(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】整髪料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/06 20060101AFI20220426BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20220426BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20220426BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20220426BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20220426BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20220426BHJP
A61K 8/897 20060101ALI20220426BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20220426BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/31
A61K8/37
A61K8/46
A61K8/73
A61K8/891
A61K8/897
A61K8/92
A61Q5/06
(21)【出願番号】P 2018552967
(86)(22)【出願日】2017-11-24
(86)【国際出願番号】 JP2017042166
(87)【国際公開番号】W WO2018097231
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】P 2016227871
(32)【優先日】2016-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】今藤 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】倉島 巧
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-256154(JP,A)
【文献】特開平10-279442(JP,A)
【文献】特開2009-173601(JP,A)
【文献】特開2010-229070(JP,A)
【文献】特表2015-510937(JP,A)
【文献】特開昭58-099407(JP,A)
【文献】特開2002-193740(JP,A)
【文献】Momentive Performance Materials Inc.,SFE839,Technical Data Sheet ,2014年09月04日,[検索日2021.11.10], インターネット<URL:http://www.esung.asia/tds/SFE839.pdf>
【文献】Wave Maker Touchable Texture Whip, Deva Concepts,Mintel GNPD [online],2016年10月,[検索日2021.11.2], インターネット<URL:https://www.gnpd.com>,ID#:4263949
【文献】Thickening Foam, Jonathan Product,Mintel GNPD [online],2010年04月,[検索日2021.11.2], インターネット<URL:https://www.gnpd.com>,ID#:1307916
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)0.01質量%以上かつ1.5質量%未満のアクリル酸Naグラフトデンプン、
(B)アニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤から選択される少なくとも1種からなる界面活性剤、及び、
(C)油分を含有し、
前記(C)油分は、組成物全量に対して4~30質量%の(C1)液状油分及び組成物全量に対して10~50質量%の(C2)固形油分を含み、
(C1)液状油分は、揮発性炭化水素油、揮発性シリコーン油、不揮発性炭化水素油、エステル類、油脂、不揮発性シリコーン油、及びフッ素油から選択される少なくとも一種であり、(C2)固形油分は、ワセリン及び融点が55℃以上のワックス類から選択される少なくとも一種であり、
粉末状整髪剤の配合量が1質量%未満であることを特徴とする、水中油型乳化整髪料組成物。
