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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】電池モジュール用緩衝シート
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/291 20210101AFI20220426BHJP
   H01M 50/242 20210101ALI20220426BHJP
   H01M 50/262 20210101ALI20220426BHJP
   H01M 50/233 20210101ALI20220426BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20220426BHJP
   H01M 10/6557 20140101ALI20220426BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20220426BHJP
   H01M 10/6561 20140101ALI20220426BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20220426BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20220426BHJP
   H01M 50/249 20210101ALN20220426BHJP
【FI】
H01M50/291
H01M50/242
H01M50/262 E
H01M50/233
H01M10/04 W
H01M10/6557
H01M10/613
H01M10/6561
H01M10/625
H01M10/647
H01M50/249
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018121487
(22)【出願日】2018-06-27
(65)【公開番号】P2020004556
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 浩一
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-006058(JP,A)
【文献】特開2006-049054(JP,A)
【文献】特開平09-199094(JP,A)
【文献】特開2006-253149(JP,A)
【文献】特開2014-102939(JP,A)
【文献】特開2016-186888(JP,A)
【文献】特開2014-238924(JP,A)
【文献】特開2008-140757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20
H01M 10/04
H01M 10/6557
H01M 10/613
H01M 10/6561
H01M 10/625
H01M 10/647
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルの積層体と前記積層体の積層方向の両端から前記積層体を拘束する拘束部材とを備える電池モジュールに適用され、
前記電池セルの対象面と前記拘束部材との間、または、隣接する前記電池セルの対象面の間に介在される、電池モジュール用緩衝シートであって、
前記電池セルの前記対象面から距離を隔てた第一面を有する板状のベース部と、
弾性材料により形成され、前記ベース部の前記第一面から前記電池セルの前記対象面に向かって突出形成され、前記電池セルの充電に伴う湾曲状の膨張時に前記電池セルを弾性支持し、且つ、前記電池セルの放電に伴う収縮時に前記電池セルに対して反力を付与する弾性突部と、
を備え、
前記弾性突部は、
前記ベース部の面方向のうち第一方向および前記第一方向に交差する第二方向のそれぞれに凸要素が延在する格子状に形成され、
前記格子状の各枠の中央部に凹所が形成され、
前記凹所を通る前記第一方向において前記電池セルの前記対象面に直交する断面において複数の前記凸要素が配列され、前記第一方向の複数の前記凸要素のそれぞれの断面形状が台形形状に形成されており、
前記凹所を通る前記第二方向において前記電池セルの前記対象面に直交する断面において複数の前記凸要素が配列され、前記第二方向の複数の前記凸要素のそれぞれの断面形状が前記台形形状に形成されており、
前記台形形状は、
前記電池セルの前記対象面に当接する台形頂辺と、
前記台形頂辺と前記ベース部とを接続する辺であって複数の前記凸要素の配列方向の外側を向く外側台形斜辺と、
を備え、
前記電池セルの満充電時に対応する所定の前記凸要素が最大負荷状態である場合において、前記所定の前記凸要素において、前記凸要素の突出方向を弾性基準とした場合に前記弾性基準に対する前記外側台形斜辺の傾斜鋭角度を、φaと定義し、
前記対象面のうち前記所定の前記凸要素が当接する部位において、前記電池セルの満充電時において、前記電池セルの積層方向を積層基準とした場合に前記積層基準に対する前記電池セルの前記対象面の法線の傾斜鋭角度を、θと定義し、
式(1)の関係を満たすように設定されており、
前記弾性突部において前記格子状の外周壁の外面は、周方向に連続する前記外側台形斜辺に形成されている、電池モジュール用緩衝シート。
φa ≧ θ ・・・ (1)
【請求項2】
複数の電池セルの積層体と前記積層体の積層方向の両端から前記積層体を拘束する拘束部材とを備える電池モジュールに適用され、
前記電池セルの対象面と前記拘束部材との間、または、隣接する前記電池セルの対象面の間に介在される、電池モジュール用緩衝シートであって、
前記電池セルの前記対象面から距離を隔てた第一面を有する板状のベース部と、
弾性材料により形成され、前記ベース部の前記第一面から前記電池セルの前記対象面に向かって突出形成され、前記電池セルの充電に伴う湾曲状の膨張時に前記電池セルを弾性支持し、且つ、前記電池セルの放電に伴う収縮時に前記電池セルに対して反力を付与する弾性突部と、
を備え、
前記弾性突部は、
前記ベース部の面方向のうち第一方向および前記第一方向に交差する第二方向のそれぞれに凸要素が延在する格子状に形成され、
前記格子状の各枠の中央部に凹所が形成され、
前記凹所を通る前記第二方向において前記電池セルの前記対象面に直交する断面において複数の前記凸要素が配列され、前記第二方向の複数の前記凸要素のそれぞれの断面形状が台形形状に形成されており、
前記台形形状は、
前記電池セルの前記対象面に当接する台形頂辺と、
前記台形頂辺と前記ベース部とを接続する辺であって複数の前記凸要素の配列方向の外側を向く外側台形斜辺と、
