(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】コンクリート躯体成形方法および座堀具
(51)【国際特許分類】
E04B 1/41 20060101AFI20220426BHJP
E04B 9/18 20060101ALI20220426BHJP
E04G 9/10 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
E04B1/41 502D
E04B9/18 C
E04G9/10 104A
(21)【出願番号】P 2019231127
(22)【出願日】2019-12-23
【審査請求日】2021-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】593012402
【氏名又は名称】SMCプレコンクリート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【氏名又は名称】栗林 和輝
(74)【代理人】
【識別番号】100217755
【氏名又は名称】三浦 淳史
(72)【発明者】
【氏名】山川 亨
(72)【発明者】
【氏名】谷中 康則
(72)【発明者】
【氏名】柴 聡史
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-067690(JP,U)
【文献】実開昭60-073744(JP,U)
【文献】米国特許第5468105(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/41
E04B 9/18
E04G 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートにインサートを埋め込みつつその埋め込み位置で前記インサートに通じる座堀穴をコンクリート表面に形成するコンクリート躯体の成形方法であって、
弾性材料により形成される第1の座堀形成具と鋼製の第2の座堀形成具とを組み合わせて成る座堀具を前記インサートと共に締結具を用いて型枠に締結固定する締結固定ステップと、
前記座堀具と前記インサートとが前記締結具により前記型枠に締結固定された状態で、前記型枠にコンクリートを流し込むコンクリート打設ステップと、
前記コンクリートの硬化後に、前記締結具による締結状態を解除することにより、前記座堀具を伴って前記インサートが埋め込まれて成るコンクリート成形体を前記型枠から取り外す脱型ステップと、
前記コンクリート成形体から取り外し治具を用いて前記座堀具を取り外す座堀具取り外しステップと、
を含み、
前記第1の座堀形成具は、筒状を成すとともに、前記型枠に当接される第1の端面と、その反端側の第2の端面と、前記第1の端面と前記第2の端面とを接続する外周側面とを有し、前記外周側面は、前記第2の端面から前記第1の端面へ向けて先細るテーパ形状を成し、
前記第2の座堀形成具は、前記第1の座堀形成具の内孔に嵌合する嵌合部を有して、前記外周側面により規定される前記第1の座堀形成具の外径の内側に収まるように前記第1の座堀形成具に組み付けられ、
前記締結固定ステップでは、前記第1の座堀形成具の前記第1の端面が前記型枠に当接された状態で前記座堀具が前記インサートと組み付けられて前記締結具により前記型枠に締結固定され、
前記座堀具取り外しステップでは、前記第2の座堀形成具に取り付けた前記取り外し治具による前記座堀具の取り外し時に、前記第1の座堀形成具が弾性的に圧縮変形されつつ前記座堀具が前記コンクリート成形体から取り外されることにより、コンクリートに埋め込まれたままの前記インサートに通じる座堀穴が前記コンクリート成形体の表面へ向けて先細るように開口して形成される、
ことを特徴とする成形方法。
【請求項2】
前記第2の座堀形成具は、前記第1の座堀形成具の前記第2の端面の側で前記内孔から突出する非嵌合部を更に有し、前記非嵌合部は、前記第1の座堀形成具の前記第2の端面から離れるにつれて先細る外周側面を有する柱状体として形成され、
前記座堀具取り外しステップでは、前記第2の座堀形成具に取り付けた前記取り外し治具による前記座堀具の取り外し時に、前記第1の座堀形成具が弾性的に圧縮変形されつつ前記第2の座堀形成具の前記非嵌合部の先細る前記外周側面の案内によって前記座堀具が前記コンクリート成形体から取り外される、
ことを特徴とする請求項1に記載の成形方法。
【請求項3】
前記第2の座堀形成具が前記座堀穴の深さを規定することを特徴とする請求項1または2に記載の成形方法。
【請求項4】
前記第1の座堀形成具は、前記第1の端面の側の厚さ寸法が前記第2の端面の側の厚さ寸法よりも大きいことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項5】
前記締結固定ステップでは、前記インサートおよび前記第2の座堀形成具に締結される前記締結具によって前記第1の座堀形成具を軸方向に圧縮変形させることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項6】
前記脱型ステップでは、圧縮変形された前記第1の座堀形成具の弾性復元力を利用して前記コンクリート成形体が前記型枠から脱型されることを特徴とする請求項5に記載の成形方法。
