(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】シートコイル、変圧器
(51)【国際特許分類】
H01F 27/28 20060101AFI20220426BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
H01F27/28 M
H01F30/10 C
(21)【出願番号】P 2018129167
(22)【出願日】2018-07-06
【審査請求日】2021-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】霜村 英二
(72)【発明者】
【氏名】塩田 広
(72)【発明者】
【氏名】後藤 博
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 圭史
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-159278(JP,A)
【文献】特開2015-076588(JP,A)
【文献】特開2011-009433(JP,A)
【文献】実開昭59-036219(JP,U)
【文献】特開2015-065345(JP,A)
【文献】米国特許第06087922(US,A)
【文献】米国特許第02378884(US,A)
【文献】特開2016-015453(JP,A)
【文献】特開2012-256807(JP,A)
【文献】国際公開第96/027200(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/28
H01F 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状導体を巻回して形成されているシートコイルであって、
互いに同心状に配置されている複数のコイルを備え、
それぞれの前記コイルは、シート状導体を長手方向の途中で複数回折り曲げることにより螺旋状に巻回するとともに、シート状導体が折り曲げられている角部の前段側の部位と後段側の部位とが互いに直角になって
おり、
外周側に配置されている前記コイルは、角部において、当該角部の前段側の部位と後段側の部位とを繋ぐ内縁が、内周側に配置されている前記コイルの外縁に沿うように斜めに2回折り曲げられており、
内周側の前記コイルと外周側の前記コイルとの間のギャップを、全周に渡って均等になるように形成したシートコイル。
【請求項2】
外周側に配置されている前記コイルのシート状導体は、少なくとも1箇所の角部において、折り曲げる向きを逆にして2回折り曲げられている請求項1記載のシートコイル。
【請求項3】
複数の前記コイルは、互いのシート面が交互に重なるように配置されており、
それぞれの前記コイルのシート状導体を一括して、長手方向の途中で複数回折り曲げて螺旋状に巻回するとともに、シート状導体が折り曲げられている角部の前段側の部位と後段側の部位とが互いに直角になっている請求項1記載のシートコイル。
【請求項4】
複数の前記コイルは、互いのシート面が交互に重なるように配置されており、
それぞれの前記コイルのシート状導体を長手方向の途中で複数回折り曲げて螺旋状に巻回するとともに、シート状導体が折り曲げられている角部の前段側の部位と後段側の部位とが互いに直角になっており、
少なくとも1つの前記コイルのシート状導体は、少なくとも1箇所の角部において、他の前記コイルのシート状導体を跨ぐように折り曲げられている請求項1記載のシートコイル。
【請求項5】
他の前記コイルのシート状導体を跨ぐように折り曲げられている部位を、引き出し線を設ける1辺にまとめた請求項4記載のシートコイル。
【請求項6】
少なくとも1つの前記コイルは、少なくとも1辺のシート面が、前記コイルの内周側に配置される鉄心に対して傾斜している請求項1から5のいずれか一項記載のシートコイル。
【請求項7】
少なくとも1つの前記コイルは、シート状導体の巻回方向が他の前記コイルの巻回方向と逆向きになっており、
一方の前記コイルのシート状導体が巻回されているシート面の隙間に他方の前記コイルのシート状導体が挿入され、それぞれのシート状導体のシート面が重なるように配置され、双方の前記コイルによって全体として螺旋状に形成されている請求項1から6のいずれか一項記載のシートコイル。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項記載のシートコイルと、