を備え、
前記電池セルの満充電時に対応する所定の前記凸要素が最大負荷状態である場合において、前記所定の前記凸要素において、前記凸要素の突出方向を弾性基準とした場合に前記弾性基準に対する前記外側台形斜辺の傾斜鋭角度を、φaと定義し、
前記対象面のうち前記所定の前記凸要素が当接する部位において、前記電池セルの満充電時において、前記電池セルの積層方向を積層基準とした場合に前記積層基準に対する前記電池セルの前記対象面の法線の傾斜鋭角度を、θと定義し、
式(1)の関係を満たすように設定されており、
前記弾性突部は、隣り合う前記凹所同士を連通する空気連通溝を有する、電池モジュール用緩衝シート。
φa ≧ θ ・・・ (1)
【請求項3】
前記空気連通溝は、前記第一方向に隣り合う前記凹所同士を連通し、
前記弾性突部は、前記第一方向のうち前記凹所を通り且つ前記空気連通溝を通らない方向において前記電池セルの前記対象面に直交する断面において複数の前記凸要素が配列され、前記第一方向の複数の前記凸要素のそれぞれの断面形状が前記台形形状に形成されている、請求項2に記載の電池モジュール用緩衝シート。
【請求項4】
前記空気連通溝は、前記格子状の外周壁の少なくとも一部に形成されており、
前記弾性突部において前記格子状の外周壁の外面は、前記空気連通溝以外の部分において、前記外側台形斜辺に形成されている、請求項2または3に記載の電池モジュール用緩衝シート。
【請求項5】
複数の電池セルの積層体と前記積層体の積層方向の両端から前記積層体を拘束する拘束部材とを備える電池モジュールに適用され、
前記電池セルの対象面と前記拘束部材との間、または、隣接する前記電池セルの対象面の間に介在される、電池モジュール用緩衝シートであって、
前記電池セルの前記対象面から距離を隔てた第一面を有する板状のベース部と、
弾性材料により形成され、前記ベース部の前記第一面から前記電池セルの前記対象面に向かって突出形成され、前記電池セルの充電に伴う湾曲状の膨張時に前記電池セルを弾性支持し、且つ、前記電池セルの放電に伴う収縮時に前記電池セルに対して反力を付与する弾性突部と、
を備え、
前記弾性突部は、
前記ベース部の面方向のうち第一方向および前記第一方向に交差する第二方向のそれぞれに凸要素が延在する格子状に形成され、
前記格子状の各枠の中央部に凹所が形成され、
前記凹所を通る前記第二方向において前記電池セルの前記対象面に直交する断面において複数の前記凸要素が配列され、前記第二方向の複数の前記凸要素のそれぞれの断面形状が台形形状に形成されており、
前記台形形状は、
前記電池セルの前記対象面に当接する台形頂辺と、
前記台形頂辺と前記ベース部とを接続する辺であって複数の前記凸要素の配列方向の外側を向く外側台形斜辺と、
を備え、
前記電池セルの満充電時に対応する所定の前記凸要素が最大負荷状態である場合において、前記所定の前記凸要素において、前記凸要素の突出方向を弾性基準とした場合に前記弾性基準に対する前記外側台形斜辺の傾斜鋭角度を、φaと定義し、
前記対象面のうち前記所定の前記凸要素が当接する部位において、前記電池セルの満充電時において、前記電池セルの積層方向を積層基準とした場合に前記積層基準に対する前記電池セルの前記対象面の法線の傾斜鋭角度を、θと定義し、
式(1)の関係を満たすように設定されており、
前記弾性突部は、隣り合う前記凹所同士を連通する空気連通孔を有する、電池モジュール用緩衝シート。
φa ≧ θ ・・・ (1)
【請求項6】
前記空気連通孔は、前記第一方向に隣り合う前記凹所同士を連通し、
前記弾性突部は、前記第一方向のうち前記凹所を通り且つ前記空気連通孔を通らない方向において前記電池セルの前記対象面に直交する断面において複数の前記凸要素が配列され、前記第一方向の複数の前記凸要素のそれぞれの断面形状が前記台形形状に形成されている、請求項5に記載の電池モジュール用緩衝シート。
【請求項7】
前記空気連通孔は、前記格子状の外周壁の少なくとも一部に形成されており、
前記弾性突部において前記格子状の外周壁の外面は、前記空気連通孔以外の部分において、前記外側台形斜辺に形成されている、請求項5または6に記載の電池モジュール用緩衝シート。
【請求項8】
前記所定の前記弾性突部が無負荷状態である場合において、前記弾性基準に対する前記外側台形斜辺の傾斜鋭角度を、φbとし、
式(2)の関係を満たすように設定されている、請求項1~7の何れか一項に記載の電池モジュール用緩衝シート。
φb ≧ θ ・・・ (2)
【請求項9】
前記電池セルは、電極巻回体と、前記電極巻回体を収容し前記対象面を有する筐体と、を備え、
前記対象面は、充電時に湾曲凸状に膨張変形する、請求項1~8の何れか一項に記載の電池モジュール用緩衝シート。
【請求項10】
前記所定の前記弾性突部が無負荷状態である場合において、前記弾性突部に関する前記傾斜鋭角度φbは、前記対象面の位置に応じて異なる角度に設定されている、請求項に記載の電池モジュール用緩衝シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュール用緩衝シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電池モジュールは、自動車等に適用されており、走行距離の延長化のため、電池の高エネルギー密度化が進んできている。電池セルは、高エネルギー密度化によって、充電に伴う発熱によって膨張し、放電に伴って収縮することが知られている。また、充放電の繰り返しにより電池が劣化し、放電時において完全に元の形状まで収縮せず、放電時においても徐々に膨張側にシフトすることも知られている。そこで、複数の電池セルの積層体を、積層体の両端から、一対の拘束部材によって拘束する構造が、特許文献1-4に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の電池モジュールにおいては、電池セルと拘束部材との間に、複数個の弾性体を点在して配置することが記載されている。特許文献2に記載の電池モジュールにおいては、電池セルの膨張を抑制するために、隣り合う電池セルの間に、低ばね定数凸部および高ばね定数凸部を有するスペーサが配置されている。
【0004】
特許文献3に記載の電池モジュールにおいては、電池セルと拘束部材との間に、シート状の弾性部材が配置されている。さらに、当該電池セルは、隣り合う電池セルとの当接部位を、リブ状に形成することにより、隣り合う電池セルの間に冷却空気を流通させている。また、特許文献4に記載の電池モジュールにおいては、隣り合う電池セルの間に冷却空気を流通させるために、隣り合う電池セルの間に、複数の突起を有する隔壁が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5122898号公報
