(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】蓄電モジュール及び蓄電モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20220426BHJP
H01G 11/12 20130101ALI20220426BHJP
H01G 11/82 20130101ALI20220426BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20220426BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20220426BHJP
H01M 10/0585 20100101ALN20220426BHJP
H01G 2/02 20060101ALN20220426BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01G11/12
H01G11/82
H01M50/184 A
H01M10/052
H01M10/0585
H01G2/02 101E
(21)【出願番号】P 2018147835
(22)【出願日】2018-08-06
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100171583
【氏名又は名称】梅景 篤
(72)【発明者】
【氏名】竹中 泰亮
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 伸烈
(72)【発明者】
【氏名】奥村 素宜
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-101599(JP,A)
【文献】特開2018-060670(JP,A)
【文献】特開2011-009039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00-10/04
H01M10/06-10/34
H01G11/12
H01G11/82-11/86
H01M50/10-50/198
H01M50/40-50/497
H01M10/052
H01M10/058-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータを介して積層された複数のバイポーラ電極を有する電極積層体と、
前記複数のバイポーラ電極の積層方向において、互いに隣り合う2つのバイポーラ電極の間を封止する封止体と、
を備え、
前記複数のバイポーラ電極のそれぞれは、電極板と、前記電極板の第1面に設けられた第1電極と、前記電極板の前記第1面と反対側の第2面に設けられた第2電極と、を備え、
前記封止体は、前記電極板の外縁部に設けられた一次封止体と、前記一次封止体の周囲に設けられた二次封止体と、を備え、
前記一次封止体は、前記第1面に
溶着された第1樹脂層と、前記第2面に
溶着された第2樹脂層と、を備え、
前記第1樹脂層は、前記第2樹脂層よりも前記電極積層体の内側に延在し、前記セパレータの外縁部が
載置されている延在領域を含
み、
前記第1面における前記第1樹脂層との第1接合部分、及び前記第2面における前記第2樹脂層との第2接合部分のうちの少なくとも一方は、粗面化されている、蓄電モジュール。
【請求項2】
前記第1
接合部分は、粗面化されており、
前記第2樹脂層は、酸変性ポリオレフィン樹脂から構成される、請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記第2
接合部分は、粗面化されており、
前記第1樹脂層は、酸変性ポリオレフィン樹脂から構成される、請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記第1
接合部分は、粗面化されており、
前記第2
接合部分は、粗面化されている、請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項5】
電極板と、前記電極板の第1面に設けられた第1電極と、前記電極板の前記第1面と反対側の第2面に設けられた第2電極と、をそれぞれ備える複数のバイポーラ電極を準備する工程と、
前記複数のバイポーラ電極のそれぞれの前記電極板の外縁部に一次封止体を形成する工程と、
セパレータを介して前記複数のバイポーラ電極を積層することで電極積層体を形成する工程と、
前記電極積層体に設けられた前記一次封止体の周囲に二次封止体を形成する工程と、
を備え、
前記一次封止体を形成する工程では、前記第1面の外縁部に第1樹脂層を配置するとともに、前記第2面の外縁部に第2樹脂層を配置し、前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層を前記電極板に溶着することで、前記一次封止体が形成され、
前記第1樹脂層は、前記第2樹脂層よりも前記電極積層体の内側に延在した延在領域を含み、
