(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】モーション検知装置及びハンドル装置
(51)【国際特許分類】
G01V 3/08 20060101AFI20220426BHJP
E05B 81/76 20140101ALI20220426BHJP
E05B 85/16 20140101ALI20220426BHJP
E05F 15/73 20150101ALI20220426BHJP
H03K 17/955 20060101ALI20220426BHJP
H03K 17/96 20060101ALI20220426BHJP
B60J 5/00 20060101ALN20220426BHJP
B60J 5/04 20060101ALN20220426BHJP
【FI】
G01V3/08 D
E05B81/76
E05B85/16 Z
E05F15/73
H03K17/955 A
H03K17/96 A
B60J5/00 N
B60J5/04 H
(21)【出願番号】P 2018091258
(22)【出願日】2018-05-10
【審査請求日】2021-04-23
(31)【優先権主張番号】P 2017250654
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000170598
【氏名又は名称】株式会社アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】西塚 三男
(72)【発明者】
【氏名】奥川 勉
(72)【発明者】
【氏名】田中 和也
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-335273(JP,A)
【文献】国際公開第2009/013965(WO,A1)
【文献】特開平6-273362(JP,A)
【文献】特開2015-26220(JP,A)
【文献】国際公開第2014/125577(WO,A1)
【文献】特開2017-139165(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0327454(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00-99/00
E05B 77/00-85/28
E05F 15/73
H03K 17/955、17/96
B60J 5/00、5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部に対して行われる、方向を伴うユーザー操作を検知するモーション検知装置において、
前記操作部の裏面側に配置され、前記操作部への人体の接触又は接近に応じた静電容量の変化を検知するセンサー電極と、
前記操作部と前記センサー電極との間に設けられ、前記操作部へ接触又は接近する人体と前記センサー電極との間に形成される電界を規制する複数のシールド部と、を有し、
前記複数のシールド部は、それぞれ間隔をあけて配列され、隣り合うシールド部同士の間隔が配列方向にかけて異なっている
モーション検知装置。
【請求項2】
前記操作部と前記センサー電極との間に設けられ、それぞれ間隔をあけて配列された複数の開口部を備えるシールド電極を有し、
前記複数の開口部は、配列方向における開口幅が当該配列方向にかけて異なっており、
前記複数のシールド部は、前記シールド電極において隣り合う開口部同士を隔てる境界部によって構成される
請求項1記載のモーション検知装置。
【請求項3】
前記シールド電極は、導電性を備えたシート状の部材から構成され、前記センサー電極に対して離間した状態で配置されている
請求項2記載のモーション検知装置。
【請求項4】
前記操作部と前記センサー電極との間隙を満たすように、前記操作部の裏面に設けられる複数のブロック部を有し、
前記複数のブロック部は、それぞれ間隔をあけて配列され、配列方向におけるブロック幅が当該配列方向にかけて異なっており、
前記複数のシールド部は、隣り合うブロック部同士を隔てる隙間部によって構成される
請求項1記載のモーション検知装置。
【請求項5】
前記複数のブロック部は、前記操作部の裏面に一体に形成されている
請求項4記載のモーション検知装置。
【請求項6】
前記複数のシールド部は、隣り合うシールド部同士の間隔が配列方向にかけて次第に小さくなる
請求項1から5いずれか記載のモーション検知装置。
【請求項7】
前記センサー電極の静電容量の変化に基づき、前記操作部に対するユーザー操作の方向を検知する検知制御部をさらに有する
請求項1から6いずれか記載のモーション検知装置。
【請求項8】
前記検知制御部は、極大側ピーク及び極小側ピークの経時的な推移、及び隣り合う極大側ピークと極小側ピークとの間の振幅に基づいて、前記操作部に対するユーザー操作の方向を検知する
請求項7記載のモーション検知装置。
【請求項9】
ドアに組み付けられ、当該ドアの開閉操作時に持ち手となる操作ハンドルと、
請求項1から8のいずれか記載のモーション検知装置と、を有し、
前記操作ハンドルは、前記モーション検知装置における前記操作部として構成され、
前記モーション検知装置は、前記操作ハンドルの内部に、当該操作ハンドルの長手方向に沿って搭載される
ハンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーション検知装置及びハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のドアに設けられた操作ハンドルにユーザーが触れたことをトリガーとしてドアの解錠を行う技術が知られている。そのため、操作ハンドルには、静電容量の変化を利用して、操作ハンドルに接触又は接近する人体を検知する静電容量センサーが搭載されている。
【0003】
また、例えば特許文献1には、操作ハンドルへの触手の速さ及び方向に応じて、車両ドアの開閉速度及び開閉方向を制御する車両用ドア開閉制御装置が開示されている。この車両用ドア開閉制御装置は、操作ハンドルの長手方向に沿って設けられる複数の静電容量センサーにより人体の接触を検出する検出手段と、検出手段からの信号に基づいてユーザーが所望する車両ドアの開閉速度及び開閉方向の少なくとも一つを設定してドアの開閉制御を行う制御手段と、を備えている。この装置によれば、複数の静電容量センサーの検出結果から、操作ハンドルに対してなされたユーザー操作の方向を検知することができる。
