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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】燃料電池システム用の排気排水ユニット
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20220426BHJP
   F16K 49/00 20060101ALI20220426BHJP
   F16K 27/00 20060101ALI20220426BHJP
   B60K 13/04 20060101ALI20220426BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20220426BHJP
【FI】
H01M8/04 N
F16K49/00 B
F16K27/00 A
B60K13/04 Z
H01M8/10 101
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018100350
(22)【出願日】2018-05-25
(65)【公開番号】P2019204731
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2020-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細井 貴己
(72)【発明者】
【氏名】西海 弘章
(72)【発明者】
【氏名】三島 崇司
(72)【発明者】
【氏名】柏木 幸一
(72)【発明者】
【氏名】奥野 仁
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-041539(JP,A)
【文献】特開2013-213527(JP,A)
【文献】特開2008-262867(JP,A)
【文献】特開2011-170978(JP,A)
【文献】特開2006-147440(JP,A)
【文献】特開2018-026223(JP,A)
【文献】特開2008-243722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/00-27/12
31/06-31/11
39/00-51/02
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システム用の排気排水ユニットであって、
燃料電池より排出される燃料オフガスから生成水を分離する気液分離器と、
前記気液分離器の下流に配置される排気排水弁と、
前記気液分離器及び前記排気排水弁と一体化される樹脂製のユニット本体と、
を備え、
前記ユニット本体の内部には、前記気液分離器と前記排気排水弁とを連通するとともに前記排気排水弁側の端部に弁座が設けられる第1流路と、前記排気排水弁を介して前記第1流路と連通する第2流路と、前記第1流路及び前記第2流路のうち少なくとも一方を取り囲む温水流路とがそれぞれ設けられ
前記温水流路は、前記第1流路及び前記第2流路とそれぞれ連通していないことを特徴とする燃料電池システム用の排気排水ユニット。
【請求項2】
前記第1流路の中心線と前記第2流路の中心線とはオフセットされており、
前記温水流路は、前記第1流路と前記第2流路とをそれぞれ取り囲むように設けられている請求項1に記載の燃料電池システム用の排気排水ユニット。
【請求項3】
前記排気排水弁は、その軸方向が横向きになるように配置されている請求項1又は2に記載の燃料電池システム用の排気排水ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システム用の排気排水ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムとして、複数の燃料電池セルが積層される燃料電池と、燃料電池に水素などの燃料ガスを供給する燃料ガス供給経路と、燃料電池から排出された燃料オフガスを燃料ガス供給経路に還流させる循環経路とを備えるものが知られている。このような構造を有する燃料電池システムでは、燃料オフガスの中に燃料電池の電気化学反応によって生成された生成水が含まれており、生成水を除去するために、燃料オフガスと生成水とを分離する気液分離器と、分離した生成水を外部に排出する排気排水弁とを有する排気排水ユニットが用いられている。
【0003】