前記電極積層体を形成する工程では、前記セパレータの外縁部が前記延在領域に
載置される、蓄電モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電モジュール及び蓄電モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電極板の一方の面上に負極が設けられ、他方の面上に正極が設けられたバイポーラ電極を備えた、いわゆるバイポーラ型の蓄電モジュールが知られている(特許文献1参照)。この蓄電モジュールの製造方法では、バイポーラ電極の一方の面の周縁にシール部を熱融着し、バイポーラ電極を積層して電池積層体を形成した後、最外周を加熱シールしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バイポーラ電極の周縁部に樹脂からなるシール部を溶着する場合、電極板の収縮量(収縮率)とシール部の収縮量(収縮率)との差に起因して、溶着後に電極板及びシール部に反りが発生するおそれがある。
【0005】
本発明は、電極板の反り量を低減することが可能な蓄電モジュール及び蓄電モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールは、セパレータを介して積層された複数のバイポーラ電極を有する電極積層体と、複数のバイポーラ電極の積層方向において、互いに隣り合う2つのバイポーラ電極の間を封止する封止体と、を備える。複数のバイポーラ電極のそれぞれは、電極板と、電極板の第1面に設けられた第1電極と、電極板の第1面と反対側の第2面に設けられた第2電極と、を備える。封止体は、電極板の外縁部に設けられた一次封止体と、一次封止体の周囲に設けられた二次封止体と、を備える。一次封止体は、第1面に設けられた第1樹脂層と、第2面に設けられた第2樹脂層と、を備える。第1樹脂層は、第2樹脂層よりも電極積層体の内側に延在し、セパレータの外縁部が配置された延在領域を含む。
【0007】
この蓄電モジュールでは、電極板の外縁部に設けられた一次封止体は、電極板の第1面に設けられた第1樹脂層と、電極板の第2面に設けられた第2樹脂層と、を備える。この一次封止体は、例えば、第1樹脂層及び第2樹脂層が電極板に溶着されることにより、形成される。第1樹脂層及び第2樹脂層の熱収縮率は、電極板の熱収縮率よりも大きい。このため、溶着後に電極板の外縁部、第1樹脂層及び第2樹脂層の温度が下がるにつれて、第1樹脂層の熱収縮率と電極板の熱収縮率との差に起因して第1面の外縁部は第1樹脂層に引っ張られ、第2樹脂層の熱収縮率と電極板の熱収縮率との差に起因して第2面の外縁部は第2樹脂層に引っ張られる。しかしながら、電極板の外縁部が第1樹脂層から受ける力と第2樹脂層から受ける力とは、互いに打ち消し合う方向に作用する。その結果、電極板の反り量を低減することが可能となる。
【0008】
第1面の第1樹脂層が設けられる領域は、粗面化されていてもよい。第2樹脂層は、酸変性ポリオレフィン樹脂から構成されてもよい。酸変性ポリオレフィン樹脂は、電極板の外縁部と化学結合を生じ得る。このため、第2面を粗面化する必要がないので、電極板の作製を容易化することができる。
【0009】
第2面の第2樹脂層が設けられる領域は、粗面化されていてもよい。第1樹脂層は、酸変性ポリオレフィン樹脂から構成されてもよい。酸変性ポリオレフィン樹脂は、電極板の外縁部と化学結合を生じ得る。このため、第1面を粗面化する必要がないので、電極板の作製を容易化することができる。
【0010】
第1面の第1樹脂層が設けられる第1領域は、粗面化されていてもよい。第2面の第2樹脂層が設けられる第2領域は、粗面化されていてもよい。この場合、第1樹脂層及び第2樹脂層として、選択可能な樹脂材料の種類を増やすことができる。
【0011】
本発明の別の側面に係る蓄電モジュールの製造方法は、電極板と、電極板の第1面に設けられた第1電極と、電極板の第1面と反対側の第2面に設けられた第2電極と、をそれぞれ備える複数のバイポーラ電極を準備する工程と、複数のバイポーラ電極のそれぞれの電極板の外縁部に一次封止体を形成する工程と、セパレータを介して複数のバイポーラ電極を積層することで電極積層体を形成する工程と、電極積層体に設けられた一次封止体の周囲に二次封止体を形成する工程と、を備える。一次封止体を形成する工程では、第1面の外縁部に第1樹脂層を配置するとともに、第2面の外縁部に第2樹脂層を配置し、第1樹脂層及び第2樹脂層を電極板に溶着することで、一次封止体が形成される。第1樹脂層は、第2樹脂層よりも電極積層体の内側に延在した延在領域を含む。電極積層体を形成する工程では、セパレータの外縁部が延在領域に配置される。
【0012】