【請求項2】
粉末状整髪剤の配合量が0.2質量%以下であることを特徴とする
請求項1に記載の整髪料組成物。
【請求項3】
カチオン性樹脂及び非イオン性樹脂から選択される少なくとも一種の樹脂を更に含有する、
請求項1又は2に記載の整髪料組成物。
【請求項4】
前記アニオン性界面活性剤が、長鎖アシルスルホン酸塩型アニオン性界面活性剤である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の整髪料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整髪料組成物に関する。より詳細には、髪型を軽くふんわりと仕上げることができ、べたつきが無く、なおかつ毛髪にきしみやごわつきを生じさせない整髪料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘアワックス等の整髪料においては、毛髪をセット(整髪)・固定する目的でワックス等の固形油分を配合するのが一般的であったが、固着力を増すために油分量を増量すると、セット力(整髪力)は向上するが、それに伴って、油分に起因する油っぽさやべたつきを生じ、使用感においても滑らかさが低減し、のびが悪くなるという問題があった。
【0003】
前記のような問題を解決するため、シリカ(無水ケイ酸)等の粉末成分を配合した整髪料が提案されている。例えば、特許文献1には、(a)特定のアニオン性界面活性剤及び(b)高級アルコール、(d)水、及び(e)液状油分を含み、さらに(c)成分として(c-1)融点が55℃以上のワックス、(c-2)特定の整髪樹脂、及び(c-3)無水ケイ酸から選ばれる1種又は2種以上を配合した水中油型乳化型整髪料が開示され、特に、(c-3)無水ケイ酸は、軽さやふんわり感というような部分の演出に効果があるとされている。
【0004】
特許文献2には、(A)無水ケイ酸及び/又は疎水化無水ケイ酸、(B)ロウ類、炭化水素、脂肪酸エステル油及びシリコーン油から選択される少なくとも1種、(C)界面活性剤、及び(D)水を含有し、(A)と(B)との含有量比を所定範囲内に調整した整髪剤用乳化組成物が開示され、(A)無水ケイ酸及び/又は疎水化無水ケイ酸の整髪効果により、べたつき感なく整髪でき、油剤特有の不自然なギラつきがなく、自然な風合いの軽い仕上がり感が得られ、再整髪性にも優れるとされている。
【0005】
しかしながら、無水ケイ酸による整髪効果を利用した整髪料では、ふんわりと軽い仕上がりは得られるものの、整髪効果を発揮する量の無水ケイ酸(粉末状整髪剤)を配合することによって、粉末に起因するきしみが生じ、ごわついた感触を与えることがあった。
【0006】
一方、アクリル酸Naグラフトデンプンは高吸水性ポリマー材料として知られ、特許文献3には、アクリル酸Naグラフトデンプンを配合した各種化粧料が開示されている。しかし、アクリル酸Naグラフトデンプンによる整髪効果は全く知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5761838号公報
【文献】特開2012-102057号公報
【文献】特開2011-256154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
よって本発明における課題は、ふんわりと軽い仕上がりが得られるとともに、髪のきしみやごわつきがなく、なおかつ、べたつきの無い自然な風合いの整髪が可能な整髪料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、従来は水性(高吸水性)の増粘剤として使用されていたアクリル酸Naグラフトデンプンの所定量を配合することにより、べたつきが無く、ふんわりと軽い仕上がりの整髪が可能であり、粉末配合に起因するきしみ感やごわつきも生じないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(A)0.01質量%以上かつ1.5質量%未満のアクリル酸Naグラフトデンプン、
(B)アニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤から選択される少なくとも1種からなる界面活性剤、及び、
(C)油分を含有し、