排気排水ユニットとして、例えば下記特許文献1に記載のように、排気排水弁のバルブボディと気液分離器とが別体とされたものがある。この排気排水ユニットでは、氷点下時に生成水の残留に起因した排気排水ユニットの凍結を防止するために、バルブボディを金属製とし、更にバルブボディに該バルブボディを貫通する冷媒流路を設け、冷媒流路を流れる冷媒の熱でバルブボディを昇温させる対策を取っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-243722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の排気排水ユニットは、コスト削減及び小型化を図るために、樹脂材料を用いて排気排水弁と気液分離器とを一体化することが検討されている。しかしながら、上述した排気排水弁のバルブボディと気液分離器とを樹脂材料で一体化した場合、金属材料と比べて樹脂材料の熱伝導率が低くなるので、排気排水ユニットの凍結防止ができなくなる問題が生じる。
【0006】
本発明は、このような技術課題を解決するためになされたものであって、樹脂材料を用いても凍結防止を実現できる燃料電池システム用の排気排水ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る燃料電池システム用の排気排水ユニットは、燃料電池より排出される燃料オフガスから生成水を分離する気液分離器と、前記気液分離器の下流に配置される排気排水弁と、前記気液分離器及び前記排気排水弁と一体化される樹脂製のユニット本体と、を備え、前記ユニット本体の内部には、前記気液分離器と前記排気排水弁とを連通するとともに前記排気排水弁側の端部に弁座が設けられる第1流路と、前記排気排水弁を介して前記第1流路と連通する第2流路と、前記第1流路及び前記第2流路のうち少なくとも一方を取り囲む温水流路とがそれぞれ設けられていることを特徴としている。
【0008】
本発明に係る燃料電池システム用の排気排水ユニットでは、ユニット本体の内部に第1流路、第2流路、第1流路及び第2流路のうち少なくとも一方を取り囲む温水流路がそれぞれ設けられているので、温水流路を流れる温水で第1流路又は/及び第2流路を温めることができ、氷点下時に生成水の残留に起因する排気排水ユニットの凍結を防止することができる。しかも、ユニット本体は樹脂材料によって形成されるので、コストの削減を図ることができる。その結果、樹脂材料を用いても排気排水ユニットの凍結防止を実現することができる。
【0009】
本発明に係る燃料電池システム用の排気排水ユニットにおいて、前記第1流路の中心線と前記第2流路の中心線とはオフセットされており、前記温水流路は、前記第1流路と前記第2流路とをそれぞれ取り囲むように設けられていることが好ましい。このようにすれば、温水流路と第1流路との熱交換面積、及び温水流路と第2流路との熱交換面積をそれぞれ増やすことができるので、第1流路及び第2流路を効率良く昇温させることができ、排気排水ユニットの凍結防止効果を高めることができる。
【0010】
本発明に係る燃料電池システム用の排気排水ユニットにおいて、前記排気排水弁は、その軸方向が横向きになるように配置されていることが好ましい。このようにすれば、排気排水ユニット全体の高さを抑えることができるので、排気排水ユニットの小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、樹脂材料を用いても排気排水ユニットの凍結防止を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】排気排水ユニットを備える燃料電池システムを示す概略構成図である。
図2】排気排水ユニットを模式的に示す縦断面図である。
図3】排気排水ユニット内の温水流路、一次側排水流路及び二次側排水流路を模式的に示す縦断面図である。
図4】排気排水ユニット内の温水流路及び二次側排水流路を模式的に示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明に係る燃料電池システム用の排気排水ユニット(以下、「燃料電池システム用の排気排水ユニット」を「排気排水ユニット」と略する)の実施形態について説明するが、その前に図1を基に排気排水ユニットが適用される燃料電池システムの構成を説明する。なお、燃料電池システムは、車両、船舶、航空機、電車等の駆動源、或いは建物の発電設備として使用することができるが、ここでは、車両に搭載されて車両の駆動源とした例を説明する。
【0014】
図1は排気排水ユニットを備える燃料電池システムを示す概略構成図である。図1に示すように、燃料電池システム1は、主に、燃料電池10と、燃料電池10に空気等の酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給系20と、燃料電池10に水素等の燃料ガスを供給する燃料ガス供給系30と、燃料電池10に冷媒を供給する冷媒供給系40とを備えている。
【0015】