この蓄電モジュールの製造方法では、電極板の第1面の外縁部に第1樹脂層が配置され、電極板の第2面の外縁部に第2樹脂層が配置され、第1樹脂層及び第2樹脂層が電極板に溶着されることで、一次封止体が形成される。第1樹脂層及び第2樹脂層の熱収縮率は、電極板の熱収縮率よりも大きい。このため、溶着後に電極板の外縁部、第1樹脂層及び第2樹脂層の温度が下がるにつれて、第1樹脂層の熱収縮率と電極板の熱収縮率との差に起因して第1面の外縁部は第1樹脂層に引っ張られ、第2樹脂層の熱収縮率と電極板の熱収縮率との差に起因して第2面の外縁部は第2樹脂層に引っ張られる。しかしながら、電極板の外縁部が第1樹脂層から受ける力と第2樹脂層から受ける力とは、互いに打ち消し合う方向に作用する。その結果、電極板の反り量を低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電極板の反り量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る蓄電モジュールを備えた蓄電装置を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示された蓄電モジュールの封止体の構成を示す要部拡大概略図である。
【
図4】
図4は、
図1に示された蓄電モジュールに含まれる電極板と一次封止体との接合界面を示す概略断面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示された蓄電モジュールの製造方法の主な工程を示す工程図である。
【
図6】
図6は、変形例に係る蓄電モジュールの封止体の構成を示す要部拡大概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0016】
図1は、一実施形態に係る蓄電モジュールを備えた蓄電装置を示す概略断面図である。
図1に示される蓄電装置1は、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車、又は電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置1は、モジュール積層体2と、拘束部材3と、を備えている。
【0017】
モジュール積層体2は、複数(本実施形態では3つ)の蓄電モジュール4と、複数(本実施形態では4つ)の導電板5と、を含む。蓄電モジュール4は、バイポーラ電池であり、積層方向から見て矩形状を呈している。蓄電モジュール4は、例えばニッケル水素二次電池及びリチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタである。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0018】
積層方向に互いに隣り合う2つの蓄電モジュール4同士は、導電板5を介して互いに電気的に接続されている。導電板5は、積層方向に互いに隣り合う2つの蓄電モジュール4の間と、積層端に位置する蓄電モジュール4の外側と、にそれぞれ配置されている。積層下端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された導電板5には、正極端子6が接続されている。積層上端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された導電板5には、負極端子7が接続されている。正極端子6及び負極端子7は、例えば導電板5の縁部から積層方向と交差する方向に引き出されている。正極端子6及び負極端子7により、蓄電装置1の充放電が実施される。
【0019】
導電板5の内部には、空気等の冷媒を流通させる複数の流路5aが設けられている。流路5aは、例えば、積層方向と、正極端子6及び負極端子7の引き出し方向と、にそれぞれ交差(直交)する方向に沿って延在している。導電板5は、積層方向に互いに隣り合う2つの蓄電モジュール4同士を電気的に接続する接続部材としての機能のほか、これらの流路5aに冷媒を流通させることにより、蓄電モジュール4で発生した熱を放出する放熱板としての機能を併せ持つ。なお、
図1の例では、積層方向から見た導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積よりも小さいが、放熱性の向上の観点から、導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積と同じであってもよく、蓄電モジュール4の面積よりも大きくてもよい。
【0020】
拘束部材3は、モジュール積層体2に対してモジュール積層体2の積層方向に拘束荷重を付加する部材である。拘束部材3は、モジュール積層体2を積層方向に挟む一対のエンドプレート8と、一対のエンドプレート8同士を締結する締結ボルト9及びナット10と、を含んでいる。エンドプレート8は、積層方向から見た蓄電モジュール4及び導電板5の面積よりも一回り大きい面積を有する矩形の金属板である。エンドプレート8の内側面には、電気絶縁性を有するフィルムFが設けられている。フィルムFにより、エンドプレート8と導電板5との間が絶縁されている。
【0021】