【文献】特開2017-212120号公報
【文献】特許第6277987号公報
【文献】特開2006-253149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1-3に記載の電池モジュールのように、弾性部材を介在させることによって、電池セルの大変位に対しても吸収することができる。また、弾性部材は、電池セルの積層数の変化にも対応が容易であることからも有用である。
【0007】
ただし、特許文献3に記載の弾性部材のように、突起を有しない形状に比べて、特許文献1,2に記載の弾性部材のように、突起を有する形状の方が、電池セルの変位の吸収力が高くなる。しかしながら、弾性部材を突起形状とする場合には、座屈や倒れが生じるおそれがある。突起状の弾性部材に座屈や倒れが生じると、突起状の弾性部材は、電池セルに対して十分な反力を発揮することができず、結果として電池セルの長寿命化の効果を効果的に発揮することができないおそれがある。
【0008】
本発明は、電池モジュールに適用され、電池セルの充電時に確実に弾性支持し、電池セルの放電時に確実に反力を付与することができる電池モジュール用緩衝シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、複数の電池セルの積層体と前記積層体の積層方向の両端から前記積層体を拘束する拘束部材とを備える電池モジュールに適用され、
前記電池セルの対象面と前記拘束部材との間、または、隣接する前記電池セルの対象面の間に介在される、電池モジュール用緩衝シートであって、
前記電池セルの前記対象面から距離を隔てた第一面を有する板状のベース部と、
弾性材料により形成され、前記ベース部の前記第一面から前記電池セルの前記対象面に向かって突出形成され、前記電池セルの充電に伴う湾曲状の膨張時に前記電池セルを弾性支持し、且つ、前記電池セルの放電に伴う収縮時に前記電池セルに対して反力を付与する弾性突部と、
を備え、
前記弾性突部は、
前記ベース部の面方向のうち第一方向および前記第一方向に交差する第二方向のそれぞれに凸要素が延在する格子状に形成され、
前記格子状の各枠の中央部に凹所が形成され、
前記凹所を通る前記第一方向において前記電池セルの前記対象面に直交する断面において複数の前記凸要素が配列され、前記第一方向の複数の前記凸要素のそれぞれの断面形状が台形形状に形成されており、
前記凹所を通る前記第二方向において前記電池セルの前記対象面に直交する断面において複数の前記凸要素が配列され、前記第二方向の複数の前記凸要素のそれぞれの断面形状が前記台形形状に形成されており、
前記台形形状は、
前記電池セルの前記対象面に当接する台形頂辺と、
前記台形頂辺と前記ベース部とを接続する辺であって複数の前記凸要素の配列方向の外側を向く外側台形斜辺と、
を備え、
前記電池セルの満充電時に対応する所定の前記凸要素が最大負荷状態である場合において、前記所定の前記凸要素において、前記凸要素の突出方向を弾性基準とした場合に前記弾性基準に対する前記外側台形斜辺の傾斜鋭角度を、φaと定義し、
前記対象面のうち前記所定の前記凸要素が当接する部位において、前記電池セルの満充電時において、前記電池セルの積層方向を積層基準とした場合に前記積層基準に対する前記電池セルの前記対象面の法線の傾斜鋭角度を、θと定義し、
式(1)の関係を満たすように設定されており、
前記弾性突部において前記格子状の外周壁の外面は、周方向に連続する前記外側台形斜辺に形成されている、電池モジュール用緩衝シートにある。
φa ≧ θ ・・・ (1)
【0010】
本発明の他の態様は、複数の電池セルの積層体と前記積層体の積層方向の両端から前記積層体を拘束する拘束部材とを備える電池モジュールに適用され、
前記電池セルの対象面と前記拘束部材との間、または、隣接する前記電池セルの対象面の間に介在される、電池モジュール用緩衝シートであって、
前記電池セルの前記対象面から距離を隔てた第一面を有する板状のベース部と、
弾性材料により形成され、前記ベース部の前記第一面から前記電池セルの前記対象面に向かって突出形成され、前記電池セルの充電に伴う湾曲状の膨張時に前記電池セルを弾性支持し、且つ、前記電池セルの放電に伴う収縮時に前記電池セルに対して反力を付与する弾性突部と、
を備え、
前記弾性突部は、
前記ベース部の面方向のうち第一方向および前記第一方向に交差する第二方向のそれぞれに凸要素が延在する格子状に形成され、
前記格子状の各枠の中央部に凹所が形成され、
前記凹所を通る前記第一方向において前記電池セルの前記対象面に直交する断面において複数の前記凸要素が配列され、前記第一方向の複数の前記凸要素のそれぞれの断面形状が台形形状に形成されており、
前記台形形状は、
前記電池セルの前記対象面に当接する台形頂辺と、
前記台形頂辺と前記ベース部とを接続する辺であって複数の前記凸要素の配列方向の外側を向く外側台形斜辺と、
を備え、
前記電池セルの満充電時に対応する所定の前記凸要素が最大負荷状態である場合において、前記所定の前記凸要素において、前記凸要素の突出方向を弾性基準とした場合に前記弾性基準に対する前記外側台形斜辺の傾斜鋭角度を、φaと定義し、
前記対象面のうち前記所定の前記凸要素が当接する部位において、前記電池セルの満充電時において、前記電池セルの積層方向を積層基準とした場合に前記積層基準に対する前記電池セルの前記対象面の法線の傾斜鋭角度を、θと定義し、
式(1)の関係を満たすように設定されており、
前記弾性突部は、隣り合う前記凹所同士を連通する空気連通溝を有する、電池モジュール用緩衝シートにある。
φa ≧ θ ・・・ (1)
【0011】
また、本発明の他の態様は、複数の電池セルの積層体と前記積層体の積層方向の両端から前記積層体を拘束する拘束部材とを備える電池モジュールに適用され、
前記電池セルの対象面と前記拘束部材との間、または、隣接する前記電池セルの対象面の間に介在される、電池モジュール用緩衝シートであって、
前記電池セルの前記対象面から距離を隔てた第一面を有する板状のベース部と、
弾性材料により形成され、前記ベース部の前記第一面から前記電池セルの前記対象面に向かって突出形成され、前記電池セルの充電に伴う湾曲状の膨張時に前記電池セルを弾性支持し、且つ、前記電池セルの放電に伴う収縮時に前記電池セルに対して反力を付与する弾性突部と、
を備え、
前記弾性突部は、
前記ベース部の面方向のうち第一方向および前記第一方向に交差する第二方向のそれぞれに凸要素が延在する格子状に形成され、
前記格子状の各枠の中央部に凹所が形成され、
