(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】充放電制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/26 20060101AFI20220426BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220426BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20220426BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20220426BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20220426BHJP
B60W 20/12 20160101ALI20220426BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20220426BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20220426BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
B60W10/26 900
H02J7/00 P ZHV
H02J7/00 B
H02J7/10 A
B60K6/48
B60W10/08 900
B60W20/12
B60L3/00 S
B60L50/16
B60L15/20 J
(21)【出願番号】P 2018133015
(22)【出願日】2018-07-13
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】坂下 大樹
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-35964(JP,A)
【文献】特開2017-218053(JP,A)
【文献】特開平10-150701(JP,A)
【文献】特開2012-130213(JP,A)
【文献】特開2001-169408(JP,A)
【文献】特開2015-155261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-20/50
H02J 7/00- 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源としてモータージェネレーターを有するハイブリッド車両に搭載されたバッテリーの充放電を制御する充放電制御装置であって、
現在位置を起点とした予定走行経路を取得する経路情報取得部と、
前記予定走行経路での位置エネルギーの変化に基づき前記バッテリーの充電率の推移を推定し、前記予定走行経路での放電過多区間と充電過多区間とを特定する区間特定部と、
前記モータージェネレーターの出力を制御することにより前記バッテリーの充放電を制御する充放電制御部とを備え、
前記充電過多区間は、前記充電率が最大充電率まで上昇しつづけたのちに前記最大充電率に維持される区間を含み、
前記放電過多区間は、前記充電率が最小充電率まで低下しつづけたのちに前記最小充電率に維持される区間を含み、
前記充放電制御部は、前記充電過多区間における充電電流を前記充電過多区間の終点において前記充電率が前記最大充電率に到達する一定の充電電流に制限し、前記放電過多区間における放電電流を前記放電過多区間の終点において前記充電率が前記最小充電率に到達する一定の放電電流に制限する
充放電制御装置。
【請求項2】
前記充電過多区間は、前記充電率が前記最小充電率から前記最大充電率まで上昇したのちに前記最大充電率に維持される区間を含んでいるとともに前記充電率が前記最小充電率から前記最大充電率まで上昇するまでの区間に一時的な放電区間を含む
請求項1に記載の充放電制御装置。
【請求項3】
前記充電過多区間は、前記充電率が前記最大充電率に維持される区間に一時的な放電区間を含む
請求項1または2に記載の充放電制御装置。
【請求項4】
前記放電過多区間は、前記充電率が前記最大充電率から前記最小充電率まで低下したのちに前記最小充電率に維持される区間を含んでいるとともに前記充電率が前記最大充電率から前記最小充電率まで低下するまでの間に一時的な充電区間を含む
請求項1~3のいずれか一項に記載の充放電制御装置。
【請求項5】
前記放電過多区間は、前記充電率が前記最小充電率に維持される区間に一時的な充電区間を含む
