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▶ ザ ジャクソン ラボラトリーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】標的にされた増大するDNA脱メチル化
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20220426BHJP
   C12N 9/16 20060101ALI20220426BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N9/16 Z ZNA
C12N15/63 Z
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2019513954
(86)(22)【出願日】2017-09-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 US2017051411
(87)【国際公開番号】W WO2018053037
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-09-01
(31)【優先権主張番号】62/535,113
(32)【優先日】2017-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/485,210
(32)【優先日】2017-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/393,944
(32)【優先日】2016-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】398066918
【氏名又は名称】ザ ジャクソン ラボラトリー
【氏名又は名称原語表記】THE JACKSON LABORATORY
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】チェン, アルバート
(72)【発明者】
【氏名】タガバロウト, アジズ
(72)【発明者】
【氏名】ジレット, ナサニエル
【審査官】宮岡 真衣
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/148994(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/035495(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0238593(US,A1)
【文献】KIENHOFER S. et al.,Differentiation,2015年,90,p.59-68
【文献】MULLER U. et al.,Nucleic Acids Research,2014年,Vol.42, No.13,p.8592-8604
【文献】CHENG A. W. et al.,Cell Research,2016年01月15日,26,p.254-257
【文献】MORITA S. et al.,Nature Biotechnology,2016年08月29日,Vol.34 No.10,p.1060-1065, ONLINE METHODS
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 9/16
C12N 15/09-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱メチル化複合体であって、該脱メチル化複合体は、
(a)以下:
(i)dCas9であるヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素;ならびに
(ii)以下を含むポリヌクレオチド:
(1)標的ポリヌクレオチド配列に相補的なDNA標的化配列;
(2)該ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素に対する結合配列;および
(3)1またはこれより多くのPUF結合部位(PBS)配列、
を含むリボ核タンパク質複合体であって、ここで該ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、該結合配列を介して該ポリヌクレオチドに結合される、リボ核タンパク質複合体;ならびに
(b)以下:
(i)PUFドメイン;
(ii)TET脱メチル化ドメイン;および
(iii)脱メチル化エンハンサードメインであって、(1)前記脱メチル化エンハンサードメインは、Growth Arrest and DNA-Damage-inducible Alpha(GADD45A)ドメインまたはその改変体であり、前記GADD45Aドメインの前記改変体のアミノ酸配列は、配列番号85のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一性を有し、または(2)前記脱メチル化エンハンサードメインは、NEIL2ドメインまたはその改変体であり、前記NEIL2ドメインの前記改変体のアミノ酸配列は、配列番号86のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一性を有する、脱メチル化エンハンサードメイン
を含む脱メチル化タンパク質結合体であって、ここで該脱メチル化タンパク質結合体は、該1またはこれより多くのPBS配列に結合する該PUFドメインを介して該リボ核タンパク質複合体に結合して、脱メチル化複合体を形成する脱メチル化タンパク質結合体、
を含む脱メチル化複合体。
【請求項2】
前記TET脱メチル化ドメインは、TET1ドメイン、TET2ドメインまたはTET3ドメインである、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記TET1ドメインは、配列番号51の配列を有する、請求項2に記載の複合体。
【請求項4】
前記脱メチル化エンハンサードメインは、Growth Arrest and DNA-Damage-inducible Alpha(GADD45A)ドメインである、請求項1に記載の複合体。
【請求項5】
前記GADD45ドメインは、配列番号85のアミノ酸配列を有する、請求項4に記載の複合体。
【請求項6】
記脱メチル化エンハンサードメインは、NEIL2ドメインである、請求項1に記載の複合体。
【請求項7】
前記NEIL2ドメインは、配列番号86のアミノ酸配列を有する、請求項6に記載の複合体。
【請求項8】
前記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、核局在化シグナル(NLS)を含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項9】
前記標的ポリヌクレオチド配列は、遺伝子、転写調節配列、プロモーター、エンハンサーまたはサイレンサーの一部である、請求項1に記載の複合体。
【請求項10】
前記標的ポリヌクレオチド配列は、過剰メチル化核酸配列または過剰メチル化CpG配列である、請求項1に記載の複合体。
【請求項11】
前記1またはこれより多くのPBS配列は、長さ8ヌクレオチドを含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項12】
前記1またはこれより多くのPBS配列は、同一である、請求項1に記載の複合体。
【請求項13】
前記ポリヌクレオチドは、1~50個のPBS配列を含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項14】
1またはこれより多くのPBS配列は、配列番号1のヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項15】
前記PUFドメインは、PUFaドメイン、PUFbドメイン、PUFcドメイン、またはPUFwドメインを含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項16】
前記PUFaドメインは、配列番号2のアミノ酸配列を有する、前記PUFbドメインは、配列番号3のアミノ酸配列を有する、前記PUFcドメインは、配列番号4のアミノ酸配列を有する、かつ/または前記PUFwドメインは、配列番号5のアミノ酸配列を有する、請求項15に記載の複合体。
【請求項17】
非ヒト哺乳動物細胞において標的核酸配列を脱メチル化するための方法であって、該方法は、
(a)脱メチル化を要する標的核酸を含む非ヒト哺乳動物細胞を提供する工程;
(b)該非ヒト哺乳動物細胞に、ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素をコードする第1のポリヌクレオチドを送達する工程であって、前記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素がdCas9である、工程
(c)該非ヒト哺乳動物細胞に、以下:
(i)標的ポリヌクレオチド配列に相補的なDNA標的化配列;
(ii)該ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素に対する結合配列、および
(iii)1またはこれより多くのPUF結合部位(PBS)配列、
を含む第2のポリヌクレオチドを送達する工程であって、ここで該ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、該結合配列を介して該第2のポリヌクレオチドに結合される工程;
(d)該非ヒト哺乳動物細胞に、以下:
(i)PUFドメイン;
(ii)TET脱メチル化ドメイン;および
(iii)脱メチル化エンハンサードメインであって、(1)前記脱メチル化エンハンサードメインは、Growth Arrest and DNA-Damage-inducible Alpha(GADD45A)ドメインまたはその改変体であり、前記GADD45Aドメインの前記改変体のアミノ酸配列は、配列番号85のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一性を有し、または(2)前記脱メチル化エンハンサードメインは、NEIL2ドメインまたはその改変体であり、前記NEIL2ドメインの前記改変体のアミノ酸配列は、配列番号86のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一性を有する、脱メチル化エンハンサードメイン
を含む脱メチル化タンパク質結合体をコードする第3のポリヌクレオチドを送達する工程であって、それによって該送達された脱メチル化タンパク質結合体は、該細胞において該標的核酸配列を脱メチル化する工程、
を包含する方法。
【請求項18】
キットであって、
(i)請求項1に記載のリボ核タンパク質複合体または該リボ核タンパク質複合体をコードする核酸;および
(ii)請求項1に記載の脱メチル化タンパク質結合体または該メチル化タンパク質結合体をコードする核酸、
を含む、キット。
【請求項19】
脱メチル化複合体であって、該脱メチル化複合体は、
(a)以下:
(i)dCas9であるヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素;ならびに
(ii)以下を含むポリヌクレオチド:
(1)標的ポリヌクレオチド配列に相補的なDNA標的化配列;
(2)該ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素に対する結合配列;
(3)第1のPUF結合部位(PBS)配列;ならびに
(4)第2のPUF結合部位(PBS)配列、
を含むリボ核タンパク質複合体であって、ここで該ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、該結合配列を介して該ポリヌクレオチドに結合されるリボ核タンパク質複合体;
(b)以下:
(i)C末端を有する第1のPUFドメイン、および
(ii)該第1のPUFドメインのC末端に作動可能に連結されたTET脱メチル化ドメイン、
を含む脱メチル化タンパク質結合体であって、ここで該脱メチル化タンパク質結合体は、該第1のPBS配列に結合する該第1のPUFドメインを介して該リボ核タンパク質複合体に結合する脱メチル化タンパク質結合体;ならびに
(c)以下:
(i)第2のPUFドメイン;および
(ii)該第2のPUFドメインに作動可能に連結された脱メチル化エンハンサードメイン、
を含む脱メチル化エンハンサー結合体
を含み、該脱メチル化エンハンサー結合体は、該第2のPBS配列に結合する該第2のPUFドメインを介して該リボ核タンパク質複合体に結合して、脱メチル化複合体を形成し、(1)前記脱メチル化エンハンサードメインは、Growth Arrest and DNA-Damage-inducible Alpha(GADD45A)ドメインまたはその改変体であり、前記GADD45Aドメインの前記改変体のアミノ酸配列は、配列番号85のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一性を有し、または(2)前記脱メチル化エンハンサードメインは、NEIL2ドメインまたはその改変体であり、前記NEIL2ドメインの前記改変体のアミノ酸配列は、配列番号86のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一性を有する、脱メチル化複合体。
【請求項20】
非ヒト哺乳動物細胞において標的核酸配列を脱メチル化するための方法であって、該方法は、
(a)脱メチル化を要する標的核酸を含む非ヒト哺乳動物細胞を提供する工程;
(b)該非ヒト哺乳動物細胞に、ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素をコードする第1のポリヌクレオチドを送達する工程であって、前記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素がdCas9である、工程
(c)該非ヒト哺乳動物細胞に、以下:
(i)標的ポリヌクレオチド配列に相補的なDNA標的化配列;
(ii)該ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素に対する結合配列;
(iii)第1のPUF結合部位(PBS)配列、および
(iv)第2のPUF結合部位(PBS)配列、
を含む第2のポリヌクレオチドを送達する工程であって、ここで該ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、該結合配列を介して該第2のポリヌクレオチドに結合される工程;
(d)該非ヒト哺乳動物細胞に、以下:
(i)第1のPUFドメイン;および
(ii)TET脱メチル化ドメインであって、該脱メチル化ドメインは、該第1のPUFドメインのC末端に作動可能に連結された脱メチル化ドメイン、
を含む脱メチル化タンパク質結合体をコードする第3のポリヌクレオチドを送達する工程;ならびに
(e)該非ヒト哺乳動物細胞に、以下:
(i)第2のPUFドメイン;および
(ii)該第2のPUFドメインに作動可能に連結された脱メチル化エンハンサードメインであって、(1)前記脱メチル化エンハンサードメインは、Growth Arrest and DNA-Damage-inducible Alpha(GADD45A)ドメインまたはその改変体であり、前記GADD45Aドメインの前記改変体のアミノ酸配列は、配列番号85のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一性を有し、または(2)前記脱メチル化エンハンサードメインは、NEIL2ドメインまたはその改変体であり、前記NEIL2ドメインの前記改変体のアミノ酸配列は、配列番号86のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一性を有する、脱メチル化エンハンサードメイン
を含む脱メチル化エンハンサー結合体をコードする第4のポリヌクレオチドを送達する工程であって、それによって該送達された脱メチル化タンパク質結合体は、該細胞において該標的核酸配列を脱メチル化する工程、
を包含する方法。
【請求項21】
前記PUFドメインがN末端およびC末端を有し、前記TET脱メチル化ドメインが該PUFドメインの該C末端に作動可能に連結され、前記脱メチル化エンハンサードメインが該PUFドメインの該N末端に作動可能に連結される、請求項1に記載の脱メチル化複合体。
【請求項22】
前記PUFドメインがN末端およびC末端を有し、前記脱メチル化エンハンサードメインがC末端を有し、前記脱メチル化エンハンサードメインが該PUFドメインの該C末端に作動可能に連結され、前記TET脱メチル化ドメインが該脱メチル化エンハンサードメインの該C末端に作動可能に連結される、請求項1に記載の脱メチル化複合体。
【請求項23】
前記PUFドメインがN末端およびC末端を有し、前記TET脱メチル化ドメインが該PUFドメインの該C末端に作動可能に連結され、前記脱メチル化エンハンサードメインが該PUFドメインの該N末端に作動可能に連結される、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記PUFドメインがN末端およびC末端を有し、前記脱メチル化エンハンサードメインがC末端を有し、前記脱メチル化エンハンサードメインが該PUFドメインの該C末端に作動可能に連結され、前記TET脱メチル化ドメインが該脱メチル化エンハンサードメインの該C末端に作動可能に連結される、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
哺乳動物細胞において標的核酸配列を脱メチル化するためのインビトロ方法であって、該方法は、
(a)脱メチル化を要する標的核酸を含む哺乳動物細胞を提供する工程;
(b)該哺乳動物細胞に、ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素をコードする第1のポリヌクレオチドを送達する工程であって、前記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素がdCas9である、工程
(c)該哺乳動物細胞に、以下:
(i)標的ポリヌクレオチド配列に相補的なDNA標的化配列;
(ii)該ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素に対する結合配列、および
(iii)1またはこれより多くのPUF結合部位(PBS)配列、
を含む第2のポリヌクレオチドを送達する工程であって、ここで該ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、該結合配列を介して該第2のポリヌクレオチドに結合される工程;
(d)該哺乳動物細胞に、以下:
(i)PUFドメイン;
(ii)TET脱メチル化ドメイン;および
(iii)脱メチル化エンハンサードメインであって、(1)前記脱メチル化エンハンサードメインは、Growth Arrest and DNA-Damage-inducible Alpha(GADD45A)ドメインまたはその改変体であり、前記GADD45Aドメインの前記改変体のアミノ酸配列は、配列番号85のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一性を有し、または(2)前記脱メチル化エンハンサードメインは、NEIL2ドメインまたはその改変体であり、前記NEIL2ドメインの前記改変体のアミノ酸配列は、配列番号86のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一性を有する、脱メチル化エンハンサードメイン
を含む脱メチル化タンパク質結合体をコードする第3のポリヌクレオチドを送達する工程であって、それによって該送達された脱メチル化タンパク質結合体は、該細胞において該標的核酸配列を脱メチル化する工程、
を包含する方法。
【請求項26】
哺乳動物細胞において標的核酸配列を脱メチル化するためのインビトロ方法であって、該方法は、
(f)脱メチル化を要する標的核酸を含む哺乳動物細胞を提供する工程;
(g)該哺乳動物細胞に、ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素をコードする第1のポリヌクレオチドを送達する工程であって、前記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素がdCas9である、工程
(h)該哺乳動物細胞に、以下:
(i)標的ポリヌクレオチド配列に相補的なDNA標的化配列;
(ii)該ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素に対する結合配列;
(iii)第1のPUF結合部位(PBS)配列、および
(iv)第2のPUF結合部位(PBS)配列、
を含む第2のポリヌクレオチドを送達する工程であって、ここで該ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、該結合配列を介して該第2のポリヌクレオチドに結合される工程;
(i)該非ヒト哺乳動物細胞に、以下:
(i)第1のPUFドメイン;および
(ii)TET脱メチル化ドメインであって、該脱メチル化ドメインは、該第1のPUFドメインのC末端に作動可能に連結された脱メチル化ドメイン、
を含む脱メチル化タンパク質結合体をコードする第3のポリヌクレオチドを送達する工程;ならびに
(j)該哺乳動物細胞に、以下:
(i)第2のPUFドメイン;および
(ii)該第2のPUFドメインに作動可能に連結された脱メチル化エンハンサードメインであって、(1)前記脱メチル化エンハンサードメインは、Growth Arrest and DNA-Damage-inducible Alpha(GADD45A)ドメインまたはその改変体であり、前記GADD45Aドメインの前記改変体のアミノ酸配列は、配列番号85のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一性を有し、または(2)前記脱メチル化エンハンサードメインは、NEIL2ドメインまたはその改変体であり、前記NEIL2ドメインの前記改変体のアミノ酸配列は、配列番号86のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一性を有する、脱メチル化エンハンサードメイン
を含む脱メチル化エンハンサー結合体をコードする第4のポリヌクレオチドを送達する工程であって、それによって該送達された脱メチル化タンパク質結合体は、該細胞において該標的核酸配列を脱メチル化する工程、
を包含する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2016年9月13日に出願された米国仮出願番号第62/393,944号、2017年4月13日に出願された米国仮出願番号第62/485,210号、および2017年7月20日に出願された米国仮出願番号第62/535,113号の利益を主張しており、これら仮出願は、それらの全体が、そしてすべての目的のために本明細書中に援用される。
【0002】
ASCIIファイルとして提出した「配列表」、表、またはコンピュータープログラムリスト付表への言及
ファイル52867-501002WO(2017年9月13日作成、475キロバイト、マシーンフォーマットIBM-PC、MS Windows(登録商標)オペレーティングシステム)の中に書かれた配列表は、参考として援用される。
【背景技術】
【0003】
背景
CRISPR/Casシステムにおいて、Cas9タンパク質およびsgRNA(単一ガイドRNA)は、十分な2構成要素DNAエンドヌクレアーゼを構成し、その特異性は、sgRNA上の標的マッチング配列によって提供されると同時に、エンドヌクレアーゼ活性は、Cas9タンパク質上にある。
【0004】
そのヌクレアーゼドメイン上に変異を有するヌクレアーゼ欠損型またはヌクレアーゼ欠損性Cas9タンパク質(例えば、dCas9)は、sgRNAと複合体化した場合にDNA結合活性を保持する。dCas9タンパク質は、エフェクタードメインまたはタンパク質タグを、sgRNAによってマッチした部位へのタンパク質融合によって繋留しかつ局在化し得、従って、RNA誘導型DNA結合酵素を構成する。dCas9は、転写活性化ドメイン(例えば、VP64)またはリプレッサードメイン(例えば、KRAB)に融合され得、sgRNAによってガイドされて、標的遺伝子をそれぞれ活性化または抑制し得る。dCas9はまた、蛍光タンパク質と融合され得、染色体領域の生細胞蛍光標識を達成し得る。しかし、このようなシステムにおいて、僅か1個のCas9-エフェクター融合が可能である。なぜならsgRNA:Cas9対形成は、排他的であるからである。また、タンパク質タグまたはエフェクター融合物の複数のコピーがある生物学的閾値またはシグナル検出閾値を達成するために必要である場合、dCas9タンパク質との直接融合によるエフェクターまたはタンパク質タグのマルチマー化は、このような融合物をコードする大きなDNAを送達することの困難またはこのような大きなタンパク質をタンパク質サイズに起因して核へと移動するもしくは位置を変えることの困難のような制約によって、技術的に制限される。
【0005】
メチルシトシンは、CpG DNA配列のシトシン環の5位においてメチル基を共有結合的に付加するプロセスを介して生成されるエピジェネティックマークである。哺乳動物細胞では、5-メチルシトシン(5mC)の形成は、DNAメチルトランスフェラーゼによって触媒されかつ維持される。脱メチル化経路(これはメチル基を除去して、非メチル化DNAを回復させる)は、タンパク質のten-eleven translocation(TET)ファミリーを要する。これらは、5mCを非メチル化シトシンで置き換えることをもたらす最初のかつ重要な工程を触媒するTETメチルシトシンジオキシゲナーゼである。
【0006】
CpGメチル化は、細胞分化、遺伝子発現、および細胞ホメオスタシスの維持を形作るクロマチンの多面的なエピジェネティック改変の一部である。DNAメチル化は、インプリンティング、遺伝子のアレル発現の調整において主要な機構である。異常なDNAメチル化は、種々の疾患(がん、インプリンティング障害および神経学的疾患が挙げられるが、これらに限定されない)に関わっている(Robertson, K.D., DNA methylation and human disease. Nat Rev Genet, 2005. 6(8): p. 597-610)。
【0007】
標的細胞におけるメチル化状態を、DNAデメチラーゼおよび/またはDNAメチルトランスフェラーゼを導入することによって調節しようという試みが行われてきた。しかし、このような試みは、標的細胞のメチル化状態において非特異的な全体的な変化を生じる。
【0008】
その一方で、特定のゲノム遺伝子座におけるCpGメチル化事象の因果関係は、生細胞において5mCを非メチル化シトシンへと標的化変換するための単純な方法がないことに本質的に起因して、定義するのが未だに困難なままである。従って、シトシンメチル化の生物学を理解するために、およびシトシンメチル化/脱メチル化経路の質の変化と関連した疾患のための治療を開発するために、特定の遺伝子座におけるメチル化状態を編集することを可能にするツールが、当該分野で必要である。
特に、当該分野でこれらのおよび他の課題に対する解決策を、本明細書で開示する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Robertson, K.D., DNA methylation and human disease. Nat Rev Genet, 2005. 6(8): p. 597-610
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の簡単な要旨
一局面において、脱メチル化複合体が提供される。上記脱メチル化複合体は、以下:
(a)以下:
(i)ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素;ならびに
(ii)以下を含むポリヌクレオチド:
(1)標的ポリヌクレオチド配列に相補的なDNA標的化配列;
(2)上記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素に対する結合配列;および
(3)1またはこれより多くのPUF結合部位(PBS)配列、
を含むリボ核タンパク質複合体であって、ここで上記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、上記結合配列を介して上記ポリヌクレオチドに結合される、リボ核タンパク質複合体;ならびに
(b)以下:
(i)C末端およびN末端を有するPUFドメイン;
(ii)上記PUFドメインのC末端に作動可能に連結されたTET脱メチル化ドメイン;および
(iii)上記PUFドメインのN末端に作動可能に連結されて、タンパク質結合体を形成する脱メチル化エンハンサードメイン、
を含む脱メチル化タンパク質結合体であって、ここで上記脱メチル化タンパク質結合体は、上記1またはこれより多くのPBS配列に結合するPUFドメインを介して上記リボ核タンパク質複合体に結合して、脱メチル化複合体を形成する脱メチル化タンパク質結合体、
を含む。
【0011】
別の局面において、哺乳動物細胞において標的核酸配列を脱メチル化するための方法が提供される。上記方法は、
(a)脱メチル化を要する標的核酸を含む哺乳動物細胞を提供する工程;
(b)上記哺乳動物細胞に、ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素をコードする第1のポリヌクレオチドを送達する工程;
(c)上記哺乳動物細胞に、以下:
(i)標的ポリヌクレオチド配列に相補的なDNA標的化配列;
(ii)上記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素に対する結合配列、および
(iii)1またはこれより多くのPUF結合部位(PBS)配列,
を含む第2のポリヌクレオチドを送達する工程であって、ここで上記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、上記結合配列を介して上記第2のポリヌクレオチドに結合される工程;
(d)上記哺乳動物細胞に、以下:
(i)C末端およびN末端を有するPUFドメイン;
(ii)上記PUFドメインのC末端に作動可能に連結されたTET脱メチル化ドメイン;および
(iii)上記PUFドメインのN末端に作動可能に連結されて、タンパク質結合体を形成する脱メチル化エンハンサードメイン、
を含む脱メチル化タンパク質結合体をコードする第3のポリヌクレオチドを送達する工程であって、それによって上記送達された脱メチル化タンパク質結合体は、上記細胞において上記標的核酸配列を脱メチル化する工程、
を包含する。
【0012】
一局面において、脱メチル化複合体が提供される。上記脱メチル化複合体は、以下:
(a)以下:
(i)ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素;ならびに
(ii)以下を含むポリヌクレオチド:
(1)標的ポリヌクレオチド配列に相補的なDNA標的化配列;
(2)上記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素に対する結合配列;および
(3)1またはこれより多くのPUF結合部位(PBS)配列、
を含むリボ核タンパク質複合体であって、ここで上記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、上記結合配列を介して上記ポリヌクレオチドに結合される、リボ核タンパク質複合体;ならびに
(b)以下:
(i)C末端を有するPUFドメイン;
(ii)N末端およびC末端を有する脱メチル化エンハンサードメインであって、ここで上記脱メチル化エンハンサードメインのN末端は、上記PUFドメインのC末端に作動可能に連結される脱メチル化エンハンサードメイン;および
(iii)上記脱メチル化エンハンサードメインのC末端に作動可能に連結されたTET脱メチル化ドメイン;
を含む脱メチル化タンパク質結合体であって、ここで上記脱メチル化タンパク質結合体は、上記1またはこれより多くのPBS配列に結合する上記PUFドメインを介して上記リボ核タンパク質複合体に結合して、脱メチル化複合体を形成する脱メチル化タンパク質結合体、
を含む。
【0013】
別の局面において、哺乳動物細胞において標的核酸配列を脱メチル化するための方法が提供される。上記方法は、
(a)脱メチル化を要する標的核酸を含む哺乳動物細胞を提供する工程;
(b)上記哺乳動物細胞に、ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素をコードする第1のポリヌクレオチドを送達する工程;
(c)上記哺乳動物細胞に、以下:
(i)標的ポリヌクレオチド配列に相補的なDNA標的化配列;
(ii)上記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素に対する結合配列;および
(iii)1またはこれより多くのPUF結合部位(PBS)配列,
を含む第2のポリヌクレオチドを送達する工程であって、ここで上記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、上記結合配列を介して上記第2のポリヌクレオチドに結合される工程;
(d)上記哺乳動物細胞に、以下:
(i)C末端を有するPUFドメイン;
(ii)N末端およびC末端を有する脱メチル化エンハンサードメインであって、ここで上記脱メチル化エンハンサードメインのN末端は、上記PUFドメインのC末端に作動可能に連結される脱メチル化エンハンサードメイン;ならびに
(iii)上記脱メチル化エンハンサードメインのC末端に作動可能に連結されたTET脱メチル化ドメイン、
を含む脱メチル化タンパク質結合体をコードする第3のポリヌクレオチドを送達する工程であって、それによって上記送達された脱メチル化タンパク質結合体は、上記細胞において上記標的核酸配列を脱メチル化する工程、
を包含する。
【0014】
一局面において、脱メチル化複合体が提供される。上記脱メチル化複合体は、
(a)以下:
(i)ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素;ならびに
(ii)以下を含むポリヌクレオチド:
(1)標的ポリヌクレオチド配列に相補的なDNA標的化配列;
(2)上記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素に対する結合配列;
(3)第1のPUF結合部位(PBS)配列;および
(4)第2のPUF結合部位(PBS)配列、
を含むリボ核タンパク質複合体であって、ここで上記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、上記結合配列を介して上記ポリヌクレオチドに結合される、リボ核タンパク質複合体;
(b)以下:
(i)C末端を有する第1のPUFドメイン、および
(ii)上記第1のPUFドメインのC末端に作動可能に連結されたTET脱メチル化ドメイン、
を含む脱メチル化タンパク質結合体であって、ここで上記脱メチル化タンパク質結合体は、上記第1のPBS配列に結合する上記第1のPUFドメインを介して上記リボ核タンパク質複合体に結合する、脱メチル化タンパク質結合体;ならびに
(c)以下:
(i)第2のPUFドメイン;および
(ii)上記第2のPUFドメインに作動可能に連結された脱メチル化エンハンサードメイン、
を含む脱メチル化エンハンサー結合体であって、ここで上記脱メチル化エンハンサー結合体は、上記第2のPBS配列に結合する上記第2のPUFドメインを介して上記リボ核タンパク質複合体に結合して、脱メチル化複合体を形成する脱メチル化エンハンサー結合体、
を含む。
【0015】
別の局面において、哺乳動物細胞において標的核酸配列を脱メチル化するための方法が提供される。上記方法は、
(a)脱メチル化を要する標的核酸を含む哺乳動物細胞を提供する工程;
(b)上記哺乳動物細胞に、ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素をコードする第1のポリヌクレオチドを送達する工程;
(c)上記哺乳動物細胞に、以下:
(i)標的ポリヌクレオチド配列に相補的なDNA標的化配列;
(ii)上記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素に対する結合配列;
(iii)第1のPUF結合部位(PBS)配列、および
(iv)第2のPUF結合部位(PBS)配列、
を含む第2のポリヌクレオチドを送達する工程であって、ここで上記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、上記結合配列を介して上記第2のポリヌクレオチドに結合される工程;
(d)上記哺乳動物細胞に、以下:
(i)第1のPUFドメイン;および
(ii)脱メチル化ドメインであって、上記脱メチル化ドメインは、上記第1のPUFドメインのC末端に作動可能に連結された脱メチル化ドメイン、
を含む脱メチル化タンパク質結合体をコードする第3のポリヌクレオチドを送達する工程;ならびに
(e)上記哺乳動物細胞に、以下:
(i)第2のPUFドメイン;および
(ii)上記第2のPUFドメインに作動可能に連結された脱メチル化エンハンサードメイン、
を含む脱メチル化エンハンサー結合体をコードする第4のポリヌクレオチドを送達する工程であって、それによって上記送達された脱メチル化タンパク質結合体は、上記細胞において上記標的核酸配列を脱メチル化する工程、
を包含する。
【0016】
別の局面において、キットが提供される。上記キットは、
(i)本明細書で提供されるとおりのその実施形態を含むリボ核タンパク質複合体またはこれらをコードする核酸;および
(ii)本明細書で提供されるとおりのその実施形態を含む脱メチル化タンパク質結合体またはこれらをコードする核酸、
を含む。
【0017】
別の局面において、キットが提供される。上記キットは、
(i)本明細書で提供されるとおりのその実施形態を含むリボ核タンパク質複合体またはこれらをコードする核酸;
(ii)本明細書で提供されるとおりのその実施形態を含む脱メチル化タンパク質結合体またはこれらをコードする核酸;および
(iii)本明細書で提供されるとおりのその実施形態を含む脱メチル化エンハンサー結合体またはこれらをコードする核酸、
を含む。
【0018】
別の局面において、本明細書で提供されるとおりのその実施形態を含む脱メチル化複合体を含む細胞が、提供される。
【0019】
本明細書で記載される任意の実施形態が、実施例の節に記載されるのみのものまたは本発明の一局面の下のみでのものを含め、具体的に権利放棄されるかまたは別段不適切でなければ、任意の1またはこれより多くの他の実施形態と組み合わされ得ることは、理解されるべきである。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
脱メチル化複合体であって、該脱メチル化複合体は、
(a)以下:
(i)ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素;ならびに
(ii)以下を含むポリヌクレオチド:
(1)標的ポリヌクレオチド配列に相補的なDNA標的化配列;
(2)該ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素に対する結合配列;および
(3)1またはこれより多くのPUF結合部位(PBS)配列、
を含むリボ核タンパク質複合体であって、ここで該ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、該結合配列を介して該ポリヌクレオチドに結合される、リボ核タンパク質複合体;ならびに
(b)以下:
(i)C末端およびN末端を有するPUFドメイン;
(ii)該PUFドメインのC末端に作動可能に連結されたTET脱メチル化ドメイン;および
(iii)該PUFドメインのN末端に作動可能に連結されて、タンパク質結合体を形成する脱メチル化エンハンサードメイン、
を含む脱メチル化タンパク質結合体であって、ここで該脱メチル化タンパク質結合体は、該1またはこれより多くのPBS配列に結合する該PUFドメインを介して該リボ核タンパク質複合体に結合して、脱メチル化複合体を形成する脱メチル化タンパク質結合体、
を含む脱メチル化複合体。
(項目2)
前記TET脱メチル化ドメインは、TET1ドメイン、TET2ドメインまたはTET3ドメインである、項目1に記載の複合体。
(項目3)
前記TET1ドメインは、配列番号51の配列を有する、項目2に記載の複合体。
(項目4)
前記脱メチル化エンハンサードメインは、Growth Arrest and DNA-Damage-inducible Alpha(GADD45A)ドメインである、項目1~3のいずれか1項に記載の複合体。
(項目5)
前記GADD45ドメインは、配列番号85のアミノ酸配列を有する、項目4に記載の複合体。
(項目6)
請前記脱メチル化エンハンサードメインは、NEIL2ドメインである、項目1~3のいずれか1項に記載の複合体。
(項目7)
前記NEIL2ドメインは、配列番号86のアミノ酸配列を有する、項目5に記載の複合体。
(項目8)
前記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、核局在化シグナル(NLS)を含む、項目1~7のいずれか1項に記載の複合体。
(項目9)
前記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、dCas9である、項目1~8のいずれか1項に記載の複合体。
(項目10)
前記標的ポリヌクレオチド配列は、遺伝子の一部である、項目1~9のいずれか1項に記載の複合体。
(項目11)
前記標的ポリヌクレオチド配列は、転写調節配列の一部である、項目1~9のいずれか1項に記載の複合体。
(項目12)
前記標的ポリヌクレオチド配列は、プロモーター、エンハンサーまたはサイレンサーの一部である、項目1~9または11のいずれか1項に記載の複合体。
(項目13)
前記標的ポリヌクレオチド配列は、過剰メチル化核酸配列である、項目1~12のいずれか1項に記載の複合体。
(項目14)
前記標的ポリヌクレオチド配列は、過剰メチル化CpG配列である、項目1~13のいずれか1項に記載の複合体。
(項目15)
前記標的ポリヌクレオチド配列は、hMLH1プロモーターの一部である、項目1~9または11~14のいずれか1項に記載の複合体。
(項目16)
前記標的ポリヌクレオチド配列は、Sox遺伝子の一部である、項目1~10または13~14のいずれか1項に記載の複合体。
(項目17)
前記1またはこれより多くのPBS配列は、長さ8ヌクレオチドを含む、項目1~16のいずれか1項に記載の複合体。
(項目18)
前記1またはこれより多くのPBS配列は、同一である、項目1~17のいずれか1項に記載の複合体。
(項目19)
前記ポリヌクレオチドは、1~50個のPBS配列を含む、項目1~18のいずれか1項に記載の複合体。
(項目20)
1またはこれより多くのPBS配列は、配列番号1のヌクレオチド配列を含む、項目1~19のいずれか1項に記載の複合体。
(項目21)
前記PUFドメインは、PUFaドメイン、PUFbドメイン、PUFcドメイン、またはPUFwドメインを含む、項目1~20のいずれか1項に記載の複合体。
(項目22)
前記PUFaドメインは、配列番号2のアミノ酸配列を有する、項目21に記載の複合体。
(項目23)
前記PUFbドメインは、配列番号3のアミノ酸配列を有する、項目21に記載の複合体。
(項目24)
前記PUFcドメインは、配列番号4のアミノ酸配列を有する、項目21に記載の複合体。
(項目25)
前記PUFwドメインは、配列番号5のアミノ酸配列を有する、項目21に記載の複合体。
(項目26)
哺乳動物細胞において標的核酸配列を脱メチル化するための方法であって、該方法は、
(a)脱メチル化を要する標的核酸を含む哺乳動物細胞を提供する工程;
(b)該哺乳動物細胞に、ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素をコードする第1のポリヌクレオチドを送達する工程;
(c)該哺乳動物細胞に、以下:
(i)標的ポリヌクレオチド配列に相補的なDNA標的化配列;
(ii)該ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素に対する結合配列、および
(iii)1またはこれより多くのPUF結合部位(PBS)配列、
を含む第2のポリヌクレオチドを送達する工程であって、ここで該ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、該結合配列を介して該第2のポリヌクレオチドに結合される工程;
(d)該哺乳動物細胞に、以下:
(i)C末端およびN末端を有するPUFドメイン;
(ii)該PUFドメインのC末端に作動可能に連結されたTET脱メチル化ドメイン;および
(iii)該PUFドメインのN末端に作動可能に連結されて、タンパク質結合体を形成する脱メチル化エンハンサードメイン、
を含む脱メチル化タンパク質結合体をコードする第3のポリヌクレオチドを送達する工程であって、それによって該送達された脱メチル化タンパク質結合体は、該細胞において該標的核酸配列を脱メチル化する工程、
を包含する方法。
(項目27)
前記脱メチル化タンパク質結合体は、前記リボ核タンパク質複合体に、前記1またはこれより多くのPBS配列に結合する前記PUFドメインを介して結合して、脱メチル化複合体を形成する、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記第1のポリヌクレオチドは、第1のベクター内に含まれる、項目26または27に記載の方法。
(項目29)
前記第2のポリヌクレオチドは、第2のベクター内に含まれる、項目26~28のいずれか1項に記載の方法。
(項目30)
前記第3のポリヌクレオチドは、第3のベクター内に含まれる、項目26~29のいずれか1項に記載の方法。
(項目31)
前記第1の、第2のまたは第3のベクターはいずれも、同じである、項目26~30のいずれか1項に記載の方法。
(項目32)
前記送達する工程は、トランスフェクションによって行われる、項目26~31のいずれか1項に記載の方法。
(項目33)
キットであって、
(i)項目1~25のいずれか1項に記載のリボ核タンパク質複合体または該リボ核タンパク質複合体をコードする核酸;および
(ii)項目1~25のいずれか1項に記載の脱メチル化タンパク質結合体または該メチル化タンパク質結合体をコードする核酸、
を含む、キット。
(項目34)
トランスフェクション薬剤をさらに含む、項目33に記載のキット。
(項目35)
がん患者からサンプルを集めるためにサンプル収集デバイスをさらに含む、項目33または34に記載のキット。
(項目36)
脱メチル化複合体であって、該脱メチル化複合体は、
(a)以下:
(i)ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素;ならびに
(ii)以下を含むポリヌクレオチド:
(1)標的ポリヌクレオチド配列に相補的なDNA標的化配列;
(2)該ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素に対する結合配列;および
(3)1またはこれより多くのPUF結合部位(PBS)配列、
を含むリボ核タンパク質複合体であって、ここで該ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、該結合配列を介して該ポリヌクレオチドに結合される、リボ核タンパク質複合体;ならびに
(b)以下:
(i)C末端を有するPUFドメイン;
(ii)N末端およびC末端を有する脱メチル化エンハンサードメインであって、ここで該脱メチル化エンハンサードメインのN末端は、該PUFドメインのC末端に作動可能に連結される脱メチル化エンハンサードメイン;および
(iii)該脱メチル化エンハンサードメインのC末端に作動可能に連結されたTET脱メチル化ドメイン;
を含む脱メチル化タンパク質結合体であって、ここで該脱メチル化タンパク質結合体は、該1またはこれより多くのPBS配列に結合する該PUFドメインを介して該リボ核タンパク質複合体に結合して、脱メチル化複合体を形成する脱メチル化タンパク質結合体、
を含む脱メチル化複合体。
(項目37)
前記TET脱メチル化ドメインは、TET1ドメイン、TET2ドメインまたはTET3ドメインである、項目36に記載の複合体。
(項目38)
前記TET1ドメインは、配列番号51の配列を有する、項目37に記載の複合体。
(項目39)
前記脱メチル化エンハンサードメインは、Growth Arrest and DNA-Damage-inducible Alpha(GADD45A)ドメインである、項目36~38のいずれか1項に記載の複合体。
(項目40)
前記GADD45ドメインは、配列番号85のアミノ酸配列を有する、項目39に記載の複合体。
(項目41)
前記脱メチル化エンハンサードメインは、NEIL2ドメインである、項目36~38のいずれか1項に記載の複合体。
(項目42)
前記NEIL2ドメインは、配列番号86のアミノ酸配列を有する、項目41に記載の複合体。
(項目43)
前記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、核局在化シグナル(NLS)を含む、項目36~42のいずれか1項に記載の複合体。
(項目44)
前記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、dCas9である、項目36~43のいずれか1項に記載の複合体。
(項目45)
前記標的ポリヌクレオチド配列は、遺伝子の一部である、項目36~44のいずれか1項に記載の複合体。
(項目46)
前記標的ポリヌクレオチド配列は、転写調節配列の一部である、項目36~44のいずれか1項に記載の複合体。
(項目47)
前記標的ポリヌクレオチド配列は、プロモーター、エンハンサーまたはサイレンサーの一部である、項目36~44または46のいずれか1項に記載の複合体。
(項目48)
前記標的ポリヌクレオチド配列は、過剰メチル化核酸配列である、項目36~47のいずれか1項に記載の複合体。
(項目49)
前記標的ポリヌクレオチド配列は、過剰メチル化CpG配列である、項目36~48のいずれか1項に記載の複合体。
(項目50)
前記標的ポリヌクレオチド配列は、hMLH1プロモーターの一部である、項目36~44または46~49のいずれか1項に記載の複合体。