燃料電池10は、複数の燃料電池セルを積層してなるセルスタックであり、固体高分子電解質型燃料電池を構成する。図示しないが、燃料電池セルは、例えばイオン透過性の電解質膜と、該電解質膜を挟持するアノード側触媒層(アノード電極)及びカソード側触媒層(カソード電極)とからなる膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を有する。更に、燃料電池セルは、MEAを挟持する一対のセパレータ(すなわち、アノード側セパレータ及びカソード側セパレータ)を有する。
【0016】
また、MEAの両側には、燃料ガス若しくは酸化剤ガスを提供するとともに電気化学反応によって生じた電気を集電するためのガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)が更に形成される場合がある。このとき、GDLが両側に配置された膜電極接合体は、MEGA(Membrane Electrode & Gas Diffusion Layer Assembly)と称される。MEGAは、更に上述のアノード側セパレータ及びカソード側セパレータによって挟持されている。
【0017】
酸化剤ガス供給系20は、例えば、燃料電池10のカソード電極に酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス供給経路21と、燃料電池セルで電気化学反応に供された後の酸化オフガス(すなわち、未消費の酸化剤ガス)を燃料電池10から排出する酸化剤ガス排出経路22と、酸化剤ガスを燃料電池10を介さずにバイパスして酸化剤ガス排出経路22へと流通させるバイパス経路23とを有する。酸化剤ガス供給経路21、酸化剤ガス排出経路22及びバイパス経路23は、例えばホース、配管、パイプ及び継手部材等によってそれぞれ構成されている。
【0018】
酸化剤ガス供給経路21には、上流側から、エアクリーナ24、エアコンプレッサ25、インタクーラ26等が設けられている。一方、酸化剤ガス排出経路22には、マフラ27等が備えられている。なお、酸化剤ガス供給経路21のエアクリーナ24には、例えば、図示しない大気圧センサ、エアフローメータ等が設けられている。
【0019】
エアクリーナ24は、外部から取り込まれた空気中の塵埃を除去する。エアコンプレッサ25は、エアクリーナ24を介して導入された酸化剤ガスを圧縮し、圧縮された酸化剤ガスをインタクーラ26に供給する。インタクーラ26は、エアコンプレッサ25から供給された酸化剤ガスを通過させるときに、例えば冷媒との熱交換によって酸化剤ガスを冷却し、更に燃料電池10のカソード電極に供給する。
【0020】
また、酸化剤ガス供給経路21には、インタクーラ26と燃料電池10との間の酸化剤ガスの流れを遮断するための入口弁21Vが設けられている。入口弁21Vは、例えば、インタクーラ26から燃料電池10へ向かう酸化剤ガスの流れによって開弁して酸化剤ガスを流すとともに、燃料電池10からインタクーラ26へ向かう酸化剤ガスの流れによって閉弁して酸化剤ガスの流れを遮断する逆止弁である。
【0021】
バイパス経路23は、一端が酸化剤ガス供給経路21のインタクーラ26の下流側に接続され、他端が酸化剤ガス排出経路22に接続されている。言い換えれば、バイパス経路23は、酸化剤ガス供給経路21のインタクーラ26の下流側から、酸化剤ガス排出経路22に向けて分岐接続されている。バイパス経路23には、エアコンプレッサ25によって供給され、インタクーラ26によって冷却されて排出された酸化剤ガスが、燃料電池10をバイパスして酸化剤ガス排出経路22へ向けて流れる。このバイパス経路23には、該バイパス経路23を流れる酸化剤ガスの流量を調整するためのバイパス弁23Vが設けられている。
【0022】
酸化剤ガス排出経路22において、マフラ27は、酸化剤ガス排出経路22に流れる酸化オフガスを、例えば気相と液相とに分離して外部に排出する。また、酸化剤ガス排出経路22には、燃料電池10に供給される酸化剤ガスの背圧を調整するための調圧弁22Vが設けられる。調圧弁22Vの下流側には、上述のバイパス経路23が接続されている。
【0023】
一方、燃料ガス供給系30は、例えば、水素等の高圧の燃料ガスを貯留する燃料ガスタンク31と、燃料ガスタンク31からの燃料ガスを燃料電池10のアノード電極へ供給する燃料ガス供給経路32と、燃料電池10から排出された燃料オフガス(すなわち、未消費の燃料ガス)を燃料ガス供給経路32に還流させる循環経路33と、後述する気液分離器51を介して循環経路33に分岐接続される排出経路34とを有する。燃料ガス供給経路32、循環経路33及び排出経路34は、例えばホース、配管、パイプ及び継手部材等によってそれぞれ構成されている。
【0024】
