレン(10)ジヒドロキシ化ナタネ油テトラオレエート、ポリオキシエチレン(15)ジヒドロキシ化ナタネ油テトラオレエート、ポリオキシエチレン(20)ジヒドロキシ化ナタネ油テトラオレエート、ポリオキシエチレン(25)ジヒドロキシ化ナタネ油テトラオレエート、ポリオキシエチレン(30)ジヒドロキシ化ナタネ油テトラオレエート、ポリオキシエチレン(50)ジヒドロキシ化ナタネ油テトラオレエート、ポリオキシエチレン(5)ジヒドロキシ化ナタネ油トリオレエート、ポリオキシエチレン(10)ジヒドロキシ化ナタネ油トリオレエート、ポリオキシエチレン(15)ジヒドロキシ化ナタネ油トリオレエート、ポリオキシエチレン(20)ジヒドロキシ化ナタネ油トリオレエート、ポリオキシエチレン(25)ジヒドロキシ化ナタネ油トリオレエート、ポリオキシエチレン(30)ジヒドロキシ化ナタネ油トリオレエート、ポリオキシエチレン(50)ジヒドロキシ化ナタネ油トリオレエート等が挙げられる。
【0054】
本発明において乳化物に使用される乳化剤(C)としては、特に、ポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル、グリセリンヒドロキシ脂肪酸エステルのエチレンオキシド付加体またはその脂肪酸エステルが好ましく、例えば、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油またはその脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油またはその脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンジヒドロキシ化ナタネ油またはその脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0055】
本発明において乳化物に使用される乳化剤(C)は、未反応原料、不純物、副生成物等に由来する有機カルボン酸、酸性触媒の残留等に由来する酸成分が含まれていても良い。
【0056】
乳化剤として上記以外の非イオン界面活性剤を併用してもよく、上記以外の非イオン界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0057】
本発明において乳化物に含まれる任意成分としての脂肪酸(D)としては、脂肪酸であれば特に限定されないが、乳化の安定性の点から炭素数8~24の脂肪酸が好ましく、炭素数12~18の脂肪酸がより好ましい。
【0058】
脂肪酸としては、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、分岐脂肪酸、ヒドロキシ脂肪酸などが挙げられる。脂肪酸は、油脂に含まれる脂肪酸であってもよい。
【0059】
飽和脂肪酸として、例えば、特に限定されないが、カプリル酸(C8、融点16.7℃)、カプリン酸(C10、融点31℃)、ラウリン酸(C12、融点44-46℃)、ミリスチン酸(C14、融点54.4℃)、パルミチン酸(C16、融点62.9℃)、ステアリン酸(C18、融点69.6℃)、ベヘン酸(C22、融点79.9℃)、リグノセリン酸(C24、融点84.2℃)等が挙げられる。その中でも、安定性の面からパルミチン酸、ステアリン酸が好ましい。
【0060】
また、不飽和脂肪酸として、例えば、特に限定されないが、カプロレイン酸(C10:1)、リンデル酸(C12:1)、ミリストレイン酸(C14:1)、パルミトレイン酸(C16:1)、サピエン酸(C16:1)、オレイン酸(C18:1)、エライジン酸(C18:1)、バクセン酸(C18:1)、ガドレイン酸(C20:1)、エイコセン酸(C20:1)、エルカ酸(C22:1)、ネルボン酸(C24:1)、リノール酸(C18:2)、エイコサジエン酸(C20:2)、ドコサジエン酸(C22:2)、リノレン酸(C18:3)、ピノレン酸(C18:3)、エレオステアリン酸(C18:3)、ミード酸(C20:3)、ジホモ-γ-リノレン酸(C20:3)、エイコサトリエン酸(C20:3)等が挙げられる。その中でも、安定性、ハンドリングの面から室温(25℃)で液状のオレイン酸が好ましい。
【0061】
その他、分岐脂肪酸も使用できる。分岐脂肪酸としては特に限定されないが、例えば、2-エチルヘキサン酸(C8)、イソノナン酸(C9)、ジメチルオクタン酸(C10)、イソミリスチン酸(C14)、イソパルミチン酸(C16)、イソステアリン酸(C18)等が挙げられる。その中でも、安定性、ハンドリングの面から室温(25℃)で液状のイソステアリン酸が好ましい。