請求項1~4のいずれか一項に記載の充放電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両に搭載されたモータージェネレーターの出力を制御することによりバッテリーの充放電を制御する充放電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動力源としてエンジンとモータージェネレーターとを有するハイブリッド自動車が知られている。ハイブリッド自動車は、発進時といったエンジンの燃焼効率が低いときにモータージェネレーターをモーターとして駆動してエンジンをアシストすることにより燃費向上を図ることができる。こうしたモータージェネレーターに電力を供給するバッテリーは、その温度であるバッテリー温度が過度に高くなると熱劣化が進行しやすくなる。そのため、例えば特許文献1には、バッテリー温度が所定の制限温度以上にあるときにモータージェネレーターの出力を制限することにより、すなわちバッテリーの充放電を制限することによりバッテリー温度の過度な上昇を抑える技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法では、バッテリー温度の過度な上昇を抑えることが可能であるものの、バッテリー温度に起因して充放電が制限されることでバッテリーの充放電量を確保することが困難となり、燃費の悪化などを招くおそれがあった。
【0005】
本発明は、バッテリー温度の上昇を抑えつつバッテリーの充放電量を確保することのできる充放電制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する充放電制御装置は、動力源としてモータージェネレーターを有するハイブリッド車両に搭載されたバッテリーの充放電を制御する充放電制御装置であって、現在位置を起点とした予定走行経路を取得する経路情報取得部と、前記予定走行経路での位置エネルギーの変化に基づき前記バッテリーの充電率の推移を推定し、前記予定走行経路での放電過多区間と充電過多区間とを特定する区間特定部と、前記モータージェネレーターの出力を制御することにより前記バッテリーの充放電を制御する充放電制御部とを備え、前記充電過多区間は、前記充電率が最大充電率まで上昇しつづけたのちに前記最大充電率に維持される区間を含み、前記放電過多区間は、前記充電率が最小充電率まで低下しつづけたのちに前記最小充電率に維持される区間を含み、前記充放電制御部は、前記充電過多区間における充電電流を前記充電過多区間の終点において前記充電率が前記最大充電率に到達する一定の充電電流に制限し、前記放電過多区間における放電電流を前記放電過多区間の終点にて前記充電率が前記最小充電率に到達する一定の放電電流に制限する。
【0007】
充電過多区間においては充電率が最大充電率に到達する充電量が確保されることから、バッテリー温度の上昇を抑えつつ充電過多区間の終点において充電率を最大充電率に到達させることが可能である。また、放電過多区間においては充電率が最小充電率に到達する放電量が確保されることから、バッテリー温度の上昇を抑えつつ放電過多区間の終点において充電率を最小充電率に到達させることが可能である。すなわち、上記構成によれば、バッテリー温度の上昇を抑えつつバッテリーの充放電量を確保することができる。
【0008】
上記構成の充放電制御装置において、前記充電過多区間は、前記充電率が前記最小充電率から前記最大充電率まで上昇したのちに前記最大充電率に維持される区間を含んでいるとともに前記充電率が前記最小充電率から前記最大充電率まで上昇するまでの区間に一時的な放電区間を含むことが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、より長い区間が充電過多区間に設定されることから、予定走行経路のうちで一定の充電電流に制限される区間の割合を高めることができる。その結果、バッテリー温度の上昇を効果的に抑えつつバッテリーの充放電量を確保することができる。
【0010】
上記構成の充放電制御装置において、前記充電過多区間は、前記充電率が前記最大充電率に維持される区間に一時的な放電区間を含むことが好ましい。
上記構成によれば、さらに長い区間が充電過多区間に設定されることから、予定走行経路のうちで一定の充電電流に制限される区間の割合をさらに高めることができる。その結果、バッテリー温度の上昇をさらに効果的に抑えつつバッテリーの充放電量を確保することができる。
【0011】