前記シートコイルが巻回されている鉄心と、を備える変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、シート状導体を巻回して形成されているシートコイル、変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シート状導体を鉄心の周囲に巻回してコイルを形成することがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、変圧器の高周波化が求められるとともに、製造の容易さも求められている。
そこで、シート状導体を用いる場合において、高周波化を実現できるとともに、製造を容易に行うことができるシートコイル、変圧器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のシートコイルは、シート状導体を巻回して形成されているものであって、互いに同心状に配置されている複数のコイルを備え、それぞれのコイルは、シート状導体を長手方向の途中で複数回折り曲げることにより螺旋状に巻回するとともに、シート状導体が折り曲げられている角部の前段側の部位と後段側の部位とが互いに直角になっている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態のシートコイルを模式的に示す図
【
図3】シート状導体の折り曲げ態様を模式的に示す図
【
図4】第2実施形態のシートコイルの巻回態様を模式的に示す図
【
図6】シート状導体の折り曲げ態様を模式的に示す図
【
図7】第3実施形態のシートコイルの巻回態様を模式的に示す図
【
図9】シート状導体の折り曲げ態様を模式的に示す図
【
図10】第4実施形態のシートコイルの巻回態様を模式的に示す図
【
図11】第5実施形態のシートコイルの巻回態様を模式的に示す図
【
図13】シート状導体の折り曲げ態様を模式的に示す図
【
図16】第6実施形態のシートコイルの巻回態様を模式的に示す図
【
図18】シート状導体の折り曲げ態様を模式的に示す図
【
図19】第7実施形態のシートコイルの配置態様を模式的に示す図その1
【
図20】シートコイルの配置態様を模式的に示す図その2
【
図21】シートコイルの配置態様を模式的に示す図その3
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、説明の簡略化のために、各実施形態では、共通する構成については同一符号を付している。
【0008】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について
図1から
図3を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態のシートコイル1は、互いに同心状に配置された複数のコイル、ここでは内周側に配置されている第1コイル2aと、第1コイル2aの外周側に配置されている第2コイル2bとを備えている。これら第1コイル2aおよび第2コイル2bは、それぞれシート状導体3a、シート状導体3bを鉄心4の周囲に巻回するように配置され、鉄心4と共に図示しないタンクに収容されることにより例えば高周波用の変圧器5に用いられる。以下、各コイルまたは各シート状導体3に共通する内容については、符号a、bを付さずに説明することがある。
【0009】
第1コイル2aは、シート状導体3aを巻回して形成されており、所定の幅と長さとを有するシート状導体3aを、長手方向の途中で複数回折り曲げることにより、鉄心4の周囲を巻回する螺旋状に形成されている。また、第1コイル2aは、シート状導体3aを折り曲げている角部(Ra)の前段側の部位と後段側の部位とが、互いに直角になるように形成されている。このとき、シート状導体3aは、シート面が鉄心4に対して、つまりは、鉄心4に生じる磁束の向きに対して概ね垂直となるように配置されている。
【0010】
より具体的には、第1コイル2aの場合、
図2にシート面に垂直な平面視で示すように、シート状導体3aは、紙面手前方向を上向きとすると、巻き始め端(S)から鉄心4の外縁に沿って配置され、図示左下の角部(Ra)において下向きつまりは紙面奥側に向けて折り曲げられることで表裏が反転して図示上方に延び、図示左上の角部(Ra)において下向きに折り曲げられて図示右方に延び、図示右上の角部(Ra)において下向きに折り曲げられて図示下方に延び、図示右下の角部(Ra)において下向きに折り曲げられて図示左方に延びて1巻きとなっている。