エンドプレート8の縁部には、モジュール積層体2よりも外側の位置に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト9は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって通され、他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト9の先端部分には、ナット10が螺合されている。これにより、蓄電モジュール4及び導電板5がエンドプレート8によって挟持されてモジュール積層体2としてユニット化されるとともに、モジュール積層体2に対して積層方向に拘束荷重が付加される。
【0022】
次に、蓄電モジュール4の構成について詳細に説明する。
図2は、
図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
図2に示されるように、蓄電モジュール4は、電極積層体11と、電極積層体11を封止する封止体12と、を備えている。電極積層体11は、複数のセパレータ13と、複数のバイポーラ電極14と、負極終端電極18と、正極終端電極19と、を有している。本実施形態では、電極積層体11の積層方向Dはモジュール積層体2の積層方向と一致している。電極積層体11は、積層方向Dに延びる側面11aを有している。
【0023】
セパレータ13は、例えばシート状に形成されている。セパレータ13としては、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、並びに、ポリプロピレン及びメチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されていてもよい。セパレータ13は、袋状であってもよい。
【0024】
負極終端電極18、複数のバイポーラ電極14、及び正極終端電極19は、その順でセパレータ13を介して積層されている。複数のバイポーラ電極14のそれぞれは、電極板15と、正極16(第1電極)と、負極17(第2電極)と、を含んでいる。電極板15は、例えばニッケルからなる金属箔、或いはニッケルメッキ鋼板からなり、矩形状を呈している。電極板15は、上面15a(第1面)と、上面15aと反対側の下面15b(第2面)と、を含む。電極板15の外縁部15cは、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域である。
【0025】
正極16は、電極板15の上面15aに設けられる。正極16は、正極活物質が上面15aに塗工されることによって形成された正極活物質層である。正極16を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極17は、電極板15の下面15bに設けられる。負極17は、負極活物質が下面15bに塗工されることによって形成された負極活物質層である。負極17を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。本実施形態では、電極板15の下面15bにおける負極17の形成領域は、電極板15の上面15aにおける正極16の形成領域に対して一回り大きい。
【0026】
電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の正極16は、セパレータ13を挟んで積層方向Dに隣り合う一方のバイポーラ電極14の負極17と向かい合っている。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の負極17は、セパレータ13を挟んで積層方向Dに隣り合う他方のバイポーラ電極14の正極16と向かい合っている。
【0027】
負極終端電極18は、積層方向Dにおける電極積層体11の一端に配置されている。負極終端電極18は、電極板15と、電極板15の下面15bに設けられた負極17とを含んでいる。負極終端電極18の負極17は、セパレータ13を介して積層方向Dの一端に位置するバイポーラ電極14の正極16と向かい合っている。負極終端電極18の電極板15の上面15aには、蓄電モジュール4に隣接する一方の導電板5が接触している。
【0028】
正極終端電極19は、積層方向Dにおける電極積層体11の他端に配置されている。正極終端電極19は、電極板15と、電極板15の上面15aに設けられた正極16とを含んでいる。正極終端電極19の正極16は、セパレータ13を介して積層方向Dの他端に位置するバイポーラ電極14の負極17と向かい合っている。正極終端電極19の電極板15の下面15bには、蓄電モジュール4に隣接する他方の導電板5が接触している。
【0029】
図3は、
図2に示された蓄電モジュールの封止体の構成を示す要部拡大概略図である。
図2及び