【0062】
さらに、ヒドロキシ脂肪酸として、例えば、特に限定されないが、2-ヒドロキシラウリン酸(C12)、2-ヒドロキシミリスチン酸(C14),2-ヒドロキシパルミチン酸(C16)、3-ヒドロキシパルミチン酸(C16)、8-ヒドロキシパルミチン酸(C16)、2-ヒドロキシステアリン酸(C18)、3-ヒドロキシステアリン酸(C18)、12-ヒドロキシステアリン酸(C18)、17-ヒドロキシステアリン酸(C18)、18-ヒドロキシステアリン酸(C18)、リシノール酸(C18:1)、α-オキシリノレン酸(C18:3)、3,11-ジヒドロキシミリスチン酸、3,12-ジヒドロキシミリスチン酸、トレオ-9、10-ジヒドロキシステアリン酸(C18)、エリトロ-9、10-ジヒドロキシステアリン酸(C18)、2、15、16-トリヒドロキシパルミチン酸(C16)等が挙げられる。
【0063】
上記脂肪酸は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。コスト面において有利な、油脂の脱臭工程で産出する安価な蒸留留出脂肪酸を使用してもよい。
【0064】
本発明の一態様において、乳化物は、油(A)と脂肪酸(D)との全体における酸価が0.3~100mgKOH/gとなるように調整する。動植物油に含まれる酸成分は、遊離脂肪酸、リン脂質等があり、これらと脂肪酸(D)の合計の酸価をこの範囲内に調整する。酸価が0.3mgKOH/g以上であると、乳化が安定し、60℃以上の高温下においても安定なエマルション状態が維持できる。この点を考慮すると、酸価は0.5mgKOH/g以上が好ましい。酸価が50mgKOH/g以下であると、金属類への耐腐食性の観点から好ましい。
【0065】
本発明において乳化物には、酸価を上記範囲内として安定性を向上するために、任意成分として脂肪酸(D)を含有する。すなわち、油(A)単独での酸価が上記範囲内ではない場合に脂肪酸(D)を添加することによって、乳化安定性が向上する。勿論、油(A)単独での酸価が上記範囲内である場合に脂肪酸(D)を添加しなくてもよい。より安定性を向上するために、脂肪酸(D)を添加することが好ましい。脂肪酸(D)を油(A)と水(B)との合計量に対して0.1~8質量%となる量で添加することが、乳化安定性の点から好ましい。なお、脂肪酸塩では油の酸価に影響を与えないため、本発明の効果を得ることができない。
【0066】
本発明の別の態様において、乳化物は、酸価が0.4~100mgKOH/gとなるように調整する。上記の油(A)と脂肪酸(D)との全体における酸価と同様の点から、乳化物の酸価を0.4~50mgKOH/gとなるように調整するのが好ましく、0.4~30mgKOH/gとなるように調整するのがより好ましい。
【0067】
本発明において乳化物における乳化剤(C)の含有量は、油(A)の種類や水(B)との混合割合が影響し、例えば水(B)の比率が増加すると乳化剤(C)も多く配合するが、乳化安定性の観点から、油(A)と水(B)との合計量に対して0.05質量%以上5質量%未満が好ましい。乳化剤(C)の含有量が0.05質量%以上であると乳化が安定し、60℃以上の高温下においても安定なエマルション状態が維持できる。この点を考慮すると乳化剤(C)の含有量は0.1質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上がさらに好ましい。乳化剤(C)の含有量が5質量%未満であれば、コスト面と乳化安定性とのバランスが良い。この点を考慮すると乳化剤(C)の含有量は2.5質量%以下が好ましく1質量%以下がより好ましい。
【0068】
本発明において乳化物は、油(A)と水(B)との容積比を40:60~95:5の範囲にすることが安定性の点から好ましい。
【0069】
本発明の乳化物は、乳化後に冷却して固体状で保存、使用することもできる。
【0070】
本発明において乳化物の用途としては、特に限定されないが、化粧品、医薬品、食品、燃料、インキ、塗料、接着剤等が挙げられる。
【0071】
本発明において乳化物には、本発明の効果を損なわない範囲内において、その他の添加剤を配合することができる。このようなその他の添加剤としては、着色料、顔料、医薬成分、食品添加物、増粘剤、防錆剤、腐食防止剤、燃焼温度降下剤、清浄分散剤、各種界面活性剤等が挙げられる。
【0072】