【0011】
このとき、シート状導体3aは、細い円柱状の折り曲げ治具をシート面に当て、その治具の表面に沿うように折り曲げられている。このため、
図3に示すように、角部(R)は、厚み方向においてある程度の曲率を有する滑らかな形状、つまりは、シート状導体3aの断面積の変化が抑制された形状に形成されている。また、シート状導体3aは、1巻中に4箇所の角部(Ra)において折り曲げられており、巻き始め端(S)から巻き終わり端(T)までの間において、各角部(Ra)でシート面の位置が厚み方向に徐々に変化するように巻回されている。
【0012】
このため、第1コイル2aは、鉄心4の外縁に沿うように配置される4つの直線状の部位と、各部位を繋ぐ概ね45度に面取りされた態様の角部(Ra)とを有し、巻き始め端(S)から巻き終わり端(T)までシート状導体3aが螺旋状に巻回されており、全体として概ね角筒状に形成されている。
【0013】
第2コイル2bは、第1コイル2aと同様に、シート状導体3bを巻回して形成されており、所定の幅と長さとを有するシート状導体3bを長手方向の途中で複数回折り曲げることにより、鉄心4の周囲を巻回する螺旋状に形成されている。また、第2コイル2bは、シート状導体3bを折り曲げている角部(Rb)の前段側の部位と後段側の部位とが、互いに直角になるように形成されている。また、シート状導体3bは、シート面が鉄心4に対して概ね垂直となるように配置されている。
【0014】
このため、第2コイル2bも、第1コイル2aと同様に、鉄心4の外縁に沿うように配置される4つの直線状の部位、各部位を繋ぐ概ね45度に面取りされた態様の角部(Rb)とを有し、シート状導体3aが巻き始め端(S)から巻き終わり端(T)まで螺旋状に巻回されており、全体として概ね角筒状に形成されている。
【0015】
以上説明した実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
シートコイル1は、互いに同心状に配置されている複数のコイル、ここでは第1コイル2aと第2コイル2bとを備え、それぞれのコイルは、シート状導体3を長手方向の途中で複数回折り曲げることにより螺旋状に巻回するとともに、シート状導体3が折り曲げられている角部(R)の前段側の部位と後段側の部位とが互いに直角になっている。
【0016】
シート状導体3は、厚みが比較的薄いことから、単位導体当たりの漏洩磁束の鎖交量が少なくなり、高周波で通電する際の性能低下を抑制され、例えば変圧器5の高周波化を実現することができる。そして、シートコイル1は、シート状導体3を折り曲げることにより形成されているため、容易に製造することができる。
【0017】
また、シートコイル1は、シート状導体3が角部(R)においてある程度の曲率を持って滑らかな形状に折り曲げられている。これにより、シート状導体3を折り曲げる際に断面積の変化が少なくなり、いわゆる折り目を付けた状態とは異なり電流の流れが阻害されることが抑制される。したがって、シートコイル1の特性が悪化することを抑制できる。
【0018】
実施形態では第1コイル2aと第2コイル2bの巻回方向を
図2における図示時計回りで共通にした例を示したが、一方を図示時計回りとし、他方を図示反時計回りとする構成とすることもできる。その場合でも、上記したように大容量化や高周波化を実現できるとともに、製造を容易に行うことができる。
【0019】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について
図4から
図6を参照しながら説明する。第2実施形態では、第2コイル2bの折り曲げ態様が第1実施形態と異なっている。
【0020】
図3に示すように、本実施形態のシートコイル1は、互いに同心状に配置された複数のコイル、ここでは内周側に配置されている第1コイル2aと、第1コイル2aの外周側に配置されている第2コイル2bとを備えている。これら第1コイル2aおよび第2コイル2bは、シート状導体3bを鉄心4の周囲に巻回するように配置されている。このとき、各シート状導体3bは、シート面が鉄心4に対して概ね垂直となるように配置されている。
【0021】
第1コイル2aは、第1実施形態と共通する構成であり、角部(Ra)の外縁が、前段側および後段側の各部位とのなす角(α)が135度となっている。
