(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】整流シート及び空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 13/08 20060101AFI20220426BHJP
F24F 13/06 20060101ALI20220426BHJP
D04H 3/011 20120101ALI20220426BHJP
D04H 3/04 20120101ALI20220426BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20220426BHJP
B60H 1/34 20060101ALN20220426BHJP
【FI】
F24F13/08 A
F24F13/06 A
D04H3/011
D04H3/04
B32B5/26
B60H1/34 651Z
(21)【出願番号】P 2018096545
(22)【出願日】2018-05-18
【審査請求日】2021-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】501270287
【氏名又は名称】帝人フロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】玉置 浩
(72)【発明者】
【氏名】田中 正
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 章
(72)【発明者】
【氏名】本間 健
(72)【発明者】
【氏名】岡 真作和
(72)【発明者】
【氏名】石渡 豊明
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 雅斗
(72)【発明者】
【氏名】勝見 佳央
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-266602(JP,A)
【文献】特開2013-154583(JP,A)
【文献】特開2014-000710(JP,A)
【文献】特開2004-148970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/08
F24F 13/06
D04H 3/011
D04H 3/04
B32B 5/26
B60H 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流シートを通して室内空間に空気を供給する空調システムにおいて、室内空間とは反対側の空間内で、整流シートに対して空気が平行に流入されて用いられる、
車両空調用整流シートであって、
前記整流シートは第1整流シートを有し、前記第1整流シートはA層とB層とからなる不織布積層体であって、A層はトウ開繊されているポリエステル長繊維ウェブであり、B層はポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維及びナイロン繊維からなる群より1種又は複数種選択されるバーストファイバーウェブであり、B層はその目付が20~100g/m
2
かつ厚さが0.1mm~2mmである、車両空調用整流シート。
【請求項2】
前記整流シートが第1整流シートに加えて第2整流シートを有し、
前記第2整流シートが、繊維の縦方向/横方向比(T/W比)が1.5以上である繊維構造体からなり、該繊維構造体が、主体繊維と熱接着性短繊維とが重量比率で90/10~10/90となるように混綿され、前記熱接着性短繊維同士が交差した状態で熱融着された固着点および/または前記熱接着性短繊維と前記主体繊維とが交差した状態で熱融着された固着点とが散在してなるものである、請求項1に記載の
車両空調用整流シート。
【請求項3】
さらに、L/D比が1.1~10の開口パネルを有す、請求項
2に記載の
車両空調用整流シート。
【請求項4】
室内空間の反対側から視て、第1整流シート、開口パネル、第2整流シートの順で配置される、請求項
3に記載の
車両空調用整流シート。
【請求項5】
車両空調用整流シートを通して室内空間に空気を供給する
車両空調システムであって、室内空間とは反対側の空間において、
請求項1乃至4のいずれかに記載の車両空調用整流シートに対して空気が平行に流入される
車両空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の空調に用いられる整流シート及び空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の本来の機能である移動手段の他に、車内を室内空間とみなして快適性を追求する動きがある。
【0003】