油(A)、水(B)、乳化剤(C)、脂肪酸(D)等を乳化する方法は、特に限定されない。例えば、油(A)に乳化剤(C)と脂肪酸(D)を加熱混合して均一溶解してから、加熱した水を徐々に添加して乳化する方法、油(A)に乳化剤(C)と脂肪酸(D)を加熱混合して均一に溶解してから、水を一括混合し、添加する方法が挙げられる。この際、乳化剤(C)と脂肪酸(D)を溶かした油(A)と水(B)は、油(A)の融点以上の温度であることが望ましい。
【0073】
乳化混合機としては、特に限定されない。例えば、プロペラ翼、パドル翼、タービン翼、アンカー翼、リボン翼などを有する撹拌混合機や超音波ホモジナイザー、撹拌ホモジナイザーによる高速攪拌分散機、高速回転剪断型攪拌機、高圧噴射式乳化分散機等が挙げられる。また、これらの装置を組み合わせて予備乳化的工程を経て乳化したり、循環させることにより効率的に乳化しても構わない。
【実施例
【0074】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
1.乳化物の調製
実施例および比較例において、乳化物に原料には次のものを用いた。
(動植物油(A))
・脱ガムジャトロファ油 酸価15mgKOH/g
粗ジャトロファ油に脱ガム処理を加えたもの
・精製ジャトロファ油 酸価0.2mgKOH/g
粗ジャトロファ油に脱色、脱臭処理等を加え精製したもの
・脱ガムパーム油 酸価14mgKOH/g
粗パーム油に脱ガム処理を加えたもの
・精製パーム油(RBDPO:Refined Breached Deodorized Palm Oil)酸価0.1mgKOH/g(入手直後)0.2mgKOH/g、1mgKOH/g(60℃1ヶ月保存品)、1.4mgKOH/g(室温1年保存品)、7.6mgKOH/g(60℃半年保存品)、9.7mgKOH/g(60℃1年保存品)
粗パーム油に脱ガム、脱色、脱臭処理等を加え精製したもの
・精製パームオレイン油 酸価0.2mgKOH/g
精製パーム油の分別により得られた低融点成分
・精製パームダブルオレイン油 酸価0.2mgKOH/g
精製パーム油の2段階分別により得られたもの
・精製パームステアリン油(RBDPS:Refined Breached Deodorized Palm Stearin) 酸価1mgKOH/g
精製パーム油の分別により得られた高融点成分
(水(B))
・イオン交換水
(乳化剤(C))
・乳化剤(C1) 酸価22mgKOH/g
ポリオキシエチレン(30)硬化ひまし油トリイソステアレート
・乳化剤(C2) 酸価0.9mgKOH/g
ポリオキシエチレン(40)硬化ひまし油
・乳化剤(C3) 酸価1.2mgKOH/g
ポリオキシエチレン(60)硬化ひまし油
・乳化剤(C4) 酸価1.4mgKOH/g
テトラグリセリン縮合リシノール酸エステル
・乳化剤(C5) 酸価0.5mgKOH/g
ヘキサグリセリン縮合リシノール酸エステル
・乳化剤(C6) 酸価1.1mgKOH/g
デカグリセリンステアレート
・乳化剤(C7) 酸価6.7mgKOH/g
ポリオキシエチレン(30)ひまし油トリオレエート
・乳化剤(C8) 酸価10.5mgKOH/g
ポリオキシエチレン(30)ジヒドロキシ化ナタネ油テトライソステアレート
・乳化剤(C9) 酸価0.4mgKOH/g
ポリオキシエチレン(6)ノニルフェノールエーテル
・乳化剤(C10)酸価3.1mgKOH/g
ポリオキシエチレン(5)ノニルフェノールエーテル
(脂肪酸(D))脂肪酸(D1~D6)はミヨシ油脂社製を用いた。脂肪酸(D7)は、Sime Drby Austral Sdn.Bhd.製を用いた。脂肪酸(D8)は、Oleon社製を用いた。脂肪酸塩(E)は、和光純薬工業製の試薬を用いた。
・脂肪酸(D1)
パルミチン酸98 融点61.9℃ 酸価219mgKOH/g
・脂肪酸(D2)
ステアリン酸98 融点68.6℃ 酸価197mgKOH/g
・脂肪酸(D3)
ミリスチン酸98 融点53.9℃ 酸価246mgKOH/g
・脂肪酸(D4)
ラウリン酸98 融点43.5℃ 酸価280mgKOH/g
・脂肪酸(D5)
ステアリン酸55 融点 56.5℃ 酸価207mgKOH/g
(ミリスチン酸1%、パルミチン酸43%、ステアリン酸55%、エイコサン酸1%)
・脂肪酸(D6)
PM-400C 曇点4.2℃ 酸価197.8mgKOH/g
(パルミチン酸4%、ステアリン酸1%、パルミトレイン酸1%、オレイン酸68%、リノール酸23%、リノレン酸1%)
