(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】ラベル及びラベルの製造方法
(51)【国際特許分類】
G09F 3/02 20060101AFI20220426BHJP
G09F 3/04 20060101ALI20220426BHJP
B65D 23/00 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
G09F3/02 F
G09F3/02 U
G09F3/04 C
B65D23/00 H
(21)【出願番号】P 2019525522
(86)(22)【出願日】2018-06-14
(86)【国際出願番号】 JP2018022751
(87)【国際公開番号】W WO2018230653
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2017118877
(32)【優先日】2017-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000238005
【氏名又は名称】株式会社フジシールインターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 雅史
(72)【発明者】
【氏名】中川 貴弘
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-311832(JP,A)
【文献】特開2016-142840(JP,A)
【文献】特開2004-306424(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3037262(EP,A1)
【文献】特開平11-73111(JP,A)
【文献】特開2014-5329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 3/00- 3/20
B41M 1/00- 3/18
B41M 7/00- 9/04
B32B 1/00-43/00
B65D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイン数が40mN/m以下のラベル基材と、
前記ラベル基材上に直接形成され、網点再現率が50~95%である水性インキ層と、
前記水性インキ層を覆って前記ラベル基材上に形成された第1油性インキ層と、
前記水性インキ層及び前記第1油性インキ層を覆って前記ラベル基材上に形成される第2油性インキ層と、
を備えた、ラベル。
【請求項2】
前記ラベル基材上に直接形成された第3油性インキ層をさらに備え、
前記水性インキ層の一部が前記第3油性インキ層上に形成されている、請求項1に記載のラベル。
【請求項3】
前記ラベル基材上には、前記第3油性インキ層によって周りが囲まれた窓領域が形成され、
前記水性インキ層は、前記窓領域に形成されると共に、前記窓領域の周囲に位置する前記第3油性インキ層の裏側に重なって形成されている、請求項2に記載のラベル。
【請求項4】
前記水性インキ層が形成された領域の全ての端縁は、前記第3油性インキ層の裏側に位置している、請求項3に記載のラベル。
【請求項5】
前記水性インキ層は、マイクロカプセルを含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のラベル。
【請求項6】
前記水性インキ層は、前記マイクロカプセルとして、示温カプセルを含有する示温印刷層である、請求項5に記載のラベル。
【請求項7】
前記示温カプセルの平均粒径は、0.1~5μmである、請求項6に記載のラベル。
【請求項8】
前記第1油性インキ層は、不透明な印刷層又は無色透明な印刷層であり、
前記第2油性インキ層は、不透明な印刷層である、請求項6又は7に記載のラベル。
【請求項9】
前記第1油性インキ層には、前記第2油性インキ層と同じ色材が含有されている、請求項8に記載のラベル。
【請求項10】
前記水性インキ層は、当該層の温度が所定温度以下では無色で当該温度を超えると発色するか、又は所定温度以上では無色で当該温度よりも下がると発色し、
前記水性インキ層が発色していない状態では、少なくとも前記第2油性インキ層によってデザインが表現され、
前記水性インキ層が発色した状態では、少なくとも前記第2油性インキ層によって前記水性インキ層の背景色が表現される、請求項8又は9に記載のラベル。
【請求項11】
前記第1油性インキ層及び前記第2油性インキ層の少なくとも一方は、硬化剤成分を含有する、請求項1~10のいずれか1項に記載のラベル。
【請求項12】
前記ラベル基材は、熱収縮性フィルムである、請求項1~11のいずれか1項に記載のラベル。
【請求項13】
ダイン数が40mN/m以下のラベル基材を準備する工程と、
溶媒における水分量が90%~100%である水性インキを用いて、網点再現率が50~95%である水性インキ層を前記ラベル基材上に直接形成する工程と、
前記ラベル基材上に前記水性インキ層を覆う第1油性インキ層を形成する工程と、
前記ラベル基材上に前記水性インキ層及び前記第1油性インキ層を覆う第2油性インキ層を形成する工程と、
を含む、ラベルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラベルに関し、特に水性インキ層を備えたラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