(項目51)
前記標的ポリヌクレオチド配列は、Sox遺伝子の一部である、項目36~45または48~49のいずれか1項に記載の複合体。
(項目52)
前記1またはこれより多くのPBS配列は、長さ8ヌクレオチドを含む、項目36~51のいずれか1項に記載の複合体。
(項目53)
前記1またはこれより多くのPBS配列は、同一である、項目36~52のいずれか1項に記載の複合体。
(項目54)
前記ポリヌクレオチドは、1~50個のPBS配列を含む、項目36~53のいずれか1項に記載の複合体。
(項目55)
1またはこれより多くのPBS配列は、配列番号1のヌクレオチド配列を含む、項目36~54のいずれか1項に記載の複合体。
(項目56)
前記PUFドメインは、PUFaドメイン、PUFbドメイン、PUFcドメイン、またはPUFwドメインを含む、項目36~55のいずれか1項に記載の複合体。
(項目57)
前記PUFaドメインは、配列番号2のアミノ酸配列を有する、項目56に記載の複合体。
(項目58)
前記PUFbドメインは、配列番号3のアミノ酸配列を有する、項目56に記載の複合体。
(項目59)
前記PUFcドメインは、配列番号4のアミノ酸配列を有する、項目56に記載の複合体。
(項目60)
前記PUFwドメインは、配列番号5のアミノ酸配列を有する、項目56に記載の複合体。
(項目61)
哺乳動物細胞において標的核酸配列を脱メチル化するための方法であって、該方法は、
(a)脱メチル化を要する標的核酸を含む哺乳動物細胞を提供する工程;
(b)該哺乳動物細胞に、ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素をコードする第1のポリヌクレオチドを送達する工程;
(c)該哺乳動物細胞に、以下:
(i)標的ポリヌクレオチド配列に相補的なDNA標的化配列;
(ii)該ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素に対する結合配列;および
(iii)1またはこれより多くのPUF結合部位(PBS)配列、
を含む第2のポリヌクレオチドを送達する工程であって、ここで該ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、該結合配列を介して該第2のポリヌクレオチドに結合される工程;
(d)該哺乳動物細胞に、以下:
(i)C末端を有するPUFドメイン;
(ii)N末端およびC末端を有する脱メチル化エンハンサードメインであって、ここで該脱メチル化エンハンサードメインのN末端は、該PUFドメインのC末端に作動可能に連結される脱メチル化エンハンサードメイン;ならびに
(iii)該脱メチル化エンハンサードメインのC末端に作動可能に連結されたTET脱メチル化ドメイン
を含む脱メチル化タンパク質結合体をコードする第3のポリヌクレオチドを送達する工程であって、それによって該送達された脱メチル化タンパク質結合体は、該細胞において該標的核酸配列を脱メチル化する工程、
を包含する方法。
(項目62)
前記脱メチル化タンパク質結合体は、前記リボ核タンパク質複合体に、前記1またはこれより多くのPBS配列に結合する前記PUFドメインを介して結合して、脱メチル化複合体を形成する、項目61に記載の方法。
(項目63)
前記第1のポリヌクレオチドは、第1のベクター内に含まれる、項目61または62に記載の方法。
(項目64)
前記第2のポリヌクレオチドは、第2のベクター内に含まれる、項目61~63のいずれか1項に記載の方法。
(項目65)
前記第3のポリヌクレオチドは、第3のベクター内に含まれる、項目61~64のいずれか1項に記載の方法。
(項目66)
前記第1の、第2のまたは第3のベクターはいずれも、同じである、項目61~65のいずれか1項に記載の方法。
(項目67)
前記送達する工程は、トランスフェクションによって行われる、項目61~66のいずれか1項に記載の方法。
(項目68)
キットであって、
(i)項目36~60のいずれか1項に記載のリボ核タンパク質複合体または該リボ核タンパク質複合体をコードする核酸;および
(ii)項目36~60のいずれか1項に記載の脱メチル化タンパク質結合体または該メチル化タンパク質結合体をコードする核酸、
を含むキット。
(項目69)
トランスフェクション薬剤をさらに含む、項目68に記載のキット。
(項目70)
がん患者からサンプルを集めるためにサンプル収集デバイスをさらに含む、項目68または69に記載のキット。
(項目71)
脱メチル化複合体であって、該脱メチル化複合体は、
(a)以下:
(i)ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素;ならびに
(ii)以下を含むポリヌクレオチド:
(1)標的ポリヌクレオチド配列に相補的なDNA標的化配列;
(2)該ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素に対する結合配列;
(3)第1のPUF結合部位(PBS)配列;ならびに
(4)第2のPUF結合部位(PBS)配列、
を含むリボ核タンパク質複合体であって、ここで該ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、該結合配列を介して該ポリヌクレオチドに結合されるリボ核タンパク質複合体;
(b)以下:
(i)C末端を有する第1のPUFドメイン、および
(ii)該第1のPUFドメインのC末端に作動可能に連結されたTET脱メチル化ドメイン、
を含む脱メチル化タンパク質結合体であって、ここで該脱メチル化タンパク質結合体は、該第1のPBS配列に結合する該第1のPUFドメインを介して該リボ核タンパク質複合体に結合する脱メチル化タンパク質結合体;ならびに
(c)以下:
(i)第2のPUFドメイン;および
(ii)該第2のPUFドメインに作動可能に連結された脱メチル化エンハンサードメイン、
を含む脱メチル化エンハンサー結合体であって、ここで該脱メチル化エンハンサー結合体は、該第2のPBS配列に結合する該第2のPUFドメインを介して該リボ核タンパク質複合体に結合して、脱メチル化複合体を形成する脱メチル化エンハンサー結合体、
を含む脱メチル化複合体。
(項目72)
前記TET脱メチル化ドメインは、TET1ドメイン、TET2ドメインまたはTET3ドメインである、項目71に記載の複合体。
(項目73)
前記TET1ドメインは、配列番号51の配列を有する、項目72に記載の複合体。
(項目74)
前記脱メチル化エンハンサードメインは、Growth Arrest and DNA-Damage-inducible Alpha(GADD45A)ドメインである、項目71~73のいずれか1項に記載の複合体。
(項目75)
前記GADD45ドメインは、配列番号85のアミノ酸配列を有する、項目74に記載の複合体。
(項目76)
前記脱メチル化エンハンサードメインは、NEIL2ドメインである、項目71~73のいずれか1項に記載の複合体。
(項目77)
前記NEIL2ドメインは、配列番号86の配列を有する、項目76に記載の複合体。
(項目78)
前記第1のPUFドメインは、PUFaドメインである、項目71~77のいずれか1項に記載の複合体。
(項目79)
前記PUFaドメインは、配列番号2の配列を有する、項目78に記載の複合体。
(項目80)
前記第2のPUFドメインは、PUFcドメインである、項目71~79のいずれか1項に記載の複合体。
(項目81)
前記PUFcドメインは、配列番号4の配列を有する、項目80に記載の複合体。
(項目82)
前記脱メチル化エンハンサードメインは、前記第2のPUFドメインのN末端に作動可能に連結される、項目71~81のいずれか1項に記載の複合体。
(項目83)
前記脱メチル化エンハンサードメインは、前記第2のPUFドメインのC末端に作動可能に連結される、項目71~81のいずれか1項に記載の複合体。
(項目84)
前記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、核局在化シグナル(NLS)を含む、項目71~83のいずれか1項に記載の複合体。
(項目85)
前記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、dCas9である、項目71~43のいずれか1項に記載の複合体。
(項目86)
前記標的ポリヌクレオチド配列は、遺伝子の一部である、項目71~85のいずれか1項に記載の複合体。
(項目87)
前記標的ポリヌクレオチド配列は、転写調節配列の一部である、項目71~85のいずれか1項に記載の複合体。
(項目88)
前記標的ポリヌクレオチド配列は、プロモーター、エンハンサーまたはサイレンサーの一部である、項目71~85または87のいずれか1項に記載の複合体。
(項目89)
前記標的ポリヌクレオチド配列は、過剰メチル化核酸配列である、項目71~88のいずれか1項に記載の複合体。
(項目90)
前記標的ポリヌクレオチド配列は、過剰メチル化CpG配列である、項目71~89のいずれか1項に記載の複合体。
(項目91)
前記標的ポリヌクレオチド配列は、hMLH1プロモーターの一部である、項目71~85または87~90のいずれか1項に記載の複合体。
(項目92)
前記標的ポリヌクレオチド配列は、Sox遺伝子の一部である、項目71~86または89~90のいずれか1項に記載の複合体。
(項目93)
前記第1のまたは前記第2のPBS配列は、長さ8ヌクレオチドを含む、項目71~92のいずれか1項に記載の複合体。
(項目94)
前記第1のまたは前記第2のPBS配列は、配列番号1のヌクレオチド配列を含む、項目71~93のいずれか1項に記載の複合体。
(項目95)
前記第1のまたは前記第2のPUFドメインは、PUFaドメイン、PUFbドメイン、PUFcドメイン、またはPUFwドメインを含む、項目71~94のいずれか1項に記載の複合体。
(項目96)
前記第1のまたは前記第2のPUFaドメインは、配列番号2のアミノ酸配列を有する、項目95に記載の複合体。
(項目97)
前記第1のまたは前記第2のPUFbドメインは、配列番号3のアミノ酸配列を有する、項目95に記載の複合体。
(項目98)
前記第1のまたは前記第2のPUFcドメインは、配列番号4のアミノ酸配列を有する、項目95に記載の複合体。
(項目99)
前記第1のまたは前記第2のPUFwドメインは、配列番号5のアミノ酸配列を有する、項目95に記載の複合体。
(項目100)
哺乳動物細胞において標的核酸配列を脱メチル化するための方法であって、該方法は、
(a)脱メチル化を要する標的核酸を含む哺乳動物細胞を提供する工程;
(b)該哺乳動物細胞に、ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素をコードする第1のポリヌクレオチドを送達する工程;
(c)該哺乳動物細胞に、以下:
(i)標的ポリヌクレオチド配列に相補的なDNA標的化配列;
(ii)該ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素に対する結合配列;
(iii)第1のPUF結合部位(PBS)配列、および
(iv)第2のPUF結合部位(PBS)配列、
を含む第2のポリヌクレオチドを送達する工程であって、ここで該ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、該結合配列を介して該第2のポリヌクレオチドに結合される工程;
(d)該哺乳動物細胞に、以下:
(i)第1のPUFドメイン;および
(ii)脱メチル化ドメインであって、該脱メチル化ドメインは、該第1のPUFドメインのC末端に作動可能に連結された脱メチル化ドメイン、
を含む脱メチル化タンパク質結合体をコードする第3のポリヌクレオチドを送達する工程;ならびに
(e)該哺乳動物細胞に、以下:
(i)第2のPUFドメイン;および
(ii)該第2のPUFドメインに作動可能に連結された脱メチル化エンハンサードメイン、
を含む脱メチル化エンハンサー結合体をコードする第4のポリヌクレオチドを送達する工程であって、それによって該送達された脱メチル化タンパク質結合体は、該細胞において該標的核酸配列を脱メチル化する工程、
を包含する方法。
(項目101)
前記脱メチル化タンパク質結合体は、前記リボ核タンパク質複合体に、前記第1のPBS配列に結合する前記第1のPUFドメインを介して結合する、項目100に記載の方法。
(項目102)
前記脱メチル化エンハンサー結合体は、前記リボ核タンパク質複合体に、前記第2のPBS配列に結合する前記第2のPUFドメインを介して結合する、項目100または101に記載の方法。
(項目103)
前記脱メチル化エンハンサードメインは、前記第2のPUFドメインのN末端に作動可能に連結される、項目100~102のいずれか1項に記載の方法。
(項目104)
前記脱メチル化エンハンサードメインは、前記第2のPUFドメインのC末端に作動可能に連結される、項目100~102のいずれか1項に記載の方法。
(項目105)
前記第1のポリヌクレオチドは、第1のベクター内に含まれる、項目100~104のいずれか1項に記載の方法。
(項目106)
前記第2のポリヌクレオチドは、第2のベクター内に含まれる、項目100~105のいずれか1項に記載の方法。
(項目107)
前記第3のポリヌクレオチドは、第3のベクター内に含まれる、項目100~106のいずれか1項に記載の方法。
(項目108)
前記第4のポリヌクレオチドは、第4のベクター内に含まれる、項目100~107のいずれか1項に記載の方法。
(項目109)
前記第1の、第2の、第3のまたは第4のベクターはいずれも、同じである、項目100~108のいずれか1項に記載の方法。
(項目110)
前記送達する工程は、トランスフェクションによって行われる、項目100~109のいずれか1項に記載の方法。
(項目111)
キットであって、
(i)項目71~99のいずれか1項に記載のリボ核タンパク質複合体または該リボ核タンパク質複合体をコードする核酸;
(ii)項目71~99のいずれか1項に記載の脱メチル化タンパク質結合体または該脱メチル化タンパク質結合体をコードする核酸;および
(iii)項目71~99のいずれか1項に記載の脱メチル化エンハンサー結合体または該脱メチル化エンハンサー結合体をコードする核酸、
を含むキット。
(項目112)
トランスフェクション薬剤をさらに含む、項目111に記載のキット。
(項目113)
がん患者からサンプルを集めるためにサンプル収集デバイスをさらに含む、項目111または112に記載のキット。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A図1A~1D。これらの図は、sgRNA 3’末端へのPUF結合部位(PBS)配列の挿入が、dCas9/sgRNA機能に実質的に影響を与えなかったこと、ならびにアクチベーターの独立した補充および多量体化が、本発明の3構成要素CRISPR/Cas複合体/システムを使用して達成され得ることを示す。図1Aは、従来の2ハイブリッドdCas9融合デザイン(左上)を3ハイブリッドシステムへと分離することによってこの従来のデザインを改善する、本発明の3構成要素CRISPR/Cas複合体/システム(右上)を示す模式図である。ここでsgRNA-PBSは、dCas9/sgRNAのDNA結合活性を、PUF融合物によって提供されるエフェクター機能と橋渡しする。中央パネルは、C→Nの方向において8回反復、および5’→3’方向において8マー標的RNAとの相当する相互作用を示す、代表的PUF(すなわち、Pumilio/BF)ドメインの構造を表す。PUF RNA認識コード表は、認識される例示的な2残基およびその相当するRNA塩基を示す。下側のパネルでは、表記法の表は、4 PUFアイソタイプおよびその相当するPUF結合部位(PBS)およびこれらの配列を単純化して記載するために採用した。図1B(上側パネル)は、dCas9-VP64が、sgRNAの3’末端においてPBSの数を変動させて挿入後にtdTomato導入遺伝子に結合し活性化する能力を試験する実験の模式図である(例えば、dCas9::VP64構築物がTetO::tdTomato導入遺伝子を活性化する能力に対するsgRNA-PBS(0個、5個、15個、25個、または47個のPBSを有する)の効果を試験するための実験設定)。下側パネルは、グラフの下にある凡例に示される種々の構築物でトランスフェクトした細胞の蛍光活性化セルソーティング(FACS)によって測定される場合の、tdTomato蛍光における(dCas9-VP64/sgCtl-0×PBSaコントロールに対する)平均倍数変化(±S.E.M.)を示す棒グラフである。その凡例は、3つのパラメーターで使用されるsgRNAを記載する:sgRNAマッチは、sgRNAによって認識されるDNA標的に言及する;#PBSおよびPBSタイプは、それぞれ、PBSの数およびタイプを示し、sgRNAの最後に追加される。図1C(上側パネル)は、種々の数の追加されたPBSを有する本発明のアクチベーターによってTetO::tdTomato導入遺伝子の活性化を試験する実験を記載する模式図である。下側パネルは、グラフの下にある凡例に示される種々の構築物でトランスフェクトした細胞のtdTomato蛍光の(コントロールdCas9/PUFb-VP64/sgCtl-0×PBSbに対する)倍数変化(±S.E.M.)を示す棒グラフである。その凡例は、使用されるPUFアイソタイプ(PUF-VP64)およびPBSの数およびタイプに関して使用されるsgRNA-PBS、ならびに濃淡を付けたボックスによって示されるsgRNAによって認識されるDNA標的を記載する。図1D(上側パネル)は、TetO::tdTomato導入遺伝子を活性化するにあたって本発明のアクチベーターアイソタイプの独立性を試験する実験を図示する模式図である。その下側パネルは、グラフの下にある凡例に示される種々の構築物でトランスフェクトした細胞のtdTomato蛍光の(PUF/PBSアイソタイプ xに関するそれぞれのコントロールdCas9/PUFx-VP64/sgCtl-5×PBSxに対する)平均倍数変化(±S.E.M.)を示す棒グラフである。その凡例は、使用されるPUFアイソタイプ(PUF-VP64)、PBSアイソタイプ(5×PBS; 「-」は、PBSなしのsgRNAを示す)および濃淡を付けたボックスによって示されるDNA標的(sgRNAマッチ)を示す。全てのグラフは、3回の反復測定の結果を示す。
図1B図1A~1D。これらの図は、sgRNA 3’末端へのPUF結合部位(PBS)配列の挿入が、dCas9/sgRNA機能に実質的に影響を与えなかったこと、ならびにアクチベーターの独立した補充および多量体化が、本発明の3構成要素CRISPR/Cas複合体/システムを使用して達成され得ることを示す。図1Aは、従来の2ハイブリッドdCas9融合デザイン(左上)を3ハイブリッドシステムへと分離することによってこの従来のデザインを改善する、本発明の3構成要素CRISPR/Cas複合体/システム(右上)を示す模式図である。ここでsgRNA-PBSは、dCas9/sgRNAのDNA結合活性を、PUF融合物によって提供されるエフェクター機能と橋渡しする。中央パネルは、C→Nの方向において8回反復、および5’→3’方向において8マー標的RNAとの相当する相互作用を示す、代表的PUF(すなわち、Pumilio/BF)ドメインの構造を表す。PUF RNA認識コード表は、認識される例示的な2残基およびその相当するRNA塩基を示す。下側のパネルでは、表記法の表は、4 PUFアイソタイプおよびその相当するPUF結合部位(PBS)およびこれらの配列を単純化して記載するために採用した。図1B(上側パネル)は、dCas9-VP64が、sgRNAの3’末端においてPBSの数を変動させて挿入後にtdTomato導入遺伝子に結合し活性化する能力を試験する実験の模式図である(例えば、dCas9::VP64構築物がTetO::tdTomato導入遺伝子を活性化する能力に対するsgRNA-PBS(0個、5個、15個、25個、または47個のPBSを有する)の効果を試験するための実験設定)。下側パネルは、グラフの下にある凡例に示される種々の構築物でトランスフェクトした細胞の蛍光活性化セルソーティング(FACS)によって測定される場合の、tdTomato蛍光における(dCas9-VP64/sgCtl-0×PBSaコントロールに対する)平均倍数変化(±S.E.M.)を示す棒グラフである。その凡例は、3つのパラメーターで使用されるsgRNAを記載する:sgRNAマッチは、sgRNAによって認識されるDNA標的に言及する;#PBSおよびPBSタイプは、それぞれ、PBSの数およびタイプを示し、sgRNAの最後に追加される。図1C(上側パネル)は、種々の数の追加されたPBSを有する本発明のアクチベーターによってTetO::tdTomato導入遺伝子の活性化を試験する実験を記載する模式図である。下側パネルは、グラフの下にある凡例に示される種々の構築物でトランスフェクトした細胞のtdTomato蛍光の(コントロールdCas9/PUFb-VP64/sgCtl-0×PBSbに対する)倍数変化(±S.E.M.)を示す棒グラフである。その凡例は、使用されるPUFアイソタイプ(PUF-VP64)およびPBSの数およびタイプに関して使用されるsgRNA-PBS、ならびに濃淡を付けたボックスによって示されるsgRNAによって認識されるDNA標的を記載する。図1D(上側パネル)は、TetO::tdTomato導入遺伝子を活性化するにあたって本発明のアクチベーターアイソタイプの独立性を試験する実験を図示する模式図である。その下側パネルは、グラフの下にある凡例に示される種々の構築物でトランスフェクトした細胞のtdTomato蛍光の(PUF/PBSアイソタイプ xに関するそれぞれのコントロールdCas9/PUFx-VP64/sgCtl-5×PBSxに対する)平均倍数変化(±S.E.M.)を示す棒グラフである。その凡例は、使用されるPUFアイソタイプ(PUF-VP64)、PBSアイソタイプ(5×PBS; 「-」は、PBSなしのsgRNAを示す)および濃淡を付けたボックスによって示されるDNA標的(sgRNAマッチ)を示す。全てのグラフは、3回の反復測定の結果を示す。
図1C図1A~1D。これらの図は、sgRNA 3’末端へのPUF結合部位(PBS)配列の挿入が、dCas9/sgRNA機能に実質的に影響を与えなかったこと、ならびにアクチベーターの独立した補充および多量体化が、本発明の3構成要素CRISPR/Cas複合体/システムを使用して達成され得ることを示す。図1Aは、従来の2ハイブリッドdCas9融合デザイン(左上)を3ハイブリッドシステムへと分離することによってこの従来のデザインを改善する、本発明の3構成要素CRISPR/Cas複合体/システム(右上)を示す模式図である。ここでsgRNA-PBSは、dCas9/sgRNAのDNA結合活性を、PUF融合物によって提供されるエフェクター機能と橋渡しする。中央パネルは、C→Nの方向において8回反復、および5’→3’方向において8マー標的RNAとの相当する相互作用を示す、代表的PUF(すなわち、Pumilio/BF)ドメインの構造を表す。PUF RNA認識コード表は、認識される例示的な2残基およびその相当するRNA塩基を示す。下側のパネルでは、表記法の表は、4 PUFアイソタイプおよびその相当するPUF結合部位(PBS)およびこれらの配列を単純化して記載するために採用した。図1B(上側パネル)は、dCas9-VP64が、sgRNAの3’末端においてPBSの数を変動させて挿入後にtdTomato導入遺伝子に結合し活性化する能力を試験する実験の模式図である(例えば、dCas9::VP64構築物がTetO::tdTomato導入遺伝子を活性化する能力に対するsgRNA-PBS(0個、5個、15個、25個、または47個のPBSを有する)の効果を試験するための実験設定)。下側パネルは、グラフの下にある凡例に示される種々の構築物でトランスフェクトした細胞の蛍光活性化セルソーティング(FACS)によって測定される場合の、tdTomato蛍光における(dCas9-VP64/sgCtl-0×PBSaコントロールに対する)平均倍数変化(±S.E.M.)を示す棒グラフである。その凡例は、3つのパラメーターで使用されるsgRNAを記載する:sgRNAマッチは、sgRNAによって認識されるDNA標的に言及する;#PBSおよびPBSタイプは、それぞれ、PBSの数およびタイプを示し、sgRNAの最後に追加される。図1C(上側パネル)は、種々の数の追加されたPBSを有する本発明のアクチベーターによってTetO::tdTomato導入遺伝子の活性化を試験する実験を記載する模式図である。下側パネルは、グラフの下にある凡例に示される種々の構築物でトランスフェクトした細胞のtdTomato蛍光の(コントロールdCas9/PUFb-VP64/sgCtl-0×PBSbに対する)倍数変化(±S.E.M.)を示す棒グラフである。その凡例は、使用されるPUFアイソタイプ(PUF-VP64)およびPBSの数およびタイプに関して使用されるsgRNA-PBS、ならびに濃淡を付けたボックスによって示されるsgRNAによって認識されるDNA標的を記載する。図1D(上側パネル)は、TetO::tdTomato導入遺伝子を活性化するにあたって本発明のアクチベーターアイソタイプの独立性を試験する実験を図示する模式図である。その下側パネルは、グラフの下にある凡例に示される種々の構築物でトランスフェクトした細胞のtdTomato蛍光の(PUF/PBSアイソタイプ xに関するそれぞれのコントロールdCas9/PUFx-VP64/sgCtl-5×PBSxに対する)平均倍数変化(±S.E.M.)を示す棒グラフである。その凡例は、使用されるPUFアイソタイプ(PUF-VP64)、PBSアイソタイプ(5×PBS; 「-」は、PBSなしのsgRNAを示す)および濃淡を付けたボックスによって示されるDNA標的(sgRNAマッチ)を示す。全てのグラフは、3回の反復測定の結果を示す。
図1D図1A~1D。これらの図は、sgRNA 3’末端へのPUF結合部位(PBS)配列の挿入が、dCas9/sgRNA機能に実質的に影響を与えなかったこと、ならびにアクチベーターの独立した補充および多量体化が、本発明の3構成要素CRISPR/Cas複合体/システムを使用して達成され得ることを示す。図1Aは、従来の2ハイブリッドdCas9融合デザイン(左上)を3ハイブリッドシステムへと分離することによってこの従来のデザインを改善する、本発明の3構成要素CRISPR/Cas複合体/システム(右上)を示す模式図である。ここでsgRNA-PBSは、dCas9/sgRNAのDNA結合活性を、PUF融合物によって提供されるエフェクター機能と橋渡しする。中央パネルは、C→Nの方向において8回反復、および5’→3’方向において8マー標的RNAとの相当する相互作用を示す、代表的PUF(すなわち、Pumilio/BF)ドメインの構造を表す。PUF RNA認識コード表は、認識される例示的な2残基およびその相当するRNA塩基を示す。下側のパネルでは、表記法の表は、4 PUFアイソタイプおよびその相当するPUF結合部位(PBS)およびこれらの配列を単純化して記載するために採用した。図1B(上側パネル)は、dCas9-VP64が、sgRNAの3’末端においてPBSの数を変動させて挿入後にtdTomato導入遺伝子に結合し活性化する能力を試験する実験の模式図である(例えば、dCas9::VP64構築物がTetO::tdTomato導入遺伝子を活性化する能力に対するsgRNA-PBS(0個、5個、15個、25個、または47個のPBSを有する)の効果を試験するための実験設定)。下側パネルは、グラフの下にある凡例に示される種々の構築物でトランスフェクトした細胞の蛍光活性化セルソーティング(FACS)によって測定される場合の、tdTomato蛍光における(dCas9-VP64/sgCtl-0×PBSaコントロールに対する)平均倍数変化(±S.E.M.)を示す棒グラフである。その凡例は、3つのパラメーターで使用されるsgRNAを記載する:sgRNAマッチは、sgRNAによって認識されるDNA標的に言及する;#PBSおよびPBSタイプは、それぞれ、PBSの数およびタイプを示し、sgRNAの最後に追加される。図1C(上側パネル)は、種々の数の追加されたPBSを有する本発明のアクチベーターによってTetO::tdTomato導入遺伝子の活性化を試験する実験を記載する模式図である。下側パネルは、グラフの下にある凡例に示される種々の構築物でトランスフェクトした細胞のtdTomato蛍光の(コントロールdCas9/PUFb-VP64/sgCtl-0×PBSbに対する)倍数変化(±S.E.M.)を示す棒グラフである。その凡例は、使用されるPUFアイソタイプ(PUF-VP64)およびPBSの数およびタイプに関して使用されるsgRNA-PBS、ならびに濃淡を付けたボックスによって示されるsgRNAによって認識されるDNA標的を記載する。図1D(上側パネル)は、TetO::tdTomato導入遺伝子を活性化するにあたって本発明のアクチベーターアイソタイプの独立性を試験する実験を図示する模式図である。その下側パネルは、グラフの下にある凡例に示される種々の構築物でトランスフェクトした細胞のtdTomato蛍光の(PUF/PBSアイソタイプ xに関するそれぞれのコントロールdCas9/PUFx-VP64/sgCtl-5×PBSxに対する)平均倍数変化(±S.E.M.)を示す棒グラフである。その凡例は、使用されるPUFアイソタイプ(PUF-VP64)、PBSアイソタイプ(5×PBS; 「-」は、PBSなしのsgRNAを示す)および濃淡を付けたボックスによって示されるDNA標的(sgRNAマッチ)を示す。全てのグラフは、3回の反復測定の結果を示す。
【0021】
図2AB図2A~2C。図2Aおよび図2Bは、VP64およびP65-HSF1を含む本発明の3構成要素CRISPR/Cas複合体/システムのアセンブリに関する。図2Aは、PBS32およびPBS6272の両方を含むsgRNAによる補充を介して、PUF(3-2)::VP64およびPUF(6-2/7-2)::P65-HSF1のアセンブリを試験する実験の模式図である。その活性を、tdTomato蛍光レポーター活性によって測定した。図2Bは、アクチベータータンパク質を、4×[PBS32-PBS6272]ヘテロダイマー部位を有する非標的化(sgControl)およびTet標的化(sgTetO) sgRNAでのトランスフェクトから生じる相対的平均tdTomato蛍光を示す棒グラフである。図2Cは、5×PBSaを有するコントロールsgRNAまたは0個、1個、5個、15個、もしくは25個のコピーのPBSaを有するTetO標的化sgRNAとともに活性化ドメインとしてVP64(PUFa::VP64) 対 p65HSF1(PUFa::p65HSF1)を使用する本発明の3構成要素システムアクチベーターの比較を示す。棒は、コントロールsgRNA(sgCtl)を使用する実験に対するtdTomato蛍光の平均倍数変化を(S.E.M.; n=3とともに)示す。その凡例は、sgRNA-PBS上のPBSaの数(#PBSa)および濃淡を付けたボックスによって示されるDNAマッチを示す。
図2C図2A~2C。図2Aおよび図2Bは、VP64およびP65-HSF1を含む本発明の3構成要素CRISPR/Cas複合体/システムのアセンブリに関する。図2Aは、PBS32およびPBS6272の両方を含むsgRNAによる補充を介して、PUF(3-2)::VP64およびPUF(6-2/7-2)::P65-HSF1のアセンブリを試験する実験の模式図である。その活性を、tdTomato蛍光レポーター活性によって測定した。図2Bは、アクチベータータンパク質を、4×[PBS32-PBS6272]ヘテロダイマー部位を有する非標的化(sgControl)およびTet標的化(sgTetO) sgRNAでのトランスフェクトから生じる相対的平均tdTomato蛍光を示す棒グラフである。図2Cは、5×PBSaを有するコントロールsgRNAまたは0個、1個、5個、15個、もしくは25個のコピーのPBSaを有するTetO標的化sgRNAとともに活性化ドメインとしてVP64(PUFa::VP64) 対 p65HSF1(PUFa::p65HSF1)を使用する本発明の3構成要素システムアクチベーターの比較を示す。棒は、コントロールsgRNA(sgCtl)を使用する実験に対するtdTomato蛍光の平均倍数変化を(S.E.M.; n=3とともに)示す。その凡例は、sgRNA-PBS上のPBSaの数(#PBSa)および濃淡を付けたボックスによって示されるDNAマッチを示す。
【0022】
図3A図3A~3C。これらの図は、ゲノム遺伝子座へTET1(CD)を送達し、遺伝子活性化を媒介するにあたって、Casilio-MEが、dCas9直接繋留システムより優れていることを示す。図3Aは、指示標識(lollipop)によって示されるCpG過剰メチル化の領域を有するhMLH1プロモーターの模式的表示である。ヌクレオチドの番号付けは、hMLH1サイレンシングを伴う領域Cでの過剰メチル化の強い関連を報告する以前の研究に従う(Deng, G.,ら, Methylation of CpG in a small region of the hMLH1 promoter invariably correlates with the absence of gene expression. Cancer Res, 1999. 59(9): p. 2029-33)。過剰メチル化された領域Cの周りにデザインされたsgRNAは、短い線の上の数字によって示され、sgRNA-1および2は、それぞれ、センス鎖およびアンチセンス鎖を標的化する。図3Bは、Casilio構成要素PUFa-TET1(CD)、TET1(CD)-PUFaまたはPUFa-p65HSF1およびグラフの下の濃淡を付けたボックスによって示されるsgRNAの組み合わせでトランスフェクトした細胞におけるhMLH1 mRNAレベルの相対的変化を示す。図は、実験の各セットにおいて使用されるエフェクターモジュールを示すCasilioシステムを示す。適用においてそれぞれのエフェクターを反映するデータをプロットした。図3Cは、dCas9繋留エフェクターdCas9-TET1(CD)C末端融合物、TET1(CD)-dCas9 N末端融合物またはdCas9-p65HSF1およびグラフの下の濃淡を付けたボックスによって示されるsgRNAの組み合わせでトランスフェクトされた細胞におけるhMLH1 mRNAレベルの相対的変化を示す。図は、実験の各セットにおいて使用されるdCas9融合物を示す。使用されるそれぞれのエフェクターを反映するデータをプロットした。図3Bおよび図3CにおけるPUMa(別名PUFa)、TET1(CD)およびp65HSF1ドメインの文字「N」(すなわち、N末端)および「C」(すなわち、C末端)は、相当するタンパク質ドメインのN末端およびC末端に言及する。
図3B図3A~3C。これらの図は、ゲノム遺伝子座へTET1(CD)を送達し、遺伝子活性化を媒介するにあたって、Casilio-MEが、dCas9直接繋留システムより優れていることを示す。図3Aは、指示標識(lollipop)によって示されるCpG過剰メチル化の領域を有するhMLH1プロモーターの模式的表示である。ヌクレオチドの番号付けは、hMLH1サイレンシングを伴う領域Cでの過剰メチル化の強い関連を報告する以前の研究に従う(Deng, G.,ら, Methylation of CpG in a small region of the hMLH1 promoter invariably correlates with the absence of gene expression. Cancer Res, 1999. 59(9): p. 2029-33)。過剰メチル化された領域Cの周りにデザインされたsgRNAは、短い線の上の数字によって示され、sgRNA-1および2は、それぞれ、センス鎖およびアンチセンス鎖を標的化する。図3Bは、Casilio構成要素PUFa-TET1(CD)、TET1(CD)-PUFaまたはPUFa-p65HSF1およびグラフの下の濃淡を付けたボックスによって示されるsgRNAの組み合わせでトランスフェクトした細胞におけるhMLH1 mRNAレベルの相対的変化を示す。図は、実験の各セットにおいて使用されるエフェクターモジュールを示すCasilioシステムを示す。適用においてそれぞれのエフェクターを反映するデータをプロットした。図3Cは、dCas9繋留エフェクターdCas9-TET1(CD)C末端融合物、TET1(CD)-dCas9 N末端融合物またはdCas9-p65HSF1およびグラフの下の濃淡を付けたボックスによって示されるsgRNAの組み合わせでトランスフェクトされた細胞におけるhMLH1 mRNAレベルの相対的変化を示す。図は、実験の各セットにおいて使用されるdCas9融合物を示す。使用されるそれぞれのエフェクターを反映するデータをプロットした。図3Bおよび図3CにおけるPUMa(別名PUFa)、TET1(CD)およびp65HSF1ドメインの文字「N」(すなわち、N末端)および「C」(すなわち、C末端)は、相当するタンパク質ドメインのN末端およびC末端に言及する。
図3C図3A~3C。これらの図は、ゲノム遺伝子座へTET1(CD)を送達し、遺伝子活性化を媒介するにあたって、Casilio-MEが、dCas9直接繋留システムより優れていることを示す。図3Aは、指示標識(lollipop)によって示されるCpG過剰メチル化の領域を有するhMLH1プロモーターの模式的表示である。ヌクレオチドの番号付けは、hMLH1サイレンシングを伴う領域Cでの過剰メチル化の強い関連を報告する以前の研究に従う(Deng, G.,ら, Methylation of CpG in a small region of the hMLH1 promoter invariably correlates with the absence of gene expression. Cancer Res, 1999. 59(9): p. 2029-33)。過剰メチル化された領域Cの周りにデザインされたsgRNAは、短い線の上の数字によって示され、sgRNA-1および2は、それぞれ、センス鎖およびアンチセンス鎖を標的化する。図3Bは、Casilio構成要素PUFa-TET1(CD)、TET1(CD)-PUFaまたはPUFa-p65HSF1およびグラフの下の濃淡を付けたボックスによって示されるsgRNAの組み合わせでトランスフェクトした細胞におけるhMLH1 mRNAレベルの相対的変化を示す。図は、実験の各セットにおいて使用されるエフェクターモジュールを示すCasilioシステムを示す。適用においてそれぞれのエフェクターを反映するデータをプロットした。図3Cは、dCas9繋留エフェクターdCas9-TET1(CD)C末端融合物、TET1(CD)-dCas9 N末端融合物またはdCas9-p65HSF1およびグラフの下の濃淡を付けたボックスによって示されるsgRNAの組み合わせでトランスフェクトされた細胞におけるhMLH1 mRNAレベルの相対的変化を示す。図は、実験の各セットにおいて使用されるdCas9融合物を示す。使用されるそれぞれのエフェクターを反映するデータをプロットした。図3Bおよび図3CにおけるPUMa(別名PUFa)、TET1(CD)およびp65HSF1ドメインの文字「N」(すなわち、N末端)および「C」(すなわち、C末端)は、相当するタンパク質ドメインのN末端およびC末端に言及する。
【0023】
図4A図4A~4C。図は、Casilio-MEが、TET1活性をhMLH1プロモーター領域に標的化することを介して、メチルシトシンの強い脱メチル化を媒介することを示す。図4Aは、Casilio構成要素PUFa-TET1(CD)およびグラフの下の濃淡を付けたボックスによって示されるsgRNAの組み合わせでトランスフェクトされた細胞におけるhMLH1 mRNAレベルの相対的変化の時間的推移である。グラフの上の図は、使用されるカルボキシ末端TET1(CD)融合モジュールを示すCasilio-MEシステムを描く。hMLH1 mRNAレベルの相対的変化を、細胞を分析するために採取したトランスフェクション後の時間に対してプロットした。エラーバーは、三連の実験から導出されたs.e.m.を示す。図4Bは、示されるように抗hMLH1または抗βアクチンモノクローナル抗体を使用して示された細胞サンプルから抽出したタンパク質のウェスタンブロット分析である。トランスフェクトしなかった細胞HEK293T(非処理)または2.5μM 5’-アザシチジン(AzaC)で処理したHEK293T細胞、HEK293細胞(293)、および非標的化コントロールガイドRNA(NTC)の存在下でのトランスフェクトしたHEK293T細胞から抽出したタンパク質を、hMLH1プロモーター領域を標的化するCasilio-Me構成要素でトランスフェクトした時間推移サンプルに由来する抽出物と並行して分析した。図4Cは、hMLH1プロモーター領域の個々のCpGのシトシンからチミンへのビスルファイト媒介性変換の頻度を示す。矢印は、標的化sgRNAの結合部位と重なり合うCpGを示す。座標は、hMLH1転写開始部位に対するCpGの位置を示す(Deng, G.,ら, Methylation of CpG in a small region of the hMLH1 promoter invariably correlates with the absence of gene expression. Cancer Res, 1999. 59(9): p. 2029-33)。HEK293細胞(293)のhMLH1プロモーターの遠位部分は、この分析に含めなかった。図4A中のPUMa(別名PUFa)およびTET1(CD)ドメインの文字「N」は、その相当するタンパク質ドメインのN末端に言及する。
図4B図4A~4C。図は、Casilio-MEが、TET1活性をhMLH1プロモーター領域に標的化することを介して、メチルシトシンの強い脱メチル化を媒介することを示す。図4Aは、Casilio構成要素PUFa-TET1(CD)およびグラフの下の濃淡を付けたボックスによって示されるsgRNAの組み合わせでトランスフェクトされた細胞におけるhMLH1 mRNAレベルの相対的変化の時間的推移である。グラフの上の図は、使用されるカルボキシ末端TET1(CD)融合モジュールを示すCasilio-MEシステムを描く。hMLH1 mRNAレベルの相対的変化を、細胞を分析するために採取したトランスフェクション後の時間に対してプロットした。エラーバーは、三連の実験から導出されたs.e.m.を示す。図4Bは、示されるように抗hMLH1または抗βアクチンモノクローナル抗体を使用して示された細胞サンプルから抽出したタンパク質のウェスタンブロット分析である。トランスフェクトしなかった細胞HEK293T(非処理)または2.5μM 5’-アザシチジン(AzaC)で処理したHEK293T細胞、HEK293細胞(293)、および非標的化コントロールガイドRNA(NTC)の存在下でのトランスフェクトしたHEK293T細胞から抽出したタンパク質を、hMLH1プロモーター領域を標的化するCasilio-Me構成要素でトランスフェクトした時間推移サンプルに由来する抽出物と並行して分析した。図4Cは、hMLH1プロモーター領域の個々のCpGのシトシンからチミンへのビスルファイト媒介性変換の頻度を示す。矢印は、標的化sgRNAの結合部位と重なり合うCpGを示す。座標は、hMLH1転写開始部位に対するCpGの位置を示す(Deng, G.,ら, Methylation of CpG in a small region of the hMLH1 promoter invariably correlates with the absence of gene expression. Cancer Res, 1999. 59(9): p. 2029-33)。HEK293細胞(293)のhMLH1プロモーターの遠位部分は、この分析に含めなかった。図4A中のPUMa(別名PUFa)およびTET1(CD)ドメインの文字「N」は、その相当するタンパク質ドメインのN末端に言及する。
図4C図4A~4C。図は、Casilio-MEが、TET1活性をhMLH1プロモーター領域に標的化することを介して、メチルシトシンの強い脱メチル化を媒介することを示す。図4Aは、Casilio構成要素PUFa-TET1(CD)およびグラフの下の濃淡を付けたボックスによって示されるsgRNAの組み合わせでトランスフェクトされた細胞におけるhMLH1 mRNAレベルの相対的変化の時間的推移である。グラフの上の図は、使用されるカルボキシ末端TET1(CD)融合モジュールを示すCasilio-MEシステムを描く。hMLH1 mRNAレベルの相対的変化を、細胞を分析するために採取したトランスフェクション後の時間に対してプロットした。エラーバーは、三連の実験から導出されたs.e.m.を示す。図4Bは、示されるように抗hMLH1または抗βアクチンモノクローナル抗体を使用して示された細胞サンプルから抽出したタンパク質のウェスタンブロット分析である。トランスフェクトしなかった細胞HEK293T(非処理)または2.5μM 5’-アザシチジン(AzaC)で処理したHEK293T細胞、HEK293細胞(293)、および非標的化コントロールガイドRNA(NTC)の存在下でのトランスフェクトしたHEK293T細胞から抽出したタンパク質を、hMLH1プロモーター領域を標的化するCasilio-Me構成要素でトランスフェクトした時間推移サンプルに由来する抽出物と並行して分析した。図4Cは、hMLH1プロモーター領域の個々のCpGのシトシンからチミンへのビスルファイト媒介性変換の頻度を示す。矢印は、標的化sgRNAの結合部位と重なり合うCpGを示す。座標は、hMLH1転写開始部位に対するCpGの位置を示す(Deng, G.,ら, Methylation of CpG in a small region of the hMLH1 promoter invariably correlates with the absence of gene expression. Cancer Res, 1999. 59(9): p. 2029-33)。HEK293細胞(293)のhMLH1プロモーターの遠位部分は、この分析に含めなかった。図4A中のPUMa(別名PUFa)およびTET1(CD)ドメインの文字「N」は、その相当するタンパク質ドメインのN末端に言及する。
【0024】
図5AB図5A~5C。図は、Casilio-ME Dnmtエフェクターの種々の配置を試験したことを示す。図5Aは、dCas9のN末端への(i)Dnmt3a、(ii)Dnmt3L、および(iii)Dnmt3a-3L(ハイブリッド)のC末端領域の;dCas9のC末端への(iv)Dnmt3a、(v)Dnmt3L、および(vi)Dnmt3a-3Lハイブリッドの直接融合物を示す。図5Bは、PUFドメインのN末端への(i)Dnmt3a、(ii)Dnmt3L、および(iii)Dnmt3a-3LのC末端領域の;PUFドメインのC末端への(iv)Dnmt3a、(v)Dnmt3Lおよび(vi)Dnmt3a-3LのPUFエフェクター融合物を示す。図5Cは、Casilioが、相当するPBSを含むガイドを介して、種々のPUFドメインに融合された種々のDnmtエフェクターを潜在的に補充し得ることを示す。
図5C図5A~5C。図は、Casilio-ME Dnmtエフェクターの種々の配置を試験したことを示す。図5Aは、dCas9のN末端への(i)Dnmt3a、(ii)Dnmt3L、および(iii)Dnmt3a-3L(ハイブリッド)のC末端領域の;dCas9のC末端への(iv)Dnmt3a、(v)Dnmt3L、および(vi)Dnmt3a-3Lハイブリッドの直接融合物を示す。図5Bは、PUFドメインのN末端への(i)Dnmt3a、(ii)Dnmt3L、および(iii)Dnmt3a-3LのC末端領域の;PUFドメインのC末端への(iv)Dnmt3a、(v)Dnmt3Lおよび(vi)Dnmt3a-3LのPUFエフェクター融合物を示す。図5Cは、Casilioが、相当するPBSを含むガイドを介して、種々のPUFドメインに融合された種々のDnmtエフェクターを潜在的に補充し得ることを示す。
【0025】
図6図6A~6B。図は、Casilio-ME DnmtモジュールをSOX2プロモーターに標的化することによって誘導されるSOX2遺伝子発現変化を示す。図6Aは、種々のdCas9-Dnmt酵素およびコントロールガイドまたはSOX2プロモーターを標的化するガイドでトランスフェクトされた細胞における相対的SOX2発現レベルを示す。図6Bは、種々のdCas9-Dnmt酵素およびコントロールガイドまたはSOX2プロモーターを標的化するガイドでトランスフェクトされた細胞における相対的SOX2発現レベルを示す。
【0026】
図7A図7A~7Eは、GADD45Aが、TET1媒介性活性化をメチル化でサイレントにされた遺伝子に付与するCasilio-ME能力をブーストすることを示す。図7Aは、実験の各セットにおいて使用されるエフェクターモジュールの種々の組み合わせを示すCasilioおよびCasilio-MEプラットフォームを描く。操作されたタンパク質融合物を、アミノ末端およびカルボキシ末端をそれぞれ各図の左側および右側に配置して示す。gRNAの足場を、5コピーのPUFaまたはPUFaおよびPUFc結合部位を含むように質を変化させた。形状は自由裁量であり、DADD45A(G-45A)、TET1(CD)(Ten eleven メチル化シトシンジオキシゲナーゼ触媒ドメイン(1418~2136))、およびp65HSF1転写アクチベーターに伴う一定の縮尺で描かれずに示される。図7Bは、指示標識によって示されるCpG過剰メチル化の領域を有するhMLH1プロモーターの模式的表示である。ヌクレオチドの番号付けは、hMLH1サイレンシングを有する領域Cにおける過剰メチル化の強い関連に基づく(Deng, Cancer Res. 59(9):2029-2033, 1999)。過剰メチル化された領域BおよびCの周りでデザインされたsgRNAは、短い線の上の数字によって示される。図7Cは、示されるようにCasilio-ME構成要素でトランスフェクトされたHEK293T細胞におけるhMLH1 mRNAレベルの相対的変化を示す。グラフの下のマトリックスの中の濃淡を付けたボックスは、各実験において使用されるエフェクターおよびsgRNAを示す。エラーバーは、三連の実験から導出されたs.e.m.を示す。図7Dは、示されたCasilio-MEエフェクターモジュールでトランスフェクトされたHEK293T細胞の全細胞抽出物のウェスタンブロット分析の結果を示す。レーン1- トランスフェクトしなかった細胞;レーン2- PUFa-GADD45A-TET1(CD);レーン3- グリシン-セリンリンカーでサイレントバリエーションを有するPUFa-GADDA45A-TET1(CD);レーン4- GADD45A-PUFa-TET1(CD);およびレーン5- PUFa-TET1(CD)。50μgのタンパク質を、10% SDS-PAGE上で分離し、示された抗体でイムノブロットを行った。サイズマーカー(kDa単位)を示す。図7Eは、示されるとおりのCasilio-ME構成要素でトランスフェクトされたHEK293T細胞におけるhMLH1 mRNAレベルの相対的変化を示す。グラフの下のマトリックスの中の濃淡を付けたボックスは、非標的化gRNA、またはPUFa結合部位(PBSa)またはPUFaおよびPUFc結合部位(PBSac)を含むgRNAの存在下での各実験において使用されるエフェクターを示す。PBSa-gRNAまたはPBSac-gRNAでの実験を示すために棒グラフを描いた。エラーバーは、三連の実験から導出されたs.e.m.を示す。