上記構成の充放電制御装置において、前記放電過多区間は、前記充電率が前記最大充電率から前記最小充電率まで低下したのちに前記最小充電率に維持される区間を含んでいるとともに前記充電率が前記最大充電率から前記最小充電率まで低下するまでの間に一時的な充電区間を含むことが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、より長い区間が放電過多区間に設定されることから、予定走行経路のうちで一定の放電電流に制限される区間の割合を高めることができる。その結果、バッテリー温度の上昇を効果的に抑えつつバッテリーの充放電量を確保することができる。
【0013】
上記構成の充放電制御装置において、前記放電過多区間は、前記充電率が前記最小充電率に維持される区間に一時的な充電区間を含むことが好ましい。
上記構成によれば、さらに長い区間が放電過多区間に設定されることから、予定走行経路のうちで一定の放電電流に制限される区間の割合をさらに高めることができる。その結果、バッテリー温度の上昇をさらに効果的に抑えつつバッテリーの充放電量を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】充放電制御装置の一実施形態を搭載したハイブリッド自動車の概略構成を模式的に示す機能ブロック図。
【
図3】(a)経路情報の一例における現在位置情報を模式的に示す図、(b)経路情報の一例における区間情報を模式的に示す図。
【
図4】ハイブリッドECUの一例を示す機能ブロック図。
【
図5】(a)充電過多区間の一例を示す図、(b)充電過多区間の他例を示す図。
【
図6】(a)放電過多区間の一例を示す図、(b)放電過多区間の他例を示す図。
【
図7】通常制御の一例において、予定走行経路、充電率の推定推移、充放電電流、および、バッテリー温度の関係を示す図。
【
図8】温度上昇抑制制御の一例において、予定走行経路、充電率の推定推移、充放電電流、および、バッテリー温度の関係を示す図。
【
図9】温度上昇抑制制御の他例において、充電率の推定推移と充放電電流との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1~
図9を参照して、充放電制御装置の一実施形態について説明する。
図1に示すように、ハイブリッド自動車である車両10は、動力源としてエンジン11とモータージェネレーター(以下、M/Gという)12とを備えている。エンジン11の回転軸13とM/G12の回転軸14とは、クラッチ15で断接可能に接続されている。M/G12の回転軸14は、トランスミッション16および駆動軸17などを介して駆動輪18に接続されている。
【0016】
エンジン11は、例えば複数の気筒を有するディーゼルエンジンであり、各気筒において燃料が燃焼することにより回転軸13を回転させるトルクを発生させる。エンジン11が発生させたトルクは、クラッチ15が接続状態にあるときに、M/G12の回転軸14、トランスミッション16、および、駆動軸17を介して駆動輪18に伝達される。
【0017】
M/G12は、インバーター21を介してバッテリー20に電気的に接続されている。バッテリー20は、充放電可能な二次電池であり、互いに電気的に接続された複数のセルで構成されている。M/G12は、バッテリー20に蓄電された電力がインバーター21を介して供給されることにより、回転軸14を回転させてエンジン11をアシストするモーターとして機能する。M/G12がモーターとして機能する際に発生させるモータートルクTmは、トランスミッション16および駆動軸17を介して駆動輪18に伝達される。また、M/G12は、例えばアクセルオフ時における回転軸14の回転を利用して発電した電力をインバーター21を介してバッテリー20に蓄電するジェネレーターとして機能する。M/G12がジェネレーターとして機能する際に発生させる制動トルクは回生トルクTrである。
【0018】
トランスミッション16は、M/G12の回転軸14が有するトルクを変速し、その変速したトルクを駆動軸17を介して駆動輪18に伝達する。トランスミッション16は、複数の変速比Rtを設定可能に構成されている。
【0019】
インバーター21は、M/G12をモーターとして機能させる場合、バッテリー20からの直流電圧を交流電圧に変換してM/G12に電力を供給する。また、インバーター21は、M/G12をジェネレーターとして機能させる場合、M/G12からの交流電圧を直流電圧に変換してバッテリー20に供給し、バッテリー20を充電する。
【0020】
車両10においては、これらM/G12、インバーター21、および、バッテリー20を高圧系部品として高圧電気回路が構成されている。以下では、インバーター21からM/G12に電力が供給されているときにバッテリー20に流れる電流を放電電流といい、インバーター21からバッテリー20に電力が供給されているときにバッテリー20に流れる電流を充電電流という。