前記凹所を通る前記第一方向において前記電池セルの前記対象面に直交する断面において複数の前記凸要素が配列され、前記第一方向の複数の前記凸要素のそれぞれの断面形状が台形形状に形成されており、
前記台形形状は、
前記電池セルの前記対象面に当接する台形頂辺と、
前記台形頂辺と前記ベース部とを接続する辺であって複数の前記凸要素の配列方向の外側を向く外側台形斜辺と、
を備え、
前記電池セルの満充電時に対応する所定の前記凸要素が最大負荷状態である場合において、前記所定の前記凸要素において、前記凸要素の突出方向を弾性基準とした場合に前記弾性基準に対する前記外側台形斜辺の傾斜鋭角度を、φaと定義し、
前記対象面のうち前記所定の前記凸要素が当接する部位において、前記電池セルの満充電時において、前記電池セルの積層方向を積層基準とした場合に前記積層基準に対する前記電池セルの前記対象面の法線の傾斜鋭角度を、θと定義し、
式(1)の関係を満たすように設定されており、
前記弾性突部は、隣り合う前記凹所同士を連通する空気連通孔を有する、電池モジュール用緩衝シートにある。
φa ≧ θ ・・・ (1)
【0012】
上記の各態様により、電池セルの対象面のうち所定の弾性突部が当接する部位において、満充電時における電池セルの対象面の法線が、台形形状の弾性突部の内部に存在する状態となる。換言すると、満充電時において、弾性突部が電池セルの対象面から受ける力線が、弾性突部の内部に存在する状態となる。従って、満充電時において、電池セルの対象面が湾曲凸状に膨張した場合に、弾性突部が電池セルの対象面から力を受けたとしても、弾性突部は圧縮されるだけで、座屈や倒れを生じることを防止できる。その結果、電池モジュール用緩衝シートの弾性突部は、電池セルの満充電時に確実に弾性支持し、電池セルの放電時に確実に反力を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第一例の電池モジュールを示す図であって、電池セルが膨張していない状態を示す。
図2】第一例の電池モジュールを示す図であって、電池セルが満充電に伴う最大膨張状態を示す。
図3】第二例の電池モジュールを示す図である。
図4】第一例の第一緩衝シートの斜視図である。
図5】第一例の第一緩衝シートが無負荷状態のときの緩衝シートの断面図である。
図6A】第一例の電池モジュールにおいて、満充電時における電池セルと第一緩衝シートの状態を示す図である。
図6B図6Aにおける電池セルの対象面の断面図である。
図6C図6Aにおける緩衝シートの断面図である。
図7】第二例の第一緩衝シートの斜視図である。
図8】第三例の第一緩衝シートの斜視図である。
図9】第四例の第一緩衝シートの斜視図である。
図10】第五例の第一緩衝シートの斜視図である。
図11】第一例の第二緩衝シートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1.電池モジュールの全体構成)
(1-1.第一例の電池モジュール1)
第一例の電池モジュール1について、図1および図2を参照して説明する。図1に示すように、電池モジュール1は、例えば、自動車のバッテリ等として用いられる。電池モジュール1は、複数の電池セル11を積層された積層体12と、拘束部材13と、第一緩衝シート14とを備える。
【0015】
積層体12を構成する各電池セル11は、直方体形状の扁平状に形成されている。積層体12は、扁平状の電池セル11を、扁平面方向に直交する方向(扁平法線方向)に積層されている。電池セル11は、電力を充放電可能な二次電池であり、例えば、リチウムイオン二次電池等が好適に用いられる。
【0016】
電池セル11は、直方体形状の扁平箱形状に形成された筐体11aと、筐体11aの内部に巻回された電極体11bとを備える。筐体11aは、例えばアルミニウム等の金属、または、硬質樹脂等により形成されている。以下において、筐体11aにおいて、扁平面方向に直交する面を対象面11a1と称する。電極体11bは、正極電極と、負極電極と、正極電極と負極電極との間に挟まれたセパレータとを備え、扁平状に巻回されている。
【0017】
図2に示すように、電極体11bは、充電に伴って発熱することによって、主として扁平法線方向に膨張する。反対に、電極体11bは、放電に伴って収縮する。従って、電極体11bを収容する電池セル11の筐体11aは、充電時には、扁平法線方向に膨張する。特に、筐体11aが直方体形状の扁平箱形状に形成されているため、対象面11a1が湾曲凸状に膨張変形しやすい。特に、電池セル11の満充電時には、筐体11aの対象面11a1の膨張量が最大となる。電池セル11の放電時には、電極体11bの収縮すること伴って、筐体11aの対象面11a1は、理想的には、平面状に復帰する。ただし、電極体11bの劣化によって、徐々に元の形状にまで戻らなくなり、電池性能が低下していく。
【0018】
拘束部材13は、積層体12を、積層体12の積層方向の両端から拘束する。つまり、拘束部材13は、各電池セル11が充電によって膨張した場合に各電池セル11に対して反力を付与することにより、電池セル11を初期状態(膨張していない状態)に戻すように作用する。
【0019】
拘束部材13は、第一拘束部材13a、第二拘束部材13b、および、連結部材13cを備える。第一拘束部材13aは、L字状に形成されており、積層体12の台座としての部分と、積層体12の第一端側(図1の右側)の部分(端部拘束部分)とに配置される。詳細には、第一拘束部材13aの端部拘束部分は、積層体12の第一端に位置する電池セル11の対象面11a1に対向するように配置される。さらに、第一拘束部材13aの端部拘束部分における電池セル11側の面は、平面状に形成されている。
【0020】
第二拘束部材13bは、平板状に形成されており、積層体12の第一端の反対である第二端側(図1の左側)に配置される。詳細には、第二拘束部材13bは、積層体12の第二端に位置する電池セル11の対象面11a1に対向するように配置される。さらに、第二拘束部材13bにおける電池セル11側の面は、平面状に形成されている。
【0021】
従って、積層体12は、第一拘束部材13aと第二拘束部材13bとによって、積層方向に挟まれる状態となる。連結部材13cは、第一拘束部材13aと第二拘束部材13bとを連結する。拘束部材13を構成する各部材13a,13b,13cは、十分な拘束力を発揮するために、金属が好適に用いられるが、硬質樹脂を適用することも可能である。
【0022】
