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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】繊維性モノフィラメント
(51)【国際特許分類】
   D02G 3/04 20060101AFI20220426BHJP
   D01F 2/00 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
D02G3/04
D01F2/00 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019534691
(86)(22)【出願日】2017-12-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 FI2017050896
(87)【国際公開番号】W WO2018115577
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】20166035
(32)【優先日】2016-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】519292028
【氏名又は名称】スピンノヴァ オイ
【氏名又は名称原語表記】SPINNOVA OY
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】サルメラ,ユハ
(72)【発明者】
【氏名】ポラネン,ヤンネ
(72)【発明者】
【氏名】サルミネン,アルト
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-246823(JP,A)
【文献】国際公開第2016/174307(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0121622(US,A1)
【文献】国際公開第2016/135385(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0056916(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0250425(US,A1)
【文献】特開2015-040361(JP,A)
【文献】国際公開第01/088266(WO,A1)
【文献】米国特許第01969095(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00 - 13/02
D01F 1/00 - 6/96
D01F 9/00 - 9/04
D02G 1/00 - 3/48
D02J 1/00 - 13/00
D21B 1/00 - 1/38
D21C 1/00 - 11/14
D21D 1/00 - 99/00
D21F 1/00 - 13/12
D21G 1/00 - 9/00
D21H 11/00 - 27/42
D21J 1/00 - 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径20~400μmの繊維性モノフィラメントであって、少なくとも30重量%の植物系天然セルロース繊維を含み、前記植物系天然セルロース繊維は再生されておらず、
前記繊維性モノフィラメントは1~50重量%の人工セルロース繊維を含み、
前記繊維性モノフィラメントの個々の繊維は互いに絡み合ってモノフィラメント構造を形成することを特徴とする繊維性モノフィラメント。
【請求項2】
前記繊維性モノフィラメントは、1~30重量%の人工セルロース繊維、より好ましくは1~20重量%の人工セルロース繊維を含むことを特徴とする、請求項1に記載の繊維性モノフィラメント。
【請求項3】
前記人工セルロース繊維が人工セルロースリヨセル繊維であり、前記人工セルロースリヨセル繊維を1~50重量%含む、好ましくは人工セルロースリヨセルを1~30重量%含む、より好ましくは、人工セルロースリヨセル繊維を1~20重量%含むことを特徴とする、請求項1に記載の繊維性モノフィラメント。
【請求項4】
繊維くず再生繊維を含む、1~50重量%の繊維くず再生繊維を含む、好ましくは30~50重量%の繊維くず再生繊維を含む、より好ましくは40~50重量%の繊維くず再生繊維を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の繊維性モノフィラメント。
【請求項5】
繊維くず再生繊維が、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン/ポリエステル、および二成分ショートカット繊維の少なくとも1種を任意選択で含む熱接着繊維を含むことを特徴とする、請求項4に記載の繊維性モノフィラメント。
【請求項6】
プレコンシューマ繊維くずからの繊維くず再生繊維を含む、1~50重量%の繊維くず再生繊維を、好ましくは30~50重量%のプレコンシューマ繊維くず再生繊維を、さらに好ましくは40~50重量%を繊維くず再生繊維を含み、プレコンシューマ繊維くず再生繊維は、再生綿繊維の前処理方法に従って調製され、再生綿繊維の前処理には、金属除去段階と酸化漂白段階が含まれることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の繊維モノフィラメント。
【請求項7】
人工セルロース繊維が、1~10mm、好ましくは2~10mm、より好ましくは4~6mmの長さを有し、および/または、0.7~7デシテックス、好ましくは0.9~1.7デシテックスの糸番手を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の繊維性モノフィラメント。
【請求項8】