特許文献1には、三次元的な通気形状を形成する三次元通気構造体と、通風路の下面部に開口し、空調風を車室内下方へ向かって吹き出す多数の空気吹出口とを備える車両空調用天井吹出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるような空調装置は、車室天井部の広い範囲から比較的均一に空気を送り出すことができるものの、複雑な構造である三次元通気構造体を必要とし、また、ユーザーによっては、吹出口から空気が直接当たることを不快に感じる場合もある。
【0006】
よって、本発明は、作製が容易で、天井や壁等の面から均一に空気を送り出せる整流シート及び空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の構成を有する整流シートに対して、室内空間とは反対側の空間内で空気を平行に流入させることで、整流シート全面から均一に空気を室内空間に送り出せることを見出し、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下の発明を包含する。
[1]整流シートを通して室内空間に空気を供給する空調システムにおいて、室内空間とは反対側の空間内で、整流シートに対して空気が平行に流入されて用いられる、整流シート。
[2]前記整流シートが、第1整流シートを有し、
前記第1整流シートが、A層とB層とからなる不織布積層体であって、A層はトウ開繊されているポリエステル長繊維ウェブであり、B層は、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維及びナイロン繊維からなる群より1種又は複数種選択されるバーストファイバーウェブである、[1]に記載の整流シート。
[3]前記整流シートが、第2整流シートを有し、
前記第2整流シートが、繊維の縦方向/横方向比(T/W比)が1.5以上である繊維構造体からなり、該繊維構造体が、主体繊維と熱接着性短繊維とが重量比率で90/10~10/90となるように混綿され、前記熱接着性短繊維同士が交差した状態で熱融着された固着点および/または前記熱接着性短繊維と前記主体繊維とが交差した状態で熱融着された固着点とが散在してなるものである、[1]に記載の整流シート。
[4][2]に記載の第1整流シートと、[3]に記載の第2整流シートとを有す、整流シート。
[5]前記整流シートが、更に、L/D比が1.1~10の開口パネルを有す、[4]に記載の整流シート。
[6]前記整流シートが、室内空間の反対側から視て、第1整流シート、開口パネル、第2整流シートの順で配置される、[5]に記載の整流シート。
[7]整流シートを通して室内空間に空気を供給する空調システムであって、
室内空間とは反対側の空間において、整流シートに対して空気が平行に流入される空調システム。
[8]車両に用いられる、[7]に記載の空調システム。
【発明の効果】
【0008】
本発明の整流シート及び空調システムを用いれば、整流シートを設置した全面から冷気や温風を室内空間に送りだすことができ、エアコン風による不快感を解消し、快適な室内空間が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の整流シート及び空調システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
[整流シート]
本発明は、
図1に示すように、整流シート2を通して室内空間9に空気8を供給する空調システム1において、室内空間9とは反対側の空間10(以下、本空間は「整流シートの裏側の空間」とも称す)内で、整流シート2に対して空気7が平行に流入されて用いられる整流シートである。本発明の整流シートを用いることで、送風口から局部的に出る空気を直接室内区間に送り出すことなく、整流シートの裏側の空間において面方向に広く均一に拡散させ、整流シートを通して空気を微量ずつ室内に送り込むことが可能となる。本発明において室内空間は、自動車や鉄道車両等の車両の内部空間や、住居等の建物の内部空間の他、人が活動したり、休養したりする居室全般を意味し、特に限定されない。
【0011】
本発明の整流シートは、上述のように、シートに対して空気を平行に流入させることで、シートの面全体から均一に室内空間に空気を供給することができるシートを意味し、斯かる機能を有する構造であればいずれでも構わないが、空孔を有するシート、特に繊維状シートを有すると整流効果が高まる。
【0012】
本発明における繊維状シートは、繊維を原料にして形成されたシート状素材であれば、如何なる種類のものでも構わないが、好ましくは織編物、不織布、フェルト等の布帛であり、特に不織布が好ましい。織物組織としては平織、斜文織、朱子織ジャガード織等を用いることができ、編物組織としては天竺、両面編、ハーフトリコット編、ダブルラッセル編等、丸編や経編の各種編組織を用いることができる。
