(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】検査方法、及び検査システム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20220426BHJP
G01N 21/958 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
G01N21/958
(21)【出願番号】P 2019059906
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2021-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】笠井 啓晃
(72)【発明者】
【氏名】針山 達雄
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 誠治
(72)【発明者】
【氏名】高原 洋一
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 久恵
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-215197(JP,A)
【文献】特開2005-164272(JP,A)
【文献】特開2004-309287(JP,A)
【文献】特開2006-267022(JP,A)
【文献】米国特許第06532064(US,B1)
【文献】特開平10-339705(JP,A)
【文献】特開昭53-007288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-G01N 21/958
G01B 11/00-G01B 11/30
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の照射光を、当該照射光が透過可能な
平板部である被検査部位及び
当該被検査部位と境界を接し前記照射光が透過しない部位である非透過部を備える被検査物に対して発する照明機構と、前記発せられた照射光を受光する撮像装置とを配置し、
前記被検査物を、前記照明機構と前記撮像装置との間に、
前記照明機構からの照射光が当該被検査物の平板部の面に照射する方向に固定し、
前記照明機構からの照射光を遮光する素材からなり、前記照明機構から照射された照射光が直接前記被検査部位に到達することを妨げる遮光物を、前記被検査部位に
接触させた位置又は近接させた位置とし、
前記遮蔽物の端部の位置を、前記照射された照射光が前記非透過部及び前記被検査部位の境界部に到達して反射し前記被検査部位の内部に進行可能な位置に固定する、
検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の検査方法であって、
前記撮像装置は、前記照明機構から発せられた照射光を受光し、受光した照射光に基づき前記被検査物の画像を生成し、
情報処理装置が、前記生成した被検査物の画像に基づき、前記被検査部位における欠陥の有無を判定する、
検査方法。
【請求項3】
請求項2に記載の検査方法であって、
前記情報処理装置は、前記被検査部位における欠陥の有無の判定の結果を出力する、検査方法。
【請求項4】
請求項1に記載の検査方法であって、
前記被検査物の被検査部位は、前記照明機構の方向に露出する露出面と、当該露出面と異なる方向に露出する他の露出面とを備えており、
前記被検査物の他の露出面に対して前記照射光を発する他の照明機構を設け、
前記撮像装置は、前記他の露出面で反射した、前記他の照明機構から発せられた照射光を受光し、受光した照射光に基づき前記被検査物の画像を生成する、
検査方法。
【請求項5】
請求項4に記載の検査方法であって、
前記他の照明機構は、強度又は空間分布を周期的に変化させた照射光を発する、検査方法。
【請求項6】
請求項4に記載の検査方法であって、
前記照明機構が前記照射光を発し前記他の照明機構が前記照射光を発しない時間帯を設けることにより、前記撮像装置は当該時間帯において、前記照明機構から発せられた照射光に基づき前記被検査物の画像を生成する、検査方法。
【請求項7】
請求項4に記載の検査方法であって。
前記被検査物、前記照明機構、及び前記遮光物を第1検査ユニットとして一体的に構成し、
前記撮像装置、及び前記他の照明機構を第2検査ユニットとして一体的に構成し、
前記第2検査ユニットを、前記第1検査ユニットによる前記被検査物の検査が可能な位置に移動させる搬送機構を設ける、
検査方法。
【請求項8】
請求項1に記載の検査方法であって、
前記照射光の、前記被検査物における前記被検査部位以外の部位に対する入射面に粗面加工を施す、検査方法。
【請求項9】
請求項1に記載の検査方法であって、
前記照射光の、前記被検査物における前記被検査部位以外の部位に対する入射面に所定の傾斜面を有する突出部を設ける、検査方法。
【請求項10】
請求項1に記載の検査方法であって、
前記照射光の、前記被検査物における前記被検査部位以外の部位に対する入射面に、入射した前記照射光を回折させるスリットを設ける、検査方法。
【請求項11】
請求項1に記載の検査方法であって、
前記被検査物は略平板状の部材であり、
前記被検査物は、前記略平板状の部材の内側の平板部を構成し、その一方の面から他方の面に前記照射光が透過可能な前記被検査部位としての透過部と、前記透過部の外側の平板部を構成し、前記照射光が透過しない部位である非透過部とを備え、
前記遮光物は、前記照明機構から照射され前記非透過部に到達した照射光が、当該非透過部で反射して前記透過部内の端部を通過する形状を備える、
検査方法。
【請求項12】
請求項11に記載の検査方法であって、
前記被検査物は、第1層及び第2層からなる略平板状の部材であり、
前記第1層は、前記略平板状の部材の内側の部位を構成し、前記照射光が透過可能な第1透過部と、前記略平板状の部材の外側の部位を構成し、前記照射光が透過しない部位である非透過部とを備え、
前記第2層は、前記照射光が透過可能な第2透過部からなる、