図7B図7A~7Eは、GADD45Aが、TET1媒介性活性化をメチル化でサイレントにされた遺伝子に付与するCasilio-ME能力をブーストすることを示す。図7Aは、実験の各セットにおいて使用されるエフェクターモジュールの種々の組み合わせを示すCasilioおよびCasilio-MEプラットフォームを描く。操作されたタンパク質融合物を、アミノ末端およびカルボキシ末端をそれぞれ各図の左側および右側に配置して示す。gRNAの足場を、5コピーのPUFaまたはPUFaおよびPUFc結合部位を含むように質を変化させた。形状は自由裁量であり、DADD45A(G-45A)、TET1(CD)(Ten eleven メチル化シトシンジオキシゲナーゼ触媒ドメイン(1418~2136))、およびp65HSF1転写アクチベーターに伴う一定の縮尺で描かれずに示される。図7Bは、指示標識によって示されるCpG過剰メチル化の領域を有するhMLH1プロモーターの模式的表示である。ヌクレオチドの番号付けは、hMLH1サイレンシングを有する領域Cにおける過剰メチル化の強い関連に基づく(Deng, Cancer Res. 59(9):2029-2033, 1999)。過剰メチル化された領域BおよびCの周りでデザインされたsgRNAは、短い線の上の数字によって示される。図7Cは、示されるようにCasilio-ME構成要素でトランスフェクトされたHEK293T細胞におけるhMLH1 mRNAレベルの相対的変化を示す。グラフの下のマトリックスの中の濃淡を付けたボックスは、各実験において使用されるエフェクターおよびsgRNAを示す。エラーバーは、三連の実験から導出されたs.e.m.を示す。図7Dは、示されたCasilio-MEエフェクターモジュールでトランスフェクトされたHEK293T細胞の全細胞抽出物のウェスタンブロット分析の結果を示す。レーン1- トランスフェクトしなかった細胞;レーン2- PUFa-GADD45A-TET1(CD);レーン3- グリシン-セリンリンカーでサイレントバリエーションを有するPUFa-GADDA45A-TET1(CD);レーン4- GADD45A-PUFa-TET1(CD);およびレーン5- PUFa-TET1(CD)。50μgのタンパク質を、10% SDS-PAGE上で分離し、示された抗体でイムノブロットを行った。サイズマーカー(kDa単位)を示す。図7Eは、示されるとおりのCasilio-ME構成要素でトランスフェクトされたHEK293T細胞におけるhMLH1 mRNAレベルの相対的変化を示す。グラフの下のマトリックスの中の濃淡を付けたボックスは、非標的化gRNA、またはPUFa結合部位(PBSa)またはPUFaおよびPUFc結合部位(PBSac)を含むgRNAの存在下での各実験において使用されるエフェクターを示す。PBSa-gRNAまたはPBSac-gRNAでの実験を示すために棒グラフを描いた。エラーバーは、三連の実験から導出されたs.e.m.を示す。
図7CD図7A~7Eは、GADD45Aが、TET1媒介性活性化をメチル化でサイレントにされた遺伝子に付与するCasilio-ME能力をブーストすることを示す。図7Aは、実験の各セットにおいて使用されるエフェクターモジュールの種々の組み合わせを示すCasilioおよびCasilio-MEプラットフォームを描く。操作されたタンパク質融合物を、アミノ末端およびカルボキシ末端をそれぞれ各図の左側および右側に配置して示す。gRNAの足場を、5コピーのPUFaまたはPUFaおよびPUFc結合部位を含むように質を変化させた。形状は自由裁量であり、DADD45A(G-45A)、TET1(CD)(Ten eleven メチル化シトシンジオキシゲナーゼ触媒ドメイン(1418~2136))、およびp65HSF1転写アクチベーターに伴う一定の縮尺で描かれずに示される。図7Bは、指示標識によって示されるCpG過剰メチル化の領域を有するhMLH1プロモーターの模式的表示である。ヌクレオチドの番号付けは、hMLH1サイレンシングを有する領域Cにおける過剰メチル化の強い関連に基づく(Deng, Cancer Res. 59(9):2029-2033, 1999)。過剰メチル化された領域BおよびCの周りでデザインされたsgRNAは、短い線の上の数字によって示される。図7Cは、示されるようにCasilio-ME構成要素でトランスフェクトされたHEK293T細胞におけるhMLH1 mRNAレベルの相対的変化を示す。グラフの下のマトリックスの中の濃淡を付けたボックスは、各実験において使用されるエフェクターおよびsgRNAを示す。エラーバーは、三連の実験から導出されたs.e.m.を示す。図7Dは、示されたCasilio-MEエフェクターモジュールでトランスフェクトされたHEK293T細胞の全細胞抽出物のウェスタンブロット分析の結果を示す。レーン1- トランスフェクトしなかった細胞;レーン2- PUFa-GADD45A-TET1(CD);レーン3- グリシン-セリンリンカーでサイレントバリエーションを有するPUFa-GADDA45A-TET1(CD);レーン4- GADD45A-PUFa-TET1(CD);およびレーン5- PUFa-TET1(CD)。50μgのタンパク質を、10% SDS-PAGE上で分離し、示された抗体でイムノブロットを行った。サイズマーカー(kDa単位)を示す。図7Eは、示されるとおりのCasilio-ME構成要素でトランスフェクトされたHEK293T細胞におけるhMLH1 mRNAレベルの相対的変化を示す。グラフの下のマトリックスの中の濃淡を付けたボックスは、非標的化gRNA、またはPUFa結合部位(PBSa)またはPUFaおよびPUFc結合部位(PBSac)を含むgRNAの存在下での各実験において使用されるエフェクターを示す。PBSa-gRNAまたはPBSac-gRNAでの実験を示すために棒グラフを描いた。エラーバーは、三連の実験から導出されたs.e.m.を示す。
図7E図7A~7Eは、GADD45Aが、TET1媒介性活性化をメチル化でサイレントにされた遺伝子に付与するCasilio-ME能力をブーストすることを示す。図7Aは、実験の各セットにおいて使用されるエフェクターモジュールの種々の組み合わせを示すCasilioおよびCasilio-MEプラットフォームを描く。操作されたタンパク質融合物を、アミノ末端およびカルボキシ末端をそれぞれ各図の左側および右側に配置して示す。gRNAの足場を、5コピーのPUFaまたはPUFaおよびPUFc結合部位を含むように質を変化させた。形状は自由裁量であり、DADD45A(G-45A)、TET1(CD)(Ten eleven メチル化シトシンジオキシゲナーゼ触媒ドメイン(1418~2136))、およびp65HSF1転写アクチベーターに伴う一定の縮尺で描かれずに示される。図7Bは、指示標識によって示されるCpG過剰メチル化の領域を有するhMLH1プロモーターの模式的表示である。ヌクレオチドの番号付けは、hMLH1サイレンシングを有する領域Cにおける過剰メチル化の強い関連に基づく(Deng, Cancer Res. 59(9):2029-2033, 1999)。過剰メチル化された領域BおよびCの周りでデザインされたsgRNAは、短い線の上の数字によって示される。図7Cは、示されるようにCasilio-ME構成要素でトランスフェクトされたHEK293T細胞におけるhMLH1 mRNAレベルの相対的変化を示す。グラフの下のマトリックスの中の濃淡を付けたボックスは、各実験において使用されるエフェクターおよびsgRNAを示す。エラーバーは、三連の実験から導出されたs.e.m.を示す。図7Dは、示されたCasilio-MEエフェクターモジュールでトランスフェクトされたHEK293T細胞の全細胞抽出物のウェスタンブロット分析の結果を示す。レーン1- トランスフェクトしなかった細胞;レーン2- PUFa-GADD45A-TET1(CD);レーン3- グリシン-セリンリンカーでサイレントバリエーションを有するPUFa-GADDA45A-TET1(CD);レーン4- GADD45A-PUFa-TET1(CD);およびレーン5- PUFa-TET1(CD)。50μgのタンパク質を、10% SDS-PAGE上で分離し、示された抗体でイムノブロットを行った。サイズマーカー(kDa単位)を示す。図7Eは、示されるとおりのCasilio-ME構成要素でトランスフェクトされたHEK293T細胞におけるhMLH1 mRNAレベルの相対的変化を示す。グラフの下のマトリックスの中の濃淡を付けたボックスは、非標的化gRNA、またはPUFa結合部位(PBSa)またはPUFaおよびPUFc結合部位(PBSac)を含むgRNAの存在下での各実験において使用されるエフェクターを示す。PBSa-gRNAまたはPBSac-gRNAでの実験を示すために棒グラフを描いた。エラーバーは、三連の実験から導出されたs.e.m.を示す。
【0027】
図8AB図8A~8D: NEIL2(しかしNEIL1、NEIL3またはTDGではない)は、TET1媒介性活性化をメチル化でサイレントにされた遺伝子に送達するためにCasilio-ME効率を増強する。図8A 図は、各実験において使用されるPUFa-TET1(CD)エフェクターおよびNEILベースのエフェクターモジュールを示すCasilio-MEプラットフォームを描く。単純化のために、NEIL1、NEIL2およびNEIL3を、NEILとして描いた。操作されたタンパク質融合物を、アミノ末端およびカルボキシ末端をそれぞれ各図の左側および右側に配置して示す。示されるgRNA足場を、5コピーのPUFa結合部位(5×PBSa)を含むように質を変化させた。形状は自由裁量であり、NEIL1、NEIL2、およびNEIL3(NEIL)、TET1(CD)(Ten elevenメチルシトシンジオキシゲナーゼ触媒ドメイン(1418~2136))、ならびにPUFaに伴う一定の縮尺で描かれずに示される。図8B 示されるとおりのCasilio-ME構成要素でトランスフェクトされたHEK293T細胞におけるhMLH1 mRNAレベルの相対的変化。棒の濃淡は、示されたPUFa融合物の種々の群を反映する。エラーバーは、三連の実験から導出されたS.E.M.を示す。図8C 図は、各実験において使用されるPUFa-TET1(CD)およびTDGベースのPUFa融合物エフェクターを示すCasilio-MEプラットフォームを描く。タンパク質融合物を、アミノ末端およびカルボキシ末端をそれぞれ各図の左側および右側に配置して示す。その示されるgRNA足場を、5コピーのPUFa結合部位(5×PBSa)を含むように質を変化させた。形状は自由裁量であり、TDG、TET1(CD)(Ten eleven メチルシトシンジオキシゲナーゼ触媒ドメイン(1418~2136))、およびPUFaに伴う一定の縮尺で描かれずに示される。図8D 示されるとおりのCasilio-ME構成要素でトランスフェクトされたHEK293T細胞におけるhMLH1 mRNAレベルの相対的変化。棒の濃淡は、示されるPUFa融合物を反映する。エラーバーは、三連の実験から導出されたS.E.M.を示す。
図8CD図8A~8D: NEIL2(しかしNEIL1、NEIL3またはTDGではない)は、TET1媒介性活性化をメチル化でサイレントにされた遺伝子に送達するためにCasilio-ME効率を増強する。図8A 図は、各実験において使用されるPUFa-TET1(CD)エフェクターおよびNEILベースのエフェクターモジュールを示すCasilio-MEプラットフォームを描く。単純化のために、NEIL1、NEIL2およびNEIL3を、NEILとして描いた。操作されたタンパク質融合物を、アミノ末端およびカルボキシ末端をそれぞれ各図の左側および右側に配置して示す。示されるgRNA足場を、5コピーのPUFa結合部位(5×PBSa)を含むように質を変化させた。形状は自由裁量であり、NEIL1、NEIL2、およびNEIL3(NEIL)、TET1(CD)(Ten elevenメチルシトシンジオキシゲナーゼ触媒ドメイン(1418~2136))、ならびにPUFaに伴う一定の縮尺で描かれずに示される。図8B 示されるとおりのCasilio-ME構成要素でトランスフェクトされたHEK293T細胞におけるhMLH1 mRNAレベルの相対的変化。棒の濃淡は、示されたPUFa融合物の種々の群を反映する。エラーバーは、三連の実験から導出されたS.E.M.を示す。図8C 図は、各実験において使用されるPUFa-TET1(CD)およびTDGベースのPUFa融合物エフェクターを示すCasilio-MEプラットフォームを描く。タンパク質融合物を、アミノ末端およびカルボキシ末端をそれぞれ各図の左側および右側に配置して示す。その示されるgRNA足場を、5コピーのPUFa結合部位(5×PBSa)を含むように質を変化させた。形状は自由裁量であり、TDG、TET1(CD)(Ten eleven メチルシトシンジオキシゲナーゼ触媒ドメイン(1418~2136))、およびPUFaに伴う一定の縮尺で描かれずに示される。図8D 示されるとおりのCasilio-ME構成要素でトランスフェクトされたHEK293T細胞におけるhMLH1 mRNAレベルの相対的変化。棒の濃淡は、示されるPUFa融合物を反映する。エラーバーは、三連の実験から導出されたS.E.M.を示す。
【0028】
図9A図9A~9B NEIL2ツーインワン(two-in-one)エフェクターは、TET1媒介性活性化をメチル化でサイレントにされたMLH1遺伝子に送達するために、Casilio-ME効率を増強する。図9A 図は、各実験において使用されるPUFa-TET1(CD)エフェクターおよびNEIL2ベースのエフェクターモジュールを示すCasilio-MEプラットフォームを描く。タンパク質融合物を、アミノ末端およびカルボキシ末端をそれぞれ各図の左側および右側に配置して示す。その示されるgRNA足場を、5コピーのPUFa結合部位(5×PBSa)を含むように質を変化させた。形状は自由裁量であり、NEIL2、TET1(CD)、およびPUFaに伴う一定の縮尺で描かれずに示される。図9B MLH1 gRNA(グレーの棒)または非標的化gRNA(黒の棒)の存在下で、示されたCasilio-ME構成要素でトランスフェクトされたHEK293T細胞におけるhMLH1 mRNAレベルの相対的変化。エラーバーは、三連の実験から導出されたS.E.Mを示す。
図9B図9A~9B NEIL2ツーインワン(two-in-one)エフェクターは、TET1媒介性活性化をメチル化でサイレントにされたMLH1遺伝子に送達するために、Casilio-ME効率を増強する。図9A 図は、各実験において使用されるPUFa-TET1(CD)エフェクターおよびNEIL2ベースのエフェクターモジュールを示すCasilio-MEプラットフォームを描く。タンパク質融合物を、アミノ末端およびカルボキシ末端をそれぞれ各図の左側および右側に配置して示す。その示されるgRNA足場を、5コピーのPUFa結合部位(5×PBSa)を含むように質を変化させた。形状は自由裁量であり、NEIL2、TET1(CD)、およびPUFaに伴う一定の縮尺で描かれずに示される。図9B MLH1 gRNA(グレーの棒)または非標的化gRNA(黒の棒)の存在下で、示されたCasilio-ME構成要素でトランスフェクトされたHEK293T細胞におけるhMLH1 mRNAレベルの相対的変化。エラーバーは、三連の実験から導出されたS.E.Mを示す。
【0029】
図10A図10A~10B NEIL2およびTET1エフェクターモジュールの共標的化は、TET1媒介性MLH1活性化を強く増強する。図10A 図は、各実験において使用されるPUFa-TET1(CD)エフェクターおよびNEIL2エフェクターモジュールを示すCasilio-MEプラットフォームを描く。操作されたタンパク質融合物を、アミノ末端およびカルボキシル末端をそれぞれ各図の左側および右側に配置して示す。その示されるgRNA足場を、5コピーのPUFaおよびPUFc結合部位(5×PBSaおよび5×PBSc)を含むように質を変化させた。形状は自由裁量であり、NEIL2、TET1(CD)、PUFa、およびPUFcに伴う一定の縮尺で描かれずに示される。図10B NEIL2エフェクターモジュールの非存在下(白の棒)および存在下で、PUFa-TET1(CD)エフェクターでトランスフェクトされたHEK293T細胞におけるhMLH1 mRNAレベルの相対的変化。PUFc-NEIL2(黒の棒)およびNEIL2-PUFc(グレーの棒)が示される。エラーバーは、三連の実験から導出されたS.E.Mを示す。
図10B図10A~10B NEIL2およびTET1エフェクターモジュールの共標的化は、TET1媒介性MLH1活性化を強く増強する。図10A 図は、各実験において使用されるPUFa-TET1(CD)エフェクターおよびNEIL2エフェクターモジュールを示すCasilio-MEプラットフォームを描く。操作されたタンパク質融合物を、アミノ末端およびカルボキシル末端をそれぞれ各図の左側および右側に配置して示す。その示されるgRNA足場を、5コピーのPUFaおよびPUFc結合部位(5×PBSaおよび5×PBSc)を含むように質を変化させた。形状は自由裁量であり、NEIL2、TET1(CD)、PUFa、およびPUFcに伴う一定の縮尺で描かれずに示される。図10B NEIL2エフェクターモジュールの非存在下(白の棒)および存在下で、PUFa-TET1(CD)エフェクターでトランスフェクトされたHEK293T細胞におけるhMLH1 mRNAレベルの相対的変化。PUFc-NEIL2(黒の棒)およびNEIL2-PUFc(グレーの棒)が示される。エラーバーは、三連の実験から導出されたS.E.Mを示す。
【0030】
図11A図11A-11B 標的部位へのNEIL2補充なしのTET1媒介性MLH1活性化。図11A 図は、各実験において使用されるPUFa-TET1(CD)エフェクターおよびNEIL2エフェクターモジュールを示すCasilio-MEプラットフォームを描く。タンパク質融合物を、アミノ末端およびカルボキシ末端をそれぞれ各図の左側および右側に配置して示す。その示されるgRNA足場を、PUFc結合部位なしの5コピーのPUFa結合部位(5×PBSa)を含むように質を変化させた。形状は自由裁量であり、NEIL2、TET1(CD)、PUFa、およびPUFcに伴う一定の縮尺で描かれずに示される。図11B NEIL2エフェクターモジュールの非存在下(白の棒)および存在下で、PUFa-TET1(CD)エフェクターおよび5コピーのBPSaを含むgRNAでトランスフェクトされたHEK293T細胞におけるhMLH1 mRNAレベルの相対的変化。PUFc-NEIL2(黒の棒)およびNEIL2-PUFc(グレーの棒)が示される。エラーバーは、三連の実験から導出されたS.E.M.を示す。
図11B図11A-11B 標的部位へのNEIL2補充なしのTET1媒介性MLH1活性化。図11A 図は、各実験において使用されるPUFa-TET1(CD)エフェクターおよびNEIL2エフェクターモジュールを示すCasilio-MEプラットフォームを描く。タンパク質融合物を、アミノ末端およびカルボキシ末端をそれぞれ各図の左側および右側に配置して示す。その示されるgRNA足場を、PUFc結合部位なしの5コピーのPUFa結合部位(5×PBSa)を含むように質を変化させた。形状は自由裁量であり、NEIL2、TET1(CD)、PUFa、およびPUFcに伴う一定の縮尺で描かれずに示される。図11B NEIL2エフェクターモジュールの非存在下(白の棒)および存在下で、PUFa-TET1(CD)エフェクターおよび5コピーのBPSaを含むgRNAでトランスフェクトされたHEK293T細胞におけるhMLH1 mRNAレベルの相対的変化。PUFc-NEIL2(黒の棒)およびNEIL2-PUFc(グレーの棒)が示される。エラーバーは、三連の実験から導出されたS.E.M.を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
詳細な説明
脱メチル化エンハンサー複合体
本明細書で提供されその実施形態を含む組成物および方法は、TET脱メチル化ドメイン(例えば、TET触媒ドメイン)またはその機能的フラグメントを、脱メチル化エンハンサードメイン(例えば、GADD45Aドメイン、NEIL2ドメイン)と一緒に特定のゲノム遺伝子座(例えば、CpGアイランド)に送達することによって、増強された脱メチル化活性の標的化送達を可能にし、そしてそれによって上記エンハンサードメインがない場合に対して上記遺伝子座の増強された脱メチル化DNAを誘導するメチル化編集(ME)プラットフォームを提供する。本明細書で提供される脱メチル化ドメインおよび脱メチル化エンハンサードメインは、ヌクレアーゼ欠損性DNAエンドヌクレアーゼ(例えば、dCas9)ならびにPUFドメイン、脱メチル化ドメイン(例えば、TET1触媒ドメイン)および脱メチル化エンハンサードメイン(例えば、GADD45AドメインまたはNEIL2ドメイン)を含むタンパク質結合体に結合したポリヌクレオチド(例えば、ガイドRNA)を含む複合体を使用することによって、哺乳動物細胞のゲノム中の特定の部位に送達され得る。
【0032】
ある種の局面において、脱メチル化タンパク質結合体は、(i)C末端およびN末端を有するPUFドメイン;(ii)そのPUFドメインのC末端に作動可能に連結されたTET脱メチル化ドメイン;および(iii)そのPUFドメインのN末端に作動可能に連結されて、タンパク質結合体を形成する脱メチル化エンハンサードメインを含み、脱メチル化タンパク質結合体は、1またはこれより多くのPBS配列に結合するPUFドメインを介してリボ核タンパク質複合体に結合して、脱メチル化複合体を形成する。
【0033】
ある種の他の局面において、脱メチル化タンパク質結合体は、(i)C末端を有するPUFドメイン;(ii)N末端およびC末端を有する脱メチル化エンハンサードメインであって、ここで脱メチル化エンハンサードメインのN末端は、そのPUFドメインのC末端に作動可能に連結される脱メチル化エンハンサードメイン;ならびに(iii)上記脱メチル化エンハンサードメインのC末端に作動可能に連結されたTET脱メチル化ドメインを含み、そしてその脱メチル化タンパク質結合体は、1またはこれより多くのPBS配列に結合するPUFドメインを介してリボ核タンパク質複合体に結合して、脱メチル化複合体を形成する。
【0034】
他のある種の局面において、脱メチル化タンパク質結合体は、(i)C末端を有する第1のPUFドメイン、および(ii)その第1のPUFドメインのC末端に作動可能に連結されたTET脱メチル化ドメインを含み、ここでその脱メチル化タンパク質結合体は、その第1のPBS配列に結合するその第1のPUFドメインを介してそのリボ核タンパク質複合体に結合し;そして脱メチル化エンハンサー結合体は、(i)第2のPUFドメイン;および(ii)その第2のPUFドメインに作動可能に連結された脱メチル化エンハンサードメインを含み、ここでその脱メチル化エンハンサー結合体は、その第2のPBS配列に結合するその第2のPUFドメインを介してリボ核タンパク質複合体に結合して、脱メチル化複合体を形成する。
【0035】
脱メチル化エンハンサードメインは、脱メチル化ドメイン(脱メチル化タンパク質結合体)と同じPUFドメインに作動可能に連結され得る。ある種の実施形態において、その脱メチル化エンハンサードメインは、別個のPUFドメイン(脱メチル化エンハンサー結合体)を通じてガイドRNAに接続され得る。
【0036】
本明細書で提供されその実施形態を含む脱メチル化複合体は、CRISPR/Cas9およびPumilioタンパク質を含む3構成要素ハイブリッドシステムに基づく。本発明の目的のために、CRISPR/Cas9およびPumilioタンパク質を含む3構成要素ハイブリッドシステムはまた、Casilioシステムと交換可能に言及され得、そしてそのCasilioシステムに基づくメチル化編集(ME)プラットフォームは、Casilio-MEとときおり言及される。本質的に、その脱メチル化ドメイン(例えば、TETデメチラーゼ)は、CasilioシステムにおいてPBSに結合するPumilioタンパク質またはその機能的フラグメント(PUFドメイン)に融合され、従って、このようなドメインを、Casilioシステムによって特異的に認識される目的の任意の標的遺伝子座の近位に橋渡しする。国際出願PCT/US2016/021491で開示され、WO2016148994 A8(これは参考としておよび全ての目的のために援用される)として公開された3構成要素CRISPR/Cas複合体システムの任意の局面または実施形態は、本明細書で提供される発明のために使用され得る。
【0037】
本明細書で提供されその実施形態を含む組成物および方法は、DNAデメチラーゼを標的細胞へと導入することによって標的遺伝子のメチル化状態を調節しようとした過去の試みを超えて、本発明が、脱メチル化酵素を上記脱メチル化酵素のエンハンサーと一緒に送達することによって、標的化された遺伝子の遺伝子座の増大した脱メチル化を可能にするという点で有利である。このようなシステムは、標的遺伝子に優れた脱メチル化活性を提供して、メチル化状態の質を変化させる。
【0038】
TET脱メチル化ドメインを含む複合体の脱メチル化効率が、その複合体の中に脱メチル化エンハンサーを含めることによって有意に増大され得ることを示したのは、出願人らが初めてであった。驚くべきことに、本発明者らは、エンハンサードメインを含めるに際して脱メチル化効率の増大が、以下に依存することを発見した:(i)存在するエンハンサータンパク質のタイプ;(ii)そのエンハンサードメインが脱メチル化タンパク質結合体のPUFドメインに連結される配向、および(iii)その脱メチル化エンハンサードメインがPUFドメインに連結されかつ脱メチル化ドメインに接続される様式(例えば、N末端からC末端へ、その結合体は、PUFドメイン、これに脱メチル化エンハンサードメインが連結され、これに脱メチル化ドメインが連結されたもの、またはPUFドメイン、これに脱メチル化ドメインが連結され、これに脱メチル化エンハンサードメインが連結されたものを含み得る)。出願人らは、脱メチル化ドメイン(例えば、TET1触媒ドメイン)がPUFドメインのC末端に連結されている複合体が、脱メチル化ドメイン(例えば、TET1触媒ドメイン)がPUFドメインのN末端に連結された複合体と比較して、有意により有効であることを見出した。出願人らはさらに、C末端連結したTET活性(TET1、TET2、またはTET3の脱メチル化活性)が、特定の脱メチル化エンハンサー(例えば、GADD45A、NEIL2)を脱メチル化複合体の中に含めることによって増大され得ることを示した。さらに、出願人らは驚くべきことに、特定の脱メチル化エンハンサーのみがTETドメインの脱メチル化を効率的に増強していることを示した。実際に、そのエンハンサーがNEILグリコシラーゼ(例えば、NEIL1、NEIL2、またはNEIL3)である場合、脱メチル化は、NEIL2の存在下でのみ増強されるが、NEIL1またはNEIL3の存在下では増強されず、特異性を示す。
【0039】
本明細書で言及される場合の脱メチル化ドメインは、標的核酸を脱メチル化し得るタンパク質ドメインである。ある種の実施形態において、その脱メチル化ドメインは、脱メチル化酵素の触媒ドメイン(例えば、TET1の触媒ドメイン)を含む。ある種の実施形態において、その脱メチル化ドメインは、脱メチル化酵素の触媒ドメインである。
【0040】
本明細書で提供される場合の「脱メチル化エンハンサードメイン(demethylation enhancer domain)」、「脱メチル化エンハンサータンパク質(demethylation enhancer protein)」または「脱メチル化エンハンサー酵素(demethylation enhancer enzyme)」は、アクチベーター(例えば、本明細書で記載される脱メチル化エンハンサードメイン)の非存在下での脱メチル化酵素または脱メチル化ドメインの活性または機能と比較して、その脱メチル化酵素または脱メチル化ドメインの活性または機能に正に影響を及ぼし得る(例えば、増大させ得る)タンパク質、タンパク質ドメインまたはタンパク質部分に言及する。従って、ある種の実施形態において、その脱メチル化エンハンサードメインは、少なくとも部分的に、部分的にまたは完全に、刺激を増大させ得るか、活性化を増大もしくは可能にし得るか、または脱メチル化酵素を活性化し得る。活性(活性化)の増大の量は、脱メチル化エンハンサードメインの非存在下でのコントロールとの比較において、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%または100%超であり得る。ある種の実施形態において、その活性は、脱メチル化エンハンサードメインの非存在下での活性より1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、または10倍超である。従って、ある種の実施形態において、その脱メチル化エンハンサードメインは、TET脱メチル化ドメインの脱メチル化を、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、または20倍増大させる。ある種の実施形態において、その脱メチル化エンハンサードメインは、TET脱メチル化ドメインの脱メチル化を、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、または20倍増大させる。
【0041】
細胞において標的遺伝子座を脱メチル化するために有用な脱メチル化タンパク質結合体および脱メチル化エンハンサー結合体が、本明細書で提供される。その脱メチル化タンパク質結合体は、本明細書で記載されるPUFドメイン、そのPUFドメインのC末端に連結されたTET脱メチル化ドメイン(例えば、TET1ドメイン、TET1触媒ドメイン)および脱メチル化エンハンサードメイン(例えば、NEIL2ドメインまたはGADD45Aドメイン)を含む。その脱メチル化エンハンサードメインは、そのPUFドメインのN末端またはC末端に連結され得る。脱メチル化エンハンサードメインがPUFドメインのN末端に連結される場合、TET脱メチル化ドメインおよび脱メチル化エンハンサードメインは、直接連結されないが、PUFドメインを通じて接続される。脱メチル化エンハンサードメインがPUFドメインのC末端に連結される場合、その脱メチル化エンハンサードメインは、PUFドメインをTET脱メチル化ドメインに接続する。言い換えると、PUFドメインのC末端は、脱メチル化エンハンサードメインに連結され、この脱メチル化エンハンサードメインのC末端は、TET脱メチル化ドメインに連結される。あるいは、本明細書で提供される複合体は、第1のPUFドメインおよび脱メチル化ドメイン(例えば、TET1ドメイン)を含む脱メチル化タンパク質結合体であって、ここでそのTET脱メチル化ドメインは、PUFドメインのC末端に連結される脱メチル化タンパク質結合体、ならびに第2のPUFドメインおよび脱メチル化エンハンサードメイン(例えば、NEIL2ドメインまたはGADD45Aドメイン)を含む脱メチル化エンハンサー結合体を含み得る。
【0042】
ある種の実施形態において、脱メチル化エンハンサードメインは、PUFドメインのN末端に作動可能に連結される。ある種の実施形態において、脱メチル化エンハンサードメインは、PUFドメインのC末端に作動可能に連結される。ある種の実施形態において、脱メチル化エンハンサードメインは、第2のPUFドメインのN末端に作動可能に連結される。ある種の実施形態において、脱メチル化エンハンサードメインは、第2のPUFドメインのC末端に作動可能に連結される。
【0043】
ある種の実施形態において、脱メチル化エンハンサードメインは、Growth Arrest and DNA-Damage-inducible Alpha(GADD45A)ドメインである。ある種の実施形態において、そのGADD45ドメインは、配列番号85のアミノ酸配列を有する。ある種の実施形態において、脱メチル化エンハンサードメインは、NEIL2ドメインである。ある種の実施形態において、そのNEIL2ドメインは、配列番号86のアミノ酸配列を有する。ある種の実施形態において、脱メチル化エンハンサードメインは、NEIL1ドメインではない。ある種の実施形態において、脱メチル化エンハンサードメインは、NEIL3ドメインではない。
【0044】
本明細書で提供されその実施形態を含む複合体は、(i)脱メチル化ドメインおよび脱メチル化エンハンサードメインに作動可能に連結されたPUFドメイン(脱メチル化タンパク質結合体)、(ii)脱メチル化ドメインに作動可能に連結された第1のPUFドメイン(脱メチル化タンパク質結合体)、または(iii)脱メチル化エンハンサードメインに作動可能に連結された第2のPUFドメイン(脱メチル化エンハンサー結合体)をそれぞれ含む脱メチル化結合体(例えば、脱メチル化タンパク質結合体、脱メチル化エンハンサー結合体)を含む。従って、本明細書で提供されるとおりの脱メチル化タンパク質結合体は、(i)脱メチル化ドメインおよび脱メチル化エンハンサードメインに作動可能に連結されたPUFドメイン、または(ii)脱メチル化ドメインに連結された第1のPUFドメインを含む。脱メチル化エンハンサードメインは、脱メチル化エンハンサードメインに連結された第2のPUFドメインを含む。
【0045】
タンパク質結合体が脱メチル化結合体である場合、その脱メチル化ドメインは、PUFドメインのC末端に作動可能に連結されて、タンパク質結合体を形成する。脱メチル化エンハンサードメインは、PUFドメインのC末端に、PUFドメインのN末端に連結され得るか、または脱メチル化エンハンサードメインは、別個のPUFドメインに連結された(すなわち、PUFドメインは、脱メチル化ドメインに連結されない)ポリヌクレオチド(例えば、gRNA)を結合し得る。脱メチル化エンハンサードメインおよび脱メチル化ドメインがポリヌクレオチドを別個に結合する場合、その脱メチル化ドメインは、脱メチル化タンパク質結合体の一部を形成し、第1のPUFドメインに連結され、そしてその脱メチル化エンハンサードメインは、脱メチル化エンハンサータンパク質結合体の一部を形成し、第2のPUFドメインに連結される。その脱メチル化タンパク質結合体は、第1のPBS配列への第1のPUFドメインの結合を通じてそのポリヌクレオチドを結合し、その脱メチル化エンハンサータンパク質結合体は、第2のPBS配列への第2のPUFドメインの結合を通じてそのポリヌクレオチドを結合する。
【0046】
従って、一局面において、脱メチル化複合体が提供される。上記脱メチル化複合体は、
(a)以下:
(i)ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素;ならびに
(ii)以下を含むポリヌクレオチド:
(1)標的ポリヌクレオチド配列に相補的なDNA標的化配列;
(2)上記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素に対する結合配列;および
(3)1またはこれより多くのPUF結合部位(PBS)配列、
を含むリボ核タンパク質複合体であって、ここでそのヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、上記結合配列を介して上記ポリヌクレオチドに結合される、リボ核タンパク質複合体;ならびに
(b)以下:
(i)C末端およびN末端を有するPUFドメイン;
(ii)上記PUFドメインのC末端に作動可能に連結されたTET脱メチル化ドメイン;および
(iii)上記PUFドメインのN末端に連結されて、タンパク質結合体を形成する脱メチル化エンハンサードメイン、
を含む脱メチル化タンパク質結合体であって、ここで上記脱メチル化タンパク質結合体は、1またはこれより多くのPBS配列に結合する上記PUFドメインを介して上記リボ核タンパク質複合体に結合して、脱メチル化複合体を形成する脱メチル化タンパク質結合体、
を含む。
【0047】
一局面において、脱メチル化複合体が提供される。上記脱メチル化複合体は、
(a)以下:
(i)ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素;ならびに
(ii)以下を含むポリヌクレオチド:
(1)標的ポリヌクレオチド配列に相補的なDNA標的化配列;
(2)上記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素に対する結合配列;および
(3)1またはこれより多くのPUF結合部位(PBS)配列、
を含むリボ核タンパク質複合体であって、ここで上記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、上記結合配列を介して上記ポリヌクレオチドに結合されるリボ核タンパク質複合体;ならびに
(b)以下:
(i)C末端を有するPUFドメイン;
(ii)N末端およびC末端を有する脱メチル化エンハンサードメインであって、ここで上記脱メチル化エンハンサードメインのN末端は、上記PUFドメインC末端に作動可能に連結される脱メチル化エンハンサードメイン;および
(iii)上記脱メチル化エンハンサードメインのC末端に作動可能に連結されたTET脱メチル化ドメイン;
を含む脱メチル化タンパク質結合体であって、ここで上記脱メチル化タンパク質結合体は、上記1またはこれより多くのPBS配列に結合するPUFドメインを介して上記リボ核タンパク質複合体に結合して、脱メチル化複合体を形成する脱メチル化タンパク質結合体、
を含む。
【0048】
一局面において、脱メチル化複合体が提供される。上記脱メチル化複合体は、
(a)以下:
(i)ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素;ならびに
(ii)以下を含むポリヌクレオチド:
(1)標的ポリヌクレオチド配列に相補的なDNA標的化配列;
(2)上記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素に対する結合配列;
(3)第1のPUF結合部位(PBS)配列;および
(4)第2のPUF結合部位(PBS)配列、
を含むリボ核タンパク質複合体であって、ここで上記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、上記結合配列を介して上記ポリヌクレオチドに結合されるリボ核タンパク質複合体;
(b)以下:
(i)C末端を有する第1のPUFドメイン、および
(ii)上記第1のPUFドメインのC末端に作動可能に連結されたTET脱メチル化ドメイン、
を含む脱メチル化タンパク質結合体であって、ここで上記脱メチル化タンパク質結合体は、上記第1のPBS配列に結合する第1のPUFドメインを介して上記リボ核タンパク質複合体に結合する脱メチル化タンパク質結合体;ならびに
(c)以下:
(i)第2のPUFドメイン;および
(ii)上記第2のPUFドメインに作動可能に連結された脱メチル化エンハンサードメイン、
を含む脱メチル化エンハンサー結合体であって、ここで上記脱メチル化エンハンサー結合体は、上記第2のPBS配列に結合する上記第2のPUFドメインを介して上記リボ核タンパク質複合体に結合して、脱メチル化複合体を形成する脱メチル化エンハンサー結合体、
を含む。
【0049】
ある種の実施形態において、TET脱メチル化ドメインは、TET1ドメイン(すなわち、TET1触媒ドメイン)、TET2ドメイン(すなわち、TET2触媒ドメイン)またはTET3ドメイン(すなわち、TET3触媒ドメイン)である。ある種の実施形態において、そのTET脱メチル化ドメインは、TET1ドメインである。ある種の実施形態において、そのTET脱メチル化ドメインは、TET2ドメインである。ある種の実施形態において、そのTET脱メチル化ドメインは、TET3ドメインである。ある種の実施形態において、そのTET脱メチル化ドメインは、TET1触媒ドメインである。ある種の実施形態において、そのTET脱メチル化ドメインは、TET2触媒ドメインである。ある種の実施形態において、そのTET脱メチル化ドメインは、TET3触媒ドメインである。ある種の実施形態において、そのTET1ドメインは、配列番号51の配列を有する。ある種の実施形態において、その脱メチル化エンハンサードメインは、Growth Arrest and DNA-Damage-inducible Alpha(GADD45A)ドメインである。ある種の実施形態において、そのGADD45ドメインは、配列番号85のアミノ酸配列を有する。ある種の実施形態において、その脱メチル化エンハンサードメインは、NEIL2ドメインである。ある種の実施形態において、そのNEIL2ドメインは、配列番号86のアミノ酸配列を有する。
【0050】
リボ核タンパク質複合体
本明細書で提供される場合の「リボ核タンパク質複合体(ribonucleoprotein complex)」は、核タンパク質およびリボ核酸を含む複合体をいう。本明細書で提供される場合の「核タンパク質(nucleoprotein)とは、核酸(例えば、RNA、DNA)を結合し得るタンパク質をいう。その核タンパク質がリボ核酸を結合する場合、それは、「リボ核タンパク質(ribonucleoprotein)」といわれる。リボ核タンパク質とリボ核酸との間の相互作用は、直接的、例えば、共有結合によって、または間接的、例えば、非共有結合的な結合(例えば、静電的相互作用(例えば、イオン結合、水素結合、ハロゲン結合)、ファン・デル・ワールス相互作用(例えば、双極子-双極子、双極子-誘起双極子、ロンドン分散力)、環スタッキング(π効果)、疎水性相互作用など)によってであり得る。ある種の実施形態において、そのリボ核タンパク質は、リボ核酸に非共有結合的に結合されるRNA結合モチーフを含む。例えば、RNA結合モチーフ中の正に荷電した芳香族アミノ酸残基(例えば、リジン残基)は、RNAの負の核酸ホスフェート骨格と静電的相互作用を形成し得、それによって、リボ核タンパク質複合体を形成し得る。リボ核タンパク質の非限定的な例としては、リボソーム、テロメラーゼ、RNAseP、hnRNP、CRISPR関連タンパク質9(Cas9)および低分子核RNA(small nuclear RNP)(snRNP)が挙げられる。そのリボ核タンパク質は、酵素であり得る。ある種の実施形態において、そのリボ核タンパク質は、エンドヌクレアーゼである。ある種の実施形態において、そのリボ核タンパク質は、ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素である。従って、ある種の実施形態において、そのリボ核タンパク質複合体は、ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素およびリボ核酸を含む。ある種の実施形態において、そのヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、核局在化シグナル(NLS)を含む。本明細書で提供される核局在化シグナル(NLS)は、そのNLSが連結される、タンパク質ドメインまたはタンパク質(例えば、ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素)の核輸送を提供する。
【0051】
ある種の実施形態において、そのヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、ヌクレアーゼ欠損性CRISPR関連タンパク質9(dCas9)である。ある種の実施形態において、そのヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、ヌクレアーゼ欠損性Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats from Prevotella and Francisella 1(Cpf1)である。
【0052】
ポリヌクレオチド
本明細書で提供されるポリヌクレオチドは、(1)標的ポリヌクレオチド配列に相補的なDNA標的化配列、(2)そのヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素(例えば、dCas9)に対する結合配列、および(3)1またはこれより多くのPUF結合部位(PBS)配列(例えば、第1の(3)および第2の(4)PBS配列)を含む。ある種の実施形態において、その複合体は、そのポリヌクレオチドに結合したdCas9を含み、それによって、リボ核タンパク質複合体を形成する。ある種の実施形態において、そのポリヌクレオチドは、リボ核酸である。ある種の実施形態において、そのポリヌクレオチドは、ガイドRNAである。本明細書で提供される場合の「ガイドRNA(guide RNA)」または「gRNA」は、核タンパク質を結合し得、それによってリボ核タンパク質複合体を形成し得るリボヌクレオチド配列に言及する。
【0053】
ある種の実施形態において、そのポリヌクレオチド(例えば、gRNA)は、1本鎖リボ核酸である。ある種の実施形態において、そのポリヌクレオチド(例えば、gRNA)は、長さが10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個またはこれより多くの核酸残基である。ある種の実施形態において、そのポリヌクレオチド(例えば、gRNA)は、長さが10~30個の核酸残基である。ある種の実施形態において、そのポリヌクレオチド(例えば、gRNA)は、長さが20個の核酸残基である。ある種の実施形態において、そのポリヌクレオチド(例えば、gRNA)の長さは、長さが少なくとも5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、49個、50個、51個、52個、53個、54個、55個、56個、57個、58個、59個、60個、61個、62個、63個、64個、65個、66個、67個、68個、69個、70個、71個、72個、73個、74個、75個、76個、77個、78個、79個、80個、81個、82個、83個、84個、85個、86個、87個、88個、89個、90個、91個、92個、93個、94個、95個、96個、97個、98個、99個、100個またはこれより多くの核酸残基または糖残基であり得る。ある種の実施形態において、そのポリヌクレオチド(例えば、gRNA)は、長さが5~50個、10~50個、15~50個、20~50個、25~50個、30~50個、35~50個、40~50個、45~50個、5~75個、10~75個、15~75個、20~75個、25~75個、30~75個、35~75個、40~75個、45~75個、50~75個、55~75個、60~75個、65~75個、70~75個、5~100個、10~100個、15~100個、20~100個、25~100個、30~100個、35~100個、40~100個、45~100個、50~100個、55~100個、60~100個、65~100個、70~100個、75~100個、80~100個、85~100個、90~100個、95~100個、またはこれより多くの残基である。ある種の実施形態において、そのポリヌクレオチド(例えば、gRNA)は、長さが10~15個、10~20個、10~30個、10~40個、または10~50残基である。
【0054】
ある種の実施形態において、そのポリヌクレオチドの転写は、構成的プロモーター(例えば、CMVプロモーターまたはUbcプロモーター)、または誘導性プロモーター(例えば、テトラサイクリン応答正プロモーターまたはステロイド応答性プロモーター)の制御下にある。ある種の実施形態において、そのポリヌクレオチドは、ベクターである。
【0055】
ある種の実施形態において、そのポリヌクレオチド(本発明の方法において使用するための)をコードするベクターは、哺乳動物(ヒト;非ヒト霊長類;非ヒト哺乳動物;齧歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット);家畜哺乳動物(例えば、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ラクダ、ウシ);またはペット哺乳動物(例えば、ネコまたはイヌ));鳥類、魚類、昆虫、蠕虫、酵母、もしくは細菌に由来する細胞において活性である。
【0056】
ある種の実施形態において、そのベクターは、プラスミド、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、レトロウイルス、もしくはレンチウイルスベクター、またはAAVベクター)、またはトランスポゾン(例えば、piggyBacトランスポゾン)である。そのベクターは、宿主細胞へと一過性にトランスフェクトされ得るか、または感染もしくは転移(transposition)によって宿主ゲノムへと組み込まれ得る。
【0057】
DNA標的化配列
そのポリヌクレオチドは、標的部位(例えば、標的ポリヌクレオチド配列)に相補的なヌクレオチド配列を含み、これは、本明細書で「DNA標的化配列(DNA-targeting sequence)」といわれる。そのDNA標的化配列は、相補的な標的ポリヌクレオチド配列(それによって、そのリボ核タンパク質複合体の配列特異性を提供する)へのリボ核タンパク質複合体の結合を媒介し得る。従って、ある種の実施形態において、そのポリヌクレオチド(例えば、gRNA)またはその一部は、標的ポリヌクレオチド配列に相補的である。ある種の実施形態において、そのポリヌクレオチド(例えば、gRNA)は、標的ポリヌクレオチド配列を結合する。ある種の実施形態において、そのポリヌクレオチドの相補体は、その標的ポリヌクレオチド配列と50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。ある種の実施形態において、そのDNA標的化配列の相補体は、その標的ポリヌクレオチド配列と50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。
【0058】