【0013】
本発明における繊維状シートは、送り込む風量にも依るが、通常、通気度が5~700cc/cm2・sec程度であればよい。ここでいう通気度とは、繊維状シートの、一定圧力差の元で、単位面積、単位時間あたりに空気が通過する量を示すものである。繊維状シートの通気度が700cc/cm2・secを超える場合、繊維状シートを通った空気が面方向に拡散されることなく局部的に繊維状シートを通過するため、室内で不快な風として感じると共に、室内を均一に空調することが困難となる。繊維状シートの通気度が5cc/cm2・sec未満であると、室内に送り込まれる空気が繊維状シートによって遮断されるため好ましくない。かかる通気度の繊維状シートを通過した空気は、繊維状シートを通過後に0.05~0.5m/s程度の風速に風速制御できると快適性がより向上する。
【0014】
本発明における繊維状シートは、単位面積あたりの重量が35~800g/m2が好ましい。ここで、単位面積あたりの重量とは、繊維状シートの単位面積あたりにどれだけの繊維量が充填されているか示している。
【0015】
本発明における繊維状シートには、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維等の合成繊維、綿、麻、ウール等の天然繊維、キュプラレーヨン、ビスコースレーヨン、リヨセル等の再生繊維等、任意の繊維を用いることができる。
【0016】
本発明における繊維状シートでは、特に限定されないが、50~1000デシテックス程度の繊度のものを用いることができる。
【0017】
[第1整流シート]
本発明の整流シートは、整流効果を発揮する構造として、第1整流シートを有することができる。第1整流シートは、A層とB層とからなる不織布積層体であって、A層はトウ開繊されているポリエステル長繊維ウェブであり、B層は、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維及びナイロン繊維からなる群より1種又は複数種選択されるバーストファイバーウェブであることを特徴とする。より具体的には、メルトブロー法或いはスパンボンド法等の公知の方法で形成すればよい。長繊維ウェブのA層は、限定されないが、通常0.1dtex~10dtex程度であり、目付が5g/m2~100g/m2、好ましくは10g/m2~60g/m2になされ、厚さが0.01mm~5mm、好ましくは0.05mm~1mmになされるのである。
【0018】
B層には、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ジエン系重合体、ビニル系重合体等の熱可塑性樹脂が挙げられ、これらを単独或いは複数種類を適宜組み合わせて用いてもよい。とりわけ複数種類のものを組み合わせて使用した場合、各熱可塑性樹脂の特性を生かした不織布を得ることができる。
【0019】
これらの熱可塑性樹脂から繊維ウェブのA層、B層を形成する方法としては、バーストファイバー法、トウ開繊法、スパンボンド法、メルトブロー法、乾式法、湿式法及びウォーターパンチ法等が挙げられる。A層及びB層を積層体として形成する場合はバーストファイバー法やトウ開繊法を用い、その後工程である積層延展工程において前工程で製造した繊維シートを単一種類或いは複数種類のものを適宜積層させて任意の積層体に作成するとよい。
【0020】
更にこのB層は、例えば、ポリエチレンテレフタレートとポリプロピレンを用いて複合積層体となすのである。この場合、ポリエチレンテレフタレートをトウ開繊法及び又はバーストファイバー法により繊維シートとなし、ポリプロピレンをバーストファイバー法にて繊維シートとなして、これらを積層延展工程に於いて交互に或いは変則的に、具体的には、ポリプロピレン繊維シート1枚或いは2枚とポリエチレンテレフタレート繊維シート1枚或いは2枚等のように、繰返し重ね合わせて熱接着してB層を複合積層体に形成することができる。作成されたB層は目付が10g/m2~300g/m2、好ましくは20g/m2~100g/m2になされ、厚さが0.01mm~5mm、好ましくは0.1mm~2mmである。
【0021】
延展工程ではカレンダーロールの加熱温度を130~140℃程度となして、ポリプロピレン繊維シートが溶融圧着されて積層体が形成される。即ち、ポリプロピレン繊維シートがバインダーのような役割を果たし、この量を調整することにより、熱接着性の向上、シートの開孔径の低下による通気度の減少、微妙な粉体の洩れ防止等の特性を調整可能となる。
【0022】