検査方法。
【請求項13】
光を透過可能な被検査部位を備えた被検査物を、検査する検査システムであって、
所定の照射光を、当該照射光が透過可能な
平板部である被検査部位及び
当該被検査部位と境界を接し前記照射光が透過しない部位である非透過部を備える被検査物に対して発する照明機構と、
前記発せられた照射光を受光する撮像装置と、
前記照明機構からの照射光を遮光する素材からなり、前記照明機構から照射された照射光が直接前記被検査部位に到達することを妨げる遮光物を、前記被検査部位に
接触させた位置又は近接させた位置とした遮光物と、
を有し、
前記被検査物が、前記照明機構と前記撮像装置との間で、前記照明機構からの照射光が当該被検査物の平板部の面に照射する方向に固定され、
前記遮蔽物の端部の位置が、前記照射された照射光が前記非透過部及び前記被検査部位の境界部に到達して反射し前記被検査部位の内部に進行可能な位置に固定されている、
検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査方法、及び検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
光を透過させる部分(例えば透明な部分)を有する製品又は部品に欠陥が生じているか否かを検査する方法として、照明と撮像装置を用いた検査方法がある。例えば、特許文献1には、導光板の検査を行う検査システムが、導光板に検査光を照射する2つの照明と、一方の照明から照射され、導光板を反射した検査光を受光して導光板の撮影を行う第1の撮影装置と、他方の照明から照射され、導光板を透過した検査光を受光して導光板の撮影を行う第2の撮影装置と、各撮影装置で導光板を撮影した撮影画像から、導光板の表面と内部の欠陥を切り分けて検出する検査装置とを備えることが開示されている。そして、同文献には、「他方の照明から照射される検査光の光軸の位置は、第2の撮影装置から若干ずれている。このずれ量dは、第2の撮影装置下の撮影範囲に欠陥がある場合に、導光板内に斜めに入射した検査光が欠陥に向かうように適切な値(例えば、10~20mm程度)に定められる」旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、特許文献1には、透明シートの内部の欠陥を検査するための照明及びこの照明を受光する撮像装置が透明シートを挟んでおおむね相対して設け、照明の法線方向の光軸と撮像装置とを10~20mm程度ずらして配置する。これにより、照明から所定の入射角をもって透明シートに入射した検査光が透明シートの内部で散乱し、その後撮像装置に入射することで、検査が可能となっている。
【0005】
しかし、このような構成によると、透明シートの端面にはその構造上、照明が照射されなくなる部分が生じ、又は、撮像装置の撮影範囲に透明シートが含まれなくなる場合がある。すなわち、撮像装置と照明の光軸との間のズレ量だけ、透明シート端部の検査ができないという問題があった。
【0006】
本発明はこのような現状に鑑みてなされたものであり、その目的は、所定の照射光を透過させる被検査部位を備える被検査物に対して、確実な検査を行うことが可能な検査方法、及び検査システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するための本発明の一つは、所定の照射光を、当該照射光が透過可能な平板部である被検査部位及び当該被検査部位と境界を接し前記照射光が透過しない部位である非透過部を備える被検査物に対して発する照明機構と、前記発せられた照射光を受光する撮像装置とを配置し、前記被検査物を、前記照明機構と前記撮像装置との間に、前記照明機構からの照射光が当該被検査物の平板部の面に照射する方向に固定し、前記照明機構からの照射光を遮光する素材からなり、前記照明機構から照射された照射光が直接前記被検査部位に到達することを妨げる遮光物を、前記被検査部位に接触させた位置又は近接させた位置とし、前記遮蔽物の端部の位置を、前記照射された照射光が前記非透過部及び前記被検査部位の境界部に到達して反射し前記被検査部位の内部に進行可能な位置に固定する、検査方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、所定の照射光を透過させる被検査部位を備える被検査物に対して、確
実な検査を行うことができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の各実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例1に係る検査システム2の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、処理装置26のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、被検査物1を上方からみた平面図である。
【
図4】
図4は、被検査物1をその平面方向と垂直な断面a-aで切断した側方断面図である。
【
図5】
図5は、被検査物1の欠陥の検出の原理を説明する図である。
【
図6】
図6は、遮光物23の形状と撮像装置21の位置との関係を示した図である。
【
図7】
図7は、検査システム2が行う検査の手順の一例を説明するフロー図である。
【
図8】
図8は、撮影画像が第1透明部11における画像である場合の欠陥検出処理の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、撮影画像が透明文字部12における画像である場合の欠陥検出処理の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、実施例2に係る検査システム2の構成の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、実施例3に係る被検査物1の構成の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、実施例3に係る被検査物1の構成の他の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、実施例3に係る被検査物1の構成のさらに他の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、実施例4に係る、被検査物1の修正方法の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、各実施例に係る検査システムについて説明する。