ペットボトルなどの容器には、商品名や絵柄、製造者名、ロゴマーク、商品説明等を付与するために、シュリンクラベル等のラベルが装着されている。ラベルには、商品名や絵柄等を設けるために印刷層が形成される。例えば、特許文献1には、熱収縮性フィルムの少なくとも片面に水性インキによる印刷が施され、水性インキ層の表面に耐水性又は耐アルカリ性樹脂からなるトップコート層が形成された熱収縮性ラベルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ラベルを構成する合成樹脂製フィルム基材上に水性インキを直接塗布して水性インキ層を形成する場合、インキが弾かれて目的とする領域全体にインキ層を形成できず、ラベルの見栄えが悪くなるという課題が想定される。かかる課題は、水性インキ中の水の含有量が多くなるほど顕著になる。コロナ放電等によりラベル基材を表面処理してラベル基材の濡れ性を改善することもできるが、この場合は、ラベル基材のブロッキングが発生する可能性があり、ラベル基材の取扱いが困難となる。また、水性インキの塗工直前にラベル基材にコロナ放電処理を行うことも考えられるが、製造工程の安全性の観点から採用できない場合もある。
【0005】
本発明の目的は、ラベル基材上に水性インキ層が直接形成されるラベルにおいて、ラベル基材に特別な表面処理を施すことなく、ラベルの見栄えを改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様であるラベルは、ダイン数が40mN/m以下のラベル基材と、前記ラベル基材上に直接形成され、網点再現率が50~95%である水性インキ層と、前記水性インキ層を覆って前記ラベル基材上に形成された第1油性インキ層と、前記水性インキ層及び前記第1油性インキ層を覆って前記ラベル基材上に形成される第2油性インキ層とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様であるラベルの製造方法は、ダイン数が40mN/m以下のラベル基材を準備する工程と、溶媒における水分量が90%~100%である水性インキを用いて、網点再現率が50~95%である水性インキ層を前記ラベル基材上に直接形成する工程と、前記ラベル基材上に前記水性インキ層を覆う第1油性インキ層を形成する工程と、前記ラベル基材上に前記水性インキ層及び前記第1油性インキ層を覆う第2油性インキ層を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、ラベル基材上に水性インキ層が直接形成されるラベルにおいて、ラベル基材に特別な表面処理を施すことなく、ラベルの見栄えを改善することができる。本発明に係るラベルでは、ラベル基材のダイン数が低いため、インキが弾かれてラベル基材上の目的とする領域全体に水性インキ層は形成されないが、第1油性インキ層及び第2油性インキ層を設けることで、水性インキ層が形成された領域の色抜けを防止でき、ラベル上の文字や絵柄や背景色等を綺麗に表現できる。
【0009】
つまり、ラベル基材上で水性インキが弾かれることにより、水性インキ層の網点再現率が低くなり、その分、水性インキ層の凹凸(厚みのバラつき)が大きくなる。そのため、水性インキ層の裏側にインキを綺麗に塗工することが難しい。そこで、本発明に係るラベルでは、水性インキ層の裏側に第1油性インキ層を設けて上記凹凸の影響を緩和し、第2油性インキ層によって水性インキ層の裏側が完全に覆われるようにしている。このため、ラベル上の文字や絵柄や背景色等を綺麗に表現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の一例であるラベルを表面側から見た図(平面図)である。
【
図3】実施形態の一例である筒状ラベルを示す図である。
【
図4】ラベル基材の水性インキ層が形成された部分を拡大して示す図である。
【
図5】ラベル基材の水性インキ層が形成された部分の顕微鏡画像である。
【
図6】ラベル基材の水性インキ層が形成された部分を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る実施形態の一例について詳細に説明する。なお、本発明の適用は以下で説明する実施形態に限定されない。実施形態において参照する図面は、模式的に記載されたものであるから、図面に描画された構成要素の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0012】
本明細書では、ラベルが容器等の被装着物に装着された状態で、被装着物側を向くラベルの面を「裏面」、裏面と反対側の面を「表面」とし、ラベルの各構成要素についても「表裏」の用語を使用して相対的な位置関係を説明する。また、ラベルを筒状に成形してなる筒状ラベルでは、ラベルの裏面が筒の内側に向く内面となる。また、本明細書において「端縁」とは、印刷領域を例に挙げて説明すると、印刷領域の端に位置する部分を意味し、「端部」とは印刷領域の端縁及びその近傍を意味する。
【0013】
以下では、熱収縮性を有するシュリンクラベルであるラベル10,10Aを例示するが、本発明に係るラベルの構成は、例えば熱収縮性を有さない巻き付けラベル、ストレッチラベル、タックラベル等に適用することもできる。
【0014】
図1は実施形態の一例であるラベル10の平面図、
図2は
図1中のAA線断面図である。
図1及び
図2に例示するように、ラベル10は、ダイン数が40mN/m以下のラベル基材11と、ラベル基材11上に直接形成され、網点再現率が50~95%である水性インキ層13とを備える。本明細書において、ダイン数は、ラベル基材11の液体に対する濡れ性を表す指標であって、値が低くなるほど水に対する濡れ性が低下する。また、網点再現率は、ラベル基材11上の水性インキ層13を形成しようとする領域(以下、「目標領域」という場合がある)のうち、実際に水性インキ層13が形成された領域の割合を意味する。