図3に示される封止体12は、例えば矩形の筒状に形成されている。封止体12は、絶縁性を有する樹脂材料により形成されている。封止体12を構成する樹脂材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又は変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等が挙げられる。封止体12を構成する樹脂材料として、酸変性ポリプロピレン等の酸変性ポリオレフィン樹脂が用いられてもよい。封止体12は、積層方向Dに延びる電極積層体11の側面11aにおいて電極板15の外縁部15cを保持するとともに、側面11aを取り囲むように構成されている。封止体12は、積層方向Dにおいて互いに隣り合う2つのバイポーラ電極14の間を封止している。
【0030】
封止体12は、複数の一次封止体21Aと、一次封止体21Bと、一次封止体21Cと、二次封止体22と、を有している。一次封止体21A,21B,21Cは、電極板15の外縁部15c(未塗工領域)において、電極板15の全周(全辺)にわたって連続的に設けられている。一次封止体21A,21B,21Cは、内縁部21a及び外縁部21bを有している。内縁部21aは、積層方向Dから見て、電極板15と重なっている。外縁部21bは、積層方向Dから見て、電極板15の外側に張り出している。内縁部21aの少なくとも一部は、電極板15の外縁部15cに気密に接合されている。一次封止体21A,21B,21Cの外縁部21b側の端面は、二次封止体22の内面22aに気密に接合されている。
【0031】
複数の一次封止体21Aのそれぞれは、バイポーラ電極14を構成する電極板15の外縁部15cに設けられている。一次封止体21Aは、樹脂層23(第1樹脂層)と、樹脂層24(第2樹脂層)と、を有している。樹脂層23は、上面15aの外縁部15d(第1領域)に設けられている。樹脂層23は、例えば、熱により上面15aの外縁部15dに接合(溶着)されている。樹脂層24は、下面15bの外縁部15e(第2領域)に設けられている。樹脂層24は、例えば、熱により下面15bの外縁部15eに接合(溶着)されている。樹脂層23の接合と、樹脂層24の接合とは、例えば、熱プレスによって同時に行われる。積層方向Dから見て、樹脂層23の外縁23aは樹脂層24の外縁24aと一致している。積層方向Dから見て、樹脂層23の内縁23bは樹脂層24の内縁24bよりも電極積層体11の内側に位置している。
【0032】
電極積層体11において、一の電極板15の上面15aに設けられた樹脂層23は、積層方向Dに隣り合う電極板15の下面15bに設けられた樹脂層24と接触している。つまり、樹脂層23は、隣り合う樹脂層24よりも電極積層体11の内側に延在する延在領域23cと、当該樹脂層24に覆われた被覆領域23dと、を含んでいる。延在領域23cには、セパレータ13の外縁部13aが配置(載置)されている。積層方向Dにおいて互いに隣り合う2つの電極板15は、セパレータ13及び一次封止体21A,21B,21Cによって互いに絶縁された状態に保たれている。
【0033】
被覆領域23dは、延在領域23cの外側に配置されている。積層方向Dから見て、セパレータ13の外縁は、樹脂層23の内縁23bと樹脂層24の内縁24bとの間に位置している。積層方向Dから見て、被覆領域23dの内縁(樹脂層24の内縁24b)は、電極板15の外縁よりも電極積層体11の内側に位置している。延在領域23cの全体と、被覆領域23dの一部及び樹脂層24の一部は、内縁部21aを構成している。被覆領域23dの残りの部分及び樹脂層24の残りの部分は、外縁部21bを構成している。なお、一の電極板15の上面15aに設けられた樹脂層23と、積層方向Dに隣り合う電極板15の下面15bに設けられた樹脂層24とは、互いに離間していてもよい。
【0034】
一次封止体21Bは、負極終端電極18を構成する電極板15の外縁部15cに設けられている。一次封止体21Bは、樹脂層23に代えて樹脂層25を有する点において、一次封止体21Aと主に相違する。樹脂層25は、樹脂層23よりも厚さが大きい点を除いて樹脂層23と同じ構成を有している。一次封止体21Cは、正極終端電極19を構成する電極板15の外縁部15cに設けられている。一次封止体21Cは、樹脂層24に代えて樹脂層26を有する点において、一次封止体21Aと主に相違する。樹脂層26は、樹脂層24よりも厚さが大きく、樹脂層24よりも電極積層体11の内側に延在している。つまり、積層方向Dから見て、樹脂層23の内縁23bは樹脂層26の内縁と一致している。
【0035】
図4は、
図1に示された蓄電モジュールに含まれる電極板と一次封止体との接合界面を示す概略断面図である。
図4に示されるように、電極板15の上面15a(外縁部15d)は、粗面化されている。電極板15の下面15b(外縁部15e)も同様に、粗面化されている。例えば、上面15a及び下面15bに電解メッキ処理が施されることにより、上面15a及び下面15bに複数の微細な突起15pが形成され、これにより、上面15a及び下面15bが粗面化される。突起15pは、例えば、突起15pの基端から突起15pの先端に向かって先太りとなる形状を有している。この場合、互いに隣り合う2つの突起15pの間の断面形状はアンダーカット形状となり、アンカー効果が生じ易い。なお、