[実施例1]
図1は、実施例1に係る検査システム2の構成の一例を示す図である。検査システム2は、例えば、工場等の所定の検査施設内に設けられる。検査システム2では、第1の照明機構22、及び第2の照明機構24から発せられる光(検査光)を利用して撮像装置21が被検査物1の画像を撮影することで、被検査物1のうち、被検査部位である透明窓部18(光を透過させる部品の中央部分)の検査を自動的に行う。
【0011】
具体的には、検査システム2は、検査施設等の床面から所定高さに、床面と略水平方向に固定された被検査物1と、被検査物1に対して下方から検査光の照射を行う第1の照明機構22と、被検査物1に対して上方から検査光の照射を行う第2の照明機構24と、第1の照明機構22及び第2の照明機構24から照射され、被検査物1を通過した検査光を受光することで被検査物1の画像を生成する撮像装置21と、撮像装置21及び第2の照明機構24の搬送機構であるロボット25と、撮像装置21が生成した画像について所定の情報処理を行うと共にロボット25の制御を行う処理装置26とを備える。
【0012】
なお、ロボット25と処理装置26の間、第2の照明機構24と処理装置26の間、及び撮像装置21と処理装置26の間はそれぞれ、配線27、28、29により通信可能に接続されている。配線27、28、29は、所定の通信線又は通信ネットワークである。
【0013】
被検査物1は、2以上の異なる方向からの光を受光することが可能な表面形状を有する
物体である。被検査物1は、例えば、所定の製品に用いられる板状の部材である。本実施例では、被検査物1は、所定の厚みを有する略平板状の矩形のパネルであるものとする。
【0014】
被検査物1の中央の所定範囲には、被検査部位である透明窓部18(透過平板部)が設けられている。透明窓部18は、入射した検査光が透過可能な(所定割合以上の光が通過可能な)素材からなる。透明窓部18は、被検査物1の面と垂直な方向(法線方向)で被検査物1を貫通している。
【0015】
被検査物1は、裏面を鉛直下方にし、表面を鉛直上方にした状態で固定される。そして、被検査物1の裏面には遮光物23が接して取り付けられている。なお、遮光物23は被検査物1(例えば透明窓部18)に接し又は近接していればよいため、被検査物1に対して遮光物23が一体的に取り付けられなくてもよい。
【0016】
遮光物23は、第1の照明機構22からの検査光が透過しない素材からなる。遮光物23は略直方体の形状を有し、その一面(接触面)が、透明窓部18の、被検査物1の裏面(裏側透明面)に接している。遮光物23の接触面は、裏側透明面を全面的に覆っている。
【0017】
なお、遮光物23の厚みは、例えば、数mm程度であり、あまり厚みがないことが好ましい。また、本実施形態では、遮光物23は、前記のように被検査物1の裏面(裏側透明面)と接している。ただし、遮光物23は、被検査物1の裏面(裏側透明面)と近接している状態でもよい。なお、遮光物23は、完全に第1の照明機構22からの検査光を完全に遮光できる(つまり「遮断」)ことが好ましいが、そうでなくてもよい。例えば、遮光物23を透過後の検査光の強度が、後ほど
図4を用いて説明する第2層1bおよび第2透明部16を透過して撮像装置21が検出する検査光の強度よりも弱く、狙った精度を実現できる程度であれば差支えない。以後の説明では、説明を簡易にするため遮断の場合について説明する。
【0018】
撮像装置21は、第1の照明機構22及び第2の照明機構24から照射され受光面211に達した光を検出することで、被検査物1の画像(撮影画像)を生成する。撮像装置21は、例えば、ラインセンサ、CCDイメージセンサ(CCD: Charge Coupled Device)等の
エリアセンサである。
【0019】
第1の照明機構22及び第2の照明機構24は、被検査物1の内部に生じている欠陥を顕在化するための検査光を発する。
なお、照明機構24は、被検査物1の表面に生じている欠損を顕在化するための検査光として用いることもできる。
【0020】
第1の照明機構22は、撮像装置21が検出可能で、かつ時間的空間的に略均一な光を発することができる装置である。第1の照明機構22は、例えば、LED(Light Emitting Diode)や電球等の発光装置である。第1の照明機構22における検査光の照射面221と撮像装置21の受光面211とは、床面に対して所定角度傾斜した状態で、概ね相対して設けられている。
【0021】
第2の照明機構24は、強度又は空間分布が周期的に変化する、撮像装置21が検出可能な光を発する。第2の照明機構24は、被検査物1の表面(上方の面)を撮影する方向に固定されている。
【0022】
第2の照明機構24は、例えば、光の空間分布が一定のLED照明、光の空間分布を縞パターン状に変化させるLED照明等である。本実施例では、第2の照明機構24は、縞
パターン状の光をそのパターンを変化させつつ発するものとする。具体的には、第2の照明機構24は、異なる2方向の縞パターンの光(縦横方向の縞)と、位相を異ならせた4パターンの縞パターンの光(位相を90度ずつずらす)とを組み合わせることで、合計8つの縞パターンの光照射するものとする。
【0023】
第2の照明機構24は、その床面に対する傾斜角及び位置を変更することで、正反射画像、拡散画像、形状画像(距離画像)等の複数の画像を検出することができる。例えば、ある傾斜角及び位置の場合は、第2の照明機構24から被検査物1に対して発せられた照射光は、被検査物1の表面における透明窓部18の露出面で反射し、撮像装置21は、その反射光に基づき被検査物1の正反射画像を生成することができる。また、他の傾斜角及び位置の場合は、第2の照明機構24から被検査物1に対して発せられた照射光は、被検査物1の表面における透明窓部18で散乱し、撮像装置21は、その散乱光に基づく被検査物1の拡散画像を生成することができる。