【0015】
ラベル10は、水性インキ層13を覆ってラベル基材11上に形成された下地油性インキ層14(第1油性インキ層)と、水性インキ層13及び下地油性インキ層14を覆ってラベル基材11上に形成された押え油性インキ層15(第2油性インキ層)とを備える。ラベル10は、さらに、ラベル基材11上に直接形成された油性インキ層12(第3油性インキ層)を備えることが好ましい。
【0016】
油性インキ層12及び水性インキ層13は、商品名や絵柄、製造者名、ロゴマーク、商品説明等を表示するための印刷層である。詳しくは後述するが、水性インキ層13は、示温カプセルを含有する示温印刷層であってもよい。他方、下地油性インキ層14及び押え油性インキ層15は、特に水性インキ層13の損傷を抑制するための印刷層、即ち保護層として、また水性インキ層13の見栄えを改善するための印刷層として機能する。
【0017】
ラベル10は、平面視矩形形状、又は楕円形状、円形状、矩形形状以外の多角形状、端縁が波形等に形成された形状などであってもよい。ラベル10の形状は、上記各印刷層の支持体として機能するラベル基材11の形状によって決定される。ラベル基材11は、熱収縮性を有するシュリンク基材であって、一般的に一方向と一方向に直交する方向の熱収縮率が異なる。ラベル基材11は、例えば平面視長方形状を有し、長辺方向(容器に装着した際の周方向)が主収縮方向となる。なお、本明細書において平面視とは、ラベル10(ラベル基材11)の表裏面に対して垂直に見た状態を意味する。
【0018】
油性インキ層12は、ラベル基材11の端部と後述の窓領域Zを除くラベル基材11の裏面上に形成されている。ラベル基材11の一方の短辺に沿った端部には、ラベル基材11の裏面が露出した露出領域が他の端部の露出領域よりも幅広に設けられている。以下、当該幅広の露出領域を露出領域18とする。ラベル10は、例えば長辺方向を筒周方向として筒状に成形され、露出領域18に接合部が形成される(後述の
図3参照)。なお、粘着テープを用いて筒状ラベルの周方向端部同士を接合する場合など、接合形態によってはラベル基材11の端縁まで油性インキ層12を形成してもよい。
【0019】
ラベル基材11上には、油性インキ層12が形成された領域(以下、「領域Z
12」とする)によって周りが囲まれた窓領域Zが設けられている。即ち、窓領域Zの端縁となる領域Z
12の端縁E
12は環状に形成されている。窓領域Zには、油性インキ層12は存在せず、水性インキ層13が形成され、窓領域Zは水性インキ層13により表示される文字や絵柄等が油性インキ層12で隠れることなくラベル10の表側から見える領域となる。
図1に示す例では、窓領域Zの全体に水性インキ層13が形成されている。窓領域Zは、平面視円形状を有し、ラベル基材11の長辺方向中央部に形成されている。
【0020】
窓領域Zの形状、配置、及び寸法は、
図1に示すものに限定されず、例えば平面視楕円形状、多角形状、端縁E
12が波形等に形成された形状などであってもよい。また、窓領域Zはラベル基材11上の任意の位置に形成できる。窓領域Zは1つに限定されず、複数設けられていてもよい。水性インキ層13は、ラベル基材11の裏面上において、窓領域Zに形成されると共に、窓領域Zの周囲に位置する油性インキ層12の裏側に重なって形成されている。即ち、水性インキ層13の一部が油性インキ層12上に形成されている。
【0021】
水性インキ層13は、油性インキ層12の裏側において所定幅を有する環状に設けられており、水性インキ層13が形成された領域(以下、「領域Z13」とする)の全ての端縁E13は油性インキ層12(領域Z12)の裏側に位置する。端縁E13を領域Z12の裏側に重ねることで、端縁E13を目立ち難くすることができる。なお、窓領域Z以外に水性インキ層13を形成してもよく、例えばラベル基材11の端部近傍等の領域Z12によって周りが囲まれていない領域に水性インキ層13を形成してもよい。
【0022】
下地油性インキ層14は、水性インキ層13を覆ってラベル基材11の裏面側に形成される。下地油性インキ層14は、水性インキ層13の少なくとも一部を覆っていればよいが、好ましくは水性インキ層13の50%以上、より好ましくは70%以上を覆うように形成される。換言すると、水性インキ層13の裏側に下地油性インキ層14が存在しない部分が存在してもよい。下地油性インキ層14は、ラベル10の厚み方向に水性インキ層13と重なる範囲及びその近傍に形成されることが好ましく、下地油性インキ層14の一部は油性インキ層12上、又はラベル基材11上に直接形成されてもよい。また、下地油性インキ層14は、水性インキ層13と重なる範囲を大きく超えてラベル基材11の裏面の広範囲に形成されてもよい。
【0023】
押え油性インキ層15は、水性インキ層13及び下地油性インキ層14を覆ってラベル基材11の裏面側に形成される。押え油性インキ層15は、ラベル10の厚み方向に水性インキ層13と重なる範囲及びその近傍に形成されることが好ましく、押え油性インキ層15の一部は油性インキ層12上、又はラベル基材11上に直接形成されてもよい。押え油性インキ層15は、例えば下地油性インキ層14上に形成され、また下地油性インキ層14に覆われない水性インキ層13上に形成される。つまり、水性インキ層13の裏側には、水性インキ層13の全域を覆って押え油性インキ層15が形成される。
【0024】