【0021】
上述したエンジン11、クラッチ15、インバーター21、および、トランスミッション16などは、車両10を統括制御する制御装置30に制御される。
制御装置30は、ハイブリッドECU31、エンジンECU32、インバーターECU33、バッテリーECU34、トランスミッションECU35、情報ECU37などで構成されており、各ECU31~37は、例えばCAN(Control Area Network)を介して互いに接続されている。
【0022】
各ECU(Electronic Control Unit)31~37は、プロセッサ、メモリ、入力インターフェース、および、出力インターフェース等がバスを介して互いに接続されたマイクロコントローラーを中心に構成されている。各ECU31~37は、車両10の状態に関する情報である状態情報を入力インターフェースを介して取得し、その取得した状態情報、および、メモリに格納された制御プログラムや各種のデータに基づいて各種の処理を実行する。
【0023】
ハイブリッドECU31は、各ECU32~37が出力した各種の状態情報を入力インターフェースを介して取得する。例えば、ハイブリッドECU31は、エンジンECU32からの信号に基づき、ドライバーからの要求トルクTdrvとエンジン11の回転軸13の回転数であるエンジン回転数Neを取得する。ハイブリッドECU31は、インバーターECU33からの信号に基づき、M/G12の回転軸14の回転数であるモーター回転数Nmを取得する。ハイブリッドECU31は、バッテリーECU34からの信号に基づき、バッテリー電圧やバッテリー20の充電率SOCを取得する。ハイブリッドECU31は、トランスミッションECU35からの信号に基づき、クラッチ15の断接状態、トランスミッション16における変速比Rtなどを取得する。ハイブリッドECU31は、情報ECU37からの信号に基づいて車速vや経路情報などを取得する。
【0024】
ハイブリッドECU31は、取得した情報に基づいて各種制御信号を生成し、その生成した制御信号を出力インターフェースを介して各ECU32~37に出力する。ハイブリッドECU31は、エンジン11への指示トルクであるエンジン指示トルクTerefを演算し、その演算したエンジン指示トルクTerefを示す制御信号をエンジンECU32に出力する。ハイブリッドECU31は、M/G12に対する指示トルクであるモーター指示トルクTmrefを演算し、その演算したモーター指示トルクTmrefを示す制御信号をインバーターECU33に出力する。ハイブリッドECU31は、クラッチ15の断接を指示する制御信号、および、トランスミッション16における変速比Rtを指示する制御信号をトランスミッションECU35に出力する。
【0025】
エンジンECU32は、エンジン回転数Neおよびアクセルペダル51のアクセル開度ACCを取得するとともに、ハイブリッドECU31から入力されたエンジン指示トルクTerefの分のトルクが回転軸13に作用するように燃料噴射量や噴射タイミングなどを制御する。エンジンECU32は、アクセル開度ACCおよびエンジン回転数Neなどに基づいてドライバーからの要求トルクTdrvを演算し、その演算した要求トルクTdrvをハイブリッドECU31に出力する。
【0026】
インバーターECU33は、モーター回転数Nmを取得するとともに、ハイブリッドECU31から入力されたモーター指示トルクTmrefの分のトルクが回転軸14に作用するようにインバーター21を制御する。
【0027】
バッテリーECU34は、バッテリー20の充放電電流Iを監視し、該充放電電流Iの積算値に基づいてバッテリー20の充電率SOCを演算する。バッテリーECU34は、バッテリー20の充放電電流Iのほか、バッテリー電圧を取得する。
【0028】
トランスミッションECU35は、ハイブリッドECU31からのクラッチ15の断接要求に応じてクラッチ15の断接を制御する。また、トランスミッションECU35は、ハイブリッドECU31からの変速比Rtを示す制御信号に基づいてトランスミッション16の変速比Rtを制御する。
【0029】
情報ECU37は、情報取得部53の構成要素である各種センサーからの信号に基づいて各種情報を取得し、その取得した情報をハイブリッドECU31に出力する。例えば、情報ECU37は、車速センサーからの信号に基づく車両10の車速vを取得し、その取得した車速vをハイブリッドECU31に出力する。
【0030】