【0024】
なお、撮像装置21と被検査物1との距離は、例えば100-200mm程度である。また、第2の照明機構24と被検査物1との距離は、例えば100-200mm程度である。また、遮光物23と第1の照明機構22との間の距離は、例えば、10-30mm程度である。ただし、これらの距離は、ここで例示した距離に限定されるものではなく、適宜に設定される。
【0025】
処理装置26は、例えば、検査施設又はその他の場所(管理センター、事業所等)に設置される情報処理装置(コンピュータ)である。
【0026】
図2は、処理装置26のハードウェア構成の一例を示す図である。処理装置26は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ41と、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の主記憶装置42と、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の補助記憶装置43と、キーボード、マウス、タッチ
パネルなどからなる入力装置44と、モニタ(ディスプレイ)等からなる出力装置45と、各装置と通信を行う通信装置46とを備える。
【0027】
処理装置26は、撮像装置21、ロボット25、及び第2の照明機構24を制御する機能と、撮像装置21が生成した撮影画像に基づき、被検査物1における欠陥を特定する機能とを有する。処理装置26の各機能は、処理装置26のハードウェアによって、もしくは、処理装置26のプロセッサ41が、主記憶装置42や補助記憶装置43に記憶されている各プログラムを読み出して実行することにより実現される。また、これらのプログラムは、例えば、二次記憶デバイスや不揮発性半導体メモリ、ハードディスクドライブ、SSDなどの記憶デバイス、又は、ICカード、SDカード、DVDなどの、情報処理装置で読み取り可能な非一時的データ記憶媒体に格納される。
【0028】
ここで、被検査物1の詳細を説明する。
<被検査物>
図3は、被検査物1を上方からみた平面図である。
図4は、被検査物1をその平面方向と垂直な断面a-aで切断した側方断面図である。
【0029】
被検査物1は、表面を形成している第1層1aと、第1層1aと接して裏面を構成している第2層1bとからなる。第1層1aは、被検査物1の表面のうち内側を構成している第1透明部11(第1透過部)と、被検査物1の表面のうち外側を構成している不透明部10(非透過部)とからなる。
【0030】
第1透明部11は、検査光を所定割合以上で透過させる素材で構成され、例えば、合成
樹脂、ガラス等である。
【0031】
不透明部10は、検査光を所定割合未満で透過させる材質で形成されており、例えば、着色された合成樹脂、金属、ゴム等である。なお、不透明部10の面には、検査光を透過させない素材からなる、ボタン13及び印字部14(ロゴなど)と、被検査物1の両面を貫通するように不透明部10に埋め込まれ、検査光を所定割合以上で透過させる素材からなる立体文字である透明文字部12とが設けられている。透明文字部12の裏面(第2層1b側の面)には、被検査物1を製品に取り付けた際に裏面からの照明が視認しやすくなるように、粗面加工が施されている。
【0032】
次に、第2層1bは第2透明部16(第2透過部)により構成されている。第2透明部16は、被検査物1の裏面を構成している。第2透明部16は、検査光を所定割合以上で透過させる素材からなり、例えば、合成樹脂、ガラス等である。
【0033】
<検査の原理>
ここで、被検査物1の欠陥の検出の原理を説明する。
【0034】
図5は、被検査物1の欠陥の検出の原理を説明する図である。なお、ここでは、透明窓部18が検査の対象であるものとするが、透明文字部12についても同様である。
【0035】
まず、遮光物23は、第1の照明機構22から照射された照射光が直接透明窓部18に到達することを妨げている。したがって、第1の照明機構22の照射面221のうち、遮光物23の垂直下方又はそれより所定範囲内の外側の照射面である第1照射面222から照射される照射光32は、遮光物23に直接到達して反射し、その後、撮像装置21が検知可能な光の強度で撮像装置21に入射することはない。
【0036】
他方、第1の照明機構22の照射面221のうち、第1照射面222より外側の第2照射面223から照射される照射光32は、まず、被検査物1の第2透明部16に入射後、被検査物1における透明窓部18以外の部位である不透明部10との境界部位に達して反射する。そして、この照射光32は、例えば、第2透明部16及び不透明部10の境界部、又は第2透明部16及び遮光物23との境界部、又は透明窓部18と外気との境界部で反射を繰り返すことで進行方向を変更し、第1透明部11の端部を通過した上で、第1透明部11内をさらに進行する。そして、第1透明部11内に欠陥33が存在する場合、照射光32は、その欠陥33により散乱され、その散乱された一部の光が、第1透明部11の上方に離脱して撮像装置21の受光面211に達する。
【0037】
このように、被検査物1の第1の照明機構22の側に、第1の照明機構22からの照射光が直接撮像装置21に到達することを妨げる遮光物23を設けることで、第1の照明機構22からの照射光32は、直接撮像装置21に入ることなく、透明窓部18に進入する。そして、照射光32は透明窓部18に存在する欠陥33に基づき散乱するため、その散乱光を撮像装置21が受光することにより被検査物1の欠陥33の画像を取得することができる。
【0038】
このような遮光物23の構成により、照射光32が直接撮像装置21に入ることなく、透明窓部18の内部をその端部を含めくまなく通過し、透明窓部18における欠陥33を確実に検出することができる。
【0039】
