(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】ロータリピストンおよびシリンダ装置
(51)【国際特許分類】
F01C 3/02 20060101AFI20220426BHJP
【FI】
F01C3/02 Z
(21)【出願番号】P 2019512215
(86)(22)【出願日】2017-09-01
(86)【国際出願番号】 GB2017052558
(87)【国際公開番号】W WO2018042196
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-08-27
(32)【優先日】2016-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508245563
【氏名又は名称】ロントラ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LONTRA LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】リンジー,スティーブン フランシス
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-017284(JP,A)
【文献】米国特許第02327089(US,A)
【文献】米国特許第06547545(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01C 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリピストン及びシリンダ装置であって、
回転子表面を備える回転子と、
固定子と、
スロットが設けられた回転シャッタ
ディスクと、
前記回転子表面から延在するピストンと、
トランスミッションアセンブリと、
を備え、
前記回転可シャッタディスクの前記スロットは、前記装置の動作中に、前記ピストンが通過できるように構成されており、
前記回転子表面及び前記固定子は、環状チャンバを一緒に画定し、前記ピストンは、前記環状チャンバを通って回転するように配置され、
前記回転子表面は、前記回転子の回転軸に対して実質的に垂直な平面に対して傾斜して向けられ、前記回転子表面は前記回転子の回転軸か
ら離れる方に面するか、またはそれから外方に面
し、
前記回転子表面は、軸方向断面で見たとき、湾曲したフレア状の輪郭であり、
前記湾曲したフレア状の輪郭は、第1の回転子表面端部領域と第2の回転子表面端部領域との間に延在しており、前記第1の回転子表面端部領域は、前記回転子の回転軸に沿って前記第2の回転子表面端部領域に対して間隔をあけられており、前記回転子表面端部領域の一方は、他方の端部領域よりも大きい半径方向範囲を有し、
前記トランスミッションアセンブリは、歯付きギアを含む噛み合う構成要素を有し、かつ、前記回転シャッタディスクのタイミングが前記回転子と同期したままであることを保証するように構成されている、
ロータリピストン及びシリンダ装置。
【請求項2】
前記回転子表面の前記向きが前記垂直平面から斜めにオフセットされる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記斜めのオフセットが実質的に30~60度の範囲内である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記斜めのオフセットが実質的に40~50度の範囲内である、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記回転子表面が、前記垂直平面と、それに直交し前記回転軸を含む第2の面との角度的に中間の対向斜め配向を呈する、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記回転子の少なくとも1つの軸方向端部から延在する回転シャフトを
さらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記シャフトが、前記回転子のそれぞれの軸方向端部からそれぞれ延在する端部部分を備える、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記回転子が、前記シャフトがそれを介して延在するかまたは受け入れられる貫通開口部を備える、請求項6または7に記載の装置。
【請求項9】