一方、第2コイル2bは、角部(Rb)において、角部(Rb)の前段側の部位と後段側の部位とを繋ぐ内縁が、内周側に配置されている第1コイル2aの角部(Ra)の外縁に沿うように2回折り曲げられている。
【0022】
具体的には、第2コイル2bの場合、
図5にシート面に垂直な平面視で示すように、シート状導体3bは、紙面手前方向を上向きとすると、巻き始め端(S)から鉄心4の外縁に沿って配置され、図示左下の角部(Rb)において、内縁のなす角(β)が135度となるように下向きで1回折り曲げられた後、内縁のなす角(β)が135度となるように下向きでさらに1回折り曲げられている。つまり、シート状導体3bは、1つの角部(Rb)において、135度ずつ2回折り曲げられている。また、シート状導体3bは、他の角部(Rb)においても、それぞれ角部135度ずつ2回折り曲げられている。
【0023】
そのため、第2コイル2bは、鉄心4の外縁に沿うように配置される4つの直線状の部位と、各部位を繋ぐ概ね45度に面取りされた態様の角部(Rb)とを有し、
図6に示すように、シート状導体3bが巻き始め端(S)から巻き終わり端(T)まで、積層方向にギャップ(G21)を存した螺旋状に巻回された全体として概ね角筒状に形成されているとともに、各角部(Rb)において前段側の部位と後段側の部位とが直角になるとともに、角部(Rb)の内縁が第1コイル2aの角部(Ra)の外縁に沿う形状となっている。
【0024】
これにより、シートコイル1は、第1コイル2aと第2コイル2bとの間のギャップ(G20)が直線状の部位間、および角部(Ra)と角部(Rb)との間において、それぞれ同じ大きさになる。したがって、電磁力アンバランスが低減でき、例えば変圧器5に用いた場合の性能の低下等を抑制することができる。
【0025】
また、本実施形態のシートコイル1によっても、高周波で通電する際の性能低下を抑制され、例えば変圧器5の高周波化を実現することができるとともに、シート状導体3を折り曲げることにより形成できるため容易に製造することもできる。
【0026】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について
図7から
図9を参照しながら説明する。第3実施形態は、第2実施形態の変形例であり、角部(Rb)における折り曲げ態様が第2実施形態と異なっている。
【0027】
図7に示すように、本実施形態のシートコイル1は、互いに同心状に配置された複数のコイル、ここでは内周側に配置されている第1コイル2aと、第1コイル2aの外周側に配置されている第2コイル2bとを備えている。これら第1コイル2aおよび第2コイル2bは、シート状導体3bを鉄心4の周囲に巻回することにより形成されている。また、シート状導体3bは、シート面が鉄心4に対して概ね垂直となるように配置されている。
【0028】
第1コイル2aは、第1実施形態と共通する構成であり、角部(Ra)の外縁が、前段側および後段側の各部位とのなす角(α)が135度となっている。
一方、第2コイル2bは、第2実施形態と同様に、角部(Rb)において、角部(Rb)の前段側の部位と後段側の部位とを繋ぐ内縁が、内周側に配置されている第1コイル2aの角部(Ra)の外縁に沿うように2回折り曲げられている。このため、第1コイル2aと第2コイル2bとの間のギャップ(G30)が均一になっている。
【0029】
ただし、本実施形態では、第2コイル2bは、
図8にシート面に垂直な平面視で示すように、図示左下の角部(Rb1)と図示右上の角部(Rb1)とにおいては第2実施形態と同様に示左下の角部(Rb)において、内縁のなす角(β)が135度となるように下向きで2回回折り曲げている一方、図示左上の角部(Rb2)と図示右下の角部(Rb2)とにおいては、シート状導体3bを、内縁のなす角(β)が135度となるように下向きで1回折り曲げた後、逆向きつまりは上向きで内縁のなす角(β)が135度となるように折り曲げている。
【0030】
つまり、第1コイル2aの外周側に配置されている第2コイル2bでは、シート状導体3bは、少なくとも1箇所の角部(Rb2)において、折り曲げる向きを逆にして2回折り曲げられている。
【0031】
このため、
図9に示すように、積層方向におけるシート状導体3b間のギャップ(G31)を、均一且つ第2実施形態のギャップ(G21。