押え油性インキ層15は、不透明な印刷層であることが好ましく、水性インキ層13が形成された領域Z13の色抜けを防止する。押え油性インキ層15を設けることで、ラベル上の文字や絵柄や背景色等を綺麗に表現できる。押え油性インキ層15の色は、白色等の無彩色、赤、青、黄、緑等の有彩色のいずれであってもよい。不透明な押え油性インキ層15を形成することで、例えばラベル10を容器に装着した際の容器の色や容器に充填される液体の色の影響を受けず、ラベル上のデザインを綺麗に表現できる。押え油性インキ層15は、油性インキ層12と重なる範囲を超えてラベル基材11の裏面の広範囲に形成されていてもよい。下地油性インキ層14については、無色透明であってもよく、白色等の無彩色、赤、青、黄、緑等の有彩色であってもよい。
【0025】
図3は、ラベル10Aを筒状に成形した筒状ラベル30を示す図である。
図3に例示するように、筒状ラベル30は、水性インキ層13、下地油性インキ層14、及び押え油性インキ層15が形成されたラベル10Aの面(裏面)が内側を向いた状態で当該ラベルが筒状に成形されてなる。筒状ラベル30は、ラベル10Aの周方向一端部が周方向他端部に一端部を外側にして重ね合わされ、外側端部33(一端部)の内面の少なくとも一部が内側端部32(他端部)の外面に接合された接合部31を有する。
【0026】
接合部31は、例えばテトラヒドロフラン(THF)等の溶剤を用いた溶着により形成されるが、接着剤を用いて形成されてもよい。また、内側端部32及び外側端部33の外面に跨って粘着テープを貼付することで当該両端部を接合してもよい。
図3に示す例では、外側端部33の内面のうち接合部31となる部分には各印刷層が形成されておらず、接合部31においてラベル基材11同士が直接接合されている。溶剤溶着により接合部31を形成する場合、外側端部33の内面には、露出領域18(
図1参照)のような幅広の露出領域が形成されていることが好ましい。
【0027】
筒状ラベル30を構成するラベル10Aは、水性インキ層13がラベル基材11上の広範囲に形成され、内側端部32と重なる外側端部33の内面にまで形成されている点で、ラベル10と異なる。水性インキ層13が外側端部33の内面に存在する場合、例えば高温のスチームを用いて筒状ラベル30を熱収縮させる際に、軟化した水性インキ層13が内側端部32と接触して当該インキ層に割れが発生し、外観不良を招くことが想定される。かかる問題に対処すべく、下地油性インキ層14及び押え油性インキ層15の少なくとも一方に硬化剤を添加して塗膜を硬化させてもよい。なお、
図3では油性インキ層12の図示を省略している。油性インキ層12は、例えば、外側端部33を除くラベル基材11の内面の一部又は全面に形成されていてもよい。
【0028】
以下、ラベル10の各構成要素について更に詳説する。
【0029】
[ラベル基材11]
ラベル基材11は、例えば熱収縮性を有するシュリンク基材であって、好ましくは無色透明なシュリンクフィルムで構成される。但し、ラベル基材11は、シュリンク基材に限定されず、実質的に熱収縮性を有さない無延伸基材、ストレッチ性、非収縮性基材を有するストレッチ基材等であってもよい。例えば、ラベル10が巻き付けラベルである場合は、ラベル基材11に無延伸フィルムや非収縮性フィルムが適用され、ラベル10がストレッチラベルである場合は、ラベル基材11にストレッチ性を有するストレッチフィルムが適用される。
【0030】
ラベル基材11を構成する樹脂の種類は、要求物性、用途、コストなどに応じて、適宜選択することが可能であり、特に限定されないが、例えばポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂が挙げられる。中でも、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂が好ましい。これらの樹脂は1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。また、ラベル基材11を構成する樹脂フィルムは、単層フィルムであってもよく、同種又は異種の樹脂を積層した積層フィルムであってもよい。
【0031】
上記ポリエステル系フィルムに用いられるポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂、ポリ(エチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート)(PEN)、ポリ乳酸(PLA)等を用いることができる。中でも、PET系樹脂が好ましい。上記ポリオレフィン系フィルムに用いられるポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒系LLDPE(mLLDPE)等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリプロピレン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、環状オレフィン樹脂などが挙げられる。上記ポリスチレン系フィルムに用いられるポリスチレン系樹脂としては、ポリスチレン、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-ブタジエン・イソプレン-スチレン共重合体(SBIS)、スチレン-アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
【0032】
ラベル基材11は、ダイン数が40mN/m以下であり、38mN/m以下であってもよい。ラベル基材11のダイン数は、例えば30~40mN/m、又は35~38mN/mである。ラベル基材11がポリオレフィン系フィルムで構成される場合、ダイン数は約40mN/mであり、ポリスチレン系フィルムで構成される場合、ダイン数は約38mN/mである。ラベル基材11のダイン数が40mN/m以下、特に38mN/m以下であると、水の濡れ性が低下して水性インキを弾き易くなる。このため、目標領域の全体に水性インキ層13を形成することが困難になる。ラベル基材11のダイン数は、JIS K6768に基づいて測定される。