また、バーストファイバー法によりポリエチレンテレフタレート樹脂及び/又はポリプロピレン樹脂を溶融して繊維シートを形成する場合、発泡性物質を適宜添加してフィラメント化すれば仕上がり品としての積層体に柔軟性を付与できるものとなる。かかる発泡性物質は、窒素、炭酸ガス、ヘリウム等の気体、ブタン、プロパン等の有機液体、或いはアゾジカルボンアミド、パラトルエンスルフォニールセミカーバジド等の発泡剤から適宜選択すればよい。
【0023】
繊維ウェブのB層に繊維ウェブのA層を積層させるには、金属及びゴムの二本からなる熱カレンダーロール間に通して連続的な押圧接着が行われるようにすることができる。この作業では金属ロール側に繊維ウェブのB層を配し、例えば、設定温度を90℃、通過速度を10~50m/分となして行う。
【0024】
[第2整流シート]
本発明の整流シートは、整流効果を発揮する構造として、第2整流シートを有することができる。第2整流シートは、繊維の縦方向/横方向比(T/W比)が1.5以上である繊維構造体からなり、該繊維構造体が、主体繊維と熱接着性短繊維とが重量比率で90/10~10/90となるように混綿され、前記熱接着性短繊維同士が交差した状態で熱融着された固着点および/または前記熱接着性短繊維と前記主体繊維とが交差した状態で熱融着された固着点とが散在してなるものであることを特徴とする。
【0025】
本発明の繊維構造体に用いられる主体繊維としては、綿、ウール等の天然繊維やカーボン繊維等の無機繊維、セルロース系繊維、アラミド系、ポリオレフィン系、ポリエステル系の合成繊維等、さらには雑綿又は反毛とよばれるリサイクル繊維等も使用できる。なかでも、取り扱い性及びリサイクル性、洗濯性の点より合成繊維が好ましい。特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ-1,4-ジメチルシクロヘキサンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリピバロラクトン、ポリ乳酸(PLA)、ステレオコンプレックスポリ乳酸、ポリオレフィン、またはこれらの共重合体からなる繊維ないしそれら混合体、または上記ポリマー成分のうちの2種類以上からなる複合繊維等を好ましく挙げることができる。かかるポリマー中には、着色剤、各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘分岐剤、艶消し剤、その他各種の改良剤等も必要に応じて配合されていても良い。これら繊維のうち、リサイクル性や繊維形成性等の観点からポリエチレンテレフタレートからなる繊維であることが、特に好ましい。
【0026】
繊維構造体の嵩高さや反発弾性を得るためには、繊維が捲縮していることが好ましい。この場合の、捲縮付与方法としては、熱収縮率の異なるポリマーをサイドバイサイド型に張り合わせた複合繊維を用いてスパイラル状捲縮を付与、異方冷却によりスパイラル状捲縮を付与したり、通常の押し込みクリンパー方式による機械捲縮を付与したりする等、種々の方法を用いればよいが、嵩高性、製造コスト等の面から機械捲縮を付与するのが最適である。さらにその捲縮数としては、3~40個/2.54cm、より好ましくは7~15個/2.54cm、であることが好ましい。
【0027】
ここで、主体繊維の単繊維径としては、9~50μmの範囲内であることが好ましい。単繊維径が小さすぎると充分な剛性が得られず取り扱いが難しくなる傾向にある。逆に単繊維径が大きすぎても、繊維構造体が硬くなり、クッション感が低下する傾向にある。
【0028】
このような主体繊維の単繊維横断面形状は、通常の丸断面でもよいし、三角、四角、扁平、中空等の異型断面であってもよい。なお、単繊維横断面形状が異型の場合、前記の単繊維の直径としては、その外接円の直径を使用するものとする。また、丸中空断面の場合は外径寸法を測定してその直径とする。
【0029】
本発明で用いる繊維構造体としては、不織布構造体であることが好ましいが、さらには短繊維からなる不織布構造体であることがより好ましい。特には、繊維構造体がアコーディオン状に折りたたまれた不織布から構成されたものであることが好ましい。通常不織布は横方向(面方向)に繊維が配向しやすいが、不織布等の薄い繊維シートをアコーディオン状に折りたたむことにより、縦方向に配向する繊維の割合を高めることが可能となり、より本発明の効果を発揮しやすくなる。また、本発明におけるクッション材では、前記不織布繊維構造体をアコーディオン状に折り畳んだ後、厚さ方向と垂直方向に所定の厚さでスライスして、折り畳まれて曲折している端部が無くなるように加工した縦型方向の繊維構造体を用いることもできる。
【0030】
繊維構造体に短繊維として用いる場合の繊維長としては、30~100mmの範囲内であることが好ましい。該繊維長が小さすぎると充分な剛性が得られないおそれがある。逆に該繊維長が大きすぎても、工程安定性が損なわれる傾向にある。