図6参照)よりも小さくすることが可能となり、例えば高周波の変圧器5に用いる場合において誘導性リアクタンスを小さくすることができる。したがって、第1実施形態と同様に、高周波で通電する際の性能低下を抑制され、例えば変圧器5の高周波化を実現することができるとともに、シート状導体3を折り曲げることにより形成できるため容易に製造することもできる。
【0032】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について
図10を参照しながら説明する。第4実施形態では、第1コイル2aおよび第2コイル2bの配置態様が、第1実施形態と異なっている。
【0033】
図10に示すように、本実施形態のシートコイル1は、互いのシート面が交互に重なるように配置されている第1コイル2aと第2コイル2bとを備えている。これら第1コイル2aおよび第2コイル2bは、それぞれのシート状導体3aおよびシート状導体3bを、一括して、つまりはシート面を平行にして互いに重ね合わせた状態で、長手方向の途中で複数回折り曲げて螺旋状に鉄心4に巻回されるとともに、角部(Ra、Rb)の前段側の部位と後段側の部位とが互いに直角になるように形成されている。このとき、各シート状導体3は、シート面が鉄心4に対して概ね垂直となるように配置されている。
【0034】
つまり、第1コイル2aおよび第2コイル2bは、それぞれを個別に見た場合において、鉄心4の外縁に沿うように配置される4つの直線状の部位と、各部位を繋ぐ概ね45度に面取りされた態様の角部とを有し、シート状導体3bが巻き始め端(S)から巻き終わり端(T)まで螺旋状に巻回された全体として概ね角筒状に形成されている。
【0035】
そして、これら第1コイル2aおよび第2コイル2bから構成されるシートコイル1も、鉄心4の外縁に沿うように配置される4つの直線状の部位と、各部位を繋ぐ概ね45度に面取りされた態様の角部とを有し、シート状導体3が巻き始め端(S)から巻き終わり端(T)まで螺旋状に巻回された全体として概ね角筒状に形成されている。
【0036】
このような構成によっても、第1実施形態と同様に、高周波で通電する際の性能低下を抑制され、例えば変圧器5の高周波化を実現することができるとともに、シート状導体3を折り曲げることにより形成できるため容易に製造することもできる。
また、各シート状導体3のシート面が平行になっているため、特に高周波動作において渦電流の偏りを低減することができ、銅損を低下させることができる。また、シートコイル1は、シート状導体3aとシート状導体3bとを重ねた状態で一括して折り曲げて形成されているため、製造をより容易に行うことができる。
【0037】
(第5実施形態)
以下、第5実施形態について
図11から
図15を参照しながら説明する。第5実施形態では、第1コイル2aおよび第2コイル2bの配置態様が、第1実施形態と異なっている。
【0038】
図11に示すように、本実施形態のシートコイル1は、互いのシート面が交互に重なるように配置されている第1コイル2aと第2コイル2bとを備えている。これら第1コイル2aおよび第2コイル2bは、シート状導体3bを長手方向の途中で複数回折り曲げて螺旋状に鉄心4を巻回するように設けられているとともに、シート状導体3bが折り曲げられている角部の前段側の部位と後段側の部位とが互いに直角になっている。
【0039】
また、シートコイル1は、第1コイル2aのシート状導体3aの巻回方向と第2コイル2bのシート状導体3bの巻回方向とが、互いに逆向きになっている。本実施形態の場合、第1コイル2aは平面視にて時計回り、第2コイル2bは平面視にて反時計回りに巻回方向が設定されており、第1コイル2aと第2コイル2bとで電流が流れる向きが互いに逆向きになっている。
【0040】
また、シートコイル1は、少なくとも1つのコイルのシート状導体3が、少なくとも1箇所の角部において、他のコイルのシート状導体3を跨ぐように折り曲げられている。本実施形態の場合、シートコイル1は、
図12に示すように、第1コイル2aのシート状導体3aが、1巻中の4箇所の角部(Ra)のうち1箇所の角部(Ra3)において第2コイル2bのシート状導体3bを跨ぐように折り曲げられている。また、シートコイル1は、第2コイル2bのシート状導体3bが、1巻中の4箇所の角部(Rb)のうち1箇所の角部(Rb3)において第1コイル2aのシート状導体3aを跨ぐように折り曲げられている。
【0041】
より具体的には、