【0033】
ラベル基材11がシュリンクフィルムである場合、当該フィルムは、良好なシュリンク特性を発揮する観点から、少なくとも一方向に配向したフィルムであることが好ましい。ラベル基材11は、シュリンクフィルムの配向方向に主に熱収縮する。シュリンクフィルムとしては、一方向に配向した一軸配向フィルム(一方向に主に延伸され、当該一方向と直交する方向にわずかに延伸された、実質的に一方向に延伸されたフィルムを含む)、又は二軸配向フィルムが用いられることが好ましい。配向フィルムは、例えばテンター方式、ロール方式、チューブ方式等によって、未延伸フィルムを少なくとも一方向に延伸することで得られる。
【0034】
上記シュリンクフィルムの主収縮方向の熱収縮率は、90℃の熱水に10秒間浸漬する条件で、例えば30~90%が好ましく、より好ましくは40~85%、特に好ましくは45~80%である。上記シュリンクフィルムの主収縮方向と直交する方向の熱収縮率(90℃の熱水に10秒浸漬)は、特に限定されないが、-3~15%が好ましく、-1~10%がより好ましい。シュリンクフィルムの厚みは、特に限定されないが、好ましくは10μm~100μm、より好ましくは15μm~80μm、特に好ましくは20μm~60μmである。
【0035】
[油性インキ層12]
油性インキ層12は、商品名や絵柄、製造者名、ロゴマーク、商品説明等を表示するための印刷層であって、任意の印刷パターンで形成される。印刷パターンとは、文字や絵柄等のデザイン、及びデザインの配置を意味する。油性インキ層12は、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、凸版輪転印刷法、スクリーン印刷法などの従来公知の印刷法により形成できる。有版印刷法は、印刷層の文字や絵柄等に応じて作製された版を用いる印刷法である。例えば、グラビア印刷法には凹版が、フレキソ印刷法、凸版輪転印刷法には凸版が、スクリーン印刷法には孔版がそれぞれ用いられる。
【0036】
油性インキ層12は、例えば色材及びバインダ樹脂を含み、また各種添加剤を含んでいてもよい。油性インキ層12は、従来公知の油性インキを用いて形成できる。油性インキは、溶剤系インキとも呼ばれ、例えば色材と、バインダ樹脂と、任意の添加剤と、有機溶媒とを含有し、バインダ樹脂や色材が溶媒に溶解又は分散したものである。なお、油性インキ層12(その他の油性インキ層についても同様)の状態では、有機溶媒は蒸発している。油性インキ層12は、一般的に、有機溶剤に溶解し、水系溶媒に曝しても不溶である。
【0037】
油性インキ層12の色(色相、明度、彩度)は、文字や絵柄等のデザインに応じて任意に設定でき、例えば赤、黄赤、黄、黄緑、緑、青緑、青、青紫、紫、赤紫、金属色(銀色、金色等)、パール色等が挙げられる。油性インキ層12の色は、白色、黒色、灰色(無彩色)であってもよい。油性インキ層12は、例えば1種類の色材を含む1つの印刷層によって、又は互いに異なる色材を含む2以上の印刷層を組み合わせることによって文字や絵柄等を形成している。
【0038】
油性インキ層12に含まれる色材は、文字や絵柄等のデザインに応じて所望の色を表現できるものであれば特に限定されず、従来公知の染料や顔料を用いることが可能である。色材の具体例としては、シアン顔料(例えば、銅フタロシアニンブルー、ウルトラマリン青、プロシア青等)、マゼンダ顔料(例えば、縮合アゾ系顔料、鉛丹等)、イエロー顔料(例えば、アゾレーキ系顔料、黄鉛、亜鉛黄等)、及びブラック顔料(例えば、カーボンブラック、チタンブラック等)が挙げられる。なお、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各顔料によって、又はこれらの2種類以上を組み合わせることによって、上記各色を表現することができる。また、金属顔料、パール顔料、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料が用いられてもよい。
【0039】
油性インキ層12に含まれるバインダ樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合系樹脂などから選択される1種又は2種以上の混合物が例示できる。中でも、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂が好ましい。
【0040】
油性インキ層12は、例えばラベル基材11上に所望の印刷インキがドット状に多数付着して形成されており、当該ドットの大きさとラベル基材11の単位面積当たりのドット面積によって油性インキ層12の色、特に濃淡等が表現される。このドットは、一般的に網点と呼ばれる。印刷インキの網点の密度、寸法等は、版の凹凸パターンを変更することにより調整可能である。油性インキ層12における網点再現率は、例えば約100%である。油性インキ層12の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1μm~5μmである。
【0041】
以下、
図4~
図6を適宜参照しながら、水性インキ層13、下地油性インキ層14、及び押え油性インキ層15について詳説する。
図4は、ラベル基材11の水性インキ層13が形成された部分を拡大して示す図である(下地油性インキ層14及び押え油性インキ層15の図示省略)。
図5は、水性インキ層13が形成された部分の電子顕微鏡(SEM)画像である。
図6は、水性インキ層13が形成された部分を拡大して示す断面図である。なお、比較例として、