粉末状整髪剤の配合量が1質量%未満であることを特徴とする、水中油型乳化整髪料組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の整髪料組成物は、無水ケイ酸(粉末状整髪剤)の配合量が少量である場合又は配合しない場合であっても、ふんわりと軽い仕上がり(エアリー感)が得られ、髪のきしみやごわつきがなく、なおかつ、べたつきの無い自然な風合いの整髪が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る整髪料組成物(以下、単に「整髪料」ともいう)は、(A)アクリル酸Naグラフトデンプン、(B)アニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤から選択される少なくとも1種からなる界面活性剤、及び、(C)油分を必須成分として含有する水中油型乳化組成物である。
【0013】
(A)アクリル酸Naグラフトデンプン
本発明の整髪料におけるアクリル酸Naグラフトデンプン(A成分)は、デンプンにアクリル酸をグラフト重合したもののナトリウム塩であり、高吸水性のポリマーとして知られている。アクリル酸Naグラフトデンプンは、化粧料分野においては、従来、吸着剤、結合剤、乳化安定剤、親水性増粘剤等として使用されていた。
【0014】
特に限定されるものではないが、本発明におけるアクリル酸Naグラフトデンプンは、白色粒子状で調製された市販品として入手可能なものを使用することができる。市販品としては、例えば、MAKIMOUSSE7(平均粒径約7μm)、MAKIMOUSSE12(平均粒径約12μm)、及びMAKIMOUSSE400(平均粒径約400μm)(以上、大東化成工業株式会社製)、Sanflesh ST-100C、ST100MC及びIM-300MC(以上、三洋化成工業株式会社製)等が挙げられる。
また、デンプンを主鎖とし、アクリル系ポリマーがグラフトされた高吸水性ポリマーも本発明におけるアクリル酸Naグラフトデンプンに包含されるものとする。そのようなポリマー(INCI名:デンプン/アクリルアミド/アクリル酸ナトリウムコポリマー)の市販品としては、Water Lock A-240、A-180、B-204、D-223、A-100、C-200及びD-223(Grain Processing社製)が挙げられる。
【0015】
本発明の整髪料における(A)アクリル酸Naグラフトデンプンの配合量は、0.01以上かつ1.5質量%未満であり、好ましくは0.05~1.2質量%、より好ましくは0.1~1.0質量%である。配合量が0.01質量%未満であると十分な整髪効果が得られず、油分によるべたつきを感じるようになる。配合量が1.5質量%以上となると、塗布時のひっかかりや整髪後のべたつきを感じ、整髪料全体が硬くなりすぎて製造や充填が困難になる。
【0016】
(B)界面活性剤
本発明の整髪料に配合される界面活性剤(B成分)は、アニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤から選択される少なくとも1種からなる。
【0017】
本発明におけるアニオン性界面活性剤(B1成分ともいう)は、整髪料などの化粧料に汎用されているアニオン性界面活性剤であればよく特に限定されない。中でも、下記式(I)で表される長鎖アシルスルホン酸塩型アニオン性界面活性剤が好ましく用いられる。
R1CO-a-(CH2)nSO3M1 (I)
(上記式(I)中、
R1CO-は平均炭素原子数10~22の飽和または不飽和の脂肪酸残基(アシル基)を表す。R1COとして、C11H23CO、C12H25CO、C13H27CO、C14H29CO、C15H31CO、C16H33CO、C17H35CO、ココヤシ脂肪酸残基、パームヤシ脂肪酸残基等が例示される。なお、R1COは、安全性等の点から、その平均炭素原子数が12~22のものがより好ましい。
aは-O-または-NR-(ただし、Rは水素原子、または炭素原子数1~3のアルキル基を示す)を表す。これらは電子供与性基である。aとしては、-O-、-NH-、-N(CH3)-が好ましい。
M1は、水素原子、アルカリ金属類、アルカリ土類金属類、アンモニウムまたは有機アミン類を表す。M1として、例えばリチウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、タウリンナトリウム、N-メチルタウリンナトリウム等が挙げられる。
nは1~3の整数を表す。)
【0018】
上記式(I)中、aが-O-を示す化合物、すなわち長鎖アシルイセチオン酸塩型アニオン性界面活性剤としては、ココイルイセチオン酸塩、ステアロイルイセチオン酸塩、ラウリルイセチオン酸塩、ミリストイルイセチオン酸塩等が例示される。
【0019】
上記式(I)中、aが-NH-を示す化合物、すなわち長鎖アシルタウリン塩型アニオン性界面活性剤としては、N-ラウロイルタウリン塩、N-ココイル-N-エタノールタウリン塩、N-ミリストイルタウリン塩、N-ステアロイルタウリン塩等が例示される。