30~99重量%、または50~99重量%、または70~99重量%の植物系天然セルロース繊維を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の繊維性モノフィラメント。
【請求項9】
植物系天然セルロース繊維が、機械的および化学的に互いに連結されており、場合により、化学的連結が植物系天然セルロース繊維間の水素結合によって提供されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の繊維性モノフィラメント。
【請求項10】
植物系天然セルロース繊維が、化学パルプ、熱機械パルプ、機械パルプまたは古紙パルプに由来することを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の繊維性モノフィラメント。
【請求項11】
0.01~30重量%の添加剤、または好ましくは0.05~20重量%の添加剤、またはより好ましくは0.1~15重量%の添加剤を含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の繊維性モノフィラメント。
【請求項12】
添加剤が、アルギン酸塩、アルギン酸、ペクチン、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ポリアクリルアミド、ナノセルロース、および酢酸ビニルのような樹脂のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項11に記載の繊維性モノフィラメント。
【請求項13】
熱可塑性繊維、場合によっては、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン/ポリエステルおよび二成分ショートカット繊維の熱可塑性繊維の内の少なくとも1種の熱可塑性繊維を含む添加剤を含むことを特徴とする、請求項11または12に記載の繊維性モノフィラメント。
【請求項14】
800~1700kg/mの密度を有することを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載の繊維性モノフィラメント。
【請求項15】
1000メートル当たり5~100グラムの線形質量密度であって、5~100テックスである線形質量密度を有する、または好ましくは5~50テックスの線形質量密度を有することを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載の繊維性モノフィラメント。
【請求項16】
ASTM D5035に従って測定した場合、5~25cN/テックスの靭性を有する
ことを特徴とする、請求項1~15のいずれか1項に記載の繊維性モノフィラメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、木材パルプ繊維を含む繊維性モノフィラメントに関する。
【背景技術】
【0002】
繊維産業では、いくつかの実質的に異なる種類の糸がある。
【0003】
最も一般的なものは、綿、ウールもしくは他の天然繊維などの、一定長の撚繊維、またはポリエステル、ナイロンもしくは他の合成ポリマーから作られた合成ステープルファイバーなどの、一定長の撚繊維を含む、細いコードである糸である。。
【0004】
エンドレスフィラメント束からなるフィラメント糸も一般的である。典型的な例は、シルクのような天然フィラメントまたはポリエステル、ナイロン、ビスコースまたはリヨセルのような人造フィラメントを含む。
【0005】
さらに別の種類の糸は、紙シートから製造される紙の糸である。紙は、特別な回転ホイールでねじられた、細長いリボン状の細片にカットされる。紙の糸は大きなリールに巻き取られ、糸の所望の最終特性(疎水性、色、摩擦など)に従って後処理される。最後に、糸は、ユーザの小さなボビンに巻き取られる。これは、顕微鏡的スケールでは、紙の糸は、紙と同じ構造を有する、すなわちそれが細い紙のストリップに解かれることができることを意味する。紙の糸が有する特性は、その使用および用途を制限し得る。たとえば、層状または折り畳み構造は、層間の毛細管力によって濡れ性を高める。折り畳まれた構造は多孔質であり、すなわち構造は紙層間に隙間を含み、それは紙の糸の剛性および厚さを増加させる。
【発明の概要】
【0006】
本願の目的は、複数の用途に適した特性を有する繊維性モノフィラメントを提供することである。強度および厚さなどの特性は、繊維性モノフィラメントの利用可能性に影響を及ぼし得る。
【0007】
本発明の態様は、木材パルプ繊維を含む繊維性モノフィラメントを含む。それに加えて、またはその代わりに、他の天然セルロース繊維およびそれらと、合成繊維または人工セルロース繊維との混合物を使用することができる。
【0008】
本発明の一態様に従えば、繊維性モノフィラメントは少なくとも30重量%の木質系天然セルロース繊維を含む。木質系天然セルロース繊維は再生されない。繊維性モノフィラメントは、30~99重量%、または50~99重量%、または70~99重量%の木質系天然セルロース繊維を含んでもよい。
【0009】
木質系天然セルロース繊維は、機械的および化学的に互いに連結されていてもよい。化学的連結は、木質系天然セルロース繊維間の水素結合によって提供され得る。
【0010】
繊維性モノフィラメントは、1~50重量%の人工セルロース繊維を含む。人工セルロース系繊維は、1~10mm、好ましくは2~10mm、より好ましくは4~6mmの長さ、および/または0.7~7デシテックス、好ましくは0.9~1.7デシテックスの糸番手を有することが可能である。
前記繊維性モノフィラメントの個々の繊維は互いに絡み合ってモノフィラメント構造を形成する。
【0011】