図7及び
図8にはダイン数が高いラベル基材11Xを用いた場合を、
図9には下地油性インキ層14を設けない場合をそれぞれ示す。
【0042】
[水性インキ層13]
水性インキ層13は、油性インキ層12と同様に、商品名や絵柄、製造者名、ロゴマーク、商品説明等を表示するための印刷層であって、任意の印刷パターンで形成される。また、水性インキ層13は、グラビア印刷法などの従来公知の印刷法により形成できる(下地油性インキ層14及び押え油性インキ層15も同様)。水性インキ層13は、例えば色材及びバインダ樹脂を含み、また各種添加剤を含んでいてもよい。
【0043】
水性インキ層13は、従来公知の水性インキを用いて形成できる。水性インキは、例えば色材と、バインダ樹脂と、任意の添加剤と、水系溶媒とを含有し、バインダ樹脂や色材が水系溶媒に溶解又は分散したものである。水系溶媒は、水を主成分とする溶媒であって、水の割合が90%~100%であることが好ましく、95%~100%であることがより好ましい。なお、水性インキ層13の状態では、水系溶媒は蒸発している。水性インキ層13は、一般的に、水系溶媒に溶解又は膨潤する。
【0044】
水性インキ層13の色(色相、明度、彩度)は、油性インキ層12と同様に任意に設定でき、例えば赤、黄赤、黄、黄緑、緑、青緑、青、青紫、紫、赤紫、金属色(銀色、金色等)、パール色等が挙げられる。水性インキ層13の色は、白色、黒色、灰色(無彩色)であってもよい。水性インキ層13は、例えば1種類の色材を含む1つの印刷層によって、又は互いに異なる色材を含む2以上の印刷層を組み合わせることによって文字や絵柄等を形成している。
【0045】
水性インキ層13に含まれる色材は、文字や絵柄等のデザインに応じて所望の色を表現できるものであれば特に限定されず、従来公知の染料や顔料を用いることが可能である。色材の具体例としては、上記シアン顔料、上記マゼンダ顔料、上記イエロー顔料、及び上記ブラック顔料などが挙げられる。また、金属顔料、パール顔料、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料が用いられてもよい。
【0046】
水性インキ層13は、色材として、示温カプセル等のマイクロカプセルを含有していてもよい。示温カプセルは、温度変化により色が変化する色材であって、例えば所定の温度以上では無色で、当該温度よりも下がると発色する、又は所定の温度以下では無色で、当該温度を超えると発色する。水性インキ層13は、当該層の温度が所定温度以上では無色で当該温度よりも下がると発色してもよく、例えば常温(25℃)では無色で、10℃以下の温度で発色してもよい。即ち、ラベル10が装着されるボトルが冷えると示温印刷層によってデザインが表れる。また、水性インキ層13は、当該層の温度が所定温度以下では無色で当該温度を超えると発色してもよく、例えば常温では無色で、50℃以上の温度で発色してもよい。即ち、ラベル10が装着されるボトルが温まると示温印刷層によってデザインが表れる。このような示温印刷層を設けることで、ラベル10に食べ頃、飲み頃などの表示機能を付与できる。水性インキ層13に含有される示温カプセルは、色の変化が不可逆的な不可逆性示温カプセルであってもよいが、好ましくは色の変化が可逆的な可逆性示温カプセルである。可逆性示温カプセルとしては、ロイコ染料、顕色剤、及び溶媒をマイクロカプセル化したものが例示できる。この場合、ロイコ染料と顕色剤が互いに電子を授受する結合状態のときに発色し、電子を授受しない非結合状態のときに無色となる。なお、溶媒の種類を変えることで発色温度を変更できる。なお、示温カプセルは、当該結合状態のときに無色で、非結合状態ときに発色するものであってもよい。ロイコ染料を用いた示温カプセルは、有機溶媒中で破壊されて失活しやすいので、ラベル10の構成は、このような示温カプセルをラベル基材11上に直接設ける場合に好適である。また、水性インキ層13は、色材として、香料カプセル等を含有していてもよい。なお、水性インキ層13は、常温(25℃)では無色で、50℃以上の温度で発色する不可逆性示温カプセルを含有していてもよい。この場合、一度、特定の温度領域(例えば、50℃以上)に曝されると、示温印刷層が着色された状態のままとなるので、特定の温度領域に曝されたことを検知可能となる。
【0047】
水性インキ層13が示温カプセルを含有する示温印刷層であり、下地油性インキ層14が不透明な印刷層又は無色透明な印刷層であり、押え油性インキ層15が不透明な印刷層である場合、示温印刷層が発色していない状態では、少なくとも押え油性インキ層15によってデザインが表現される。他方、示温印刷層が発色した状態では、示温印刷層が映えるように押え油性インキ層15等によって示温印刷層の背景色が表現される。特に、下地油性インキ層14が白色印刷層又は無色透明な印刷層であり、押え油性インキ層15が白色印刷層である場合、示温印刷層が発色していない状態では、少なくとも押え油性インキ層15によって白色のデザインが表現される。他方、示温印刷層が発色した状態では、示温印刷層が映えるように押え油性インキ層15等によって示温印刷層の背景色が表現される。即ち、発色した示温印刷層が綺麗に表現される。下地油性インキ層14は、押え油性インキ層15と同じ色材が含有された不透明な印刷層(押え油性インキ層15と同色の印刷層)又は無色透明な印刷層であるのが好ましい。なお、下地油性インキ層14が不透明な印刷層である場合、下地油性インキ層14と押え油性インキ層15の両方によって、デザイン及び背景色が表現される。
【0048】