燃料ガス供給経路32には、燃料ガス供給経路32を開閉する遮断弁32Vと、燃料ガス供給経路32を流れる燃料ガスの圧力を調整するためのレギュレータ35と、調圧された燃料ガスを燃料電池10へ向けて供給するためのインジェクタ36とが設けられている。遮断弁32Vを開くと、燃料ガスタンク31に貯留された高圧の燃料ガスが燃料ガス供給経路32に流出し、レギュレータ35やインジェクタ36により減圧されて、燃料電池10のアノード電極に供給される。
【0025】
循環経路33には、上流側(すなわち、燃料電池10側)から、気液分離器51及び排気排水弁52等を備える排気排水ユニット50と、水素循環ポンプ37とが順に配置されている。気液分離器51は、循環経路33と接続されており、循環経路33を流れる燃料オフガスに含まれる生成水を気液分離し、分離した生成水を貯留するとともに、分離した燃料オフガスを水素循環ポンプ37側に送る。水素循環ポンプ37は、気液分離器51で気液分離した燃料オフガスを加圧して燃料ガス供給経路32に循環させる。
【0026】
排出経路34は、排気排水ユニット50の下流側に配置されている。排出経路34の一端は排気排水ユニット50の二次側排水流路532(後述する)と接続され、他端は酸化剤ガス排出経路22と接続されている。
【0027】
一方、冷媒供給系40は、例えば、ラジエータ42と燃料電池10との間で冷媒を循環させる冷媒循環経路41と、該冷媒循環経路41に設けられたウォーターポンプ43とを有する。ウォーターポンプ43は、冷媒循環経路41の冷媒循環往路41aに配置されており、冷媒を加圧して燃料電池10に供給する。冷媒としては、例えばエチレングリコールを含む水が用いられる。そして、冷媒循環経路41を流れる冷媒は、燃料電池10を通過する際に、電気化学反応により生じた熱を吸収し温められ、更にラジエータ42を通過するときに放熱することで、冷却される。
【0028】
また、冷媒循環経路41の冷媒循環復路41bには、空調ヒータ44が接続されている。
【0029】
以上のように構成された燃料電池システム1において、燃料電池10は、酸化剤ガス供給系20からカソード電極に供給された酸化剤ガスと、燃料ガス供給系30からアノード電極に供給された燃料ガスとの電気化学反応によって発電を行う。そして、電気化学反応に伴ってカソード電極で水が生成される(すなわち、生成水)。生成された生成水の多くはカソード電極側から排出されるが、一部の生成水は電解質膜を透過してアノード電極側に移動し、燃料オフガスに混入する。燃料オフガスに混入される生成水(言い換えれば、燃料オフガスに含まれる生成水)は、上述の気液分離器51で分離される。
【0030】
また、燃料電池10では、カソード電極とアノード電極の圧力差によって、カソード電極側の酸化剤ガスの一部は、電解質膜を透過してアノード電極側に移動する。このため、酸化剤ガスに含まれる窒素ガスが燃料オフガスに混入し、燃料オフガスとともに循環経路33を介して燃料ガス供給経路32に還流され、燃料電池10に供給される。そして、燃料電池10を流れる窒素の濃度が上昇すると、燃料電池10の発電性能を低下させてしまうため、窒素を燃料オフガスとともに定期的に外部に排出する必要がある。従って、燃料電池システム1では、排気排水弁52を介して定期的に燃料オフガス及び窒素を外部に排出する。このため、排気排水弁52は、生成水を排出する排水弁として機能すると同時に、燃料オフガス及び窒素を排出する排気弁としても機能する。
【0031】
以下、図2図4を参照して上述した排気排水ユニット50の構成を詳細に説明する。図2は排気排水ユニットを模式的に示す縦断面図であり、図3は排気排水ユニット内の温水流路、一次側排水流路及び二次側排水流路を模式的に示す縦断面図であり、図4は排気排水ユニット内の温水流路及び二次側排水流路を模式的に示す横断面図である。排気排水ユニット50は、上述の気液分離器51と、気液分離器51の下流に配置される上述の排気排水弁52と、気液分離器51及び排気排水弁52と一体化される樹脂製のユニット本体53とを備えている。
【0032】
排気排水弁52は、電磁駆動式の開閉弁であって、弁室523と、弁室523内に配置されるゴム製の弁体521と、弁体521が固定される弁軸522と、弁軸522を所定のストロークで往復移動させるためのアクチュエータ524とを有する。図2に示すように、排気排水弁52は、その軸L3方向が横向きになるように配置されている。そして、弁体521は、アクチュエータ524の駆動で軸L3方向に沿って往復移動され、後述する弁座54,55と接離可能となっている。なお、ここでの横向きとは、車両の左右方向又は車両の前後方向を意味する。
【0033】
ユニット本体53は、気液分離器51と排気排水弁52とを連結するように、気液分離器51及び排気排水弁52と一体的に取り付けられている。このユニット本体53は、樹脂成型によって一つの部品として形成されても良く、或いは個別に作製した複数の部品を組み立てることにより形成されても良い。