【0004】
なお、静電容量センサーに関する技術として、例えば特許文献2には、それぞれ幅寸法が同一となる複数の矩形スリットが電極の長手方向に沿って設けられた対向電極を備えるタッチセンサが開示されている。このタッチセンサでは、隣り合うスリット同士の間隔が、電極の長手方向にかけて狭くなるように構成されている。また、例えば特許文献3には、直線上の位置変化を検出する静電容量式変位センサーが開示されている。このセンサーは、強誘電体の一面に形成された固定電極と、強誘電体の他面上に擦接可能に配置された可動電極とを備え、これらの電極が静電容量を検出する検出器に接続されている。そして、測定子に連動して可動電極が強誘電体板上を相対移動することにより、可動電極と固定電極とのオーバーラップ面積が変化し、静電容量に変化が現れる。この静電容量の変化を検出することで、測定子の位置変化を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-79353号公報
【文献】特開2004-335273号公報
【文献】特開平03-123814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された手法にあっては、複数の静電容量センサーを用いる必要があるため、各センサーと制御部とを接続するハーネスが必要となる等の問題がある。このため、構造が複雑化したり、部品コストが増加したりするという不都合が発生する。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡素かつ安価な構成で、方向を伴うユーザー操作を精度よく検知することができるモーション検知装置及びハンドル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために、第1の発明は、操作部に対して行われる、方向を伴うユーザー操作を検知するモーション検知装置を提供する。このモーション検知装置は、操作部の裏面側に配置され、操作部への人体の接触又は接近に応じた静電容量の変化を検知するセンサー電極と、操作部とセンサー電極との間に設けられ、操作部へ接触又は接近する人体とセンサー電極との間に形成される電界を規制する複数のシールド部と、を有している。この場合、複数のシールド部は、それぞれ間隔をあけて配列され、隣り合うシールド部同士の間隔が配列方向にかけて異なっている。
【0009】
ここで、本発明は、操作部とセンサー電極との間に設けられ、それぞれ間隔をあけて配列された複数の開口部を備えるシールド電極を有していてもよい。この場合、複数の開口部は、配列方向における開口幅が当該配列方向にかけて異なっており、複数のシールド部は、シールド電極において隣り合う開口部同士を隔てる境界部によって構成されていることが好ましい。
【0010】
また、本発明において、シールド電極は、導電性を備えたシート状の部材から構成され、センサー電極に対して離間した状態で配置されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、操作部とセンサー電極との間隙を満たすように、操作部の裏面に設けられる複数のブロック部を有していてもよい。この場合、複数のブロック部は、それぞれ間隔をあけて配列され、配列方向におけるブロック幅が当該配列方向にかけて異なっており、複数のシールド部は、隣り合うブロック部同士を隔てる隙間部によって構成されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明において、複数のブロック部は、操作部の裏面に一体に形成されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明において、複数のシールド部は、隣り合うシールド部同士の間隔が配列方向にかけて次第に小さくなることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、センサー電極の静電容量の変化に基づき、操作部に対するユーザー操作の方向を検知する検知制御部をさらに有していてもよい。
【0015】
また、本発明において、検知制御部は、極大側ピーク及び極小側ピークの経時的な推移、及び隣り合う極大側ピークと極小側ピークとの間の振幅に基づいて、操作部に対するユーザー操作の方向を検知することが好ましい。
【0016】
また、第2の発明は、ドアに組み付けられ、当該ドアの開閉操作時に持ち手となる操作ハンドルと、第1の発明に記載のモーション検知装置と、を有するハンドル装置を提供する。この場合、操作ハンドルは、モーション検知装置における操作部として構成され、モーション検知装置は、操作ハンドルの内部に、当該操作ハンドルの長手方向に沿って搭載されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡素かつ安価な構成で、方向を伴うユーザー操作を精度よく検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】車両用ドア開閉装置の制御構成を示すブロック図
【
図2】スライドドアに装備されたドアハンドル装置の構成を示す説明図
【
図3】モーション検知装置の構成を模式的に示す説明図
【
図4】モーション検知装置によるスワイプ操作の検知概念を示す説明図
【
図5】モーション検知装置によるスワイプ操作の検知動作を示すフローチャート
【
図6】スワイプ操作に伴う静電容量の変化を示す説明図
【
図7】車両用ドア開閉装置によるスライドドアの開閉動作の流れを示すフローチャート
【
図8】モーション検知装置の構成を模式的に示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
以下、本実施形態に係る車両用ドア開閉装置1について説明する。ここで、
図1は、車両用ドア開閉装置1の制御構成を示すブロック図である。
図2は、スライドドア2に装備されたドアハンドル装置10の構成を示す説明図である。この
図2において、(a)は、ドアハンドル装置10の外観を正面より示す図であり、(b)は、ドアハンドル装置10の断面状態を模式的に示す図である。
図3は、モーション検知装置20の構成を模式的に示す説明図である。
【0020】