繊維性モノフィラメントは、繊維くず再生繊維をさらに含んでもよい。繊維性モノフィラメントは、添加剤をさらに含んでもよい。繊維性モノフィラメントは、800~1700kg/mの密度を有してもよい。繊維性モノフィラメントは、20~400μmの直径を有してもよい。繊維性モノフィラメントは、1000メートル当たり5~100グラムの線形質量密度、すなわち5~100テックス、または好ましくは5~50テックスの線形質量密度を有してもよい。繊維性モノフィラメントは、ASTM D5035に従って測定したとき、5~25cN/テックスの靱性を有してもよい。
【0012】
以下において、本発明の態様は、添付の図面と共により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に従った、20テックス繊維の糸についての糸の破断力対糸の伸縮性を示す図である。
図2a】一実施形態に従った、動的引張試験実験中の、力対位置の変化を示す図である。
図2b】一実施形態に従った、動的引張試験実験中の、力対糸の伸びを示す図である。
図3】繊維性モノフィラメントの透過顕微鏡図を示す(スケールバー500μm)。
図4】引張試験中の糸の破損後の20テックスの繊維性モノフィラメントの破損位置の顕微鏡図を示す(スケールバー500μm)。
図5】部分的に撚られていない紙の糸の例を示す図である(スケールバー5000μm)。
図6】撚られていない紙の糸の透過顕微鏡図を示す(スケールバー100μm)。
図7】繊維性モノフィラメントの長手断面図である。
図8】一実施形態に従った20テックスの繊維性モノフィラメントの断面図である。
図9】ロブロリーパインの異なる場所(異なる年輪)から採取した木質繊維の応力-ひずみ曲線の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書および特許請求の範囲において、原材料の量に対する百分率値は、特に明記しない限り、重量パーセント(重量%)である。「含む」という言葉は、非限定用語として使用されることがあるが、それはまた、限定用語「からなる」をも含む。以下の参照番号および符号が使用されている。
1 繊維性モノフィラメント
2 セルロース系繊維
3 繊維性モノフィラメントの面
4 セルロース系繊維の端部
5 水素結合
x 長手軸
【0015】
糸番手、テックスとは、線質量密度、すなわち単位長さ当たりの質量の量(1テックス=1g/1000m;および1デシテックス=1dtex=1g/10000m)を意味する。
【0016】
用語「繊維性モノフィラメント」(本発明の目的のために、単に「フィラメント」とも呼ばれる)とは、グループ化された連続長の個々の繊維を指す。繊維は、永久モノフィラメント構造を形成するために互いに絡み合っていてもよい。モノフィラメントは開くことも分解することもできない。一緒にグループ化された繊維は、繊維リボンまたはストリップなどの下部構造に、たとえば、機械的切断、研削または化学的分離手段によって分離することはできない。繊維性モノフィラメントの崩壊は、個々の繊維のみをもたらす。繊維性モノフィラメントは、数メートルまたは数キロメートルの連続長を含む。
【0017】
天然繊維とは、木材のような植物系原料供給源に由来する繊維を指す。天然木質系繊維は、ヘミセルロースとリグニンのマトリックス中のセルロースのフィブリルからなる。セルロースは、いくつかのグルコース単糖単位を有する線形多糖ポリマーである。天然セルロース繊維は、化学的または機械的パルプ化プロセスにおいて、木材原料から分離することができ、パルプはセルロース系繊維材料を含む。
【0018】
セルロース系繊維は、セルロース、好ましくは木材パルプのような木質系セルロースに由来する有機繊維を指す。セルロースは、β-(1,4)グリコシド結合を介して結合したD-グルコース単位の直鎖を含む有機化合物である。セルロース系繊維は、木質系繊維などの植物系繊維を含む。紙パルプはセルロース系繊維の混合物の一例である。天然形態のセルロース系繊維は天然セルロース系繊維を指す。天然セルロース繊維は、セルロースポリマー構造の化学的または物理的修飾を受けていない。
【0019】
本発明の一態様に従えば、および図3および図4を参照すると、繊維性モノフィラメント1は、繊維2を含み、該繊維2は、繊維要素とも呼ばれ、繊維が永久繊維性モノフィラメントの一部であるように互いに連結されている。この繊維の少なくとも一部は、植物由来のパルプに由来するセルロース系繊維である。さらに、繊維の少なくとも一部は、人工セルロース繊維(たとえば、リヨセル、ビスコースまたはモーダル)でもよい。図7を参照すると、モノフィラメント構造体1のセルロース系繊維2は、水素結合5を介して互いに絡み合っている。これらの水素結合は、たとえば、繊維性モノフィラメント構造体を別の一次セルロース系繊維に戻すように、水または他の水溶液を使用することによって破壊可能である。。
【0020】
本発明の一態様に従えば、繊維性モノフィラメントは水性懸濁液から作られる。水性懸濁液は、水、セルロース系繊維および少なくとも1つのレオロジー調整剤を含む。水性懸濁液は木質パルプ繊維または綿もしくは亜麻のような他の短い天然セルロース繊維または他の短い人造セルロース繊維、すなわちビスコース、キュプロまたはリヨセルのような再生セルロース繊維を含むことができる。製造中、水性懸濁液は、繊維が流れとうまく整列する(配向する)小さなノズルを通って導かれる(配向に関する後述の説明を参照)。ノズルは、水性懸濁液をねじれ脱水セクションに供給し、続いて繊維性モノフィラメントを得るために乾燥させる。繊維性モノフィラメントは一段階法で製造される。これにより、紙の製造や処理などの追加の手順が不要になる。このようにして製造された繊維性モノフィラメントは連続的であるが、より短い長さに後加工することができる。繊維性モノフィラメントの厚さは、製造速度、水性懸濁液濃度およびノズル形状を適合させることによって少なくとも部分的に達成され得る。