【0020】
上記式(I)中、aが-N(CH3)-を示す化合物、すなわち長鎖アシルメチルタウリン塩型陰イオン性界面活性剤としては、N-ラウロイル-N-メチルタウリン塩、N-パルミトイル-N-メチルタウリン塩、N-ステアロイル-N-メチルタウリン塩、N-ココイル-N-メチルタウリン塩等が例示される。
【0021】
非イオン性界面活性剤(B2成分ともいう)は、整髪料などの化粧料で汎用されているものでよく特に限定されない。例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール等の多価アルコールと脂肪酸とをエステル結合させた多価アルコールエステル型界面活性剤(例えば、脂肪酸モノグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド)、脂肪酸や高級アルコール等の活性水素を持つ物質に、酸化エチレンを数モル~数百モル付加した酸化エチレン付加型界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(例えば6E.0.)等)、脂肪酸アルキロールアミド(例えば、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリン酸モノイソプロパノールアミド等)が挙げられる。
【0022】
本発明の整髪料における(B)界面活性剤の配合量は、(B1)アニオン性界面活性剤及び(B2)非イオン性界面活性剤の合計で、0.1~10.0質量%、より好ましくは0.5~8.0質量%以下、更に好ましくは0.5~7.0質量%である。10.0質量%を超えて配合すると、べたつきを生じることがあり、配合量が0.1質量%未満であると安定な乳化物が得られない場合がある。
【0023】
本発明の整髪料においては、(B1)アニオン性界面活性剤又は(B2)非イオン性界面活性剤のいずれか一方を1種又は2種以上配合してもよく、(B1)又は(B2)のいずれか一方を配合すれば効果が得られるが、(B1)アニオン性界面活性剤及び(B2)非イオン性界面活性剤の両方を配合すると経時安定性が更に向上するので好ましい。
【0024】
(C)油分
本発明の整髪料に配合される油分(C成分ともいう)は、(C1)液状油分(25℃で液状を呈する揮発性及び不揮発性の油分)及び(C2)固形油分(25℃で固形の油分)を含む。
【0025】
液状油分(C1成分ともいう)としては、一般に整髪料などの化粧料に用いられるものであれば特に制限されるものではない。
揮発性油としては、例えば、軽質イソパラフィン(=水添ポリイソブテン)、イソドデカン、イソヘキサデカン等の揮発性炭化水素油; ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルテトラシクロシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン等の揮発性シリコーン油等が挙げられる。
【0026】
不揮発性油としては、例えば、重質イソパラフィン(=水添ポリイソブテン)、スクワラン、流動パラフィン等の炭化水素油;セチル-2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、2-オクチルドデシルミリステート、ネオペンチルグリコール-2-エチルヘキサノエート、イソプロピルミリステート、ミリスチルミリステート、2-エチルヘキサン酸セチル、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル等のエステル類;オリーブ油、アボカド油、ホホバ油、ヒマワリ油、サフラワー油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ミンク油、液状ラノリン、酢酸ラノリン、ヒマシ油等の油脂;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、高重合度のガム状ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等のシリコーン系油分;フッ素変性ジメチルポリシロキサン、フッ素変性メチルフェニルポリシロキサン、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロカーボン等のフッ素系油分等が挙げられる。C1成分は、1種または2種以上を用いることができる。
【0027】