【請求項7】
前記第2の端面から前記第1の端面へ向けて先細るテーパ形状の前記第1の座堀形成具の前記外周側面は、前記第1の端面の側の端縁部が、前記第1の端面へ向かって径方向外側に広がる傾斜面として形成されることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項8】
前記第1の座堀形成具と前記第2の座堀形成具とが着脱可能に固定されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項9】
前記第1の座堀形成具および前記第2の座堀形成具は、前記取り外し治具を用いて前記第1の座堀形成具と前記第2の座堀形成具とが一体的に前記コンクリート成形体から取り外されるように互いに係止されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項10】
前記第1の座堀形成具の前記内孔を形成する内周面は前記第2の端面から前記第1の端面へ向けて先細るテーパ形状を成し、前記第1の座堀形成具の前記内孔に嵌合する前記第2の座堀形成具の前記嵌合部の外周側面は、前記第1の座堀形成具の前記内周面の先細り形状に対応する先細り形状を成すことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項11】
コンクリートに埋め込まれたインサートの埋め込み位置で前記インサートに通じる座堀穴を前記コンクリートの表面に形成するための座堀具であって、
弾性材料により形成される第1の座堀形成具と鋼製の第2の座堀形成具とが組み合わされて成り、
前記第1の座堀形成具は、筒状を成すとともに、前記コンクリートが流し込まれる型枠に当接されるようになっている第1の端面と、その反端側の第2の端面と、前記第1の端面と前記第2の端面とを接続する外周側面とを有し、前記外周側面は、前記第2の端面から前記第1の端面へ向けて先細るテーパ形状を成し、
前記第2の座堀形成具は、前記第1の座堀形成具の内孔に嵌合する嵌合部を有して、前記外周側面により規定される前記第1の座堀形成具の外径の内側に収まるように前記第1の座堀形成具に組み付けられる、
ことを特徴とする座堀具。
【請求項12】
前記第2の座堀形成具は、前記第1の座堀形成具の前記第2の端面の側で前記内孔から突出する非嵌合部を更に有し、前記非嵌合部は、前記第1の座堀形成具の前記第2の端面から離れるにつれて先細る外周側面を有する柱状体として形成されることを特徴とする請求項11に記載の座堀具。
【請求項13】
前記第2の座堀形成具が前記座堀穴の深さを規定することを特徴とする請求項11または12に記載の座堀具。
【請求項14】
前記第1の座堀形成具は、前記第1の端面の側の厚さ寸法が前記第2の端面の側の厚さ寸法よりも大きいことを特徴とする請求項11から13のいずれか一項に記載の座堀具。
【請求項15】
前記第2の端面から前記第1の端面へ向けて先細るテーパ形状の前記第1の座堀形成具の前記外周側面は、前記第1の端面の側の端縁部が、前記第1の端面へ向かって径方向外側に広がる傾斜面として形成されることを特徴とする請求項11から14のいずれか一項に記載の座堀具。
【請求項16】
前記第1の座堀形成具と前記第2の座堀形成具とが着脱可能に固定されていることを特徴とする請求項11から15のいずれか一項に記載の座堀具。
【請求項17】
前記第1の座堀形成具および前記第2の座堀形成具は、その組み付け嵌合状態で互いに係止されることを特徴とする請求項11から16のいずれか一項に記載の座堀具。
【請求項18】
前記第1の座堀形成具の前記内孔を形成する内周面は前記第2の端面から前記第1の端面へ向けて先細るテーパ形状を成し、前記第1の座堀形成具の前記内孔に嵌合する前記第2の座堀形成具の前記嵌合部の外周側面は、前記第1の座堀形成具の前記内周面の先細り形状に対応する先細り形状を成すことを特徴とする請求項11から17のいずれか一項に記載の座堀具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートにインサートを埋め込みつつその埋め込み位置でインサートに通じる座堀穴をコンクリート表面に形成するコンクリート躯体の成形方法、および、コンクリートに埋め込まれたインサートの埋め込み位置でインサートに通じる座堀穴をコンクリートの表面に形成するための座堀具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンクリートにインサートを埋め込み、このインサートにボルト等の取り付け金具を締結して、この取り付け金具を介して様々な部材や設備等をコンクリート躯体に付設させることがなされている(例えば、特許文献1参照)。また、このようなコンクリート中へのインサートの埋め込みにおいては、その埋め込み位置でインサートに通じる座堀穴がコンクリート表面に形成されている場合、インサートに取り付け金具を締結した後、座堀穴にモルタル等の充填材を埋め込み充填してコンクリート躯体の表面を平滑に仕上げるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、座堀穴に埋め込まれる充填材は、経年劣化や施工不良等に起因して座堀穴から脱落するような事態が生じ得る。