図4は模式図であって、突起15pの形状及び密度等は特に限定されない。樹脂層23の厚さt1及び樹脂層24の厚さt2は、突起15pの高さh(積層方向Dの長さ)より遥かに大きい。
【0036】
本実施形態では、電極板15の上面15a及び下面15bの全体が粗面化されている。上面15aにおける外縁部15dのみが粗面化されていてもよく、下面15bにおける外縁部15eのみが粗面化されていてもよい。つまり、上面15aのうち、少なくとも樹脂層23との接合部分が粗面化されていればよい。同様に、下面15bのうち、少なくとも樹脂層24との接合部分が粗面化されていればよい。電極板15と一次封止体21Aとの接合界面では、溶融状態の一次封止体21Aが粗面化により形成された凹部(隣り合う2つの突起15pの間)内に入り込み、アンカー効果が発揮される。これにより、バイポーラ電極14では、電極板15と一次封止体21Aとの結合力及び液密性が向上する。
【0037】
本実施形態では、負極終端電極18及び正極終端電極19における電極板15の上面15a及び下面15bも粗面化されている。これにより、負極終端電極18では、電極板15と一次封止体21Bとの結合力が向上する。正極終端電極19では、電極板15と一次封止体21Cとの結合力が向上する。
【0038】
二次封止体22は、一次封止体21A,21B,21Cの群を外側から取り囲むように設けられている。二次封止体22は、電極積層体11及び一次封止体21A,21B,21Cの周囲に設けられ、蓄電モジュール4の外壁(筐体)を構成している。二次封止体22は、例えば樹脂の射出成形によって形成され、積層方向Dに沿って電極積層体11の全長にわたって延在している。二次封止体22は、積層方向Dを軸方向として延在する筒状(環状)を呈している。二次封止体22は、例えば、射出成形時の熱によって一次封止体21A,21B,21Cの外縁部21b側の端面に溶着(接合)されている。
【0039】
二次封止体22は、一次封止体21A,21B,21Cとともに、積層方向Dに沿って互いに隣り合う2つのバイポーラ電極14の間、積層方向Dに沿って互いに隣り合う負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び、積層方向Dに沿って互いに隣り合う正極終端電極19とバイポーラ電極14との間をそれぞれ封止している。これにより、2つのバイポーラ電極14の間、負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び、正極終端電極19とバイポーラ電極14との間には、それぞれ気密に仕切られた内部空間Vが形成されている。各内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ水溶液からなる電解液(不図示)が収容されている。電解液は、セパレータ13、正極16及び負極17内に含浸されている。
【0040】
次に、蓄電モジュール4の製造方法を説明する。
図5は、
図1に示された蓄電モジュールの製造方法の主な工程を示す工程図である。
図5に示されるように、まず、複数のバイポーラ電極14、負極終端電極18、及び正極終端電極19を準備する準備工程S1が行われる。
【0041】
続いて、各バイポーラ電極14の電極板15の外縁部15cに一次封止体21Aを形成する一次成形工程S2が行われる。一次成形工程S2では、上面15aの外縁部15dに樹脂層23が配置され、下面15bの外縁部15eに樹脂層24が配置される。そして、樹脂層23及び樹脂層24を挟み込むようにして、熱プレスが行われる。これにより、樹脂層23及び樹脂層24が電極板15に溶着され、一次封止体21Aが形成される。負極終端電極18及び正極終端電極19についても、同様にして一次封止体21B,21Cが形成される。
【0042】
続いて、セパレータ13を介して負極終端電極18、複数のバイポーラ電極14、及び正極終端電極19を積層することで電極積層体11を形成する積層工程S3が行われる。積層工程S3では、セパレータ13の外縁部13aが樹脂層23の延在領域23cに配置される。また、一の電極板15に形成された樹脂層23の被覆領域23dの上に、他の電極板15に形成された樹脂層24が積み重ねられる。
【0043】
続いて、電極積層体11に設けられた一次封止体21の周囲に二次封止体22を形成する二次成形工程S4が行われる。二次成形工程S4では、一対の成形型により電極積層体11を積層方向Dに挟み込んで電極積層体11に拘束荷重を付加した状態で、成形型内のキャビティに樹脂材料を流し込むことにより、二次封止体22が形成される。以上により、蓄電モジュール4が得られる。
【0044】