車両用ドア開閉装置1は、車両のスライドドア2の開閉を行う装置である。スライドドア2は、車体側面に支持されており、車両前後方向に移動することにより、車体側面に設けられたドア開口部を開閉する。スライドドア2は、最も前方に位置する状態で全閉となり、逆に、最も後方に位置する状態で全開となる。スライドドア2には、ドアロック装置3が設けられている。ドアロック装置3は、スライドドア2をロック状態に維持する装置である。一方、ドアロック装置3がロック解除状態にある場合には、スライドドア2を開方向に移動させることができる。
【0021】
車両用ドア開閉装置1は、ドアハンドル装置10、アンテナ30、センサー入力部40、認証部50、ロック駆動部60、ドア駆動部70及びドア制御部80を主体に構成されている。
【0022】
ドアハンドル装置10は、スライドドア2に配設されている。本実施形態に係るドアハンドル装置10は、スライドドア2の外側に配設されるドアアウトサイドハンドル装置である。ドアハンドル装置10は、スライドドア2に固定されるハンドルベース11と、ハンドルベース11に連結される操作ハンドル12とを有し、車両前後方向に沿った姿勢でスライドドア2に組み付けられている。
【0023】
操作ハンドル12は、車両前後方向に沿って長手となる形状を備えている。操作ハンドル12の中央部には、ユーザーが操作ハンドル12を握るための握り部(持ち手)12aが設けられている。握り部12aは、手を挿入するためのスペースを形成するようにスライドドア2の外面と隔てられている。本実施形態の特徴の一つとして、操作ハンドル12は、スライドドア2の開閉時に、ユーザーが操作ハンドル12の表面に対して接触操作を行う操作部として機能する。もっとも、操作ハンドル12は、一般的なハンドル機能も備えており、スライドドア2の開閉時に、ユーザーが操作ハンドル12を把持して回動操作を行う操作部としても機能する。
【0024】
操作ハンドル12は、その表面を構成する表カバー13と、その裏面を構成する裏カバー14とを嵌め合わせて構成されている。表カバー13と裏カバー14との間には、中空部12bが形成されている。表カバー13及び裏カバー14は、軽量化のために、例えば合成樹脂材により形成されている。
【0025】
ドアハンドル装置10は、モーション検知装置20等をさらに備えている。モーション検知装置20等は、操作ハンドル12の中空部12bに収容されている。これらの電子部品は、外部接続用のハーネスと電気的に接続されており、当該ハーネスは、操作ハンドル12から外部に引き出され、車両側に接続されている。
【0026】
モーション検知装置20は、操作ハンドル12に行われる、方向を伴うユーザー操作(ユーザーの接触操作)を検知する装置である。本実施形態では、スライドドア2の開閉方向に沿って、操作ハンドル12の表面(表カバー13)を指(人体)でなぞるスワイプ操作を行うことでスライドドア2の開閉動作が実現される。例えば、スライドドア2を開方向に動作させるのであれば、操作ハンドル12に対して、スライドドア2の開方向、すなわち、操作ハンドル12の長手方向に沿って前から後にスワイプ操作を行う。逆に、スライドドア2を閉方向に動作させるのであれば、操作ハンドル12に対して、スライドドア2の閉方向、すなわち、操作ハンドル12の長手方向に沿って後から前にスワイプ操作を行うといった如くである。モーション検知装置20は、操作ハンドル12に対して行われる、スライドドア2の開閉方向に対応する方向を伴うスワイプ操作を検知する。
【0027】
モーション検知装置20は、センサー電極21、シールド電極22及び制御基板23を主体に構成されている。このモーション検知装置20は、裏カバー14に搭載され、表カバー13の裏面側に配置されている。
【0028】
センサー電極21は、操作ハンドル12の表面(表カバー13)への指の接触(又は接近)に応じた静電容量の変化を検知するものである。センサー電極21は、操作ハンドル12の長手方向に沿って横長となる矩形形状を備えている。すなわち、センサー電極21の長手方向は、操作ハンドル12の長手方向と対応している。センサー電極21と裏カバー14との間には、絶縁用のスペーサー24が設けられている。センサー電極21は、制御基板23に接続され、所定の周期で駆動電圧が印加される。
【0029】
シールド電極22は、表カバー13とセンサー電極21との間に配置されている。このシールド電極22は、操作ハンドル12へ接触する指とセンサー電極21との間に形成される電界を規制する機能を担っている。本実施形態において、シールド電極22は、導電性の高いシート状の部材より構成されており、グランド(例えば制御基板23のグランド)に対して電気的に接続されている。
【0030】
シールド電極22は、例えばセンサー電極21よりも一回り程度大きなサイズを有しており、センサー電極21の表面全域を覆うだけのサイズに設定されている。また、シールド電極22は、センサー電極21との間に誘電体となるスペーサー25を介在させており、センサー電極21に対して離間した状態で配置されている。スペーサー25は、誘電率の低いものが望ましい。
【0031】
このシールド電極22には、それぞれ間隔をあけて配列された複数の開口部22aが、操作ハンドル12の長手方向に沿って設けられている。これらの開口部22aは、その配列方向、すなわち、操作ハンドル12の長手方向における開口幅Hが、その長手方向にかけてそれぞれ異なるように設定されている。
【0032】
本実施形態において、複数の開口部22aは、操作ハンドル12の長手方向のうち一方方向(
図3の右方向)にかけて、開口幅Hが段階的に小さくなるように設定されている。
図3に示す例では、最も後方に位置する開口部22aの開口幅Hが最も大きく、前方の開口部22aに遷移するにしたがって、その開口幅Hが順次小さくなり、最も前方に位置する開口部22aの開口幅Hが最も小さくなる。
【0033】
このシールド電極22において、隣り合う開口部22a同士を隔てる境界部22bのそれぞれは、操作ハンドル12へ接触する指とセンサー電極21との間に形成される電界を規制するシールド部として機能する。すなわち、シールド電極22において、電界の規制機能は、境界部22bにおいて選択的に実現される。
【0034】
制御基板23は、センサー電極21の静電容量の変化に基づいて、操作ハンドル12に対して行われたユーザー操作を検知する(検知制御部)。具体的には、制御基板23は、静電容量の変化のパターンをモニタリングし、極大側ピークの経時的な推移及び極小側ピークの経時的な推移、並びに隣り合う極大側ピークと極小側ピークとの間の振幅に基づいて、操作ハンドル12に対してなされたスワイプ操作及びその方向を検知する。制御基板23において処理される情報は、センサー入力部40に対して出力される。