DNA標的化配列が、標的ポリヌクレオチド配列に対して100%相補的であってもそうでなくてもよいことは、注記されるべきである。ある種の実施形態において、そのDNA標的化配列は、8~25ヌクレオチド(nt)、12~22ヌクレオチド、14~20nt、16~20nt、18~20nt、または8nt、9nt、10nt、11nt、12nt、13nt、14nt、15nt、16nt、17nt、18nt、19nt、20nt、21nt、22nt、23nt、24nt、または25ntにわたってその標的ポリヌクレオチド配列に対して相補的である。ある種の実施形態において、その相補的領域は、12~22ntの連続するストレッチ(stretch)を、好ましくはそのDNA標的化配列の3’末端において含む。ある種の実施形態において、そのDNA標的化配列の5’末端は、標的ポリヌクレオチド配列と8ヌクレオチドまでのミスマッチを有する。ある種の実施形態において、DNA結合配列は、その標的ポリヌクレオチド配列に対して50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%相補的である。
【0059】
関連する実施形態において、相補的な標的ポリヌクレオチド配列と比較して、DNA標的化配列の3’末端において15ヌクレオチド以下のマッチが存在し、複合体の中のヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼは、ヌクレアーゼ欠損性野生型Cas9タンパク質(ヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質)であり、これは、その状況下では、標的DNA(例えば、dCas9タンパク質)を結合するが、切断しない。ある種の実施形態において、そのヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼは、ヌクレアーゼ欠損性Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats from Prevotella and Francisella 1(Cpf1)である。
【0060】
そのDNA標的化配列は、CRISPR/Cas複合体/システムのcrRNAまたはガイドRNAまたはgRNAの機能的に類似または等価である。しかし、本発明の状況において、DNA標的化配列は、任意の特定のcrRNAまたはgRNAに由来しなくてもよいが、標的ポリヌクレオチド配列の配列に基づいて自由裁量でデザインされ得る。
【0061】
DNA標的化配列は、標的DNA(またはその標的DNAの相補鎖)内の特定の配列に相補的なヌクレオチド配列を含む。言い換えると、そのDNA標的化配列は、ハイブリダイゼーション(すなわち、塩基対形成)を介して配列特異的様式でその標的DNAの標的ポリヌクレオチド配列と相互作用する。よって、DNA標的化配列のヌクレオチド配列は変動し得、それは、その本発明のポリヌクレオチドおよび標的DNAが相互作用するその標的DNA内の位置を決定する。そのDNA標的化配列は、標的DNA内の任意の所望の配列にハイブリダイズするように(例えば、遺伝的操作によって)改変またはデザインされ得る。ある種の実施形態において、標的ポリヌクレオチド配列は、相補鎖のPAM(プロトスペーサー隣接モチーフ(protospacer adjacent motif))配列のすぐ3’側にあり、これは、5’-CCN-3’であり得る(ここでNは、任意のDNAヌクレオチドである)。すなわち、この実施形態において、その標的ポリヌクレオチド配列の相補鎖は、5’-NGG-3’である(ここでNは、任意のDNAヌクレオチドである)PAM配列の直ぐ5’側にある。関連する実施形態において、その相補鎖のPAM配列は、ヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質またはdCas9とマッチする。
【0062】
DNA標的化配列は、12ヌクレオチド~100ヌクレオチドの長さを有し得る。例えば、そのDNA標的化配列は、12ヌクレオチド(nt)~80nt、12nt~50nt、12nt~40nt、12nt~30nt、12nt~25nt、12nt~20nt、または12nt~19ntの長さを有し得る。例えば、そのDNA標的化配列は、19nt~20nt、19nt~25nt、19nt~30nt、19nt~35nt、19nt~40nt、19nt~45nt、19nt~50nt、19nt~60nt、19nt~70nt、19nt~80nt、19nt~90nt、19nt~100nt、20nt~25nt、20nt~30nt、20nt~35nt、20nt~40nt、20nt~45nt、20nt~50nt、20nt~60nt、20nt~70nt、20nt~80nt、20nt~90nt、または20nt~100ntの長さを有し得る。
【0063】
標的DNAの標的ポリヌクレオチド配列に相補的なDNA標的化配列のヌクレオチド配列は、少なくとも12ntの長さを有し得る。例えば、その標的DNAの標的ポリヌクレオチド配列に相補的なDNA標的化配列は、少なくとも12nt、少なくとも15nt、少なくとも18nt、少なくとも19nt、少なくとも20nt、少なくとも25nt、少なくとも30nt、少なくとも35ntまたは少なくとも40ntの長さを有し得る。例えば、標的DNAの標的ポリヌクレオチド配列に相補的なDNA標的化配列は、12ヌクレオチド(nt)~80nt、12nt~50nt、12nt~45nt、12nt~40nt、12nt~35nt、12nt~30nt、12nt~25nt、12nt~20nt、12nt~19nt、19nt~20nt、19nt~25nt、19nt~30nt、19nt~35nt、19nt~40nt、19nt~45nt、19nt~50nt、19nt~60nt、20nt~25nt、20nt~30nt、20nt~35nt、20nt~40nt、20nt~45nt、20nt~50nt、または20nt~60ntの長さを有し得る。標的DNAの標的ポリヌクレオチド配列に相補的なDNA標的化配列のヌクレオチド配列は、少なくとも12ntの長さを有し得る。
【0064】
いくつかの例では、標的DNAの標的ポリヌクレオチド配列に相補的なDNA標的化配列は、長さが20ヌクレオチドである。いくつかの場合では、標的DNAの標的ポリヌクレオチド配列に相補的なDNA標的化配列は、長さが19ヌクレオチドである。
【0065】
DNA標的化配列と標的DNAの標的ポリヌクレオチド配列との間の%相補性は、少なくとも50%(例えば、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)であり得る。いくつかの場合では、DNA標的化配列と標的ポリヌクレオチド配列との間の%相補性は、その標的ポリヌクレオチド配列の7個または8個連続する最も5’側のヌクレオチドにわたって100%である。いくつかの場合では、DNA標的化配列と標的ポリヌクレオチド配列との間の%相補性は、20個連続するヌクレオチドにわたって少なくとも60%である。いくつかの場合では、DNA標的化配列と標的ポリヌクレオチド配列との間の%相同性は、その標的ポリヌクレオチド配列の7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、または14個連続する最も5’側のヌクレオチドにわたって100%であり(すなわち、DNA標的化配列の7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、または14個連続する最も3’側のヌクレオチド)、残りにわたって0%の低さである。このような場合では、DNA標的化配列は、長さがそれぞれ、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、または14個のヌクレオチドであると考えられ得る。
【0066】
標的ポリヌクレオチド配列
本明細書で提供される場合の「標的ポリヌクレオチド配列(target polynucleotide sequence)」は、細胞によって発現される核酸配列である。ある種の実施形態において、その標的ポリヌクレオチド配列は、外因性核酸配列である。ある種の実施形態において、その標的ポリヌクレオチド配列は、内因性核酸配列である。ある種の実施形態において、その標的ポリヌクレオチド配列は、細胞遺伝子の一部を形成する。ある種の実施形態において、その標的ポリヌクレオチド配列は、遺伝子の一部である。ある種の実施形態において、その標的ポリヌクレオチド配列は、Sox遺伝子の一部である。ある種の実施形態において、その標的ポリヌクレオチド配列は、転写調節配列の一部である。ある種の実施形態において、その標的ポリヌクレオチド配列は、プロモーター、エンハンサーまたはサイレンサーの一部である。ある種の実施形態において、その標的ポリヌクレオチド配列は、過剰メチル化核酸配列である。ある種の実施形態において、その標的ポリヌクレオチド配列は、過剰メチル化CpG配列である。ある種の実施形態において、標的ポリヌクレオチド配列は、hMLH1プロモーターの一部である。
【0067】
ある種の実施形態において、標的配列は、RNAである。ある種の実施形態において、標的配列は、DNAである。本明細書中の記載において、第1のセグメントは、一般に、その標的配列がDNA(例えば、ゲノムDNA)である場合、「DNA標的化配列(DNA-targeting sequence)」といわれる。その標的配列がRNAである関連する実施形態において、本明細書中以下の記載は概して、冗長性を回避するために、「DNA標的化配列」への言及が「RNA標的化配列(RNA-targeting sequence)」と置き換えられることを除いて、同様に当てはまる。すなわち、ポリヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチド配列(DNAまたはRNA)に相補的なヌクレオチド配列を含む。
【0068】
ある種の実施形態において、その3つのセグメント(1)~(3)は、その順序で、5’→3’に配置される。ある種の実施形態において、その3つのセグメント(1)~(4)は、その順序で、5’→3’に配置される。
【0069】
ある種の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、単一のRNA分子(単一RNAポリヌクレオチド)であり得、これは、「単一ガイドRNA(single-guide RNA)」、または「sgRNA」を含み得る。別の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、2つのRNA分子を含む(例えば、結合配列(例えば、ヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質結合配列またはdCas9結合配列))におけるハイブリダイゼーションを介して一緒に結合される)。従って、本発明のポリヌクレオチドは、2分子ポリヌクレオチドおよび単一分子ポリヌクレオチド(例えば、sgRNA)の両方に言及して、包括的である。
【0070】
ある種の実施形態において、その標的ポリヌクレオチド配列は、プロモーター配列に、その付近に、またはその中にある。ある種の実施形態において、その標的ポリヌクレオチド配列は、CpGアイランド内にある。ある種の実施形態において、その標的ポリヌクレオチド配列は、DNAの低メチル化または過剰メチル化によって特徴づけられる疾患または状態と関連することが公知である。ある種の実施形態において、その標的ポリヌクレオチド配列は、がん抑制遺伝子または発癌遺伝子内に(例えば、その腫瘍抑制遺伝子または発癌遺伝子の転写調節配列/エレメント内に)ある。
【0071】
ある種の実施形態において、その標的ポリヌクレオチド配列は、この標的ポリヌクレオチド配列のPAM(プロトスペーサー隣接モチーフ)配列の直ぐ3’側にある。例えば、ある種の実施形態において、その標的ポリヌクレオチド配列のPAM配列は、5’-CCN-3’であり、ここでNは、任意のDNAヌクレオチドである。他の実施形態において、その標的ポリヌクレオチド配列のPAM配列は、使用されるべき特定のヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質またはdCas9タンパク質またはホモログまたはオルソログとマッチする。
【0072】
当該分野で公知であるように、DNAに成功裡に結合するべきヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質またはdCas9タンパク質に関して、ゲノムDNA中の標的ポリヌクレオチド配列は、ガイドRNA配列に相補的でなければならず、かつ正確なプロトスペーサー隣接モチーフまたはPAM配列が直ぐ次に続かなければならない。そのPAM配列は、標的ポリヌクレオチド配列中に存在するが、ガイドRNA配列中には存在しない。正確な標的ポリヌクレオチド配列、続いてPAM配列を有する任意のDNA配列は、ヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質またはdCas9タンパク質によって結合される。ある種の実施形態において、そのPAM配列は、国際出願PCT/US2016/021491に開示されかつWO2016148994 A8(これは、参考としておよび全ての目的のために援用される)として公開されるPAM配列のうちのいずれかである。
【0073】
実施形態において、ポリヌクレオチド(例えば、gRNA)は、標的ポリヌクレオチド配列と50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%である。ある種の実施形態において、ポリヌクレオチド(例えば、gRNA)は、細胞遺伝子の配列と50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%相補的である。ある種の実施形態において、ポリヌクレオチド(例えば、gRNA)は、細胞遺伝子配列を結合する。
【0074】
結合配列
ある種の実施形態において、複合体は、ポリヌクレオチドの結合配列を結合することを通じて、ポリヌクレオチドに結合され、それによってリボ核タンパク質複合体を形成するdCas9を含む。ある種の実施形態において、その結合配列は、ヘアピン構造を形成する。ある種の実施形態において、その結合配列は、長さが30~100nt、35~50nt、37~47nt、または42ntである。例示的な結合配列は、配列番号6の配列 GTTTTAGAGCTAGAAATAGCAAGTTAAAATAAGGCTAである。別の例示的な結合配列は、配列番号7の配列 GTTTAAGAGCTATGCTGGAAACAGCATAGCAAGTTTAAATAAGGCTAである。
【0075】
ある種の実施形態において、その結合配列は、配列番号6の配列を含む。ある種の実施形態において、その結合配列は、配列番号7の配列を含む。ある種の実施形態において、その結合配列は、配列番号6の配列である。ある種の実施形態において、その結合配列は、配列番号7の配列である。
【0076】
本発明のポリヌクレオチドの結合配列(タンパク質結合セグメントまたはタンパク質結合配列)は、低下したエンドヌクレアーゼ活性を有するかまたはエンドヌクレアーゼ活性を欠く、改変されたdCas9タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ欠損性ニッカーゼまたはdCas9)に結合する。単純にするために、改変されたCas9タンパク質(例えば、dCas9タンパク質)に結合し得る、その結合配列(タンパク質結合セグメントまたはタンパク質結合配列)は、「Cas9結合配列(Cas9-binding sequence)」または結合配列(binding sequence)」と本明細書中で単純に言及され得る。しかし、本発明の結合配列(Cas9結合配列)がdCas9に結合する場合に、その結合配列がwt Cas9またはCas9ニッカーゼに結合するのを妨げられないことは、理解されるべきである。ある種の実施形態において、本発明の結合配列(Cas9結合配列)は、dCas9、ならびにwt Cas9および/またはCas9ニッカーゼに結合する。
【0077】
その結合配列(Cas9結合配列)は、Cas9タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質、またはdCas9タンパク質)と相互作用するかまたは結合し、これらは一緒に、DNA標的化配列によって認識される標的ポリヌクレオチド配列に結合する。その結合配列(Cas9結合配列)は、互いにハイブリダイズして、2本鎖RNA二重鎖(dsRNA二重鎖)を形成するヌクレオチドの2つの相補的ストレッチを含む。ヌクレオチドのこれらの2つの相補的ストレッチは、リンカーまたはリンカーヌクレオチドとして公知の介在ヌクレオチドによって共有結合的に連結され得(例えば、1分子ポリヌクレオチドの場合には)、結合配列(Cas9結合配列)の2本鎖RNA二重鎖(dsRNA二重鎖、または「Cas9結合ヘアピン」)を形成するようにハイブリダイズし、従って、ステム-ループ構造を生じる。あるいは、ある実施形態において、ヌクレオチドのその2つの相補的ストレッチは、共有結合的に連結されなくてもよいが、代わりに、相補的配列の間のハイブリダイゼーションによって一緒に保持される(例えば、本発明の二分子ポリヌクレオチドの場合)。
【0078】
その結合配列(Cas9結合配列)は、10ヌクレオチド~100ヌクレオチド、例えば、10ヌクレオチド(nt)~20nt、20nt~30nt、30nt~40nt、40nt~50nt、50nt~60nt、60nt~70nt、70nt~80nt、80nt~90nt、または90nt~100ntの長さを有し得る。例えば、そのCas9結合配列は、15ヌクレオチド(nt)~80nt、15nt~50nt、15nt~40nt、15nt~30nt、37nt~47nt(例えば、42nt)、または15nt~25ntの長さを有し得る。
【0079】
その結合配列(Cas9結合配列)のdsRNA二重鎖は、6塩基対(bp)~50bpの長さを有し得る。例えば、その結合配列(Cas9結合配列)のdsRNA二重鎖は、6bp~40bp、6bp~30bp、6bp~25bp、6bp~20bp、6bp~15bp、8bp~40bp、8bp~30bp、8bp~25bp、8bp~20bpまたは8bp~15bpの長さを有し得る。例えば、その結合配列(Cas9結合配列)のdsRNA二重鎖は、8bp~10bp、10bp~15bp、15bp~18bp、18bp~20bp、20bp~25bp、25bp~30bp、30bp~35bp、35bp~40bp、または40bp~50bpの長さを有し得る。いくつかの実施形態において、その結合配列(Cas9結合配列)のdsRNA二重鎖は、36塩基対の長さを有する。その結合配列(Cas9結合配列)のdsRNA二重鎖を結合するようにハイブリダイズするヌクレオチド配列の間の%相補性は、少なくとも60%であり得る。例えば、その結合配列(Cas9結合配列)のdsRNA二重鎖を形成するようにハイブリダイズするヌクレオチド配列間の%相補性は、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%であり得る。いくつかの場合では、その結合配列(Cas9結合配列)のdsRNA二重鎖を形成するようにハイブリダイズするヌクレオチド配列間の%相補性は、100%である。
【0080】
ある種の実施形態において、そのポリヌクレオチドはさらに、DNA標的化配列を結合配列(Cas9結合配列)に連結するリンカー配列を含む。そのリンカーは、3ヌクレオチド~100ヌクレオチドの長さを有し得る。例えば、そのリンカーは、3ヌクレオチド(nt)~90nt、3ヌクレオチド(nt)~80nt、3ヌクレオチド(nt)~70nt、3ヌクレオチド(nt)~60nt、3ヌクレオチド(nt)~50nt、3ヌクレオチド(nt)~40nt、3ヌクレオチド(nt)~30nt、3ヌクレオチド(nt)~20ntまたは3ヌクレオチド(nt)~10ntの長さを有し得る。例えば、そのリンカーは、3nt~5nt、5nt~10nt、10nt~15nt、15nt~20nt、20nt~25nt、25nt~30nt、30nt~35nt、35nt~40nt、40nt~50nt、50nt~60nt、60nt~70nt、70nt~80nt、80nt~90nt、または90nt~100ntの長さを有し得る。いくつかの実施形態において、そのリンカーは、4ntである。
【0081】
適切な結合配列(Cas9結合配列、すなわち、Cas9ハンドル)に含まれ得るヌクレオチド配列の非限定的例は、WO2013/176772の配列番号563~682に示される(WO2013/176772(その全体においておよび全ての目的のために参考として援用される)の例えば、図8および9を参照のこと)。
【0082】
いくつかの場合では、適切な結合配列(Cas9結合配列)は、上記で列挙した配列のうちのいずれか1つから、1ヌクレオチド、2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、または5ヌクレオチド異なるヌクレオチド配列を含む。
【0083】
PBS配列
本明細書で提供される場合の用語「PBS」または「PUF結合部位(PUF binding site)」とは、Pumilio/fem-3 mRNA結合因子(PUF)によって結合される部位をいう。PUF結合部位(PBS)は、ガイドRNAの一部を形成し得、本明細書で提供されるとおりのPUFタンパク質またはPUFドメイン(例えば、PUFa、PUFb、PUFcまたはこれらの機能的フラグメント)の、上記ガイドRNAへの結合を提供し得る。そのPUF結合部位は、PBSに特徴的であり、PUFタンパク質によって直接的に結合され得る核酸配列(すなわち、PBS配列またはPUF結合部位配列)を含む。本明細書で提供されるポリヌクレオチド(例えば、gRNA)はさらに、1またはこれより多くのPUF結合部位(PBS)配列を含む。局面において、脱メチル化複合体は、脱メチル化ドメインとは異なるPUFドメインに連結される脱メチル化エンハンサードメインを含む。従って、その脱メチル化ドメインは、第1のPBS配列を結合する第1のPUFドメインを通じてそのポリヌクレオチドに結合され得、その脱メチル化エンハンサードメインは、第2のPBS配列に結合される第2のPUFドメインを通じてそのポリヌクレオチドに結合され得る。その第1のおよび第2のPBS配列は、異なっていてもよいし、同じであってもよい。ある種の実施形態において、その1またはこれより多くのPBS配列(例えば、第1のまたは第2のPBS配列)は、長さ8ヌクレオチドを含む。ある種の実施形態において、その1またはこれより多くのPBS配列(例えば、第1のまたは第2のPBS配列)は、同一である。ある種の実施形態において、そのポリヌクレオチドは、1~50個のPBS配列を含む。ある種の実施形態において、1またはこれより多くのPBS配列(例えば、第1のまたは第2のPBS配列)は、配列番号1のヌクレオチド配列を含む。国際出願PCT/US2016/021491で開示され、WO2016148994 A8(これは、その全体においておよび全ての目的のために参考として援用される)として公開されるPBS配列(例えば、第1のまたは第2のPBS配列)のうちのいずれか一方は、本明細書で提供される組成物および方法のために企図される。
【0084】
ある種の実施形態において、1またはこれより多くのPBS配列(例えば、第1のまたは第2のPBS配列)の各々は、8ヌクレオチドを有する。1つの例示的なPBS配列は、配列番号8の配列(5’-UGUAUGUA-3’)を有し得、これは、PUFドメインPUF(3-2)によって結合され得る。別の例示的なPBSは、配列番号9の配列(5’-UUGAUAUA-3’)を有し得、これは、PUFドメインPUF(6-2/7-2)によって結合され得る。さらなるPBS配列およびその相当するPUFドメインは、国際出願PCT/US2016/021491に記載され、WO2016148994 A8(これは、その全体においておよび全ての目的のために参考として援用される)として公開される。
【0085】
本発明のポリヌクレオチドは、PBS配列の1より多くのコピーを有し得る。ある種の実施形態において、そのポリヌクレオチドは、1コピー、2コピー、3コピー、4コピー、5コピー、10コピー、15コピー、20コピー、25コピー、30コピー、35コピー、40コピー、45コピー、46コピー、47コピー、48コピー、49コピー、または50コピーのPBS配列(例えば、5コピー、6コピー、7コピー、8コピー、9コピー、10コピー、11コピー、12コピー、13コピー、14コピー、または15コピーのPBS配列)を含む。ある種の実施形態において、そのPBS配列コピー数の範囲は、L~H(ここでLは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、または40のうちのいずれか1つであり、そしてここでHは、HがLより大きい限りにおいて、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、80、90、または100のうちのいずれか1つである)。各PBS配列は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0086】
ある種の実施形態において、そのポリヌクレオチドは、1コピー、2コピー、3コピー、4コピー、5コピー、10コピー、15コピー、20コピー、25コピー、30コピー、35コピー、40コピー、45コピー、46コピー、47コピー、48コピー、49コピー、もしくは50コピーの、または1~50コピー、2~45コピー、3~40コピー、5~35コピー、5~10コピー、10~20コピーの同一または異なるPBS配列を含む。
【0087】
ある種の実施形態において、そのポリヌクレオチドは、5~15コピーのPBS配列、または5~14コピー、5~13コピー、5~12コピー、5~11コピー、5~10コピー、もしくは5~9コピーのPBS配列を含む。
【0088】
ある種の実施形態において、gRNA-PBS配列の量および/またはトランスフェクトもしくは発現されるタンパク質結合体(メチル化または脱メチル化タンパク質結合体)の量は、PBS/PUFドメイン結合を最大化するように調節される。例えば、これは、より強いプロモーターによってPUFドメインの発現を増大させるか、または誘導性プロモーター(例えば、Dox誘導性プロモーター)を使用することによって、達成され得る。
【0089】
ある種の実施形態において、PBS配列および/またはスペーサー配列の間の間隔は、システム効率を改善するために最適化される。例えば、間隔の最適化は、特定のタンパク質結合体(メチル化または脱メチル化タンパク質結合体)の影響を受け得、個々のタンパク質として働くタンパク質結合体(メチル化または脱メチル化タンパク質結合体)と、機能するために十分近くに配置される必要があり得るそれらタンパク質結合体(メチル化または脱メチル化タンパク質結合体)(例えば、タンパク質複合体)との間で異なり得る。
【0090】
ある種の実施形態において、1またはこれより多くのスペーサー領域は、2つの隣接するPBS配列を分離する。そのスペーサー領域は、3ヌクレオチド~100ヌクレオチドの長さを有し得る。例えば、そのスペーサーは、3ヌクレオチド(nt)~90nt、3ヌクレオチド(nt)~80nt、3ヌクレオチド(nt)~70nt、3ヌクレオチド(nt)~60nt、3ヌクレオチド(nt)~50nt、3ヌクレオチド(nt)~40nt、3ヌクレオチド(nt)~30nt、3ヌクレオチド(nt)~20ntまたは3ヌクレオチド(nt)~10ntの長さを有し得る。例えば、そのスペーサーは、3nt~5nt、5nt~10nt、10nt~15nt、15nt~20nt、20nt~25nt、25nt~30nt、30nt~35nt、35nt~40nt、40nt~50nt、50nt~60nt、60nt~70nt、70nt~80nt、80nt~90nt、または90nt~100ntの長さを有し得る。いくつかの実施形態において、そのスペーサーは、4ntである。
【0091】
ある種の実施形態において、PBS配列は、配列番号1、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、または配列番号27の配列を含む。ある種の実施形態において、PBS配列は、配列番号1、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、または配列番号27の配列である。
【0092】
ある種の実施形態において、第1のまたは第2のPBS配列は、長さ8ヌクレオチドを含む。ある種の実施形態において、第1のまたは第2のPBS配列は、配列番号1のヌクレオチド配列を含む。
【0093】
タンパク質結合体
PUFドメイン
PUFタンパク質(後にDrosophila PumilioおよびC. elegans fern-3結合因子と名付けられた)は、mRNA安定性および翻訳の媒介に関与することが公知である。これらのタンパク質は、PUFドメインとして公知の特有のRNA結合ドメインを含む。そのRNA結合PUFドメイン(例えば、ヒトPumilio 1タンパク質(本明細書でPUMともいわれる)のもの)は、アンチパラレル様式で連続する塩基を結合する8回反復を含み(各反復は、PUFモチーフまたはPUF反復と称される)、各反復は、単一の塩基を認識する-すなわち、PUF反復R1~R8は、それぞれ、ヌクレオチドN8~N1を認識する。例えば、PUMは、8個の縦列反復から構成され、各反復は、αヘリックスから構成される密に充填されたドメインへと折りたたまれる34アミノ酸からなる。
【0094】
本明細書で提供されその実施形態を含む複合体は、脱メチル化タンパク質結合体(例えば、脱メチル化タンパク質結合体、脱メチル化エンハンサー結合体)を含み、その脱メチル化タンパク質結合体は、それぞれ、(i)脱メチル化ドメインおよび脱メチル化エンハンサードメインに作動可能に連結されたPUFドメイン、または(ii)脱メチル化ドメインに作動可能に連結された第1のPUFドメインおよび脱メチル化エンハンサードメインに作動可能に連結された第2のPUFドメインを含む。そのタンパク質結合体が脱メチル化結合体である場合、その脱メチル化ドメインは、PUFドメインのC末端に作動可能に連結されて、タンパク質結合体を形成する。その脱メチル化エンハンサードメインは、PUFドメインのC末端に、PUFドメインのN末端に連結され得るか、またはその脱メチル化エンハンサードメインは、別個のPUFドメイン(すなわち、脱メチル化ドメインに連結されていないPUFドメイン)に連結されたポリヌクレオチド(例えば、gRNA)に結合し得る。脱メチル化エンハンサードメインおよび脱メチル化ドメインは、別個にポリヌクレオチドを結合する場合、その脱メチル化ドメインは、脱メチル化タンパク質結合体の一部を形成し、第1のPUFドメインに連結され、その脱メチル化エンハンサードメインは、脱メチル化エンハンサータンパク質結合体の一部を形成し、第2のPUFドメインに連結される。その脱メチル化タンパク質結合体は、第1のPBS配列への第1のPUFドメインの結合を通じてそのポリヌクレオチドを結合し、その脱メチル化エンハンサータンパク質結合体は、第2のPBS配列への第2のPUFドメインの結合を通じてポリヌクレオチドに結合する。
【0095】
本明細書で使用される場合、用語「PUFドメイン(PUF domain)」とは、野生型または天然に存在するPUFドメイン、ならびに天然のもしくは既存のPUFドメイン(たとえば、プロトタイプヒトPumilio 1 PUFドメイン)に基づく/由来するPUFホモログドメインをいう。本発明のPUFドメインは、RNA配列(例えば、8マーRNA配列)に特異的に結合し、ここでPUFドメインとRNA配列との間の全体的な結合特異性は、PUFドメイン内の各PUFモチーフ/PUF反復とその相当する単一RNAヌクレオチドとの間の配列特異的結合によって定義される。
【0096】
また、本発明の範囲に含まれるのは、本発明のPUFドメインまたはその融合物の機能的改変体である。用語「機能的改変体(functional variant)、とは、本明細書で使用される場合、親PUFドメインと実質的またはかなりの配列同一性または類似性を有するPUFドメインであって、その機能的改変体は、その機能的改変体の中のPUFドメインが改変体であるそのPUFドメインの生物学的活性を保持するもの-例えば、結合親和性に関して類似の程度、同程度またはより高い程度まで、および/または親PUFドメインと実質的に同じもしくは同一の結合特異性で、標的RNAを認識する能力を保持するもの、に言及する。その機能的改変体PUFドメインは、例えば、親PUFドメインとアミノ酸配列において少なくとも30%、50%、75%、80%、90%、98%または98%超、同一であり得る。その機能的改変体は、例えば、少なくとも1個の保存的アミノ酸置換、例えば、PUFドメインの足場における保存的アミノ酸置換(すなわち、RNAと相互作用しないアミノ酸)を有する親PUFドメインのアミノ酸配列を含み得る。代わりにまたはさらに、その機能的改変体は、少なくとも1個の非保存的アミノ酸置換を有する親PUFドメインのアミノ酸配列を含み得る。この場合、非保存的アミノ酸置換が、その機能的改変体の生物学的活性に干渉しないかまたは阻害しないことは、好ましい。その非保存的アミノ酸置換は、その機能的改変体の生物学的活性を増強し得、その結果、その機能的改変体の生物学的活性は、その親PUFドメインと比較した場合に増大されるか、またはそのPUFドメインの安定性を所望のレベルへと(例えば、足場におけるアミノ酸の置換に起因して)質を変化させ得る。そのPUFドメインは、特定のアミノ酸配列または本明細書に記載される配列から本質的になり得、その結果、他の構成要素(例えば、他のアミノ酸)は、その機能的改変体の生物学的活性を実質的に変化させない。ある種の実施形態において、PUFドメインは、Pumilio相同性ドメイン(PU-HUD)である。特定の実施形態において、そのPU-HUDは、ヒトPumilio 1ドメインである。ある種の実施形態において、そのPUFドメインは、国際出願PCT/US2016/021491で開示され、WO2016148994 A8として公開される、国際出願PCT/US2011/040933で開示され、WO 2011/160052A2として公開される、およびSpassov & Jurecic(「Cloning and comparative sequence analysis of PUM1 and PUM2 genes, human members of the Pumilio family of RNA-binding proteins」, Gene, 299:195-204, October 2002)で開示されるPUFドメインのうちのいずれかいつの配列を有する(これらは、その全体においておよび全ての目的のために参考として援用される)。
【0097】
ある種の実施形態において、PUFドメインは、PUFaドメイン、PUFbドメイン、PUFcドメイン、あまたはPUFwドメインを含む。ある種の実施形態において、そのPUFaドメインは、配列番号2のアミノ酸配列を有する。ある種の実施形態において、そのPUFbドメインは、配列番号3のアミノ酸配列を有する。ある種の実施形態において、そのPUFcドメインは、配列番号4のアミノ酸配列を有する。ある種の実施形態において、そのPUFwドメインは、配列番号5のアミノ酸配列を有する。ある種の実施形態において、第1のPUFドメインは、PUFaドメインである。ある種の実施形態において、そのPUFaドメインは、配列番号2の配列を有する。ある種の実施形態において、第2のPUFドメインは、PUFcドメインである。ある種の実施形態において、そのPUFcドメインは、配列番号4の配列を有する。
【0098】
ある種の実施形態において、その第1のまたは第2のPUFドメインは、PUFaドメイン、PUFbドメイン、PUFcドメイン、またはPUFwドメインを含む。ある種の実施形態において、その第1のまたは第2のPUFaドメインは、配列番号2のアミノ酸配列を有する。ある種の実施形態において、その第1のまたは第2のPUFbドメインは、配列番号3のアミノ酸配列を有する。ある種の実施形態において、その第1のまたは第2のPUFcドメインは、配列番号4のアミノ酸配列を有する。ある種の実施形態において、第1のまたは第2のPUFwドメインは、配列番号5のアミノ酸配列を有する。
【0099】
本発明のポリヌクレオチドは、1またはこれより多くの縦列配列を含み、これらの各々は、特定のPUFドメイン(以下)によって特異的に認識および結合され得る。PUFドメインは、PUFドメインの個々のPUFモチーフとこれらが認識する単一RNAヌクレオチドとの間のヌクレオチド特異的相互作用に基づいて実質的に任意のPBS配列に結合するように操作され得るので、そのPBS配列は、それらの相当するPUFドメインを結合する任意のデザインされた配列であり得る。
【0100】
ある種の実施形態において、本発明のPBSは、8マーのヌクレオチド長を有する。他の実施形態において、本発明のPBSは、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16またはこれより多くのRNAヌクレオチドを有する。ある種の実施形態において、本発明のPBSは、配列番号10の配列(5’-UGUAUAUA-3’)を有し、wtヒトPumilio 1 PUFドメインを結合する。
【0101】
ある種の実施形態において、本発明のPBS配列は、配列番号8の配列(5’-UGUAUGUA-3’)を有し、PUFドメインPUF(3-2)を結合する。
【0102】
ある種の実施形態において、本発明のPBS配列は、配列番号9の配列(5’-UUGAUAUA-3’)を有し、PUFドメインPUF(6-2/7-2)を結合する。
【0103】
ある種の実施形態において、本発明のPBS配列は、配列番号11の配列(5’-UGGAUAUA-3’)を有し、PUFドメインPUF(6-2)を結合する。
【0104】
ある種の実施形態において、本発明のPBS配列は、配列番号12の配列(5’-UUUAUAUA-3’)を有し、PUFドメインPUF(7-2)を結合する。
【0105】
ある種の実施形態において、本発明のPBS配列は、配列番号13の配列(5’-UGUGUGUG-3’)を有し、PUFドメインPUF531を結合する。
【0106】
ある種の実施形態において、本発明のPBS配列は、配列番号14の配列(5’-UGUAUAUG-3’)を有し、PUFドメインPUF(1-1)を結合する。
【0107】
ある種の実施形態において、本発明のPBS配列は、配列番号12の配列(5’-UUUAUAUA-3’)または配列番号15の配列(5’-UAUAUAUA-3’)を有し、PUFドメインPUF(7-1)を結合する。
【0108】
ある種の実施形態において、本発明のPBS配列は、配列番号16の配列(5’-UGUAUUUA-3’)を有し、PUFドメインPUF(3-1)を結合する。
【0109】
ある種の実施形態において、本発明のPBS配列は、配列番号17の配列(5’-UUUAUUUA-3’)を有し、PUFドメインPUF(7-2/3-1)を結合する。
【0110】
実施形態において、そのPUFドメインPUF(3-2)は、配列番号18の配列を有する。ある種の実施形態において、そのPUFドメインPUF(6-2/7-2)は、配列番号19の配列を有する。ある種の実施形態において、そのPUFドメインPUF531は、配列番号22の配列を有する。ある種の実施形態において、そのPUFドメインは、配列番号18、配列番号19、配列番号22、配列番号28、配列番号29、配列番号30または配列番号31の配列を含む。ある種の実施形態において、そのPUFドメインは、配列番号18、配列番号19、配列番号22、配列番号28、配列番号29、配列番号30または配列番号31の配列である。
【0111】
出願人は、65,536の8マーPBS配列およびその特定のPBS配列を結合し得るそれらの相当するPUFドメイン配列(以下を参照のこと)を作製した。出願人はまた、所定の8マーPBS配列を結合するその65,536の個々のPUFドメイン配列のうちのいずれかを検索するpythonスクリプトを作製した。例えば、8マー UUGAUGUA(配列番号27)に関して、1つの考えられるPUFドメイン配列は、配列番号28:
【化1】
であり得る。
【0112】
PUF(3-2) 配列番号18
【化2】
【0113】
PUF(3-2)(配列番号18)は、PUF反復3において2つの点変異(C935S/Q939E)を有し、NREの6位において変異を有するコグネートRNA(A6G; 配列番号27(5’-UGUAUGUA-3’))を認識する。
【0114】
PUF(6-2/7-2) 配列番号19
【化3】
【0115】
PUF(6-2/7-2)(配列番号19)は、反復6および7において、それぞれ、二重の点変異(N1043S/Q1047EおよびS1079N/E1083Q)を有し、NREの2位および3位において2つの変異を有するコグネートRNA配列(GU/UG; 配列番号9(5’-UUGAUAUA-3’))を認識する。
【0116】
関連PUF(6-2)は、反復6において点変異(N1043S/Q1047E)を有し、NREの3位において変異を有するコグネートRNA配列(配列番号11(5’-UGGAUAUA-3’))を認識する。
【0117】
別の関連PUF(7-2)は、反復7において点変異(S1079N/E1083Q)を有し、NREの2位において変異を有するコグネートRNA配列(配列番号12(5’-UUUAUAUA-3’))を認識する。
【0118】
PUF531 配列番号22
【化4-1】
【化4-2】
【0119】
そのPUFドメイン PUF531(配列番号22)は、野生型PUF反復1、3および5において変異(Q867E/Q939E/C935S/Q1011E/C1007S)を有し、配列番号13の配列(5’-UGUGUGUG-3’)を認識する。そのPUF531は、野生型PUF RNAと比較して、その新たな標的配列を非常に高い親和性で認識し得る。
【0120】
別の改変されたPUFドメイン PUF(1-1)は、PUF反復1において1つの点変異(Q867E)を有し、NREの8位において変異を有するコグネートRNA(A8G; 配列番号14(5’-UGUAUAUG-3’))を認識する。
【0121】
さらに別の改変されたPUFドメインPUF(7-1)は、PUF反復7において1つの点変異(E1083Q)を有し、NREの2位において変異を有するコグネートRNA(G2U; 配列番号12(5’-UUUAUAUA-3’);またはG2A; 配列番号15(5’-UAUAUAUA-3’))を認識する。
【0122】
なお別の改変されたPUFドメインPUF(3-1)は、PUF反復3において1つの点変異(C935N)を有し、NREの6位において変異を有するコグネートRNA(A6U; 配列番号16(5’-UGUAUUUA-3’))を認識する。
【0123】
さらに改変されたPUF(7-2/3-1)は、反復7および3において点変異(C935N/S1079N/E1083Q)を有し、NREの2位および6位において変異を有するコグネートRNA配列(配列番号17(5’-UUUAUUUA-3’))を認識する。
【0124】
実施形態において、PUFドメインは、配列番号29の配列を有する。
【化5-1】
【化5-2】
【0125】
配列番号30
【化6-1】
【化6-2】
【0126】
配列番号31
【化7-1】
【化7-2】
【0127】
本明細書で提供される脱メチル化ドメイン(例えば、TET1ドメイン)、またはメチル化ドメイン(例えば、Dnmt3aドメイン)もしくは脱メチル化エンハンサードメイン(例えば、NEIL2ドメイン、GADD45Aドメイン)は、本明細書で提供されるとおりのその実施形態を含むPUFドメインに連結され得る。あるいは、本明細書で提供される脱メチル化ドメイン(例えば、TET1ドメイン)、またはメチル化ドメイン(例えば、Dnmt3aドメイン)もしくは脱メチル化エンハンサードメイン(例えば、NEIL2ドメイン、GADD45Aドメイン)は、ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ(例えば、dCas9)に連結され得る。本明細書で提供される脱メチル化ドメインまたは脱メチル化エンハンサードメインが、ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ(例えば、dCas9)に直接連結(融合)される場合、化学的リンカーは、その脱メチル化ドメインまたはメチル化ドメインを、ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼに連結し得る。ある種の実施形態において、その化学的リンカーは、ペプチドリンカーである。ある種の実施形態において、その化学的リンカーは、ポリグリシンリンカーである。ある種の実施形態において、脱メチル化ドメインまたは脱メチル化エンハンサードメインは、ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ(例えば、dCas9)のC末端に作動可能に連結される。ある種の実施形態において、脱メチル化ドメインまたは脱メチル化エンハンサードメインは、ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ(例えば、dCas9)のN末端に連結される。
【0128】
本明細書で提供される脱メチル化ドメインまたは脱メチル化エンハンサードメインが、ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ(例えば、dCas9)に直接連結(融合)される場合、その脱メチル化ドメインまたは脱メチル化エンハンサードメインおよびそのヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ(例えば、dCas9)は、dCas9-脱メチル化ドメイン結合体またはdCas9-脱メチル化エンハンサードメイン結合体を形成する。ある種の実施形態において、dCas9-脱メチル化ドメイン(例えば、TET1ドメイン)結合体は、配列番号52の配列を有する。ある種の実施形態において、dCas9-脱メチル化ドメイン結合体は、配列番号53の配列を有する。ある種の実施形態において、dCas9-メチル化(例えば、Dnmt3a)ドメイン結合体は、配列番号59の配列を有する。ある種の実施形態において、dCas9-メチル化ドメイン結合体は、配列番号60の配列を有する。ある種の実施形態において、dCas9-メチル化ドメイン結合体は、配列番号61の配列を有する。ある種の実施形態において、dCas9-メチル化ドメイン結合体は、配列番号62の配列を有する。ある種の実施形態において、dCas9-メチル化ドメイン結合体は、配列番号63の配列を有する。ある種の実施形態において、dCas9-メチル化ドメイン結合体は、配列番号64の配列を有する。
【0129】
本明細書で提供される複合体は、PUFドメインまたはヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ(例えば、dCas9タンパク質)に作動可能に連結されたさらなる生体活性ドメインを含み得る。従って、本発明によれば、異種ポリペプチド(「融合パートナー(fusion partner)」ともいわれる)は、本発明のポリヌクレオチド上のPBSのうちの少なくとも1つに結合する、本明細書で提供されその実施形態を含む脱メチル化または脱メチル化エンハンサータンパク質結合体のPUFドメインに融合され得る。さらに、所望される場合、同じまたは異なる融合パートナーがまた、必要に応じて、ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ(例えば、ヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質またはdCas9タンパク質)に融合され得る。従って、本明細書で記載されるように、別段放棄されなければ、その融合パートナーのうちのいずれかが、本明細書で提供されその実施形態を含む脱メチル化または脱メチル化エンハンサータンパク質結合体のPUFドメインに融合され、必要に応じて、ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ(例えば、ヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質またはdCas9タンパク質)に融合されることが意図される。PUFドメインに融合される融合パートナーは、ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ(例えば、ヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質またはdCas9タンパク質)(以下)に融合される選択肢的な融合パートナーと同じであってもことなっていてもよい。ある種の実施形態において、その融合パートナーは、生体活性部分である。ある種の実施形態において、その融合パートナーは、検出可能な部分または治療部分である。
【0130】
その融合パートナーは、活性(例えば、酵素活性)を示し得る。適切な融合パートナーとしては、メチルトランスフェラーゼ活性、デメチラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、デアセチラーゼ活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性、脱ユビキチン化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、SUMO化活性、脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リボシル化活性、ミリストイル化活性、または脱ミリストイル化活性を提供するポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されず、そのうちのいずれかは、DNAを直接改変する(例えば、DNAのメチル化)か、またはDNA会合ポリペプチド(例えば、ヒストンまたはDNA結合タンパク質)を改変することに指向され得る。さらなる融合パートナーとしては、種々の蛍光タンパク質、ポリペプチド、改変体、またはこれらの機能的ドメイン(例えば、GFP、Superfolder GFP、EGFP、BFP、EBFP、EBFP2、Azurite、mKalama1、CFP、ECFP、Cerulean、CyPet、mTurquoise2、YFP、Citrine、Venus、Ypet、BFPms1、roGFP)、およびビリルビン誘導性蛍光タンパク質(例えば、UnaG、dsRed、eqFP611、Dronpa、TagRFPs、KFP、EosFP、Dendra、IrisFPなど))が挙げられ得る。
【0131】
国際出願PCT/US2016/021491に記載され、WO2016148994 A8(これは、参考として全ての目的のために援用される)として公開される融合パートナーのうちのいずれかは、本発明のために企図される。
【0132】
実施形態において、その融合パートナーは、脱メチル化ドメインである。ある種の実施形態において、その融合パートナーは、脱メチル化エンハンサードメインである。
【0133】