【0021】
繊維
セルロース系繊維は植物由来の原料に由来する天然繊維である。植物系原料は、セルロースパルプ、精製パルプ、化学パルプ、サーモメカニカルパルプ、機械パルプまたは古紙パルプに由来してもよい。セルロース繊維は、バイオ、化学-、機械-、熱-機械-または化学-熱-機械パルプ化プロセスを使用してセルロース含有材料から単離することができる。
【0022】
セルロース系繊維は、ナノ構造化セルロースおよびナノサイズの繊維を含むナノセルロースに由来してもよい。ナノセルロースのために広く使用されている同義語がいくつかある。たとえば、ナノフィブリル化セルロース、ミクロフィブリル化セルロース、ナノフィブリル化セルロース、セルロースナノファイバー、ナノスケールフィブリル化セルロース、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)、またはセルロースミクロフィブリルである。ナノセルロース繊維は、長さ対幅の比である高アスペクト比を有する。ナノセルロース繊維は、200ナノメートル未満、好ましくは2~20ナノメートル、特に好ましくは5~12ナノメートルの幅または横方向寸法を有してもよい。ナノセルロース繊維は、たとえば、1~数マイクロメートルの長さまたは長手方向の寸法を有してもよい。ナノセルロース繊維は、セルロース含有材料、たとえば木材パルプから単離することができる。繊維または繊維束の寸法は、原材料および単離方法によって異なる。ナノセルロース繊維は、高圧、高温および高速衝撃均質化によって木材繊維から単離することができる。均質化プロセスは、繊維の細胞壁を離層または崩壊させるため、およびそれらのサブ構造フィブリルおよびミクロフィブリルを遊離させるために使用される。木質繊維の酵素的および/または機械的前処理も使用することができる。ナノセルロース繊維は、化学的修飾を受けていない天然の形態もある。または、ナノセルロース繊維は、たとえばNオキシル媒介酸化のように化学的に前変性されていてもよい。
【0023】
セルロース系繊維は植物由来の天然繊維を含んでもよい。植物由来の繊維は、未使用もしくは再生植物材料またはそれらの組み合わせを含んでもよい。植物由来の繊維は木材または非木材材料に由来してもよい。植物は、針葉樹、広葉樹またはそれらの任意の組み合わせのような木材を含んでもよい。針葉樹は、トウヒ、マツ、モミ、カラマツ、ダグラスモミ、ツガを含んでもよい。広葉樹は、カバノキ、アスペン、ポプラ、アルダー、ユーカリ、アカシアを含んでもよい。あるいはまたはさらに、セルロース系繊維は、綿、大麻、亜麻、サイザル麻、ジュート、ケナフ、竹、泥炭またはココナッツなどの他の植物(非木材)に由来してもよい。非木材セルロース系繊維はまた、農業残渣、草、または他の植物性物質、たとえば藁、葉、樹皮、種子、外皮、花、野菜または果物からのものでもよい。
【0024】
繊維性モノフィラメントは、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも50重量%の天然セルロース繊維を含む。一例では、30~99重量%、好ましくは50~99重量%、最も好ましくは70~99重量%の天然セルロース繊維である。上記のように、天然セルロース繊維は再生されていない。従って、天然セルロース繊維はセルロースポリマー構造の化学的再生または物理的修飾を受けていない。天然セルロース繊維は再生されておらず、主にセルロースIの結晶構造からなる。セルロースIは構造IαおよびIβを有してもよい。人造セルロース繊維は再生され、結晶構造は主にセルロースI以外である。セルロースIのセルロースIIへの変換(またはセルロースIIIまたはセルロースIVのような他の形態)は不可逆的である。したがって、これらの形態は安定であり、そしてセルロースIに戻すことはできない。
【0025】
天然セルロース繊維の化学組成、繊維のサイズ、アスペクト比、およびフィラメントの配向は、繊維性モノフィラメントの機械的および物理的特性に影響を与える。たとえば、セルロース系繊維の機械的および物理的特性はそれらの化学組成、主にセルロース、ヘミセルロースおよびリグニンの影響を受ける。一例として、結晶セルロースを含有する繊維を用いて、より高い引張強度およびより高い延性を得ることができる。セルロース繊維の剛性は増加し、それらの可撓性は結晶性領域と非晶質領域の比が増加するにつれて減少する。一次フィブリル角度が減少するにつれて、繊維の引張強度は増加し、伸縮性は減少する。
【0026】
モノフィラメント構造において、セルロース系繊維のアスペクト比(繊維の直径に対する繊維の長さの比)は、10~300であればよく、好ましくは30~100である。繊維のアスペクト比が高いと、モノフィラメントの可撓性に影響を与える。
【0027】
本発明の一態様に従えば、繊維性モノフィラメントは、天然形態のセルロース系繊維、すなわち天然セルロース繊維を含む。天然セルロースは、セルロース、またはセルロース繊維の構造秩序度に影響を及ぼし得る。さらに、天然セルロースIは、繊維性フィラメントの剛性および密度に影響を及ぼし得る。
【0028】
さらに、繊維性モノフィラメントは、天然植物系繊維、修飾または再生天然繊維または合成繊維などの他の繊維を含んでもよい。繊維性フィラメントの繊維は、ビスコース、モーダル、アセテート、レーヨンのような人工繊維、またはポリエステルもしくはポリアミドのような合成繊維、および繊維くず再生繊維を含んでもよい。
【0029】
人工セルロース繊維を天然セルロース繊維混合物に添加してもよい。人工セルロース繊維は、それらが天然から単離されるのではなく工業プロセスから得られるので、繊維の長さおよび直径において狭い分布を含むことができる。天然から単離されている天然繊維は、人工セルロース繊維のものと比較して、繊維の長さおよび直径においてかなり広い分布を有し得る。細くて長い人造セルロース系繊維は、繊維性モノフィラメントの引張強度および伸縮性を改善することができる。たとえば、繊維性モノフィラメントは、その特性をさらに改良する人工セルロース繊維からすべて製造されてもよい。