【0031】
本発明の装飾物品に用いられる繊維構造体としては、熱接着性繊維を用いることで、繰り返しの圧縮に対しても、その変形、いわゆる「へたり」を有効に防止することが可能となる。
【0032】
熱接着性繊維としては、熱融着性成分を一部に含む複合繊維であることが好ましい。そのような熱接着性複合繊維の熱融着成分としては、上記の繊維を構成するポリマー成分より、40℃以上低い融点を有することが好ましい。この温度差が小さい場合には、繊維間の接着性が不十分となる上、腰のない取り扱いにくい繊維構造体となる傾向にある。また、繊維構造体を製造する際の熱処理温度の細かな制御が必要となるため、生産性に劣るものとなる。
【0033】
ここで、熱融着成分として配されるポリマーとしては、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、非弾性ポリエステル系ポリマー及びその共重合物、ポリオレフィン系ポリマー及びその共重合物、ポリビニルアルコ-ル系ポリマー等を挙げることができる。
【0034】
たとえばポリウレタン系エラストマーとしては、分子量が500~6000程度の低融点ポリオール、例えばジヒドロキシポリエーテル、ジヒドロキシポリエステル、ジヒドロキシポリカーボネート、ジヒドロキシポリエステルアミド等と、分子量500以下の有機ジイソシアネート、例えばp,p’-ジフェニールメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート水素化ジフェニールメタンイソシアネート、キシリレンイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート、ヘキサメチレンジイソシアネート等と、分子量500以下の鎖伸長剤、例えばグリコールアミノアルコールあるいはトリオールとの反応により得られるポリマーである。
【0035】
これらの熱融着性のポリウレタン系エラストマーとして特に好ましいのは、ポリオールとしてはポリテトラメチレングリコール、またはポリ-ε-カプロラクタムあるいはポリブチレンアジペートを用いたポリウレタンである。この場合の有機ジイソシアネートとしてはp,p’-ビスヒドロキシエトキシベンゼンおよび1,4-ブタンジオールを挙げることができる。
【0036】
また、ポリエステル系エラストマーを用いる場合は、熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールをソフトセグメントとして共重合してなるポリエーテルエステル共重合体、より具体的にはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸、ジフェニル-4,4’-ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体等から選ばれたジカルボン酸の少なくとも1種と、1,4-ブタンジオール、エチレングリコールトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオールあるいは1,1-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンメタノール等の脂環式ジオール、またはこれらのエステル形成性誘導体等から選ばれたジオール成分の少なくとも1種、および平均分子量が約400~5000程度のポリエチレングリコール、ポリ(1,2-および1,3-ポリプロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体等のポリ(アルキレンオキサイド)クリコールのうち少なくとも1種から構成される三元共重合体を挙げることができる。
【0037】
中でも、特に接着性や温度特性、強度の面からすれば、ポリブチレン系テレフタレートをハード成分とし、ポリオキシブチレングリコールをソフトセグメントとするブロック共重合ポリエーテルエステルが好ましい。この場合、ハードセグメントを構成するポリエステル部分は、主たる酸成分がテレフタル酸、主たるジオール成分がブチレングリコール成分であるポリブチレンテレフタレートである。むろん、この酸成分の一部(通常30モル%以下)は他のジカルボン酸成分やオキシカルボン酸成分で置換されていても良く、同様にグリコール成分の一部(通常30モル%以下)はブチレングリコール成分以外のジオキシ成分で置換されていても良い。また、ソフトセグメントを構成するポリエーテル部分はブチレングリコール以外のジオキシ成分で置換されたポリエーテルであってよい。
【0038】