本発明のPUFドメインのうちのいずれかは、例えば、Golden Gate Assemblyキット(Abilら, Journal of Biological Engineering 8:7, 2014を参照のこと)(これは、Addgene(Kit # 1000000051)において入手可能である)を使用して作製され得る。
【0134】
脱メチル化および脱メチル化エンハンサードメイン
細胞において標的遺伝子座を脱メチル化するために有用な脱メチル化タンパク質結合体および脱メチル化エンハンサー結合体が、本明細書で提供される。その脱メチル化タンパク質結合体は、本明細書で記載されるPUFドメイン、TET脱メチル化ドメイン(例えば、TET1ドメイン)および脱メチル化エンハンサードメイン(例えば、NEIL2ドメインまたはGADD45Aドメイン)を含む。あるいは、本明細書で提供される複合体は、第1のPUFドメインおよび脱メチル化ドメイン(例えば、TET1ドメイン)を含む脱メチル化タンパク質結合体、ならびに第2のPUFドメインおよび脱メチル化エンハンサードメイン(例えば、NEIL2ドメインまたはGADD45Aドメイン)を含む脱メチル化エンハンサー結合体を含む。
【0135】
ある種の実施形態において、その脱メチル化エンハンサードメインは、PUFドメインのN末端に作動可能に連結される。ある種の実施形態において、その脱メチル化エンハンサードメインは、PUFドメインのC末端に作動可能に連結される。ある種の実施形態において、その脱メチル化エンハンサードメインは、第2のPUFドメインのN末端に作動可能に連結される。ある種の実施形態において、その脱メチル化エンハンサードメインは、第2のPUFドメインのC末端に作動可能に連結される。
【0136】
ある種の実施形態において、その脱メチル化エンハンサードメインは、Growth Arrest and DNA-Damage-inducible Alpha(GADD45A)ドメインである。ある種の実施形態において、そのGADD45ドメインは、配列番号85のアミノ酸配列を有する。ある種の実施形態において、その脱メチル化エンハンサードメインは、NEIL2ドメインである。ある種の実施形態において、そのNEIL2ドメインは、配列番号86のアミノ酸配列を有する。ある種の実施形態において、その脱メチル化エンハンサードメインは、NEIL1ドメインではない。ある種の実施形態において、その脱メチル化エンハンサードメインは、NEIL3ドメインではない。
【0137】
本明細書で提供される場合の「脱メチル化エンハンサードメイン(demethylation enhancer domain)」、「脱メチル化エンハンサータンパク質(demethylation enhancer protein)」または「脱メチル化エンハンサー酵素(demethylation enhancer enzyme)」とは、アクチベーター(例えば、本明細書で記載される脱メチル化エンハンサードメイン)の非存在下での脱メチル化酵素または脱メチル化ドメインの活性または機能と比較して、脱メチル化酵素または脱メチル化ドメインの活性または機能に正の影響を及ぼし(増大させ)得る、タンパク質、タンパク質ドメインまたはタンパク質部分に言及する。従って、ある種の実施形態において、その脱メチル化エンハンサードメインは、少なくとも部分的に、部分的にまたは完全に、刺激を増大させ得るか、活性化を増大もしくは可能にし得るか、または脱メチル化酵素を活性化し得る。活性(活性化)における増大の量は、脱メチル化エンハンサードメインの非存在下でのコントロールとの比較において、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%または100%超であり得る。ある種の実施形態において、その活性は、脱メチル化エンハンサードメインの非存在下での活性の1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、または10倍超である。
【0138】
本明細書で提供される結合体に関して、DNA脱メチル化ドメインは、Ten-Eleven translocation 1(TET1)ドメインを含み得る。ある種の実施形態において、そのDNA脱メチル化ドメインは、Ten-Eleven translocation 2(TET2)ドメインを含む。ある種の実施形態において、そのDNA脱メチル化ドメインは、Ten-Eleven translocation 3(TET3)ドメインを含む。ある種の実施形態において、そのTET1ドメインは、配列番号51の配列を含む。ある種の実施形態において、そのTET1ドメインは、配列番号51の配列である。
【0139】
ある種の実施形態において、そのTETタンパク質は、TETメチルシトシンジオキシゲナーゼである。TETメチルシトシンジオキシゲナーゼは、5mCを非メチル化シトシンで置き換えることをもたらす最初のかつ重要な工程を触媒する。
【0140】
TET1デメチラーゼ触媒ドメイン(CD)がPUFドメインのC末端に融合された場合に、その観察されたデメチラーゼ活性が、TET1デメチラーゼ触媒ドメイン(CD)がPUFドメインのN末端に融合された場合と比較して、驚くほどより高いことを発見した。従って、ある種の実施形態において、その脱メチル化タンパク質結合体(PUFドメイン融合タンパク質)は、PUFドメインのC末端に融合されたTET1機能的ドメインを含む。ある種の実施形態において、そのPUFドメインは、PUFaである。ある種の実施形態において、標的遺伝子の転写は、10倍超、15倍、20倍、25倍、30倍、50倍、75倍、100倍、125倍、135倍、150倍、200倍またはこれより高く増大される。ある種の実施形態において、標的遺伝子は、SOXである。
【0141】
ある種の実施形態において、標的遺伝子は、2またはこれより多くの標的ポリヌクレオチド配列を含む。ある種の実施形態において、上記同じまたは異なるPUFドメインのうちの少なくとも2つが、デメチラーゼドメインまたはデメチラーゼエンハンサードメインに融合される。
【0142】
実施形態において、脱メチル化タンパク質結合体は、配列番号54または配列番号55の配列を含む。ある種の実施形態において、脱メチル化タンパク質結合体は、配列番号54または配列番号55の配列である。
【0143】
実施形態において、脱メチル化タンパク質結合体は、配列番号104の配列を含む。ある種の実施形態において、脱メチル化タンパク質結合体は、配列番号104の配列である。ある種の実施形態において、脱メチル化タンパク質結合体は、配列番号105の配列を含む。ある種の実施形態において、脱メチル化タンパク質結合体は、配列番号105の配列である。
【0144】
実施形態において、脱メチル化エンハンサー結合体は、配列番号106の配列を含む。ある種の実施形態において、脱メチル化エンハンサー結合体は、配列番号106の配列である。ある種の実施形態において、脱メチル化エンハンサー結合体は、配列番号107の配列を含む。ある種の実施形態において、脱メチル化エンハンサー結合体は、配列番号107の配列である。
【0145】
実施形態において、脱メチル化エンハンサー結合体は、配列番号108の配列を含む。ある種の実施形態において、脱メチル化エンハンサー結合体は、配列番号108の配列である。ある種の実施形態において、脱メチル化エンハンサー結合体は、配列番号109の配列を含む。ある種の実施形態において、脱メチル化エンハンサー結合体は、配列番号109の配列である。
【0146】
さらなる複合体
本発明の別の局面は、本発明のポリヌクレオチドのうちのいずれか1つ、および改変されたCas9タンパク質、例えば、ヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質またはdCas9タンパク質を含む複合体を提供する。ある種の実施形態において、その複合体は、ヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質を含む。
【0147】
ある種の実施形態において、その複合体は、1もしくはこれより多くのPBSに結合した1もしくはこれより多くのPUFドメインまたはその融合物をさらに含み得る。ある種の実施形態において、PUFドメインの各々は、エフェクタードメインに融合される。ある種の実施形態において、PUFドメインのうちの少なくとも2つは、異なるエフェクタードメインに融合される。
【0148】
ある種の実施形態において、ヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質またはdCas9タンパク質)、PUFドメイン、および/またはエフェクタードメインは、核局在化シグナル(NLS)をさらに含む。
【0149】
ある種の実施形態において、その複合体は、ポリヌクレオチドのDNA標的化配列を通じて標的ポリヌクレオチド配列に結合される。
【0150】
ある種の実施形態において、エフェクタードメインは、TET(Ten-Eleven Translocation)タンパク質、またはデメチラーゼ触媒活性を保持するそのフラグメントである。例えば、そのTETタンパク質は、TETメチルシトシンジオキシゲナーゼであり得る。
【0151】
ある種の実施形態において、PUFドメイン融合タンパク質は、PUFドメイン(例えば、PUFa)のC末端に融合されたTET1機能的ドメインを含む。
【0152】
ある種の実施形態において、PUFドメイン融合タンパク質は、PUFドメイン(例えば、PUFa)のN末端に融合されたDnmt機能的ドメインを含む。
【0153】
細胞
別の局面において、本明細書で提供されるとおりのその実施形態を含む脱メチル化複合体を含む細胞が、提供される。ある種の実施形態において、その細胞は、哺乳動物細胞である。ある種の実施形態において、その細胞は、がん細胞である。ある種の実施形態において、その細胞は、がん細胞であり、そして/またはその標的遺伝子は、過剰メチル化されたプロモーター領域を有するhMLH1である。例えば、その標的ポリヌクレオチド配列は、hMLH1の過剰メチル化されたプロモーター領域内にあってもよく、その標的ポリヌクレオチド配列のメチル化は、がん細胞におけるhMLH1のダウンレギュレーションと関連する。
【0154】
ある種の実施形態において、そのがん細胞は、胃がん、食道がん、頭頚部扁平上皮がん(HNSCC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、および結腸直腸がん(例えば、HNPCC)に由来する。胃がんは、腸窩タイプ腫瘍(foveolar type tumor)、および高発病率のカシミール渓谷における胃がんを含み得る。
【0155】
本発明の別の局面は、本発明のベクター、ポリヌクレオチド、および複合体のうちのいずれかを含む宿主細胞を提供する。
【0156】
ある種の実施形態において、その宿主細胞は、ヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質またはdCas9タンパク質)をコードする第2のベクターをさらに含む。ある種の実施形態において、その第2のベクターは、ヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質またはdCas9タンパク質)に融合された脱メチル化(エフェクター)ドメインをさらにコードする。そのCas9タンパク質(例えば、wt、ニッカーゼ、またはdCas9タンパク質)の発現は、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターの制御下にあり得る。
【0157】
ある種の実施形態において、その宿主細胞は、1またはこれより多くのPUFドメイン(各々は、脱メチル化(エフェクター)ドメインに縮合される)をコードする第3のベクターをさらに含み得る。その1またはこれより多くのPUFドメインの発現は、独立して、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターの制御下にあり得る。
【0158】
ある種の実施形態において、その第2のベクターは、ヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質またはdCas9タンパク質)またはメチル化もしくは脱メチル化(エフェクター)ドメインに融合された核局在化シグナル(NLS)をさらにコードし得、そして/あるいはその第3のベクターは、PUFドメインまたはメチル化もしくは脱メチル化(エフェクター)ドメインに融合された核局在化シグナル(NLS)をさらにコードし得る。
【0159】
ある種の実施形態において、異なるベクターによってコードされ得る配列は、同じベクター上にあってもよい。例えば、ある種の実施形態において、その第2のベクターは、そのベクターと同じであってもよく、そして/またはその第3のベクターは、そのベクターもしくはその第2のベクターと同じであってもよい。
【0160】
その宿主細胞は、生きている動物の中にあってもよいし、培養細胞であってもよい。
【0161】
方法
本明細書で提供される方法および複合体は、とりわけ、脱メチル化活性の多面的な送達プラットフォームを提供する。本明細書で提供される方法および複合体を使用して、脱メチル化ドメインおよび脱メチル化エンハンサードメイン(例えば、脱メチル化酵素および脱メチル化エンハンサーまたはこれらの機能的フラグメント)を含む脱メチル化タンパク質結合体、または脱メチル化タンパク質結合体および脱メチル化エンハンサー結合体の組み合わせは、逐次的にまたは同時に細胞に送達され得る。本明細書で提供される脱メチル化タンパク質結合体、または脱メチル化タンパク質結合体および脱メチル化エンハンサー結合体の組み合わせの細胞への送達は、標的化された遺伝子座のメチル化状態を微細に調整することを可能にする。本発明はさらに、複数の脱メチル化タンパク質結合体の送達を提供し、ここでその結合体は、同じであっても異なっていてもよい。複数の脱メチル化タンパク質結合体が細胞に送達される場合、その結合体は、複数の結合体(各々は、PUFドメインに連結される)の一部を形成し得、そして/またはそれらは、ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素(例えば、dCas9)に直接融合され得る。さらに、およびガイドRNAの標的遺伝子特異性によって、本発明は、細胞における異なる標的部位へと増強された脱メチル化活性を同時に送達することを可能にする。脱メチル化ドメイン(例えば、TET1ドメイン)と、常に特異的なエンハンサータンパク質(例えば、GADD45AまたはNEIL2)とを対形成することに起因して、本明細書で提供される複合体を使用する脱メチル化が、例えば、エンハンサードメインの非存在下での脱メチル化と比較して、または脱メチル化活性をヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素(例えば、dCas9)に直接連結することと比較して、より効率的であることを示したのは、出願人らが初めてであった。
【0162】
本明細書で提供されその実施形態を含む脱メチル化のための方法に関して、上記で記載される複合体のエレメントのうちのいずれかが、使用され得る。従って、ある種の実施形態において、その方法は、本明細書で提供されるとおりのその実施形態を含むヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素(例えば、dCas9)をコードする第1のポリヌクレオチドを送達する工程を包含する。従って、その方法は、第2のポリヌクレオチド(これは、本明細書で記載されその実施形態を含むポリヌクレオチドであり、DNA標的化配列、結合配列および本明細書で提供される1またはこれより多くのPUF結合部位(PBS)配列をコードする)を送達する工程を包含し得る。
【0163】
別の局面において、哺乳動物細胞において標的核酸配列を脱メチル化するための方法が提供される。上記方法は、
(a)脱メチル化を要する標的核酸を含む哺乳動物細胞を提供する工程;
(b)上記哺乳動物細胞に、ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素をコードする第1のポリヌクレオチドを送達する工程;
(c)上記哺乳動物細胞に、以下:
(i)標的ポリヌクレオチド配列に相補的なDNA標的化配列;
(ii)上記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素に対する結合配列;および
(iii)1またはこれより多くのPUF結合部位(PBS)配列、
を含む第2のポリヌクレオチドを送達する工程であって、ここで上記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、上記結合配列を介して上記第2のポリヌクレオチドに結合される工程;
(d)上記哺乳動物細胞に、以下:
(i)C末端を有するPUFドメイン;
(ii)N末端およびC末端を有する脱メチル化エンハンサードメインであって、ここで上記脱メチル化エンハンサードメインのN末端は、PUFドメインのC末端に作動可能に連結される脱メチル化エンハンサードメイン;ならびに
(iii)上記脱メチル化エンハンサードメインのC末端に作動可能に連結されたTET脱メチル化ドメイン、
を含む脱メチル化タンパク質結合体をコードする第3のポリヌクレオチドを送達する工程であって、それによって、上記送達された脱メチル化タンパク質結合体は、上記細胞において上記標的核酸配列を脱メチル化する工程、
を包含する。
【0164】
一局面において、脱メチル化複合体が提供される。上記脱メチル化複合体は、
(a)以下:
(i)ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素;および
(ii)以下を含むポリヌクレオチド:
(1)標的ポリヌクレオチド配列に相補的なDNA標的化配列;
(2)上記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素に対する結合配列;
(3)第1のPUF結合部位(PBS)配列;および
(4)第2のPUF結合部位(PBS)配列、
を含むリポ核タンパク質であって、ここで上記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、上記結合配列を介して上記ポリヌクレオチドに結合されるリボ核タンパク質複合体;
(b)以下:
(i)C末端を有する第1のPUFドメイン、および
(ii)上記第1のPUFドメインのC末端に作動可能に連結されたTET脱メチル化ドメイン、
を含む脱メチル化タンパク質結合体であって、ここで上記脱メチル化タンパク質結合体は、上記第1のPBS配列に結合する上記第1のPUFドメインを介して上記リボ核タンパク質複合体に結合する脱メチル化タンパク質結合体;ならびに
(c)以下:
(i)第2のPUFドメイン;および
(ii)上記第2のPUFドメインに作動可能に連結された脱メチル化エンハンサードメイン、
を含む脱メチル化エンハンサー結合体であって、ここで上記脱メチル化エンハンサー結合体は、上記第2のPBS配列に結合する上記第2のPUFドメインを介して上記リボ核タンパク質複合体に結合して、脱メチル化複合体を形成する脱メチル化エンハンサー結合体、
を含む。
【0165】
別の局面において、哺乳動物細胞において標的核酸配列を脱メチル化するための方法が提供される。上記方法は、
(a)脱メチル化を要する標的核酸を含む哺乳動物細胞を提供する工程;
(b)上記哺乳動物細胞に、ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素をコードする第1のポリヌクレオチドを送達する工程;
(c)上記哺乳動物細胞に、以下:
(i)標的ポリヌクレオチド配列に相補的なDNA標的化配列;
(ii)上記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素に対する結合配列;
(iii)第1のPUF結合部位(PBS)配列、および
(iv)第2のPUF結合部位(PBS)配列、
を含む第2のポリヌクレオチドを送達する工程であって、ここで上記ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素は、上記結合配列を介して上記第2のポリヌクレオチドに結合される工程;
(d)上記哺乳動物細胞に、以下:
(i)第1のPUFドメイン;および
(ii)脱メチル化ドメインであって、上記脱メチル化ドメインは、上記第1のPUFドメインのC末端に作動可能に連結された脱メチル化ドメイン、
を含む脱メチル化タンパク質結合体をコードする第3のポリヌクレオチドを送達する工程;ならびに
(e)上記哺乳動物細胞に以下:
(i)第2のPUFドメイン;および
(ii)上記第2のPUFドメインに作動可能に連結された脱メチル化エンハンサードメイン、
を含む脱メチル化エンハンサー結合体をコードする第4のポリヌクレオチドを送達する工程であって、それによって上記送達された脱メチル化タンパク質結合体は、上記細胞において上記標的核酸配列を脱メチル化する工程、
を包含する。
【0166】
ある種の実施形態において、上記脱メチル化タンパク質結合体は、1またはこれより多くのPBS配列に結合するPUFドメインを介して上記リボ核タンパク質複合体に結合して、脱メチル化複合体を形成する。ある種の実施形態において、第1のポリヌクレオチドは、第1のベクター内に含まれる。ある種の実施形態において、第2のポリヌクレオチドは、第2のベクター内に含まれる。ある種の実施形態において、第3のポリヌクレオチドは、第3のベクター内に含まれる。ある種の実施形態において、その第1、第2または第3のベクターは、同じである。ある種の実施形態において、送達する工程は、トランスフェクションによって行われる。
【0167】
ある種の実施形態において、脱メチル化タンパク質結合体は、第1のPBS配列に結合する第1のPUFドメインを介してリボ核タンパク質複合体に結合する。ある種の実施形態において、脱メチル化エンハンサー結合体は、第2のPBS配列に結合する第2のPUFドメインを介してリボ核タンパク質複合体に結合する。ある種の実施形態において、脱メチル化エンハンサードメインは、第2のPUFドメインのN末端に作動可能に連結される。ある種の実施形態において、脱メチル化エンハンサードメインは、第2のPUFドメインのC末端に作動可能に連結される。ある種の実施形態において、第1のポリヌクレオチドは、第1のベクター内に含まれる。ある種の実施形態において、第2のポリヌクレオチドは、第2のベクター内に含まれる。ある種の実施形態において、第3のポリヌクレオチドは、第3のベクター内に含まれる。ある種の実施形態において、第4のポリヌクレオチドは、第4のベクター内に含まれる。ある種の実施形態において、その第1の、第2の、第3のまたは第4のベクターはいずれも、同じである。ある種の実施形態において、その送達する工程は、トランスフェクションによって行われる。
【0168】
ある種の実施形態において、本発明の方法は、複数のベクターまたはベクターのライブラリー(各々は、本発明のポリヌクレオチドをコードする)を利用し、ここでそのベクターのうちの2つは、そのコードされるポリヌクレオチドにおいて、それらそれぞれのDNA標的化配列、Cas9結合配列、および/またはコピー数、同一性(配列、結合特異性など)またはPBSの相対的な順序が異なる。関連する実施形態において、ベクターを使用する代わりに、非ベクターコード配列が使用される。
【0169】
ある種の実施形態において、その方法は、複数の本発明のベクターを細胞に導入する工程をさらに包含し、ここでそのベクターのうちの2つは、そのコードされたポリヌクレオチドにおいて、それらそれぞれのDNA標的化配列、Cas9結合配列、および/またはコピー数、同一性、もしくはPBSの相対的順序が異なる。関連する実施形態において、ベクターを使用する代わりに、非ベクターコード配列が使用される。
【0170】
処置方法
細胞において標的核酸を増強して脱メチル化するための方法は、とりわけ、異常なDNAメチル化に関連するかまたはこれによって引き起こされる疾患(例えば、がん)の処置のために使用され得る。がんにおけるシチジンデアミナーゼのエピジェネティック(DNAメチル化)および遺伝的(変異)作用の両方の役割、および広く行きわたった脱メチル化における考えられる役割が提唱されている。本発明は、がん細胞内の脱メチル化または脱メチル化状態の質を変化させることによって、がん疾患プロセスを改善/処置するにあたって実用的な適用を有する。本明細書で適用される方法および組成物を使用して、メチル化した遺伝子は、それらの発現をもたらし得る、インビボで脱メチル化の標的となり得る(メチル化は、大抵の場合、抑制的な改変である)。
【0171】
全てのがんではないにしても、大部分は、エピジェネティック変化(顕著なことには、腫瘍抑制遺伝子のメチル化およびサイレンシングを含む)を受ける。腫瘍抑制遺伝子の脱メチル化は、がん表現型を改善し得る。よって、脱メチル化をインビボで腫瘍抑制遺伝子に標的化するための方法は、がん治療に対する非常に有望な手段である。
【0172】
シチジンデアミナーゼ活性をがんにおける目的の遺伝子に標的化することとしては、例えば、シチジンデアミナーゼを腫瘍抑制因子DNA結合ドメイン(例えば、p53タンパク質のジンクフィンガーDNAコア結合領域)の融合が挙げられ得る。多くのがんでは、p53のDNA結合ドメインの変異が、形質転換に寄与し得ると考えられる。さらに、多くの腫瘍抑制遺伝子(p53標的を含む)のプロモーター領域は、がん細胞においてメチル化されている。
【0173】
本発明の分子および薬学的組成物は、それらの抗がん/抗腫瘍形成効果に関してインビトロおよびエキソビボアッセイを利用することによって評価され得る。1つの適切なアッセイでは、本発明の分子を発現する核酸ベクターは、がん細胞へとトランスフェクトされる。ベクター骨格のみ、またはベクターとシチジンデアミナーゼドメインが非機能的にされた(以下でより詳細に記載される)本発明の分子でトランスフェクトされたがん細胞株を含む適切なコントロールが確立される。本発明の分子でトランスフェクトされたがん細胞株にはあるが、コントロール細胞にはない誘導されたアポトーシスは、本発明の分子の抗がん効果を示す。
【0174】
別の局面において、必要性のある被験体においてがんを処置するための方法が提供される。その方法は、治療上有効な量の、本明細書で提供されるとおりのその実施形態を含む脱メチル化複合体またはメチル化複合体を被験体に投与し、それによって、その被験体においてがんを処置する工程を包含する。好ましい実施形態において、その方法は、治療上有効な量の、本明細書で提供されるとおりの脱メチル化複合体を被験体に投与する工程を包含する。
【0175】
別の局面において、薬学的組成物が提供される。その薬学的組成物は、治療上有効な量の、本明細書で提供されるとおりのその実施形態を含む脱メチル化複合体および薬学的に受容可能な賦形剤を含む。
【0176】
本明細書で提供される方法および組成物のさらなる適用は、発生中の遺伝子発現を調節することを包含する。例えば、部位特異的DNA結合ドメインの存在は、発生におけるまたは細胞周期の間の特定の時期に活性化される遺伝子の特定の部分セットの標的化された脱メチル化を可能にする。例えば、PUFドメインに融合される場合の(例えば、Oct4またはSOX-2)タンパク質のDNA結合ドメインは、多能性または幹細胞様表現型の促進に関連する細胞運命決定に関与する遺伝子に指向される脱メチル化活性を提供し得る。あるいは、脱メチル化ドメインは、PUF結合ドメインへのリンカーを介して連結され得る。必要に応じて利用され得るDNA結合ドメインとしては、Tボックス転写因子またはステロイドホルモンレセプターDNA結合ドメイン(例えば、RARおよびRXR DNA結合ドメイン)に由来するものが挙げられる。にもかかわらず、本発明の脱メチル化タンパク質結合体は、多能性遺伝子のプロモーターを脱メチル化し、分化の間に細胞のメチル化状態の質を変化させるために十分であり得る。
【0177】
さらなる方法
本発明の別の局面は、本発明の任意の方法に従って、がん細胞における標的遺伝子の転写および/またはメチル化状態を調節するための方法を提供し、ここでそのがん細胞は、異常なDNAメチル化と関連するかまたはこれによって特徴づけられる。
【0178】
本発明の関連する局面は、本発明の任意の方法に従って、患者においてがん細胞中の標的遺伝子の転写および/またはメチル化状態を調節するための方法を提供し、ここでそのがん細胞は、異常なDNAメチル化と関連するかまたはこれによって特徴づけられる。
【0179】
本発明の別の関連する局面は、標的遺伝子の異常なDNAメチル化(例えば、CpGメチル化)と関連する疾患または状態の処置の必要性のある患者を処置するための方法を提供し、上記方法は、その患者において標的遺伝子の転写および/またはメチル化状態を調節するために、その標的遺伝子付近またはその標的遺伝子において本発明の複合体の形成を可能にする工程を包含する。
【0180】
本発明の別の関連する局面は、標的遺伝子の異常なDNAメチル化(例えば、CpGメチル化)と関連する疾患または状態の処置の必要性のある患者を処置するための方法を提供し、上記方法は、本発明の方法のうちのいずれかに従って、その患者において標的遺伝子の転写および/またはメチル化状態を調節する工程を包含する。
【0181】
本発明の別の関連する局面は、標的遺伝子の異常なDNAメチル化(例えば、CpGメチル化)と関連する疾患または状態の処置の必要性のある患者を処置するための方法を提供し、上記方法は、その患者において標的遺伝子の転写および/またはメチル化状態を調節するために、その標的遺伝子付近またはその標的遺伝子において本発明の複合体の形成を可能にする工程を包含する。
【0182】
関連する局面において、本発明は、処置の必要性のある患者においてがんを処置するための方法を提供し、ここで上記がんは、hMLH1の異常なDNAメチル化と関連するかまたはこれによって特徴づけられ、上記方法は、本発明の方法のうちのいずれか1つに従って、その患者においてhMLH1の転写および/またはメチル化状態を調節する工程を包含する。例えば、ある種の実施形態において、PUFドメイン融合タンパク質は、PUFドメイン(例えば、PUFa)のC末端に融合されたTET1機能的ドメインを含み得る。ある種の実施形態において、hMLH1の過剰メチル化されたプロモーター領域のメチル化レベルは、低下される。ある種の実施形態において、hMLH1の転写/翻訳は、増大される。
【0183】
ある種の実施形態において、その標的遺伝子は、hMLH1である。
【0184】
ある種の実施形態において、その疾患は、がんである。ある種の実施形態において、その疾患は、インプリンティング障害である。ある種の実施形態において、その疾患は、神経学的疾患である。
【0185】
ある種の実施形態において、そのがんは、腫瘍抑制遺伝子または発癌遺伝子の、それぞれ過剰メチル化または低メチル化と関連するかまたはこれによって特徴づけられる。
【0186】
ある種の実施形態において、そのがんは、胃がん(腸窩タイプ腫瘍および高発病率のカシミール渓谷における胃がんが挙げられる)、食道がん、頭頚部扁平上皮がん(HNSCC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、および結腸直腸癌(例えば、HNPCC)である。
【0187】
本発明のなお別の局面は、本発明の複合体を標的ポリヌクレオチド配列においてアセンブリするための方法を提供し、上記方法は、標的ポリヌクレオチド配列に以下を接触させるかまたは近位にもたらす工程:(1)本発明のポリヌクレオチドのうちのいずれか1つ、または本発明のベクターのうちのいずれか1つ、または複数のベクター;(2)ヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質またはdCas9タンパク質)、またはヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質またはdCas9タンパク質)をコードする本発明の第2のベクターのうちのいずれか;ならびに(3)PUFドメインのうちの1もしくはこれより多く(各々は、エフェクタードメインに融合される)、またはPUFドメイン融合物をコードする第3のベクターのうちのいずれか1つ。ある種の実施形態において、その融合物は、DNAメチルトランスフェラーゼまたはデメチラーゼとのものである。
【0188】
ある種の実施形態において、その複合体は、細胞の内部でアセンブリされ、その標的ポリヌクレオチド配列は、その細胞のゲノムDNAの一部であり、ここで本発明のベクター、ベクター、第2のベクター、および第3のベクターは、その細胞に導入される。
【0189】
本発明の関連する局面は、細胞において複数の標的遺伝子の転写を調節するための方法を提供し、上記方法は、上記細胞に、本発明の複数のベクター、dCas9タンパク質のコード配列、および1またはこれより多くのPUFドメイン融合物のコード配列を導入する工程を包含し、ここでその標的遺伝子の各々は、(1)標的ポリヌクレオチド配列において、複数のベクター、dCas9タンパク質、およびPUFドメイン融合物のうちの1つによってコードされるポリヌクレオチドの3構成要素複合体のアセンブリを;ならびに(2)標的ポリヌクレオチド配列を含む標的遺伝子の転写調節を可能にする標的ポリヌクレオチド配列を含む。
【0190】
関連する局面において、本発明はまた、細胞中の複数の標的遺伝子におけるエピジェネティック調節(例えば、転写活性に直接的に関連しないクロマチンのエピジェネティック状態の調節)のための方法を提供し、上記方法は、本発明の複数のベクター、ヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質のコード配列、および1またはこれより多くのPUFドメイン融合物のコード配列を上記細胞に導入する工程を包含し、ここでその標的遺伝子の各々は、(1)標的ポリヌクレオチド配列において、複数のベクターのうちの1つによってコードされるポリヌクレオチド、wt Cas9タンパク質またはCas9 ニッカーゼ、およびPUFドメイン融合物の3構成要素複合体のアセンブリを;ならびに(2)標的ポリヌクレオチド配列を含む標的遺伝子のエピジェネティック調節を可能にする、標的ポリヌクレオチド配列を含む。上記方法は、例えば、エピジェネティック状態(例えば、クロマチンを開く)を同時に変化させて、閉じたクロマチン部位に(例えば、それらの部位での切断およびゲノム編集を増大させるために)結合するヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質(例えば、dCas9)のアクセス/安定性を獲得するために、有用であり得る。
【0191】
ある種の実施形態において、少なくとも1つの標的遺伝子の転写は、増強/刺激される一方で、少なくとももう1つの標的遺伝子の転写は阻害される。
【0192】
本発明の一局面において、細胞において標的ポリヌクレオチド配列を有する標的遺伝子の転写および/またはメチル化状態を調節するための方法が提供され、上記方法は、
(a)上記細胞に、PUFドメイン融合タンパク質のコード配列を導入する工程であって、ここで上記PUFドメイン融合タンパク質は、PUFドメイン、およびDNAメチルトランスフェラーゼ活性ドメインまたはDNAデメチラーゼ活性ドメインを含む工程;
(b)上記細胞に、dCas9タンパク質のコード配列を導入する工程;および
(c)上記細胞に、ポリヌクレオチドまたは上記ポリヌクレオチドのコード配列を導入する工程であって、ここで上記ポリヌクレオチドは、
(i)上記標的ポリヌクレオチド配列に相補的であるDNA標的化配列;
(ii)1またはこれより多くのコピーのPUF結合部位(PBS)配列であって、ここで上記1またはこれより多くのコピーのPBSの各々は、同じまたは異なるPUFドメイン融合タンパク質に結合する1またはこれより多くのコピーのPUF結合部位(PBS)配列;ならびに
(iii)上記dCas9タンパク質に結合し得るCas9結合配列、
を含む工程を包含し、ここで上記PUFドメイン融合タンパク質、上記dCas9タンパク質、および上記ポリヌクレオチドは、上記細胞の標的遺伝子内の標的ポリヌクレオチド配列において複合体を形成し、それによって上記標的遺伝子の転写および/またはメチル化状態を調節する。
【0193】
PUFドメイン融合タンパク質のコード配列、ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ(dCas9タンパク質)のコード配列、および上記ポリヌクレオチド(または上記ポリヌクレオチドをコードするベクター)が、一緒に(例えば、同じベクター上に全てのコード配列を含めることによって、異なるコード配列をコードする異なるベクターを共トランスフェクトすることによって、など)、または別個に、所望の場合に任意の順序または順番で細胞に導入され得ることは、注記されるべきである。ある種の好ましい実施形態において、PUFドメイン融合タンパク質のコード配列、ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ(dCas9タンパク質)のコード配列、および上記ポリヌクレオチド(または上記ポリヌクレオチドをコードするベクター)は、上記細胞に共導入される。
【0194】
さらに、本発明の(a)、(b)、および(c)工程が別個に行われるべきである場合、それらが必ず任意の特定の順序で行われなければならないことは、意図しない。
【0195】
標的ポリヌクレオチド配列は、任意のDNA配列であり得る。ある種の実施形態において、その標的ポリヌクレオチド配列は、1またはこれより多くの転写調節エレメントを含むか、またはこれらに隣接する。ある種の実施形態において、その転写調節エレメントは、以下のうちの1またはこれより多くを含む:コアプロモーター、近位プロモーターエレメント、エンハンサー、サイレンサー、絶縁因子(insulator)、および遺伝子座制御領域。
【0196】
キット
別の局面において、キットが提供される。上記キットは、
(i)本明細書で提供されるとおりのその実施形態を含むリボ核タンパク質複合体またはこれをコードする核酸;および
(ii)本明細書で提供されるとおりのその実施形態を含む脱メチル化タンパク質結合体またはこれをコードする核酸、
を含む。
【0197】
別の局面において、キットが提供される、上記キットは、
(i)本明細書で提供されるとおりのその実施形態を含むリボ核タンパク質複合体またはこれをコードする核酸;
(ii)本明細書で提供されるとおりのその実施形態を含む脱メチル化タンパク質結合体またはこれをコードする核酸;および
(iii)本明細書で提供されるとおりのその実施形態を含む脱メチル化エンハンサー結合体またはこれをコードする核酸、
を含む。
【0198】
実施形態において、本発明のキットは、以下を含み得る:a)本発明のポリヌクレオチドまたはこれをコードするヌクレオチド配列を含む核酸(例えば、ベクター);必要に応じて、b)本発明のヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質またはdCas9タンパク質)またはこれをコードする(これをコードする発現可能なmRNAを含む)ベクター;および必要に応じて、c)1またはこれより多くの本発明の脱メチル化またはメチル化タンパク質結合体(PUFドメイン融合物)(各々は、異なる脱メチル化またはメチル化タンパク質結合体(PUFドメイン融合物)の中で同じであっても異なってもよい脱メチル化またはメチル化ドメイン(エフェクタードメイン)に融合されたPUFドメインを含む)、あるいはこれをコードする(これをコードする発現可能なmRNAを含む)ベクター。
【0199】
ある種の実施形態において、a)~c)のうちの1またはこれより多くが、同じベクターによってコードされ得る。
【0200】
ある種の実施形態において、上記キットはまた、a)~c)のうちのいずれか1つを宿主細胞に導入することを容易にする1またはこれより多くの緩衝液または試薬(例えば、形質転換、トランスフェクション、または感染のための試薬)を含む。
【0201】
例えば、本発明のキットはさらに、1種またはこれより多くのさらなる試薬を含み得、ここでこのようなさらなる試薬は、緩衝液;洗浄緩衝液;コントロール試薬;コントロール発現ベクターまたはRNAポリヌクレオチド;ヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質もしくはdCas9またはPUFドメイン融合物のDNAからのインビトロ生成のための試薬;などから選択され得る。
【0202】
本発明のキットの構成要素は、別個に容器の中に存在し得るか;または単一の容器の中に含まれ得る。
【0203】
上述の構成要素に加えて、本発明のキットは、上記キットの構成要素を使用して、本発明の方法を実施するための説明書をさらに含み得る。本発明の方法を実施するための説明書は一般に、適切な記録媒体上に記録される。例えば、その説明書は、基材(例えば、紙またはプラスチックなど)上に印刷され得る。よって、その説明書は、パッケージ挿入物として上記キットの中に、上記キットまたはその構成要素の容器の表示の中に(すなわち、パッケージまたはサブパッケージと関連付けられる)存在し得るなど。他の実施形態において、その説明書は、適切なコンピューター読み取り可能な記憶媒体(例えば、CD-ROM、ディスケット、フラッシュドライブなど)上に存在する電子的な記憶データファイルとして存在する。さらに他の実施形態において、実際の説明書は、キットの中には存在しないが、遠隔の情報源からその説明書を(例えば、インターネットを介して)得るための手段が提供される。この実施形態の例は、その説明書が閲覧され得るおよび/またはその説明書がダウンロードされ得るウェブアドレスを含むキットである。その説明書と同様に、その説明書を得るためのこれの手段は、適切な基材上に記録される。
【0204】
上記で一般的に記載される本発明とともに、本発明の種々の特徴は、以下でさらに詳しく述べられる。本発明の特徴が、別個の実施形態、またはさらには本発明の異なる局面の下での別個の実施形態の状況で記載される場合にすら、1つの実施形態の組みあわせにおいて提供され得ることは、理解されるべきである。逆に、1つの実施形態の状況で記載される本発明の種々の特徴はまた、別個に、または任意の適切な部分組みあわせにおいて提供され得る。本発明に関する実施形態の全ての組みあわせは、本発明によって具体的に包含され、各組みあわせおよびあらゆる組みあわせが個々にかつ明示的に開示されるかのように、本明細書で開示される。さらに、種々の実施形態およびその構成要素の全ての部分組みあわせはまた、本発明によって具体的に包含され、各々のおよびあらゆるこのような組みあわせが個々にかつ明示的に本明細書で開示されるかのように、本明細書で開示される。
【0205】
定義
別段定義されなければ、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。例えば、Singletonら, DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY 第2版, J. Wiley & Sons(New York, NY 1994); Sambrookら, MOLECULAR CLONING, A LABORATORY MANUAL, Cold Springs Harbor Press(Cold Springs Harbor, NY 1989)を参照のこと。本明細書で記載されるものに類似または等価な任意の方法、デバイスおよび材料は、本発明の実施において使用され得る。以下の定義は、本明細書で頻繁に使用されるある種の用語の理解を促進するために提供され、本開示の範囲を限定することは意味されない。
【0206】
「核酸(nucleic acid)」とは、1本鎖、2本鎖、もしくは多数鎖の形態、またはこれらの相補体のいずれかにあるデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびこれらのポリマーをいう。用語「ポリヌクレオチド(polynucleotide)」とは、ヌクレオチドの直鎖状の配列をいう。用語「ヌクレオチド(nucleotide)」とは、代表的には、ポリヌクレオチドの単一のユニット、すなわち、モノマーをいう。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、またはこれらの改変バージョンであり得る。本明細書で企図されるポリヌクレオチドの例としては、1本鎖および2本鎖のDNA、1本鎖および2本鎖のRNA(siRNAおよびmRNAを含む)、ならびに1本鎖および2本鎖のDNAおよびRNAの混合物を有するハイブリッド分子が挙げられる。核酸は、直鎖状または分枝状であり得る。例えば、核酸は、ヌクレオチドの直鎖であり得るか、または核酸は、例えば、その核酸がヌクレオチドの1またはこれより多くのアームまたは分枝を含むように、分枝状であり得る。必要に応じて、その分枝状の核酸は、デンドリマーなどのようなより高次構造を形成するように反復した分枝状である。
【0207】
核酸(ホスホチオエート骨格を有する核酸を含む)は、1またはこれより多くの反応性部分を含み得る。本明細書で使用される場合、用語、反応性部分(reactive moiety)は、別の分子(例えば、核酸またはポリペプチド)と、共有結合的、非共有結合的または他の相互作用を通じて反応し得る任意の基を含む。例示によれば、核酸は、タンパク質またはポリペプチド上のアミノ酸と、共有結合的、非共有結合的または他の相互作用を通じて反応するアミノ酸反応性部分を含み得る。
【0208】
その用語はまた、公知のヌクレオチドアナログまたは改変された骨格残基もしくは連結を含む核酸を包含し、これらは、合成であり、天然に存在し、そして天然に存在せず、参照核酸と類似の結合特性を有し、そしてその参照ヌクレオチドに類似の様式で代謝される。このようなアナログの例としては、ホスホジエステル誘導体(例えば、ホスホロアミデート、ホスホロジアミデート、ホスホロチオエート(ホスホチオエートとしても公知)、ホスホロジチオエート、ホスホノカルボン酸、ホスホノカルボキシレート、ホスホノ酢酸、ホスホノギ酸、ホスホン酸メチル、ホスホン酸ホウ素、またはO-メチルホスホロアミダイト連結(Eckstein, Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, Oxford University Pressを参照のこと)が挙げられる);ならびにペプチド核酸骨格および連結が挙げられるが、これらに限定されない。他のアナログ核酸は、正の骨格;非イオン性骨格、改変された糖、および非リボース骨格(例えば、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴまたはロックされた核酸(LNA))を有するものを含み、米国特許第5,235,033号および同第5,034,506号、ならびに第6章および第7章、ASC Symposium Series 580, Carbohydrate Modifications in Antisense Research, Sanghui & Cook編に記載されるものが挙げられる。1またはこれより多くの炭素環式糖を含む核酸はまた、核酸の1つの定義の中に含まれる。リボース-ホスフェート骨格の改変は、種々の理由から、例えば、生理学的環境におけるこのような分子の安定性および半減期を増大させるために、またはバイオチップ上のプローブとして、行われ得る。天然に存在する核酸およびアナログの混合物が、作製され得る;あるいは、異なる核酸アナログの混合物、ならびに天然に存在する核酸およびアナログの混合物が作製され得る。ある種の実施形態において、DNAにおけるヌクレオチド間連結は、ホスホジエステル、ホスホジエステル誘導体、または両方の組みあわせである。
【0209】
本明細書で使用される場合、提供される値の範囲は、特定された値を含む。当業者によって認識されるように、このような特定された値は合理的に、当該分野で一般に許容可能な測定を使用して、標準偏差を含む。ある種の実施形態において、その標準偏差は、その特定された値の±10%に及ぶ範囲を含む。
【0210】
用語「ポリペプチド(polypeptide)」、「ペプチド(peptide)」、および「タンパク質(protein)」とは、アミノ酸残基のポリマーに言及するために本明細書で交換可能に使用され、ここでそのポリマーは、アミノ酸からならない部分に結合体化されてもよい。その用語は、1またはこれより多くのアミノ酸残基が、相当する天然に存在するアミノ酸の人工的化学模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび天然に存在しないアミノ酸ポリマーに当てはまる。その用語は、大環状ペプチド、非ペプチド官能基で改変されたペプチド、ペプチド模倣物、ポリアミド、およびマクロラクタムに当てはまる。「融合タンパク質(fusion protein)」とは、単一の部分として組換え発現される2またはこれより多くの別個のタンパク質配列をコードするキメラタンパク質に言及する。
【0211】
用語「ペプチジル(peptidyl)」および「ペプチジル部分(peptidyl moiety)」とは、一価のペプチドを意味する。
【0212】
用語「アミノ酸(amino acid)」とは、天然に存在するおよび合成のアミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸に類似の様式で機能する、アミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣物に言及する。天然に存在するアミノ酸は、遺伝コードによってコードされるもの、ならびに後に改変されるそれらアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、およびO-ホスホセリンである。アミノ酸アナログは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造、すなわち、水素に結合されるα炭素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムに言及する。このようなアナログは、改変されたR基(例えば、ノルロイシン)または改変されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。アミノ酸模倣物は、アミノ酸の一般的化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸に類似の様式で機能する化合物に言及する。用語「天然に存在しないアミノ酸(non-naturally occurring amino acid)」および「非天然アミノ酸(unnatural amino acid)」とは、アミノ酸アナログ、合成アミノ酸、および天然には見出されないアミノ酸模倣物に言及する。
【0213】
アミノ酸は、それらの一般に公知の三文字記号またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨される一文字記号のいずれかによって、本明細書で言及され得る。ヌクレオチドは、同様に、それらの一般に許容された一文字コードによって言及され得る。