図13に示すように、シート状導体3aは、巻き始め端(S)から図示左方に延びており、角部(Ra)において、第1実施形態で説明した態様で、角部(Ra)の前段側の部位と後段側の部位とが直角になるように折り曲げられている。このため、角部(Ra)において折り曲げられているシート状導体3aの高さ方向の幅(W1)は、概ねシート状導体3aの厚みの2倍に上記した曲率を形成するための寸法を加えた値となっている。
【0042】
一方、シート状導体3aは、角部(Ra3)においては、前段側の部位と後段側の部位とが直角になるように折り曲げられているとともに、シート状導体3bをその厚み方向に跨ぐ態様で折り曲げられている。そのため、角部(Ra3)において折り曲げられているシート状導体3aの高さ方向の幅(W2)は、その間に配置されているシート状導体3bの幅(W1)よりも大きく設定されている。
【0043】
同様に、シート状導体3bは、角部(Rb3)において前段側の部位と後段側の部位とが直角になるように折り曲げられているとともに、シート状導体3aをその厚み方向に跨ぐ態様で折り曲げられている。そのため、角部(Rb3)において折り曲げられているシート状導体3bの高さ方向の幅(W2)は、その間に配置されているシート状導体3aの幅(W1)よりも大きく設定されている。なお、本実施形態では、同一形状に形成したものをそれぞれ第1コイル2aおよび第2コイル2bとして用いている。
【0044】
これら第1コイル2aおよび第2コイル2bは、
図12に示すようにそれぞれ個別に折り曲げて製造されており、軸方向つまりは図示縦方向に隣り合うように配置して互いを相対的に回転させることにより、シート状導体3aとシート状導体3bとが交互に重なるように配置される。より平易に言えば、例えば第2コイル2bの巻き終わり端(T)を第1コイル2aの巻き始め端(S)と2巻目のシート状導体3aとの間に挿入し、第2コイル2bを第1コイル2aに対して相対的に回転させることで、第2コイル2bを言わばねじ込むようにしてシートコイル1が形成される。
【0045】
このとき、シートコイル1は、
図14にシート面側からの平面視で示すように、角部(Ra3、Rb3)には、角部(Ra、Rb)に比べると外側に若干突出した状態になる凸部6が形成されている。この凸部6は、他のコイルのシート状導体を跨ぐように折り曲げられている部位に相当する。このため、シート状導体3aとシート状導体3bとが高さ方向に交差することになる角部(Ra3、Rb3)においては、凸部6によってシート状導体3aとシート状導体3bとが接触することが回避されている。これにより、上記したように互いをねじ込むようにしてシートコイル1を形成することが可能になる。
【0046】
そして、シートコイル1は、第1コイル2aのシート状導体3aと第2コイル2bのシート状導体3bが交互に配置されているとともに、その巻回方向が逆向きになっている。例えば
図15に比較例として示すように、仮に第1コイル2aと第2コイル2bとを個別に重ねる構成とした場合、ハッチングにて示す電流密度の高い領域は、導体断面の両端側に分布するとともに、他方と対向する部分においては対向するシート面側に分布することになる。
【0047】
これに対して、実施例として示すように、本実施形態の構成であれば、シート状導体3aの場合には、シート面の上方と下方の両側に電流の向きが逆になるシート状導体3bが存在することから、電流密度の高い領域が導体断面に広く分布することになる。同様に、シート状導体3bの場合も、電流密度が高い領域が導体断面に広く分布することになる。これにより、交流抵抗を抑制することが可能となるとともに、その抑制効果は、特に高周波電流を流した場合において顕著になる。
【0048】
以上のように、シートコイル1は、互いのシート面が交互に重なるように配置されている複数の第1コイル2aおよび第2コイル2bを備えている。このとき、それぞれの第1コイル2aおよび第2コイル2bは、シート状導体3aあるいはシート状導体3bを長手方向の途中で複数回折り曲げて螺旋状に巻回するとともに、シート状導体3aあるいはシート状導体3bが折り曲げられている角部(Ra、Rb)の前段側の部位と後段側の部位とが互いに直角になっている。
【0049】
そして、少なくとも1つのコイルのシート状導体3は、少なくとも1箇所の角部において、他のコイルのシート状導体3を跨ぐように折り曲げられている。本実施形態の場合、第1コイル2aのシート状導体3a、および第2コイル2bのシート状導体3bが、それぞれ、角部(Ra3)と角部(Rb3)において、他方を跨ぐように折り曲げられている。