また、情報ECU37は、車両10の現在位置を示す現在位置情報と、現在位置を起点として車両10が走行する予定の経路である予定走行経路の各区間についての情報である区間情報とで構成された経路情報を取得する。予定走行経路は、例えば数km~数十kmの範囲で取得される。
【0031】
情報取得部53は、上述した経路情報に関わる装置として例えばロケータ装置やカーナビゲーション装置といった経路情報生成部54を有している。これらロケータ装置やカーナビゲーション装置は、道路の各位置の座標が規定された道路位置情報、各位置についての標高が規定された標高情報、例えば高速道路といった道路の分類が道路の各位置について規定された分類情報などが関連付けられた地図情報を有している。
【0032】
ロケータ装置は、衛星測位システムを通じて車両10の現在位置を示す現在位置情報を取得する。ロケータ装置は、その現在位置情報と地図情報とに基づいて予定走行経路を設定し、その設定した予定走行経路についての区間情報を生成する。
【0033】
カーナビゲーション装置は、衛星測位システムを通じて車両10の現在位置を示す現在位置情報を取得する。カーナビゲーション装置は、ドライバーが設定した目的地までの経路などを予定走行経路に設定し、その予定走行経路についての区間情報を生成する。
【0034】
図2に示すように、予定走行経路が設定された場合、経路情報は、
図3(a)に示す現在位置情報と
図3(b)に示す区間情報とで構成される。
図3(a)に示すように、現在位置情報は、現在位置P0、現在位置P0の標高H0、および、その分類によって構成される。
図3(b)に示すように、区間情報は、ノードを結ぶ区間を単位区間として、その単位区間の終点位置Pk、標高Hk、区間長さLk、勾配値θk(kは1以上の整数)、および、分類などによって構成される。
【0035】
ハイブリッドECU31は、情報ECU37から入力される各種情報に基づき、車両10が高速道路を高速走行中にある場合におけるバッテリー20の充放電の制御として高速走行時充放電制御を実行する。
【0036】
ハイブリッドECU31は、高速走行時充放電制御に関する各種プログラムの実行により機能する各種機能部として、取得部61、重量演算部62、制御選択部63、走行抵抗設定部64、区間特定部65、および、トルク制御部66を有している。
【0037】
取得部61は、経路情報取得部として、情報ECU37が出力した経路情報を取得するとともに車速vを取得する。また、取得部61は、アクセル開度ACC、エンジン回転数Ne、および、トランスミッション16における変速比Rtなどを取得する。
【0038】
重量演算部62は、車両10の自重Wを演算する。重量演算部62は、例えば、アクセル開度ACC、エンジン回転数Ne、車速v、および、トランスミッション16における変速比Rtなどに基づいて車両10の自重Wを演算する。
【0039】
制御選択部63は、取得部61が取得した各種情報に基づいて、M/G12の出力についての制御態様を選択する。制御選択部63は、経路情報や車速vに基づいて車両10が高速道路を高速走行中(例えば車速が60km/h以上)にある場合に温度上昇抑制制御を選択し、それ以外の場合は通常制御を選択する。
【0040】
走行抵抗設定部64は、区間情報における各単位区間についての走行抵抗を設定する。走行抵抗設定部64は、各区間の勾配値θkに基づく勾配抵抗、道路の分類に基づく転がり抵抗などに対して車両の形状に応じた空気抵抗を加味したうえで各区間に対して走行抵抗を設定する。
【0041】
区間特定部65は、予定走行経路における充電率SOCの推移を推定して放電過多区間Tdと充電過多区間Tcとを特定する。
区間特定部65は、自重Wの車両10が一定の車速vで予定走行経路を高速走行するものとして充電率SOCの推移を推定する。区間特定部65は、自重Wと区間ごとの標高差との基づく位置エネルギーの変化に対して、車速v、走行抵抗、および、区間長さに基づく抵抗損失、ならびに、M/G12やインバーター21の変換効率などを加味したうえで予定走行経路におけるバッテリー20の充電率SOCの推移を推定する。そして、区間特定部65は、充電率SOCの推移に基づいて予定走行経路における充電過多区間Tcおよび放電過多区間Tdを設定する。
【0042】
充電過多区間Tcは、充電率SOCが最小充電率SOC1から最大充電率SOC2まで上昇する上昇区間と充電率SOCが最大充電率SOC2に維持される最大維持区間とで構成される。例えば、充電過多区間Tcは、