固形油分(C2成分ともいう)は、常温(25℃)で固形又は半固形の油分であり、本発明の整髪料における整髪力の一端を担っていると考えられ、ワセリンやロウ類を挙げることができる。本発明におけるロウ類は、融点が55℃以上のワックス類を指し、例えば、キャンデリラロウ、カルナバロウ、ミツロウ、ラノリン等の天然ワックスエステルや、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、セレシン等の合成ワックスエステル等が含まれる。C2成分は、1種または2種以上を用いることができる。
【0028】
本発明の整髪料における液状油分(C1成分)の配合量は、整髪料全量に対し4~30質量%とするのが好ましく、より好ましくは5~25質量%、特に好ましくは6~20質量%である。
本発明の整髪料における固形油分(C2成分)の配合量は、整髪料全量に対し10~50質量%とするのが好ましく、より好ましくは12~40質量%、特に好ましくは15~30質量%である。
【0029】
また、本発明の整髪料における液状油分(C1成分)と固形油分(C2成分)との配合量比率(C1):(C2)は、1:1~1:5の範囲とするのが好ましく、より好ましくは1:1~1:4、さらに好ましくは1:1~1:3である。
【0030】
(D)水
本発明の整髪料は水中油型乳化組成物であり、外相(水相)の主成分としての水(D成分ともいう)を含んでいる。本発明の整髪料では、外相(水相)を組成物全体の30~80質量%程度、内相(油相)を5~50質量%程度とするが好ましい。
【0031】
(E)粉末状整髪剤(無水ケイ酸)
無水ケイ酸としては、(1)粉末表面に凹凸を有し、例えば特許文献1において整髪効果を発揮するものと、(2)表面が比較的平滑な球状のもの、とが存在する。本明細書においては、前者(1)の「表面に凹凸を有する粉末」を「無水ケイ酸(又はシリカ)」、後者(2)の「表面が平滑な球状の粉末」を「球状無水ケイ酸(又はシリカ)」と呼称して区別し、本発明における「粉末状整髪剤(E成分ともいう)」は、前者(1)の「無水ケイ酸(又はシリカ)」を意味する。
【0032】
前記「無水ケイ酸」は一般に乾式法で製造され、「アエロジル」という商品名で市販されているものが該当する。前記「球状無水ケイ酸」は湿式法で製造されるか、乾式法で製造された無水ケイ酸の表面を研磨する等によっても製造される。
本発明の整髪料における粉末状整髪剤(無水ケイ酸:E成分)の配合量は、組成物全体に対して1.0質量%未満とし、より好ましくは0.2質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下(又は0.1質量%未満)、更により好ましくは0.05質量%以下であり、本発明は無水ケイ酸を含まない態様も包含する。粉末状整髪剤の配合量を1質量%以上とすると、塗布時のひっかかり感が顕著になり、髪のきしみやごわつきが生じる。
【0033】
従来の整髪料においては、少なくとも0.1質量%の無水ケイ酸(粉末状整髪剤)を配合することが必要であり(特許文献1)、十分な整髪力を発揮させるためには、少なくとも0.2質量%以上の無水ケイ酸の配合が好ましいとされていた(特許文献1の実施例/比較例及び特許文献2)。これに対して本発明では、アクリル酸Naグラフトデンプン(A成分)の配合によって良好な整髪力が得られるため、無水ケイ酸の配合量を上記範囲に抑制することあるいは無水ケイ酸を配合しないことが可能となり、毛髪のきしみやごわつきを生じることがない。
【0034】
本発明においては、無水ケイ酸の配合量を上記所定値以下とすることを必須とするが、無水ケイ酸以外の粉末成分の配合を排除するものではない。
本発明で配合可能な無水ケイ酸以外の粉末成分((E’)他の粉末成分)は、通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されない。例えば、球状無水ケイ酸(シリカ)、タルク、マイカ、カオリン、雲母、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、バーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、球状シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムなど)、窒化ホウ素等の無機粉末;ポリアミド球状樹脂粉末(ナイロン球状粉末)、球状ポリエチレン、架橋型ポリ(メタ)クリル酸メチル球状樹脂粉末、球状ポリエステル、架橋ポリスチレン球状樹脂粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体球状樹脂粉末、ベンゾグアナミン球状樹脂粉末、ポリ四弗