示温カプセルの平均粒径は、例えば0.1μm~5μmである。本明細書において、平均粒径とは、レーザ回折法によって測定される体積平均粒径であって、粒子径分布において体積積算値が50%となるメジアン径を意味する。示温カプセルは、有機溶剤によってその機能が損なわれ易いので、示温カプセルを用いる場合、水性インキ層13を形成する水性インキの溶媒における水分量は90%~100%であることが好ましく、95%~100%であることがより好ましい。
【0049】
水性インキ層13に含まれるバインダ樹脂としては、油性インキ層12と同様に、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂などが例示できるが、親油性である油性インキ層12のバインダ樹脂と異なり親水性である。水性インキ層13のバインダ樹脂は、ヒドロキシル基や、アミン中和されたカルボキシ基等の親水基を有する、或いは界面活性剤によって親水化処理されている。また、水性インキ層13のバインダ樹脂は、一般的に油性インキ層12のバインダ樹脂と比較して分子量が大きい。例えば、油性インキ層12のバインダ樹脂の重量平均分子量(Mw)は100,000未満(好ましくは、50,000未満)であるのに対して、水性インキ層13のバインダ樹脂の重量平均分子量は100,000以上である。
【0050】
図4~
図6に示すように、水性インキ層13は、ラベル基材11上に多数のドットである網点20が多数付着して形成されている。一般的に、ラベル基材11の単位面積当たりの網点20の面積が大きいほど、濃色の絵柄等を表現できる。上述の通り、ラベル基材11のダイン数は40mN/m以下と低く、ラベル基材11上で水性インキが広がり難いため、水性インキ層13における網点再現率は油性インキ層12の場合よりも低くなる。水性インキ層13の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1μm~5μmである。水性インキ層13の厚みは、油性インキ層12の場合と比べて、各網点20でバラつきが大きくなり易い。
【0051】
水性インキ層13における網点再現率は、50~95%、75~95%、又は50~70%である。即ち、
図4に点線で示す網点20の目標領域のうち、50~95%の領域に水性インキ層13が形成され、5~50%の領域には水性インキが付着せず水性インキ層13が形成されない。網点20の目標領域の大きさは、例えば印刷版の穴の大きさによって決定される。網点20の大きさが印刷版の穴の大きさと同じであるとき、網点再現率は100%となる。なお、油性インキ層12の場合は、油性インキがラベル基材11上で広がり、網点再現率が100%を超える場合がある。
【0052】
網点20の目標領域の形状、即ち印刷版の穴の形状は、特に限定されず、真円形状、楕円形状、四角形状等であってもよい。ダイン数が高いラベル基材11Xを用いた場合は、
図7及び
図8に示すように、網点再現率を約100%とすることができ、目標領域の形状に対応した網点20Xからなる水性インキ層13Xが形成される。他方、ラベル10では、目標領域の形状が円形状であっても、
図4及び
図5に示すように、網点20はC字状やU字状に形成され、網点再現率は50~95%となる。この場合、網点再現率が100%である場合と比べて、隣り合う網点20の間に形成される隙間が大きくなり、また網点20の厚みが大きくなる。特に、各網点20で網点再現率のバラつきが大きい場合は、各網点20で水性インキ層13Xの厚みのバラつきが大きくなる。
【0053】
[下地油性インキ層14]
図6に示すように、下地油性インキ層14は、水性インキ層13を構成する複数の網点20を覆うと共に、各網点20の間を埋めるように形成される。
図9に示すように、下地油性インキ層14を設けない場合は、網点20の隙間に押え油性インキ層15が形成され、網点20の一部が押え油性インキ層15によって覆われない状態となるが、下地油性インキ層14を設けることで全ての網点20が押え油性インキ層15に覆われた状態となる。網点20の一部が押え油性インキ層15で覆われない場合、当該一部が透けて領域Z
13の見栄えが悪くなるが、下地油性インキ層14を設けることで、このような不具合を防止でき、ラベル上の文字や絵柄や背景色等を綺麗に表現できる。
【0054】
下地油性インキ層14は、隣り合う網点20の隙間を埋めると共に、各網点20の厚み差の影響を緩和して、全ての網点20が押え油性インキ層15に覆われるようにするために設けられるので、無色透明であってもよい。下地油性インキ層14は、バインダ樹脂のみで構成されてもよい。或いは、下地油性インキ層14には、白色顔料など、押え油性インキ層15と同じ色材が含有されていてもよい。また、下地油性インキ層14は、水性インキ層13と同じ色材が含有されていてもよい。
【0055】
下地油性インキ層14を無色透明な印刷層とし、押え油性インキ層15を不透明な印刷層(例えば、白色印刷層)とすることで、無色の下地油性インキ層14で水性インキ層の凹凸を適度に平滑にし、押え油性インキ層15の色で水性インキ層の裏側を確実に覆うことができ、ラベル上での背景色等を綺麗に表現できる。
【0056】
下地油性インキ層14は、従来公知の油性インキを用いて形成できる。下地油性インキ層14は、一般的に、有機溶剤に溶解し、水系溶媒に曝しても不溶である。下地油性インキ層14のバインダ樹脂には、油性インキ層12の場合と同様に、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合系樹脂などから選択される1種又は2種以上の混合物を用いることができる。押え油性インキ層15についても同様のバインダ樹脂を用いることができ、下地油性インキ層14及び押え油性インキ層15は同種のバインダ樹脂で構成されてもよい。
【0057】