図5(a)に示すように、充電率SOCが最大充電率SOC2まで上昇し続ける区間である連続上昇区間71と連続上昇区間71に続いて充電率SOCが最大充電率SOC2に維持される最大維持区間72とで構成される。また例えば、充電過多区間Tcは、
図5(b)に示すように、上昇区間73の途中に充電率SOCが最小充電率SOC1に到達することのない一時的な放電区間74を含むものである。また充電過多区間Tcは、充電率SOCが最小充電率SOC1に到達することのない一時的な放電区間75を最大維持区間76に含むものである。
【0043】
放電過多区間Tdは、充電率SOCが最大充電率SOC2から最小充電率SOC1まで低下する低下区間と充電率SOCが最小充電率SOC1に維持される最小維持区間とで構成される。例えば、放電過多区間Tdは、
図6(a)に示すように、充電率SOCが最小充電率SOC1まで低下し続ける区間である連続低下区間81と連続低下区間81に続いて充電率SOCが最小充電率SOC1に維持される最小維持区間82とで構成される。また例えば、放電過多区間Tdは、
図6(b)に示すように、低下区間83の途中に充電率SOCが最大充電率SOC2に到達することのない一時的な充電区間84を含むものである。また放電過多区間Tdは、充電率SOCが最大充電率SOC2に到達することのない一時的な充電区間85を最小維持区間86に含むものである。
【0044】
トルク制御部66は、充放電制御部としてM/G12の出力を制御することによりバッテリー20の充放電を制御する。トルク制御部66は、経路情報や車速vに基づいて、車両10が高速道路での高速走行中である場合に温度上昇抑制制御を実行し、それ以外の場合は通常制御を実行する。通常制御において、トルク制御部66は、位置エネルギーの変化に従うようにその時々の走行状態に応じて、モータートルクTmに関しては燃費が最も高くなるように、また、回生トルクTrに関しては最短時間で最大充電率SOC2に到達するようにモーター指示トルクTmrefを制御する。
【0045】
温度上昇抑制制御において、トルク制御部66は、充電過多区間Tcについては充電過多区間Tcの終点において充電率SOCが最大充電率SOC2に到達する一定の充電電流を上限値としてM/G12の出力を制御する。また、トルク制御部66は、放電過多区間Tdについては放電過多区間Tdの終点において充電率SOCが最小充電率SOC1に到達する一定の放電電流を上限値としてM/G12の出力を制御する。
【0046】
図7および
図8を参照して、温度上昇抑制制御の一例について説明する。まず、
図7を参照してM/G12の出力を通常制御で制御した場合のバッテリー温度の推移について説明する。上述したように通常制御は、車両10の位置エネルギーの変化に従うようにM/G12の出力が制御される。
【0047】
取得部61が取得した経路情報に示される予定走行経路(現在位置P0~位置P6)においては
図7の1段目に示すように標高Hが変化するものとする。この場合、位置エネルギー等の変化に基づいて変化する充電率SOCは、
図7の2段目に示すように最小充電率SOC1に維持される最小維持区間(位置P1~位置P2および位置P5~位置P6)と最大充電率SOC2に維持される最大維持区間(位置P3~位置P4)とを有する。これは、放電に関しては、その時々の走行状態に応じて燃費が最も高くなるようにM/G12のモータートルクTmが制御されるためである。また、充電に関しては、最短時間で最大充電率SOC2に到達するようにM/G12の回生トルクTrが制御されるためである。こうした通常制御においては、
図7の3段目に示すように短時間で大きな放電電流(または充電電流)がバッテリー20に流れたのち放電(または充電)が停止される。バッテリー20においては内部抵抗に起因した発熱量が電流の自乗に比例することから、バッテリー温度TmpBは、
図7の4段目に示すように急激に上昇したのちに徐々に低下していくこととなり、結果として、その最高温度および平均温度が高くなる。
【0048】
一方、
図8に示すように、M/G12の出力を温度上昇抑制制御で制御した場合、
図8の1段目に示す予定走行経路に対して、区間特定部65は、現在位置P0(始点)から位置P2(終点)までを放電過多区間Td1、位置P2(始点)から位置P4(終点)までを充電過多区間Tc1、位置P4(始点)から位置P6(終点)までを放電過多区間Td2に設定する。
【0049】