化エチレン球状粉末、球状セルロース等の球状の有機粉末;二酸化チタン、酸化亜鉛等の無機白色顔料;酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等の無機赤色系顔料;γ-酸化鉄等の無機褐色系顔料;黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料;黒酸化鉄、カーボンブラック、低次酸化チタン等の無機黒色系顔料;マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色系顔料;酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等の無機緑色系顔料;群青、紺青等の無機青色系顔料;酸化チタンコーテッドマイカ、酸化チタンコーテッドオキシ塩化ビスマス、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等のパール顔料;アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等の金属粉末顔料;赤色、黄色、橙色、黄色、緑色、青色等の色材、あるいはこれらをジルコニウム、バリウムまたはアルミニウム等でレーキ化した色材(有機顔料);クロロフィル、β-カロリン等の天然色素などが例示される。
【0035】
これら他の粉末成分(E’成分)を配合する場合の配合量は、整髪料全量に対し0.1~3質量%であり、好ましくは0.3~2質量%、より好ましくは0.5~2質量%である。あるいは、(E)無水ケイ酸及び(E’)他の粉末成分の合計量を0.2質量%以下にしてもよい。なお本発明は、これら他の粉末成分を含まない態様も包含する。
【0036】
本発明の整髪料は、(F)高級脂肪族アルコールを更に含むのが好ましい。高級脂肪族アルコール(F成分)は、化粧品、医薬品、医薬部外品等の分野において用いられ得るものであれば特に限定されるものでない。
【0037】
例えば、飽和直鎖一価アルコール、不飽和一価アルコールなどが挙げられる。飽和直鎖一価アルコールとしては、ドデカノール(=ラウリルアルコール)、トリデカノール、テトラデカノール(=ミリスチルアルコール)、ペンタデカノール、ヘキサデカノール(=セチルアルコール)、ヘプタデカノール、オクタデカノール(=ステアリルアルコール)、ノナデカノール、イコサノール(=アラキルアルコール)、ヘンイコサノール、ドコサノール(=ベヘニルアルコール)、トリコサノール、テトラコサノール(=カルナービルアルコール)、ペンタコサノール、ヘキサコサノール(=セリルアルコール)等が挙げられる。不飽和一価アルコールとしてはエライジルアルコール等が挙げられる。本発明では安定性等の点から飽和直鎖一価アルコールが好ましい。
【0038】
高級脂肪族アルコール(F成分)は、1種または2種以上を用いることができるが、高温安定性等の点から、算術平均により得られる平均アルキル鎖長が18以上となる組み合わせで配合するのが望ましい。平均アルキル鎖長の好適上限値は特に限定されるものではないが、炭素数22程度のアルキル鎖とするのが好ましい。
【0039】
本発明の整髪料に(F)高級脂肪族アルコールを配合する場合、その配合量は、整髪料全量に対し0.1~20質量%が好ましく、より好ましくは0.5~15質量%、特に好ましくは3~10質量%である。
また、前記界面活性剤(B成分)と前記高級脂肪族アルコールとが、水中でαゲルを形成するようにしてもよく、その場合の(B)界面活性剤と(F)高級脂肪族アルコールとの配合比は、(B):(F)=1:2~1:10(モル比)とするのが好ましい。
【0040】
本発明の整髪料は、(G)造膜性のある樹脂(単に「樹脂」ともいう)を配合することにより整髪力を更に向上させてもよい。(G)樹脂は特に限定されるものでなく、造膜性のある親水性高分子化合物から選ばれる1種又は2種以上とすることができる。但し、本発明で必須成分として配合される(A)アクリル酸Naグラフトデンプンとの相容性等を考慮して、カチオン性又は非イオン性の高分子化合物を使用するのが好ましい。両性又はアニオン性の高分子化合物を配合すると、析出を生じる、あるいはアクリル酸Naグラフトデンプンによる増粘効果を阻害する(減粘する)場合がある。
【0041】
本発明において好ましく使用される樹脂の具体例としては以下のものが例示されるが、これらに限定されない。これらの樹脂は1種でも二種以上を組み合わせてもよい。
【0042】