【0030】
モノフィラメントは、人工セルロースプロセスに由来する人工セルロース繊維を含んでもよい。人工セルロース繊維は再生セルロース繊維である。モノフィラメントは、1~50重量%の人造セルロース系繊維、好ましくは1~30重量%の人工セルロース繊維、より好ましくは1~20重量%の人工セルロース繊維を含んでもよい。そのような方法の1つは、いわゆるリヨセル法であり、そこでは繊維および他の成形品は、水性有機溶媒中のセルロース溶液から得ることができる。より具体的には、NMMO(N-メチル - モルホリン-N-オキシド)の水溶液は、20年以上にわたって商業規模で使用されてきた溶媒である。典型的には、約13重量%のセルロースを含有する紡糸ドープが関連する製造施設で使用されている。パルプは好ましいセルロース系原料であるが、状況に応じて、コットンリンターなどの他のセルロース系原料も使用することができる。モノフィラメントは、人工のリヨセル繊維を含んでもよい。
【0031】
繊維性モノフィラメントは、繊維くず再生繊維を含んでもよい。繊維性モノフィラメントは、1~50重量%、好ましくは30~50重量%の繊維くず再生繊維、より好ましくは40~50重量%の繊維くず再生繊維を含有することができる。繊維くず再生繊維は、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン/ポリエステルおよび二成分ショートカット繊維のような熱可塑性または熱結合性繊維を含んでもよい。二成分とは、ショートカット繊維の内部構造と外部表面との間の異なる材料および/または特性を指す。たとえば、二成分の外表面層は熱接着材料を含んでもよい。繊維くず再生繊維はモノフィラメント構造中に均一に分配されそして後処理工程において熱結合されてもよい。熱接着は、繊維性モノフィラメントの所望の特性、たとえば靭性の増加および洗浄性の向上をもたらし得る。
【0032】
繊維くず再生繊維は、1つの繊維タイプまたは異なる繊維タイプの混合物のいずれかを含むプレコンシューマまたはポストコンシューマくずから分離することができる。プレコンシューマ(またはポストインダストリアル)くずは、かなりの量のくず材が発生するプロセス、たとえば紡績の廃棄物や既製服製造からの切断片などが生じる繊維製造プロセス中に蓄積される。布地がユーザによって廃棄されると、ポストコンシューマくずが発生する。ほんの少量の繊維くずを対象とする織物再生のための既存の経路には、たとえば、慈善団体へのポストコンシューマ布製品の寄付、またはポストコンシューマくず切断片からの絶縁材料用の拭き取り用布または光沢繊維の製造がある。WO2015/077807およびUS2016/237619(これらの文書の全内容は参照により本明細書に組み込まれる)は、再生セルロースからの成形体の製造におけるプレコンシューマ繊維くずを再生する方法を記載している。そのようなプレコンシューマ繊維くず再生繊維は、再生綿繊維の前処理方法に従って製造され、このような再生綿繊維の前処理は、金属除去段階と酸化漂白段階とを含む。
【0033】
したがって、本発明の特定の実施形態では、繊維性モノフィラメントは、1~50重量%のプレコンシューマ繊維くず再生繊維、好ましくは30~50重量%のプレコンシューマ繊維くず再生繊維、より好ましくは40~50重量%のプレコンシューマ繊維くず再生繊維を含有し、このようなプレコンシューマ繊維くず再生繊維は、再生綿繊維の前処理方法に従って作られ、該再生綿繊維の前処理工程は、金属除去工程と酸化漂白工程とを含む。
【0034】
WO2015/077807によれば、綿繊維はプレコンシューマ綿廃棄物またはポストコンシューマ綿廃棄物から再生利用することができる。それらは綿布から調製されたパルプを含み得る。さらに、再生綿繊維は、それらの使用前に機械的に細断されるか、製粉されるか、または開繊されてもよい。
【0035】
特に、WO2015/077807によれば、金属除去段階は酸性洗浄処理および/または錯化剤による処理であることが可能であり、再生綿繊維は、錯化剤の水溶液によって処理することができる。特に、酸性洗浄処理に錯化剤を添加することによって、2つの処理を一工程に組み合わせることができる。さらに、WO2015/077807によれば、酸化漂白段階は、酸素漂白処理および/または過酸化物漂白処理を含み得る。酸化漂白段階はオゾン漂白処理も含み得る。酸化漂白段階は、上記に従った一連の酸化漂白処理を含み得る。。
【0036】
衣類の繊維くず物は、綿43%、ポリエステル、アクリルなどの石油系繊維36%、およびビスコース、シルクなどの天然系繊維21%で構成されており、2011年発行の「英国における繊維製品の流れと市場開発の機会」によれば51%のマーケットシェアを有している。家庭用テキスタイルは、同様の構成を示しており、綿30%および他の繊維、たとえば石油系および天然繊維70%である。この繊維構成は、モノフィラメント製造用原料として好適である。モノフィラメントは、少なくとも30重量%のセルロース系繊維くず再生繊維、より好ましくは40~50重量%のセルロース系繊維くず再生繊維を含んでもよい。加えて、モノフィラメントは、ポリエステル、アクリルまたはポリプロピレン繊維またはそれらの混合物を含んでもよく、それは、熱接着を可能にし、そして増加した靭性またはより良好な洗浄性のようなモノフィラメントの所望の特性に影響を及ぼす。
【0037】
さらに、繊維性モノフィラメントは、結合剤、レオロジー改質剤などのような非繊維添加剤を0.01~30重量%、好ましくは0.05~20重量%、または0.1~15重量%含む。
【0038】
配向