【0214】
アミノ酸またはヌクレオチド塩基の「位置(position)」は、N末端(または5’末端)に対するその位置に基づいて、参照配列における各アミノ酸(またはヌクレオチド塩基)を逐次的に同定する数字によって示される。最適なアラインメントを決定する場合に考慮に入れられなければならない欠失、挿入、短縮、融合などに起因して、一般に、N末端から単純に数えることによって決定される試験配列中のアミノ酸残基数は、参照配列におけるその相当する位置の数字と必ずしも同じではない。例えば、改変体が、整列された参照配列に比較して欠失を有する場合、その改変体には、欠失の部位において、その参照配列における位置に相当するアミノ酸が存在しない。整列された参照配列において挿入が存在する場合、その挿入は、参照配列において番号付けされたアミノ酸位置に一致しない。短縮または融合の場合には、参照配列または整列された配列のいずれかの中に、その相当する配列の中のいかなるアミノ酸にも相当しないアミノ酸のストレッチが存在し得る。
【0215】
用語「に言及して番号付けされる(numbered with reference to)」または「に相当する(corresponding to)」とは、所定のアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列の番号付けの状況で使用される場合に、その所定のアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列が特定された参照配列と比較される場合のその参照配列の残基の番号付けに言及する。
【0216】
「保存的に改変された改変体(conservatively modified variant)」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に当てはまる。特定の核酸配列に関しては、保存的に改変された改変体は、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードするそれら核酸に、またはその核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一の配列に言及する。遺伝コードの縮重が原因で、多数の機能的に同一な核酸が、任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUは、全てアミノ酸アラニンをコードする。従って、アラニンがコドンによって特定されるあらゆる位置において、そのコドンは、そのコードされるポリペプチドの質を変化させずに、記載される相当するコドンのうちのいずれかへと質が変化され得る。このような核酸バリエーションは、「サイレントバリエーション(silent variation)」であり、これは、保存的に改変されたバリエーションのうちの1種である。ポリペプチドをコードする本明細書中のあらゆる核酸配列はまた、その核酸のあらゆる考えられるサイレントバリエーションを記載する。当業者は、核酸における各コドン(通常は、メチオニンの唯一のコドンであるAUG、および通常は、トリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除く)が、機能的に同一の分子を得るために改変され得ることを認識する。よって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレントバリエーションは、発現生成物に関して各記載される配列に必然的に含まれるが、実際のプローブ配列に関してはそうではない。
【0217】
アミノ酸配列に関して、コードされた配列の中で単一のアミノ酸または小さなパーセンテージのアミノ酸の質を変化させる、これらアミノ酸を付加するまたは欠失する、核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列への個々の置換、欠失、または付加は、その質の変化が、あるアミノ酸をある化学的に類似のアミノで置換することを生じる場合の「保存的に改変された改変体」であることを、当業者は認識する。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換表は、当該分野で周知である。このような保存的に改変された改変体は、本発明の多型改変体、種間ホモログ、およびアレルに加えて存在し、そしてこれらを排除しない。
【0218】
以下の8つの群は各々、互いに関して保存的置換であるアミノ酸を含む: 1)アラニン(A)、グリシン(G); 2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E); 3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q); 4)アルギニン(R)、リジン(K); 5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V); 6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W); 7)セリン(S)、スレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)。
【0219】
「配列同一性のパーセンテージ(percentage of sequence identity)」は、比較ウインドウにわたって2つの最適に整列された配列を比較することによって決定され、ここでその比較ウインドウの中のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の部分は、その2つの配列の最適なアラインメントのために、参照配列(これは、付加も欠失も含まない)と比較した場合に、付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。そのパーセンテージは、配列同一性のパーセンテージを得るために、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列に存在する位置の数を決定して、マッチした位置の数を生成し、そのマッチした位置の数を比較ウインドウにおける位置の総数で除算し、そしてその結果に100をかけ算することによって計算される。
【0220】
用語「同一の(identical)」またはパーセント「同一性(identity)とは、2またはこれより多くの核酸またはポリペプチド配列の状況において、比較ウインドウ、または以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用して、もしくは手動アラインメントおよび目視検査によって測定される場合の指定された領域にわたって、最大の一致のために比較および整列される場合、同じであるか、または同じであるアミノ酸残基もしくはヌクレオチドの特定のパーセンテージ(すなわち、特定された領域、例えば、本発明のポリペプチド配列全体または本発明のポリペプチド個々のドメインの特定された領域にわたって60% 同一性、必要に応じて、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の同一性)を有する、2またはこれより多くの配列または部分配列に言及する。次いで、このような配列は、「実質的に同一(substantially identical)」であるといわれる。この定義はまた、試験配列の相補体に言及する。必要に応じて、その同一性は、長さが少なくとも50ヌクレオチドである領域にわたって、またはより好ましくは長さが100~500または1000もしくはより多くのヌクレオチドである領域にわたって、存在する。
【0221】
配列比較のために、代表的には1つの配列が参照配列として機能し、その参照配列に対して試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列および参照配列は、コンピューターに登録され、部分配列座標が指定され(必要であれば)、そして配列アルゴリズムプログラムパラメーターが指定される。デフォルトプログラムパラメーターが使用され得るか、または代替のパラメーターが指定され得る。次いで、その配列比較アルゴリズムは、そのプログラムパラメーターに基づいて参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を計算する。
【0222】
「比較ウインドウ(comparison window)」とは、本明細書で使用される場合、例えば、全長配列または20~600個、50~200個、もしくは100~150個のアミノ酸またはヌクレオチドからなる群より選択される連続する位置の数のうちのいずれか1つのセグメントへの言及を含み、その中で配列は、その2つの配列が最適に整列された後に、同数の連続する位置の参照配列に対して比較され得る。比較のための配列のアラインメントの方法は、当該分野で周知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith and Waterman(1970) Adv. Appl. Math. 2:482cの局所的相同性アルゴリズムによって、Needleman and Wunsch(1970) J. Mol. Biol. 48:443の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson and Lipman(1988) Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 85:2444の類似性検索法によって、これらアルゴリズムのコンピューター化された実施(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WIのGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)によって、または手動アラインメントおよび目視検査(例えば、Ausubelら, Current Protocols in Molecular Biology(1995補遺)を参照のこと)によって、行われ得る。
【0223】
パーセント配列同一性および配列類似性を決定するために適したアルゴリズムの例は、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらは、それぞれ、Altschulら(1977) Nuc. Acids Res. 25:3389-3402、およびAltschulら(1990) J. Mol. Biol. 215:403-410に記載される。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公に入手可能である。このアルゴリズムは、問い合わせ配列における長さWの短いワード(これは、データベース配列の中の同じ長さのワードと整列された場合に、マッチするかまたはある正の値の閾値スコアTを満たすかのいずれかである)を同定することによって高スコアの配列対(HSP)を先ず同定することを包含する。Tは、隣接ワードスコア閾値(Altschulら, 前出)として言及される。これらの最初の隣接ワードヒットは、検索を開始して、それらを含むより長いHSPを見出すためのシードとして機能する。そのワードヒットは、その累積アラインメントスコアが増大され得る限り、各配列に沿って両方の方向で拡げられる。累積スコアは、ヌクレオチド配列に関しては、パラメーターM(マッチする残基の対に関する報酬スコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基のペナルティースコア;常に<0)を使用して計算される。アミノ酸配列に関しては、累積スコアを計算するためにスコア化マトリクスが使用される。各方向におけるワードヒットの拡張は、以下の場合に停止される:その累積アラインメントスコアがその最大達成値から量X減少する;その累積スコアが、1もしくはこれより多くの負のスコア化残基アラインメントの蓄積に起因して、ゼロもしくはゼロ未満になる;またはいずれかの配列の末端に達する。そのBLASTアルゴリズムパラメーターW、T、およびXは、アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列に関して)は、デフォルトとして、ワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=-4および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列に関しては、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、ワード長3、および期待値(E)10、ならびにBLOSUM62スコア化マトリクス(Henikoff and Henikoff(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915を参照のこと)アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=-4、および両鎖の比較を使用する。
【0224】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列の間の類似性の統計分析を行う(例えば、Karlin and Altschul(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5787を参照のこと)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は、最小和確率(smallest sum probability)(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間のマッチが偶然起こる確率の示度を提供する。例えば、核酸は、参照核酸に対する試験核酸の比較において最小和確率が0.2未満、より好ましくは0.01未満、および最も好ましくは0.001未満である場合に、参照配列に類似であると見做される。
【0225】
2つの核酸配列またはポリペプチドが実質的に同一である示度は、以下で記載されるように、その第1の核酸によってコードされるポリペプチドが、その第2の核酸によってコードされるポリペプチドに対して惹起される抗体と免疫学的に交差反応性であることである。従って、ポリペプチドは、代表的には、例えば、その2つのペプチドが保存的置換によってのみ異なる場合に、第2のポリペプチドと実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一である別の示度は、以下で記載されるように、その2つの分子またはそれらの相補体が互いにストリンジェントな条件したでハイブリダイズすることである。2つの核酸配列が実質的に同一であるさらに別の示度は、同じプライマーがその配列を増幅するために使用され得ることである。
【0226】
「標識(label)」または「検出可能な部分(detectable moiety)」とは、分光的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的、または他の物理的手段によって検出可能な組成物である。例えば、有用な標識としては、32P、蛍光色素、電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAで一般に使用されるとおり)、ビオチン、ジゴキシゲニン、またはハプテンおよびタンパク質または例えば、放射性標識を、標的ペプチドと特異的に反応性のペプチドもしくは抗体に組み込むことによって検出可能にし得る他の実態が挙げられる。標識への抗体の結合体化に関して当該分野で公知の任意の適切な方法は、例えば、Hermanson, Bioconjugate Techniques 1996, Academic Press, Inc., San Diegoに記載される方法を使用して、使用され得る。
【0227】
本明細書で提供される場合の「生体活性部分(bioactive moiety)は、細胞、組織または生物への投与に際して、上記細胞、組織または生物の生物学的機能に対して検出可能な効果を有する部分に言及する。ある種の実施形態において、その検出可能な効果は、生物学的効果である。ある種の実施形態において、その検出可能な効果は、治療的効果である。ある種の実施形態において、その検出可能な効果は、診断的な効果である。
【0228】
「標識されたタンパク質またはポリペプチド(labeled protein or polypeptide)」とは、共有結合的に、リンカーもしくは化学結合を通じて、または非共有結合的に、イオン結合、ファン・デル・ワールス結合、静電的結合、もしくは水素結合を通じて、のいずれかで、標識されたタンパク質またはポリペプチドの存在が、その標識されたタンパク質またはポリペプチドに結合した標識の存在を検出することによって検出され得るように、標識に結合されるものである。あるいは、高親和性相互作用を使用する方法は、結合パートナーの対のうちの一方が、他方(例えば、ビオチン、ストレプトアビジン)に結合する場合に同じ結果を達成し得る。
【0229】
「生物学的サンプル(Biological sample)」または「サンプル(sample)」とは、被験体もしくは患者から得られるかまたは彼らに由来する材料に言及する。生物学的サンプルとしては、生検または剖検サンプルのような組織の切片、および組織学的目的で採取された凍結切片が挙げられる。このようなサンプルは、体液(例えば、血液および血液画分および血液製剤(例えば、血清、血漿、血小板、赤血球など)、喀痰、組織、培養細胞(例えば、初代培養物、外植片、および形質転換した細胞)、糞便、尿、滑液、関節組織、滑膜組織、滑膜細胞、線維芽細胞様滑膜細胞、マクロファージ様滑膜細胞、免疫細胞、造血細胞、線維芽細胞、マクロファージ、T細胞などを含む。生物学的サンプルは、代表的には、真核生物(例えば、霊長類、例えば、チンパンジーもしくはヒト;ウシ;イヌ;ネコ;ウサギ、例えば、モルモット、ラット、マウス;ウサギのような哺乳動物;または鳥類;爬虫類;または魚類)から得られる。
【0230】
「細胞(cell)」とは、本明細書で使用される場合、代謝的機能またはそのゲノムDNAを保存または複製するために十分な他の機能を有する細胞に言及する。細胞は、当該分野で周知の方法によって同定され得る(例えば、無傷な膜の存在、特定の色素による染色、後代を生み出す能力、または配偶子の場合には、第2の配偶子と合わさって、生きている子孫を生み出す能力が挙げられる)。細胞は、原核生物細胞および真核生物細胞を含み得る。原核生物細胞としては、細菌が挙げられるが、これらに限定されない。真核生物細胞としては、酵母細胞、ならびに植物および動物(例えば、哺乳動物)に由来する細胞、昆虫(例えば、スポドプテラ)およびヒト細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0231】
遺伝子に言及して本明細書で使用される場合の文言「発現(expression)」または「発現される(expressed)」は、その遺伝子の転写および/または翻訳生成物を意味する。細胞中のDNA分子の発現のレベルは、細胞内に存在する相当するmRNAの量または細胞によって生成されるそのDNAによってコードされる得タンパク質の量のいずれかに基づいて決定され得る(Sambrookら, 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 18.1-18.88)。
【0232】
トランスフェクトされる遺伝子の発現は、細胞において一過性にまたは安定して起こり得る。「一過性の発現(transient expression)」の間には、そのトランスフェクトされた遺伝子は、細胞分裂の間に娘細胞へと移動されない。その発現がそのトランスフェクトされた細胞に制限されることから、その遺伝子の発現は、経時的に失われる。対照的に、トランスフェクトされた遺伝子の安定な発現は、その遺伝子が、そのトランスフェクトされた細胞に選択の有利性を付与する別の遺伝子と共トランスフェクトされる場合に起こり得る。このような選択の有利性は、細胞に示されるある種の毒素に対する抵抗性であり得る。
【0233】
用語「外因性(exogenous)」とは、所定の細胞または生物の外側に端を発する分子または物質(例えば、核酸またはタンパク質)に言及する。逆に、用語「内因性(endogenous)」とは、所定の細胞または生物に対して天然であるか、またはそれらの内部に端を発する分子または物質に言及する。
【0234】
用語「トランスフェクション(transfection)」、「形質導入(transduction)」、「トランスフェクトする(transfecting)」または「形質導入する(transducing)」とは、交換可能に使用され得、核酸分子および/またはタンパク質を細胞へと導入するプロセスとして定義される。核酸は、非ウイルスベースまたはウイルスベースの方法を使用して、細胞へと導入され得る。その核酸分子は、完全なタンパク質またはその機能的部分をコードする配列であり得る。代表的には、核酸ベクターは、タンパク質発現に必要なエレメント(例えば、プロモーター、転写開始部位など)を含む。トランスフェクションの非ウイルス的方法は、核酸分子を細胞へと導入する送達システムとしてウイルスDNAもウイルス粒子も使用しない任意の適切な方法を含む。例示的な非ウイルス的トランスフェクション方法としては、リン酸カルシウムトランスフェクション、リポソームトランスフェクション、ヌクレオフェクション(nucleofection)、ソノポレーション(sonoporation)、ヒートショックを通じてのトランスフェクション、マグネトフェクション(magnetifection)およびエレクトロポレーションが挙げられる。ウイルスベースの方法に関しては、任意の有用なウイルスベクターが、本明細書で記載される方法において使用され得る。ウイルスベクターの例としては、レトロウイルス、アデノウイルス、レンチウイルスおよびアデノ随伴ウイルスのベクターが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの局面において、その核酸分子は、当該分野で周知の標準的手順に従ってレトロウイルスベクターを使用して細胞へと導入される。用語「トランスフェクション」または「形質導入得」は、外部環境から細胞へとタンパク質を導入することにも言及する。代表的には、タンパク質の形質導入またはトランスフェクションは、細胞膜をその目的のタンパク質に組みあわせ(cross)得るペプチドまたはタンパク質の付着に依拠する。例えば、Fordら(2001) Gene Therapy 8:1-4 and Prochiantz(2007) Nat. Methods 4:119-20を参照のこと。
【0235】
核酸は、これが別の核酸配列との機能的関係性に配置される場合に、「作動可能に連結され(operably linked)」る。例えば、プレ配列または分泌リーダーのDNAは、これがポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現されるのであれば、そのポリペプチドのDNAに作動可能に連結される;プロモーターまたはエンハンサーは、これがコード配列の転写に影響を及ぼすのであれば、その配列に作動可能に連結される;またはリボソーム結合部位は、これが翻訳を促進するように配置されるのであれば、コード配列に作動可能に連結される。一般に、「作動可能に連結される」は、連結されているDNA配列が互いに近くにあり、そして分泌リーダーの場合には、連続しておりかつ読み取り相の中にあることを意味する。しかし、エンハンサーは、連続していなくてもよい。連結は、都合の良い制限部位でのライゲーションによって達成され得る。このような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーは、従来の実施に従って使用される。
【0236】
用語「遺伝子(gene)」とは、タンパク質の生成に関与するDNAのセグメントを意味する;遺伝子は、そのコード領域の前および後ろにある領域(リーダーおよびトレイラー)、ならびに個々のコードセグメント(エキソン)の間の介在配列(イントロン)を含む。そのリーダー、トレイラーならびにイントロンは、遺伝子の転写および翻訳の間に必要である調節エレメントを含む。さらに「タンパク質遺伝子生成物(protein gene product)」は、特定の遺伝子から発現されるタンパク質である。
【0237】
本明細書で記載される特定のタンパク質(例えば、dCas9)に関して、その名付けられたタンパク質は、タンパク質転写因子活性を維持する(例えば、天然のタンパク質と比較して、少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の活性の範囲内)そのタンパク質の天然に存在する形態、または改変体もしくはホモログのうちのいずれかを含む。いくつかの実施形態において、改変体またはホモログは、天然に存在する形態と比較して、その配列の完全配列または一部(例えば、50個、100個、150個または200個の連続するアミノ酸部分)にわたって、少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する。他の実施形態において、そのタンパク質は、そのNCBI配列参照によって同定されるとおりのタンパク質である。他の実施形態において、そのタンパク質は、そのNCBI配列参照またはその機能的フラグメントもしくはホモログによって同定されるとおりのタンパク質である。
【0238】
従って、本明細書で言及される場合の「メチルシトシンジオキシゲナーゼTET1(methylcytosine dioxygenase TET1)」または「TET1」タンパク質は、TET1ジオキシゲナーゼ酵素活性を維持する(例えば、TET1と比較して、少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の活性の範囲内で)TET1ジオキシゲナーゼまたはその改変体もしくはホモログの組換えまたは天然に存在する形態のうちのいずれかを含む。いくつかの局面において、その改変体またはホモログは、天然に存在するTET1タンパク質と比較して、その配列の完全配列または一部(例えば、50個、100個、150個または200個の連続するアミノ酸部分)にわたって、少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する。ある種の実施形態において、そのTET1タンパク質は、UniProt参照番号Q8NFU7によって同定されるタンパク質、またはこれに対して実質的同一性を有する改変体もしくはホモログに実質的に同一である。
【0239】
従って、本明細書で言及される場合の「メチルシトシンジオキシゲナーゼTET2(methylcytosine dioxygenase TET2)」または「TET2」タンパク質は、TET2ジオキシゲナーゼ酵素活性を維持する(例えば、TET2と比較して、少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の活性の範囲内で)TET2ジオキシゲナーゼまたはその改変体もしくはホモログの組換えまたは天然に存在する形態のうちのいずれかを含む。いくつかの局面において、その改変体またはホモログは、天然に存在するTET2タンパク質と比較して、その配列の完全配列または一部(例えば、50個、100個、150個または200個の連続するアミノ酸部分)にわたって、少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する。ある種の実施形態において、そのTET2タンパク質は、UniProt参照番号Q6N021によって同定されるタンパク質、またはこれに対して実質的同一性を有する改変体もしくはホモログに実質的に同一である。
【0240】
従って、本明細書で言及される場合の「メチルシトシンジオキシゲナーゼTET3(methylcytosine dioxygenase TET3)」または「TET3」タンパク質は、TET3ジオキシゲナーゼ酵素活性を維持する(例えば、TET3と比較して、少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の活性の範囲内で)TET3ジオキシゲナーゼまたはその改変体もしくはホモログの組換えまたは天然に存在する形態のうちのいずれかを含む。いくつかの局面において、その改変体またはホモログは、天然に存在するTET3タンパク質と比較して、その配列の完全配列または一部(例えば、50個、100個、150個または200個の連続するアミノ酸部分)にわたって、少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する。ある種の実施形態において、そのTET3タンパク質は、UniProt参照番号O43151によって同定されるタンパク質、またはこれに対して実質的同一性を有する改変体もしくはホモログに実質的に同一である。
【0241】
TETファミリーの酵素(例えば、TET1、TET2、TET3)は、5mCから5hmCへの変換、ならびに5-ホルミルシトシン(5fC)および5 カルボキシルシトシン(5caC)へのそのさらなる酸化を触媒する(Itoら, 2010)。TETジオキシゲナーゼは、C5のメチル基を酸化して、5-ヒドロキシメチル-(hmC)(Kriaucionis and Heintz, 2009)、5-ホルミル-(fC)(Maiti and Drohat, 2011)および5-カルボキシルシトシン(caC)(Heら, 2011)を生じる。
【0242】
本明細書で言及される場合の「Growth Arrest and DNA-Damage-inducible Alpha」または「GADD45A」タンパク質は、GADD45Aタンパク質活性/機能を維持する(例えば、GADD45Aと比較して、少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の活性の範囲内で)GADD45Aタンパク質またはその改変体もしくはホモログの組換えまたは天然に存在する形態のうちのいずれかを含む。いくつかの局面において、その改変体またはホモログは、天然に存在するGADD45Aタンパク質と比較して、その配列の完全配列または一部(例えば、50個、100個、150個または200個の連続するアミノ酸部分)にわたって、少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する。ある種の実施形態において、そのGADD45Aタンパク質は、UniProt参照番号P24522によって同定されるタンパク質、またはこれに対して実質的同一性を有する改変体もしくはホモログに実質的に同一である。
【0243】
GADD45Aは、NERベースのおよびBERベースのDNA脱メチル化における調節タンパク質ファミリーの一部を形成する(例えば、Growth Arrest and DNA Damage Protein 45a、-b、-g)。GADD45タンパク質は、いかなる明らかな酵素活性をも欠いており、脱メチル化標的遺伝子とDNA修復装置との間のアダプターとして作用する。いかなる特定の理論にも拘束されないが、一般には、GADD45aおよびTET1が互いに直接結合すると考えられる。
【0244】
従って、本明細書で言及される場合の「NEIL2グリコシラーゼ(NEIL2 glycosylase)」または「NEIL2」タンパク質は、NEIL2グリコシラーゼ酵素活性を維持する(例えば、NEIL2と比較して、少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の活性の範囲内で)NEIL2グリコシラーゼまたはその改変体もしくはホモログの組換えまたは天然に存在する形態のうちのいずれかを含む。いくつかの局面において、その改変体またはホモログは、天然に存在するNEIL2グリコシラーゼと比較して、その配列の完全配列または一部(例えば、50個、100個、150個または200個の連続するアミノ酸部分)にわたって、少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する。ある種の実施形態において、そのNEIL2グリコシラーゼは、UniProt参照番号Q969S2によって同定されるタンパク質、またはこれに対して実質的同一性を有する改変体もしくはホモログに実質的に同一である。
【0245】
NEILグリコシラーゼは、クロマチンにおけるホルミル化およびカルボキシル化シトシンを切り出し得る。NEILグリコシラーゼはまた、TET媒介性シトシン酸化の後にBERを開始し得る。NEILグリコシラーゼは、従って、活性な脱メチル化およびエピジェネティックにサイレントにされた遺伝子の再活性化の代替経路を構成し得る。
【0246】
本明細書で言及される場合の「DNMT3a」、「DNA(シトシン-5)-メチルトランスフェラーゼ3A(DNA(cytosine-5)-methyltransferase 3A)」または「DNAメチルトランスフェラーゼ3a(DNA methyltransferase 3a)」タンパク質は、DNMT3a酵素活性を維持する(例えば、DNMT3aと比較して、少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の活性の範囲内で)DNMT3a酵素またはその改変体もしくはホモログの組換えまたは天然に存在する形態のうちのいずれかを含む。いくつかの局面において、その改変体またはホモログは、天然に存在するDNMT3aタンパク質と比較して、その配列の完全配列または一部(例えば、50個、100個、150個または200個の連続するアミノ酸部分)にわたって、少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する。ある種の実施形態において、そのDNMT3aタンパク質は、UniProt参照番号Q9Y6K1によって同定されるタンパク質、またはこれに対して実質的同一性を有する改変体もしくはホモログに実質的に同一である。
【0247】
本明細書で言及される場合の「DNMT3L」、「DNA(シトシン-5)-メチルトランスフェラーゼ3L(DNA(cytosine-5)-methyltransferase 3L)」または「DNAメチルトランスフェラーゼ3L(DNA methyltransferase 3L)」タンパク質は、DNMT3L酵素活性を維持する(例えば、DNMT3Lと比較して、少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の活性の範囲内で)DNMT3L酵素またはその改変体もしくはホモログの組換えまたは天然に存在する形態のうちのいずれかを含む。いくつかの局面において、その改変体またはホモログは、天然に存在するDNMT3Lタンパク質と比較して、その配列の完全配列または一部(例えば、50個、100個、150個または200個の連続するアミノ酸部分)にわたって、少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する。ある種の実施形態において、そのDNMT3Lタンパク質は、UniProt参照番号Q9UJW3によって同定されるタンパク質、またはこれに対して実質的同一性を有する改変体もしくはホモログに実質的に同一である。
【0248】
MLH1(MutLホモログ1)は、E.coli DNAミスマッチ修復遺伝子、mutL(これは、ミスマッチ認識、鎖の識別、および鎖の除去の間のタンパク質-タンパク質相互作用を媒介する)のヒトホモログである。そのヒト遺伝子、hMLH1は、第3染色体上に位置する。hMLH1における欠損は一般に、遺伝性非ポリポーシス大腸がん(HNPCC)において観察されるマイクロサテライト不安定性(MSI)と関連する。さらに、そのhMLH1の欠損する発現は、多くのがん(胃がん(腸窩タイプ腫瘍、および高発病率のカシミール渓谷における胃がんを含む)、食道がん、頭頚部扁平上皮がん(HNSCC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、および結腸直腸癌(例えば、HNPCC)が挙げられる)において観察されてきた。これらのがんにおいて、hMLH1の欠損の大部分は、hMLH1遺伝子のプロモーター領域のメチル化に起因した。
【0249】
Cas9タンパク質
本明細書で使用される場合、本明細書で言及される場合の用語「Cas9タンパク質(Cas9 protein)」とは、エンドヌクレアーゼ活性に関する2つの触媒部位(RuvCおよびHNH)のうちの一方が活性に欠陥があるかまたは活性を欠いているヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質、およびエンドヌクレアーゼ活性に関する両方の触媒部位が活性に欠陥があるかまたは活性を欠いているdCas9タンパク質を含む。ある種の実施形態において、そのCas9タンパク質は、ヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質である。ある種の実施形態において、そのCas9タンパク質は、ヌクレアーゼ活性を欠いているかまたはヌクレアーゼ欠損性である。ある種の実施形態において、そのCas9タンパク質は、ニッカーゼである(例えば、例えば、そのニッカーゼは、S.pyogenes Cas9のD10Aに相当する位置に変異を有するCas9ニッカーゼであり得る;またはそのニッカーゼは、S.pyogenes Cas9のH840Aに相当する位置において変異を有するCas9ニッカーゼであり得る)。ある種の実施形態において、そのCas9タンパク質は、dCas9(例えば、S.pyogenes Cas9のD10AおよびH840Aに相当する位置において変異を有するdCas9)である。
【0250】
ある種の実施形態において、「改変されたCas9タンパク質(modified Cas9 protein)」とは、wt Cas9タンパク質ではないCas9をいう。ある種の実施形態において、その改変されたCas9タンパク質は、dCas9である。ある種の実施形態において、その改変されたCas9タンパク質は、ニッカーゼである。
【0251】
その改変されたCas9タンパク質(ニッカーゼまたはdCas9)は、低下したヌクレアーゼ活性を有し得るか、または一方もしくは両方のエンドヌクレアーゼ触媒部位においてヌクレアーゼ活性を欠いている。ある種の実施形態において、そのdCas9タンパク質は、野生型Cas9の両方のエンドヌクレアーゼ触媒部位(RuvCおよびHNH)における点変異に起因して、エンドヌクレアーゼ活性を欠いている。例えば、その点変異は、S.pyogenes Cas9においてそれぞれ、D10AおよびH840Aであり得るか、またはS.pyogenes以外の種におけるその相当する残基にあり得る。ある種の実施形態において、その改変されたCas9タンパク質は、wt Cas9のうちの一方の部位(しかし両方の部位ではない)においてエンドヌクレアーゼ触媒活性を欠いており、dsDNA標的上にニックを作りだし得る(Cas9ニッカーゼ)。
【0252】
ある種の実施形態において、そのCas9ニッカーゼタンパク質は、野生型Cas9の一方のエンドヌクレアーゼ触媒部位(RuvCおよびHNH)における点変異に起因して、エンドヌクレアーゼ活性を欠いている。その点変異は、D10AまたはH840Aであり得る。
【0253】
ある種の実施形態において、そのdCas9タンパク質は、ヌクレアーゼ欠損性であるが、ポリヌクレオチドと複合体化される場合のDNA結合能力を保持する。
【0254】
ある種の実施形態において、そのdCas9タンパク質は、野生型Cas9の両方のエンドヌクレアーゼ触媒部位(RuvCおよびHNH)での点変異に起因して、エンドヌクレアーゼ活性を欠いている。その点変異は、D10AおよびH840Aであり得る。
【0255】
ある種の実施形態において、その改変されたCas9タンパク質は、低下したエンドヌクレアーゼ(例えば、エンドデオキシリボヌクレアーゼ)活性を有するか、またはその活性を欠いている。例えば、本発明の方法における使用に適した改変されたCas9は、Cas9ニッカーゼであり得るか、または野生型Cas9ポリペプチド(例えば、WO2013/176772(その全体においておよび全ての目的のために本明細書に参考として援用される)の図3および配列番号8に示されるとおりのアミノ酸配列を含む野生型Cas9ポリペプチド)のエンドヌクレアーゼ(例えば、エンドデオキシリボヌクレアーゼ)活性の20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、1%未満、または0.1%未満を示す。いくつかの実施形態において、そのdCas9は、検出可能なエンドヌクレアーゼ(例えば、エンドデオキシリボヌクレアーゼ)活性を実質的に有しない。dCas9が低下した触媒活性を有する場合(例えば、Cas9タンパク質がD10、G12、G17、E762、H840、N854、N863、H982、H983、A984、D986、および/またはA987の変異、例えば、D10A、G12A、G17A、E762A、H840A、N854A、N863A、H982A、H983A、A984A、および/またはD986Aを有する場合)のいくつかの実施形態において、そのポリペプチドはなお、部位特異的様式で標的DNAに結合し得る。なぜならそれは、本発明のポリヌクレオチドのCas9結合配列と相互作用する能力を保持する限りにおいて、本発明のポリヌクレオチドのDNA標的化配列によって標的ポリヌクレオチド配列へとなおガイドされるからである。
【0256】
そのCas9タンパク質、そのホモログまたはフラグメントのうちのいずれか1つは、国際出願番号PCT/US2013/032589に開示され、WO2013/176772(これはその全体においておよび全ての目的のために参考として援用される)として公開されるCas9タンパク質と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%のアミノ酸配列同一性を有し、本明細書で提供される複合体および方法のために企図される。
【0257】
いくつかの場合では、ヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質またはdCas9タンパク質)は、必要に応じて、以下を含む融合ポリペプチドである: i)異種ポリペプチド(「融合パートナー」ともいわれる)(これは、PUFドメイン(以下)へと融合される融合パートナーと同じであっても異なっていてもよい)に共有結合的に連結されたCas9タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ欠損性wt Cas9タンパク質またはdCas9タンパク質)。
【0258】
「患者(patient)」または「必要性のある被験体(subject in need thereof)」とは、本明細書で提供されるとおりの組成物または薬学的組成物の投与によって処置され得る疾患または状態に罹患しているまたはその傾向にある生きている生物に言及する。非限定的例としては、ヒト、他の哺乳動物、ウシ、ラット、マウス、イヌ、サル、ヤギ、ヒツジ、ウシ、シカ、および他の非哺乳動物が挙げられる。いくつかの実施形態において、患者は、ヒトである。
【0259】
用語「疾患(disease)」または「状態(condition)」とは、本明細書で提供される化合物、薬学的組成物、または方法で処置され得る患者または被験体の身体の状態または健康状態に言及する。ある種の実施形態において、その疾患は、がんである(例えば、肺がん、卵巣がん、骨肉腫、膀胱がん、子宮頚がん、肝臓がん、腎臓がん、皮膚がん(例えば、メルケル細胞がん)、精巣がん、白血病、リンパ腫(マントル細胞(Mantel cell)リンパ腫)、頭頚部がん、結腸直腸がん、前立腺がん、膵臓がん、黒色腫、乳がん、神経芽腫)。
【0260】
本明細書で使用される場合、用語「がん(cancer)」とは、哺乳動物において見出されるがん、新生物または悪性腫瘍の全てのタイプ(白血病、リンパ腫、黒色腫、神経内分泌腫瘍、癌腫および肉腫が挙げられる)をいう。本明細書で提供される化合物、薬学的組成物、または方法で処置され得るがんの例としては、以下が挙げられる:リンパ腫(例えば、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、バーキットリンパ腫)、肉腫、膀胱がん、骨がん、脳腫瘍、子宮頚がん、結腸がん、食道がん、胃がん、頭頚部がん、腎臓がん、骨髄腫、甲状腺がん、白血病、前立腺がん、乳がん(例えば、トリプルネガティブ、ER陽性、ER陰性、化学療法抵抗性、ハーセプチン抵抗性、HER2陽性、ドキソルビシン抵抗性、タモキシフェン抵抗性、乳管癌(ductal carcinoma)、小葉癌、原発性、転移性)、卵巣がん、膵臓がん、肝臓がん(例えば、肝細胞癌)、肺がん(例えば、非小細胞肺がん、肺扁平上皮癌、腺癌、大細胞肺癌、小細胞肺がん、カルチノイド、肉腫)、多形膠芽腫、神経膠腫、黒色腫、前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、膠芽腫、卵巣がん、肺がん、扁平上皮がん(例えば、頭部、頸部、または食道)、結腸直腸がん、白血病(例えば、リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、ヘアリーセル白血病)、急性骨髄性白血病、リンパ腫、B細胞リンパ腫、または多発性骨髄腫。さらなる例としては、以下が挙げられる:甲状腺、内分泌システム、脳、乳房、子宮頸部、結腸、頭頚部、食道、肝臓、腎臓、肺、非小細胞肺、黒色腫、中皮腫、卵巣、肉腫、胃、子宮または髄芽腫のがん、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽腫、神経膠腫、多形膠芽腫、卵巣がん、横紋筋肉腫、原発性血小板増加症、原発性マクログロブリン血症、原発性脳腫瘍、がん、悪性膵臓インスリノーマ(malignant pancreatic insulanoma)、悪性カルチノイド、膀胱がん、前癌性皮膚病変、精巣がん、リンパ腫、甲状腺がん、神経芽腫、食道がん、尿生殖路のがん、悪性高カルシウム血症、子宮内膜がん、副腎皮質がん、膵臓内分泌部または外分泌部の新生物、甲状腺髄様がん、甲状腺髄様癌、黒色腫、結腸直腸がん、甲状腺乳頭がん、肝細胞癌、乳頭パジェット病(Paget’s Disease of the Nipple)、葉状腫瘍、小葉癌、乳管癌、膵星細胞のがん、肝星細胞のがん、または前立腺がん。
【0261】
疾患(例えば、がん(例えば、白血病、リンパ腫、B細胞リンパ腫、または多発性骨髄腫))と関連する物質または物質活性または機能の状況において用語「関連する(associated)」または「と関連する(associated with)」とは、その疾患(例えば、がん(例えば、白血病、リンパ腫、B細胞リンパ腫、または多発性骨髄腫))が、その物質または物質活性または機能によって(全体としてまたは部分的に)引き起こされるか、またはその疾患の症状が、その物質または物質活性または機能によって(全体としてまたは部分的に)引き起こされることを意味する。
【0262】
本明細書で使用される場合、「処置(treatment)」または「処置する(treating)」または「緩和する(palliating)」または「改善する(ameliorating)」とは、本明細書中で交換可能に使用される。これらの用語は、有益なまたは所望の結果(治療上の利益および/または予防上の利益が挙げられるが、これらに限定されない)を得るためのアプローチに言及する。治療上の利益とは、処置されているその根底にある障害の根絶または改善を意味する。また、治療上の利益は、改善が患者において観察されるようにその根底にある障害と関連する生理学的症状の1またはこれより多くの根絶または改善とともに達成されるが、にもかかわらずその患者は、その根底にある障害になお悩まされている可能性がある。予防上の利益に関しては、組成物は、特定の疾患を発症するリスクにある患者に、または疾患の生理学的症状のうちの1またはこれより多くを報告する患者に、この疾患の診断がたとえ行われていない可能性があるとしても、投与され得る。処置としては、以下が挙げられる:その疾患の防止、すなわち、その疾患の臨床症状を、その疾患の誘導の前に防御的な組成物の投与によって発生させないようにすること;その疾患の抑制、すなわち、その疾患の臨床症状を、誘導的な事象の後であるが、その疾患の臨床的出現または再発の前に、防御的な組成物の投与によって発生させないようにすること;その疾患の阻害、すなわち、臨床症状の発生を、それらの最初の出現後に防御的な組成物の投与によって阻止すること;その疾患の再発の防止および/またはその疾患の軽減、すなわち、臨床症状の退縮を、それらの最初の出現後に防御的な組成物の投与によって引き起こすこと。例えば、本明細書中のある種の方法は、がん(例えば、肺がん、卵巣がん、骨肉腫、膀胱がん、子宮頚がん、肝臓がん、腎臓がん、皮膚がん(例えば、メルケル細胞がん)、精巣がん、白血病、リンパ腫、頭頚部がん、結腸直腸がん、前立腺がん、膵臓がん、黒色腫、乳がん、神経芽腫)を処置する。例えば、本明細書中のある種の方法は、がんの出現、増殖、転移、もしくは進行を減少もしくは低減または防止することによってがんを処置するか;またはがんの症状を減少させることによってがんを処置する。がん(例えば、肺がん、卵巣がん、骨肉腫、膀胱がん、子宮頚がん、肝臓がん、腎臓がん、皮膚がん(例えば、メルケル細胞がん)、精巣がん、白血病、リンパ腫、頭頚部がん、結腸直腸がん、前立腺がん、膵臓がん、黒色腫、乳がん、神経芽腫)の症状は、公知であるかまたは当業者によって決定され得る。
【0263】
本明細書で使用される場合、用語「処置」、「処置する(treat)」または「処置する(treating)」は、プロテアーゼの発現によって特徴づけられる疾患もしくは状態の1もしくはこれより多くの症状の影響、またはプロテアーゼの発現によって特徴づけられる疾患または状態の症状を低減するための方法に言及する。従って、開示される方法において、処置は、確立された疾患、状態、またはその疾患もしくは状態の症状の重篤度における10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%の低減に言及し得る。例えば、疾患を処置するための方法は、被験体におけるその疾患の1またはこれより多くの症状において、コントロールと比較して10%の低減がある場合、処置であると考えられる。従って、その低減は、天然のまたはコントロールレベルと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、または10%~100%の間の任意の%低減であり得る。処置が、その疾患、状態、またはその疾患もしくは状態の症状の治癒または完全な除去に必ずしも言及しないことは、理解される。さらに、本明細書で使用される場合、減少、低減または阻害への言及は、コントロールレベルと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または90%超の変化を含み、このような用語は、完全な排除を含み得るが、必ずしも含まない。