カチオン性としては、例えば、ビニルピロリドン・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体ジエチル硫酸塩(H.C.ポリマー1S(M)、H.C.ポリマー2(大阪有機化学工業株式会社製)、ガフコート755N(ISP社製))、ビニルピロリドン・ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド・ラウリルジメチルアミノプロピルメタクリルアミド共重合体(スタイリーゼW-20(ISP社製))、ビニルピロリドン・メタクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル・アクリル酸アルキル・ジアクリル酸トリプロピレングリコール共重合体(コスカットGA467,コスカットGA468(大阪有機化学工業株式会社製)、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム(マーコート100(ナルコ社製))、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体(マーコート550(ナルコ社製))、塩化トリメチルアミノプロピルアクリルアミド・ジメチルアクリルアミド共重合体など。
【0043】
非イオン性(ノニオン性)としては、例えば、ポリビニルピロリドン(ルビスコールK17、ルビスコールK30、ルビスコールK90(BASF社製)、PVP K(ISP社製))、ビニルピロリドン・酢酸ビニル共重合体(PVP/VA S-630、PVP/VA E-735PVP/VA E-335(以上ISP社製)、ルビスコールVA73W、ルビスコール37E(以上BASF社製)、PVA-6450(大阪有機化学工業株式会社製))、ビニルメチルエーテル・マレイン酸アルキル共重合体(ガントレッツA-425、ガントレッツES-225、ガントレッツES-335など(ISP社製))、ビニルピロリドン・メタクリルアミド・ビニルイミダゾール共重合体(ルビセットクリア(BASF社製))など。
【0044】
本発明の整髪料に樹脂(G成分)を配合する場合、その配合量(実分)は整髪料全量に対し0.1~20質量%であり、好ましくは0.5~15質量%、より好ましくは1~12質量%である。0.1質量%未満では樹脂配合による効果を得ることができず、20質量%を超えて配合するとべたつきを生じることがある。
【0045】
本発明の整髪料は、通常の化粧料や医薬部外品、特に毛髪用のものに用いられる成分を、本発明の効果を阻害しない範囲で配合することができる。このような成分としては、例えば、界面活性剤(上記(B)成分を除く)、保湿剤、分散剤、防腐剤、香料、薬剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0046】
界面活性剤(上記(B)成分を除く)としては、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム等のカチオン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルカルボキシヒドロキシイミダゾリニウムベタイン等の両性界面活性剤;高分子界面活性剤等が挙げられる。
【0047】
保湿剤としては、例えば、ダイナマイトグリセリン,1,3-ブチレングリコール,ジプロピレングリコール,プロピレングリコール等の多価アルコール、ヒアルロン酸,コンドロイチン硫酸等の水溶性高分子等が挙げられる。
【0048】
本発明の整髪料は、各配合成分を混合し、公知の方法、例えばホモミキサーを用いて転相乳化法により乳化することにより製造することができる。ただしこの製造方法に限定されるものでない。混合と乳化は別々に行ってもよく、あるいは同時に行ってもよい。
【0049】
本発明の水中油型乳化型の整髪料は、ワックス状、クリーム状、ゲル状、乳液状等の種々の剤型に適用することができ、整髪効果に優れたヘアワックス、ヘアミルク、又はヘアクリーム等として、特にヘアワックスとして好適に用いられる。
【実施例】
【0050】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される組成物全量に対する質量%で示す。
【0051】
以下の表1~表5に掲げた処方でヘアワックスを調製した。各例のヘアワックス(試料)を専門パネルに使用してもらい、以下の項目(1)~(3)について、下記の基準に従って評価した。
【0052】
(1)塗布時のひっかかり(きしみ)
評価基準:
A:ひっかかりがない
B:少しひっかかりを感じる
C:非常にひっかかる感じがする
【0053】
(2)整髪後のエアリー感
A:極めてふんわりと仕上がる
B:ふんわりと仕上がる