第一緩衝シート14は、積層体12の第二端に位置する電池セル11の対象面11a1と、第二拘束部材13bとの間に介在される。第一緩衝シート14は、弾性体部分を有することにより、電池セル11の膨張および収縮に伴う変形を吸収する。そして、第一緩衝シート14は、図1に示すように、電池セル11の収縮時において、電池セル11を弾性支持する。さらに、第一緩衝シート14は、図2に示すように、電池セル11の充電に伴う膨張時において、電池セル11を弾性支持すると共に、電池セル11の放電に伴う収縮時に電池セルに対して反力を付与する。
【0023】
特に、積層体12を構成する電池セル11の数が多いほど、電池セル11の膨張および収縮に伴う積層体12の全長の変化は大きくなる。従って、積層体12の全長の変化を確実に吸収するために、弾性体部分を有する第一緩衝シート14が上記機能を好適に発揮する。
【0024】
第一緩衝シート14は、板状のベース部21と、弾性突部22とを備える。ベース部21の第一面は、積層体12の第二端に位置する電池セル11の対象面11a1から距離を隔てて配置される。ベース部21の第二面は、第二拘束部材13bに当接する。弾性突部22は、弾性材料により形成されており、ベース部21の第一面から面法線方向に突出し、電池セル11の対象面11a1に当接する。そして、弾性突部22は、電池セル11の充電に伴う湾曲凸状の膨張時に、電池セル11を弾性支持する。さらに、弾性突部22は、電池セル11の放電に伴う収縮時に、電池セル11に対して反力を付与する。
【0025】
(1-2.第二例の電池モジュール2)
第二例の電池モジュール2について、図3を参照して説明する。電池モジュール2は、複数の電池セル11を積層された積層体12と、拘束部材13と、第一緩衝シート14と、第二緩衝シート15とを備える。第二例の電池モジュール2において、第二緩衝シート15以外の構成は、第一例の電池モジュール1と同一構成であるため、説明を省略する。
【0026】
第二緩衝シート15は、隣接する2つの電池セル11,11の対象面11a1,11a1の間に介在される。第二緩衝シート15は、第一緩衝シート14と同様に、弾性体部分を有することにより、電池セル11の膨張および収縮に伴う変形を吸収する。つまり、第二緩衝シート15は、電池セル11の充電に伴う膨張時において、電池セル11を弾性支持すると共に、電池セル11の放電に伴う収縮時に電池セルに対して反力を付与する。
【0027】
第二緩衝シート15は、板状のベース部31と、第一弾性突部32と、第二弾性突部33とを備える。ベース部31の第一面は、隣り合う2つの電池セル11,11のうち一方の電池セル11の対象面11a1から距離を隔てて配置される。ベース部31の第二面は、他方の電池セル11の対象面11a1から距離を隔てて配置される。
【0028】
第一弾性突部32は、弾性材料により形成されており、ベース部31の第一面から面法線方向に突出し、一方の電池セル11の対象面11a1に当接する。そして、第一弾性突部32は、当該一方の電池セル11の充電に伴う湾曲凸状の膨張時に、当該一方の電池セル11を弾性支持する。さらに、第一弾性突部32は、当該一方の電池セル11の放電に伴う収縮時に、当該一方の電池セル11に対して反力を付与する。
【0029】
第二弾性突部33は、弾性材料により形成されており、ベース部31の第二面から面法線方向に突出し、他方の電池セル11の対象面11a1に当接する。そして、第二弾性突部33は、当該他方の電池セル11の充電に伴う湾曲凸状の膨張時に、当該他方の電池セル11を弾性支持する。さらに、第二弾性突部33は、当該他方の電池セル11の放電に伴う収縮時に、当該他方の電池セル11に対して反力を付与する。
【0030】
(2.第一例の第一緩衝シート40)
(2-1.第一例の第一緩衝シート40の構成)
第一緩衝シート14の一例としての第一例の第一緩衝シート40について図4および図5を参照して説明する。図4は、第一緩衝シート40の斜視図を示し、図5は、第一緩衝シート40の断面図であって、電池モジュール1,2に適用していない状態、すなわち無負荷状態の図である。
【0031】
第一例の第一緩衝シート40は、ベース部41と、複数の弾性突部42とを備える。第一緩衝シート40は、ベース部41と弾性突部42とを一体的に形成されており、全体が弾性材料の一つとしてのエラストマーにより形成されている。第一緩衝シート40には、例えば、低温環境下に優れたエラストマーとして、EPDM等が好適に用いられる。
【0032】
なお、第一緩衝シート40において、ベース部41と弾性突部42とを異なる材質として、両者を接合することも可能である。例えば、ベース部41をアルミニウム等の金属板材とし、弾性突部42をエラストマーにより形成することも可能である。また、ベース部41および弾性突部42に、異なる種類のエラストマーを用いて、2色成形により第一緩衝シート40を形成することも可能である。
【0033】
ベース部41は、平板状に形成されており、電池セル11の対象面11a1から距離を隔てた第一面41a、および、第二拘束部材13bに当接する第二面41bを有する。ベース部41は、エラストマーにより形成されているため、第一緩衝シート40単体として存在する場合には、可撓性を有する。ただし、第一緩衝シート40が電池モジュール1,2に適用されている状態においては、ベース部41の第二面41bが第二拘束部材13bに当接しているため、ベース部41は、実質的に第二拘束部材13bの面形状に沿った状態で規制される。本実施形態においては、第二拘束部材13bは、平面状に形成されているため、ベース部41は、平板状となる。
【0034】
複数の弾性突部42は、それぞれ独立しており、ベース部41の第一面41aから突出形成されている。複数の弾性突部42は、第一方向に延びる畝状に形成されている。つまり、複数の弾性突部42は、第一方向に向かって直線状に盛り上げられた部位に相当し、隣り合う弾性突部42の間には、第一方向に延びるスリット43が形成されている。
【0035】
ここで、第一緩衝シート40について、図4の第一方向に直交し、且つ、電池セル11の対象面11a1(図1に示す)に直交する断面は、図5に示すようになる。従って、図5に示す断面において、複数の弾性突部42は、第一方向に直交する第二方向に、複数配列されていることになる。以下、第二方向を、配列方向と称し、図5に示す断面を、配列方向の断面と称する。
【0036】
弾性突部42の配列方向の断面形状は、図5に示すように、台形形状に形成されている。本実施形態においては、弾性突部42の当該断面形状は、等脚台形に形成されている。さらに、複数の弾性突部42の当該断面形状は、同一形状に形成されている。ただし、後述するが、複数の弾性突部42の当該断面形状は、異なる形状に形成されるようにしてもよい。弾性突部42は、ベース部41に接続される台形底辺42a、電池セル11の対象面11a1に当接する台形頂辺42b、台形頂辺42bとベース部41(台形底辺42a)とを接続する辺であって第一緩衝シート40の配列方向の外側を向く外側台形斜辺42c、および、台形頂辺42bとベース部41とを接続する辺であって第一緩衝シート40の配列方向の中央側を向く内側台形斜辺42dを備える。