そのような事態は、特にコンクリート躯体が高層建物の側壁等を形成している場合には問題となり、早急な回避策が求められる。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、埋め込みインサートに通じるコンクリート表面の座堀穴からの充填材の脱落を防止できるコンクリート躯体成形方法および座堀具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、コンクリートにインサートを埋め込みつつその埋め込み位置で前記インサートに通じる座堀穴をコンクリート表面に形成するコンクリート躯体の成形方法であって、
弾性材料により形成される第1の座堀形成具と鋼製の第2の座堀形成具とを組み合わせて成る座堀具を前記インサートと共に締結具を用いて型枠に締結固定する締結固定ステップと、
前記座堀具と前記インサートとが前記締結具により前記型枠に締結固定された状態で、前記型枠にコンクリートを流し込むコンクリート打設ステップと、
前記コンクリートの硬化後に、前記締結具による締結状態を解除することにより、前記座堀具を伴って前記インサートが埋め込まれて成るコンクリート成形体を前記型枠から取り外す脱型ステップと、
前記コンクリート成形体から取り外し治具を用いて前記座堀具を取り外す座堀具取り外しステップと、
を含み、
前記第1の座堀形成具は、筒状を成すとともに、前記型枠に当接される第1の端面と、その反端側の第2の端面と、前記第1の端面と前記第2の端面とを接続する外周側面とを有し、前記外周側面は、前記第2の端面から前記第1の端面へ向けて先細るテーパ形状を成し、
前記第2の座堀形成具は、前記第1の座堀形成具の内孔に嵌合する嵌合部を有して、前記外周側面により規定される前記第1の座堀形成具の外径の内側に収まるように前記第1の座堀形成具に組み付けられ、
前記締結固定ステップでは、前記第1の座堀形成具の前記第1の端面が前記型枠に当接された状態で前記座堀具が前記インサートと組み付けられて前記締結具により前記型枠に締結固定され、
前記座堀具取り外しステップでは、前記第2の座堀形成具に取り付けた前記取り外し治具による前記座堀具の取り外し時に、前記第1の座堀形成具が弾性的に圧縮変形されつつ前記座堀具が前記コンクリート成形体から取り外されることにより、コンクリートに埋め込まれたままの前記インサートに通じる座堀穴が前記コンクリート成形体の表面へ向けて先細るように開口して形成される、
ことを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、コンクリートに埋め込まれたインサートの埋め込み位置で前記インサートに通じる座堀穴を前記コンクリートの表面に形成するための座堀具であって、
弾性材料により形成される第1の座堀形成具と鋼製の第2の座堀形成具とが組み合わされて成り、
前記第1の座堀形成具は、筒状を成すとともに、前記コンクリートが流し込まれる型枠に当接されるようになっている第1の端面と、その反端側の第2の端面と、前記第1の端面と前記第2の端面とを接続する外周側面とを有し、前記外周側面は、前記第2の端面から前記第1の端面へ向けて先細るテーパ形状を成し、
前記第2の座堀形成具は、前記第1の座堀形成具の内孔に嵌合する嵌合部を有して、前記外周側面により規定される前記第1の座堀形成具の外径の内側に収まるように前記第1の座堀形成具に組み付けられる、
ことを特徴とする。
【0008】
本発明のコンクリート躯体成形方法および座堀具によれば、それによりコンクリート躯体の表面に形成される座堀穴が、第1の座堀形成具の先細るテーパ形状の外周側面に起因して、コンクリート躯体(コンクリート成形体)の表面へ向けて先細るように開口して形成されるようになる。したがって、この先細りによって充填材脱落抑止勾配効果が得られ、座堀穴に埋め込まれる充填材が経年劣化や施工不良等に起因して座堀穴から脱落するような事態を防止できる。この場合、そのような先細りの座堀穴を形成する座堀具は、弾性材料により形成される第1の座堀形成具と鋼製の第2の座堀形成具とを組み合わせて成ることにより特徴的な利点を伴う。すなわち、第1の座堀形成具は、弾性材料により形成されるため、その外周側面がコンクリート表面へ向けて(第2の端面から第1の端面へ向けて)先細るテーパ形状に形成されていても、弾性変形によってコンクリートから取り外すことが可能であり、一方、このような弾性の第1の座堀形成具内に嵌合するように設けられる鋼製の第2の座堀形成具は、その嵌合部から座堀穴全体にわたって延在し得ることとなるため、弾性変形に起因して座堀穴の深さ寸法精度を確保することが難しい第1の座堀形成具とは異なり、その剛性によって座堀穴の深さを正確に規定することができる。
【0009】