以上説明した蓄電モジュール4及び蓄電モジュール4の製造方法では、電極板15の上面15aの外縁部15dに樹脂層23が配置され、電極板15の下面15bの外縁部15eに樹脂層24が配置され、樹脂層23及び樹脂層24が電極板15に溶着されることで、一次封止体21が形成される。樹脂層23及び樹脂層24の熱収縮率は、電極板15の熱収縮率よりも大きい。このため、溶着後に電極板15の外縁部15c、樹脂層23及び樹脂層24の温度が下がるにつれて、樹脂層23の熱収縮率と電極板15の熱収縮率との差に起因して上面15aの外縁部15dは樹脂層23に引っ張られ、樹脂層24の熱収縮率と電極板15の熱収縮率との差に起因して下面15bの外縁部15eは樹脂層24に引っ張られる。しかしながら、電極板15の外縁部15cが樹脂層23から受ける力と樹脂層24から受ける力とは、互いに打ち消し合う方向に作用する。その結果、電極板15の反り量を低減することが可能となる。したがって、複数のバイポーラ電極14の積層を容易化することができるので、蓄電モジュール4の品質を向上させることが可能となり、蓄電モジュール4の歩留まりを向上させることが可能となる。
【0045】
また、二次成形工程S4において、セパレータ13の外縁部13aが延在領域23cに配置される。二次封止体22を射出成形によって形成する場合、一対の成形型により一次封止体21A,21B,21Cの内縁部21a及び電極板15の外縁部15cが積層方向Dに挟み込まれる。このとき、セパレータ13の外縁部13aは一対の成形型に挟み込まれないので、一次封止体21A,21B,21Cの内縁部21a及び電極板15の外縁部15cに拘束荷重を均一に付加することができる。これにより、二次封止体22の形成不良を低減することが可能となる。
【0046】
外縁部15d及び外縁部15eは、粗面化されている。これにより、電極板15と一次封止体21A(樹脂層23及び樹脂層24)との結合力及び液密性が向上する。このため、樹脂層23及び樹脂層24として、電極板15を構成する金属材料に対して高い接着性を有する樹脂材料だけでなく、他の樹脂材料を選択することができる。したがって、樹脂層23及び樹脂層24として、選択可能な樹脂材料の種類を増やすことができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明されたが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0048】
例えば、上記実施形態では、積層方向Dから見て、樹脂層23の内縁23bは樹脂層24の内縁24bよりも電極積層体11の内側に位置している。しかしながら、
図6に示されるように、積層方向Dから見て、樹脂層23(第2樹脂層)の内縁23bは樹脂層24(第1樹脂層)の内縁24bよりも電極積層体11の外側に位置していてもよい。つまり、樹脂層24は、隣り合う樹脂層23よりも電極積層体11の内側に延在する延在領域24cと、当該樹脂層23に覆われた被覆領域24dと、を含んでいてもよい。この場合、延在領域24cには、セパレータ13の外縁部13aが配置(載置)されている。被覆領域24dは、延在領域24cの外側に配置されている。
【0049】
樹脂層23が酸変性ポリオレフィン樹脂から構成されている場合、酸変性ポリオレフィン樹脂はその分子内に酸基を有するので、樹脂層23と外縁部15dとの接合部において、樹脂層23中の酸基と電極板15の外縁部15dの水酸基との間で化学結合が形成され得る。このため、上面15a(外縁部15d)は粗面化されていない平坦な面であってもよい。これにより、上面15aを粗面化する必要がないので、電極板15の作製を容易化することができる。
【0050】
同様に、樹脂層24が酸変性ポリオレフィン樹脂から構成されている場合、樹脂層24と外縁部15eとの接合部において、樹脂層24中の酸基と電極板15の外縁部15eの水酸基との間で化学結合が形成され得る。このため、下面15b(外縁部15e)は粗面化されていない平坦な面であってもよい。これにより、下面15bを粗面化する必要がないので、電極板15の作製を容易化することができる。
【0051】
なお、酸変性ポリオレフィン樹脂と電極板15との化学結合は、内部空間Vに収容された電解液によって切断され得る。蓄電装置1において、互いに隣り合う2つの内部空間Vの間を絶縁分離するために、上面15aと樹脂層23との間の接合、及び下面15bと樹脂層24との間の接合の少なくともいずれかが維持されていることが望まれる。接合を維持するために、上面15a及び下面15b(具体的には、外縁部15d及び外縁部15e)の少なくとも一方が粗面化される。つまり、上面15a(外縁部15d)が粗面化されており、下面15b(外縁部15e)は粗面化されていない平坦な面であってもよい。あるいは、下面15b(外縁部15e)が粗面化されており、上面15a(外縁部15d)は粗面化されていない平坦な面であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
4…蓄電モジュール、11…電極積層体、12…封止体、13…セパレータ、13a…外縁部、14…バイポーラ電極、15…電極板、15a…上面(第1面)、15b…下面(第2面)、15c…外縁部、15d…外縁部(第1領域)、15e…外縁部(第2領域)、16…正極(第1電極)、17…負極(第2電極)、21A…一次封止体、22…二次封止体、23…樹脂層、23c,24c…延在領域、24…樹脂層、D…積層方向。