【0037】
ここで、弾性突部42の突出方向を弾性基準C1とする。そして、弾性突部42が無負荷状態である場合に、当該弾性突部42において、弾性基準C1に対する外側台形斜辺42cの傾斜鋭角度を、φbと定義する。本実施形態においては、全ての弾性突部42における外側台形斜辺42cの傾斜鋭角度φbが、同一とされている。
【0038】
(2-2.満充電時における電池セル11と第一緩衝シート40の形状)
次に、全ての電池セル11が満充電時における電池セル11と第一緩衝シート40の形状について、図6A図6B図6Cを参照して説明する。図6Aは、電池セル11と第一緩衝シート40の両者を示し、図6Bは、図6Aにおける電池セル11のみを示し、図6Cは、図6Aにおける第一緩衝シート40のみを示す。
【0039】
図6Aに示すように、電池セル11の満充電時においては、電池セル11が最大膨張状態となる。詳細には、電池セル11の対象面11a1は、湾曲凸状に膨張変形する。対象面11a1は、略円弧凸状に膨張変形する。また、積層体12は、複数の電池セル11により構成されている。従って、全ての電池セル11の満充電時においては、第二端に位置する電池セル11の対象面11a1の位置は、放電時に比べて、第二拘束部材13b側にスライドする。
【0040】
弾性突部42の台形頂辺42bは、電池セル11の対象面11a1に当接し、弾性突部42の台形底辺42aが接続されているベース部41は、第二拘束部材13bによって平面状に拘束されている。そのため、弾性突部42は、圧縮負荷を受ける状態、特に、満充電時には最大の圧縮負荷を受ける状態となる。詳細には、弾性突部42は、積層体12の積層方向に圧縮されると共に、弾性突部42の台形頂辺42bは、電池セル11の対象面11a1の湾曲凸状を転写した湾曲凹状となる。
【0041】
ただし、弾性突部42は、複数の弾性突部42の配列方向(第二方向)の位置に応じて変形状態が異なる。そこで、以下の説明において、複数の弾性突部42のうち、複数の弾性突部42の配列方向(第二方向)において、外側に位置する弾性突部42を外側弾性突部421とし、中央側に位置する弾性突部42を内側弾性突部422とする。
【0042】
図6Bに示すように、電池セル11の積層方向を積層基準C2とする。そして、複数の弾性突部42が最大圧縮負荷状態である場合に、電池セル11の対象面11a1のうち弾性突部42が当接する部位Pにおいて、積層基準C2に対する電池セル11の対象面11a1の法線の傾斜鋭角度を、θと定義する。
【0043】
ここで、電池セル11の傾斜鋭角度θと、無負荷状態における弾性突部42の傾斜鋭角度φbとは、式(1)の関係を有する。つまり、無負荷状態における弾性突部42の傾斜鋭角度φbは、電池セル11の傾斜鋭角度θ以上に設定されている。
φb ≧ θ ・・・ (1)
【0044】
ただし、電池セル11の対象面11a1は、上述したように、湾曲凸状に膨張するため、部位によって傾斜鋭角度θが異なる。そこで、電池セル11の対象面11a1のうち外側弾性突部421が当接する部位P1において、積層基準C2に対する電池セル11の対象面11a1の法線の傾斜鋭角度を、θ1と定義する。電池セル11の対象面11a1のうち内側弾性突部422が当接する部位P2において、積層基準C2に対する電池セル11の対象面11a1の法線の傾斜鋭角度を、θ2と定義する。部位P1の傾斜鋭角度θ1と部位P2の傾斜鋭角度θ2とは、式(2)の関係を有する。
θ1 > θ2 ・・・ (2)
【0045】
そして、電池セル11の部位P1の傾斜鋭角度θ1と、無負荷状態における弾性突部42の傾斜鋭角度φbとは、式(3)の関係を有する。また、電池セル11の部位P2の傾斜鋭角度θ2と、無負荷状態における弾性突部42の傾斜鋭角度φbとは、式(4)の関係を有する。つまり、無負荷状態における弾性突部42の傾斜鋭角度φbは、部位P1の傾斜鋭角度θ1以上であり、部位P2の傾斜鋭角度θ2以上に設定されている。
φb ≧ θ1 ・・・ (3)
φb ≧ θ2 ・・・ (4)
【0046】
次に、図6Cに示すように、弾性突部42が最大圧縮負荷状態である場合に、当該弾性突部42において、弾性基準C1に対する外側台形斜辺42cの傾斜鋭角度を、φaと定義する。ここで、弾性突部42は、無負荷状態に比べて、圧縮変形している。そのため、弾性突部42において、無負荷状態における外側台形斜辺42cの傾斜鋭角度φbと、最大負荷状態における外側台形斜辺42cの傾斜鋭角度φaとは、式(5)の関係を有する。
φa > φb ・・・ (5)
【0047】
ただし、電池セル11の対象面11a1が湾曲凸状に膨張するため、弾性突部42の部位によって傾斜鋭角度φaが異なる。そこで、外側弾性突部421の傾斜鋭角度を、φa1と定義し、内側弾性突部422の傾斜鋭角度を、φa2と定義する。
【0048】
そして、最大負荷状態における外側弾性突部421の傾斜鋭角度φa1と、電池セル11の部位P1の傾斜鋭角度θ1とは、式(3)(5)より、式(6)の関係を有する。傾斜鋭角度φa1は、傾斜鋭角度θ1より大きく設定されている。
φa1 > θ1 ・・・ (6)
【0049】
また、最大負荷状態における内側弾性突部422の傾斜鋭角度φa2と、電池セル11の部位P2の傾斜鋭角度θ2とは、式(4)(5)より、式(7)の関係を有する。傾斜鋭角度φa2は、傾斜鋭角度θ2より大きく設定されている。
φa2 > θ2 ・・・ (7)
【0050】
式(6)(7)の関係を有するように設定されることより、電池セル11の対象面11a1のうち所定の弾性突部421,422が当接する部位P1,P2において、満充電時における電池セル11の対象面11a1の法線が、台形形状の弾性突部421,422の内部に存在する状態となる。換言すると、満充電時において、弾性突部421,422が電池セル11の対象面11a1から受ける力線が、弾性突部421,422の内部に存在する状態となる。従って、満充電時において、電池セル11の対象面11a1が湾曲凸状に膨張した場合に、弾性突部421,422が電池セル11の対象面11a1から力を受けたとしても、弾性突部421,422は圧縮されるだけで、座屈や倒れを生じることを防止できる。その結果、第一緩衝シート40の弾性突部421,422は、電池セル11の満充電時に確実に弾性支持し、電池セル11の放電時に確実に反力を付与することができる。
【0051】