下地油性インキ層14及び押え油性インキ層15の少なくとも一方は、上述のように、硬化剤成分を含有していてもよい。例えば、押え油性インキ層15を形成する油性インキに硬化剤が添加されていてもよく、この場合、当該硬化剤とバインダ樹脂の官能基が反応して塗膜が硬化する。当該硬化剤は、下地油性インキ層14、水性インキ層13、油性インキ層12、及びラベル基材11を構成する樹脂の官能基と反応してもよく、印刷層の全体が硬化してもよい。押え油性インキ層15等の印刷層が硬化することで、塗膜強度が向上し、熱収縮時の水性インキ層13等の割れを抑制できる。
【0058】
上記硬化剤としては、アジリジン系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤等が例示できる。中でも、アジリジン系硬化剤が好ましい。アジリジン系硬化剤としては、例えばトリメチロールプロパントリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3-(1-(2-メチル)アジリジニルプロピオネート)]、N,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシド)、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシド)、トリエチレンメラミン、ビスイソプロタロイル-1-(2-メチルアジリジン)、トリ-1-アジリジニルホスフィンオキシド、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、2,2’-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサメチレンジエチレンウレア、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N’-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)などが挙げられる。
【0059】
下地油性インキ層14は、水性インキ層13等と同様に複数の網点から構成されてもよいが、好ましくは塗膜(網点)が連続したベタ状に形成される。下地油性インキ層14の厚みは、例えば0.1μm~5μmである。下地油性インキ層14の厚みは特に限定されないが、下地油性インキ層14は、水性インキ層13の凹凸を緩和して色抜けを防止するために、水性インキ層13の厚みの平均値よりも厚く形成されることが好ましい。
【0060】
[押え油性インキ層15]
図6に示すように、押え油性インキ層15は、下地油性インキ層14上に形成されると共に、一部が水性インキ層13上に直接形成されるオーバーコート層である。押え油性インキ層15は、全ての網点20の裏側を覆うように形成されることが好ましい。押え油性インキ層15は、不透明な印刷層であって、当該インキ層が全ての網点20の裏側に重なることで、水性インキ層13が形成された領域の色抜けを防止でき、ラベル上の文字や絵柄や背景色等を綺麗に表現できる。押え油性インキ層15は、例えば色材及びバインダ樹脂を含み、また各種添加剤を含んでいてもよい。
【0061】
押え油性インキ層15に含まれる色材は、上記シアン顔料、上記マゼンダ顔料、上記イエロー顔料、上記ブラック顔料等であってもよく、酸化チタン等の白色顔料であってもよい。押え油性インキ層15は、従来公知の油性インキを用いて形成できる。押え油性インキ層15は、一般的に、有機溶剤に溶解し、水系溶媒に曝しても不溶である。バインダ樹脂には、下地油性インキ層14のバインダ樹脂と同種のものが適用できる。また、押え油性インキ層15は、上記硬化剤成分を含有していてもよい。
【0062】
押え油性インキ層15は、下地油性インキ層14と同様に、塗膜(網点)が連続したベタ状に形成されることが好ましい。押え油性インキ層15の厚みは、例えば0.1μm~5μmである。押え油性インキ層15の厚みは特に限定されないが、押え油性インキ層15は、水性インキ層13の厚みの平均値よりも厚く形成されることが好ましい。
【0063】
以上のように、上記構成を備えたラベル10によれば、ラベル基材11に特別な表面処理を施すことなく、ラベル10の見栄えを改善することができる。ラベル10では、ラベル基材11のダイン数が低いため、ラベル基材11上の目的とする領域全体に水性インキ層13は形成されない。しかし、ラベル10によれば、下地油性インキ層14を設けて水性インキ層13の凹凸を緩和した上で押え油性インキ層15を形成することで、水性インキ層13が形成された領域Z13の色抜けを防止でき、ラベル上の文字や絵柄や背景色等を綺麗に表現できる。
【0064】
ラベル10の製造方法の一例は、ダイン数が40mN/m以下のラベル基材11を準備する工程と、溶媒における水分量が90%~100%である水性インキを用いて、網点再現率が50~95%である水性インキ層13をラベル基材11上に直接形成する工程と、ラベル基材11上に水性インキ層13を覆う下地油性インキ層14を形成する工程と、ラベル基材11上に水性インキ層13及び下地油性インキ層14を覆う押え油性インキ層15を形成する工程とを含む。なお、「インキ層」は、従来公知のインキを従来公知の印刷法(グラビア印刷、フレキソ印刷、凸版輪転印刷など)を用いて印刷することによって形成された、インキ固化物からなる層をいう。
【符号の説明】
【0065】
10,10A ラベル、11 ラベル基材、12 油性インキ層、13 水性インキ層、14 下地油性インキ層、15 押え油性インキ層、20 網点、30 筒状ラベル、31 接合部、32 内側端部、33 外側端部、E12,E13 端縁、Z 窓領域、Z12,Z13 領域