・脂肪酸(D7)
PFAD 融点 45.2℃ 酸価195.7mgKOH/g
(Palm Fatty Acid Distllated;パーム留出脂肪酸)
・脂肪酸(D8)
RADIACID0907(イソステアリン酸)曇点4.7℃ 酸価192.8mgKOH/g
【0075】
脂肪酸の融点、酸価、曇点は次の方法で測定した。
[融点]
融点は、基準油脂分析法(公益社団法人日本油化学会)の「3.2.2.2-2013 融点(上昇融点)」に準じて測定した。
[酸価(中和価)]
酸価は、基準油脂分析法(公益社団法人日本油化学会)の「3.3.1-2013 に準じて測定した。
[曇点]
曇点は、基準油脂分析法(公益社団法人日本油化学会)の「2.2.7-2013 曇点」に準じて測定した。
(脂肪酸塩(E))
ラウリン酸カリウム
(高級アルコール(F))
セチルアルコール
【0076】
2.乳化方法
上記乳化剤(C)と必要な場合は、脂肪酸(D)を500mLのトールビーカーに秤量し、動植物油(A)を所定の量を入れて60℃または80℃で均一に溶解させた。攪拌ホモジナイザー(プライミクス社製ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて60または80℃、10000rpmの回転数で攪拌しながら60または80℃に加温したイオン交換水(B)を添加し、10分間、高速撹拌して予備乳化した。動植物油(A)と水(B)の合計容量は200mLとした。その乳化液をさらに卓上超微粒化試験機(吉田機械興業製、NM2-L100)を用いて100MPa、5Passの条件で60または80℃保温しながら高圧高剪断撹拌により乳化した。
【0077】
3.顕微鏡観察
実施例3、4、6、13、22、24、33、比較例2、4、6について、乳化直後の光学顕微鏡観察(カールツァイス製、Axio Imager.A2m)を行った。倍率は1600倍で観察した。なお、顕微鏡観察に使用したプレパラートは50℃の恒温槽でよく温めてから観察直前に取り出し使用した。結果を図1に示す。
【0078】
その結果、実施例3、4、6、13、22、24、33では、乳化直後に非常に細かい粒子が観察され、良好な乳化状態であることが分かった。一方、比較例2、4、6は、乳化直後に、かなり粗大な粒子が観察され、大きな粒子が合一して水層となり、分離してしまったと考えられる。特に比較例6では、実施例2で用いたパルミチン酸と同アルキル鎖長のセチルアルコールでも、乳化安定性に効果がなかったことを示している。つまり、この粒子の安定化は添加した脂肪酸が寄与してW/O乳化粒子の界面膜に乳化剤とともに配向し、界面膜を強固にして、熱的安定性を向上する相乗効果が働いたためと考えられる。
【0079】
4.安定性評価
得られた実施例1~36、比較例1~6の各乳化物について、乳化直後の安定性評価(分離水量、上層下層相分離率)を行った。
【0080】
得られた乳化物を50mL目盛り付きの栓付きメスシリンダーに移して60℃または80℃の恒温器内で静置し、6時間後、1日後または7日後の分離水量および上層下層相分離率を計測した。分離水量、上層下層相分離率から次の基準で安定性を評価した。
【0081】
相分離率は、完全に分離した油相の容積(O)、エマルション相(E)、クリーミングして水分が多くなったエマルション下層(CE)のそれぞれの容積比、O/(O+E+CE)を上層相分離率、CE/(O+E+CE)を下層相分離率とし、百分率(%)に換算した。
【0082】
分離水量、上層下層相分離率から次の基準で安定性を評価した。結果を表1~表5に示す。図2には乳化物の分離水、相分離状況の代表写真を示す。
評価基準(分離水量)
◎:分離なし~微水滴
○:水滴~0.2mL未満
△:0.2mL以上0.5mL未満
×:0.5mL以上
評価基準(上層下層相分離率)
◎:3%未満
〇:3%以上10%未満
△:10%以上20%未満
×:20%以上
【0083】
その結果、本発明の乳化物である実施例1~36は、比較例1~6の60℃6時間後、1日後と比べて分離水量が明らかに少なく、上層下層相分離率も低い。実施例5、13、14は、さらに高温である80℃においても6時間、1日後も安定なエマルションが維持されていた。また実施例22は、60℃で1週間保存しても分離水量がなく、上層下層分離率も非常に低く安定なエマルションが維持されていた。図2から実施例3、4、6、7、22、24は良好なエマルション相(E)を形成しているのに対して、比較例1、2、4、5は明らかに水層分離が進行した。特に、実施例22は、含水率が60%という高含水量にも係わらず、W/O乳化を長時間高温で安定することが可能であり、高品質な乳化物であることが分かった。さらに80℃での外観の安定性を示した図3からも実施例5、13、14は良好なエマルションを形成していた。一方で、脂肪酸の代わりに脂肪酸塩(ラウリン酸カリウム)を使用した比較例3は、予備乳化の時点でクリーム状のO/Wエマルションとなり、目的のW/Oエマルションとならないことが確認された。