図8の2段目および3段目に示すように、トルク制御部66は、放電過多区間Td1,Td2においては、その始点(P0,P4)から終点(P2,P6)までの一定の変化率で充電率SOCが変化し、かつ、終点において充電率SOCが最小充電率SOC1となる一定の放電電流Id1,Id2を上限値としてM/G12の出力を制御する。放電過多区間Td1,Td2においては、充電率SOCが最小充電率SOC1に到達する放電量が十分に確保されることから、一定の放電電流Id1,Id2を上限値としてもその終点(P2,P6)において充電率SOCを最小充電率SOC1に高い確率のもとで到達させることができる。また、トルク制御部66は、充電過多区間Tc1においては、その始点(P2)から終点(P4)までの一定の変化率で充電率SOCが変化し、かつ、終点(P4)において充電率SOCが最大充電率SOC2となる一定の充電電流Ic1を上限値としてM/G12の出力を制御する。充電過多区間Tc1においては、充電率SOCが最大充電率SOC2に到達する充電量が十分に確保されることから、一定の充電電流Ic1を上限値としてもその終点(P4)において充電率SOCを最大充電率SOC2に高い確率のもとで到達させることができる。
【0050】
こうした構成によれば、
図8の4段目に示すように、放電過多区間Td1,Td2および充電過多区間Tc1の各々の終点において充電率SOCを高い確率のもとで通常制御と同じにしつつバッテリー温度TmpBの最高温度および平均温度を抑えることができる。すなわち、バッテリー温度TmpBの上昇を抑えつつバッテリー20の充放電量を確保することができる。
【0051】
図9を参照して、温度上昇抑制制御の他の例について説明する。なお、
図9では、1段目に通常制御による充電率SOCの推移を示し、2段目に温度上昇抑制制御による充電率SOCの推移を示し、3段目にバッテリー20に流れる電流値を示す。
【0052】
図9の1段目に示すように、この例の放電過多区間Td3は、充電率SOCが最大充電率SOC2から最小充電率SOC1まで低下するまでの途中に、充電率SOCが最大充電率SOC2に到達することのない一時的な充電区間Tc31,Tc32を有している。また、充電過多区間Tc4は、充電率SOCが最小充電率SOC1から最大充電率SOC2まで上昇するまでの途中に、充電率SOCが最小充電率SOC1に到達することのない一時的な放電区間Td4を有している。
【0053】
図9の2段目および3段目に示すように、トルク制御部66は、放電過多区間Td3における一時的な充電区間Tc31,Tc32、および、充電過多区間Tc4における一時的な放電区間Td4においては、通常制御でM/G12の出力を制御する。また、トルク制御部66は、放電過多区間Td3では、充電区間Tc31,Tc32における区間長さおよび充電率SOCの上昇分を加味したうえで放電過多区間Td3の終点(位置P16)において充電率SOCが最小充電率SOC1となる一定の放電電流Id3を上限値としてM/G12の出力を制御する。トルク制御部66は、充電過多区間Tc4では、放電区間Td4における区間長さおよび充電率SOCの低下分を加味したうえで充電過多区間Tc4の終点(位置P19)において充電率SOCが最大充電率SOC2となる一定の充電電流Ic4を上限値としてM/G12の出力を制御する。
【0054】
こうした構成によれば、放電過多区間Td3および充電過多区間Tc4の各々の終点において充電率SOCを高い確率のもとで通常制御と同じにしつつ、バッテリー温度TmpBの最高温度および平均温度を抑えることができる。すなわち、バッテリー温度TmpBの上昇を抑えつつバッテリー20の充放電量を確保することができる。
【0055】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)充電過多区間Tcにおいては充電率SOCが最大充電率SOC2に到達する充電量が十分に確保されることから、充電電流を一定の充電電流に制限したとしても充電過多区間Tcの終点において充電率SOCを最大充電率SOC2に高い確率のもとで到達させることができる。また、放電過多区間Tdにおいては充電率SOCが最小充電率SOC1に到達する放電量が十分に確保されることから、放電電流を一定の放電電流に制限したとしても放電過多区間Tdの終点において充電率SOCを高い確率のもとで最小充電率SOC1に到達させることができる。そして、これら充電過多区間Tcおよび放電過多区間Tdにおいて充放電電流が一定値に制限されることによってバッテリー温度TmpBの上昇を抑えることができる。すなわち、ハイブリッドECU31によれば、バッテリー温度TmpBの上昇を抑えつつバッテリー20の充放電量を確保することができる。
【0056】