C:ふんわりした仕上がりが得られない
【0054】
(3)整髪後のべたつき
A:全くべたつかない
B:少しべたつく
C:べたつく
【0055】
【0056】
【0057】
表1及び表2に示した結果から、所定量(0.01質量%以上で1.5質量%未満)のアクリル酸Naグラフトデンプンを配合した実施例1~6は、無水ケイ酸の配合量に依らず良好な整髪効果(ふんわりした(エアリーな)整髪)を示し、べたつきも感じなかった。特に、無水ケイ酸の配合量を0.2質量%以下に抑制した実施例1、2、5及び6は、髪のひっかかりなく、エアリーに整髪することができ、べたつきも感じられなかった。無水ケイ酸の配合量が0.2質量%を超える実施例3及び4では、若干のひっかかり感が生じたが、製品としては許容できる程度であった。しかし、無水ケイ酸を1質量%以上配合した比較例1及び2では、塗布時のひっかかりが顕著に感じられた。
【0058】
一方、無水ケイ酸は含むがアクリル酸Naグラフトデンプンを含まない比較例3では、髪にひっかかりを感じるのみならず、べたついた使用感も生じた。また、無水ケイ酸もアクリル酸Naグラフトデンプンも含まない比較例4では、ふんわりした仕上がり(整髪後のエアリー感)が得られなかった。
【0059】
アクリル酸Naグラフトデンプンの配合量を1.5質量%とした比較例5及び6では、無水ケイ酸の配合量を0.2質量%に抑制しても、塗布時のひっかかりや整髪後のべたつきが生じた。特に、液状油分の配合量を4質量%未満とした比較例6は、塗布時のひっかかりや整髪後のべたつきが顕著に感じられ、エアリー感も損なわれた。
【0060】
【0061】
表3に示した結果より、(B)界面活性剤としてアニオン性及び/又は非イオン性の界面活性剤を用いた実施例1及び実施例7~11では、全ての項目において優れていると評価された。しかしながら、(B)界面活性剤として両性界面活性剤のみを用いた比較例7は安定に乳化できず析出物が観察されたため、特性評価は実施しなかった。
【0062】
【0063】
表4に示すように、本発明においては、固形油分及び液状油分の種類を変更しても同等の効果が得られることが確認された。
【0064】
【0065】
表5では、樹脂(G成分)を更に配合した試料の特性を評価した。上記の項目に加えて、「整髪力」、「外観」及び「増粘性」についても以下の基準で評価した。
【0066】
評価項目及び評価基準
・整髪力:
A+:極めて優れている
A:優れている
B:普通
C:劣っている
【0067】
・外観:
+:良好(析出物が観察されず均一)
-:不良(析出物が観察される)
【0068】
・増粘性:
+:良好(アクリル酸Naグラフトデンプンによる増粘効果が維持される)
-:不良(粘度低下(減粘)が起こった)
【0069】
表5に示した結果から、樹脂を配合した場合には、塗布時のひっかかりのなさ、整髪後のエアリー感、及び整髪後のべたつきのなさという基本性能は問題無く発揮され、整髪力が更に向上する傾向が確認された。しかし、外観及び増粘効果の点では、非イオン性樹脂((VP/メタクリルアミド/ビニルイミダゾール)コポリマー及び(ビニルピロリドン/VA)コポリマー)又はカチオン性樹脂(ポリクオタニウム-11)を配合した実施例20~22では問題が生じなかったが、両性又はアニオン性樹脂を配合した実施例23~27では析出あるいはアクリル酸Naグラフトデンプンによる増粘効果の阻害が観察された。
【0070】
本発明の整髪料組成物の他の処方例を以下に示す。
この処方例Aの整髪料も、塗布時のひっかかりや整髪後のべたつきがなく、整髪後のエアリー感がある。また、整髪力、外観、及び増粘性にも優れている。
【0071】
処方例A: 配合量(質量%)
(1)水 残余
(2)無水ケイ酸 0.5
(3)水酸化カリウム 0.5
(4)ステアロイルメチルタウリンNa 1
(5)ベヘニルアルコール 2
(6)セタノール 1
(7)カルナバロウ 4
(8)パラフィン 2
(9)マイクロクリスタリンワックス 5
(10)ミネラルオイル 2
(11)エチルヘキサン酸セチル 1
(12)水添ポリイソブテン 3
(13)トコフェロール 0.05
(14)フェノキシエタノール 0.5
(15)BG 10
(16)アクリル酸Naグラフトデンプン 1
(17)(ビニルピロリドン/VA)コポリマー 2
合計 100
【0072】
製造方法:
工程1.(1)~(4)を撹拌し80℃に加温する(A)。
工程2.(5)~(14)を80℃に加温、溶解する(B)。
工程3.(A)に(B)を添加し強撹拌を加えて乳化させる(C)。
工程4.(15)~(17)を(C)に添加し、全体が均一になるまで撹拌した後に冷却する。