前記回転子表面に、前記環状チャンバと前記チャンバの外部の空間との間の流体の連通を可能にするポートが設けられる、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記ポートが、前記回転子の後面の開口部まで延在する開口部を備え、前記後面は前記回転軸の方向に
前記回転子表面から軸方向に離間される、請求項9に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概してロータリピストンおよびシリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリピストンおよびシリンダ装置は様々な形態をとることができ、内燃機関、または過給機もしくは流体ポンプなどの圧縮機、または蒸気機関もしくはタービン交換などの膨張機、または別の形態の容積式装置としてなど、多数の用途に使用することができる。
【0003】
ロータリピストンおよびシリンダ装置は回転子および固定子を含むと考えることができ、固定子は少なくとも部分的に環状チャンバまたはシリンダ空間を画定し、回転子はリングの形態であり得るかまたは環状(断面が凹状)表面を含み、回転子は回転子から環状シリンダ空間内に延在する少なくとも1つのピストンを含み、使用時に少なくとも1つのピストンは、固定子に対する回転子の回転時に環状シリンダ空間を通って周方向に移動し、回転子は固定子に対してシールされ、装置はシリンダ空間シャッタをさらに備え、シリンダ空間シャッタは、シャッタが回転可能に取り付けられていることなどにより、シャッタが環状シリンダ空間を仕切る閉位置まで、およびシャッタが少なくとも1つのピストンの通過を許容する開位置まで、固定子に対して移動可能であり、シリンダ空間シャッタはシャッタディスクの形態であり得る。
【0004】
我々はロータリピストンおよびシリンダ装置の新規構成を考案した。
【発明の概要】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、
回転子表面を備える回転子と、
固定子と、
回転シャッタと
回転子表面から延在するピストンとを備え、
回転子表面および固定子は環状チャンバを一緒に画定し、ピストンは環状チャンバを通って回転するように配置され、
回転子表面は回転子の回転軸に対して実質的に垂直な平面に対して傾斜して向けられてもよく、回転子表面は、例えば軸方向断面で見たとき、回転子の回転軸から概ね離れる方に、またはそれから外方に面してもよい、または方向付けられてもよい、
ロータリピストンおよびシリンダ装置が提供される。
【0006】
回転子表面は、回転子の回転軸に対して実質的に垂直である平面に対して非対称であり得、この平面は回転子表面の中央領域を通って延在する。
【0007】
「回転子表面」と呼ばれるものは、(固定子と共に)作動チャンバを画定する回転子の環状表面領域と呼ばれることがある。この表面領域の端部領域はその軸方向両端部に位置しており、概してそれぞれ円形の線を形成する。これらの線のそれぞれは実質的に平面上にあり、そして回転子表面の中央領域はこれらの平面の間の実質的に等距離のところに位置するか、または言い換えれば2つの軸方向端部の中間に位置する。
【0008】
回転子表面の傾斜配向は、垂直平面から斜めにオフセットされていると見なすことができる。斜めオフセットは、30度から60度の範囲内、または40から50度の範囲内であり得る。
【0009】
回転子表面は、垂直平面と、それに直交し回転軸を含む第2の面との角度的に中間の対向斜め配向を呈してもよい。
【0010】
より一般的には、回転子表面は、回転軸に対して、または回転子の回転軸に対して傾斜して向けられてもよい。
【0011】
配向角度は、軸方向断面で見たときに、回転子の端部/遠位部分を接続する線を基準にして定めることができる。
【0012】
装置は回転シャフトを備えてもよく、回転子はそれに取り付けられてもよく、それと一体であってもよく、シャフトの周りに延在してもよい。
【0013】
シャフトは、回転子の少なくとも一方の軸方向端部から延在することができる。シャフトは、それぞれが回転子のそれぞれの軸方向端部から離れる方向に延在する2つのシャフト部分を含むことができる。
【0014】
シャフトは、回転子を通って延在するように配置された単一の構成要素を含み得る。回転子は、それを通して回転シャフトが配置され得る中央開口部を含み得る。シャフトは、チャンバの(少なくとも)一方の側から離れて延在すると考えられてもよい。
【0015】
シャフトは装置への回転入力および/または装置からの回転出力を提供することができる。