すなわち、本発明の座堀具は、弾性を有する第1の座堀形成具と鋼製の第2の座堀形成具とから成る複合的な構造により、互いの欠点(第1の座堀形成具だけでは、その弾性に起因して座堀穴の深さ寸法精度を確保することが難しく、一方、第2の座堀形成具だけでは、コンクリート表面へ向けて先細る形状にすると、その剛性に起因して座堀具をコンクリートから取り外すことができないという点)を補完しつつ、互いの利点(第1の座堀形成具は、コンクリート表面へ向けて先細るように形成してもその弾性変形によってコンクリートから取り外すことができ、一方、第2の座堀形成具はその剛性によって座堀穴の深さ寸法精度を確保できるという点)を引き出すため、コンクリートにその表面に向けて先細る座堀穴を座堀具によって容易に形成でき、座堀穴からの充填材の脱落の効果的な防止を図ることができる。
【0010】
また、上記構成において、第2の座堀形成具は、第1の座堀形成具の第2の端面の側で内孔から突出する非嵌合部を更に有し、非嵌合部は、第1の座堀形成具の第2の端面から離れるにつれて先細る外周側面を有する柱状体として形成され、座堀具取り外しステップでは、第2の座堀形成具に取り付けた取り外し治具による座堀具の取り外し時に、第1の座堀形成具が弾性的に圧縮変形されつつ第2の座堀形成具の非嵌合部の先細る外周側面の案内によって座堀具がコンクリート成形体から取り外されることが好ましい。このように、第1の座堀形成具の第2の端面の側で突出する鋼製の第2の座堀形成具の非嵌合部の外周側面をコンクリート表面へ向けて広がる(第1の座堀形成具の第2の端面から離れるにつれて先細る)ように形成することにより、その外周側面の案内によって座堀具をコンクリート成形体から容易に取り外すことができる。
【0011】
また、上記構成において、第1の座堀形成具は、第1の端面の側の厚さ寸法が第2の端面の側の厚さ寸法よりも大きいことが好ましい。これによれば、座堀具取り外しステップにおいて取り外し治具を用いてコンクリート成形体から座堀具を取り外す際に、鋼製の第2の座堀形成具に取り付けられた取り外し治具による取り外し力を第1の座堀形成具の薄い第2の端面側から厚い第1の端面側へ向けて分散させて逃がすことが可能となり、コンクリート成形体からの座堀具の取り外しが容易となる。
【0012】
また、上記構成において、締結固定ステップでは、インサートおよび第2の座堀形成具に締結される締結具によって第1の座堀形成具を軸方向に圧縮変形させることが好ましい。これによれば、第1の座堀形成具の圧縮変形によって、第1の座堀形成具と第2の座堀形成具とが圧接するとともに、型枠と第1の座堀形成具とが圧接するようになるため、セメントと水との混合物であるノロ(セメントペースト)が第1の座堀形成具と第2の座堀形成具との間の隙間および型枠と第1の座堀形成具との間の隙間を通って流れることを防止でき、したがって、それに伴って生じるノロの薄膜(バリ)の形成を回避して、コンクリート躯体の良好な仕上がり状態を確保できる。
【0013】
また、締結固定ステップにおいて締結具により第1の座堀形成具を軸方向に圧縮変形させる場合には、脱型ステップにおいて、圧縮変形された第1の座堀形成具の弾性復元力を利用してコンクリート成形体を型枠から脱型させることが好ましい。このようにすれば、コンクリート成形体から型枠を外す瞬間に、圧縮された第1の座堀形成具が弾性的に復元し、その反発力によりコンクリート成形体と型枠との離脱をスムーズに行なうことができる。
【0014】
また、上記構成において、第2の端面から第1の端面へ向けて先細るテーパ形状の第1の座堀形成具の外周側面は、第1の端面の側の端縁部が、第1の端面へ向かって径方向外側に広がる傾斜面として形成されることが好ましい。これによれば、蟻足状の勾配(「く」の字に屈曲する形状)を外周面にもたらすことができ、それにより、コンクリート成形体から座堀具を取り外す際の抵抗を効果的に逃がして、座堀具取り外しに伴う座堀穴の形状崩れを防止でき、コンクリート躯体の良好な仕上がり状態を確保できる。
【0015】
また、上記構成では、第1の座堀形成具と第2の座堀形成具とが着脱可能に固定されていることが好ましい。これによれば、第1の座堀形成具と第2の座堀形成具との嵌合状態を固定でき、取り外し治具を用いて第1の座堀形成具と第2の座堀形成具とを確実に一体化させて同時に取り外すことができる。
【0016】
また、上記構成において、第1の座堀形成具および第2の座堀形成具は、取り外し治具を用いて第1の座堀形成具と第2の座堀形成具とが一体的にコンクリート成形体から取り外されるように互いに係止されていてもよい。この場合も、先とほぼ同様に、第1の座堀形成具と第2の座堀形成具との嵌合状態を安定させることができ、取り外し治具を用いて第1の座堀形成具と第2の座堀形成具とを一体化させて同時に取り外すことが可能となる。
【0017】
なお、コンクリート成形体からの座堀具の取り外しに関しては、第1の座堀形成具および第2の座堀形成具を同時に引き抜くことができるようにする専用の取り外し治具を用いるとよい。そのような専用の取り外し治具は、座堀穴で露出する第2の座堀形成具に設けたネジ穴に螺合されてもよい。
【0018】