【0035】
アンテナ30は、ユーザーが所持する携帯器Kとの間で交信するものである。
【0036】
センサー入力部40は、モーション検知装置20と接続されており、モーション検知装置20からの出力を監視する。センサー入力部40は、モーション検知装置20から出力があると、これをドア制御部80に出力する。
【0037】
認証部50は、アンテナ30と接続されており、ドア制御部80により制御されて動作する。認証部50は、アンテナ30を介して、ユーザーの所持する携帯器Kと通信を行うことができる。認証部50は、携帯器Kから送信される固有のID情報を受信すると、このID情報を予め保管されたIDと照合する(認証処理)。両者が一致する場合、認証部50は、認証成立を旨とする情報をドア制御部80に出力する。この認証処理は、ユーザーが携帯器Kのリクエストスイッチを操作することで携帯器Kから送信されるID情報の受信をトリガーとして行われる。あるいは、認証部50からアンテナ30を介して送信されるID要求信号に応答して携帯器Kから送信されるID情報の受信をトリガーとして行われてもよい。
【0038】
ロック駆動部60は、ドアロック装置3と接続されており、ドア制御部80により制御されて動作する。ロック駆動部60は、ドアロック装置3を駆動することで、ロック状態とロック解除状態とを切り替えることができる。
【0039】
ドア駆動部70は、モーター等のアクチュエーターと、駆動ケーブル等の駆動機構とを備えている。ドア駆動部70は、アクチュエーターにおいて発生する駆動力を、駆動機構を介してスライドドア2へと伝達し、これにより、スライドドア2を開方向又は閉方向に移動させる。
【0040】
ドア制御部80は、車両用ドア開閉装置1を統括的に制御するものである。ドア制御部80は、センサー入力部40を介してモーション検知装置20から入力される情報、及び認証部50から入力される情報に基づいて、ロック駆動部60及びドア駆動部70を制御することにより、スライドドア2の開閉を制御する。ドア制御部80としては、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェースを主体に構成されたマイクロコンピュータを用いることができる。
【0041】
以下、本実施形態に係るモーション検知装置20の詳細について説明する。まず、
図4を参照し、モーション検知装置20によるスワイプ操作の検知概念について説明する。
図4において、(a)は、操作ハンドル12に対するスワイプ操作とシールド電極22との関係を示す説明図であり、(b)は、スライドドア2の閉方向にスワイプ操作を行った際の静電容量(C)の変化と時間(Time)との関係を示すものである。ここで、基準値baseは、ユーザーが操作ハンドル12に接触していない、又はユーザーが操作ハンドル12に接近していない状態におけるセンサー電極21の静電容量に相当する。
【0042】
本実施形態では、スライドドア2を開閉する場合、操作ハンドル12に対して、スライドドア2の開閉方向にスワイプ操作を行う必要がある。例えば、スライドドア2の閉方向にスワイプ操作を行った場合、ユーザーの指は、操作ハンドル12の表面上をその長手方向に沿って後から前に向かう動きとなる。この際、ユーザーの指は、シールド電極22の開口部22aと、境界部22bとを交互に通り過ぎる。
【0043】
シールド電極22の開口部22aにユーザーの指が存在する場合には、センサー電極21に対してユーザーの指が結合するため、静電容量は基準値baseに比べて大きな値を示す。一方、境界部22bにユーザーの指が存在する場合には、センサー電極21に対して、ユーザーの指よりもセンサー電極21側に存在する境界部22bが結合するため、センサー電極21と指との間に形成される電界はその多くが規制される。これにより、静電容量は基準値baseから変化するものの、開口部22aに指が存在する場合と比べて小さな値を示す。したがって、スワイプ操作に従って指が遷移した場合の静電容量の変化には、開口部22aに対応する極大側ピークと、境界部22bに対応する極小側ピークとがそれぞれ現れ、また、極大側ピークと極小側ピークとの間に大きな振幅が現れる。
【0044】
加えて、複数の開口部22aは、操作ハンドル12の後から前にかけて、開口幅Hが段階的に小さくなるように設定されている。したがって、ユーザーの指が操作ハンドル12の前方に進むにつれ、極大側ピーク及び極小側ピークは相対的に小さくなっていく傾向を有している。
【0045】
このように、後から前にスワイプ操作を行った場合には、極大側ピーク及び極小側ピークが交互に出現し、かつ、このピークが漸次小さくなるパターンが現れる。したがって、このような静電容量の変化のパターンから、操作ハンドル12に対する後から前へのスワイプ操作を検知することができる。
【0046】
これに対して、スライドドア2の開方向にスワイプ操作を行った場合には、ユーザーの指は、操作ハンドル12の表面上をその長手方向に沿って前から後へと向かう動きとなる。前から後にスワイプ操作を行った場合には、極大側ピーク及び極小側ピークが交互に出現し、かつ、このピークが漸次大きくなるパターンが現れる。したがって、このような静電容量の変化のパターンから、操作ハンドル12に対する前から後へのスワイプ操作を検知することができる。
【0047】
つぎに、本実施形態に係るモーション検知装置20によるスワイプ操作の検知動作について説明する。ここで、
図5は、モーション検知装置20によるスワイプ操作の検知動作を示すフローチャートである。
図6は、スワイプ操作に伴う静電容量の変化を示す説明図である。この
図6において、(a)は、後から前へのスワイプ操作を行った際の静電容量の変化を示し、(b)は、前から後へのスワイプ操作を行った際の静電容量の変化を示している。このフローチャートに示す処理は、センサー電極21の静電容量が基準値baseよりも所定の閾値以上変化したことをトリガーとして、制御基板23によって実行される。
【0048】
まず、ステップS1において、制御基板23は、センサー電極21の静電容量の推移を所定の期間にわたりモニタリングし、静電容量の推移に現れるピークを検出する。制御基板23は、ピークを検出する度に、そのピークに固有のラベルを付与し、その情報を記憶する。
図6に示す例では、検出されたピークに対して、所定のラベル(・・・Pn-4,Pn-3,Pn-2,Pn-1,Pn,Pn+1,Pn+2・・・)が時系列に付与された状態が示されている。