【0016】
回転軸受が、環状チャンバから軸方向に間隔を置いて設けられてもよい。少なくとも2つの回転軸受が、環状チャンバからおよび互いに軸方向に間隔を置いて設けられてもよい。回転軸受は、環状チャンバが軸受の中間にあるように配置されてもよい。軸受は、各側に軸受を有する回転子を通るシャフトがあるように配置されてもよく、あるいは片側にのみ軸受を有して配置されてもよく、または軸受がチャンバ下にあるかまたはチャンバ内の軸方向にある状態で配置されてもよい(そのような軸受は使用中にその外輪が回転するように配置されてもよい)。
【0017】
回転子表面は、好ましくは軸方向断面で見たときに、概してフレア状の輪郭であってもよい。回転子表面(これは部分的に作動チャンバを画定する)は第1の回転子表面端部領域と第2の回転子表面端部領域との間に延在してもよく、第1の回転子表面端部領域は回転子の回転軸に沿って第2の回転子表面端部領域に対して間隔をあけられ、回転子表面端部領域の一方は他方の端部領域よりも大きい半径方向範囲を有する。端部領域のそれぞれは、回転軸に関して回転子表面の遠位領域または最端領域に配置されてもよい。
【0018】
回転子表面は、連続的、滑らか、および湾曲状のうちの少なくとも1つであり得る。
【0019】
回転子表面は、環状チャンバとチャンバの外部の空間との間の流体の連通を可能にする1つまたは複数のポートを備えることができる。
【0020】
1つまたは複数のポートは、部分的に作動チャンバを画定する回転子表面の後面の開口部まで貫通する開口部を含むことができる。後面は回転子表面の反対側にあると考えてもよい。後面は、概して回転軸に沿った方向であり、回転子表面に対してチャンバから離れる方向である後方方向において、回転子表面から離間していてもよい。
【0021】
作動チャンバと連通するポートが、回転子の後面の一部を通って出ることができ、回転子表面から軸方向に離間されることができる。
【0022】
これは、回転子表面を通って環状チャンバに出入りする作動流体を供給するものと見なすことができる。
【0023】
「ピストン」という用語は、本明細書において、その最も広範な意味で、文脈が認めれば、シリンダ壁に対して移動可能な仕切りを含むように用いられ、そのような仕切りは、一般に相対移動の方向にかなりの厚さを有するものである必要はなく、ブレードの形態とすることができる。ピストンはかなりの厚さのものとすることができるか、または中空とすることができる。ピストンはシリンダ空間内の仕切りを形成してもよい。ピストンは使用時に回転子の回転軸の周りを回転するように配置されてもよい。
【0024】
「シール」という用語は、対向する表面間の密な間隔による意図的な流体の漏出経路の許容を含み、必ずしも流体密な構造を形成しない。この範囲内で、シールは、近接して延在する表面または近接して延在する線または近接して延在する領域によって達成され得る。シールは、そこを通る流体の伝達を最小化または制限する対向する表面間のシールギャップによって提供することができる。異なる表面に対応するシールギャップは、特定の組立ておよび動作上の要求により、それらのそれぞれの対向する部分に対して異なる隙間を有し得る。
【0025】
理論上、シャッタは往復可能であることができるが、特に高速が必要とされる場合には、往復部材の使用を回避することが好ましく、シャッタは好ましくは1つまたは複数のシャッタディスクを備え、シャッタディスクは、環状シリンダ空間の周方向または円状に延在するボアと実質的に整列した状態に位置決めされるように配置され、シャッタの開状態において少なくとも1つのピストンがそこを通過することを許容する少なくとも1つの開口部を設けられる。
【0026】
回転子および固定子は、作動チャンバを画定し得る。作動チャンバを部分的に画定する回転子の表面は、断面が凹状または湾曲していてもよい。作動チャンバは実質的に環状の形態であってもよい。
【0027】
シャッタはシリンダ空間の実質的に半径方向に延在する仕切りを提供してもよい。
【0028】
シャッタの少なくとも1つの開口部は、シャッタの実質的に半径方向に、およびシャッタに対して設けられてもよい。
【0029】
好ましくは、回転子の回転軸は、シャッタの回転軸に対して非平行である。最も好ましくは、回転子の回転軸は、シャッタの回転軸に対して実質的に直交する。
【0030】
好ましくは、ピストンは、開口部が環状シリンダ空間を通るときに、妨げられることなく、移動するシャッタの開口部を通過するような形状にされる。ピストンは、ピストンが開口部を通るときにシールが形成されるように、ピストンとシャッタの開口部との間に最小限の隙間があるような形状にされてもよい。シールは、ピストンの第1の側方部分の表面または辺縁領域に設けることができる。