共重合ポリエステル系ポリマーとしては、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類および/またはヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環式ジカルボン酸類と、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、パラキシレングリコール等の脂肪族や脂環式ジオール類とを所定数含有し、所望に応じてパラヒドロキシ安息香酸等のオキシ酸類を添加した共重合エステル等を挙げることができ、例えばテレフタル酸とエチレングリコールとにおいてイソフタル酸および1,6-ヘキサンジオールを添加共重合させたポリエステル等が使用できる。
【0039】
また、ポリオレフィンポリマーとしては、例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、さらにはそれらを変性した物等を挙げることができる。
【0040】
本発明で用いられる繊維構造体に特に適した熱接着性繊維としては、上記の熱融着成分の中でも、共重合ポリエステル系ポリマーを用いることが特に好ましい。さらに上述のポリマー中に、各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘分岐剤、艶消し剤、着色材その他各種の改良剤等を必要に応じて配合することも好ましい態様である。
【0041】
熱接着性繊維としては、熱接着性の複合繊維であることも好ましく、熱融着成分の相手側成分としては前記のようなポリエステルが好ましく例示される。さらにはその際、熱融着成分が、複合繊維の少なくとも1/2の表面積を占めるものであることが好ましい。重量割合は、熱融着成分とその他の相手側成分が、複合比率で10/90~70/30の範囲にあることが好ましい。このような熱接着性複合繊維の形態としては、特に限定されないが、熱融着成分と相手側成分とが、サイドバイサイド、あるいは芯鞘型であるのが好ましく、より好ましくは芯鞘型である。この芯鞘型の熱接着性複合繊維では、熱融着成分が鞘部となり、相手側成分が芯部となるが、この芯部は同心円状、または偏心状にあってもよい。
【0042】
かかる熱接着性複合繊維において、単繊維径としては15~30μmの範囲内であることが好ましい。かかる熱接着性複合繊維も短繊維であって、繊維長が3~100mmに裁断されていることが好ましい。
【0043】
本発明において用いられる繊維構造体は、例えば上記のような短繊維からなる主体繊維と熱接着性複合短繊維とを混綿し、加熱処理することにより得られる物であることが好ましい。この繊維構造体には、熱接着性複合短繊維同士が交差した状態で熱融着された固着点および/または該熱接着性複合短繊維と該短繊維とが交差した状態で熱融着された固着点とが散在している。
【0044】
繊維構造体中の短繊維と熱接着複合短繊維との重量比率は90/10~10/90であることが好ましい。熱接着複合短繊維の比率がこの範囲より少ない場合は、固着点が少なくなり、繊維構造体の腰がなく、均一性に劣り、表面の割れが発生する傾向にあり、外観が低下する。一方、熱接着複合短繊維の比率がこの範囲より多い場合は、固着点が多くなり過ぎ、熱処理工程での取扱い性が低下する。
【0045】
さらに、本発明において用いられる繊維構造体は、前記熱接着性複合短繊維と前記短繊維とが繊維構造体の厚さ方向に縦に配列していることが好ましい。ここで、「厚さ方向に縦に配列している」とは、繊維構造体の厚さ方向に対して平行に縦に配列されている繊維の総本数を(T)とし、繊維構造体の厚さ方向に対して垂直に横に配列されている繊維の総本数を(W)とするとき、Tの本数が多いことであって、本発明では縦方向/横方向比(T/W比)が1.5以上であることが必要である。さらには縦方向/横方向比(T/W比)が2.0~8.0の範囲内にあることが好ましい。また、本発明の繊維構造体を使用する際に、繊維の方向はクッション材の厚さ方向できる縦方向に主であることが必要である。構成繊維が繊維構造体の厚さ方向に対して平行に配列されていることで、前記構造体は、繊維が厚み方向に配向しているため、蒸気の通気に優れ、蒸れ感を防止する。さらには、洗濯時液通り性がよく、短時間で洗濯が可能であり、乾きも早い。
【0046】
このような繊維構造体を得る方法には特に限定はなく、従来公知の方法を任意に採用すれば良いが、例えば短繊維と熱接着性複合短繊維とを混綿し、ローラーカードにより均一なウェッブとして紡出した後、公知の熱処理機を用いて、ウェッブをアコーディオン状に折りたたみながら加熱処理し、熱融着による固着点を形成させる方法等が好ましく例示される。本発明では、平面方向に、特に工程中のシートが流れる方向に広がり配向した繊維からなる繊維ウェブを、アコーディオン状に折りたたみ、最終的な繊維の方向が繊維構造体の厚さ方向、すなわち縦方向を主となることが好ましい。