なお、遮光物23は、透過率及び反射率が少ない素材であることが好ましい。具体的には、遮光物23の透過率及び反射率は共に1%未満であることが望ましい。この理由は、遮光物23の透過率が高いと、照射光32が遮光されないためである。また、遮光物23
の反射率が高いと、第2の照明機構24から照射されて被検査物1の表面で反射した光の強度が、第1の照明機構22からの照射光32の強度よりも相対的に強くなり、被検査物1の表面における欠陥の検出を妨げるためである。
【0040】
ところで、遮光物23は、第1の照明機構22からの照射光32が撮像装置21に直接到達しないようにする形状でなければならない。したがって、遮光物23が満たすべき形状は、固定されている撮像装置21の位置との関係で異なる。
【0041】
図6は、遮光物23の形状と撮像装置21の位置との関係を示した図である。同図に示すように、被検査物1の厚さをdとし、撮像装置21の傾斜角(撮像装置21の撮影方向である受光面211の方向と被検査物1の面に対する法線方向とのなす角)を固定値αとすると、遮光物23の端部231は、対応する透明窓部18の端部よりも、少なくとも、d×tanα以上外側にある必要がある。遮光物23の大きさがこの条件を満たさない場合は、第1の照明機構22における第2照射面223から直進した照射光が、第1透明部11の端部を通過して撮像装置21に直接到達してしまう。
【0042】
このように、遮光物23の端部231を、遮光物23の面と接する透明窓部18の端部181よりも所定長さ外側に設定した形状にすることで、第1の照明機構22からの直接光が透明窓部18の端部に入射し、透明窓部18の端部の欠陥33の検査ができなくなることを防ぐことができる。
【0043】
なお、本実施例では、検査システム2が検知する被検査物1の欠陥33は、第1透明部11の内部の欠陥(例えば、異物、気泡、シルバー、又はモヤ)、透明文字部12に生じる欠陥(例えば、欠け)、及び、不透明部10の表面に生じる欠陥(例えば、ダコン(打痕)、キズ、又は印刷不良)である。
【0044】
次に、検査システム2による被検査物1の欠陥検査の手順を説明する。
<<検査方法>>
図7は、検査システム2が行う検査の手順の一例を説明するフロー図である。
【0045】
処理装置26は、第2の照明機構24を設定する(S101)。具体的には、例えば、処理装置26は、被検査物1の透明窓部18のうち第1透明部11の面(表面)を検査する場合は、第2の照明機構24の発光を開始し、被検査物1の透明窓部18のうち第2透明部16の面(裏面)を検査する場合は、第2の照明機構24の発光を停止する。なお、第1の照明機構22は発光したままでよい(常時発光している場合でも検査に影響がないため)。
【0046】
他方、ロボット25は、検査開始時に移動すべき所定の位置(スキャン開始位置)に移動する(S102)。スキャン開始位置は、例えば、撮像装置21が被検査物1の長手方向の一端の画像を撮影可能な位置である。
【0047】
その後、ロボット25は、画像の撮影(スキャン)を開始する(S103)。具体的には、例えば、ロボット25は、予め設定されたプログラムにより、撮像装置21が所定速度で被検査物1の長手方向の他端に向かって移動すると共に、処理装置26に計測開始指令を送信する(S104)。
【0048】
なお、被検査物1が、撮像装置21の撮影範囲又は第2の照明機構24の光の照射範囲と比較して大きい場合は、ロボット25は、複数回に分けてスキャンを行う。例えば、被検査物1の短手方向の長さが長い場合、ロボット25は、被検査物1の短手方向の位置を変更しつつ、被検査物1の長手方向の一端から他端までのスキャンを行う。
【0049】
ロボット25に取り付けられている撮像装置21は、所定のタイミング(例えば、所定時間間隔、又は所定時刻)で被検査物1の撮影画像を生成し、処理装置26がこれを取得する(S105)。
【0050】
なお、撮像装置21は、ロボット25が移動中に撮影した画像を一つの画像データとして生成してもよいし、被検査物1の分割された各領域に対応する複数の画像データを生成してもよい。
【0051】
また、第1透明部11における欠陥を検査する場合は、第2の照明機構24が発光しないようにすることで、第2の照明機構24による照射光によって第1透明部11における欠陥の検出の精度が低下しないようにしてもよい。そこで、検査対象が第1透明部11を含む場合は、ロボット25は、第2の照明機構24を発光させた(オンにした)時間帯に撮影された被検査物1の表面の画像に加えて、第2の照明機構24を発光させない(オフにした)時間帯に撮影された第1透明部11の画像を生成する。ここで、前記のように、第2の照明機構24として縞パターン状に変化させる検査光を発光させる場合、前記の8回の縞パターンに加え、第2の照明機構24をオン及びオフにしたパターンを照射する。
【0052】
続いて、処理装置26は、撮像装置21から取得した撮影画像に基づき、被検査物1の欠陥を検出する欠陥検出処理を実行する(S106)。
【0053】
ここで、欠陥検出処理の詳細を説明する。
<欠陥検出処理(第1透明部の場合)>
図8は、撮影画像が第1透明部11の画像である場合の欠陥検出処理の一例を示す図である。ここでは、撮影された画像5は、第1透明部11のうち欠陥33が存在しない部分に対応する非欠陥領域51と、第1透明部11のうち欠陥33が存在している部分に対応する欠陥領域52とを有するものとする。欠陥領域52における照射光32の強度は、非欠陥領域51における照射光32の強度よりも大きくなる。
【0054】
そこで、処理装置26は、第1透明部11の画像5の各部分に対応する光強度を特定し、特定した光強度53が所定の閾値54を超えている場合に、その部分が欠陥であると判定する。これにより、処理装置26は、第1透明部11における欠陥33を認識する。なお、
図8の画像5では、非欠陥領域51が暗く、欠陥領域52が明るい例を示しているが、明暗が逆転する場合もある。
【0055】
<欠陥検出処理(透明文字部の場合)の場合>