【0049】
ステップS2において、制御基板23は、ピーク比較処理を行う。このピーク比較処理では、ステップS1において検出されたピークの中から任意のピークが抽出され、その抽出されたピークについて大小関係が比較される。抽出するピークの数は任意であるが、本実施形態では、4つのピークPn-3,Pn-2,Pn-1,Pnを抽出している。これらのピークPn-3,Pn-2,Pn-1,Pnのうち、ピークPn-2,Pnは極大側ピークに対応し、ピークPn-3,Pn-1は極小側ピークに対応している。
【0050】
ステップS3において、制御基板23は、比較対象となるピークPn-3,Pn-2,Pn-1,Pnが抽出されたか否かを判断する。ユーザーが操作ハンドル12に触れたものの、その後、スワイプ操作を行わずに静止しているような場合には、静電容量は一定の値(≠基準値base)を推移し続ける。そのため、比較対象となるピークPn-3,Pn-2,Pn-1,Pnが抽出されないことがある。同様に、ユーザーが操作ハンドル12に触れたものの、その後、操作ハンドル12から手を離したような場合には、静電容量は一定の値(=基準値base)を推移し続ける。そのため、比較対象となるピークPn-3,Pn-2,Pn-1,Pnが抽出されないことがある。そこで、ステップS3の判断により、スワイプ操作以外のユーザー操作を識別している。ピークPn-3,Pn-2,Pn-1,Pnが抽出されている場合には、ステップS3において肯定判定され、ステップS4に進む。一方、ピークPn-3,Pn-2,Pn-1,Pnが抽出されていない場合には、ステップS3において否定判定され、ステップS8に進む。
【0051】
ステップS4において、制御基板23は、比較処理されたピークPn-3,Pn-2,Pn-1,Pnについて、以下に示す3つの条件(第1条件)が成立したか否かを判断する。具体的には、(1)極大側ピークPn-2,Pnが経時的に低下している(Pn-2>Pn)、(2)極小側ピークPn-3,Pn-1が経時的に低下している(Pn-3>Pn-1)、(3)時系列的に前に位置する極小側ピークPn-1に比べて、その後に位置する極大側ピークPnが判定値αよりも大きい(Pn>Pn-1+α)、ことである。この判定値αは、極小側ピークPn-1と、極大側ピークPnとが一定値以上乖離していることを判断するための値であり、実験やシミュレーションを通じて最適値が予め設定されている。
【0052】
後から前へのスワイプ操作が行われた場合、その静電容量の変化は、極大側ピーク及び極小側ピークが交互に出現し、かつ、このピークが漸次小さくなるパターンとなるため、前述の第1条件を具備する。そこで、制御基板23は、第1条件に基づいて、後から前へのスワイプ操作に対応するパターンであるか否かを判断している。ステップS4において肯定判定された場合、すなわち、第1条件が成立している場合には、ステップS5に進む。一方、ステップS4において否定判定された場合、すなわち、第1条件が成立していない場合には、ステップS6に進む。
【0053】
ステップS5において、制御基板23は、ユーザー操作を、後から前へのスワイプ操作と判断する。
【0054】
ステップS6において、制御基板23は、比較処理されたピークPn-3,Pn-2,Pn-1,Pnについて、以下に示す3つの条件(第2条件)が成立したか否かを判断する。具体的には、(1)極大側ピークPn-2,Pnが経時的に上昇している(Pn-2<Pn)、(2)極小側ピークPn-3,Pn-1が経時的に上昇している(Pn-3<Pn-1)、(3)時系列的に前に位置する極小側ピークPn-1に比べて、その後に位置する極大側ピークPnが判定値αよりも大きい(Pn>Pn-1+α)、ことである。
【0055】
前から後へのスワイプ操作が行われた場合、その静電容量の変化は、極大側ピーク及び極小側ピークが交互に出現し、かつ、このピークが漸次大きくなるパターンとなるため、前述の第2条件を具備する。そこで、制御基板23は、第2条件に基づいて、前から後へのスワイプ操作に対応するパターンであるか否かを判断している。ステップS6において肯定判定された場合、すなわち、第2条件が成立している場合には、ステップS7に進む。一方、ステップS6において否定判定された場合、すなわち、第2条件が成立していない場合には、ステップS8に進む。
【0056】
ステップS7において、制御基板23は、ユーザー操作を、前から後へのスワイプ操作と判断する。
【0057】
ステップS8において、制御基板23は、ユーザーの操作を、非スワイプ操作と判断する。ユーザーが操作ハンドル12に触れたものの、その後、スワイプ操作を行わずに静止しているような場合であっても、ユーザーの静止状態によっては、ピークPn-3,Pn-2,Pn-1,Pnが抽出されることがある。ただし、この場合には、ピークPn-3,Pn-2,Pn-1,Pnは概ね同じ値となるため、第1条件又は第2条件を具備するには至らない。また、ユーザーがスワイプ方向を開始したものの、その操作を途中でやめたり、途中で方向を反転させたりした場合、あるいは、操作ハンドル12に対して指を近づけたり離したりする場合には、ピークPn-3,Pn-2,Pn-1,Pnは抽出されるものの、第1条件又は第2条件を具備するには至らない。そこで、ステップS8において、第1条件又は第2条件に当てはまらないユーザー操作を、非スワイプ操作と判断している。
【0058】
このような一連の処理を通じて、制御基板23は、操作ハンドル12に対してなされたスワイプ操作及びその方向を検知する。
【0059】
つぎに、本実施形態に係る車両用ドア開閉装置1によるスライドドア2の開閉動作について説明する。ここで、
図7は、車両用ドア開閉装置1によるスライドドア2の開閉動作の流れを示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、ドア制御部80によって実行される。
【0060】
まず、ステップS10において、ドア制御部80は、モーション検知装置20からの入力を待機する待機処理を行う。モーション検知装置20からの入力があると、待機処理を終了し、ステップS11に進む。
【0061】
ステップS11において、ドア制御部80は、モーション検知装置20からの入力に基づいて、スワイプ操作が行われたか否かを判断する。スワイプ操作が行われた場合には、ステップS11において肯定判定され、ステップS12に進む。一方、スワイプ操作が行われていない場合には、ステップS11において否定判定され、ステップS10に戻る。