図4は、引張試験中の糸破損後の20テックスの繊維性モノフィラメントの破損位置の顕微鏡図を示す(スケールバー500μm)。図4では、繊維性モノフィラメント1はセルロース系繊維2を含む。繊維性モノフィラメントの個々のセルロース系繊維は、繊維性フィラメントの長さ(すなわち長手方向軸x)に沿って主に配向されている。繊維は、単一繊維の長手方向寸法が繊維性モノフィラメントの長手方向寸法に本質的に対応するように配向(整列)されている。図6を参照すると、薄い紙片から製造された紙の糸の繊維性要素は、長手方向MDに沿ってそして糸の長手方向xに対応してランダムな配向を有する。
【0039】
繊維性モノフィラメントの初期繊維配向は、ノズル内での製造段階中に達成してもよい。最大長さ以下の出口直径を有するノズルは、繊維の繊維長を秤量し、繊維は、実質的に、ノズルを出る懸濁液の長手方向xを向く。繊維配向は、ねじりおよび脱水ユニットにおいてさらに制御されてもよい。繊維性フィラメントの長手方向に沿った繊維配向はフィラメントに強度を与える。
【0040】
添加剤
繊維性要素に加えて、繊維性モノフィラメントは添加剤を含んでもよい。たとえば、結合剤などの多糖類添加剤、カチオン活性試薬、架橋剤、分散剤、顔料、および/または他の改質剤などがある。繊維性モノフィラメント中の添加剤の総量は、0.01~30重量%とすることが可能であり、0.05~20重量%、好ましくは0.1~15重量%とし得る。
【0041】
添加剤は、アルギン酸塩、アルギン酸、ペクチン、カラギーナンもしくはナノセルロースなどの多糖類添加剤、またはそのような組み合わせを含み得る。繊維性モノフィラメントの製造中、アルギン酸塩などの多糖類添加剤は、ヒドロゲルの形成に影響を及ぼし得る。繊維性モノフィラメントでは、多糖類添加剤は、少なくとも1つの試薬、たとえばカチオン活性剤と反応するように準備することができる。試薬は、塩化カルシウムまたは亜硫酸マグネシウムのような塩を含んでもよい。多糖類添加剤と試薬との間の化学反応は、水性懸濁液の粘度および降伏応力を急速に増加させる。水性懸濁液の粘度が増加すると、繊維性モノフィラメントの強度が増加するという効果がある。加えて、アルギン酸塩のような多糖類添加剤は、繊維性モノフィラメント構造における結合剤として作用し得る。アルギン酸塩は架橋を引き起こす可能性があり、これは繊維性モノフィラメントの繊維の結合に影響を与える可能性がある。アルギン酸塩マトリックスは、繊維の周囲に架橋して繊維を囲むことがある。
【0042】
添加剤は、架橋剤と試薬との対を含むことができる。架橋剤は、ノズル出口で試薬と反応するように準備することができる。架橋剤と試薬との対の間の架橋反応は水性ヒドロゲルを作り出し、それによって繊維性懸濁液の初期強度に影響を与える。繊維性モノフィラメントは、0~25重量%の架橋剤を含んでもよい。架橋剤と架橋剤とが一緒になってヒドロゲルを作り出し、それによって、繊維性懸濁液が、次の製造段階の間その特性を維持することが可能になる。たとえば、ねじれおよび急速脱水は、繊維懸濁液に大きな応力を与え得る。ヒドロゲルはさらに繊維フィラメントの引張強度に影響を及ぼす。
【0043】
添加剤は分散剤を含んでもよい。分散剤は、アニオン性長鎖ポリマー、ナノセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、アニオン性ポリアクリルアミド(APAM)またはそれらの組み合わせを含んでもよい。繊維性モノフィラメントは、0~20重量%の分散剤を含んでもよい。分散剤は、繊維性モノフィラメントの剪断強度に影響を及ぼし得る。
【0044】
一実施形態に従えば、繊維性モノフィラメントは、30~99重量%の天然セルロース繊維、さらに0.1~15重量%のアルギン酸塩などの結合剤を含む。
【0045】
一実施形態に従えば、繊維性モノフィラメントは、50~99重量%、または70~99重量%の天然セルロース繊維、さらに0.1~15重量%のアルギン酸塩などの結合剤を含む。
【0046】
別の実施形態に従えば、繊維性モノフィラメントは、50~99重量%、または70~99重量%、好ましくは90~99重量%の天然セルロース繊維、さらに0.1~10重量%の、CMC(カルボキシメチルセルロース)またはデンプンなどの結合剤を含む。。
【0047】
結合剤は、水素結合を介する天然セルロース繊維の化学的結合に影響を及ぼし、よって繊維性モノフィラメントの機械的特性を高める効果がある。
【0048】
構造および特性
個々の繊維、すなわち繊維性モノフィラメントの繊維性要素は一緒に組み立てられて(連結/グループ化され)、繊維の大部分が繊維性モノフィラメントの長手方向寸法xに沿って配向されている。
【0049】
図3を参照すると、繊維性モノフィラメントは、永久的なモノフィラメント型構造1を含む。繊維性モノフィラメントは、変更不能または不可逆的構造を含む。繊維性モノフィラメントの構造は、機械的または化学的手段を使用して、ストリップまたはリボンなどのようなモノリシックサブ構造に変換または分解することはできない。繊維性モノフィラメントは一段階法で製造されるので、元の懸濁液と繊維性モノフィラメントとの間に取替え可能または可逆的であるような下部構造、中間体または中間相は存在しない。繊維性モノフィラメント1の崩壊は、個々のセルロース系繊維2にのみ生じる。図4を参照すると、延伸により切断された繊維性モノフィラメントとフィラメントの切断端部における個々のセルロース系繊維2とが示されている。図4は、引張試験中の糸破損後の20テックスの繊維性モノフィラメントの破損位置の顕微鏡図を示す(スケールバー500μm)。
【0050】
繊維性モノフィラメントの形状は製造工程によって制御することができる。繊維性モノフィラメントは円形断面を有してもよい。あるいは、断面は楕円形のように平坦であってもよい。フィラメントの形状は、水性懸濁液の供給中または繊維性モノフィラメントの乾燥工程中などの製造工程中に制御することができる。20テックス繊維性モノフィラメントに関する実施例に係る繊維性モノフィラメントの断面形状を図8に示す。