また、上記構成において、第1の座堀形成具の内孔を形成する内周面は第2の端面から第1の端面へ向けて先細るテーパ形状を成し、第1の座堀形成具の内孔に嵌合する第2の座堀形成具の嵌合部の外周側面は、第1の座堀形成具の内周面の先細り形状に対応する先細り形状を成すことが好ましい。これによれば、第1の座堀形成具と第2の座堀形成具とがテーパ嵌合する結果となるため、第1の座堀形成具と第2の座堀形成具との嵌合密着性が向上するとともに、テーパ嵌合面が第1および第2の座堀形成具同士の芯合わせのガイドとしての機能を果たすようになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のコンクリート躯体成形方法および座堀具によれば、それによりコンクリート躯体の表面に形成される座堀穴が、コンクリート躯体(コンクリート成形体)の表面へ向けて先細るように開口して形成されるようになる。したがって、この先細りによって充填材脱落抑止勾配効果が得られ、座堀穴に埋め込まれる充填材が経年劣化や施工不良等に起因して座堀穴から脱落するような事態を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る座堀具と共にインサートを型枠に組み付けた状態を示す断面図である。
【
図2】型枠から取り外されたコンクリート成形体の断面図である。
【
図3】
図1の組み付け態様によって形成される座堀穴を表面に有するコンクリート躯体の部分断面図である。
【
図4】本発明の一実施の形態に係るコンクリート躯体の成形方法の一例を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第2の実施の形態に係る座堀具と共にインサートを型枠に組み付けた状態を示す断面図である。
【
図6】本発明の第3の実施の形態に係る座堀具と共にインサートを型枠に組み付けた状態を示す断面図である。
【
図7】本発明の第4の実施の形態に係る座堀具と共にインサートを型枠に組み付けた状態を示す断面図である。
【
図8】本発明の第5の実施の形態に係る座堀具と共にインサートを型枠に組み付けた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る座堀具10と共にインサート80を型枠90に組み付けた状態を断面図で示している。この場合、座堀具10およびインサート80は、例えば座堀具10およびインサート80の内孔に形成される雌ネジに螺合される雄ネジを有する図示しない締結具を用いて型枠90に締結固定される。
【0022】
本実施の形態に係る座堀具10は、
図3に示されるように、コンクリートCに埋め込まれたインサート80の埋め込み位置でインサート80に通じる座堀穴50をコンクリートC(コンクリート躯体60)の表面60aに形成するためのものであり、
図1に示されるように、弾性材料により形成される第1の座堀形成具20と、鋼製の第2の座堀形成具30とが組み合わされて成る。
【0023】
弾性材料により形成される第1の座堀形成具20は、筒状を成しており、型枠90(型枠90に流し込まれるコンクリートと接触する型枠90の内面90a)に当接される第1の端面20aと、その反端側の第2の端面20bと、第1の端面20aと第2の端面20bとを接続する外周側面20cとを有する。この場合、外周側面20cは、第2の端面20bから第1の端面20aへ向けて先細るテーパ形状を成しており、座堀具10の中心軸線Oに沿う断面において直線状に延びる。
【0024】
第2の座堀形成具30は、第1の座堀形成具20の内孔20dに嵌合する嵌合部30Aを有しており、第1の座堀形成具20の外周側面20cにより規定される第1の座堀形成具20の外径(最大外径または外周側面20c)の内側に収まるように第1の座堀形成具20に組み付けられる。また、本実施の形態において、第2の座堀形成具30は、第1の座堀形成具20の第2の端面20bの側で内孔20dから突出する非嵌合部30Bも有し、この非嵌合部30Bは、第1の座堀形成具20の第2の端面20bから離れるにつれて先細る外周側面30Bbを有する柱状体として形成される。この場合、非嵌合部30Bは、嵌合部30Aと一体形成されており、第1の座堀形成具20の第2の端面20bと当接する第2の座堀形成具30の段部30aを形成するように径方向外側に張り出すべく延在する第1の端面30Bcと、その反対側の第2の端面30Bdとを有し、これらの端面30Bc,30Bd同士が、第1の端面30Bcから第2の端面30Bdへ向けて先細るテーパ形状の外周側面30Bbによって接続される。しかしながら、第2の座堀形成具30は、このような非嵌合部30Bを有していなくてもよい。
【0025】
嵌合部30Aを介して第1の座堀形成具20に着脱自在に組み付けられ(固定され)るこのような第2の座堀形成具30は、その高い剛性により、座堀穴50の深さD(
図3参照)を規定するようになっている。
【0026】
また、本実施の形態において、第1の座堀形成具20の内孔20dを形成する内周面は第2の端面20bから第1の端面20aへ向けて先細るテーパ形状を成しており、また、それに伴って、第1の座堀形成具20の内孔20dに嵌合する第2の座堀形成具30の嵌合部30Aの外周側面30Abも、第1の座堀形成具20の内周面の先細り形状に対応する先細り形状(座堀具10の中心軸線Oに沿う断面において直線状に延びる)を成している。そのため、本実施の形態において、第1の座堀形成具20は、第1の端面20aの側の厚さ寸法T1が第2の端面20bの側の厚さ寸法T2よりも大きくなっている。
【0027】