図9は、撮影画像が透明文字部12の画像である場合の欠陥検出処理の一例を示す図である。この場合、処理装置26は、透明文字部12を含む撮影画像61と、撮影画像61と同様の範囲が撮影されている、欠陥33が存在しない被検査物1の透明文字部12の基準画像63とを取得する。そして、処理装置26は、撮影画像61と基準画像63との差分の画像65を生成する。処理装置26は、この生成した差分の画像65に対して、第1透明部11に対する前記の欠陥検出処理と同様の処理を実行することにより、撮影画像61に含まれていた欠陥部分の画像62を抽出する。このように、撮影画像61及び、参照となる基準画像63を用いることで、透明文字部12における照射光32の光強度の変化の影響を相殺し、欠陥部分の画像62の抽出を容易にすることができる。
【0056】
次に、
図7に示すように、ロボット25は、被検査物1のうち必要な全ての領域を撮影したか(スキャンが全て終了したか)否かを判定する(S107)。具体的には、例えば、ロボット25は、被検査物1の表面及び裏面の全ての領域の画像を撮影したか否かを判定する。
【0057】
被検査物1の全ての画像を撮影した場合には(S107:YES)、処理装置26は、これまでの欠陥検出処理の結果を示す結果表示画面を表示し、検査処理は終了する(S108)。他方、撮影されていない被検査物1の画像がある場合には(S107:NO)、S101の処理が繰り返される。
【0058】
なお、処理装置26は、処理装置26に接続された情報処理装置又は記憶装置に、撮影画像、被検査物1に関する統計情報(欠陥33の種類や数など)を記憶してもよい。これにより、記憶した情報を、被検査物1と同種の製品の製造プロセスのモニタに活用することが可能となる。
【0059】
また、ロボット25の移動中、撮像装置21と被検査物1との間の距離及び角度は一定に保つことが好ましい。また、撮像装置21の焦点深度内に被検査物1の全ての部位が収まる場合には、ロボット25は、被検査物1の一端部から他端部までを一度移動するだけで、撮像装置21は被検査物1全体の画像を撮影することができる。
【0060】
ここで、結果表示画面について説明する。
<結果表示画面>
図10は、結果表示画面の一例を示す図である。この結果表示画面8は、撮像装置21により取得された被検査物1全体の撮影画像が表示される撮影画像表示部80と、被検査物1の欠陥33に対応する撮影画像表示部80上の位置に、欠陥33を表す図形又は文字が表示される欠陥表示部81、82、83とを備える。欠陥表示部81、82、83は、その欠陥33の種類に応じて、形状、色、又は文字の内容を変えて図形又は文字が表示される。これにより、欠陥33の種類、欠陥33における光の強度(信号強度)、欠陥の大きさ等の情報をユーザにわかりやすく提供することができる。同図では、マーカーの形状を欠陥表示部81、82、83で変えている。
【0061】
図11は、結果表示画面の他の一例を示す図である。この結果表示画面8は、撮像装置21が被検査物1に関して複数の画像を生成した場合に表示される画面であり、撮像装置21により取得された被検査物1の複数の画像がそれぞれ表示される分割撮影画像表示部84、85と、被検査物1の欠陥33に対応する分割撮影画像表示部84、85上の位置に、欠陥33を表す図形又は文字が表示される欠陥表示部81、82、83とを備える。
【0062】
なお、以上の結果表示画面8には、欠陥33の種類又は数等のリストを表示してもよい。
【0063】
このように、本実施例の検査システム2は、被検査物1に、第1の照明機構22からの照射光32を遮断する遮光物23を設け、遮光物23を、被検査部位(透明窓部18)と接し又は近接するようにし、また、第1の照明機構22から照射された照射光32が直接、被検査部位に到達することを妨げると共に、被検査部位以外の部位に直接到達した照射光32がその部位で進行方向を変更して被検査部位内の端部を含む部位を通過可能な形状に成形することで、被検査部位内の端部を含む部位に対して確実に、第1の照明機構22から照射光32を到達させることができる。これにより、被検査部位の端部に存在する欠陥33を確実に検出することができる。
このように、本実施例の検査システム2によれば、所定の照射光を透過させる被検査部位を備える被検査物に対して、確実な検査を行うことができる。
【0064】
[実施例2]
実施例1では、被検査物1として板状のパネルを想定した。このパネルの面が湾曲している場合、被検査物1の部位によっては撮像装置21の焦点深度内にその部位が収まらな
い。したがってこの場合は、撮像装置21を適宜移動させなければならないことになる。しかし、被検査物1の面が湾曲せず略平坦である場合にはそのような移動が不要である。そこで、本実施例では、被検査物1の面が略平坦である場合の検査方法について説明する。
【0065】
図12は、実施例2に係る検査システム2の構成の一例を示す図である。本実施例に係る検査システム2は、実施例1のロボット25に代えて、リニアステージ91を備える。
【0066】
リニアステージ91には、撮像装置21及び第2の照明機構24が所定位置で固定されている。これにより、撮像装置21及び第2の照明機構24は、リニアステージ91と共に一体となっている(第2検査ユニット)。
【0067】
また、第1の照明機構22と、遮光物23が取り付けられた被検査物1とは、不図示の支持機構を介して一体的に構成されている(第1検査ユニット)。
【0068】
リニアステージ91は、不図示の支持機構(レール等)により、被検査物1の平面方向と略平行な方向(水平方向)に、床面から所定高さにて略直線状に移動可能となっている。なお、被検査物1の面は略平坦であるため、被検査物1の全体が、リニアステージ91により移動する撮像装置21の焦点深度内に完全に収まるようにすることができる。
【0069】
そして、処理装置26は、運搬機構によりリニアステージ91の移動を制御する。撮像装置21は、実施例1と同様に被検査物1の画像を撮影する。
【0070】