【0051】
繊維性モノフィラメント構造は、フィラメントの形状にもかかわらず、図3に示すように、均一で閉じた表面テクスチャ3を有することを特徴とする。繊維性モノフィラメントの繊維性要素は、(たとえば水素結合を介して)機械的にも化学的にも、互いに連結されている。図5は、撚られていない、または部分的に撚られていない紙の糸(スケールバー5000μm)の例を示す。図5において、紙の薄いストリップから製造された紙の糸は折り畳まれた構造を有し、それは撚りを解かれることができる。折り畳み様構造は、紙の糸に非常に多孔質の表面をもたらすことになる。
【0052】
さらに、モノフィラメントの繊維性要素2の長手方向寸法は、外面においてもフィラメントの長手方向軸xと実質的に平行に整列しており、よって緊密で閉じた表面構造3を形成している。換言すれば、損傷のないモノフィラメントの表面は、モノフィラメントの外周面から突出しているセルロース系繊維4の切断端部は含まない。緊密な表面構造は、表面密度の増加および繊維性モノモノフィラメントの毛管引力の低減に効果を有する。緊密な表面構造は、モノフィラメントの内部への小さい粒子の接近の防止に効果を有し得る。撚られていない紙の糸の顕微鏡図を示す図6を参照すると、長手軸MDにおけるランダムな繊維配向が観察される。また、外周面から突出しているセルロース系繊維4の端部も観察され、ゆるく開放された表面構造を形成している。そのような表面構造は毛管力を高め、さらに異物の小粒子の蓄積を増大させる可能性がある。
【0053】
少なくともいくつかの/すべての実施形態に従った繊維性モノフィラメントは、800~1700kg/mの密度を有することができる。少なくともいくつかの/すべての実施形態に従った繊維性モノフィラメントは、1000~1500kg/mの密度を有することができる。一例として、70~90重量%の天然セルロース繊維を含む繊維性モノフィラメントは、1300kg/mの密度を示し得る。
【0054】
繊維性モノフィラメントの繊維は、繊維性モノフィラメントの長手方向に実質的にに配列されていればよい。加えて、または代わりに、繊維は不規則な配置を有していてもよい。たとえば、繊維は長手方向軸の周りにねじれていてもよい。全ての場合において、繊維性モノフィラメントの構造は変更不可(/不可逆)である。したがって、モノフィラメント構造を開く/解体する、ことはできず、または繊維性モノフィラメントの繊維を解撚することはできない。繊維性モノフィラメントは、20~400μmの直径を有してもよい。繊維性モノフィラメントは、好ましくは5~100テックス、すなわち1000メートル当たり5~100グラムの線形質量密度を有してもよく、特に好ましくは繊維性モノフィラメントは5~50テックスの線形質量密度を有してもよい。
【0055】
図1は、一実施形態に従った20テックス繊維の糸についての糸の伸びの関数における糸の破断力を示す。繊維性モノフィラメントの破断力は、図1の実施形態では、0.06~0.23kgF(0.6~2.3N)まで変化する。5~20テックスの線質量密度を有する繊維性モノフィラメントは、11~15cN/テックスの靭性を有する。20~50テックスの線質量密度を有する繊維性モノフィラメントは、11~5cN/テックスの靱性を有する。破断力は、規格ASTM D5035に従って決定される。
【0056】
繊維性モノフィラメントの破断点伸びは、2~6%でよい。繊維性モノフィラメントの繊維は破断点伸びに影響を与える。たとえば、熱接着繊維は、モノフィラメントの破断点伸び値を高める効果がある。繊維性モノフィラメント構造およびその機械的および触覚的特性は、繊維性モノフィラメントの製造中にパルプ濃度および水性懸濁液の加工パラメータを変えることによって徐々に変えることができる。
【0057】
繊維系原料は、モノフィラメント特性に影響を及ぼし得る。モノフィラメントは、植物系原料供給源に由来する0~99重量%のセルロース系繊維を含んでもよい。繊維性モノフィラメントは、木材パルプ由来のセルロース系繊維を少なくとも30%、または少なくとも50%含んでいてもよい。繊維性モノフィラメントは、ガラス繊維、ポリマー繊維、金属繊維などの合成材料、および/またはウール繊維もしくはシルク繊維などの天然繊維から生じる未使用または再生繊維を任意選択で含んでもよい。繊維性フィラメントは、綿、亜麻、大麻、人造セルロース系繊維および/または繊維くず物から製造されたパルプを任意に含んでもよい。
【0058】
「2~3mm」の平均繊維長を有する繊維(短繊維を表す)と「5~10mm」の平均繊維長を有する繊維(長繊維を表す)との組み合わせを使用して、繊維性フィラメントの強度および伸縮性に対してプラスの効果をもたらすことが可能である。
【0059】
「1~2mm」の平均繊維長を有する繊維(短繊維を表す)と「2~4mm」の平均繊維長を有する繊維(長繊維を表す)との組み合わせを使用して、フィラメントの均一性に好ましい影響を与えることができる。
【0060】
図9は、ロブロリーパインの異なる場所(年輪)から採取した木質繊維の応力-ひずみ曲線の例を示す。由来および異なる繊維源は、繊維特性および繊維性モノモノフィラメントの特性を変える可能性がある。繊維は、たとえば、異なる、アスペクト比、直径、曲げ剛性、破断強度など有してもよい。たとえば、春に成長する繊維(早材を表す)と、夏の終わりに成長する繊維(後材を表す)は、密度、強度、伸縮が異なる。また若い木質繊維と古い木質繊維は、異なる機械的特性を有する。図9に示すように、若いマツ木繊維は、8%までの平均伸びを有し、または、25%までの平均伸びを有するものもあり、および400MPaの平均最大引張応力を有し得る一方、古いマツ木繊維は、4%の平均伸び、および1200MPaの最大引張応力を有し得る(Mechanical properties of individual southern pine fibers. Part III: Global relationships between fiber properties and fiber location within an individual tree. Groom et. Al. Wood and fiber science. 2002, 34(2), pp. 238-250)。