続いて、上記構成の座堀具10を用いて、コンクリートCにインサート80を埋め込みつつその埋め込み位置でインサート80に通じる座堀穴50をコンクリート表面に形成するコンクリート躯体60(
図3参照)の成形方法の一例について説明する。
【0028】
まず、初めに、弾性材料により形成される第1の座堀形成具20と鋼製の第2の座堀形成具30とを組み合わせて成る座堀具10をインサート80と共に図示しない締結具を用いて型枠90に締結固定する(
図4の締結固定ステップS1)。この場合、第1の座堀形成具20の内孔20dに第2の座堀形成具30の嵌合部30Aが嵌合されるとともに、第1の座堀形成具20の第1の端面20aが型枠90の内面90aに当接された状態で、前記締結具が、型枠90の締結具挿通孔90bを通じて、第2の座堀形成具30の嵌合部30Aの段付き穴30Aa,30Ab(本実施の形態では、例えば穴30Aaがネジ穴)、非嵌合部30Bのネジ穴30Ba、および、インサート80のネジ穴80aに螺合されて、前記締結具の頭部が型枠90の外面90cに当て付けられるように前記締結具が締め付けられることにより、座堀具10がインサート80と組み付けられて型枠90に締結固定される。
【0029】
なお、この締結固定ステップS1では、前記締結具による締め付けによって弾性材料から成る第1の座堀形成具20が軸方向(中心軸線Oの方向)に圧縮変形される(
図1の左側の半断面には、そのような圧縮変形時の第1の座堀形成具20の圧縮量Xが示される)。
【0030】
このようにして座堀具10がインサート80と組み付けられて型枠90に締結固定されたら、今度は、型枠90に(型枠90の内面90a側で)コンクリートCを流し込む(
図4のコンクリート打設ステップS2)。そして、コンクリートCの硬化後に、前記締結具による締結状態を解除することにより、座堀具10を伴ってインサート80が埋め込まれて成るコンクリート成形体40(
図2参照)を型枠90から取り外す(
図4の脱型ステップS3)。この脱型ステップS3では、圧縮変形された第1の座堀形成具20の弾性復元力を利用してコンクリート成形体40が型枠90から脱型される。
【0031】
コンクリート成形体40を型枠90から外したら、続いて、コンクリート成形体40から図示しない取り外し治具を用いて座堀具10を取り外す(
図4の座堀具取り外しステップS4)。この場合、前記取り外し治具は、例えば、第2の座堀形成具30の嵌合部30Aの段付き穴30Aa,30Abおよび非嵌合部30Bのネジ穴30Baに螺合され、コンクリート成形体40から座堀具10を引き抜く。また、このような取り外し治具による座堀具10の取り外し時においては、第1の座堀形成具20が弾性的に圧縮変形されつつ座堀具10がコンクリート成形体40から取り外される。特に、第2の座堀形成具30が非嵌合部30Bを有する本実施の形態では、前記取り外し治具による座堀具10の取り外し時、第1の座堀形成具20が弾性的に圧縮変形されつつ非嵌合部30Bの先細る外周側面30Bbの案内によって座堀具10がコンクリート成形体40から取り外され、それにより、
図3に示されるように、コンクリートCに埋め込まれたままのインサート80に通じる座堀穴50がコンクリート成形体40の表面へ向けて先細るように開口して形成されるコンクリート躯体60が完成する。
【0032】
この場合、座堀穴50は、コンクリート躯体60の表面60aへ向けて先細るように第1の座堀形成具20の外周側面20cによって形成されるテーパ面50aと、第2の座堀形成具30の段部30aによって形成される段部50bと、コンクリート躯体60の表面60aへ向けて広がるように第2の座堀形成具30の非嵌合部30Bの外周側面30Bbによって形成される逆テーパ面50cとを有し、また、座堀穴50の開口の直径寸法(すなわち、第1の座堀形成具20の第1の端面20aの外径寸法)は、第2の座堀形成具30が非嵌合部30Bの外周側面30Bbの最大外径(すなわち、非嵌合部30Bの第1の端面30Bcの外径寸法)よりも大きくなっている。このようなコンクリート躯体60には、これに埋め込まれたインサート80のネジ穴80aに締結されるボルト等の図示しない取り付け金具を介して様々な部材や設備等を付設させることができる
【0033】
以上説明したように、本実施の形態によれば、座堀具10によりコンクリート躯体60(コンクリート成形体40)の表面に形成される座堀穴50が、第1の座堀形成具20の先細るテーパ形状の外周側面20cに起因して、コンクリート躯体60(コンクリート成形体40)の表面へ向けて先細るように開口して形成されるようになる。したがって、この先細りによって充填材脱落抑止勾配効果が得られ、そのため、インサート80に前記取り付け金具を締結した後にコンクリート躯体60の表面60aを平滑に仕上げるべく座堀穴50に埋め込まれるモルタル等の充填材が経年劣化や施工不良等に起因して座堀穴50から脱落するような事態を防止できる。この場合、そのような先細りの座堀穴50を形成する座堀具10は、弾性材料により形成される第1の座堀形成具20と鋼製の第2の座堀形成具30とを組み合わせて成ることにより特徴的な利点を伴う。すなわち、第1の座堀形成具20は、弾性材料により形成されるため、その外周側面20cがコンクリート表面へ向けて(第2の端面20bから第1の端面20aへ向けて)先細るテーパ形状に形成されていても、弾性変形によってコンクリートCから取り外すことが可能であり、一方、このような弾性の第1の座堀形成具20内に嵌合するように設けられる鋼製の第2の座堀形成具30は、その嵌合部30Aから非嵌合部30Bに至るまで座堀穴50全体にわたって延在することとなるため、弾性変形に起因して座堀穴50の深さ寸法精度を確保することが難しい第1の座堀形成具20とは異なり、その剛性によって座堀穴50の深さDを正確に規定することができる。