【0047】
かかる繊維構造体には、撥水加工、防炎加工、難燃加工、マイナスイオン発生加工、金属蒸着等、公知の機能加工が付加することも好ましい。
【0048】
[開口パネル]
本発明の整流シートは、上記の第1整流シートや第2整流シートに加えて、通風方向に対して、L/D比が1.1~10の開口パネルを有すと、第1整流シートや第2整流シートを通って乱れている気流成分が整流されて均質化するため、より整流効果を発揮する。本発明の空調システムでは、第1整流シート又は第2整流シートと開口パネルとの組み合わせを複数有していてもよい。開口の形状は、上記L/D比を満たす範囲で、三角、四角、台形、菱形、五角形、六角形(ハニカム)等の多角形状や円形形状を採ることができる。強度及び作製の簡便性の観点からはハニカム形状が好ましい。開口長Lは通常2mm~50mmであり、厚みDは通常3mm~60mmである。なお、開口長Lは、形状が三角の場合は三角形の高さ、四角形の場合は長辺、台形の場合は平行する辺と辺との間の長さ(高さ)、菱形の場合は長い方の対角線の長さ、五角形の場合は、1辺と対向する頂点とを結んだ長さ(高さ)、六角形の場合は対向する頂点を結んだ長さ、円形の場合は円の直径、を指す。
【0049】
開口パネルの材料は、紙、プラスチック、金属等いずれでもよいが、軽量性の観点からは紙が好ましい。
【0050】
[表皮材]
本発明において、意匠性に鑑みて、適宜整流シートの室内空間側を表皮材で覆ってもよい。この場合、均一になった空気の整流が妨げられない通気性を有していればよく、例えばトリコット編地を用いることができる。
【0051】
[空調システム]
本発明の空調システムは、上記整流シートを通して室内空間に空気を供給する際、室内空間とは反対側の空間において、整流シートに対して空気を平行に流入させることを特徴とする。
【0052】
平行に流入させる空気の風量や風向は、整流シートの裏側の空間内の構造や所望する風量に応じて調整すればよいが、風向は、例えば2か所又は4か所の対向した空気の供給口を設けることで、送り込まれた空気同士がぶつかって拡散し、整流シートの裏側の空間全体に空気が行き渡るため、整流シートの全面からより均一に空気を送り込むことができる。また、供給口が1か所の場合は、圧力損失を考慮しながら、整流シートの空孔の大きさを、例えば供給口から離れるほど大きくする勾配をつけてもよい。
【0053】
なお、本発明において「平行」とは、整流シートに対して角度が0~30度程度のものをいう。この空調システムは、室内に対して天井に設置してもよいし、壁に設置してもよい。また、自動車の場合、車内のピラーが本システムを有していてもよい。
【実施例】
【0054】
以下に本発明を具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。
【0055】
整流シートの構成部品として、公知の方法によって紙製のハニカムパネル(セルサイズ8.5mm、厚さ10mm、)を作製した。続いて、第2整流シートとして、V-Lap(登録商標)不織布(VC反,帝人フロンティア株式会社製)を5mmの厚さにカットしたものを2つ用意し、格子状にした針金の表及び裏にそのカットした不織布を設置し、四隅を接着固定した。続いて、第1整流シートとして、メルフィット(登録商標)I(BT-030EW,ユニセル株式会社製)、表皮材としてポリエステル繊維によるトリコット編地を用意し、通風方向から順に、第1整流シート、ハニカムパネル、第2整流シート、表皮材の順に重ねて縁を接着固定し、
図1に示す積層構成で整流シートを作製した。
【0056】
次に、HIJETデッキバン(登録商標)のBピラーの上部に送風口を開け、備え付けのエアコンとその送風口をダクトによりつないで、冷風が出るようにした。
【0057】
作製した整流シートを天井部から約10cm離して、シートの縁から空気が漏れないように天井箇所に接着固定し、空調システムとした。
【0058】
エアコンより冷風を天井部に送りこんだところ、整流シートの全面から均一に冷風が漏れ出し、直接風が当たる感覚はせずに快適性を有しているものであった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の整流シート及び空調システムは、室内や車内の空調部品として利用できる。
【符号の説明】
【0060】
1 空調システム
2 整流シート
3 第1整流シート
4 開口パネル
5 第2整流シート
6 表皮材
7 整流シートに対して平行に供給される空気の流れ
8 整流シートを通して室内空間に供給される空気の流れ
9 室内空間
10 室内空間とは反対側の空間
11 天井部又は壁部