(2)充電過多区間Tcは、充電率SOCが最小充電率SOC1から最大充電率SOC2まで上昇する上昇区間に一時的な放電区間を含んでいる。こうした構成によれば、より長い区間が充電過多区間Tcに設定されることから、予定走行経路のうちで充電電流が制限される区間の割合を高めることができる。その結果、バッテリー温度TmpBの上昇を効果的に抑えつつバッテリー20の充放電量を確保することができる。
【0057】
(3)充電過多区間Tcは、最大維持区間に一時的な放電区間を含んでいる。こうした構成によれば、さらに長い区間が充電過多区間Tcに設定されることから、予定走行経路のうちで充電電流が一定の充電電流に制御される区間の割合をさらに高めることができる。その結果、バッテリー温度TmpBの上昇をさらに効果的に抑えつつバッテリー20の充放電量を確保することができる。
【0058】
(4)ハイブリッドECU31は、一時的な放電区間Td4などにおいては通常制御でM/G12の出力を制御する。これにより、充電過多区間Tcにおける一時的な放電区間での放電を効果的に行うことができる。その結果、充電過多区間Tcにおける燃費を向上させることができる。
【0059】
(5)放電過多区間Tdは、充電率SOCが最大充電率SOC2から最小充電率SOC1まで低下する低下区間に一時的な充電区間を含んでいる。これにより、より長い区間が放電過多区間Tdに設定されることから、予定走行経路のうちで放電電流が一定の放電電流に制御される区間の割合を高めることができる。その結果、バッテリー温度TmpBの上昇を効果的に抑えつつバッテリー20の充放電量を確保することができる。
【0060】
(6)放電過多区間Tdは、最小維持区間に一時的な充電区間を含んでいる。こうした構成によれば、さらに長い区間が放電過多区間Tdに設定されることから、予定走行経路のうちで放電電流が一定の放電電流に制限される区間の割合をさらに高めることができる。その結果、バッテリー温度TmpBの上昇をさらに効果的に抑えつつバッテリー20の充放電量を確保することができる。
【0061】
(7)ハイブリッドECU31は、一時的な充電区間Tc31などにおいては通常制御でM/G12の出力を制御する。放電過多区間Tdにおける一時的な充電区間での充電を効率よく行うことができる。
【0062】
(8)温度上昇抑制制御は、高速道路を高速走行している場合に実行される。こうした構成によれば、推定した充電率SOCの推移と実際の充電率SOCの推移との誤差が小さくなることで上述した(1)~(7)の効果をより顕著なものとすることができる。
【0063】
(9)温度上昇抑制制御においては、バッテリー温度TmpBの上昇が抑えられることに加えてバッテリー20に対する負荷が小さくなることで放電時の熱損失が抑えられる。これによりバッテリー20の放電効率が高められることから、M/G12による燃料削減効率を向上させることができる。
【0064】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・例えば、最小維持区間に一時的な充電区間が含まれる場合、その充電区間まえの最小維持区間とその充電区間あとの最小維持区間とは、互いに異なる放電過多区間Tdに含まれてもよい。
【0065】
・放電過多区間Tdは、連続低下区間と連続低下区間に続く最小維持区間とのみで構成されてもよい。
・例えば、最大維持区間に一時的な放電区間が含まれる場合、その放電区間まえの最大維持区間とその放電区間あとの最大維持区間とは、互いに異なる充電過多区間Tcに含まれてもよい。
【0066】
・充電過多区間Tcは、連続上昇区間と連続上昇区間に続く最大維持区間とのみで構成されてもよい。
・温度上昇抑制制御は、車両10が高速道路を高速走行している場合に限らず、例えば、幹線道路を高速走行している場合に実行されてもよい。すなわち、温度上昇抑制制御は、車速vの変化が少ない状況下で実行されることが好ましい。
【符号の説明】
【0067】
Tc…充電過多区間、Td…放電過多区間、10…車両、11…エンジン、12…モータージェネレーター、13…回転軸、14…回転軸、15…クラッチ、16…トランスミッション、17…駆動軸、18…駆動輪、20…バッテリー、21…インバーター、30…制御装置、31…ハイブリッドECU、32…エンジンECU、33…インバーターECU、34…バッテリーECU、35…トランスミッションECU、37…情報ECU、51…アクセルペダル、53…情報取得部、54…経路情報生成部、61…取得部、62…重量演算部、63…制御選択部、64…走行抵抗設定部、65…区間特定部、66…トルク制御部、71…連続上昇区間、72…最大維持区間、73…上昇区間、74,75…放電区間、76…最大維持区間、81…連続低下区間、82…最小維持区間、83…低下区間、84,85…充電区間、86…最小維持区間。