【0034】
ユニット本体53は、例えば硬い樹脂材料によって内部に複数の空所を有するように形成されている。樹脂材料としては、例えばポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリスチレン、ポリエチレン等が挙げられる。図2に示すように、ユニット本体53の内部には、気液分離器51の下流に配置されて空所からなる一次側排水流路(第1流路)531と、排気排水弁52の下流に配置されて空所からなる二次側排水流路(第2流路)532と、一次側排水流路531と二次側排水流路532とを取り囲むように配置されて空所からなる温水流路533とがそれぞれ設けられている。
【0035】
一次側排水流路531は、例えば円筒状を呈しており、横向きになるように気液分離器51と排気排水弁52との間に延設し、気液分離器51と排気排水弁52とを連通している。一次側排水流路531の気液分離器51側の端部は、気液分離器51の底部と接続され、一次側排水流路531の排気排水弁52側の端部は、排気排水弁52の弁室523と接続されている。また、一次側排水流路531の排気排水弁52側の端部には、排気排水弁52の弁体521が着座できる弁座54が設けられている。
【0036】
二次側排水流路532は、例えば段付きの筒状を呈しており(図3参照)、排気排水弁52を介して一次側排水流路531と連通している。より具体的には、二次側排水流路532は、該二次側排水流路532の一端部である方向転換流路532aを介して排気排水弁52の弁室523と連通している。方向転換流路532aは一次側排水流路531の延設方向と平行に配置されており、該方向転換流路532aの端部には、弁体521が着座できる弁座55が設けられている。そして、二次側排水流路532における方向転換流路532aとは反対側の他端部は、上述の排出経路34と連通している。
【0037】
本実施形態では、一次側排水流路531の端部に設けられた弁座54と、方向転換流路532aの端部に設けられた弁座55とは、排気排水弁52の弁体521が同時に着座できるように、弁体521に対して同じ距離で配置されている。すなわち、弁体521は、一次側排水流路531の端部に設けられた弁座54に当接して着座すると、同時に方向転換流路532aの端部に設けられた弁座55にも着座することになる。これによって、一次側排水流路531及び二次側排水流路532は、同時に閉鎖される。一方、弁体521は弁座54と弁座55から離間すると、一次側排水流路531及び二次側排水流路532は同時に開放される。
【0038】
そして、一次側排水流路531及び二次側排水流路532は同時に開放されると(すなわち、排気排水弁52の開弁時)、気液分離器51内の生成水は、図2の矢印に示すように、一次側排水流路531、弁室523、方向転換流路532aを順に流れて、二次側排水流路532に流入する。
【0039】
一方、温水流路533は、一次側排水流路531と二次側排水流路532とをそれぞれ取り囲むように配置されている。この温水流路533は、例えば一次側排水流路531と二次側排水流路532との間の部分を刳り貫くように形成されており、一次側排水流路531及び二次側排水流路532のそれぞれとの接触面積(言い換えれば、熱交換面積)をより大きく確保するために、不規則な形状となっている。
【0040】
ユニット本体53は、ユニット本体53から外方に突出する温水流入管56と温水流出管57とを更に備えている。温水流入管56及び温水流出管57は、それぞれ温水流路533と接続されている。このため、図2及び図4の白抜き矢印に示すように、温水は温水流入管56を介して温水流路533の内部に流れ込み、一次側排水流路531及び二次側排水流路532の周囲を流れながらこれらの排水流路を温め、温水流出管57を介して外部に流出する。
【0041】
温水流路533を流れる温水は、排気排水ユニット50と上述の空調ヒータ44との間に設けられた温水循環経路45を介して供給されている(図1参照)。温水流入管56は温水循環経路45の温水循環往路45aと接続され、温水流出管57は温水循環経路45の温水循環復路45bと接続されている。
【0042】
ここで、温水循環復路45bは、更に水素循環ポンプ37を経由して空調ヒータ44に戻るように形成されることが好ましい(図1参照)。このようにすれば、水素循環ポンプ37も温めることができるので、水素循環ポンプ37の結露を防止する効果を奏する。
【0043】
また、本実施形態では、氷点下時に生成水の残留に起因した二次側排水流路532等の凍結を防止するために、二次側排水流路532は水平方向に対して傾斜するように配置されている。具体的には、図3に示すように、二次側排水流路532は、水平方向に対して後下がりになるように配置されている。そして、水平方向に対する傾斜角度αは、以下の理由で約10度と設定されることが好ましい。