【0031】
好ましくは、固定子は少なくとも1つまたはそれ以上のポートを含む。入口流れ用の少なくとも1つのポート、および出口流れ用の少なくとも1つのポートがあってよい。
【0032】
ポートの少なくとも1つは、シャッタに実質的に隣接し得る。
【0033】
ポートの少なくとも1つは、回転子のポートと協働する弁付きポートを形成するように位置決めされてもよい。
【0034】
好ましくは、シャッタディスクの角速度に対する回転子の角速度の比は1:1であるが、他の比が可能である。
【0035】
シャッタは、シリンダ空間の(たった)1つの領域また位置において作動チャンバを通って延在するかまたは作動チャンバと交差するように配置することができる。
【0036】
装置および装置のいずれかの特徴部は、個々にまたは組み合わせて、以下の記載中に記載されおよび/または図面中に示される1つまたは複数の構造的または機能的特性を備えてもよい。
【0037】
ここで本発明の様々な実施形態を以下の図面を参照して単なる例として記載する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1a】ロータリピストンおよびシリンダ装置の構成要素の斜視図である。
【
図1b】
図1のロータリピストンおよびシリンダ装置の異なる向きからの斜視図である。
【
図2a】先行の図のロータリピストンおよびシリンダ装置の分解図である。
【
図2b】
図2aから組み立てられた装置の斜視図である。
【
図3a】
図2aのロータリピストンおよびシリンダ装置の異なる向きからの分解図である。
【
図3b】
図3aから組み立てられた装置の斜視図である。
【
図4】
図2および3のロータリピストンおよびシリンダ装置の軸方向断面図である。
【
図5a】
図4の装置の回転子の軸方向断面図である。
【
図5b】
図4の装置の回転子の軸方向断面図である。
【
図5c】
図4の装置の回転子の軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図を参照すると、これらは回転子2、固定子4、およびシャッタディスク3を含むロータリピストンおよびシリンダ装置1を示している。固定子は、表現を容易にするためにいくつかの図には示されていないが、回転子に対して維持されるハウジングまたはケーシングなどの構造を備え、回転子の表面2aに面する固定子の内側表面は、全体的に100で示される環状空間または作動チャンバを一緒に画定する。固定子4は2つの部分を効果的に含み、固定子部分は一緒になってそれらの間の回転子およびシャッタを実質的に取り囲む。
【0040】
回転子と一体であり表面2aから延在するピストン5が設けられている。シャッタディスク3に設けられたスロットまたは開口部3aは、ピストンが通過することを可能にするような大きさおよび形状である。シャッタディスク3の回転は、シャッタのタイミングが適切なトランスミッションによって回転子と同期したままであることを保証するように配置される。
【0041】
トランスミッションアセンブリの噛み合う構成要素の1つが歯付きギア6によって示されている。シャッタディスク3はシャフト部分7aおよび7bによって回転式に取り付けられる。
【0042】
装置の使用時には、シャッタディスクの円周面30が回転子の表面2aと対向してそれらの間にシールを形成し、それによりシャッタディスクが環状シリンダ空間内で仕切りとして機能的に働くことを可能にする。
【0043】
回転子の内側(すなわちチャンバに面し部分的にチャンバを画定する)表面2aの形状は、回転シャッタディスクの円周面30の一部によって規定される。
【0044】
回転子および固定子は、作動流体用の1つまたは複数の入口ポートおよび1つまたは複数の出口ポートを有する環状シリンダ空間を提供するように構成される。ポートの1つは以下でより詳細に記載される。
【0045】
特に
図1Aおよび1Bを参照すると、固定子またはハウジングを除いた、回転子およびシャッタの配置の異なる斜視図が示されている。両方の図から分かるように、シャフト9が設けられており、シャフト9は端部9aおよび9bを含み、これらは回転子2を貫通して延在している。
【0046】