さらに、式(6)(7)の関係に加えて、式(3)(4)の関係を有するように設定されることにより、弾性突部421,422が無負荷状態から最大負荷状態に至るまで、確実に、弾性突部421,422が電池セル11の対象面11a1から受ける力線が、弾性突部421,422の内部に存在する状態となる。従って、確実に、弾性突部421,422に座屈や倒れを生じることを防止できる。
【0052】
さらに、第一緩衝シート40は、スリット43が第一方向に延びるように形成されている。そのため、スリット43が、電池セル11の対象面11a1と第一緩衝シート40との間に、空気を流通させる流路として機能する。従って、第一緩衝シート40がスリット43を有することにより、流通する空気による冷却機能を有することになる。その結果、電池セル11の発熱を抑制し、ひいては膨張を抑制することができる。
【0053】
(3.第一例の第一緩衝シート40の変形態様)
第一例の第一緩衝シート40において、複数の弾性突部42の当該断面形状は、同一形状に形成した。これに限られず、弾性突部42が無負荷状態である場合において、弾性突部42に関する傾斜鋭角度φbは、対象面11a1の部位P1,P2に応じて異なる角度に設定されるようにしてもよい。
【0054】
弾性突部42が無負荷状態である場合に、部位P1に対応する外側弾性突部421の傾斜鋭角度を、φb1(図5に示す)と定義し、内側弾性突部422の傾斜鋭角度を、φb2(図5に示す)と定義する。そして、外側弾性突部421の傾斜鋭角度φb1と、内側弾性突部422の傾斜鋭角度φb2とは、式(8)の関係を有するように設定される。
φb1 > φb2 ・・・ (8)
【0055】
つまり、式(2)のように、部位P1の傾斜鋭角度θ1が、部位P2の傾斜鋭角度θ2より大きくなることに対応させて、外側弾性突部421の傾斜鋭角度φb1を内側弾性突部422の傾斜鋭角度φb2より大きくなるように設定されている。これにより、各部位に応じて、適切な傾斜鋭角度φb1,φb2に設定している。
【0056】
(4.第二例の第一緩衝シート50)
第一緩衝シート14の一例としての第二例の第一緩衝シート50について図7および図5を参照して説明する。図7は、第一緩衝シート50の斜視図を示し、電池モジュール1,2に適用していない状態、すなわち無負荷状態の図である。図5は、図7における凹所53を通る断面形状に相当する。
【0057】
第二例の第一緩衝シート50は、ベース部41と、弾性突部52とを備える。弾性突部52は、格子状に形成されており、全体が一体的に接続されている。格子状の弾性突部52の中央には、凹所53が形成されている。つまり、弾性突部52において、電池セル11の対象面11a1と当接する面は、格子状となる。
【0058】
弾性突部52の凹所53を通る断面形状は、図5に示すようになる。ここで、図5に示す第一緩衝シート50の断面形状は、図7における第一緩衝シート50において、凹所53を通り、且つ、第二方向に平行な方向の断面形状を示す。つまり、弾性突部52は、当該断面において、複数配列されている状態となる。そこで、弾性突部52において、当該断面の方向(第二方向)を、第二配列方向と称する。
【0059】
また、弾性突部52は、凹所53を通り、且つ、第一方向に平行な方向の断面において、第二方向と同様に、複数配列されている状態となる。そこで、弾性突部52において、当該断面の第一方向を、第一配列方向と称する。つまり、弾性突部52は、第一配列方向において複数配列されると共に、第二配列方向において複数配列される。
【0060】
そして、弾性突部52の各断面形状は、図5に示すように、台形形状に形成されている。つまり、弾性突部52は、台形底辺42a、台形頂辺42b、外側台形斜辺42c、および、内側台形斜辺42dを備える。各辺42a,42b,42c,42dは、第一例と実質的に同様であるため、説明を省略する。従って、第一緩衝シート50は、第一例と実質的に同様の機能を発揮する。ただし、第二例の第一緩衝シート50においては、弾性突部52が格子状であるため、電池セル11の支持力を大きくすることができる。
【0061】
(5.第三例の第一緩衝シート60)
第一緩衝シート14の一例としての第三例の第一緩衝シート60について図8および図5を参照して説明する。図8は、第一緩衝シート60の斜視図を示し、電池モジュール1,2に適用していない状態、すなわち無負荷状態の図である。図5は、図8における凹所63を通り、且つ、第二方向に平行な断面形状に相当する。
【0062】
第三例の第一緩衝シート60は、ベース部41と、弾性突部62とを備える。弾性突部62は、第二例の第一緩衝シート50の弾性突部52のように格子状に形成されており、全体が一体的に接続されている。そして、格子状の弾性突部62の中央には、凹所63が形成されている。さらに、弾性突部62は、第一方向において、隣り合う凹所63,63同士を連通する空気連通溝64を有する。つまり、空気連通溝64の部分は、電池セル11の対象面11a1との間に隙間を有する状態となる。空気連通溝64は、弾性突部62における第二方向に延びる部分の全てに形成されている。
【0063】
従って、空気連通溝64は、第一例の第一緩衝シート40のスリット43と同様の機能を発揮する。すなわち、第一緩衝シート60が空気連通溝64を有することにより、空気連通溝64を流通する空気による冷却機能を有することになる。その結果、電池セル11の発熱を抑制し、ひいては膨張を抑制することができる。
【0064】
さらに、第三例の第一緩衝シート60は、弾性突部62が、高さの違いを有しつつも、格子状に形成されている。従って、第三例の第一緩衝シート60は、第一例の第一緩衝シート40に比べて、電池セル11の支持力を大きくすることができる。
【0065】
(6.第四例の第一緩衝シート70)
第一緩衝シート14の一例としての第四例の第一緩衝シート70について図9および図5を参照して説明する。図9は、第一緩衝シート70の斜視図を示し、電池モジュール1,2に適用していない状態、すなわち無負荷状態の図である。図5は、図9における凹所73を通り、且つ、第二方向に平行な断面形状に相当する。
【0066】
第四例の第一緩衝シート70は、ベース部41と、弾性突部72とを備える。弾性突部72は、第二例の第一緩衝シート50の弾性突部52と同様に格子状に形成されており、全体が一体的に接続されている。そして、格子状の弾性突部72の中央には、凹所73が形成されている。さらに、弾性突部72は、第一方向において、隣り合う凹所73,73同士を連通する空気連通孔74を有する。空気連通孔74は、弾性突部72における第二方向に延びる部分の全てに形成されている。
【0067】