【0264】
「有効量(effective amount)」とは、述べられた目的を達成する(例えば、その有効量が投与される効果を達成する、疾患を処置する、酵素活性を低減する、疾患または状態の1またはこれより多くの症状を低減する)ために十分な量である。「有効量」の一例は、疾患の症状の処置、防止または低減に寄与するために十分な量であり、この量は、「治療上有効な量(therapeutically effective amount)」ともいわれ得る。症状(およびこの語句の文法的に等価なもの)の「低減(reduction)」は、症状の重篤度もしくは頻度の減少、または症状の除去を意味する。薬物の「予防上有効な量(prophylactically effective amount)」とは、被験体に投与される場合に、意図した予防上の効果(例えば、傷害、疾患、病状もしくは状態の発生(もしくは再発)を防止するかもしくは遅らせること、あるいは傷害、疾患、病状もしくは状態、またはそれらの症状の発生(もしくは再発)の可能性を低減すること)を有する薬物の量である。完全な予防上の効果は、1用量の投与によって必ずしも起こるわけではなく、一連の用量の投与後にのみ起こってもよい。従って、予防上有効な量は、1またはこれより多くの投与において投与されてもよい。「活性減少量(activity decreasing amount)」とは、本明細書で使用される場合、アンタゴニストがない場合と比較して、酵素またはタンパク質の活性を減少させるために必要とされるアンタゴニストの量に言及する。「機能妨害量(function disrupting amount)」とは、本明細書で使用される場合、アンタゴニストがない場合と比較して、酵素またはタンパク質の機能を妨害するために必要とされるアンタゴニストの量に言及する。薬学的生成物の所定のクラスに適切な投与量に関しては、文献中にガイドラインが見出され得る。例えば、所定のパラメーターに関して、有効量は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、または少なくとも100%の増大または減少を示す。有効性はまた、「-倍」の増大または減少として表され得る。例えば、治療上有効な量は、コントロールに対して少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、5倍、またはこれより高い効果を有し得る。その正確な量は、処置の目的に依存し、公知の技術を使用して当業者に拠って確認され得る(例えば、Lieberman, Pharmaceutical Dosage Forms(vols. 1-3, 1992); Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999); Pickar, Dosage Calculations(1999);およびRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 第20版, 2003, Gennaro編, Lippincott, Williams & Wilkinsを参照のこと)。
【0265】
本明細書で使用される場合、用語「投与する(administering)」とは、被験体への、経口投与、坐剤としての投与、局所的接触、静脈内、腹腔内、筋肉内、病変内、髄腔内、鼻内もしくは皮下の投与、または遅延放出デバイス(例えば、ミニ浸透圧ポンプ)の移植を意味する。投与は、任意の経路(非経口および経粘膜(例えば、口内、舌下、口蓋、歯肉、鼻、膣、直腸、または経皮が挙げられる)によるものである。非経口投与としては、例えば、静脈内、筋肉内、動脈内、皮内、皮下、腹腔内、心室内(intraventricular)、および頭蓋内が挙げられる。他の送達様式としては、リポソーム製剤、静脈内注入、経皮パッチなどの使用が挙げられるが、これらに限定されない。「共投与する(co-administer)」とは、本明細書で記載される組成物が、1またはこれより多くのさらなる治療(例えば、がん治療(例えば、化学療法、ホルモン療法、放射線療法、または免疫療法))の投与と同時、直前または直後に、投与されることを意味する。本発明の化合物は、その患者に単独で投与されてもよいし、共投与されてもよい。共投与は、化合物を、個々にまたは組みあわせて(1種より多くの化合物)、同時または逐次的に投与することを含むことが意味される。従って、調製物はまた、所望される場合、他の活性物質と(例えば、代謝的分解を低減するために)組み合わされ得る。本発明の組成物は、経皮的に、局所経路によって、アプリケータースティック、液剤、懸濁物、エマルジョン、ゲル、クリーム剤、軟膏、パスタ剤、ゼリー、塗布物(paint)、散剤、およびエアロゾルとして処方されて、送達され得る。
【0266】
経口投与に適した製剤は、(a)液体溶液(例えば、有効量の、希釈剤(例えば、水、生理食塩水、またはPEG 400)中で懸濁された本明細書で提供される複合体);(b)カプセル剤、顆粒分包(sachet)または錠剤(各々は、液体、固体、粒剤またはゼラチンとして所定の量の活性成分を含む);(c)適切な液体中の懸濁物;および(d)適切なエマルジョンからなり得る。錠剤形態は、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、微結晶性セルロース、ゼラチン、コロイド性二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、および他の賦形剤、着色剤、充填剤、結合剤、希釈剤、緩衝化剤、湿潤剤、保存剤、矯味矯臭剤、色素、崩壊剤、および薬学的に適合性のキャリアのうちの1またはこれより多くを含み得る。ロゼンジ形態は、香味料(例えば、スクロース)中の活性成分、ならびに活性成分に加えて、当該分野で公知のキャリアを含む不活性基剤(例えば、ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアエマルジョン、ゲルなど)中の活性成分を含むトローチ(pastille)を含み得る。
【0267】
薬学的組成物はまた、大きなゆっくりと代謝される高分子(例えば、タンパク質、ポリサッカリド(例えば、キトサン)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸およびコポリマー(例えば、ラテックス官能化セファロース(TM)、アガロース、セルロースなど)、ポリマー状のアミノ酸、アミノ酸コポリマー、および脂質凝集物(例えば、油滴またはリポソーム)を含み得る。さらに、これらのキャリアは、免疫刺激剤(すなわち、アジュバント)として機能し得る。
【0268】
直腸投与に適した製剤としては、例えば、坐剤(これは、パッケージされた核酸と坐剤基剤とからなる)が挙げられる。適切な坐剤基剤としては、天然または合成のトリグリセリドまたはパラフィン炭化水素が挙げられる。さらに、選択された化合物と、基剤(例えば、液体グリセリド、ポリエチレングリコール、およびパラフィン炭化水素が挙げられる)との組みあわせからなるゼラチン直腸カプセル剤を使用することも可能である。
【0269】
非経口投与に適した製剤(例えば、関節内(関節の中)、静脈内、筋肉内、腫瘍内、皮内、腹腔内、および皮下経路による)は、水性および非水性の、等張性滅菌注射溶液(これは、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、およびその製剤を意図したレシピエントの血液と等張性にする溶質を含み得る)、ならびに水性および非水性の滅菌懸濁物(これは、懸濁剤、可溶化剤、濃化剤、安定化剤、および保存剤を含み得る)を含む。本発明の実施において、組成物は、例えば、静脈内注入によって、経口的に、局所的に、腹腔内に、膀胱内にまたは髄腔内に投与され得る。非経口投与、経口投与、および静脈内投与は、好ましい投与法である。化合物の製剤は、単一用量および複数用量のシールされた容器(例えば、アンプルおよびバイアル)で提示され得る。
【0270】
注射溶液および懸濁物は、以前に記載された種類の滅菌散剤、粒剤、および錠剤から調製され得る。エキソビボ治療のために核酸によって形質導入された細胞はまた、上記のように静脈内にまたは非経口的に投与され得る。
【0271】
薬学的調製物は、好ましくは、単一投与形態にある。このような形態では、その調製物は、活性構成要素の適切な量を含む単位用量へとさらに分けられる。単位投与形態は、パッケージされた調製物であり得、そのパッケージは、別個の量の調製物(例えば、パッケージされた錠剤、カプセル剤、およびバイアルまたはアンプル中の散剤)を含む。また、その単位投与形態は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤、もしくはロゼンジ自体であり得るか、またはパッケージされた形態にあるこれらのうちの適切な数のいずれかであり得る。その組成物は、所望であれば、他の適合性の治療剤をも含み得る。
【0272】
併用投与は、別個の製剤または単一の薬学的製剤を使用する共投与、およびいずれかの順序での連続投与を企図し、ここで好ましくは、両方の(または全ての)活性薬剤がそれらの生物学的活性を同時に発揮する期間が存在する。
【0273】
本明細書で提供される組成物の有効用量は、多くの異なる因子(投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるのか、動物であるのか、他の薬物療法が投与されているか、および処置が予防的であるか、治療的であるか、が挙げられる)に依存して変動する。しかし、当業者は、指標にするためにがんを処置および防止するための承認された組成物の投与量から判断して、適切なおよび/または等しい用量を直ちに認識する。
【0274】
「薬学的に受容可能な賦形剤(pharmaceutically acceptable excipient)」および「薬学的に受容可能なキャリア(pharmaceutically acceptable carrier)」とは、活性薬剤の投与を補助する物質、および被験体による吸収を補助する物質に言及し、そして患者に対して顕著に有害な毒性効果を引き起こすことなく、本発明の組成物の中に含まれ得る。薬学的に受容可能な賦形剤の非限定的な例としては、水、NaCl、通常生理食塩水溶液、乳酸加リンゲル液、通常スクロース、通常グルコース、結合剤、充填剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング、甘味料、香味料、塩類溶液(例えば、リンゲル液)、アルコール、油、ゼラチン、炭水化物(例えば、ラクトース、アミロースまたはデンプン)、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、および着色剤などが挙げられる。このような調製物は、滅菌され得、所望であれば、本発明の化合物と有害に反応しない補助剤(例えば、滑沢剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼすための塩、緩衝液、着色剤、および/または芳香物質など)と混合され得る。当業者は、他の薬学的賦形剤が、本発明において有用であることを認識する。
【0275】
用語「薬学的に受容可能な塩(pharmaceutically acceptable salt)」とは、当該分野で周知の種々の有機性および無機性の対イオンに由来する塩に言及し、これらとしては、例示に過ぎないが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムなど;およびその分子が塩基性官能基を含む場合は、有機酸および無機酸の塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩など)が挙げられる。
【0276】
用語「調製物(preparation)」とは、活性化合物の、カプセル剤を提供するキャリアとしての被包物質での製剤を含むことが意図され、そのカプセル剤の中では、活性構成要素(他のキャリアありまたはなし)はキャリアによって囲まれ、よってそのキャリアがその活性構成要素と会合した状態になる。同様に、カシェ剤およびロゼンジが含まれる。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤、およびロゼンジは、経口投与に適した個体投与形態として使用され得る、
その薬学的調製物は、必要に応じて、単位投与形態にある。このような形態では、その調製物は、活性構成要素の適切な量を含む単位用量へとさらに分けられる。その単位投与形態は、パッケージされた調製物であり得、そのパッケージは、別個の量の調製物(例えば、パッケージされた錠剤、カプセル剤、およびバイアルまたはアンプル中の散剤)を含む。また、その単位投与形態は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤、もしくはロゼンジ自体であり得るか、またはパッケージされた形態にあるこれらのうちの適切な数のいずれかであり得る。その単位投与形態は、凍結分散物のものであり得る。
【0277】
本発明の組成物はさらに、徐放および/または快適性を提供する構成要素を含み得る。このような構成要素としては、高分子量のアニオン性粘液模倣性ポリマー、ゲル化ポリサッカリドおよび微細に分割された薬物キャリア物質が挙げられる。これらの構成要素は、米国特許第4,911,920号;同第5,403,841号;同第5,212,162号;および同第4,861,760号の中でより詳細に考察される。これら特許の内容全体は、それらの全体においておよび全ての目的のために本明細書に参考として援用される。本発明の組成物はまた、身体の中でのゆっくりとした放出のためにマイウロスフェアとして送達され得る。例えば、マイクロスフェアは、薬物含有マイクロスフェアの皮内注射を介して(これは、皮下にゆっくりと放出する(Rao, J. Biomater Sci. Polym. Ed. 7:623-645, 1995を参照のこと));生分解性および注射用ゲル製剤として(例えば、Gao Pharm. Res. 12:857-863, 1995を参照のこと);または経口投与用のマイクロスフェアとして(例えば、Eyles, J. Pharm. Pharmacol. 49:669-674, 1997を参照のこと)、投与され得る。ある種の実施形態において、本発明の組成物の製剤は、細胞膜と融合するかまたはエンドサイトーシスされるリポソームの使用によって、すなわち、リポソームに結合したレセプターリガンド(これは細胞の表面膜タンパク質レセプターに結合して、エンドサイトーシスを生じる)を使用することによって、送達され得る。リポソームを、特に、そのリポソーム表面が、標的細胞に対して特異的なレセプターリガンドを有するか、または特定の器官に別の方法で優先的に指向される場合に使用することによって、本発明の組成物をインビボで標的細胞へと送達することに焦点が当てられ得る(例えば、Al-Muhammed, J. Microencapsul. 13:293-306, 1996; Chonn, Curr. Opin. Biotechnol. 6:698-708, 1995; Ostro, Am. J. Hosp. Pharm. 46:1576-1587, 1989を参照のこと)。本発明の組成物はまた、ナノ粒子として送達され得る。
【0278】
他の適切な配列
本明細書で提供されその実施形態を含む複合体および方法に関して、ポリヌクレオチド(例えば、第1のまたは第2のポリヌクレオチド)は、(例えば、RNA(例えば、本発明のポリヌクレオチド)の一部を形成するそれぞれのポリヌクレオチドの安定性に影響を及ぼす安定性制御配列(例えば、転写ターミネーターセグメント)を含み得る。適切な安定性制御配列の一例は、転写ターミネーターセグメント(すなわち、転写終結配列)である。本発明のポリヌクレオチドの転写ターミネーターセグメントは、10ヌクレオチド~100ヌクレオチド、例えば、10ヌクレオチド(nt)~20nt、20nt~30nt、30nt~40nt、40nt~50nt、50nt~60nt、60nt~70nt、70nt~80nt、80nt~90nt、または90nt~100ntの全長を有し得る。例えば、その転写ターミネーターセグメントは、15ヌクレオチド(nt)~80nt、15nt~50nt、15nt~40nt、15nt~30ntまたは15nt~25ntの長さを有し得る。
【0279】
いくつかの場合では、その転写終結配列は、真核生物において機能するものである。いくつかの場合では、その転写終結配列は、原核生物において機能するものである。安定性制御配列(例えば、転写終結セグメント、または増大した安定性を提供するためにDNA標的化RNAの任意のセグメントにおいて)に含まれ得るヌクレオチド配列の非限定的な例としては、WO 2013/176772(その全体においておよび全ての目的のために本明細書に参考として援用される)の配列番号683~696に示される配列が挙げられ、例えば、WO 2013/176772の配列番号795、ρ非依存性転写終結部位を参照のこと。
【0280】
転写の調節
本明細書で提供されるメチル化タンパク質結合体の脱メチル化は、本発明のポリヌクレオチドのDNA標的化配列によって、標的DNAにおける特定の位置(すなわち、標的ポリヌクレオチド配列)へと標的化され、その標的DNAの遺伝子座特異的改変を発揮する(例えば、局所的なクロマチン状態を改変する)。いくつかの場合では、その変化は、一過性(例えば、転写抑制または活性化)である。いくつかの場合では、その変化は、遺伝性である(例えば、エピジェネティック改変が、標的DNAに対してまたは標的DNA、例えば、ヌクレオソームヒストンと関連したタンパク質に対して行われる場合)。
【0281】
本明細書で提供されその実施形態を含む複合体を使用する方法の生物学的効果は、任意の好都合な方法(例えば、遺伝子発現アッセイ;クロマチンベースのアッセイ、例えば、Chromatin immunoPrecipitation(ChiP)、Chromatin in vivo Assay(CiA)など;など)によって検出され得る。
【0282】
従って、ある種の実施形態において、本発明の転写調節法は、宿主細胞において標的核酸の選択的調節(例えば、低減または増大)を提供する。例えば、標的核酸の転写の「選択的(selective)」低減は、DNA標的化配列/改変されたCas9ポリペプチド/PUFドメイン融合複合体の非存在下でのその標的核酸の転写のレベルと比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または90%超、その標的核酸の転写を低減する。標的核酸の転写の選択的低減は、その標的核酸の転写を低減するが、非標的核酸の転写を実質的に低減せず、例えば、非標的核酸の転写は、あるとすれば、DNA標的化配列/改変されたCas9ポリペプチド/PUFドメイン融合複合体の非存在下での非標的核酸の転写レベルと比較して、10%未満低減される。
【0283】
他方で、標的DNAの転写の「選択的」増大は、本明細書で提供されその実施形態を含む複合体(例えば、DNA標的化配列/改変されたCas9ポリペプチド/PUFドメイン融合複合体)の非存在下での標的DNAの転写レベルと比較して、少なくとも1.1倍(例えば、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも12倍、少なくとも15倍、または少なくとも20倍)、その標的DNAの転写を増大させ得る。標的DNAの転写の選択的増大は、その標的DNAの転写を増大させるが、非標的DNAの転写を実質的に増大させない。例えば、非標的DNAの転写は、あるとすれば、本明細書で提供されその実施形態を含む複合体(例えば、DNA標的化配列/改変されたCas9ポリペプチド/PUFドメイン融合複合体)の非存在下でのその非標的DNA核酸の転写のレベルと比較して、5倍未満(例えば、4倍未満、3倍未満、2倍未満、1.8倍未満、1.6倍未満、1.4倍未満、1.2倍未満、または1.1倍未満)増大される。
【0284】
いくつかの実施形態において、複数の本発明のポリヌクレオチドは、同じ標的DNA上でまたは異なる標的DNA上で、異なる位置での転写を同時に調節するために、同じ細胞の中で同時に使用され得る。いくつかの実施形態において、2またはこれより多くの本発明のポリヌクレオチドは、同じ遺伝子または転写物または遺伝子座を標的化する。いくつかの実施形態において、2またはこれより多くの本発明のポリヌクレオチドは、異なる関連しない遺伝子座を標的化する。いくつかの実施形態において、2またはこれより多くの本発明のポリヌクレオチドは、異なるが関連する遺伝子座を標的化する。
【0285】
本発明のポリヌクレオチドは、小さくかつ強いので、それらは、同じ発現ベクター上に同時に存在し得、そしてさらには、同じ転写制御の下に(そのように望まれるのであれば)あり得る。いくつかの実施形態において、2もしくはこれより多く(例えば、3もしくはこれより多く、4もしくはこれより多く、5もしくはこれより多く、10 もしくはこれより多く、15もしくはこれより多く、20もしくはこれより多く、25もしくはこれより多く、30もしくはこれより多く、35もしくはこれより多く、40もしくはこれより多く、45もしくはこれより多く、または50もしくはこれより多く)の本発明のポリヌクレオチドが、同じまたは異なるベクターから、標的細胞の中で同時に発現される。その発現された本発明のポリヌクレオチドは、種々の細菌(例えば、S.pyogenes、S.thermophilus、L.innocua、およびN. meningitidis)に由来するオルソゴナル(orthogonal)ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ(dCas9タンパク質)によって異なって認識され得る。
【0286】
複数の本発明のポリヌクレオチドを発現するために、国際出願PCT/US2016/021491に記載され、WO2016148994 A8(参考として全ての目的のために援用される)として公開されるCsy4エンドリボヌクレアーゼによって媒介される人工RNAプロセシングシステムは、本明細書で提供される発明のために使用され得る。
【0287】
宿主細胞
転写を調節する本発明の方法は、インビボおよび/またはエキソビボおよび/またはインビトロで有糸分裂細胞または有糸分裂後細胞において転写調節を誘導するために使用され得る。本発明のポリヌクレオチドは、標的DNAの標的ポリヌクレオチド配列にハイブリダイズすることによって特異性を提供するので、有糸分裂および/または有糸分裂後の細胞は、種々の宿主細胞のうちのいずれかであり得る。ここで適切な宿主細胞としては、細菌細胞;古細菌の細胞;単細胞の真核生物細胞;植物細胞;藻類細胞(例えば、Botryococcus braunii、Chlamydomonas reinhardtii、Nannochloropsis gaditana、Chlorella pyrenoidosa、Sargassum patens、C.agardhなど);真菌細胞;動物細胞;無脊椎動物(例えば、昆虫、刺胞動物、棘皮動物、線虫など)に由来する細胞;真核生物寄生生物(例えば、マラリア原虫(例えば、Plasmodium falciparum);蠕虫;など);脊椎動物(例えば、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物)に由来する細胞;哺乳動物細胞(例えば、齧歯類細胞、ヒト細胞、非ヒト霊長類細胞など)が挙げられるが、これらに限定されない。適切な宿主細胞としては、天然に存在する細胞;遺伝的に改変された細胞(例えば、実験において、例えば、「人の手」によって遺伝的に改変される細胞);ならびにインビトロでいずれかの方法で操作される細胞が挙げられる。いくつかの場合では、宿主細胞は、単離または培養される。
【0288】
任意のタイプの細胞が、目的のものであり得る(例えば、幹細胞、例えば、胚性幹(ES)細胞、人工多能性幹(iPS)細胞、生殖細胞;体細胞、例えば、線維芽細胞、造血細胞、ニューロン、筋細胞、骨細胞、肝細胞、膵臓細胞;任意のステージにある胚のインビトロもしくはインビボでの胚細胞(例えば、1細胞、2細胞、4細胞、8細胞などのステージのゼブラフィッシュの胚;など))。細胞は、樹立された細胞株に由来してもよいし、それらは初代細胞であってもよい。ここで「初代細胞(primary cell)」、「初代細胞株(primary cell line)」、および「初代培養物(primary culture)」は、被験体に由来し、培養の制限された継代(すなわち、分割)の数にわたってインビトロで増殖することを可能にした細胞および細胞培養物をいうために、本明細書で交換可能に使用される。例えば、初代培養物は、0回、1回、2回、4回、5回、10回、または15回継代されていてもよいが、危機ステージ(crisis stage)を経るほど十分な回数は継代されていない培養物を含む。初代細胞系統は、インビトロで10継代未満にわたって維持され得る。標的細胞は、多くの実施形態において単細胞生物であるか、または培養物中で増殖される。
【0289】
細胞が初代細胞である場合、このような細胞は、任意の都合の良い方法によって個体から採取され得る。例えば、白血球は、アフェレーシス、白血球アフェレーシス、密度勾配分離などによって都合良く採取され得る一方で、組織(例えば、皮膚、筋肉、骨髄、脾臓、肝臓、膵臓、肺、腸、胃など)に由来する細胞は、生検によって最も都合良く採取される。適切な溶液が、その採取した細胞の分散または懸濁のために使用され得る。このような溶液は一般に、平衡塩類溶液(例えば、生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、ハンクス平衡塩類溶液など)であり、都合の良いことには、低濃度(例えば、5~25mM)の受容可能な緩衝液とともに、ウシ胎仔血清または他の天然に存在する因子が補充される。都合の良い緩衝液としては、HEPES、ホスフェート緩衝液、ラクテート緩衝液などが挙げられる。その細胞は、直ぐに使用されてもよいし、長期間貯蔵、凍結されてもよい(融解および再使用され得る)。このような場合には、その細胞は通常、このような凍結温度で細胞を保存するために、10% ジメチルスルホキシド(DMSO)、50% 血清、40% 緩衝化培地、または当該分野で一般に使用される他の溶液の中で凍結され、凍結した培養細胞を融解するために当該分野で一般に公知の様式で融解される。
【0290】
宿主細胞への核酸の導入
本発明のポリヌクレオチド、これをコードするヌクレオチド配列を含む核酸、あるいは本発明のヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ(dCas9タンパク質)または脱メチル化もしくはメチル化タンパク質結合体(PUFドメイン融合物)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸は、種々の周知の方法のうちのいずれかによって宿主細胞へと導入され得る。
【0291】
宿主細胞に核酸を導入するための方法は、当該分野で公知であり、任意の公知の方法が、幹細胞または祖先細胞へと核酸(例えば、ベクターまたは発現構築物)を導入するために使用され得る。適切な方法としては、例えば、ウイルスもしくはバクテリオファージ感染、トランスフェクション、接合、プロトプラスト融合、リポフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介性トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクション、リポソーム媒介性トランスフェクション、、パーティクルガン技術、リン酸カルシウム沈殿、直接マイクロインジェクション、ナノ粒子媒介性核酸送達(例えば、Panyamら, Adv. Drug Deliv. Rev., pii: S0169-409X(12)00283-9.doi:10.1016 / j.addr.2012.09.023を参照のこと)などが挙げられる。
【0292】
従って、本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸を提供する。いくつかの場合では、本発明の核酸はまた、ヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ(dCas9タンパク質)および/または脱メチル化もしくはメチル化タンパク質結合体(PUFドメイン融合物)をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0293】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、宿主細胞(または宿主細胞の集団)へと、本発明のポリヌクレオチドおよび/またはヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ(dCas9タンパク質)および/または脱メチル化もしくはメチル化タンパク質結合体(PUFドメイン融合物)をコードするヌクレオチド配列を含む1またはこれより多くの核酸(例えば、ベクター)を導入する工程を包含する。いくつかの実施形態において、標的DNAを含む宿主細胞は、インビトロにある。いくつかの実施形態において、標的DNAを含む宿主細胞は、インビボにある。本発明のポリヌクレオチドおよび/またはヌクレアーゼ欠損性RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ(dCas9タンパク質)および/または本発明の脱メチル化もしくはメチル化タンパク質結合体(PUFドメイン融合物)をコードするヌクレオチド配列を含む適切な核酸は、発現ベクターを含み、ここでその発現ベクターは、組換え発現ベクターであり得る。
【0294】
いくつかの実施形態において、その組換え発現ベクターは、ウイルス構築物、例えば、組換えアデノ随伴ウイルス構築物(例えば、米国特許第7,078,387号を参照のこと)、組換えアデノウイルス構築物、組換えレンチウイルス構築物、組換えレトロウイルス構築物などである。
【0295】
適切な発現ベクターとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルス;ポリオウイルス;アデノウイルス(例えば、Liら, Invest Opthalmol. Vis. Sci., 35:2543-2549, 1994; Borrasら, Gene Ther., 6:515-524, 1999; Li and Davidson, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:7700-7704, 1995; Sakamotoら, Hum. Gene Ther., 5:1088-1097, 1999; WO 94/12649, WO 93/03769; WO 93/19191; WO 94/28938; WO 95/11984およびWO 95/00655を参照のこと);アデノ随伴ウイルス(例えば、Aliら, Hum. Gene Ther., 9:81-86, 1998, Flanneryら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94:6916-6921, 1997; Bennettら, Invest Opthalmol Vis Sci 38:2857-2863, 1997; Jomaryら, Gene Ther., 4:683-690, 1997, Rollingら, Hum. Gene Ther., 10:641-648, 1999; Aliら, Hum. Mol. Genet., 5:591-594, 1996; WO 93/09239におけるSrivastava、Samulskiら, J. Vir., 63:3822-3828, 1989; Mendelsonら, Virol., 166: 154-165, 1988;およびFlotteら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 10613-10617, 1993を参照のこと);SV40;単純ヘルペスウイルス;ヒト免疫不全ウイルス(例えば、Miyoshiら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94: 10319-23, 1997; Takahashiら, J. Virol., 73:7812-7816, 1999を参照のこと)に基づくウイルスベクター);レトロウイルスベクター(例えば、マウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、ならびにラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、レンチウイルス、HIVウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス(myeloproliferative sarcoma virus)、および乳癌ウイルス(mammary tumor virus)のようなレトロウイルスに由来するベクター);など。
【0296】
多くの適切な発現ベクターは、当業者に公知であり、多くは、市販されている。以下のベクターは、例示によって提供される;真核生物宿主細胞に関して:pXTl、pSG5(Stratagene)、pSVK3、pBPV、pMSG、およびpSVLSV40(Pharmacia)。しかし、任意の他のベクターは、これが宿主細胞と適合性である限りにおいて使用され得る。国際出願PCT/US2016/021491に記載され、WO2016148994 A8(これは、参考としておよび全ての目的のために援用される)として公開されるベクターのうちのいずれか1つは、本明細書で提供されその実施形態を含む複合体および方法のために企図される。
【0297】
例示的有用性
本発明に従って転写を調節するための方法は、種々の適用(研究適用;診断適用;産業適用;および処置適用が挙げられるにおける用途を見出す。
【0298】
研究適用は、例えば、発生、代謝、下流遺伝子の発現などに対する標的核酸の転写を低減または増大することの効果を例えば決定することを包含し得る。
【0299】
ハイスループットゲノム分析は、本発明の転写調節方法(ここでは、本発明のポリヌクレオチドのDNA標的化配列のみが変動される必要がある一方で、結合配列(Cas9結合配列)およびPBS配列は、(いくつかの場合では)一定に保持され得る)を使用して行われ得る。ゲノム分析において使用される複数の核酸を含むライブラリー(例えば、本発明のライブラリー)は、本発明のポリヌクレオチドをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーター(ここで各核酸は、異なるDNA標的化配列、共通する結合配列(Cas9結合配列)、および共通するPBS配列を含む)を含む。チップは、5×10個を超える本発明の特有のポリヌクレオチドを含み得る。
【0300】
適用は、国際出願PCT/US2016/021491に記載され、WO2016148994 A8(これは、参考としておよび全ての目的のために援用される)として公開されるとおりの大規模表現型決定、遺伝子から機能マッピング(gene-to-function mapping)、およびメタゲノム分析を含む。
【0301】
本明細書で開示される本発明の方法はまた、国際出願PCT/US2016/021491に記載され、WO2016148994 A8(これは、参考としておよび全ての目的のために援用される)として公開されるとおりの代謝操作の分野における用途を見出し得る。
【0302】
本明細書で開示される方法はまた、国際出願PCT/US2016/021491に記載され、WO2016148994 A8(これは、参考としておよび全ての目的のために援用される)として公開されるとおりのコントロールの一体のネットワーク(すなわち、カスケード)をデザインするために使用され得る。
【0303】
本発明の転写調節法はまた、国際出願PCT/US2016/021491に記載され、WO2016148994 A8(これは、参考としておよび全ての目的のために援用される)として公開されるとおりの創薬および標的検証のために使用され得る。
【0304】
本明細書で記載される例および実施形態は、例証目的に過ぎず、これらに鑑みて種々の改変または変更が、当業者に示唆され、本出願の趣旨および範囲、ならびに添付の特許請求の範囲内に包含されるべきであることは、理解される。本明細書で引用される全ての刊行物、特許、および特許出願は、全ての目的のためにそれらの全体において参考として援用される。
【実施例
【0305】
実施例1: 47コピーの操作されたPumilio結合部位の挿入を有するsgRNA足場は、機能的なままである
この実施例は、本発明の3構成要素CRISPR/Cas複合体/システムが、dCas9/sgRNA複合体の機能に実質的に影響を及ぼすことなしに、sgRNAの3’末端において少なくとも47コピーの操作された8マーのPumilioホモログドメイン結合配列(PBS)を有し得ることを示す。
【0306】
特に、PBSをsgRNAの3’末端に追加することで、sgRNA機能に影響が及ぼされるか否かを試験するために、一連の改変されたTet標的化(sgTetO)または非標的化コントロール(sgControl) sgRNAを、生成し、PUF(3-2)(単にPUFaともいわれる)[PBS32またはPBSa:配列番号8(5’-UGUAUgUA-3’)]、PUF(6-2/7-2)(単にPUFbともいわれる)[PBS6272またはPBSb:配列番号9(5’-UugAUAUA-3’)]に対する、0コピー、5コピー、15コピー、25コピー、および47コピーの8マーPumilioホモログドメイン結合配列(PBS)とともに生成した。図1Aを参照のこと。HEK293T/TetO::tdTomato細胞株におけるtdTomato発現を活性化させるように、これらの構築物がdCas9-VP64転写アクチベーターを指向する能力を試験した。
【0307】
細胞を、異なるsgRNA足場を有するdCas9-VP64でトランスフェクトし、トランスフェクションの2日後に蛍光活性化セルソーティング(FACS)によって分析した(図1B)。全てのコントロール非標的化sgRNAは、tdTomato発現を活性化しなかった。その一方で、異なる数のPBSを有する全てのTet標的化sgRNAは、tdTomato発現を活性化するようにdCas9-VP64を指向できた。これは、少なくとも47コピーの8マー部位の挿入が、dCas9-VP64をその標的に指向するにあたってsgRNAの活性に実質的に影響を与えないことを示す(図1C)。
【0308】
試験条件下で、ならびにPUFa-VP64/PBSaおよびPUFb-VP64/PBSbの両方に関して、sgRNAに追加した5~10コピーのPBSは、その標的導入遺伝子を最もよく活性化できた。その一方で、15コピー、20コピー、および47コピーのPBSは、わずかに低い、それでもなお実質的な導入遺伝子活性化をもたらした(図1C)。
【0309】
実施例2: 本発明の3構成要素CRISPR/Cas複合体/システムは、コグネート8マー結合部位を有する操作されたPumilioの特性に起因して、互いにオルソゴナルである。
この実施例は、異なってプログラムされたPUFドメインと、それらのコグネート8マーモチーフを有するそれらの相当するsgRNAとの間の特異性が、本発明の3構成要素CRISPR/Cas複合体/システムの各々の間で独立性またはオルソゴナルであることを提供することを示す。
【0310】
PUF(3-2)::VP64およびPUF(6-2/7-2)::VP64の融合物(これらは、それぞれ、5’-UGUAUgUA-3’結合部位を有するsgRNA(sgRNA-PBS32)および5’-UugAUAUA-3’結合部位を有するsgRNA-PBS6272と相互作用する)を作製し、dCas9とともにtdTomato発現のスイッチを入れるそれらの活性を試験した。さらに、2つのさらなる対、PBSw(5’-UGUAUAUA-3’)を認識するPUFw-VP64およびPBSc(5’-UugAUgUA-3’)を認識するPUFc-VP64も構築して、それらがdCas9とともに同じTetO::tdTomato発現を活性化する濃緑を試験した(図1D)。
【0311】
図1Dに示されるように、PUF::VP64は、コグネート結合部位を有するsgRNAを提供した場合にのみ、tdTomato発現を活性化し得る。このことは、本発明の3構成要素CRISPR/Cas複合体/システムが、sgRNA-PBS上でのPUFドメインおよびそれらの8マー結合部位の対形成に基づいて、エフェクター機能の独立性またはオルソゴナルであることを提供することを示す。印象的なことには、PBSaおよびPBSw結合部位は、1ヌクレオチド異なるのみであるが、それらの遺伝子活性化は、標的特異的なままであり、本発明の3構成要素CRISPR/Cas複合体/システムの高い特異性を示す。
【0312】
実施例3: 本発明の3構成要素CRISPR/Cas複合体/システムは、標的遺伝子座においてタンパク質複合体のアセンブリを可能にする
この実施例は、2またはこれより多くの異なるタンパク質構成要素を有する複合体が、sgRNA上でアセンブリされ得、本発明のシステムを使用して規定の遺伝子座において機能し得ることを示す。
【0313】
具体的には、p65-HSF1は、強力なアクチベータードメインであることが近年示された。互いに隣に配置されたPBS32およびPBS6272の両方を有するsgRNA、ならびに2つの異なる部位を占有するPUF(3-2)::VP64およびPUF(6-2/7-2)::p65-HSF1融合物を生成した(図2A)。PUF(3-2)::VP64およびPUF(6-2/7-2)::p65-HSF1両方の共トランスフェクションは、tdTomato蛍光を誘導し、強度は、単一のアクチベーター単独のトランスフェクトから生じる蛍光強度の合計であった。これは、PUF(3-2)およびPUF(6-2/7-2)の両方に対する結合部位有するsgRNAが、両方のタイプの両方の融合タンパク質が標的化されたゲノム部位上でアセンブリすることを可能にすることを示す。
【0314】
近年の論文は、転写活性化ドメインとしてのVP64およびp65HSF1の両方を試験し、p65HSF1がより強力なアクチベーターであることを見出した。これら2つの転写活性化ドメインを直接比較するために、p65HSF1 PUF融合物(PUFa-p65HSF1)およびVP64 PUF融合物(PUFa-VP64)を、異なる数のPBSaを有するsgRNAを使用して、TetO::tdTomato導入遺伝子を活性化するために、使用した(図2C)。PUFa-p65HSF1は、PUFa-VP64の3倍まで高い活性化を提供した。活性化は、わずか1つのPBSaですら観察された(以前は、PUFa-VP64モジュールで観察されなかった)。従って、p65HSF1は、VP64より強力な転写活性化ドメインであることが確認される。
【0315】
クローニング。 ベクター、それらのAddgene登録へのリンクのリストを、以下の表S1に提供する。クローニングストラテジーおよび配列の詳細な説明は、以下で示される。
【0316】
N末端NLSを有するPUFa[PUF(3-2)]およびPUFb[PUF(6-2/7-2)]を、これらのコード配列を含む構築物からSgrAIおよびPacI部位を含むプライマーで増幅し、pAC164:pmax-dCas9Master_VP64に由来するSgrAI-dCas9-FseIを置き換えて、pAC1355:pmax-NLSPUFa_VP64およびpAC1356:pmax-NLSPUFb_VP64を作製するために使用した。NLSPUFbの反復4までの5’フラグメントおよび反復5からNLSPUFaの末端までの3’フラグメントとの融合PCRを使用して、pAC1357:pmax-NLSPUFw_VP64を作製した。NLSPUFaの5’フラグメントとNLSPUbの3’フラグメントとの融合PCRを使用して、pAC1358:pmax-NLSPUFc_VP64を作製した。
【0317】
p65HSF1アクチベーターORFを、FseI PacI部位を有するMS2-P65-HSF1_GFP(Addgene: 61423)から増幅して、pAC164中のVP64を置き換え、pAC1410:pmax-dCas9_p65HSF1を作製、ならびにpAC1355およびpAC1358中のVP64を置き換えて、それぞれ、pAC1393:pmax-NLSPUFa_p65HSF1およびpAC1411:pmax-NLSPUFc_p65HSF1を作製した。
【0318】
そのFseI-p65HSF1-PacIフラグメントを、pAC1393から放出し、ベクターとしてのSgrAI-PacIで消化したpAC1356およびpAC1360から放出されたSgrAI-NLSPUMbフラグメントとライゲーションして、pAC1413:PB3-neo(-)-pmax-NLSPUFb_p65HSF1を作製した。そのBFPKRABフラグメントを、pHR-SFFV-dCas9-BFP-KRAB(Addgene #46911)から増幅し、これを使用して、pAC1360に由来するClover配列を置き換えて、pAC1414: PB3-neo(-)-pmax-BFPKRAB_NLSPUFaを作製した。次いで、NheI-CAGGS-NLSPUFb_p65HSF1-NheIフラグメントを、pAC1413から増幅し、NheIで消化したpAC1414へと挿入して、BFPKRAB-NLSPUFaおよびNLSPUFb-p65HSF1に関する二重発現ベクター(pAC1414: PB3-NLSPUFb_p65HSF1(-)neo(-)-BFPKRAB2_NLSPUFa)を作製した。
【0319】
改善されたリンカー配列および3つの特別のNLSをN末端に、および1つのさらなるNLSをPUFのC末端に、ならびにN末端(SgrAI,ClaI)およびC末端(FseI-PacI)挿入のためのクローニング部位を有する4つのゲートウェイドナーベクターを、作製した(pAC1404~1408)。HAT配列を、マウスCrebbp遺伝子からマウスcDNAを用いて、FseI-PacI部位を含むプライマーで増幅し、pAC164へと挿入して、pAC1364: pmax-dCas9Master_CBPHATを作製し、pAC1405へと挿入して、pAC1415: pCR8-4×NLSPUFa_2×NLS_CBPHATを作製した。HAT配列を、SgrAI-AclI部位を含む別のプライマー対で増幅し、pAC1405のSgrAI-ClaI部位へとクローニングして、pAC1416: pCR8-CBPHAT_4×NLSPUFa_2×NLSを作製した。pAC1415およびpAC1416を、pAC90:pmax-DEST(Addgene #48222)へと組み換えて、それぞれ、発現ベクターpAC1417: pmax-4×NLSPUFa_2×NLS_CBPHATおよびpAC1418: pmax-CBPHAT_4×NLSPUFa_2×NLSを作製した。FseI-mCherry-PacIフラグメントを、mCherry配列を含むプラスミドから増幅し、SgrAI-dCas9-FseIでPB3-neo(-)-pmaxへとライゲーションして、pAC1419: PB3-neo(-)-pmax-dCas9Master_mCherryを生成した。
【0320】
sgRNA-PBSのための発現ベクターを、以下のように構築した: 先ず、ガイド配列のオリゴクローニングのためのBbsIおよびPBSの挿入のための3’ BsaI(ターミネーターの直ぐ上流)を有する、sgF+Eに基づくsgRNA足場を、gBlock(IDT)として発注し、pX330(Addgene #42230)へとクローニングし、AflIII-NotI領域を置き換えて、ベクターpAC1394: pX-sgFE-BsaI(AGAT)を作製した。次いで、一方の側に5’-AGAT-3’オーバーハングおよび他方の側に5’-ATCT-3’が隣接したggc-スペーサーによって各々分離された5×PBSa部位をコードするオリゴを、T4PNKで処理し、BsaI(適合性のオーバーハングを作製するため)で消化したpAC1394へとアニールおよびライゲーションした。次いで、クローンを、異なる数のPBSに関するオリゴ挿入物の1コピー(5×PBS)、2コピー(10×PBS)などについてスクリーニングした。1×PBSおよび2×PBSベクターに関しては、それらを、1つのPBS部位を含むオリゴを使用して構築した。次いで、各標的に対するガイド配列を、以前に記載されたように、sgRNA-PBS発現ベクター上へとBbsI部位を介してクローニングした。GFP発現マーカーを有するsgRNA発現ベクターに関しては、それらを、sgRNA-PBS発現カセットをpXベクターからPB-GFPベクター上へとAscI部位を介して移入することによって構築した。その異なるsgRNA発現構築物を、表S1に列挙する。
【0321】
実験用の細胞培養物。 HEK293T細胞を、10% ウシ胎仔血清(FBS)(Lonza)、4% Glutamax(Gibco)、1% ピルビン酸ナトリウム(Gibco)およびペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco)を有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Sigma)中で培養した。インキュベーター条件は、37℃および5% COであった。活性化実験のために、細胞を、12ウェルプレートに100,000細胞/ウェルにおいて播種し、その翌日に、200ngのdCas9構築物、100ngの改変されたsgRNAおよび100ngのPUF融合物で、Attracteneトランスフェクション試薬(Qiagen)を用いてトランスフェクトした。トランスフェクションの後、細胞を48時間増殖させ、RNA抽出または蛍光活性化セルソーティング(FACS)のいずれかのために採取した。二重活性化-抑制実験のために、トランスフェクションを同じままにしたが、細胞を、12ウェルプレートへと150,000細胞/ウェルにおいて播種し、72時間増殖させ、その後、FACSのために採取した。OCT4およびSOX2二重活性化-抑制での実験のために、細胞を、RNA抽出の前に、BFP(アクチベーター-リプレッサーモジュールPUFb-p65HSF1/BFPKRAB-PUFaに関して)、mCherry(dCas9mCherryに関して)およびGFP(EGFPを共発現するベクター上のsgRNA-PBSに関して)によって三重ソートした。画像化実験のために、細胞を、22×22×1顕微鏡カバーグラスを有する6ウェルプレートへと、300,000細胞/ウェルにおいて播種し、その翌日に、50ngのdCas9構築物、500ngの改変されたsgRNA、および50ngのPUF-蛍光融合物で、Attracteneトランスフェクション試薬を用いてトランスフェクトした。トランスフェクション後、細胞を、48時間増殖させ、次いで、免疫染色した。