この配置を達成するために、回転子2に中央貫通穴(図示せず)が設けられる。有利には、組み立て中に、任意の適切な方法によって回転子をシャフト9に組み付けることができる。これは、回転子の軸方向範囲が大きいために回転子2などの回転子に対して達成することができ、それはろう付けまたは締まりばめなどの手段を用いた正確な整列および確実な取り付けを可能にする。
【0047】
組立プロセスにおいてシャフトが適切な位置にある状態で、回転子2は、シャフトに対する相対移動が動作中に防止されるように配置される。回転子2は、端部部分9aおよび9bの中間に位置している。装置1がどのように使用されるかに応じて、その動作用途に関して、シャフトは回転入力または回転出力を提供するために使用されてもよい。
【0048】
明らかなように、ピストン5は比較的広い寸法なので、ピストンが開口部を通過することを可能にするために、シャッタ3の開口部3aはそれに応じて比例しなければならない。ピストンとシャッタディスクとの間の相対移動を考慮して、開口部3aの境界が適切に構成/輪郭決めされなければならないことは認識されるであろうし、図面においてある程度明らかである。
【0049】
回転子2には、表面2aから反対側まで、すなわち、回転子表面2aから離れる方に概ね軸方向に延在するため、回転子の「後」面と呼ぶことができるものまで延在する(内側)ポート10が設けられている。
【0050】
以下にさらに記載されるように、これは流体が装置の環状または作動チャンバに出入りすることを都合よく可能にする。それは例えば圧縮流体であり得る。
【0051】
ここで、固定子4の構造および構成に関して
図2、3および4を参照する。
図2に見られるように、固定子4は2つの部分4aおよび4bを含む。
【0052】
図2aおよび3aから分かるように、これら2つの部分は、回転子とシャッタディスクの両方を収容するように組み立て中に一緒にされる。固定子部分4aは回転子とシャッタディスクの両方を収容する部分として見ることができる。部分4aは、互いに実質的に直交して配置された2つの部分的に円筒形の部分から形成されている。
【0053】
この実施形態では、2つの部分は一体であり、シャッタディスク3を受ける部分は4a’として示されている。この部分はまた、シャフト9のそれぞれの端部部分9a、およびそれぞれの回転軸受20を受けるように配置された部分4a’’を含む。
【0054】
部品4bは、軸受20とシャフト端部部分9bを受けるように配置された実質的に円筒形の部分4b’’を含む。
【0055】
部分4bに従属して、この例ではスピゴットとして記載されることがある構造15が設けられている。この特徴部は、装置からの作動流体用の出口ポートなどのポートを提供する。構造15は通路16を含み、これは開口部16aと16bとの間の導管を形成する。部品4の面17には開口部16bが設けられており、回転子2の上記ポート10は、開口部16bと周期的に整列するように配置されている。
【0056】
表面17は、回転子2の後面(参照符号なし)に面し、かつそれと密接に協働するように配置される。
【0057】
これは、回転子2が回転し、ポート10が開口部16bと整列すると、流体が環状チャンバ100に出入りすることができる通路が開かれることを意味する。
【0058】
装置1の組み立てまたは製造中に、部品4aおよび4bは、締結具によってまたは他の何らかの方法によって互いに強固に取り付けることができる。
【0059】
図3aおよび3bは、交差ボアの配置を示しており、交差ボアはピストンの通過とシャッタの受け入れの両方に都合よく対応する固定子4a内にあり、組み合わされて流体を作動チャンバに流体連通するための別のポートを形成する。圧縮機の実施形態では、このポートは入口ポートとすることができる。
【0060】
シャッタと回転子はトランスミッションによって同期した状態を維持する。
図2および3の歯付きギア13は、そのようなトランスミッションの一部を示している。
【0061】
図4を参照すると、組み立てられた状態において、回転子2と固定子4とが環状チャンバ100を画定することが分かる。軸受20によって回転可能に取り付けられるシャフト9は、軸A-Aを中心に回転するように配置される。前に示唆したように、通路16によって提供され、固定子4内に形成された装置の圧縮機の実施形態における出口ポートを典型的に提供するポートに加えて、同様の実施形態において作動流体用の入口を提供するポート(
図3の交差ボア)も提供される。使用時には、回転子とシャッタの間のトランスミッションが必要な同期を保証する。装置1が圧縮機として使用される場合、適切な動力源または駆動源をシャフト9の端部部分9aまたは9bあるいはシャッタ手段のシャフト7あるいはトランスミッションの別の部分に取り付けることができる。