【0062】
ステップS12において、ドア制御部80は、スワイプ操作の方向が禁則条件を具備するか否かを判断する。例えば、スライドドア2が全閉である場合には、スライドドア2を閉方向へと移動させることができない。そのため、スライドドア2が全閉である場合には、閉方向へのスワイプ操作、すなわち、後から前へのスワイプ操作は禁則条件とされる。同様に、スライドドア2が全開である場合には、スライドドア2を開方向へと移動させることができない。そのため、スライドドア2が全開である場合には、開方向へのスワイプ操作、すなわち、前から後へのスワイプ操作は禁則条件とされる。そこで、ドア制御部80は、スライドドア2の状態と、スワイプ操作の方向とに基づいて、禁則条件を具備するか否かを判断する。
【0063】
ステップS12において肯定判定された場合、すなわち、スワイプ操作の方向が禁則条件を具備する場合には、ステップS10に戻る。一方、ステップS12において否定判定された場合、すなわち、スワイプ操作の方向が禁則条件を具備しない場合には、ステップS13に進む。
【0064】
ステップS13において、ドア制御部80は、スワイプ操作の方向に基づいてドア駆動部70を制御する。これにより、ドア駆動部70によりスライドドア2が駆動され、スライドドア2がスワイプ操作の方向に従って移動させられる。例えば、後から前へのスワイプ操作がなされると、ドア制御部80は、閉方向へのスワイプ操作があったと判断し、スライドドア2を閉方向へと制御する。一方、前から後へのスワイプ操作がなされると、ドア制御部80は、開方向へのスワイプ操作があったと判断し、スライドドア2を開方向へと制御する。
【0065】
ステップS14において、ドア制御部80は、モーション検知装置20からの入力に基づいて、操作ハンドル12に対してユーザー操作が行われたか否かを判断する。このステップS14の判断は、スワイプ操作に拘わらず、非スワイプ操作を含む全てのユーザー操作が対象となる。
【0066】
ステップS14において肯定判定された場合、すなわち、操作ハンドル12に対してユーザー操作が行われた場合には、ステップS15に進む。一方、ステップS14において否定判定された場合、すなわち、操作ハンドル12に対してユーザー操作が行われていない場合には、ステップS16に進む。
【0067】
ステップS15において、ドア制御部80は、ドア駆動部70を制御して、スライドドア2を停止させる。
【0068】
ステップS16において、ドア制御部80は、スライドドア2が全閉又は全開へと至ったか否かを判断する。具体的には、閉方向へと移動するスライドドア2が全閉に至った場合、あるいは、開方向へと移動するスライドドア2が全開に至った場合には、ステップS16において肯定判定され、本ルーチンを終了する。一方、スライドドア2が全閉又は全開へと至っていない場合には、ステップS16において否定判定され、ステップS14に戻る。
【0069】
このような一連の処理を通じて、ドア制御部80は、スライドドア2の開閉動作を制御する。
【0070】
なお、これらの一連の処理の説明において、スライドドア2が全閉である場合には、ドアロック装置3がロック解除状態にあることを前提としている。ただし、全閉のスライドドア2がロック状態にある場合であっても、その処理の流れは基本的に同様であるが、以下の処理が追加される点において相違する。具体的には、ドア制御部80は、待機処理(ステップS10)を終了した後に、認証部50を制御して認証処理を行い、その認証が成立した後にステップS11以降の処理に進む。また、ドア制御部80は、ステップS13において、ドア駆動部70の制御に先立ち、ロック駆動部60を制御してドアロック装置3をロック解除状態へと切り替える。あるいは、スワイプ操作が行われた段階で(ステップS11で肯定判定された段階で)、認証部50を制御して認証処理を行ってもよい。
【0071】
また、スライドドア2が全閉まで移動させられた状態においては、携帯器K等のリクエストスイッチの操作を通じて、ドアロック装置3をロック状態へと切り替えることができる。
【0072】
このように本実施形態において、モーション検知装置20は、操作ハンドル12(表カバー13)とセンサー電極21との間に配置され、それぞれ間隔をあけて配列された複数の開口部22aを備えるシールド電極22を備えている。この場合において、複数の開口部22aは、操作ハンドル12の長手方向(開口部22aの配列方向)における開口幅Hが、当該長手方向にかけて異なっている。そして、シールド電極22において隣り合う開口部22a同士を隔てる複数の境界部22bによって、操作ハンドル12へ接触又は接近する指とセンサー電極21との間に形成される電界を規制する複数のシールド部が構成されている。
【0073】
この構成によれば、異なる開口幅Hからなる複数の開口部22aを有するシールド電極22を備えることで、電界を規制する複数のシールド部を実現することができる。この複数のシールド部の存在により、ユーザーが操作ハンドル12をスワイプ操作した場合、そのスワイプ操作の方向毎に、静電容量の変化に固有のパターンが現れる。したがって、この固有のパターンを利用することで、スワイプ操作の方向を検知することができる。これにより、スワイプ操作の方向検知を簡素かつ安価な構成で行うことができる。
【0074】
また、本実施形態において、複数の開口部22aは、開口部22aの配列方向にかけて開口幅Hが段階的に小さくなるように設定されている。
【0075】
この構成によれば、スワイプ操作の方向によって、異なるパターンの静電容量変化を作出することができる。これにより、異なる方向のスワイプ操作を適切に切り分けることができるので、検知精度の向上を図ることができる。
【0076】
なお、本実施形態では、開口部22aの配列方向にかけて開口幅Hが段階的に小さくなるように設定している。しかしながら、操作ハンドル12の長手方向にかけて相違する開口幅Hに起因して、スワイプ操作の方向毎に、静電容量変化のパターンに相違が現れるのであれば、開口幅Hの態様は、上述したものに限定されない。ただし、この場合にあっても、開口部22aの配列方向における中間位置を境に、静電容量の変化のパターンが非対称となるように、個々の開口部22aの開口幅Hを設定することが好ましい。また、静電容量変化のパターンに相違が現れるのであれば、複数の開口部22aのなかに、同一の開口幅Hとなる開口部22aが複数存在するものであってもよい。