従って、空気連通孔74は、第一例の第一緩衝シート40のスリット43と同様の機能を発揮する。すなわち、第一緩衝シート70が空気連通孔74を有することにより、空気連通孔74を流通する空気による冷却機能を有することになる。その結果、電池セル11の発熱を抑制し、ひいては膨張を抑制することができる。
【0068】
また、空気連通孔74は、弾性突部72における電池セル11の対象面11a1との当接面から離れた位置に形成されている。従って、弾性突部72において、電池セル11の対象面11a1と当接する面は、格子状となる。従って、第四例の第一緩衝シート70は、第一例の第一緩衝シート40に比べて、電池セル11の支持力を大きくすることができる。
【0069】
(7.第五例の第一緩衝シート80)
第一緩衝シート14の一例としての第五例の第一緩衝シート80について図10および図5を参照して説明する。図10は、第一緩衝シート80の斜視図を示し、電池モジュール1,2に適用していない状態、すなわち無負荷状態の図である。図5は、図10における弾性突部82を通る断面形状に相当する。
【0070】
第五例の第一緩衝シート80は、ベース部41と、複数の弾性突部82とを備える。複数の弾性突部82は、それぞれ独立しており、ベース部41の第一面41aから突出形成されている。特に、複数の弾性突部82は、第一面41aから電池セル11の対象面11a1に向かって、柱状に立設されている。図10においては、各弾性突部82は、円錐台形状に形成されている。ただし、各弾性突部82は、円錐台形状に限られず、四角錐台形状、その他の多角形錐台形状とすることもできる。
【0071】
従って、複数の弾性突部82は、第一方向(第一配列方向)に複数個独立して配列されると共に、第二方向(第二配列方向)に複数個独立して配列される。また、図10においては、複数の弾性突部82は、直交する第一方向と第二方向のそれぞれに配列する例を示す。つまり、近接する4個の弾性突部82が、長方形の頂点となるように配置されている。この他に、第一方向に代えて、第一方向および第二方向に対して角度を有する方向に複数個独立して配列するようにしてもよい。つまり、近接する4個の弾性突部82が、平行四辺形の頂点となるように配置してもよい。すなわち、第一方向と第二方向とは、交差する方向であればよい。
【0072】
そして、弾性突部82を通る断面形状は、図5に示すように、台形形状に形成されている。つまり、弾性突部82は、台形底辺42a、台形頂辺42b、外側台形斜辺42c、および、内側台形斜辺42dを備える。各辺42a,42b,42c,42dは、第一例と実質的に同様であるため、説明を省略する。従って、第一緩衝シート80は、第一例と実質的に同様の機能を発揮する。
【0073】
(8.第一例の第二緩衝シート90)
第二緩衝シート15の一例としての第一例の第二緩衝シート90について図11を参照して説明する。第一例の第二緩衝シート90は、ベース部31と、複数の第一弾性突部32と、複数の第二弾性突部33とを備える。ここで、第一例の第二緩衝シート90は、第一例の第一緩衝シート40に対して、ベース部41の第一面41a側に加えて第二面41b側にも、複数の弾性突部42を備える構成に相当する。
【0074】
第一例の第二緩衝シート90において、ベース部31は、平板状に形成されており、一方の電池セル11の対象面11a1から距離を隔てた第一面31a、および、他方の電池セル11の対象面11a1から距離を隔てた第二面31bを有する。
【0075】
複数の第一弾性突部32は、それぞれ独立しており、ベース部31の第一面31aから突出形成されている。複数の第一弾性突部32は、第一方向(第二方向に直交する方向)に延びる畝状に形成されている。第一弾性突部32は、第一例の弾性突部42と同様に、台形底辺32a、台形頂辺32b、外側台形斜辺32c、および、内側台形斜辺32dを備える。隣り合う第一弾性突部32の間には、第一方向に延びるスリット35が形成されている。
【0076】
複数の第二弾性突部33は、それぞれ独立しており、ベース部31の第二面31bから突出形成されている。複数の第二弾性突部33は、第一方向(第二方向に直交する方向)に延びる畝状に形成されている。第二弾性突部33は、第一例の弾性突部42と同様に、台形底辺33a、台形頂辺33b、外側台形斜辺33c、および、内側台形斜辺33dを備える。隣り合う第二弾性突部33の間には、第一方向に延びるスリット36が形成されている。
【0077】
第二緩衝シート90は、隣り合う電池セル11,11の間に挟まれている。そして、第二緩衝シート90は、ベース部31の両側面のそれぞれに、第一弾性突部32および第二弾性突部33を備えている。従って、第二緩衝シート90は、当該第二緩衝シート90を挟む隣り合う電池セル11,11に対して、第一例の第一緩衝シート40と同様に機能を発揮する。なお、第一例の第二緩衝シート90は、第二例から第五例の第一緩衝シート50,60,70,80の構成を適用することもできる。
【符号の説明】
【0078】
1,2:電池モジュール、 11:電池セル、 11a:筐体、 11a1:対象面、 11b:電極体、 12:電池セルの積層体、 13:拘束部材、 13a:第一拘束部材、 13b:第二拘束部材、 13c:連結部材、 14:第一緩衝シート、 15:第二緩衝シート、 21:ベース部、 22:弾性突部、 31:ベース部、 31a:第一面、 31b:第二面、 32:第一弾性突部、 32a:台形底辺、 32b:台形頂辺、 32c:外側台形斜辺、 32d:内側台形斜辺、 33:第二弾性突部、 33a:台形底辺、 33b:台形頂辺、 33c:外側台形斜辺、 33d:内側台形斜辺、 35,36:スリット、 40:第一緩衝シート、 41:ベース部、 41a:第一面、 41b:第二面、 42:弾性突部、 42a:台形底辺、 42b:台形頂辺、 42c:外側台形斜辺、 42d:内側台形斜辺、 43:スリット、 50:第一緩衝シート、 52:弾性突部、 53:凹所、 60:第一緩衝シート、 62:弾性突部、 63:凹所、 64:空気連通溝、 70:第一緩衝シート、 72:弾性突部、 73:凹所、 74:空気連通孔、 80:第一緩衝シート、 82:弾性突部、 90:第二緩衝シート、 421:外側弾性突部、 422:内側弾性突部、 C1:弾性基準、 C2:積層基準、 P,P1,P2:電池セルの対象面の部位、 θ,θ1,θ2:電池セルの対象面の法線の傾斜鋭角度、 φa,φa1,φa2:最大負荷状態における弾性突部の外側台形斜辺の傾斜鋭角度、 φb,φb1,φb2:無負荷状態における弾性突部の外側台形斜辺の傾斜鋭角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11