【0062】
図5は、装置1の回転子2の幾何学的特性を示すのに役立つ。回転子2は非対称であるとして記載され得る。この非対称性は、その中間点14で回転子2を貫通してこれを二等分する平面P-Pに関している。その中間点は、表面2aの軸方向範囲を定めかつ境界を決める、遠位端部分12aと12bとの間の中間にあるものとして記載することができる。
【0063】
平面P-Pも回転軸A-Aに直交している。凹状(断面において)表面2aは平面P-Pに関して非対称であることが分かる。矢印で示すように、回転子表面自体は回転軸A-Aから外向きかつ外側に概ね向いている。配向角の尺度は、平面P-Pと回転子表面2aとの間の交点で接線Tをとることによって決定することができる。それにより、接線T-Tと平面P-Pとの間の配向角xを決定することが可能である。
【0064】
回転子表面2aの傾斜した外向きの配向を説明するための代替方法として、
図5bを参照する。回転子表面2aの遠位端領域12aと12bとの間に直線Vが生成され、回転子表面の傾斜角は、図に示されるように接続線Vを外挿し形成される傾斜角度zを決定することにより接続線Vと回転軸A-Aとの間の角度を考慮することによって決定することができる。
【0065】
回転子表面2aの配向を考慮するためのさらに別の方法が
図5cに示されている。
図5cにおいて、(図の断面が示されている)断面平面Gは発生平面であり、それはディスクの円周が表面2aを定める平面である。次いで、基準線Lが、(発生平面上のディスク軸の交点と一致する)回転子軸に垂直な平面との交点に沿ってG上に描かれる。平面Qは、ディスク軸および基準線Lと一致する、Gに垂直な平面である。垂直に配置されたディスクの好ましい場合において、QはP(
図5b参照)に平行である。次いで、チャンバの範囲が、平面G上で、Lからシャッタ軸を中心とする2つの角度(アルファ1およびアルファ2)によって定められる。非対称作動チャンバは、アルファ1およびアルファ2が等しくないものとして定義され得る。アルファ1およびアルファ2はLの周囲の反対方向のものであってもよい。一例として、2つの角度はそれぞれ15度と65度であってよい。しかしながら、より一般的には、角度はそれぞれアルファ1:0~30度およびアルファ2:50~90度の範囲内であり得る。これらの範囲は、上述の角度zについての60度から25度の角度範囲に対応する。
【0066】
上述した装置には多数の重要な利点がある。
【0067】
固定子の他の1つまたは複数のポートと連通する回転子を通る1つまたは複数のポートを有することによって、環状チャンバへのまたはそこからの流体の流れを制御または効果的に弁調整することが可能になる。
【0068】
装置1は、回転子とシャッタディスクのより容易な組み立てを可能にする。回転子はディスクを対称的に包囲していないので、組み立ての順序は、固定子をより低コストおよび/またはより正確な製造のために設計することができるように、より異なる方法で達成することができる。例えば、いくつかの既知のピストンおよびシリンダ装置では、シャッタディスクは回転子に対して半径方向に挿入されなければならない。装置1では、回転子を軸A-Aに沿ってシャッタディスク上に都合よく組み付けることもできる。
【0069】
装置1は、より堅いピストン5を含むことを可能にする。チャンバ100は、(従来技術における約45°ではなく)約90°のシャッタを受けるので、ピストンはより良好に支持され、したがって所与の厚さに対してより堅くなる。
【0070】
シャッタディスクを環状チャンバの半径方向の制約内に収める必要がないので、(所望の作動チャンバ容積を達成しながら)シャッタおよび回転子を独立してサイズ決めすることができ、これは、ロータリピストンおよびシリンダ装置のいくつかの既知のタイプと比較した場合、相対部品寸法および軸受荷重に対して設計の柔軟性を与える。
【0071】
所与のチャンバ寸法に対してより小さな回転子直径を達成することができる。回転子は、チャンバを超えて半径方向に延在する必要はない。これは、与えられたチャンバの断面および容積に対して、最大回転子直径がより小さいことを意味する。これにより、コスト、運転中の歪みが低減され、そして機械全体のサイズが小さくなる。
【0072】
さらに、上述のような設計上の柔軟性のために、チャンバは、所与のチャンバ容積に対してより大きな断面、したがってより小さな外径を有するように設計することができる。上記の直前の点と組み合わせて、これは、回転子が、既知の回転子設計で可能であるよりも著しく小さい外径を有することができることを意味する。