【0077】
また、本実施形態において、シールド電極22は、導電性を備えたシート状の部材から構成され、センサー電極21に対して離間した状態で配置されている。
【0078】
ユーザーの指が境界部22bに存在する場合には、ユーザーの指よりもセンサー電極21側に存在する境界部22bがセンサー電極21に結合するため、センサー電極21と指との間に形成される電界はその多くが規制される。これにより、静電容量は基準値baseから変化するものの、開口部22aに指が存在する場合と比べ、小さな値を示す。したがって、開口部22aから境界部22bへと指が遷移した際には、開口部22aに対応する極大側ピークと、境界部22bに対応する極小側ピークとが大きな振幅を伴って現れることとなる。本実施形態では、このような大きな振幅を伴う特徴的なパターンを利用することで、より精度よく検知を行うことが可能となる。
【0079】
例えば、スワイプ操作の方向に対応して固有のパターンを出力させる方法としては、操作ハンドル12の長手方向に沿ってセンサー電極21に複数のスリットを設けることが考えられる。これにより、スワイプ操作の方向毎に、固有のパターンを出力させることは可能である。しかしながら、この場合、ユーザーの指がスリットに存在する場合であっても、スリット周囲のセンサー電極21が指と結合することとなり、センサー電極21の電界は規制されない。そのため、シールド電極22を用いる場合と比べ、静電容量は低下しない。その結果、静電容量の変化のパターンは、非スリットに対応する極大側ピークと、スリットに対応する極小側ピークとが近接し、その振幅も小さいものとなる。また、このような小さな振幅を伴うパターンであれば、ユーザーが指を近づけたり遠ざけたりすることで、類似のパターンを作出することができる。そのため、このような動作をスワイプ操作と誤検知する可能性がある。
【0080】
この点、本実施形態によれば、開口部22aに対応する極大側ピークと、境界部22bに対応する極小側ピークとが大きな振幅を伴って現れることとなるので、この振幅を要件とすることで、スワイプ操作を適切に検知することが可能となる。また、本実施形態に示すような振幅の大きいパターンをユーザーが意図的に作出することは困難であるため、誤検知の発生も防ぐことができる。
【0081】
また、本実施形態において、モーション検知装置20は、センサー電極21の静電容量の変化に基づき、操作ハンドル12に対してなされたユーザー操作の方向を検知する制御基板23(検知制御部)をさらに有している。
【0082】
この構成によれば、制御基板23で静電容量の変化を捉えることができるので、制御基板23においてスワイプ操作の方向を適切に検知することができる。
【0083】
また、本実施形態において、制御基板23は、極大側ピーク及び極小側ピークの経時的な推移、及び隣り合う極大側ピークと極小側ピークとの間の振幅に基づいて、操作ハンドル12に対してなされたユーザー操作の方向を検知している。
【0084】
この構成によれば、シールド電極22に起因する静電容量の変化のパターンを適切に識別することができるので、スワイプ操作の方向を適切に検知することができる。
【0085】
なお、本実施形態では、シールド電極22の内部にスリットを設けることで、開口部22aを形成している。しかしながら、開口部22aは、板厚方向に貫通した開口領域として存在していればよく、その構造はスリットに限定されない。例えば、シールド電極22を櫛歯状等に切り欠いた構造であってもよいし、複数のシールド電極22を間隔を隔てて配列した構造であってもよい。
【0086】
また、本実施形態では、シールド電極22として、導電性を備えたシート状の部材を例示した。しかしながら、センサー電極21により形成される電界を遮蔽する機能を有するのであれば、不導体のシートから構成されてもよい。
【0087】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態に係る車両用ドア開閉装置1について説明する。第2の実施形態に係る車両用ドア開閉装置1が第1の実施形態のそれと相違する点は、モーション検知装置20に適用されるシールド部の構成である。以下、第1の実施形態と重複する構成については省略し、相違点を中心に説明を行う。
【0088】
図8は、第2の実施形態に係るモーション検知装置20の構成を示す説明図である。同図において、(a)は、モーション検知装置20の要部を模式的に示す断面図であり、(b)は、モーション検知装置20の構成を模式的に示す正面図である。
【0089】
ドアハンドル装置10に搭載されるモーション検知装置20は、センサー電極21及び制御基板23を主体に構成されている。センサー電極21及び制御基板23の各機能は、第1の実施形態と同様である。
【0090】
本実施形態の特徴の一つとして、操作ハンドル12には、モーション検知装置20の一部を構成する複数のブロック部15が設けられている。具体的には、操作ハンドル12の表カバー13には、複数のブロック部15が設けられている。これらのブロック部15は、合成樹脂製の表カバー13と一体に形成されている。個々のブロック部15は、表カバー13とセンサー電極21との間隙を満たすように、表カバー13の裏面側に設けられている。
【0091】
複数のブロック部15は、操作ハンドル12の長手方向に沿って、それぞれ間隔をあけて配列されている。隣り合うブロック部15同士の間には、空気層からなる隙間部16が設けられている。これらのブロック部15は、その配列方向、すなわち、操作ハンドル12の長手方向におけるブロック幅Lが、その長手方向にかけてそれぞれ異なるように設定されている。
【0092】
本実施形態において、複数のブロック部15は、そのブロック幅Lが、操作ハンドル12の長手方向のうち一方方向(図中右方向)にかけて段階的に小さくなるように設定されている。
図8に示す例では、最も後方に位置するブロック部15のブロック幅Lが最も大きく、前方のブロック部15に遷移するにしたがって、そのブロック幅Lが順次小さくなり、最も前方に位置するブロック部15のブロック幅Lが最も小さくなる。
【0093】
隣り合うブロック部15同士を隔てる隙間部16のそれぞれは、操作ハンドル12へ接触する指とセンサー電極21との間に形成される電界を規制するシールド部として機能する。すなわち、電界の規制機能は、隙間部16において選択的に実現される。
【0094】