このように、本実施例では、第1検査ユニット及び第2検査ユニットがそれぞれ一体的に構成され、さらに、被検査物1全体が撮像装置21の焦点深度内に収まっているので、撮像装置21は、被検査物1の一端から他端までの撮影画像を、リニアステージ91による一度の移動にて生成することができる。これにより、実施例1のロボット25のような複雑な装置構成によらず、簡単かつ安価に被検査物1を検査することができる。なお、リニアステージ91に代えて、コンベアなどのその他の搬送機構を用いてもよい。
【0071】
[実施例3]
検査システム2において、第1の照明機構22からの照射光32が被検査物1の第2透明部16(透明窓部18)に向かって進行した際、その一部は屈折等して第2透明部16の内部に進入するが、残りは反射して第2透明部16の外部に放射される。ここで、第2透明部16の厚みが薄い場合は、照射光32が第2透明部16に入射する効率(導光効率)が低下し、その結果、被検査物1内の欠陥の検出精度が低下することになる。そこで、本実施例に係る被検査物1は、このような導光効率の低下を防ぎ、内部の欠陥を顕在化させる。
【0072】
図13は、実施例3に係る被検査物1の構成の一例を示す図である。この被検査物1の第2透明部16の面のうち、遮光物23の端部231と接する接触面及びこの接触面より所定距離外側の面を含む領域101に、粗面加工が施されている。
【0073】
この場合、粗面加工が施された領域101に照射光32が達すると、この粗面部分によって照射光32が散乱され、第2透明部16への導光効率が向上する。
【0074】
図14は、実施例3に係る被検査物1の構成の他の一例を示す図である。被検査物1の第2透明部16の面のうち、遮光物23の端部231より外側の所定範囲の領域に、第2透明部16と同様の素材からなる突出部102を設ける。突出部102は、例えば、三角錐状(角錐状)、直方体状、円錐状等の形状を有する。
【0075】
この場合、この突出部102が有する傾斜面1021に照射光32が達すると、第2透明部16の平面部(突出部102がない部分)に照射光32が達した場合よりもより照射光32が屈折した光が入射するため、第2透明部16への導光効率が向上する。
【0076】
図15は、実施例3に係る被検査物1の構成のさらに他の一例を示す図である。被検査物1の第2透明部16の面のうち、遮光物23の端部231と接する接触面及びこの接触面より所定距離外側の面を含む領域に、微細な凹凸の表面を有するスリット103(回折格子)が形成されている。
【0077】
この場合、このスリット103の部分に照射光32が達すると、第2透明部16の平面部(スリット103がない部分)に照射光32が達した場合よりもより照射光32が回折した光が入射するため、第2透明部16への導光効率が向上する。
【0078】
[実施例4]
以上の各実施例1-3により、被検査物1の透明窓部18における欠陥を検出することができる。ここで、本実施例では、検出された欠陥がダコン欠陥(打痕)であった場合の、被検査物1の補修方法の一例を説明する。
【0079】
図16は、実施例4に係る、被検査物1の補修方法の一例を説明する図である。同図に示すように、補修者は、検査システム2が表示した結果表示画面8により打痕の位置を確認する。そして、補修者は、結果表示画面8に表示された打痕に対応する、被検査物1の打痕部131を、ヒートガン132等により加熱する。
【0080】
以上の各実施例の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれる。
【0081】
例えば、第2の照明機構24は省略してもよい。
【0082】
また、各実施例では、被検査物1を床面と略平行に設置したが、被検査物1の設置方向はこれに限らず、床面に対して所定角方向け又は床面と垂直に配置してもよい。この場合、撮像装置21、第1の照明機構22、第2の照明機構24も設置方向も対応して調節する。
【0083】
また、遮光物23の形状は、直方体状に限られない。すなわち、第1の照明機構22からの照射光32が被検査物1の被検査部位に直接届かないような形状であればよい(ただし、次述のように、照射光32が被検査部位以外の部位を介して被検査部位に到達できることは必要である)。
【0084】
また、被検査物1の形状は、平板状に限らない。例えば、被検査物1は、球状、錐状体、柱状体等の所定の形状を有する部材であってその内部を貫通する透明部を被検査部位としている部材であってもよい。すなわち、被検査物1の形状は、第1の照明機構22からの照射光32が、被検査部位に到達できるような形状であればよい。
【0085】
また、各実施例では撮像装置21の設置方向及び位置が固定していることを前提に、遮光物23の形状を決定したが、遮光物23の位置及び形状を先に決定し、これにあわせて撮像装置21の設置方向及び位置を変更してもよい。
【0086】
また、各実施例における一部の構成物または処理だけを用いて検査を行ってもよい。ま
た、遮光物23は検査システム2の一部として複数の被検査物1の検査に用いるように説明をしたが、遮光物23をあらかじめ被検査物1の保護材として貼り付けておき、検査を行ってもよい。
【0087】
また、これまでに説明した各実施例に係る構成は適宜組み合わせてもよい。
【0088】
以上の本明細書の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。すなわち、各実施例の検査システム2においては、前記撮像装置は、前記照明機構から発せられた照射光を受光し、受光した照射光に基づき前記被検査物の画像を生成し、情報処理装置が、前記生成した被検査物の画像に基づき、前記被検査部位における欠陥の有無を判定する、としてもよい。
【0089】
このように、情報処理装置(処理装置26)が、撮像装置21が照射光32を受光することにより生成した被検査物1の画像に基づき、被検査部位における欠陥の有無を判定することで、被検査部位における欠陥の有無を迅速かつ正確に把握することができる。
【0090】
また、各実施例の検査システム2においては、前記情報処理装置は、前記被検査部位における欠陥の有無の判定の結果を出力する、としてもよい。
【0091】
これにより、ユーザは、被検査部位における欠陥の有無を容易に角にすることができる。
【0092】