【0073】
既存の装置に関連して、低減された軸受荷重もまた達成され得る。チャンバは、より低い表面積対容積比を有する。
【0074】
これは、(その圧力が外圧または大気圧と異なるために)作動流体によって及ぼされる力が一般的により低くなることを意味する。具体的には、回転子にかかる軸方向および半径方向の力を低減することができる。
回転子構造は今や(一般的に)チャンバの内部にあり、いったん組み立てられると他の凹部を必要としないので、それをはるかに堅くすることができる。これは、回転子上の薄壁部分の長さの減少として見ることができる。より堅い回転子は運転中のより少ない変形を意味し、それは運転中の作動チャンバの周りの隙間を減らすことができ、そして作業流体の漏れの量を減らすことができる。
【0075】
低減される軸受荷重。作動流体によって及ぼされる力が減少することに加えて、回転子の設計は軸受をチャンバの両側に簡単に配置することを可能にし、一方、既知の回転子の設計はチャンバが軸受を張り出すことを必要とする。これにより、軸受の荷重が大幅に減り、耐用年数が延び、および/または軸受のサイズ/コストが削減される。
【0076】
低減される漏出。上に概説したように、減少した表面積/容積のために、漏出経路は所与のチャンバ容積に対してより小さな範囲を有する。
【0077】
主回転子とハウジング部品が鋳造されると仮定して、より単純でより小さな部品から最大鋳造寸法を減らし、そしてそれはより小さな機械の使用を可能にすることによって鋳造のコストを減らすことができる。機械加工切削速度はまた、機械加工面により近づいて回転子を支持することがより簡単であり得るので、より速くなり得る(または公差がより細かくなり得る)。
【0078】
回転子は、シャフトに圧入されるか、または他の方法で上述のようにシャフトに組み付けられることができ、それは、2つの構成部品が単一の構成要素として作られる場合より製造が簡単であり得るので製造の複雑さを軽減する。このアセンブリはまた、回転子とシャフトがそれらの構成において異なる材料を使用することを可能にする。
【0079】
変形実施形態のいくつかの例を示す残りの図を参照するが、これらはすべて依然として上記と同じ原理を具体化している。最初に
図6を参照する。それは変形トランスミッション歯付きギア106がシャッタディスク3から離間され、それによって(改良された開口部103’およびピストン5’から分かるように)より大きなチャンバが可能になることを示している。
【0080】
図7Aおよび7Bは、より大きなシール領域を設けることによってシール性を強化するために使用することができる軸方向延長部102aおよび102bを回転子が含む代替実施形態を示す。表面102bは表面2aと幾何学的に連続していてもよい。102bは、作動チャンバの態様を画定しないので機能的に2aの続きではない。
【0081】
図8aおよび8bは、シャフト9が実質的に回転子から一方向のみに延在する実施形態を示す。これは、それが回転子の同じ側でのみ間隔を置いて配置された軸受によって支持される必要があることを意味する。これは所与のチャンバに対する軸受荷重を増大させるが、よりコンパクトな軸受油システムなど他の方法において、または作動チャンバの周りの全体的に高められた温度から軸受を遠ざけることが有利であり得る。
【0082】
図9、10、11、および12は、回転子の後方領域150がアンダーカット、またはその領域内の空間によって画定され得る回転子の変形実施形態を示し、したがって、回転子表面体が必ずしも中実である必要はないことを実証する。領域150は、参照番号151で全体的に示される後壁または後面によって部分的に画定されてもよい。
図9中、後面151は実質的に平坦であり、これは機械加工しやすく、高い剛性をもたらすが、ポート110の容積を増大し、これによりパフォーマンスが低下する可能性がある。
図10では、後面151は表面2aと同様の曲率を有し、その結果、回転子はほぼ一定の厚さを有する。これはポート10の容積を減らすことができるが、機械加工はより複雑である。
図11では、後面151は実質的に円錐台状であり、これは機械加工するのが安価である(またはより高い精度で繰り返し機械加工することを可能にする)一方で、ポート10の容積も最小限に抑える。最後に、
図12では、表面151は円錐台形部分と平面部分の両方で構成されている。これは、ポート10の容積を減少させ、製造コストを減少させ、また回転子2の剛性を増加させ、歪みにより抵抗する働きをする。