【0050】
このような構成によっても、第1実施形態と同様に、高周波で通電する際の性能低下を抑制され、例えば変圧器5の高周波化を実現することができるとともに、シート状導体3を折り曲げることにより形成できるため容易に製造することもできる。
【0051】
また、少なくとも1箇所の角部において他のコイルのシート状導体3を跨ぐように折り曲げることにより、それぞれのシート状導体3のシート面が重なるように配置される第1コイル2aと第2コイル2bとを個別に製造することが可能になるとともに、互いを相対的に回転させてねじ込むようにしてシートコイル1を形成することができ、製造を容易に行うことができる。また、本実施形態のように同一形状に形成したものを第1コイル2aおよび第2コイル2bとして用いることにより、製造管理の手間を削減することもできる。
【0052】
また、第1コイル2aと第2コイル2bとで巻回方向を逆にして互いにシート面が重なるように配置することにより、交流抵抗を抑えることが可能となり、性能の低下を抑制することができる。
【0053】
(第6実施形態)
以下、第6実施形態について
図16から
図18を参照しながら説明する。第6実施形態は、第5実施形態の変形例であり、凸部6の位置を1辺に纏める点において第5実施形態と異なっている。
【0054】
図16に示すように、本実施形態のシートコイル1は、互いのシート面が交互に重なるように配置されている第1コイル2aと第2コイル2bとを備えている。これら第1コイル2aおよび第2コイル2bは、シート状導体3を長手方向の途中で複数回折り曲げて螺旋状に鉄心4を巻回するように設けられているとともに、シート状導体3が折り曲げられている角部の前段側の部位と後段側の部位とが互いに直角になっている。
【0055】
また、シートコイル1は、少なくとも1つのコイルのシート状導体3が、少なくとも1箇所の角部において、他のコイルのシート状導体3を跨ぐように折り曲げられている。本実施形態の場合、シートコイル1は、第1コイル2aのシート状導体3aが、1巻中の4箇所の角部(Ra)のうち1箇所の角部(Ra4)において第2コイル2bのシート状導体3bを跨ぐように折り曲げられている。また、シートコイル1は、第2コイル2bのシート状導体3bが、1巻中の4箇所の角部(Rb)のうち1箇所の角部(Rb4)において第1コイル2aのシート状導体3aを跨ぐように折り曲げられている。
【0056】
このとき、第1コイル2aおよび第2コイル2bの巻き始め端(S)と巻き終わり端(T)は、平面視における4つの辺のうち1辺に纏められている。これら巻き始め端(S)と巻き終わり端(T)には、
図18にシート面側から見た平面視で示すように、引き出し線7がそれぞれ接続されている。本実施形態では、巻き始め端(S)と巻き終わり端(T)において、シート状導体3aとシート状導体3bを外側にさらに折り曲げることにより、シート状導体3aとシート状導体3bの端部を引き出し線7としている。なお、巻き始め端(S)と巻き終わり端(T)に別途配線部材を接続することで引き出し線7を形成することもできる。
【0057】
この引き出し線7は、外部の配線と接続されるため、シートコイル1の外縁から外に向かって延びている。つまり、シートコイル1は、構造上、引き出し線7が引き出させる側にスペースが必要となっている。そして、角部(Ra4)および角部(Rb4)に形成される凸部6は、平面視における4つの辺のうち、第1コイル2aおよび第2コイル2bの巻き始め端(S)と巻き終わり端(T)が位置する1辺に纏められ、引き出し線7が引き出させる方向に突出する状態で形成されている。
【0058】
具体的には、第1コイル2aのシート状導体3aは、角部(Ra4)において、角部(Ra4)まで延びている前段側の部位を長手方向にシート面を折り返す態様で、シート状導体3bを跨ぐことが可能な幅(W3)で折り曲げられている。このため、凸部6は、角部(Ra4)の前段側のシート状導体3aを延長した側であって、
図17に示すようにシート状導体3bよりも外側つまりは引き出し線7が引き出される側に形成される。
【0059】
また、第2コイル2bのシート状導体3bは、角部(Rb4)において一旦巻回方向とは逆側に折り曲げられた後、シート面を折り返す態様で巻回方向に向けてさらに折り曲げられている。このため、第2コイル2bの場合にも、凸部6は、第1コイル2aと同様に引き出し線7が引き出される側に形成される。