このような構成のモーション検知装置20の詳細について説明する。第1の実施形態と同様、スライドドア2を開閉する場合、操作ハンドル12に対して、スライドドア2の開閉方向にスワイプ操作を行う必要がある。例えば、スライドドア2の閉方向にスワイプ操作を行った場合、ユーザーの指は、操作ハンドル12の表面上をその長手方向に沿って後から前に向かう動きとなる。この際、ユーザーの指は、ブロック部15と、隙間部16とを交互に通り過ぎることとなる。
【0095】
ユーザーの指がブロック部15に存在する場合には、指とセンサー電極21との間には、空気と比べて誘電率の大きい合成樹脂製のブロック部15が存在する。この場合、静電容量は基準値baseに比べて大きな値を示す。一方、隙間部16にユーザーの指が存在する場合には、指とセンサー電極21との間には、空気層(隙間部16)が存在する。誘電率の小さい空気層が存在する隙間部16では、ブロック部15と比べ、センサー電極21と指との間に形成される電界が規制される。これにより、静電容量は基準値baseよりも大きくなるものの、ブロック部15に指が存在する場合と比べて小さな値を示す。したがって、スワイプ操作に従って指が遷移した場合の静電容量の変化には、ブロック部15に対応する極大側ピークと、隙間部16に対応する極小側ピークとがそれぞれ現れ、また、極大側ピークと極小側ピークとの間に大きな振幅が現れる。
【0096】
加えて、複数のブロック部15は、操作ハンドル12の後から前にかけて、ブロック幅Lが段階的に小さくなるように設定されている。したがって、ユーザーの指が操作ハンドル12の前方に進むにつれ、極大側ピーク及び極小側ピークは相対的に小さくなっていく傾向を有している。
【0097】
このように、後から前にスワイプ操作を行った場合には、極大側ピーク及び極小側ピークが交互に出現し、かつ、このピークが漸次小さくなるパターンが現れる。したがって、このような静電容量の変化のパターンから、操作ハンドル12に対する後から前へのスワイプ操作を検知することができる。
【0098】
これに対して、スライドドア2の開方向にスワイプ操作を行った場合には、ユーザーの指は、操作ハンドル12の表面上をその長手方向に沿って前から後へと向かう動きとなる。前から後にスワイプ操作を行った場合には、極大側ピーク及び極小側ピークが交互に出現し、かつ、このピークが漸次大きくなるパターンが現れる。したがって、このような静電容量の変化のパターンから、操作ハンドル12に対する前から後へのスワイプ操作を検知することができる。
【0099】
このように本実施形態において、モーション検知装置20は、操作ハンドル12(表カバー13)とセンサー電極21との間隙を満たすように、表カバー13の裏面に設けられる複数のブロック部15を備えている。この場合において、複数のブロック部15は、それぞれ間隔をあけて配列されて、操作ハンドル12の長手方向(ブロック部15の配列方向)におけるブロック幅Lが、当該長手方向にかけてそれぞれ異なっている。そして、隣り合うブロック部15同士を隔てる隙間部16によって、操作ハンドル12へ接触又は接近する指とセンサー電極21により形成される電界を規制するシールド部が構成されている。
【0100】
この構成によれば、ブロック幅Lの異なる複数のブロック部15を備えることで、電界を規制する複数のシールド部を実現することができる。この複数のシールド部の存在により、ユーザーが操作ハンドル12をスワイプ操作した場合、そのスワイプ操作の方向毎に、静電容量の変化に固有のパターンが現れる。したがって、この固有のパターンを利用することで、スワイプ操作の方向を検知することができる。これにより、スワイプ操作の方向検知を簡素かつ安価な構成で行うことができる。
【0101】
また、この構成によれば、複数のブロック部15の先端が、センサー電極21へと当接するので、個々のブロック部15によりセンサー電極21が押さえ付けることができる。これにより、操作ハンドル12内でセンサー電極21を固定することができ、センサー電極21の位置ずれや移動を抑制することができる。
【0102】
なお、本実施形態では、複数のブロック部15を表カバー13と一体に形成しているが、これらを別々の部品として形成してもよい。両者を一体に形成した場合には、表カバー13の組み付けと同時に複数のブロック部15を組み付けることができるので、組付性の向上を図ることができる。一方、両者を別体で形成した場合には、表カバー13の厚肉化を抑制することができるので、操作ハンドル12の意匠面に対する成形性の向上を図ることができる。
【0103】
また、本実施形態では、複数のブロック部15同士を隔てる隙間部16を空気層として構成している。しかしながら、隙間部16に、ブロック部15と誘電率が異なる部材を充填するように構成してもよい。
【0104】
以上、本実施形態に係るモーション検知装置及びハンドル装置について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その発明の範囲内において種々の変形が可能である。
【0105】
ハンドル装置は、車両のスライドドアに搭載されたドアハンドル装置に適用する以外にも、例えば、建物や設備に敷設されるスライド式ドアのドアハンドル装置に適用してもよいし、さらに、操作対象を操作する種々のハンドル装置に適用することもできる。また、モーション検知装置は、車両のドアハンドル装置に適用する以外にも、操作部に対するユーザー操作を検知する種々の用途に適用することができる。
【0106】
また、本実施形態では、直線的な動きを伴うスワイプ操作について説明したが、本発明は、操作部に対して行われる、方向を伴うユーザー操作を検知するものであれば、その態様は限定されない。例えば、操作部がL字状に曲がった形状を有する場合に、この操作部の形状に沿って、いずれかの方向(一端側から他端側への方向又はその逆の方向)に指を動かすような操作についても適用可能である。
【符号の説明】
【0107】
1 車両用ドア開閉装置
2 スライドドア
3 ドアロック装置
10 ドアハンドル装置
11 ハンドルベース
12 操作ハンドル
12a 握り部
12b 中空部
13 表カバー
14 裏カバー
15 ブロック部
16 隙間部
20 モーション検知装置
21 センサー電極
22 シールド電極
22a 開口部
22b 境界部
23 制御基板
24 スペーサー
25 スペーサー
30 アンテナ
40 センサー入力部
50 認証部
60 ロック駆動部
70 ドア駆動部
80 ドア制御部
K 携帯器