【0034】
すなわち、本実施の形態の座堀具10は、弾性を有する第1の座堀形成具20と鋼製の第2の座堀形成具30とから成る複合的な構造により、互いの欠点(第1の座堀形成具20だけでは、その弾性に起因して座堀穴50の深さ寸法精度を確保することが難しく、一方、第2の座堀形成具30だけでは、コンクリート表面へ向けて先細る形状にすると、その剛性に起因して座堀具10をコンクリートCから取り外すことができないという点)を補完しつつ、互いの利点(第1の座堀形成具20は、コンクリート表面へ向けて先細るように形成してもその弾性変形によってコンクリートCから取り外すことができ、一方、第2の座堀形成具30はその剛性によって座堀穴50の深さ寸法精度を確保できるという点)を引き出すため、コンクリートCにその表面に向けて先細る座堀穴50を座堀具10によって容易に形成でき、座堀穴50からの充填材の脱落の効果的な防止を図ることができる。
【0035】
また、本実施の形態において、第1の座堀形成具20は、第1の端面20aの側の厚さ寸法T1が第2の端面20bの側の厚さ寸法T2よりも大きいため、座堀具取り外しステップS4において取り外し治具を用いてコンクリート成形体40から座堀具10を取り外す際に、鋼製の第2の座堀形成具30に取り付けられた取り外し治具による取り外し力を第1の座堀形成具20の薄い第2の端面20b側から厚い第1の端面20a側へ向けて分散させて逃がすことが可能となり、コンクリート成形体40からの座堀具10の取り外しが容易となる。
【0036】
また、本実施の形態において、締結固定ステップS1では、インサート80および第2の座堀形成具30に締結される締結具によって第1の座堀形成具20を軸方向に圧縮変形させるようにしているため、この圧縮変形によって、第1の座堀形成具20と第2の座堀形成具30とが圧接するとともに、型枠90と第1の座堀形成具20とが圧接するようになり、したがって、セメントと水との混合物であるノロ(セメントペースト)が第1の座堀形成具20と第2の座堀形成具30との間の隙間および型枠90と第1の座堀形成具20との間の隙間を通って流れることを防止でき、それに伴って生じるノロの薄膜(バリ)の形成を回避して、コンクリート躯体60の良好な仕上がり状態を確保できる。
【0037】
また、本実施の形態では、脱型ステップS3において、圧縮変形された第1の座堀形成具20の弾性復元力を利用してコンクリート成形体40を型枠90から脱型させるようにしているため、コンクリート成形体40から型枠90を外す瞬間に、圧縮された第1の座堀形成具20が弾性的に復元し、その反発力によりコンクリート成形体40と型枠90との離脱をスムーズに行なうことができる。
【0038】
また、本実施の形態において、第1の座堀形成具20の内孔20dを形成する内周面は第2の端面20bから第1の端面20aへ向けて先細るテーパ形状を成し、また、第1の座堀形成具20の内孔20dに嵌合する第2の座堀形成具30の嵌合部30Aの外周側面30Abは、第1の座堀形成具20の内周面(内孔20d)の先細り形状に対応する先細り形状を成しているため、第1の座堀形成具20と第2の座堀形成具30とがテーパ嵌合する結果となり、したがって、第1の座堀形成具20と第2の座堀形成具30との嵌合密着性が向上するとともに、テーパ嵌合面が第1および第2の座堀形成具20,30同士の芯合わせのガイドとしての機能を果たすようになる。
【0039】
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る座堀具10Aと共にインサート80を型枠90に組み付けた状態を示す断面図である。図示のように、本実施の形態において、第2の端面20bから第1の端面20aへ向けて先細るテーパ形状の第1の座堀形成具20の外周側面20cは、第1の端面20aの側の端縁部が、第1の端面20aへ向かって径方向外側に広がる傾斜面20eとして形成されている。言い換えると、本実施の形態の第1の座堀形成具20の外周面は、第2の端面20bから第1の端面20aへ向けて先細るテーパ形状の部位20cと、第1の端面20aへ向かって径方向外側に広がる部位20eとを有する。これによれば、蟻足状の勾配(「く」の字に屈曲する形状)を第1の座堀形成具20の外周面にもたらすことができ、それにより、コンクリート成形体40から座堀具10Aを取り外す際の抵抗を効果的に逃がして、座堀具取り外しに伴う座堀穴50の形状崩れを防止でき、コンクリート躯体60の良好な仕上がり状態を確保できる。
【0040】