【0084】
このように、本発明の乳化物の安定化方法は、脂肪酸(D)を含有させることで乳化剤の使用量が少なくても、単分散で、乳化層の上層下層の相分離率が低く、水分離がほとんどない高温で安定なエマルション状態が維持できており、高品質な乳化物が得られる方法であることが認められた。
【0085】
動植物油に酸価の異なる精製パーム油(RBDPO)160mLと水40mLを使用した実施例4~7、10~15、17、18、21、27~36の乳化物や、精製パーム油(RBDPO)と水の比率を変更した実施例22~25では、精製パーム油(RBDPO)と脂肪酸(D)の全体の酸価を0.5~43mgKOH/gに調整すると、乳化が安定することが確認された。
【0086】
動植物油に酸価の異なる精製パーム油(RBDPO)160mLと水40mLを使用した実施例4~7、10~15、17、18、21、27~36の乳化物や、精製パーム油(RBDPO)と水の比率を変更した実施例22~25では、乳化物の酸価を0.4~24.2mgKOH/gに調整すると、乳化が安定することが確認された。
【0087】
実施例15のように本発明における乳化剤(C1、ポリオキシエチレン(30)硬化ひまし油トリイソステアレート)と乳化剤(C6、デカグリセリンステアレート)を併用した場合も乳化物が安定することが確認された。
【0088】
5.燃焼評価(NO減少率、スモーク濃度減少率)
「ヤンマー建機製の小型ディーゼル発電機:型式:YDG350VA-5E」を用いて燃焼試験を行い、排ガス中のNO濃度、スモーク濃度を測定した。NO濃度の測定は、テストー製testo350-MARITIMEを用いて、スモーク濃度に関しては、バンザイ社製DSM-10Nを用いた。ポンプ入り口温度は約60℃とした。燃焼試験には60℃に保存した6時間後の実施例1、3、5、13、14、19、20、22の乳化物を用い、5時間運転後の排ガス計測としてNO発生量およびスモーク濃度を測定し、燃料油のみを燃焼したときを100%とした場合の減少率で評価した。なお、一般にNO発生量およびスモーク濃度は水の比率が増加すると低減される傾向にある。結果を表1~表5に示す。
【0089】
その結果、実施例1のNO減少率は59%、スモーク濃度減少率は70%であった。また、実施例3のNO減少率は60%、スモーク濃度減少率は62%であった。実施例5のNO減少率は54%、スモーク濃度減少率は57%であった。実施例13のNO減少率は61%、スモーク濃度減少率は71%であった。実施例14のNO減少率は51%、スモーク濃度減少率は66%であった。実施例19のNO減少率は52%、スモーク濃度減少率は58%であった。実施例20のNO減少率は57%、スモーク濃度減少率は63%であった。実施例22のNO減少率は87%、スモーク濃度減少率は70%であった。
【0090】
このように、本発明の乳化物は、高温保存でもNO、スモークの環境汚染物質の発生を抑え、安定的な燃焼が可能となる。水が多いほど、NOの減少率は高くなった。一方、60℃に保存した6時間後の比較例2の乳化物は、水分離が多く認められたため、水分離層を除いた乳化層を用いて、実施例1と同様に行った。その結果、比較例2のNO減少率は29%、スモーク濃度減少率は38%と低い値となった。
【0091】
また、60℃に保存した6時間後のその他の比較例の乳化物は、明らかに乳化安定性が悪く、水分離が認められたことから、安定的な燃焼が維持できず、NO減少率やスモーク濃度減少率が実施例のエマルション燃料に比べて明らかに低くなると想定され、エンジン内のノズルチップ先端部に炭素状物質が堆積したり、ピストンリングのスティックが生じるなど重大な障害を引き起こす虞もあると判断したので試験は実施しなかった。
【0092】
以上のように、本発明の乳化物は、エマルション燃料として有用であることが確認された。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】
【表5】
図1
図2
図3