【0061】
繊維性モノモノフィラメントのセルロース系繊維の長さは、繊維性モノモノフィラメントの強度特性に影響を及ぼし得る。長いセルロース系繊維(たとえば、北部の軟木)は、良好な強度特性を有する細い繊維性モノモノフィラメントを提供することを可能にする。繊維性モノモノフィラメントは、0.1mm未満の厚みを有してもよい。たとえば、松は長繊維の原料として、そしてユーカリは短繊維の原料として利用することができる。マツに由来するバージン繊維は、2~3mmの平均長さの繊維を有し得る。繊維の平均長さ秤量繊維長(L&W Fiber Testerを使用して測定される)は、少なくとも90%の繊維が平均長さの範囲内にある長さ秤量繊維長を指す。
【0062】
一例では、架橋剤-試薬対は、繊維性モノフィラメントの特性に影響を及ぼし得る。たとえば、異なる試薬は、強度および伸張性においては異なるが他の特性においても異なる可能性があり、したがって繊維性モノフィラメントの機械的および物理的特性にさらに影響を及ぼす。
【0063】
一例では、精製レベル(繊維のフィブリル化)は、繊維性モノフィラメントの特性に影響を及ぼし得る。繊維の機械的フィブリル化は繊維の表面積を増大させ、従って他の繊維とのより多くの結合を生じさせる。これは繊維性モノフィラメントの機械的特性を変える。
【0064】
図2aは、動的引張試験実験中の位置変化の関数で測定された力を示している。図2bは動的引張試験実験中の糸の伸びの関数で測定された力を示している。試験では、1本の繊維性モノフィラメントを顎間で周期的に異なる長さに引き伸ばし、そして元の長さに戻した。顎間の距離と力は、実験中に測定される。結果は、繊維性モノフィラメントが繰り返しの伸張に耐えることができることを示している。図2aおよび図2bは、繊維糸が弾性であることも示している。伸縮力が減少すると、フィラメント長も減少する。
【0065】
繊維性モノフィラメントの色は、繊維性モノフィラメントの個々の繊維を染色するか、または繊維性モノフィラメント自体を染色することによって変えることができる。これは、当業者に周知の染色方法、たとえば製紙プロセスから周知の染色方法を用いて行うことができる。これらの染色方法では、得られるフィラメントは断面全体にわたって均一な色を有する。この場合、機械的応力がかかっても(洗濯、こすりなど)、糸が変色することはない。繊維性モノフィラメントは、織物染料を使用して染色することもできる。たとえば、一般的な綿およびセルロース系染料を利用することができる。水性懸濁液中の個々の繊維は、繊維性モノフィラメントの製造前に染色を施されてもよい。これは、必要な量の染料、染料浸透、染料の磨耗、色調、および色調の質と安定性とにプラスの影響を及ぼし得る。
【0066】
本発明の少なくともいくつかまたは全ての態様に従った繊維性モノフィラメントは、繊維性モノフィラメントの可変特性のために、繊維性モノフィラメントを複数の用途に使用することを可能にする。繊維性モノフィラメントの特性は用途に応じて選択すればよい。繊維性モノフィラメントの用途および所望の特性は、繊維性モノフィラメントの最終用途、繊維性モノフィラメントからなる材料、繊維性モノフィラメントを含む材料、および/または繊維性モノフィラメントを含む材料の用途に従って選択することができる。マルチフィラメントタイプの繊維構造を形成するために、いくつかの繊維性モノフィラメントタイプの糸を撚ることも可能である。
【0067】
繊維性モノフィラメントの特性は、利用および用途に応じた所望の厚さおよび強度を有することが可能である。たとえば、柔らかさ、可撓性、持続性、耐摩耗性、形状安定性、弾力性/非弾力性および/または他の材料もしくは糸との組み合わせ性のような特性は、繊維性モノフィラメントの利用可能性に影響を及ぼし得る。
【0068】
本発明の少なくともいくつかの態様に従った繊維性モノフィラメントは、必要面積を小さくする効果を有する。パルプ系繊維の使用は、木材、パルプおよび廃パルプ材料の利用および再生を可能にする。
【0069】
少なくともいくつかの実施形態に従った繊維性モノフィラメントは、衣料産業に持続可能かつ生態学的な手段を提供する。いくつかの用途では、繊維性モノフィラメントは、たとえば繊維性綿にとって代わることを可能にする。大規模綿花栽培には大量の水資源が必要である。綿栽培はすでに水と食料の両方が不足している地域で広く行われている。綿花栽培は、食料生産のために利用可能な農業地域を減らし、水の消費量を増加させ、そして食料と水の供給問題を悪化させる。綿の使用は、持続可能性がなく、繊維源の交換が必要とされている。以前に提示された、紙の糸の特性および製造方法は、綿の代替を可能にしなかった。
【0070】
本発明の少なくともいくつか、またはすべての態様に従った繊維性モノフィラメントは、生分解性の効果を有する。天然系繊維の使用は、繊維性モノフィラメントならびにそのようなものでできた材料および製品の、再生、再利用および再使用を可能にする。
【0071】
前述の説明は、本発明の態様の例示として提示されている。特許請求の範囲に定義されている本発明の範囲から逸脱することなく、部分または詳細の置き換え、変更、組み合わせ、または省略をすることができる。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9