【0060】
以上のように、本実施形態のシートコイル1は、少なくとも1つのコイルのシート状導体3が、少なくとも1箇所の角部において、他のコイルのシート状導体3を跨ぐように折り曲げられている状態において、他のコイルのシート状導体3を跨ぐように折り曲げられている部位である凸部6を、引き出し線7を設けて引き出す側となる1辺にまとめている。
【0061】
このような構成によっても、第1実施形態と同様に、高周波で通電する際の性能低下を抑制され、例えば変圧器5の高周波化を実現することができるとともに、シート状導体3を折り曲げることにより形成できるため容易に製造することもできる。
【0062】
また、引き出し線7を接続する側の1辺に凸部6をまとめている。このため、凸部6を設けることでシートコイル1の外縁が若干膨らんだ状態になったとしても、その膨らんだ部位は元々スペースが必要とされる側に形成されることから、例えば変圧器5として用いる場合であってもタンクが大型化することを抑制できる。
【0063】
(第7実施形態)
以下、第7実施形態について
図19から
図21を参照しながら説明する。第7実施形態は、シート状導体3のシート面を鉄心4に対して傾斜させている点において他の実施形態と異なっている。
【0064】
例えば、
図19に示すように、シートコイル1は、環状に形成されている鉄心4の2脚にそれぞれ設けられているとともに、鉄心4の内周側となる脚部間の領域(K)に配置される辺が、鉄心4の表面に対して、より厳密に言えば、鉄心4を流れる磁束の向きに対して傾斜するように配置されている。なお、ここでは図示上下方向がそのまま変圧器5の上下方向になることを想定している。
【0065】
あるいは、
図20に示すように、鉄心4の内周側となる脚部間の領域(K)に配置される辺のうち、半分を鉄心4の表面に対して図示上方側に傾斜させ、残りの半分を鉄心4に対して図示下方側に傾斜させる構成とすることもできる。
【0066】
このように、少なくとも1つのコイルについて、少なくとも1辺のシート面が、コイルの内周側に配置される鉄心4に対して傾斜している。これにより、熱を運ぶ流体例えば絶縁油において、上方に向かう流路抵抗が低減され、熱伝達の向上つまりは放熱性の向上を図ることができる。そして熱がこもりやすい鉄心4の脚部間の辺を傾斜させることで、放熱をより一層促すことができ、変圧器5の温度上昇を抑制することができる。
【0067】
この場合、
図21に示すように、シートコイル1の全体を、鉄心4の表面に対して傾斜させる構成とすることもできる。このような構成によっても、熱がこもりやすい鉄心4の脚部間において、タンク内の例えば絶縁油の対流を促すことができ、鉄心4の脚部間からの放熱を促すことができる。
【0068】
また、シートコイル1は、シート面を傾斜させない状態でまず製造し、1辺を傾斜させた後に鉄心4に設けることができる。これにより、1辺が傾斜するシートコイル1を容易に製造することができる。なお、鉄心4に設けた後に1辺を傾斜させることもできる。
【0069】
また、
図19から
図21では第6実施形態で説明したシートコイル1を設ける構成を例示しているが、第1実施形態から第5実施形態で説明したシートコイル1を設ける構成とすることもできる。この場合、第1コイル2aと第2コイル2bとを同心状に配置する場合には、第1コイル2aまたは第2コイル2bの一方についてシート面を鉄心4に対して傾斜するように配置することもできるし、第1コイル2aおよび第2コイル2bの双方のシート面を鉄心4に対して傾斜するように配置することもできる。
【0070】
各実施形態で示したコイルの数は一例であり、3つ以上のコイルを同心状に配置したり、3つ以上のシート状導体3を重ねたりする構成であってもよい。
また、各実施形態で例示したシートコイル1と、そのシートコイル1が巻回される変圧器5によっても、シート状導体3を用いる場合において、高周波化を実現できるとともに、製造を容易に行うことができる。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
図面中、1はシートコイル、2aは第1コイル(コイル)、2bは第2コイル(コイル)、3、3a、3bはシート状導体、4は鉄心、5は変圧器、6は凸部(シート状導体を跨ぐように折り曲げられている部位)、7は引き出し線を示す。