【0044】
すなわち、寒冷地で車両が前下がりの状態で駐車することを想定し、路面に対する駐車傾斜角度は、車両の前後方向において約9度、車両の左右方向において約8度と設計されることがある。傾斜角度αを約10度と設定すれば、仮に車両を最大駐車傾斜角度(すなわち9度)で前下がりの状態で駐車した場合であっても、二次側排水流路532は水平方向に対して傾斜する(ここでは傾斜角度が1度)状態を確保できるので、生成水が二次側排水流路532に溜まらずに外部に流出できる。
【0045】
また、本実施形態では、一次側排水流路531の中心線L1と二次側排水流路532の中心線L2とはオフセットされている。具体的には、図3に示すように、高さ方向(すなわち、車両の高さ方向)において、一次側排水流路531の中心線L1の位置は、二次側排水流路532の中心線L2の位置よりも所定距離h(オフセット量hともいう)高い。
【0046】
以上の構成を有する排気排水ユニット50では、ユニット本体53の内部に一次側排水流路531、二次側排水流路532、一次側排水流路531及び二次側排水流路532を取り囲む温水流路533がそれぞれ設けられているので、温水流路533を流れる温水で一次側排水流路531及び二次側排水流路532を効率良く温めることができ、一次側排水流路531及び二次側排水流路532の凍結を抑制し、氷点下時に生成水の残留に起因する排気排水ユニット50の凍結を防止することができる。しかも、ユニット本体53は樹脂材料によって形成されるので、金属製の場合と比べてコストの削減を図ることができる。その結果、樹脂材料を用いても排気排水ユニット50の凍結防止を実現することができる。
【0047】
また、一次側排水流路531の中心線L1と二次側排水流路532の中心線L2とは高さ方向においてオフセットされているので、温水流路533と一次側排水流路531との熱交換面積、及び温水流路533と二次側排水流路532との熱交換面積をそれぞれ増やすことができ、排気排水ユニット50の凍結防止効果を高めることができる。特に、これによって、温水流路533と一次側排水流路531との距離、とりわけ温水流路533と一次側排水流路531の端部に設けられた弁座54との距離を短縮することが可能になる(例えば、一次側排水流路531の直上位置まで温水流路533を設けることが可能になる)ので、弁座54を含めた一次側排水流路531を好適に昇温させることができる。そして、弁座54を昇温させることにより、該弁座54に着座する弁体521を間接的に温めることができるので、弁体521の凍結を防止でき、着座時におけるシール不良の発生を抑制することができる。
【0048】
また、排気排水弁52は、その軸L3方向が横向きになるように配置されているので、排気排水ユニット50全体の高さを抑えることができ、排気排水ユニット50の小型化を図ることができる。更に、ユニット本体53は気液分離器51及び排気排水弁52と一体化されるので、従来のようなバルブボディを設ける必要がなくなり、排気排水ユニット50の小型化を一層図り易くなる。更に、バルブボディを設ける必要がなくなることに伴い、バルブボディと気液分離器とのシール性を保つシール部材等を省くことができるので、コスト削減を実現することができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、上述の実施形態では、温水流路533は一次側排水流路531及び二次側排水流路532の双方を取り囲んで昇温させる例を説明したが、これに限らずに、温水流路533は一次側排水流路531及び二次側排水流路532うち少なくとも一方を取り囲むように形成されても良い。
【0050】
また、上述の実施形態では、一次側排水流路531の中心線L1と二次側排水流路532の中心線L2とがオフセットされた例を挙げて説明したが、オフセットせずに、一次側排水流路531の中心線L1と二次側排水流路532の中心線L2とにより規定される平面に一次側排水流路531及び二次側排水流路532を配置しても良い。このようにすれば、規定される平面に平行に温水を流入させることが可能になり、排気排水ユニット50の高さを更に抑える効果を期待できる。
【符号の説明】
【0051】
1 燃料電池システム
10 燃料電池
20 酸化剤ガス供給系
30 燃料ガス供給系
40 冷媒供給系
50 排気排水ユニット
51 気液分離器
52 排気排水弁
53 ユニット本体
54,55 弁座
56 温水流入管
57 温水流出管
521 弁体
522 弁軸
523 弁室
524 アクチュエータ
531 一次側排水流路(第1流路)
532 二次側排水流路(第2流路)
532a 方向転換流路
533 温水流路
図1
図2
図3
図4