また、本実施の形態では、第1の座堀形成具20と第2の座堀形成具30とが、内孔20dと嵌合部30Aとの嵌合以外でも、着脱可能に固定されている。すなわち、本実施の形態において、第1の座堀形成具20および第2の座堀形成具30は、前記取り外し治具を用いて第1の座堀形成具20と第2の座堀形成具30とが一体的にコンクリート成形体40から取り外されるように互いに係止されている。具体的には、第2の座堀形成具30の嵌合部30Aの外周面30Abには、非嵌合部30Bとの境界部付近に、環状の係止溝30Acが設けられ、この係止溝30Acには、第1の座堀形成具20の内孔20dを形成する内周面に径方向内側に突出するように設けられる凸部20fが係脱自在に係止されている。これによれば、第1の座堀形成具20と第2の座堀形成具30との嵌合状態を固定かつ安定させることができ、取り外し治具を用いて第1の座堀形成具20と第2の座堀形成具30とを確実に一体化させてコンクリート成形体40から同時に取り外すことが可能となる。なお、それ以外の構成は、前述した第1の実施の形態と同様である。
【0041】
図6は、本発明の第3の実施の形態に係る座堀具10Bと共にインサート80を型枠90に組み付けた状態を示す断面図である。本実施の形態は、第2の実施の形態の変形例であり、第1の座堀形成具20と第2の座堀形成具30との係止形態が第2の実施の形態のそれと逆になっている。すなわち、本実施の形態では、第1の座堀形成具20の内孔20dを形成する内周面に環状の係止溝20hが設けられ、この係止溝20hには、第2の座堀形成具30の嵌合部30Aの外周面に径方向外側に突出するように設けられる凸部30Aeが係脱自在に係止されている。あるいは、係止溝20hを設けることなく、凸部30Aeが第1の座堀形成具20の内周面にそれを弾性的に窪むように変形させるべく食い込んで係止してもよい。
【0042】
また、本実施の形態では、このような係止形態を構成する第1の座堀形成具20の内孔(内周面)20dと第2の座堀形成具30の嵌合部30Aとが、前述の第1および第2の実施の形態のようにテーパ面同士で嵌合せず、中心軸線Oに沿って直線状に延びる面同士で嵌合している。そして、この場合、第2の座堀形成具30の嵌合部30Aの外周面には、凸部30Aeに隣接して、座堀具取り外しステップS4における座堀具10Bの取り外しの際の第1の座堀形成具20の弾性変形(圧縮変形)を逃がすためのクリアランスを形成する環状の溝30Adが設けられている。なお、それ以外の構成は第2の実施の形態と同様である。
【0043】
図7は、本発明の第4の実施の形態に係る座堀具10Cと共にインサート80を型枠90に組み付けた状態を示す断面図である。本実施の形態は、第2の実施の形態の変形例であり、先細るテーパ形状の第1の座堀形成具20の外周側面20cが径方向外側に円弧状に膨出する膨出部69の一部によって形成されている。すなわち、この膨出部69は、第1の端面20aへ向かって径方向外側に広がる前述した部位20eに隣接して第1の座堀形成具20の外周面の一部を形成しており、第2の端面20bから第1の端面20aの側へ向けて径方向外側に広がる部位69aと、この部位69aと膨出部69の頂点で接続して第1の端面20aの側へ向けて径方向内側に先細る部位(先細るテーパ形状の第1の座堀形成具20の外周側面20cを形成する部位)69aとを有する。また、本実施の形態では、第2の実施の形態と異なり、第2の座堀形成具30の嵌合部30Aに設けられた環状の係止溝30Acに係脱自在に係止する凸部20fが第1の座堀形成具20の内孔20dを形成する内周面に設けられておらず、環状の係止溝30Acは、専ら、座堀具取り外しステップS4における座堀具10Cの取り外しの際の第1の座堀形成具20の弾性変形(圧縮変形)を逃がすためのクリアランスとして機能するようになっている。このような構成では、座堀具取り外しステップS4において第1の座堀形成具20の弾性変形部が環状の溝30Acに係止されると、それ以降、第1の座堀形成具20および第2の座堀形成具30は、一体的状態が安定化されつつ前記取り外し治具によりコンクリート成形体40から同時に取り外しできるようになる。
【0044】
図8は、本発明の第5の実施の形態に係る座堀具10Dと共にインサート80を型枠90に組み付けた状態を示す断面図である。本実施の形態は、第1の実施の形態の変形例であり、第2の端面20bから第1の端面20aへ向けて先細るテーパ形状の第1の座堀形成具20の外周側面が円弧状の断面形状を有する外周側面20c’として形成されている。このような円弧状の外周側面20c’は、座堀具取り外しステップS4における座堀具10Dの取り外しの際の第1の座堀形成具20の弾性変形時(圧縮変形時)に、
図8の左側の半断面に示されるように、第2の座堀形成具30の嵌合部30Aの先細りテーパ状の外周側面30Abによる変形誘導作用との協働によって第1の座堀形成具20を断面が矩形状の圧縮状態へと変形させ、コンクリート成形体40からの座堀具10のスムーズな離脱を促すようになる。
【符号の説明】
【0045】
10 座堀具
20 第1の座堀形成具
20a 第1の端面
20b 第2の端面
20c 外周側面
20d 内孔
30 第2の座堀形成具
30A 嵌合部
30B 非嵌合部
30Bb 外周側面
40 コンクリート成形体
50 座堀穴
60 コンクリート躯体
80 インサート
90 型枠