【0322】
定量的RT-PCR分析。 細胞を、トリプシンを用いて採取し、ダルベッコリン酸緩衝化生理食塩水(dPBS)で洗浄し、125gで5分間遠心分離し、次いで、RNAを、RNeasy Plus Mini Kit(Qiagen)を使用して抽出した。cDNAライブラリーを、Applied Biosystems High Capacity RNA-to-cDNAキットを使用して、1μgのRNAで作製した。TaqMan Gene expressionアッセイ(Applied Biosystems)を、内因性コントロールとしてGAPDH(Hs03929097, VIC)、ならびに標的としてOCT4(Hs00999632, FAM)およびSOX2(Hs01053049, FAM)を使用してデザインした。TaqMan Universal Master Mix IIとUNG(Applied Biosystems)とを、2μlの1:10希釈したcDNAを各反応のために使用して、定量的PCR(qPCR)のために使用した。活性化を、Applied Biosystems ViiA7機器で分析した。遺伝子発現レベルを、「ΔΔCt」アルゴリズムによって計算し、コントロールサンプルに対して正規化した。
【0323】
蛍光活性化セルソーティング。 細胞をトリプシン処理し、10分間、2% パラホルムアルデヒドで固定した。その後、その細胞を125gで5分間遠心分離し、dPBS中に再懸濁した。サンプルを、CellQuest Proソフトウェア(BD Bioscience)を使用して、FACScaliburフローサイトメーターで分析した。数千の事象を、各実施で集めた。
【0324】
上記の実験において使用した構築物のうちのいくつかの配列、および関連する配列を、本明細書中以下に列挙する。
【化8】
上記の配列において、NLS配列は、残基6~12であり、PUFa(配列番号2)は、残基15~363であり、VP64は、残基371~421である。
【化9-1】
【化9-2】
上記の配列において、NLS配列は、残基6~12であり、PUFb(配列番号3)は、残基15~363であり、VP64は、残基371~421である。
【化10】
上記の配列において、NLS配列は、残基6~12であり、PUFw(配列番号5)は、残基15~363であり、VP64は、残基371~421である。
【化11】
上記の配列において、NLS配列は、残基6~12であり、PUFc(配列番号4)は、残基15~363であり、VP64は、残基371~421である。
【0325】
実施例4: 本発明の3構成要素CRISPR/Cas複合体/システム(Casilio)およびdCas9繋留化酵素を使用する、標的化されたDNA脱メチル化およびメチル化
単純化するために、本発明の3構成要素CRISPR/Cas複合体/システムは、本明細書で「Casilio」ともいわれ得る。
【0326】
Casilio-MEとTet1エフェクターとを使用して、この実施例は、hMLH1転写、HEK293T細胞においてエピジェネティックにサイレントにされた遺伝子およびプロモーター領域における過剰メチル化に起因する他のがん細胞の強い活性化を示した。hMLH1転写の再活性化は、MLH1タンパク質の発現(の回復)をもたらす。この実施例は、hMLH1プロモーター領域へのTET1活性のCasilio-ME媒介性送達が、標的化されたCpGアイランド内での強いシトシン脱メチル化を誘導することが示された。これは、Casilio-MEがエピゲノムのメチルシトシンマークの編集に対する強いプラットフォームであるという概念実証を提供する。
【0327】
他方で、Casilio-MEをDnmtエフェクターでSOX2プロモーターへと標的化すると、遺伝子抑制がもたらされることもまた示された。これは、指向されたDnmt媒介性DNAメチル化が、所望の遺伝子座において遺伝子発現またはエピジェネティック状態を改変する可能性を示す。
【0328】
結果
遺伝子発現に対する特定のゲノム遺伝子座への脱メチル化酵素のCasilio媒介性送達の効果。特定のゲノム遺伝子座への脱メチル化酵素の送達を可能にする単純であるが効果的なツールを開発して、そのエピジェネティックメチル化状態の標的化された質の変化を可能にするために、そのCasilio-MEシステムを操作した。これを、ヌクレアーゼ欠損性dCas9、Pumilio(PUF)RNA結合ドメインのための部位を含む改変されたsgRNA(sgRNA-PBS)、およびエフェクタータンパク質に融合されたPumilio RNA結合ドメインから作製されるエフェクターモジュールを使用する3構成要素Casilioプラットフォームに対して確立した(PCT/US2016/021491; 62/132,644;および62/221,249を参照のこと;Cheng, A.W.,ら, Casilio: a versatile CRISPR-Cas9-Pumilio hybrid for gene regulation and genomic labeling. Cell Res, 2016. 26(2): p. 254-7(参考として援用される)もまた参照のこと)。dCas9は、2本鎖破壊を生じることなしに、sgRNAと複合体化した場合にDNAを結合し、RNAプログラム可能なDNA結合タンパク質として働き、その特異性は、システムのsgRNA構成要素における配列によって決定される。PUFドメインは、dCas9のsgRNA媒介性DNA結合に干渉することなく、sgRNAの3’末端に複数コピーで追加される任意の8マーRNA配列(PBS)に結合するように、プログラムされ得る(Cheng, A.W.,ら, Casilio: a versatile CRISPR-Cas9-Pumilio hybrid for gene regulation and genomic labeling. Cell Res, 2016. 26(2): p. 254-7)。sgRNA上に複数コピーでPBSが存在することで、ゲノム部位へのPUF-エフェクターモジュールの複数コピーの繋留が可能になり、従って、適用における任意のエフェクターモジュールへの応答の強い増幅の達成を強化する。
【0329】
特定のゲノム遺伝子座でのCasilio媒介性シトシン脱メチル化およびその後の遺伝子活性化を可能にするために、TET1-エフェクターモジュールを、残基1418~2136を含むTET1触媒ドメイン(TET1(CD))へのPUFaのN末端またはC末端の融合物として構築した。hMLH1のプロモーター領域(その過剰メチル化は、hMLH1発現のサイレント化を誘導することが公知である(Deng, G.,ら, Methylation of CpG in a small region of the hMLH1 promoter invariably correlates with the absence of gene expression. Cancer Res, 1999. 59(9): p. 2029-33))を、この研究の標的として選択した。
【0330】
MLH1タンパク質は、細胞のメチル指向性ミスマッチ修復システムの構成要素である。hMLH1は、実際に、他のがん細胞と同様に、HEK293T細胞においてサイレントにされているので、それらが脱メチル化媒介性遺伝子活性化を誘導する能力において、TET1-エフェクターを試験するために良好な細胞モデルを示す。9つのsgRNAを、プロモーター領域の周りにデザインした。そのプロモーターのメチル化は、がん細胞においてhMLH1のダウンレギュレーションと関連する(図3A)(Deng, G.,ら, Methylation of CpG in a small region of the hMLH1 promoter invariably correlates with the absence of gene expression. Cancer Res, 1999. 59(9): p. 2029-33)。
【0331】
そのシステムを試験するために、HEK293T細胞を、CtまたはNt-融合TET1-エフェクターおよび3または2個のsgRNAの組み合わせを含むCasilio-ME構成要素でトランスフェクトした。hMLH1 mRNAの相対的レベルを、トランスフェクションの60時間後の細胞から抽出したRNAおよびqRT-PCR測定の正規化のための内因性コントロールとしてのGAPDHを使用することによってTaqManアッセイで決定した。このことは、PUFa-TET1(CD) C末端融合物エフェクターが、強いhMLH1発現を回復させ、sgRNAs 3+7の存在下でバックグラウンドを超えて135倍に達することを示した(図3B)。しかし、TET1(CD)-PUFa N末端エフェクター融合物は、その同じsgRNA組み合わせの存在下で、おそらく立体障害に起因して遙かに弱い活性化(最良でも20倍)を示した。なぜならTET1(CD)は、天然にTET1全長タンパク質のC末端に位置するからである。従って、これは、特定のゲノム遺伝子座への脱メチル化酵素のCasilio媒介性送達が、遺伝子発現の強い質の変化を可能にすることを示す。
【0332】
hMLH1発現の得られたTET1媒介性活性化と、hMLH1プロモーターに転写因子および転写機構を補充することによって誘導された活性化とを比較するために、TET1-エフェクターを、p65HSF1-エフェクターで置き換えた。その同じsgRNA組み合わせを使用したところ、これは、より高い活性化を示し、バックグラウンドを超えて200倍に達した(図3B)。これは、従って、hMLH1発現のCasilio-ME媒介性活性化が、強い転写アクチベーターモジュール(例えば、p65HSF1)によって得られる活性化のうちの約70%を達成し得ることを示し、このことは、Casilio-MEが、ゲノムのメチル化状態および関連するサイレンシング活性の質を変えるために脱メチル化酵素の効率的標的化および送達を可能にする効率的ツールであることを示す。
【0333】
遺伝子発現に対する特定の遺伝子座へのdCas9繋留化脱メチル化酵素の送達の効果。dCas9タンパク質への直接融合物は、特定のゲノム遺伝子座へとエフェクターを標的化するために広く使用され、TET1(CD)を送達して、脱メチル化および関連する遺伝子活性化を誘導するためにも近年使用されてきた(Morita, S.,ら, Targeted DNA demethylation in vivo using dCas9-peptide repeat and scFv-TET1 catalytic domain fusions. Nat Biotechnol, 2016; Xu, X.,ら, A CRISPR-based approach for targeted DNA demethylation. Cell Discov, 2016. 2: p. 16009)。
【0334】
Casilio-MEとの比較において、HEK293T細胞においてhMLH1発現を活性化するdCas9-TET1(CD)直接融合効率を評価するために、TET1(CD)へのdCas9のN末端およびC末端融合物を、構築した。Casilio-ME実験におけるようにsgRNAの同じ組み合わせを使用したところ、dCas9-TET1(CD) C末端融合物は、mRNAレベルにおける相対的変化によって示されるように、hMLH1の比較的弱い活性化を示した(図3C)。dCas9-TET1(CD)誘導性活性化は、並行した実験において同じsgRNA組み合わせでCasilio-MEを使用して得られた活性化の最良でも約14%を表す(mRNAレベルにおいて19倍の変化 対 135倍の変化)。対照的に、TET1(CD)-dCas9融合物は、そのそれぞれのC末端融合物より遙かに弱い活性化を示した。このことは、考えられる立体障害が、dCas9またはPUFaタンパク質のいずれかにN末端で融合した場合にTET1活性化に影響を及ぼすことを示す(図3Bおよび3C)。
【0335】
dCas9-TET1で得られたhMLH1活性化と、転写アクチベーターの活性化とを比較するために、HEK293T細胞を、同じsgRNA組み合わせとともに、dCas9-p65HSF1でトランスフェクトした。mRNAレベルの分析から、hMLH1のdCas9-TET1活性化が、転写アクチベーターdCas9融合物で得られた活性の最良でも2倍であることが示された(図3C)。従って、これは、特定の遺伝子座へのTET1標的化が、おそらく標的部位でのエピジェネティックDNAメチル化の質の変化を介して、遺伝子を活性化し得ることを示す。しかし、Casilio-MEで得られたhMLH1活性化は、dCas9-TET1(CD)直接融合物で得られる活性化より有意に効率的である。このことは、多くの生物学的および病的システムにおけるサイトカイン過剰メチル化の関わり合いを解読する有効かつ適応可能なツールとしてのCasilio-MEプラットフォームの大きな可能性を示す。
【0336】
脱メチル化酵素のCasilio媒介性送達は、標的化されたゲノム遺伝子座のメチル化状態の質を変化させる。hMLH1転写の示されたCasilio-ME誘導性活性化が、標的化されたプロモーター領域内のTET1媒介性シトシン脱メチル化の結果であるという証拠は、ビスルファイト変換後のhMLH1プロモーターのDNA配列決定に由来した。ゲノムDNAのビスルファイト処理は、非メチル化シトシンを脱アミノ化して、チミンとしてその後複製されるウラシルを生じる。しかし、メチル化シトシンは、ウラシルへの変換から保護されるので、直接配列決定による単一ヌクレオチド分解においてシトシンメチル化状態を決定することが可能になる。
【0337】
Casilio-ME媒介性転写活性化後のhMLH1プロモーター領域内のCpGアイランドのメチル化状態における変化を評価するために、時間的推移実験を行った。この実験では、シトシンメチル化、ならびに転写活性化、およびタンパク質発現の分析のために、トランスフェクションの3日後、4日後、5日後、および6日後に細胞を集めた。HEK293Tを、Ct融合PUFa-TET1エフェクターおよび2つのsgRNA(RNAガイド3および7)の組み合わせを含むCasilio-ME構成要素でトランスフェクトした。TaqManアッセイから、hMLH1転写の活性化がこれらの一過性のトランスフェクションの過程の間に維持されることが示された(図4A)。従って、これは、6日間の実験の間にhMLH1 mRNAレベルの持続した変化を示す。
【0338】
抽出したゲノムDNAのビスルファイト処理およびその後のPCR増幅後にクローニングしたhMLH1プロモーターDNAフラグメントの配列決定から、Casilio-ME標的化によって誘導されるビスルファイト変換の増大した頻度によって示されるように、hMLH1プロモーター内のCpGのメチル化の状況の劇的変化が示された(図4C)。トランスフェクトしなかったHEK293T細胞では有意なシトシンからウラシルへの変換は得られなかったが、過剰メチル化されたDNAに関して予測されたように、トランスフェクトしたHEK293T細胞は、有意な脱メチル化が示され、標的化RNAの結合部位の近くで最高の活性化が観察された(図4C(矢印))。Casilio-ME媒介性脱メチル化活性は、実験の過程の間に持続され、比較的弱い活性にも拘わらず、ガイドRNAの結合部位から300pb離れて拡がったようである。
【0339】
コントロール実験では、トランスフェクトしなかったHEK293細胞(そのhMLH1プロモーターは、低メチル化され、かつ転写的に活性である)も分析した。図4C(黒の棒)に示されるように、その配列決定された領域は、予測されるように、高頻度のシトシン変換を示した。5’アザシチジン(AzaC)薬物、インヒビターまたはシトシンメチルトランスフェラーゼで6日間処理した、トランスフェクトしなかったHEK293T細胞も、分析した。これはまた、プロモーター領域内の複数のCpG部位上で増大したビスルファイト変換頻度を示した(図4C、紫の棒)。
【0340】
MLH1タンパク質合成に対するCasilio-ME標的化の効果を決定するために、ウェスタンブロット分析を、HEK293Tトランスフェクト細胞、ならびにトランスフェクトしなかったHEK293細胞およびAzaC処理したHEK293T細胞から抽出した全タンパク質に対して抗hMLH1モノクローナル抗体を使用して行った。その結果は、トランスフェクトした細胞が検出可能な量のMLH1タンパク質を生成し、トランスフェクション後5日目および6日目までに最高レベルに達することを示した(図4B)。しかし、トランスフェクトした細胞によって生成されたMLH1の量は、構成的にhMLH1を発現するHEK293細胞によって生成されるタンパク質レベルより有意に低い。MLH1合成のCasilio-ME媒介性誘導は、なお顕著であり、例えば、複数のガイドRNAをティリング(tilling)して、hMLH1発現のより良好な活性化の達成に向けてCpG脱メチル化の範囲および効率を高めることによって改善され得る。
【0341】
Casilio-MEがTET1活性をhMLH1プロモーター領域活性化転写へと送達するという事実を、関連するCpGアイランドのメチル化状態の劇的な誘導性変化とともにまとめると、その知見は、Casilio-MEがエピゲノムのメチルシトシンマークを編集する強いプラットフォームであるという概念実証を提供する。この技術は、多くの生物学的および病理学的システムにおけるメチルシトシンエピゲノムマーカーの因果関係を高分離能で対処する研究調査の新たな領域へと道を開く。
【0342】
メチルトランスフェラーゼサイレント遺伝子発現のCasilio媒介性送達。 プログラム可能なメチルトランスフェラーゼを、Dnmt3a、Dnmt3L、またはdCas9のN末端もしくはC末端へのハイブリッドDnmt3a-3Lの触媒ドメインのいずれかの直接融合物によって構築した(図5A)。dCas9およびsgRNA-PBS(Dnmtエフェクターを有するCasilio-ME;図5B)とともに使用するために、PUFaへのこれらエフェクターのN末端またはC末端融合物もまた構築した。Dnmt3a-PUFを有するCasilio-MEは、直接融合物と比較して、SOX2遺伝子発現のより強い抑制を達成した。これは、指向されたDNAメチル化のためにCasilio-MEを使用する優れた活性を示す(図6Aおよび6B)。
【0343】
材料および方法
Tet1エフェクターによるDNA脱メチル化
【0344】
細胞培養およびトランスフェクション。HEK293T細胞を、37℃および5% COに設定したインキュベーターの中で、10% ウシ胎仔血清(FBS)(Lonza)、4% Glutamax(Gibco)、1% ピルビン酸ナトリウム(Gibco)およびペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Sigma)中で培養した。示された細胞を、新たに希釈した薬物を含む培地を毎日交換して、示されたように2.5μMまたは5μMの5-アザシチジン(sigma)で処理した。細胞を、12ウェルプレートへと150,000細胞/ウェルで播種し、その翌日に、100ngのdCas9構築物、100ngの改変されたsgRNA構築物および200ngのPUF融合物で、Attracteneトランスフェクション試薬を用いて製造業者の説明書(Qiagen)に従ってトランスフェクトした。dCas9直接融合実験では、細胞を、200ng dCas9融合構築物および200ngの改変されたsgRNA構築物でトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を、トランスフェクションの60時間後に、または示された別の方法で採取し、細胞ペレットを、RNA、ゲノムDNAおよびタンパク質の抽出のために使用した。
【0345】
定量的RT-PCR分析。 細胞を採取し、ダルベッコリン酸緩衝化生理食塩水(dPBS)で洗浄し、125×gにおいて5分間遠心分離し、次いで、急速凍結したペレットを、-80℃で貯蔵した。RNAを、RNeasy Plus Mini Kitを使用して製造業者の説明書(Qiagen)に従って抽出した。Applied Biosystems High Capacity RNA-to-cDNAキットを使用して、200ng~1μgのRNAを用いてcDNAライブラリーを作製した。TaqMan遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystems)を、内因性コントロールとしてGAPDH(Hs03929097, VIC)を、および標的としてhMLH1(Hs00179866, FAM)を使用してデザインした。TaqMan Universal Master Mix IIとUNG(Applied Biosystems)とを、2μlの希釈したcDNAを各反応のために使用して、定量的PCR(qPCR)のために使用した。活性化を、Applied Biosystems ViiA7機器で分析した。遺伝子発現レベルを、「ΔΔCt」アルゴリズムによって計算し、コントロールサンプルに対して正規化した。
【0346】
ビスルファイト変換および配列決定。 ゲノムDNAを、全て、AllPrep DNA/RNA/Protein Mini Kitを使用して製造業者の説明書(Qiagen)に従って抽出した。そのキットは、ゲノムDNAならびにRNAおよび総タンパク質を同じ細胞ペレットから並行した下流分析のために抽出することを可能にする。ビスルファイト変換実験を、EpiTect Fast DNA Bisulfite Kitおよび抽出したゲノムDNAを使用することによって、製造業者の説明書(Qiagen)に従って行った。次いで、ビスルファイト処理したDNAをテンプレートとして供して、hMLH1プロモーター領域全体を網羅する350~400bp長の2つのDNAフラグメントを、ZymoTaq PreMixを使用して、製造業者の説明書(Zymo Research)に従ってPCR増幅した。次いで、そのPCRフラグメントを、SLICによってEcoRIで直線状にしたPUC19プラスミドへと、T4 DNAポリメラーゼを使用してクローニングした(Jeong, J.Y.,ら, One-step sequence- and ligation-independent cloning as a rapid and versatile cloning method for functional genomics studies. Appl Environ Microbiol, 2012. 78(15): p. 5440-3)。次いで、各サンプルにつき6個の独立した陽性クローンを、hMLH1プロモーター領域の個々のCpGにおけるシトシンからチミンへの変換頻度を決定するために、サンガーシーケンス法(Singer sequencing)に供した。
【0347】
ウェスタンブロット分析。 細胞抽出物(30μg)に由来するタンパク質を、10% SDS-ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動によって分離し、次いで、100Vにおいて1時間、SDSを含むBjerrum Schafer-Nielsen Bufferを使用してニトロセルロース膜に転写した。次いで、TBS-T中5% Blotting-Grade Blocker(BioRad)でブロッキングした膜を、4℃において一晩、示された抗体とともにインキュベートし、そのタンパク質バンドを、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体化二次抗体およびClarity Western ECL Substrateを使用して、製造業者の説明書(BioRad)に従って検出した。G:Box(Syngene)を使用してゲルを画像化した。
【0348】
DnmtエフェクターによるDNAメチル化
【0349】
dCas9発現細胞株の樹立。 トランスフェクションの前日に、Lenti-X 293T細胞を、6ウェルプレートに120万個の細胞/ウェルにおいて播種した。その細胞を、スーパーコイルドパッケージングプラスミド(pLP1(gag/pol)、pLP2(rev)、およびVSV-G(エンベロープ))およびdCas9レンチウイルス発現プラスミドでLipofectamine 3000試薬(Invitrogen)を通じてトランスフェクトした。トランスフェクションの6時間後に、培地を新鮮なものと交換した。トランスフェクションの24時間後に、2mlのレンチウイルスを含む培地を集め、10分間、2,000rpmにおいて遠心分離して、細胞デブリを辞去した。その上清を、45μm孔フィルタ(Millipore)を利用して濾過し、そのレンチウイルスを-80℃において必要なときまで凍結した。HEK293T細胞(12ウェルプレートへと150,000細胞/ウェルにおいて播種)を、5μg/ml ポリブレンを補充した培養培地中の500μlのdCas9レンチウイルスで、12時間形質導入し、その後、形質導入後3日目に、ブラストサイジン抗生物質で選択した。
【0350】
トランスフェクション。 HEK293T、およびHEK293T/dCas9細胞株を、12ウェルプレートへと150,000細胞/ウェルにおいて播種した。細胞を、200ngのDnmtエフェクター構築物および200ngのsgRNA-PBSで、Attracteneトランスフェクション試薬(Qiagen)を用いてトランスフェクトした。トランスフェクションの3日後に、その細胞を、GFP(sgRNA発現構築物は、GFPによってマークされる)に関して、蛍光活性化セルソーティング(FACS)でソートし、12ウェルまたは24ウェルのプレートへと再プレートした。
【0351】
定量的逆転写PCR。 細胞を、トランスフェクションの7~10日後に、100μlのトリプシン、500μlのDMEM、および500μlのダルベッコリン酸緩衝化生理食塩水(dPBS)を用いて採取し、700gで5分間遠心分離した。RNAを、ペレット化した細胞からRNeasy Plus Mini Kit(Qiagen)を利用して抽出した。Applied Biosystems High Capacity RNA-to-cDNAキットを使用して、2μgのRNAでcDNA合成を行った。TaqMan遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystems)を、内因性コントロールとしてGAPDHを、および標的としてSOX2を用いて完了した。
配列
MLH1およびSOX2遺伝子を標的化するsgRNAスペーサー配列のリスト
【表1-1】
【表1-2】
タンパク質配列のリスト
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【表2-10】
【表2-11】
【表2-12】
【表2-13】
タンパク質配列のリスト
【表3-1】
【表3-2】
【0352】
実施例11
【0353】
プログラム可能なCasilioおよびdCas9繋留化酵素を使用する標的化されたDNA脱メチル化およびメチル化
【0354】
ゲノムDNAからのメチルシトシン(mC)の活性な削除は、TET1媒介性反復mC酸化、および酸化した中間体を非メチル化シトシンへとその後変換する塩基除去修復(BER)またはヌクレオチド除去修復(NER)経路を要する。興味深いことには、mC脱メチル化効率は、GADD45Aタンパク質(Growth Arrest and DNA-Damage-inducible Alpha)、ゲノム安定性の維持、DNA修復および細胞増殖の抑制に関与する多面的な核因子(Niehrs and Schafer, Trends Cell Biol 22(4): 220-227, 2012; Barretoら, Nature 445(7128):671-675, 2007; Schuermannら, DNA Repair(Amst) 44:92-102, 2016)によって増強されるようである。GADD45Aはまた、TET1と、およびBER酵素チミンDNAグリコシラーゼTDGと相互作用することが見出された(Kienhoferら, Differentiation 90(1-3):59-68, 2015; Liら, Nucleic Acids Res 43(8):3986-3997, 2015)。
【0355】
本発明者らが近年開発したCasilio-MEプラットフォームが標的化されたゲノム遺伝子座を脱メチル化する効率を増強するために、本発明者らは、TET1触媒ドメインおよびGADD45Aを特定のゲノム遺伝子座へと同時に補充することを可能にして、mC除去プロセスを簡素化することによって、Casilio-MEを増強しようとした。TET1(CD)の近位におけるまたは標的化されたゲノム部位におけるTET1(CD)へのタンパク質融合物としてのGADD45Aの存在は、TET1活性を刺激し、そして/またはDNA修復装置の重要なプレイヤーを補充して、mC酸化とDNA修復とを効率的に繋ぎ、Casilio-ME二重標的化の結果は、TET1(CD)単独の標的化と比較して、遺伝子発現のより大きな質の変化をもたらす。
【0356】
結果
【0357】
本発明者らは、従って、PUFa-TET1(CD)へのプラスミドによりコードされるGADD45Aタンパク質融合物を作製し(図7A)、PUFa-TET1(CD)単独で得られたhMLH1活性化と比較して、GADD45Aタンパク質融合物の各々の存在下で、hMLH1発現の活性化の効率を測定した。これは、6つのガイドRNAの存在下でのPUFa-TET1(CD)エフェクターが、hMLH1発現の有意な活性化を示し、転写アクチベーターエフェクターp65HSF1で得られたものより30%高いことを示した(図7Bおよび7C(棒3および8))。興味深いことに、GADD45Aを、TET1(CD)エフェクターへとPUFaドメインを介して融合して、GADD45A-PUFa-TET1(CD)を生成した場合、hMLH1発現は、TaqManアッセイにおいて増大した相対的発現によって示されるように、およそ9倍増強された(図7Aおよび7C(棒3および5))。その一方で、hMLH1活性化は、GADD45Aが、PUFa-GADD45A-TET1(CD)エフェクターにおいてTET1(CD)に直接融合された場合に、4倍のみ増強された(図7C(棒3および4))。これは、GADDA45Aが、エフェクター融合物のN末端に存在する場合により露出されて、TET1および/または下流のDNA修復活性を刺激するために必要とされる相互作用を作製することを示す。これは実際に、GADD45AおよびTET1(CD)をツーインワンエフェクターとして活用すると、Casilio-ME媒介性遺伝子活性化の効率がかなりブーストされるという概念実証を示す。その活性化は、TET1(CD)構成要素の増強された活性化および/またはmC酸化と非メチル化シトシンを回復させるDNA修復経路とを効率的に繋ぐことによって媒介されるようである。
【0358】
2つの構成要素、GADD45AおよびTET1(CD)をゲノム部位へと二重標的化して、そのメチル化状態および関連する遺伝子発現の質を変化させる別の方法は、そのタンパク質を、2つの独立したPUF(例えば、TET1(CD)に対してはPUFaおよびGADD45Aに対してはPUFc)へと融合し、その相当するPUF結合部位(PBS)を含む改変されたgRNA足場を使用することである(図7A)。相当するgRNAs-PBSacの存在下でのPUFa-TET1(CD)およびPUFc-GADD45Aの二重発現は、TET1(CD)媒介性hMLH1活性化の有意な刺激を示し、GADD45A-PUFcは、PUFc-GADD45A融合物と比較して、より高い活性を示した(図7E、棒4、5、6)。FlagタグがGADD45A融合物に追加された場合に、類似の傾向が得られた(図7E、棒4、11、12)。しかし、GADD45Aが触媒として機能しないTET1(CD)(H1671Y D1673A)-PUFa融合物の存在下で発現された場合、hMLH1発現は検出されなかった。これは、遺伝子活性化の得られたGADD45A媒介性刺激が、TET1の酸化的活性を必要とすることを示す。同様に、GADDA45A融合物がTET1(CD)融合物の非存在下で発現された場合に、活性は検出されなかった。これは、GADD45A単独では、その観察された遺伝子活性化が媒介されないことを示す。さらに、GADD45A PUFc融合物がPUFa-TET1(CD)およびPBSaのみを含むgRNAと共発現された場合に、遺伝子活性化のさらなる刺激は得られなかった(図7D)。まとめると、データは、GADD45AのCasilio媒介性標的化が、TET1媒介性遺伝子活性化を刺激し、その刺激は、TET1活性、ならびにGRNA足場を介して近位へのGADD45AおよびTET1(CD)の繋留の両方に依存することを示す。
【0359】
まとめると、Casilioプラットフォームを使用するTET1(CD)およびGADD45Aの二重標的化は、メチル化状態の質の変化のために必要とされるTET1の酸化的活性を刺激しかつ非メチル化シトシンを回復させるために必要なDNA修復経路の重要なプレイヤーを標的化されたゲノム部位へと補充することをおそらく可能にするツーインワンエフェクターを提供することによって、遺伝子活性化の顕著な質の変化を可能にする。
【0360】
メチル化でサイレントにされた遺伝子の異なる活性化レベルが、その配置ならびにエフェクターGADD45AおよびTET1(CD)融合物のタイプを単に変化させることによって得られ得るとともに、GADD45A-PUFa-TET1(CD)が最高の活性を与えることを指摘することは、重要である。これは、本発明者らのCasilio-MEプラットフォームに、表現型を回復させるかまたは過剰メチル化でサイレントにされた遺伝子と関連する疾患状態を改善するために、遺伝子活性化を微細に調整して、必要とされる発現レベルに達する特有の能力を与える。
【0361】
メチル化でサイレントにされた遺伝子を活性化するためのCasilio-ME効率のGADD45A媒介性増強が、増大したMLH1タンパク質合成と関連するという証拠は、抗hMLH1モノクローナル抗体を使用する全細胞抽出物のウェスタンブロット分析に由来した。これは、GADD45A-TET1(CD)融合物を発現した細胞におけるMLH1タンパク質の検出可能な量を示し、GADD45A-PUFa-TET1(CD)は、バンド強度によって示されるように、より高いタンパク質量を示した(図7D)。これは、TaqManアッセイにおいて得られる刺激の種々のレベルと一致する。対照的に、PUFa-TET1(CD)融合物単独を発現した細胞は、これらのトランスフェクトした細胞をトランスフェクションの3日後に集めた場合に、MLH1のいかなる検出可能な量も示さなかった(本発明者らは、5日間のインキュベーションがPUFa-TET1(CD)媒介性活性化に伴うMLH1の有意な量を検出するために必要であることを以前に示した(図7Cおよび7E))。データはともに、GADD45AをCasilio-MEプラットフォームへ付加すると、その効率が増大して、メチル化でサイレントにされた遺伝子を活性化することを示した。
【0362】
配列のリスト
【0363】
MLH1遺伝子を標的化するsgRNAスペーサー配列およびPBSacを有するgRNA足場をコードする配列のリスト
【表4】
本実施例において使用されるタンパク質配列のリストを、以下に提供する。
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【表5-5】
【0364】
実施例12 プログラム可能なCasilioおよびdCas9繋留化酵素を使用する標的化されたDNA脱メチル化およびメチル化
メチルシトシンは、CpG DNA配列のシトシン環の5位においてメチル基を共有結合的に付加するプロセスによって作製されるエピジェネティックマークである。哺乳動物細胞では、5-メチルシトシン(5mC)マークの形成は、DNAメチルトランスフェラーゼによって触媒および維持される。脱メチル化経路(これは、メチル基を除去して非メチル化DNAを回復させる)は、タンパク質のten-eleven translocation(TET)ファミリーを要する。TETメチルシトシンジオキシゲナーゼは、5mCから5-ヒドロキシメチルシトシン(5hmC)、5-ホルミルシトシン(5fC)および5-カルボキシルシトシン(5caC)中間体への反復性の酸化を触媒する。後者2つの中間体、5fCおよび5caCは、その酸化した塩基を切断し、それを非メチル化シトシンで置き換える塩基除去修復(BER)装置の基質として働くようである。
【0365】
DNAグリコシラーゼは、損傷した塩基を切り出し、そして塩基を回復させるためにBER装置によって後にプロセシングされる脱プリン/脱ピリミジン部位(AP部位)基質を生成する、初期のかつ重要な工程を触媒する。チミンDNAグリコシラーゼ(TDG)ベースのBER経路は、TET1媒介性活性脱メチル化に機能的に関連していた。なぜならそれらは、5fCおよび5caC上で特異的に作用し、NEIL1およびNEIL2グリコシラーゼ/AP-リアーゼ活性が、TDGをAP部位から置き換えて、BER装置の下流のプロセシングのための1本鎖DNA破壊基質を作り出すことによって、非メチル化シトシンの回復を促進することを示したからである。
【0366】
本発明者らは、我々の元々のCasilioプラットフォームに基づいて構築した、TET1活性の標的化された送達を可能にする我々が以前に開発したCasilio-MEを使用して、TET1およびDNAグリコシラーゼエフェクターをhMLH1プロモーター領域のCpGアイランドに同時に送達し、読み出しとしてのメチル化でサイレントにされた遺伝子の活性化を使用することによって脱メチル化の効率を比較した。本発明者らは、試験したDNAグリコシラーゼエフェクター、TDG、NEIL1、NEIL2およびNEIL3の中で、NEIL2のみが、hMLH1のTET1媒介性活性化を増強することを示した。本発明者らは、NEIL2が、1本鎖タンパク質融合物または別個のエフェクターのいずれかとしてTET1と共送達された場合に、遺伝子活性化の強いブーストを得た。NEIL2がTET1媒介性遺伝子活性化を増強する能力は、NEIL2エフェクターをプロモーター領域に標的化することを必要とした。TET1酸化的活性とNEIL2グリコシラーゼ/AP-リアーゼ活性とを、単純かつプログラム可能なCasilioプラットフォームを使用して繋ぐと、メチル化でサイレントにされた遺伝子の強い脱メチル化媒介性転写活性化が可能になり、従って、Casilioプラットフォームが、前例のない特徴を、それらの関連活性の相乗効果を与えるために、独立した経路のプレイヤーの活用に対して可能にするという概念実証を提供する。この知見は、本発明者らのCasilio-MEプラットフォームの能力を増大させ、そして重要な生物学的プロセスを研究する新たな適用の開発、およびメチル化関連疾患の新たな治療の開発への道を開く。
【0367】
結果
【0368】
ツーインワンエフェクターとしてのTET1およびDNAグリコシラーゼのCasilio媒介性共送達
【0369】
この研究では、本発明者らは、標的化されたゲノム遺伝子座へのDNAグリコシラーゼおよびTET1の触媒ドメイン(TET1(CD))の共送達が、相乗効果を有し得、TET1媒介性遺伝子活性化を増強し得るか否かを決定した。本発明者らは、PUFa-TET1(CD)へのDNAグリコシラーゼタンパク質融合物をコードするCasilioベースのプラスミドを作製した(図8A、8C)。本発明者らは、次いで、PUFa-TET1(CD)またはDNAグリコシラーゼタンパク質融合物(NEIL1、NEIL2、NEIL3またはTDG)をコードするプラスミドの各々のいずれかでトランスフェクトした細胞において、hMLH1活性化の効率を測定した。
【0370】
本発明者らは、PUFa-TET1(CD)エフェクターが、予測されるようにhMLH1発現を活性化することを示した(図8B(白い棒))。しかし、そして本発明者らが驚いたことには、NEIL2エフェクター融合物のみが、hMLH1の増強された活性化を示した(図8B 棒4および5)。際だって対照的に、TDG、NEIL1、およびNEIL3エフェクター融合物は、hMLH1の活性化に対して何ら増強効果を示さなかった(図8B、D)。NEIL2の存在下では、hMLH1活性化は、TET1エフェクター単独で得られたものより3倍高かったのに対して、NEIL1、NEIL3およびTDGでそれぞれ、全く阻害効果が得られなかったかまたは阻害効果が得られた。このデータは、NEIL2が(そしてNEIL1およびNEIL3ではない)特異的に関連する活性が、5mC削除プロセスをブーストし、より高い遺伝子活性化をもたらすことを示す。
【0371】
NEIL2グリコシラーゼ/APリアーゼ活性で得られる相乗効果的影響を確認するために、本発明者らは、特異性に関するコントロールとして非標的化ガイドRNA(gRNA)を含める実験を行った。図9A~9Bに示されるように、遺伝子活性化の4倍の増大は、TaqManアッセイにおいて増大した相対的発現によって示されるように、NEIL2がPUFa-TET1CD融合物に存在する場合に得られた。NEIL2がPUFaのアミノ末端またはカルボキシル末端のいずれに融合されたかとは無関係に、同様の活性化が得られた(図9A、9B)。
【0372】
対照的に、非標的化gRNAがhMLH1 gRNAに置き換わった場合には、活性は得られなかった。これは、MLH1プロモーター領域へのエフェクターの特異的標的化が、観察される活性化のために必要とされることを示す(図9B)。これは、ツーインワンエフェクターとしてのNEIL2およびTET1(CD)の活用が、Casilio-ME媒介性遺伝子活性化の効率をかなりブーストするという証拠を提供する。本発明者らは、MLH1活性化の効率において観察された獲得が、TET1によるmC酸化をNEIL2媒介性BER経路に効果的に繋いで、標的化された部位での非メチル化シトシンの回復を簡素化することによって媒介され得る可能性があると推測した。
【0373】
独立したエフェクターモジュールとしてのTET1およびNEIL2のCasilio媒介性共送達
【0374】
Casilioプラットフォームを使用して、本発明者らは、TET1(CD)およびNEIL2エフェクターをゲノム部位へと二重標的化して、これらの酵素を、別個のRNA配列を結合するようにプログラムされた2つの独立したPUFタンパク質へと繋留する代替の方法を試験した。その目的のために、本発明者らは、TET1(CD)をPUFaに、およびNEIL2をPUFcに融合し、コグネートPUF結合部位(PBSaおよびPBSc)を含む改変されたgRNA足場を使用した(図10A)。
【0375】
PBSa/c両方を有するgRNAの存在下でのPUFa-TET1(CD)およびPUFc-NEIL2の二重発現は、TET1(CD)媒介性hMLH1活性化の有意な刺激を示した(図10B)。NEIL2は、PUFcのいずれかの末端に融合された場合に、RT-定量的PCRによって示されるように、hMLH1発現において7倍の増大を示した(図10B)。NEIL2媒介性刺激がエフェクターの共標的化を必要とするという証拠は、NEIL2およびTET1(CD)PUF融合物がPBSaを含むが、PBScを欠くgRNA足場の存在下で発現された実験に由来した(図11A)。このデータは、NEIL2およびTET1エフェクターの共発現が、gRNAがPBScを欠いた場合にTET1媒介性遺伝子活性化に対して影響を有しないことを示した(図11B)。これは、その得られた相乗効果がNEIL2の過剰発現の一般的効果に由来しないが、それらの関連活性ならびに効率的mC削除および遺伝子活性化を繋ぐことを可能にするために、TET1エフェクターの近位へのその標的化を必要とすることを示す。
【0376】
まとめると、本データは、NEIL2のCasilio媒介性標的化が、1本鎖融合物としてまたはRNA足場へのPUF媒介性結合を介して、近位へとNEIL2およびTET1を橋渡しすることを必要とする様式で、TET1媒介性遺伝子活性化を刺激することを明らかに示す。より高い活性化レベルが、NEIL2非依存的モジュールで達成された。これは、このようにして、ツーインワンまたは独立したエフェクターモジュールとしてNEIL2/TET1エフェクターを使用することによって、遺伝子活性を調整するハンドルを提供する。
【0377】
要約すると、Casilioプラットフォームを使用するTET1(CD)およびNEIL2の二重標的化は、TET1酸化的活性とBERのNEIL2開始とを繋ぐことをおそらく可能にするNEIL2エフェクターモジュールを提供することによって、遺伝子活性化の顕著な質の変化を可能にし、非メチル化シトシンを回復させるために必要なDNA修復経路の重要なプレイヤーを標的化されたゲノム部位へとその後補充することをもたらす。
【0378】
材料および方法
【0379】
細胞培養およびトランスフェクション
【0380】
HEK293T細胞を、37℃および5% COに設定したインキュベーターの中で、10% ウシ胎仔血清(FBS)(Lonza)、4% Glutamax(Gibco)、1% ピルビン酸ナトリウム(Gibco)およびペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco)を有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Sigma)中で培養した。細胞を、12ウェルプレートへと150,000細胞/ウェルにおいて播種し、その翌日に、100ngのdCas9構築物、100ngの改変されたsgRNA構築物および200ngのPUF融合物で、Attracteneトランスフェクション試薬を用いて製造業者の説明書(Qiagen)に従ってトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を、トランスフェクションの3日後に、または示された別の方法で採取し、細胞ペレットを、RNA抽出のために使用した。
【0381】
定量的RT-PCR分析
【0382】
細胞を採取し、ダルベッコリン酸緩衝化生理食塩水(dPBS)で洗浄し、125×gにおいて5分間遠心分離し、次いで、急速凍結したペレットを、-80℃で貯蔵した。RNAを、RNeasy Plus Mini Kitを使用して製造業者の説明書(Qiagen)に従って抽出した。Applied Biosystems High Capacity RNA-to-cDNAキットを使用して、200ng~2μgのRNAでcDNAライブラリーを作製した。TaqMan遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystems)を、内因性コントロールとしてGAPDH(Hs03929097, VIC)を、および標的としてhMLH1(Hs00179866, FAM)を使用してデザインした。TaqMan Universal Master Mix IIとUNG(Applied Biosystems)とを、2μlの希釈したcDNAを各反応のために使用して、定量的PCR(qPCR)のために使用した。活性化を、Applied Biosystems ViiA7機器で分析した。遺伝子発現レベルを、、「ΔΔCt」アルゴリズムによって計算し、コントロールサンプルに対して正規化した。
【0383】
配列
【0384】
hMLH1遺伝子を標的化するsgRNAスペーサー配列ならびにPBSaおよびPBScを有するgRNA足場をコードする配列のリスト
【表6】
タンパク質配列のリスト
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表7-4】
【表7-5】
【表7-6】
【表7-7】
参考文献
【0385】
Barreto G., Schafer A., Marhold J., Stach D., Swaminathan S.K., Handa V., Doderlein G., Maltry N., Wu W., Lyko F., Niehrs C. Gadd45a promotes epigenetic gene activation by repair-mediated DNA demethylation. Nature. 2007;445:671-675.
【0386】
Le May N., Mota-Fernandes D., Velez-Cruz R., Iltis I., Biard D., Egly J.M. NER factors are recruited to active promoters and facilitate chromatin modification for transcription in the absence of exogenous genotoxic attack. Mol. Cell. 2010;38:54-66
【0387】
Schmitz K.M., Schmitt N., Hoffmann-Rohrer U., Schafer A., Grummt I., Mayer C. TAF12 recruits Gadd45a and the nucleotide excision repair complex to the promoter of rRNA genes leading to active DNA demethylation. Mol. Cell. 2009;33:344-353
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Ito, S., et al., Role of Tet proteins in 5mC to 5hmC conversion, ES-cell self-renewal and inner cell mass specification. Nature, 2010. 466(7310): p. 1129-33.
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Kienhofer, S., et al., GADD45a physically and functionally interacts with TET1. Differentiation, 2015. 90(1-3): p. 59-68.
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Muller, U., et al., TET-mediated oxidation of methylcytosine causes TDG or NEIL glycosylase dependent gene reactivation. Nucleic Acids Res, 2014. 42(13): p. 8592-604.
図1A
図1B
図1C
図1D
図2AB
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5AB
図5C
図6
図7A
図7B
図7CD
図7E
図8AB
図8CD
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
【配列表】
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