また、各実施例の検査システム2においては、前記被検査物の被検査部位は、前記照明機構の方向に露出する露出面と、当該露出面と異なる方向に露出する他の露出面とを備えており、前記被検査物の他の露出面に対して前記照射光を発する他の照明機構を設け、前記撮像装置は、前記他の露出面で反射した、前記他の照明機構から発せられた照射光を受光し、受光した照射光に基づき前記被検査物の画像を生成する、としてもよい。
【0093】
このように、他の照明機構(第2の照明機構24)を設け、撮像装置21が、第2の照明機構24から発せられた照射光32に基づき被検査物1の画像を生成することで、第1の照明機構22では検出が難しい、第2の照明機構24側の欠陥33を判定することができる。
【0094】
また、各実施例の検査システム2においては、前記他の照明機構は、強度又は空間分布を周期的に変化させた照射光を発する、としてもよい。
【0095】
このように、強度又は空間分布を周期的に変化させた照射光を発することで、被検査物1における欠陥33を顕在化させることができる。
【0096】
また、各実施例の検査システム2においては、前記照明機構が前記照射光を発し前記他の照明機構が前記照射光を発しない時間帯を設けることにより、前記撮像装置は当該時間帯において、前記照明機構から発せられた照射光に基づき前記被検査物の画像を生成する、としてもよい。
【0097】
このように、第1の照明機構22及び第2の照明機構24のうち前者のみから照射光32を発することで、両者の照射光32が競合して欠陥33の検出精度が低下することを避けることができる。
【0098】
また、各実施例の検査システム2においては、前記被検査物、前記照明機構、及び前記遮光物を第1検査ユニットとして一体的に構成し、前記撮像装置、及び前記他の照明機構
を第2検査ユニットとして一体的に構成し、前記第2検査ユニットを、前記第1検査ユニットによる前記被検査物の検査が可能な位置に移動させる搬送機構を設ける、としてもよい。
【0099】
第1検査ユニットに対する検査を行う第2検査ユニットの搬送機構を設けることで、より簡易な装置の操作で被検査物1の欠陥33の検査を行うことができる。
【0100】
また、各実施例の検査システム2においては、前記照射光の、前記被検査物における前記被検査部位以外の部位に対する入射面に粗面加工を施す、としてもよい。
【0101】
このように粗面加工を施すことで、照射光32が被検査物部位以外の部位により効率よく進入することができる。これにより、被検査物1の欠陥33の検出精度を向上させることができる。
【0102】
また、各実施例の検査システム2においては、前記照射光の、前記被検査物における前記被検査部位以外の部位に対する入射面に所定の傾斜面を有する突出部を設ける、としてもよい。
【0103】
このように突出部102を設けることで、照射光32が突出部102で屈折して被検査物部位以外の部位により効率よく進入することができる。これにより、被検査物1の欠陥33の検出精度を向上させることができる。
【0104】
また、各実施例の検査システム2においては、前記照射光の、前記被検査物における前記被検査部位以外の部位に対する入射面に、入射した前記照射光を回折させるスリットを設ける、としてもよい。
【0105】
このように回折用のスリット103を設けることで、照射光32がスリット103で回折して被検査物部位以外の部位により効率よく進入することができる。これにより、被検査物1の欠陥33の検出精度を向上させることができる。
【0106】
また、各実施例の検査システム2においては、前記被検査物は略平板状の部材であり、前記被検査物は、前記略平板状の部材の内側の平板部を構成し、その一方の面から他方の面に前記照射光が透過可能な前記被検査部位としての透過部と、前記透過部の外側の平板部を構成し、前記照射光が透過しない部位である非透過部とを備える、としてもよい。
【0107】
このような形状を備える被検査物1を用いる場合は、第1の照明機構22から照射され、被検査部位以外の外側の部位に到達した照射光32がその部位で進行方向を内側に変更して被検査部位内を反射及び散乱しつつその端部を通過するので、被検査物1の欠陥33を確実に検出することができる。
【0108】
また、各実施例の検査システム2においては、前記被検査物は、第1層及び第2層からなる略平板状の部材であり、前記第1層は、前記略平板状の部材の内側の部位を構成し、前記照射光が透過可能な第1透過部と、前記略平板状の部材の外側の部位を構成し、前記照射光が透過しない部位である非透過部とを備え、前記第2層は、前記照射光が透過可能な第2透過部からなる、としてもよい。
【0109】
このような形状を備える被検査物1を用いる場合は、第1の照明機構22から照射され、第2透過部(第2透明部16)に到達した照射光32は非透過部(不透明部10)で反射等した結果、被検査部位である第1透過部(第1透明部11)を反射及び散乱しつつその端部を通過するので、被検査物1をの欠陥33を確実に検出することができる。
【0110】
また、各実施例の検査システム2においては、所定の照射光を、当該照射光を透過させる被検査部位を備える被検査物に対して発する照明機構と、前記発せられた照射光を受光する撮像装置とを略相対させて配置し、前記被検査物を、前記照明機構と前記撮像装置との間に配置し、前記照明機構からの照射光を遮断する素材からなり、前記照明機構から照射された照射光が直接前記被検査部位に到達することを妨げる遮光物を、前記被検査物に接触するように配置し、前記撮像装置は、前記照明機構から発せられた照射光を受光し、受光した照射光に基づき前記被検査物の画像を生成し、情報処理装置が、前記生成した被検査物の画像に基づき、前記被検査部位における欠陥の有無を判定し、前記被検査部位に欠陥があったと判定された場合に、前記被検査部位を所定の補修装置で補修する、としてもよい。
【0111】
これにより、被検査物1で検出された欠陥33を補修して被検査物1を正常な状態とすることができる。
【符号の説明】
【0112】
1 被検査物、2 検査システム、21 撮像装置、22 第1の照明機構、32 照射光